説明

シールド工法およびセグメント取り付け状態のデータ収集システム

【課題】セグメントの組み付け状態に関わる物理量のデータの収集を簡単かつ低コストに行う上で有利なシールド工法およびセグメント取り付け状態のデータ収集システムを提供する。
【解決手段】作業者は、計測すべきセグメント2の箇所に子機66およびセンサ部60を取り付け、子機66の電源を投入し、子機66と親機38との間の無線回線による通信が可能な状態とする。運転台車1602に搭乗している作業者は、計測用パーソナルコンピュータ32に組み込まれている所定の計測ソフトウェアを立ち上げる。これにより、各子機66で生成された物理量のデータが、無線回線、親機38、有線回線を介して計測用パーソナルコンピュータ32に連続的あるいは断続的に収集される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシールド工法およびセグメント取り付け状態のデータ収集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりシールド機によって穴を掘削し穴の内周にセグメントを組み付けることによりトンネルを構築するシールド工法が種々提案されている(特許文献1参照)。
このようなシールド工法では、シールド機によって地山を削孔して穴を掘削しシールド機の後部内で、既に組み立てられたトンネル躯体の端部に、複数のセグメントを組み付けてセグメントリングを組み立てることでトンネル躯体を延長し、組み立てたセグメントリングをセグメントリングの周方向に沿って配置された複数のジャッキにより押圧することでシールド機を前進させるようにしている。
一方、このようなシールド工法でトンネル躯体へ組み付けられたセグメントの組み付け状態に関わる物理量、例えば、各セグメントの間の隙間である目開きの寸法、あるいは、各セグメントの厚さ方向における段差である目違いの寸法などを計測し、それら計測された物理量のデータに基づいてシールド機の運転、言い換えると、各ジャッキの動作を適切に制御することでトンネル躯体の品質を確保することが求められている。
従来、このような物理量の計測を行う際には、物理量を検出するセンサ部と、センサ部によって得られる検出信号から物理量のデータを生成する計測器とを、トンネル躯体の長手方向における予め定められた範囲内において測定すべきセグメントに設置するとともに、計測器からのデータを有線回線を介してデータ収集用のパーソナルコンピュータに通信している。
【特許文献1】特開2000−274192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の方法では次のような問題があった。
センサ部や計測器の設置時には多数のケーブルを取り回さなくてはならないため長時間シールドマシンの掘進を止める必要がある。
センサ部や計測器の設置場所を変えるには、それらセンサ部や計測器とともに多くのケーブルを移動させなくてはならず、その都度専門工により撤去及び再度の設置をする必要がある。
計測器の設置場所をたびたび変えると、大きな費用がかかり、工期が延びる。
ケーブルを取り回さなくてはならないため、計測状況や施工状況による緊急の計測器設置には対応できない。
多数箇所の計測には、有線配線が煩雑になり、切断等のトラブルが生じるおそれがある。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、セグメントの組み付け状態に関わる物理量のデータの収集を簡単かつ低コストに行う上で有利なシールド工法シールド工法およびセグメント取り付け状態のデータ収集システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の目的を達成するため、本発明は、シールド機の前端によって地山を削孔して穴を掘削するとともに前記シールド機の後部内で、既に組み立てられたトンネル躯体の端部に、複数のセグメントを組み付けてセグメントリングを組み立てることで前記トンネル躯体を延長し、前記組み立てたセグメントリングを前記セグメントリングの周方向に沿って配置された複数のジャッキにより押圧することで前記シールド機を前進させるシールド工法であって、前記トンネル躯体の端部へのセグメントの組み付け毎に、前記トンネル躯体へ組み付けられたセグメントに、該セグメントの組み付け状態に関わる物理量を検出するセンサ部を着脱可能に取着し、前記トンネル躯体の長手方向における予め定められた範囲内において前記各センサ部を用いて検出された前記物理量のデータを無線回線を介して、前記シールド機の外部で既に組み立てられたトンネル躯体内の箇所に設けられたデータ収集部で収集することを特徴とする。
また本発明は、シールド機の前端によって地山を削孔して穴を掘削するとともに前記シールド機の後部内で、既に組み立てられたトンネル躯体の端部に、複数のセグメントを組み付けてセグメントリングを組み立てることで前記トンネル躯体を延長し、前記組み立てたセグメントリングを前記セグメントリングの周方向に沿って配置された複数のジャッキにより押圧することで前記シールド機を前進させる際に、前記トンネル躯体を構成するセグメントの取り付け状態に関わる物理量を示すデータを収集するデータ収集システムであって、前記トンネル躯体の長手方向における予め定められた範囲内において前記トンネル躯体へ組み付けられたセグメントに着脱可能に取着され該セグメントの組み付け状態に関わる物理量を検出するセンサ部と、前記シールド機の外部で既に組み立てられたトンネル躯体内の箇所に設けられ、前記各センサ部を用いて検出された前記物理量のデータを無線回線を介して収集するデータ収集部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、センサ部を用いて検出されたセグメントの組み付け状態に関わる物理量のデータを無線回線を介して収集するようにしたので、センサ部やケーブルの大掛かりな設置工事を行う必要が無く、データの収集を簡単かつ低コストに行う上で有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本実施の形態のシールド工法を実施するシールド機10の断面側面図である。
図1に示すように、シールド機10は、掘削部12およびテール部14などを含んで構成されている。
掘削部12は、カッタ装置18、コンベア装置20、ジャッキ装置22、外装壁24などを備えている。
カッタ装置18は、掘削部12の前端に配設された円盤状のカッタ1802を掘進方向と平行な軸線回りに回転することで地盤を掘削するように構成されている。
コンベア装置20は、カッタ装置18による地盤の掘削で排出された土砂を後方に運搬するように構成されている。
ジャッキ装置22は、カッタ装置18によって掘削された穴4に環状に組み付けられるセグメント2の箇所を掘進方向の後方に向けて押圧することでシールド機10を掘進方向に推進させるように構成されている。
外装壁24は、穴4の内壁402に臨む円筒状を呈し、外装壁24の内側に形成される円柱状の空間内にコンベア装置20の前部とジャッキ装置22を収容している。
【0007】
テール部14は、円筒状を呈し、外装壁26などを備えている。
外装壁26は穴4の内壁に臨む円筒状を呈し、穴4の内壁402に臨む外側面2602と、外側面2602に対向しセグメント2の外壁面202に臨む内側面2604とを有している。
テール部14の外装壁26は、掘削部12の外装壁24の掘進方向の後端に接続され、外装壁26の内側面2604の内側に形成される円柱状の空間内にコンベア装置20の後部などを収容している。
【0008】
テール部14の後部には設備車両16が連結され、設備車両16はシールド機10から離れたトンネル躯体6の箇所に配置されている。
設備車両16は複数設けられ、カッタ装置18、コンベア装置20、ジャッキ装置22などを動作させるための制御ユニット28、駆動源(不図示)、油タンク(不図示)などが分散して配設されている。
設備車両16のうちの1つは、制御ユニット28が設けられた運転台車1602として構成されている。
設備車両16は、穴4の長手方向に延在するレール30上を移動可能に設けられている。
【0009】
次にシールド機10の動作について説明する。
図2(A)、(B)はシールド機10の動作説明図である。
図2(A)、(B)に示すように、穴4の内壁402の周方向に沿って組み立てられた複数のセグメント2によって環状のセグメントリング2Aが形成され、このセグメントリング2Aが穴4の延在方向に連結されることでトンネル躯体6が延長されていく。
ジャッキ装置22は、セグメントリング2Aの周方向に沿って配置された複数のジャッキ2202を有している。
セグメントリング2Aの構築は、図2(B)に示すように、複数のジャッキ2202のうち、1つのセグメント2に対応するジャッキ2202を縮小させることで既に構築されているトンネル躯体6の端部との間に空間を空け、その空間にセグメント2を挿入する。
次いで、図2(A)に示すように、前記縮小していたジャッキ2202を伸張して前記挿入されたセグメント2をトンネル躯体6方向に押圧することで、セグメント2を組み付ける。
このような手順を繰り返すことで複数のセグメント2を穴4の内壁402の周方向に沿って組み付け、セグメントリング2Aを構築する。
そして、図2(A)に示すように、1つのセグメントリング2Aが構築されたならば、全てのジャッキ2202を同時に伸張させセグメントリング2Aを掘進方向と反対方向に押圧し、これにより発生する反力によってシールド機10を前進させつつ、カッタ装置18によって穴4を掘削する。
【0010】
次に、本発明の要旨である、セグメント2の組み付け状態に関わる物理量のデータの収集を行う構成について説明する。
図3は本実施の形態のセグメント取り付け状態のデータ収集システムの構成を示すブロック図である。
図3に示すように、運転台車1602には、制御ユニット28、計測用パーソナルコンピュータ32、シールド機運転モニタリング用パーソナルコンピュータ34などが設けられている。
計測用パーソナルコンピュータ32はデータ収集部を構成するものであって、セグメント2の組み付け状態に関わる物理量のデータの収集を行うためのものである。
シールド機運転モニタリング用パーソナルコンピュータ34は、制御ユニット28に接続され、制御ユニット28によって制御されているカッタ装置18、コンベア装置20、ジャッキ装置22などの動作状態が表示されるものである。
計測用パーソナルコンピュータ32は、LAN用のハブ36を介してLANによりシールド機運転モニタリング用パーソナルコンピュータ34とデータ通信可能に接続されている。
計測用パーソナルコンピュータ32、シールド機運転モニタリング用パーソナルコンピュータ34、ハブ36は、不図示の無停電電源装置を介して電源が供給されており、電源の瞬断に対して安定した動作が確保されている。
なお、運転台車1602はシールド機10のテール部14に連結されているため、運転台車1602およびそれに設けられた計測用パーソナルコンピュータ32は、シールド機10の外部で既に組み立てられたトンネル躯体6内の箇所に設けられていることになる。
【0011】
シールド機10には、後述する子機66との間で無線回線を構成してデータ通信を行う複数の親機38が設けられている。各親機38は、無線通信を行うための通信回路やアンテナを備えており、内蔵バッテリーあるいは外付けのバッテリーから供給される電源で駆動され、各親機38は防水ケースに収容されている。
各親機38は有線回線を介して計測用パーソナルコンピュータ32に接続されている。
本実施の形態では、2つの親機38A、38Bが設けられており、一方の親機38Aは、USB延長器40にUSBケーブル42を介して接続されており、USB延長器40はケーブル(例えばCAT5などのLANケーブル)44を介して運転台車1602に設けられたUSB延長器46に接続され、このUSB延長器46はUSBケーブル48を介して計測用パーソナルコンピュータ34に接続されている。
したがって、一方の親機38AはUSBケーブル42、USB延長器40、ケーブル44、USB延長器46、USBケーブル48という経路を介して計測用パーソナルコンピュータ32とデータ通信可能に接続されている。
他方の親機38Bは、USBケーブル50を介してUSB延長器52に接続されており、このUSB延長器52はケーブル(例えばCAT5などのLANケーブル)54を介してUSB延長器56に接続されている。USB延長器56はUSBケーブル58を介して前記のUSB延長器40に接続されている。
したがって、他方の親機38Bは、USBケーブル50、USB延長器52、ケーブル54、USB延長器56、USBケーブル58、USB延長器40、ケーブル44、USB延長器46、USBケーブル48という経路を介して計測用パーソナルコンピュータ32とデータ通信可能に接続されている。
なお、USB延長器46、56はトランスミッター、USB延長器40、52はレシーバーであるため、USB延長器40(レシーバー)とUSB延長器56(トランスミッター)とはLANケーブルでの接続ではなく、USBケーブル58で接続されることになる。
また、トランスミッター側のUSB延長器は電源供給が不要であるが、レシーバー側のUSB延長器は電源供給が必要であるため、レシーバー側のUSB延長器には不図示の無停電電源装置を介して電源が供給されている。
【0012】
ここで、USBケーブル42、50、58の長さは、USBの規格上、最大5mまでしか許容されず、また、使用条件によっては5m未満(例えば3m程度)までしか許容されないのに対して、USB延長器同士(トランスミッターからレシーバーまで)を接続するケーブル44、54の長さは例えば最大100mまで許容されている。
したがって、運転台車1602から親機38Aまでの距離、および、親機38Aから親機38Bまでの距離をそれぞれ最大で100m程度確保することができ、運転台車1602に対する2台の親機38A、38Bの配置位置の自由度が確保されており、親機38A、38Bと後述する子機66との間に、無線回線の障害物となる足場などの仮設材、設備車両16などが介在しても、それら障害物を回避しつつ親機38A、38Bを設置でき、親機38A、38Bと子機66との間で安定した無線回線を形成する上で有利となっている。
なお、このような障害物が無ければ、長い寸法のケーブル44、58を用いることなくUSBケーブルのみを用いればよいことは無論である。
【0013】
トンネル躯体6の長手方向における予め定められた範囲内において、穴4の内壁402に組み付けられたセグメント2の内側面204(図1参照)には、セグメント2の組み付け状態に関わる物理量を検出するセンサ部60が取着される。
本実施の形態では、センサ部60は、クリップ型変位計62と、カンチレバー型変位計64とで構成されている。
クリップ型変位計62は、隣接するセグメント2の間に形成される隙間、すなわち、目開きの寸法を検出するものである。
図4はクリップ型変位計62の取り付け説明図である。
図4に示すように、隣接するセグメント2の間には、内周面204に臨んで例えば幅10mm、深さ20mm程度のコーキング溝204Aが形成されている。
クリップ型変位計62は、弾性を有する金属性の帯板をその厚さ方向において円弧状に湾曲させて形成された本体62Aと、本体62Aの両端から本体62Aの半径方向の外方に屈曲された対向する2つの突片62Bとを有している。
クリップ型変位計62は、本体62Aに、ひずみによって抵抗値が変化するひずみ抵抗素子が設けられており、突片62B間の寸法が変化して本体62Aの形状が変化したことを前記ひずみ抵抗素子の抵抗値の変化によって検出するものである。
本実施の形態では、各突片62Bをコーキング溝204Aに挿入し、2つ突片62Bの外側面をコーキング溝204Aの対向する壁面にそれぞれ弾接させた状態でクリップ型変位計62をセグメント2に取着する。
具体的には、各突片62Bとコーキング溝204Aの壁面との間に合成樹脂製の板、あるいは、金属製の板を介在させ、粘着型瞬間接着剤を用いて接着固定するが、軽い衝撃を与えることでクリップ型変位計62を容易に取り外すことができる。
したがって、本実施の形態では、クリップ型変位計62によって、隣接するセグメント2の間に形成される隙間の変化をコーキング溝204Aの幅の変化として検出している。
【0014】
図5はカンチレバー型変位計64の取り付け説明図である。
カンチレバー型変位計64は、隣接するセグメント2の間に形成される段差、すなわち、目違いの寸法を検出するものである。
図5に示すように、カンチレバー型変位計64は、直線状に延在する金属製の帯板からなる本体64Aと、本体64Aの一端をなす基部64Bと、本体64Aの他端をなす先部64Cとを有している。
カンチレバー型変位計64は、本体64Aにひずみ抵抗素子が設けられており、本体64Aが厚さ方向に湾曲されその形状が変化したことを前記ひずみ抵抗素子の抵抗値の変化によって検出するものである。
本実施の形態では、隣接する2つのセグメント2の一方のセグメント2の内周面204箇所に基部64Bを固定し、先部64Cを他方のセグメント2の内周面204A箇所に弾接させた状態でカンチレバー型変位計64をセグメント2に取着する。
具体的には、基端64Bを内周面204A箇所に粘着型瞬間接着剤を用いて接着固定し、他端64Cを合成樹脂製の板を介在させて内周面204A箇所に弾接させるが、軽い衝撃を与えることでカンチレバー型変位計64を容易に取り外すことができる。
したがって、本実施の形態では、カンチレバー型変位計64によって、隣接するセグメント2の間に形成される段差の変化を2つのセグメント2の内周面204の段差の変化として検出している。
【0015】
また、本実施の形態では、セグメント2の組み付け状態に関わる物理量は、目開きと目違いの寸法であり、それらの変位量となる。なお、前記物理量は目開きと目違いの寸法に限られるものではなく、例えば、セグメント2の表面応力あるいは内部応力であってもよく、その場合には、センサ部60として、表面応力あるいは内部応力を検出するセンサ部を用いればよい。
【0016】
センサ部60近傍のセグメント2の箇所には子機66が取着される。
子機66はデータ生成通信部を構成するものであって、センサ部60とケーブルを介して電気的に接続され、センサ部60によって検出される検出信号、言い換えると、センサ部60を用いて生成される検出信号に基づいて前記の物理量を示すデータを生成し前記データを無線回線を介して親機38に通信するものである。
したがって、子機66は、前記検出信号を処理する信号処理回路(例えば、増幅回路、演算回路、A/D変換回路など)と、無線通信を行うための通信回路やアンテナを備えており、内蔵バッテリーあるいは外付けのバッテリーから供給される電源で駆動され、各子機66は防水ケースに収容されている。
また、子機66を使用するにあたっては、センサ部60で基準の物理量(変位量)を検出した際に前記基準の物理量に対応した正確なデータが生成されるように前記信号処理回路の校正を行う。この校正は、子機66に接続したセンサ部60に対して1度行えば、センサ部60のセグメント2への取り付け箇所の変更の有無に拘わらず、頻繁に行う必要はなく、したがって、センサ部60および子機66を設置すればすぐに正確な物理量のデータの収集が可能となる。
【0017】
本実施の形態では、子機66は、センサ部60を接続するためのコネクタが4つ設けられているため、最大4つのセンサ部60のデータを生成、送信できるようになっている。なお、コネクタの数は子機66の仕様によるものであり、コネクタの数は1つ、2つ、3つ、あるいは5つ以上であってもよい。
また、本実施の形態では、親機38と子機66との間の無線回線は、IEEE802.15.4やZig Beeと称される短距離無線通信規格に準拠した2.4GHz帯域の無線電波を用いており、見通しのよい環境における通信可能な距離(最大伝送距離)は例えば30m程度となっている。
また、親機38、子機66間の無線回線のチャンネルは16チャンネル分用意されており、何れか1チャンネルで無線通信を行うため、最大で16台の親機38を同時に使用できるようになっている。
また、1台の親機38は子機66に割り当てられたID情報によって最大65000台の子機66を識別して通信できるように構成されている。
したがって、僅かな親機38によって多数の子機66からのデータを収集することができ、言い換えると、セグメント2の取り付け状態に関わる物理量のデータを多数の箇所にわたって収集することが可能となる。
【0018】
本実施の形態では、可撓性を有するフレキシブル管の一端が防水ケースに連結され、フレキシブル管内に前記ケーブルが収容されており、フレキシブル管の他端から導出されたケーブルの先端にセンサ部60が接続されている。
フレキシブル管は、その中間の複数個所がプラスチックベースとプラスチックバンドを用いてセグメント2の内側面204に取り付けられ、これによりフレキシブル管を介して防水ケースおよび子機66がセグメント2に取着される。
詳細に説明すると、前記プラスチックベースには、曲率のあるセグメント2の内側面(コンクリート面)204にぴったりと接着させるため、底面に弾性を有するスポンジ状の0.5〜1mm程度の緩衝材が貼付されており、この底面にコンクリート面での吸い込みを考慮して粘着型瞬間接着剤を塗り、セグメント2の内側面204に対して10秒程度押さえて接着させる。そして、プラスチックベースとフレキシブル管の中間の複数個所をプラスチックバンドを介して連結する。これにより、防水ケースおよび子機66がフレキシブル管を介してセグメント2に取着されている。
なお、プラスチックバンドはプラスチックベースに対して簡単に取り付け、取り外しができ、したがって、フレキシブル管、防水ケース、子機66のセグメント2への取り付け、取り外しも簡単に行えるようになっている。
また、センサ部60および子機66は1人で持ち運びが可能な大きさと重量で構成されている。
また、本例では、防水ケースに連結されたフレキシブル管をセグメント2の内側面204に取着した場合について説明したが、フレキシブル管を用いることなく、防水ケースをプラスチックバンドとプラスチックベースを介してセグメント2に取着してもよいことは無論である。
【0019】
次に上述のように構成された本実施の形態のセグメント取り付け状態のデータ収集システムの作用について説明する。
予め、計測用パーソナルコンピュータ32、シールド機運転モニタリング用パーソナルコンピュータ34などの運転台車1602への設置、および、親機38のシールド機10への取り付け、計測用パーソナルコンピュータ32と親機38との間の有線回線の配設が完了しているものとする。
作業者は、トンネル躯体6の長手方向における予め定められた範囲内において、計測すべきセグメント2の箇所、すなわち、トンネル躯体6の端部に組み付けられたセグメント2の内周面204に、言い換えると、シールド機10に直近のセグメント2の内周面204に、子機66およびセンサ部60を前述の方法によって取り付け、子機66の電源を投入し、子機66と親機38との間の無線回線による通信が可能な状態とする。
子機66およびセンサ部60のセグメント2への取り付け作業が完了したならば、運転台車1602に搭乗している作業者は、計測用パーソナルコンピュータ32に組み込まれている所定の計測ソフトウェアを立ち上げる。
これにより、各子機66で生成された物理量のデータが、無線回線、親機38、有線回線を介して連続的あるいは断続的に収集される。データの収集を行うタイミングは、例えば、前記計測ソフトウェアの設定にもよるが、例えば1秒乃至1分間隔とされる。
計測用パーソナルコンピュータ32が計測ソフトウェアを実行することにより、収集された物理量のデータは、計測用パーソナルコンピュータ32によってハードディスク装置などの記録装置にリアルタイムで記録されるとともに、表、あるいは、グラフの形式でリアルタイムでディスプレイ装置に表示される。
前記作業者は、計測用パーソナルコンピュータ32のディスプレイに表示されるデータと、シールド機運転モニタリング用パーソナルコンピュータ34のディスプレイに表示されるジャッキ装置22の動作状態とを目視し、ジャッキ装置22の動作が適切に行われているかどうかを判断する。
そして、作業者は、前記の物理量のデータ、すなわち、目開きや目違いの寸法が許容範囲に収まるように、制御ユニット28を操作して各ジャッキ2202の伸張量などを調整する。
シールド機10とセンサ部60が取着されているセグメント2との間の距離が近い間は、シールド機10の運転(具体的にはジャッキ2202の伸張動作)に伴って各物理量が変化するが、前記距離が例えば10m乃至30m程度離れると、各物理量の変化がほとんどなくなる。
その時点で、作業者は、物理量の変化がなくなったセグメント2のセンサ部60およびそれに接続されている子機66をセグメント2から取り外す。
そして、取り外したセンサ部60および子機66を、トンネル躯体6の端部、すなわち、シールド機10に直近のセグメント2に取り付け、上述の手順を繰り返す。
【0020】
本実施の形態によれば、トンネル躯体6の長手方向における予め定められた範囲内において、各センサ部60を用いて検出された物理量のデータを無線回線を介して、シールド機10の外部で既に設置されたセグメントリング2Aからなるトンネル躯体6内の箇所に設けられた計測用パーソナルコンピュータ32で収集するようにした。
したがって、シールド機10の掘進方向への進行によりシールド機10に取り付けられた親機38とセグメント2に取り付けられた子機66およびセンサ部60との距離が離間するものの、無線回線を介してデータの通信が行われているため、データの収集を連続的にあるいは断続的に、言い換えると、リアルタイムに行うことができ有利となる。
すなわち、従来は、センサ部が接続された計測器と計測用パーソナルコンピュータとをケーブルで接続するため、ケーブルの設置に伴い、シールド機10の掘進を停止して複数の作業者が大掛かりな工事を行う必要があり、また、いったん設置したセンサ部、計測部、ケーブルの撤去にも手間がかかっており、センサ部の設置台数が増加するにつれて設置すべきケーブルも増大し多大な手間を要している。例えば、セグメント2の穴4の長手方向に沿った寸法が1mであり、センサ部が設置されるトンネル躯体6の長手方向が10m乃至30mであり、その範囲に配置されるセグメントリング2Aの数が10個乃至30個であり、セグメントリング2Aが8個のセグメント2からなり、1つのセグメントリング2Aに3つのセンサ部と計測器が設置されるとすると、設置すべきセンサ部の数は240個乃至720個となり、無数に近い数となるため、ケーブルの取り回しに多くの人手と工期を要していた。
これに対して、本実施の形態では、センサ部が接続された計測器と計測用パーソナルコンピュータとを接続するためのケーブルを要せずセンサ部60および子機66のみを1人で持ち運んで取り付けることができるものであり、シールド機10の掘進を停止して大掛かりで手間のかかるケーブルの取り回し工事を行う必要が無いため、作業者の負担を減らすとともに、工期を短縮でき、コストダウンを図る上で有利となる。
また、本実施の形態では、ケーブルの配線工事が不要であることから、多数のセンサ部を設置する場合にも容易に対応でき、また、センサ部を緊急に設置する必要が生じた場合でも短い作業時間で簡単にセンサ部を設置することができ有利である。
また、センサ部と計測用パーソナルコンピュータとをケーブルで接続すると、切断などのトラブルを招きやすいが、本実施の形態では無線回線を用いているため、そのようなトラブルの発生がなく有利である。
また、セグメント2の組み付けに関わる物理量のデータを反映してジャッキ装置22の動作を制御すれば、セグメント2の組み付け状態を良好なものとしてシールド工事を行うことができトンネル躯体6の品質を確保する上で有利となる。
【0021】
なお、本実施の形態では、計測用パーソナルコンピュータ32で収集されたデータと、シールド機運転モニタリング用パーソナルコンピュータ34に表示されるジャッキ装置22の動作状態とに基づいて、作業者が目開きや目違いの寸法が許容範囲に収まるように、制御ユニット28を操作して各ジャッキ2202の伸張量などを調整する場合について説明したが、前記収集されたデータに基づいてジャッキ2202の自動制御を行うように制御ユニット28の自動化を図ってもよいことは無論である。
また、本実施の形態では、計測用パーソナルコンピュータ32によってデータを収集する場合について説明したが、計測用パーソナルコンピュータ32をイントラネットまたはインターネットなどのネットワークに接続し、それらネットワークを介して施工現場から離れた場所に設置されたコンピュータや端末から前記セグメントの組み付け状態に関わる物理量のデータをモニタするようにしてもよいことは無論である。
また、本実施の形態では、IEEE802.15.4やZig Beeといった通信規格に準拠した無線電波を用いて無線回線を構成したので、将来的にIEEE802.15.4やZig Beeに示されているメッシュネットワーク型のセンサ部ネットワークに前記無線回線を容易に対応させることができ有利である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態のシールド工法を実施するシールド機10の断面側面図である。
【図2】(A)、(B)はシールド機10の動作説明図である。
【図3】本実施の形態のセグメント取り付け状態のデータ収集システムの構成を示すブロック図である。
【図4】クリップ型変位計62の取り付け説明図である。
【図5】カンチレバー型変位計64の取り付け説明図である。
【符号の説明】
【0023】
2……セグメント、2A……セグメントリング、6……トンネル躯体、10……シールド機、2202……ジャッキ、32……計測用パーソナルコンピュータ、60……センサ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド機の前端によって地山を削孔して穴を掘削するとともに前記シールド機の後部内で、既に組み立てられたトンネル躯体の端部に、複数のセグメントを組み付けてセグメントリングを組み立てることで前記トンネル躯体を延長し、前記組み立てたセグメントリングを前記セグメントリングの周方向に沿って配置された複数のジャッキにより押圧することで前記シールド機を前進させるシールド工法であって、
前記トンネル躯体の端部へのセグメントの組み付け毎に、前記トンネル躯体へ組み付けられたセグメントに、該セグメントの組み付け状態に関わる物理量を検出するセンサ部を着脱可能に取着し、
前記トンネル躯体の長手方向における予め定められた範囲内において前記各センサ部を用いて検出された前記物理量のデータを無線回線を介して、前記シールド機の外部で既に組み立てられたトンネル躯体内の箇所に設けられたデータ収集部で収集する、
ことを特徴とするシールド工法。
【請求項2】
前記データ収集部によって収集された前記データに基づいて前記各ジャッキの動作を制御することを特徴とする請求項1記載のシールド工法。
【請求項3】
前記物理量は、前記セグメントの目開きの寸法あるいは目違いの寸法あるいは前記セグメントの表面応力あるいは前記セグメントの内部応力の値の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載のシールド工法。
【請求項4】
シールド機の前端によって地山を削孔して穴を掘削するとともに前記シールド機の後部内で、既に組み立てられたトンネル躯体の端部に、複数のセグメントを組み付けてセグメントリングを組み立てることで前記トンネル躯体を延長し、前記組み立てたセグメントリングを前記セグメントリングの周方向に沿って配置された複数のジャッキにより押圧することで前記シールド機を前進させる際に、前記トンネル躯体を構成するセグメントの取り付け状態に関わる物理量を示すデータを収集するデータ収集システムであって、
前記トンネル躯体の長手方向における予め定められた範囲内において前記トンネル躯体へ組み付けられたセグメントに着脱可能に取着され該セグメントの組み付け状態に関わる物理量を検出するセンサ部と、
前記シールド機の外部で既に組み立てられたトンネル躯体内の箇所に設けられ、前記各センサ部を用いて検出された前記物理量のデータを無線回線を介して収集するデータ収集部とを備える、
ことを特徴とするセグメント取り付け状態のデータ収集システム。
【請求項5】
前記センサ部の近傍のセグメント箇所に着脱可能に取着されたデータ生成通信部を有し、
前記データ生成通信部は、前記センサ部によって検出される検出信号に基づいて前記物理量のデータの生成と前記データの前記無線回線を介しての送信を行う、
ことを特徴とする請求項4記載のセグメント取り付け状態のデータ収集システム。
【請求項6】
前記物理量は、前記セグメントの目開きの寸法あるいは目違いの寸法あるいは前記セグメントの表面応力の値の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項4記載のセグメント取り付け状態のデータ収集システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−327172(P2007−327172A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156814(P2006−156814)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【Fターム(参考)】