説明

シールド工法または推進工法に用いる添加材およびその製造方法、およびトンネル工法

【課題】滞水砂礫層や砂層におけるシールド工法または推進工法に用いる添加材の原料の液性および、製造された添加材の液性に基づく装置等の腐食の問題を解決するとともに、その製造が容易かつ短時間で行うことができる上、均一性の高い改質土を形成することができる添加材を提供する。
【解決手段】珪酸ソーダと、重炭酸塩と、水と、を混合してゲル化した珪酸質水性物を、粉砕してゾル化した珪酸質ペーストであることを特徴とする、シールド工法または推進工法に用いる添加材。また、珪酸ソーダと、重炭酸塩と、高分子凝集剤と、水と、を混合してゲル化した珪酸質水性物を、粉砕してゾル化した珪酸質ペーストであることを特徴とする、シールド工法または推進工法に用いる添加材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滞水下での砂礫層あるいは砂層を掘削対象とするシールド工法または推進工法において用いる添加材、およびその製造方法に関するものである。また、シールド工法または推進工法を用いて、前記添加材を添加しながら行うトンネル工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル等の掘削に用いられる工法としては、シールド工法や推進工法が挙げられる。これらのトンネル工法は、掘削機の前頭部に隔壁で仕切られた土圧室を設け、カッターで掘削した土砂に作泥材(粘土、ベントナイト、水等)を添加し、混練り翼で強力に練り混ぜることによって、掘削土を不透水性と塑性流動性を有する泥土に改質し、その改質泥土の不透水性と塑性流動性によって切り羽土圧と地下水圧に対抗して掘削部の崩壊を防止するように、掘削機の掘進量と排土量のバランスを計りながら掘進して行われる。
【0003】
しかし、この掘削機による掘削方法を滞水砂礫層に適用すると、前記作泥材を添加した際に当該作泥材が逸出し易く、掘削土中に作泥材を十分に送り込むことができないため、掘削土と作泥材を混練して改質泥土を形成させ、掘削部の崩壊を防止するのが非常に困難である。
【0004】
また、作泥材(粘土、ベントナイト、水等)を滞水砂礫層や砂層で使用した場合には、該作泥材を切り羽へ添加後地下水に希釈され易く、大幅な粘性低下となる場合が多い。すなわち、掘削土を作泥材と混練しても、不透水性と塑性流動性を備えた泥土に改質することができない。このことによって、以下のような問題が発生する。
【0005】
まず、切り羽土圧の安定化が図れないため、地盤沈下、地盤隆起等の危険性が高まる。次に、掘削土の塑性流動性が得られないことによって、掘削機のカッタートルクや推力の急激な上昇による推進低下を招く危険性がある。また、カッタービットの磨耗が早まる虞があり、推進低下を招く危険性がある。更に、掘削土の流動性不足により掘削機内にスムーズ且つ安全に導入することができないため、排土管理が困難となる。
【0006】
上記問題を解決するために、本発明者らは、均一性の高い改質土を形成することができる添加材として珪酸質水性ゾルを用いる方法を提案している(特許文献1および特許文献2)。また、前記珪酸質水性ゾルの添加材を製造する方法としては、珪酸ソーダに硫酸、ポリアクリル酸塩を加え、これを練り崩して製造する方法が実用化されている。
【0007】
【特許文献1】特許第2724775号公報
【特許文献2】特許第3085360号公報
【0008】
ここで、前記珪酸質水性ゾルの添加材は、強酸である硫酸を使用して製造されるため、その製造設備には硫酸による酸性腐食を防止するための耐酸性が要求される。そのため、該製造設備が高コストとなる問題があった。
【0009】
また、通常、前記珪酸質水性ゾルの添加材は、施工現場において珪酸ソーダ、硫酸、ポリアクリル酸塩を混合してゲル化させ、更に粉砕してゾル化して調製(作液)される。この場合、原料を混合してからゲル化するまでに要する時間は、作液水温や気温等により多少の違いはあるものの、平均25分程度である。例えば、1mの添加材調製装置を用いる場合には、添加材として用いられる珪酸質水性ゾルを調製するために約30分を要している。すなわち、前記添加材調製装置の作液能力は2m/hである。
【0010】
一般的な工事においてシールド工法や推進工法を行う場合に必要な添加材の量は、使用する掘削機の大きさや掘削部の土質等にもよるが、例えば下水道工事(直径3000mmシールド掘削機、添加材添加率20vol%、掘削時間20分、1リング幅900mmの場合)においては4.2m/h、地下鉄工事(直径6000mmシールド掘削機、添加材添加率20vol%、掘削時間30分、1リング幅1200mmの場合)においては13.8m/hである。したがって、前述の原料を用いて作液する場合には、添加材調製装置を複数台設置する、もしくは添加材調製装置を大型化する必要があり、その設置場所(スペース)の確保の問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記問題に鑑み、本発明の課題は、滞水砂礫層や砂層におけるシールド工法または推進工法に用いる添加材の原料の液性および、製造された添加材の液性に基づく装置等の腐食の問題を解決するとともに、その製造が容易かつ短時間で行うことができる上、均一性の高い改質土を形成することができる添加材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係るシールド工法または推進工法に用いる添加材は、珪酸ソーダと、重炭酸塩と、水と、を混合してゲル化した珪酸質水性物を、粉砕してゾル化した珪酸質ペーストであることを特徴とするものである。
【0013】
珪酸ソーダは、一般式NaO・nSiO・xHOで表される化学物質であり、水に溶解してアルカリ性を示す。また、重炭酸塩は、水に溶解してアルカリ性を示す。
本発明によれば、珪酸質ペーストの添加材の原料はアルカリ性であるので、該添加材を製造する製造装置等において、酸による腐食の問題が生じない。このことによって、珪酸質ペーストの添加材およびその原料を導入または導出する装置等の酸性腐食を低減することができる。
【0014】
また、珪酸ソーダと重炭酸塩を水に溶解させることによって進行するゲル化反応は、従来の珪酸ソーダと硫酸の反応よりも比較的速やかに進行する。したがって、ゲル化した珪酸質水性物を生成させるまでの時間が短縮されるので、珪酸質ペーストの添加材を短時間で製造することができる。
【0015】
そして、本態様の添加材は、シールド工法または推進工法に用いる添加材として高い性能を発揮する。すなわち、掘削ずりと混合されて、掘削ずりの礫が均一に混合された状態の塑性化土に改質する(このような状態に改質された土を改質土と称する場合がある)。本態様の添加材によって改質された改質土は粘性が高く均一性の高いので、切羽の止水性及び掘削ずりの保水性を確保することができる。
また、珪酸質ペーストの添加材は、鉄分、塩分等を多く含み、イオン性が高い地下水を含む地盤や、風化花崗岩が堆積した地盤に対しても有効である。
【0016】
本発明の第2の態様に係るシールド工法または推進工法に用いる添加材は、珪酸ソーダと、重炭酸塩と、高分子凝集剤と、水と、を混合してゲル化した珪酸質水性物を、粉砕してゾル化した珪酸質ペーストであることを特徴とするものである。
【0017】
本態様によれば、珪酸ソーダ、重炭酸塩および水に加えて、高分子凝集剤を添加して珪酸質ペーストを形成したことにより、添加材としての性能が更に向上する。高分子凝集剤としては、例えばアクリル酸系ポリマーやアクリルアミド系ポリマー等のポリマー類を用いることができる。前記高分子凝集剤を添加して形成した珪酸質ペーストを添加材として用いると、高粘度で均一性が高い改質土を形成させることが可能となり、掘削ずりの保水性を向上させることができる。特に、掘削ずりの礫が多い(礫率が高い)場合に、前記高分子凝集剤の添加量を増加させることによって、前記保水性を安定させることができる。
【0018】
前記掘削ずりの高い保水性によって、該掘削ずりは非常に絡まりの良好な性状となる。このような性状改善により切羽から水が噴出する恐れを確実に防ぐことができる。
その結果、砂層や礫率が低い(例えば70%以下)砂礫層に用いられていた高分子凝集剤を含有しない珪酸質ペーストの添加材を、前記高分子凝集剤の添加によりそのまま高礫率(70%以上)の玉石混じり砂礫層の掘削に用いることが可能となる。
【0019】
また、珪酸ソーダと重炭酸塩に加えて、更に高分子凝集剤を添加しても、これらを水に溶解させることによって進行するゲル化反応は速やかに進行するので、本態様に係る珪酸質ペーストの添加材は第1の態様と同様に短時間で製造可能である。
【0020】
本発明の第3の態様に係るシールド工法または推進工法に用いる添加材の製造方法は、珪酸ソーダの水溶液と、重炭酸塩、または重炭酸塩と高分子凝集剤との混合物、の水溶液と、を混合し、ゲル化した珪酸質水性物を生成し、前記ゲル化した珪酸質水性物を、更に粉砕することによってゾル化させて珪酸質ペーストにすることを特徴とするものである。
【0021】
また、珪酸ソーダの水溶液と重炭酸塩の水溶液、または珪酸ソーダの水溶液と、重炭酸塩と高分子凝集剤との混合物の水溶液を混合することによって進行するゲル化反応は速やかに進行する。例えば、1mの添加材を製造する場合には、前記ゲル化に要する時間は1〜2分で足りる。更にゲル化した珪酸質水性物を粉砕してゾル化させて珪酸質ペーストにするために要する時間は、3〜4分程度であり、4〜5分の短時間で製造可能な添加材とすることができる。
【0022】
すなわち、1時間あたり15〜20mの添加材を作製することが可能となり、従来の硫酸を用いた添加材製造方法(2m/h)よりも製造効率を飛躍的に向上させることができる。このことによって、当該添加材製造装置の小型化が可能となり、省スペース化および低コスト化を図ることができる。製造装置を小型化することによって、掘削現場近く(例えばトンネル内)において添加材製造を行うことも可能となる。
【0023】
本発明の第4の態様に係るトンネル工法は、回転する切羽カッター部と、土圧室と、前記土圧室内の掘削ずりを排出する排出手段と、を備えた掘削機を作動させ、切羽面に添加材を添加しながら地盤を掘進する、トンネル工法であって、前記添加材として、第1の態様または第2の態様に記載の珪酸質ペーストの添加材を用いることを特徴とするものである。
【0024】
本発明によれば、シールド工法または推進工法等によるトンネル工法を用いてトンネルを構築する際に、第1の態様または第2の態様に記載の珪酸質ペーストの添加材によって、掘削ずりを粘度が高く均一性が高い改質土とすることができ、切羽の止水性及び掘削ずりの保水性を向上させることができる。すなわち、掘削ずりは全体に絡まりが良好となり、切羽から水が噴出する恐れを確実に防ぐことができる。
【0025】
本発明の第5の態様に係るトンネル工法は、回転する切羽カッター部と、土圧室と、前記土圧室内の掘削ずりを排出する排出手段と、を備えた掘削機を作動させ、切羽面に添加材を添加しながら地盤を掘進する、トンネル工法であって、前記添加材は、第1の態様または第2の態様に記載の珪酸質ペーストの添加材であり、該添加材を前記切羽面に添加するに際して、当該添加材に希釈水を供給すると共に、該希釈水の供給量を調整することを特徴とするものである。
【0026】
本発明によれば、地盤の掘削途中で該地盤の性状(含水比、礫率等)が変わった場合に、珪酸質ペーストの添加材に希釈水を供給すると共に、該希釈水の供給量を調整することによって、添加材の性状を地盤の性状変化に対応するように調整することができる。すなわち、珪酸質ペーストの添加材を希釈水によって希釈して用いることによって、幅広い含水比、礫率の地盤に対して対応可能となり、地盤の土質の変化によって添加材を変更することなく掘進を行うことができる。
【0027】
本発明の第6の態様に係るトンネル工法は、第4の態様または第5の態様に記載されたトンネル工法において、珪酸ソーダの水溶液と、重炭酸塩、または重炭酸塩と高分子凝集剤との混合物、の水溶液と、の二液を個別のラインで切羽の近くまで送り、前記二液を混合して前記珪酸質ペーストの添加材にして前記切羽面に添加することを特徴とするものである。
【0028】
珪酸ソーダの水溶液と重炭酸塩の水溶液、または珪酸ソーダの水溶液と重炭酸塩と高分子凝集剤との混合物の水溶液、の二液を混合することによって進行するゲル化反応は、極めて速やかに進行するため、混合する二液を個別のラインを用いて切羽の近くまで送り、前記二液を混合して珪酸質ペーストの添加材を形成させ、その添加材を切羽に添加して掘進を行うことができる。
【0029】
このことによって、施工現場において二液を混合して添加材を製造するための混合撹拌槽や、製造した添加材の貯槽が不要となり、省スペース化を図ることができる。更に、珪酸ソーダの水溶液、重炭酸塩の水溶液、重炭酸塩と高分子凝集剤との混合物の水溶液は、いずれの水溶液も珪酸質ペーストよりも粘性が低いため圧送が容易であり、より長距離の圧送が可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、珪酸ソーダと重炭酸塩、または珪酸ソーダと重炭酸塩と高分子凝集剤、を水に溶解させることによって進行するゲル化反応が速やかに進行し、ゲル化した珪酸質水性物が短時間で生成するので、珪酸質ペーストの添加材を短時間で製造することができる。
【0031】
また、本発明に係る珪酸質ペーストの添加材は、珪酸ソーダ、重炭酸塩等のアルカリ性化合物を原料として用いて形成されるので、当該添加材製造装置における酸性腐食の問題が少ない。したがって、該製造装置には硫酸のような強酸に対する耐酸性をもたせる必要がなく、製造装置にかかるコストを低減することができる。
【0032】
シールド工法または推進工法において本発明に係る添加材を用いると、該添加材が掘削ずりと混合されて、粘性が高く均一性の高い改質土を形成するので、切羽の止水性及び掘削ずりの保水性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明に係る珪酸質ペーストの添加材の原料となる珪酸ソーダ、重炭酸塩、および高分子凝集剤について説明する。
【0034】
(1)珪酸ソーダについて
珪酸ソーダは、一般式NaO・nSiO・xHOで表される化学物質であり、水に溶解してアルカリ性を示すものである。NaOとSiOの混合比率により、珪酸ソーダの性状は異なる。一般的には、水ガラスと呼ばれる水飴状の粘性液体や、結晶状態のメタ珪酸ナトリウムおよびその水化物が知られており、掘削する地盤の土質に応じて適した性状の珪酸ソーダを選択することができる。SiO2の含有率は1〜60重量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは3〜30重量%の範囲内である。特に、水飴状の珪酸ソーダは、滞水砂礫層や砂層において使用する添加材の原料として適している上、幅広い土質の地盤に対応することが可能であるため好ましい。
【0035】
(2)重炭酸塩について
重炭酸塩としては、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸カルシウム、重炭酸マグネシウム等が挙げられる。これらは、それぞれの化合物単体で用いても良く、各種重炭酸塩の混合物として用いることもできる。特に、重炭酸ナトリウム、または重炭酸カリウム、または重炭酸ナトリウムと重炭酸カリウムの混合物を原料とすることが好ましい。重炭酸塩は水に溶解してアルカリ性を示す。
【0036】
(3)高分子凝集剤について
高分子凝集剤としては、アクリル酸系ポリマーやアクリルアミド系ポリマー等の公知の高分子凝集剤を用いることができる。アクリル酸系ポリマーとしては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム等が挙げられる。また、アクリルアミド系ポリマーとしては、ポリアクリルアミド(アクリル酸ナトリウム等とアクリルアミドの共重合物)等が挙げられる。ポリアクリルアミドは、カチオン系、アニオン系、ノニオン系のいずれのポリアクリルアミドでも良いが、特にアニオン系ポリアクリルアミドを用いることが好ましい、アクリル酸系ポリマー、アクリルアミド系ポリマー等のポリマーは水に溶解してアルカリ性を示す。なお、高分子凝集剤の種類によっては、該高分子凝集剤が酸性である場合もあるが、一般的な高分子凝集剤は硫酸のような強酸ではない。
【0037】
高分子凝集剤を添加することによって、シールド掘進の対象地盤、すなわち地下水が豊富な砂、砂礫、玉石層等の地盤に対して、その含水比や礫率等の大きな変動があっても他の性能の添加材に取り換える必要なく、そのまま掘削を続行することができ、作業効率が向上すると共にコストの低減も図ることができる。
【0038】
また、高分子凝集剤の分子量は、通常200万〜3000万のものであれば、ほとんどの土質の地盤に対応することができる。特に、500万〜2000万の範囲であれば、シールド工法または推進工法に用いる添加材として安定した性能を発揮させることができる。
【0039】
前記添加材に添加する高分子凝集剤の量は、掘削する地盤の土質に応じて決められるが、0.01〜10kg/mであることが、添加材の性能、および添加材製造時に原料を混合した際の反応性(ゲル化時間が短い)の点で好ましい。更に0.3〜2kg/mの範囲であることが好ましく、特に0.5〜1kg/mの範囲であれば添加材の性能が安定している。
【0040】
<添加材の製造方法>
次に、本発明に係る添加材の製造方法について説明する。図1は、添加材の製造方法を説明するフロー図である。以下に、珪酸ソーダとして3号珪酸ソーダ(SiO2含有率:28.0〜30.0重量%、JIS規格表
K1408)を用い、重炭酸塩として重炭酸カリウムを用い、高分子凝集剤としてアニオン系ポリアクリルアミドを用いた場合について説明する。
【0041】
3号珪酸ソーダを水に溶解させた珪酸ソーダの水溶液と、重炭酸カリウムとアニオン系ポリアクリルアミドの混合物を水に溶解させた重炭酸塩と高分子凝集剤の混合物の水溶液を調製する。
3号珪酸ソーダ、重炭酸カリウム、アニオン系ポリアクリルアミドの添加量は掘削する地盤の土質によって決定され、水溶液中においてゲル化した珪酸質水性物を生成する任意の割合で混合することができる。
【0042】
また、珪酸ソーダを溶解する水の量と、重炭酸塩と高分子凝集剤の混合物を溶解する水の量は、調製する添加材の製造予定量に応じて設定することができる。3号珪酸ソーダは、珪酸ナトリウムの濃厚水溶液であり、水飴状の粘性液体であるため、水に溶解させず、3号珪酸ソーダ自体を珪酸ソーダの水溶液として用いることも可能であるが、水を加えて適度な流動性を持たせることが望ましい。特に、等量の二液を混合することによってゲル化した珪酸質水性物が生成するように水の量を配分することが望ましい。例えば、トータル1リットルの添加材を製造する場合には、3号珪酸ソーダの水溶液および重炭酸カリウムとアニオン系ポリアクリルアミドの混合物の水溶液がそれぞれ0.5リットルになるように調製するのが良い。
【0043】
調製した3号珪酸ソーダの水溶液と重炭酸カリウムとアニオン系ポリアクリルアミドの混合物の水溶液とを混合すると、ゲル化した珪酸質水性物が生成する。このゲル化反応は非常に速やかに進行する。例えば、1mの添加材を製造する場合には、前記ゲル化に要する時間は通常1〜2分である。このゲル化時間は、3号珪酸ソーダの量に対する重炭酸カリウムの量によって多少変化する。3号珪酸ソーダに対して重炭酸カリウムが少ない場合は、ゲル化に4〜5分の時間を要することがあるが、この時間は従来の珪酸ソーダと硫酸の反応(ゲル化時間25分/m)に比して十分短時間である。なお、珪酸ソーダに対して過剰な重炭酸カリウムを添加してもゲル化時間はほとんど変化しない。
【0044】
続いて、ゲル化した珪酸質水性物を、更に撹拌、粉砕してゾル化させることによって、珪酸質ペーストの添加材を形成する。撹拌による前記ゲル化した珪酸質水性物の粉砕は、ホモジナイザー等による強制撹拌によって行うことができる。この強制撹拌は、通常の目安としては、ゾルの粒径が約300μm以下のものを主とする微細粒子になるまで継続するのがよい。このことによって、珪酸質ペーストの流動性が高められるので、掘削機に設けられた添加材導入手段による切羽への添加材の添加を円滑に行うことができる。
【0045】
なお、図2に示すように、ゲル化珪酸質水性物が生成した後に水を加えてもよい。
前記ゲル化は、珪酸ソーダの水溶液および、重炭酸塩と高分子凝集剤の混合物の水溶液の濃度が高いほど速やかに進行する上、生成するゲル化した珪酸質水性物は硬いゲルとして形成される。
【0046】
すなわち、前記二液をやや高濃度に調製することによって、速やかにゲル化珪酸質水性物を生成させることができ、やや硬めに形成された当該ゲル化珪酸質水性物に対して水を加え、強制撹拌によってゾル化した珪酸質ペーストの流動性が得られるようにすることで、効率よく珪酸質ペーストの製造を行うことができる。
【0047】
前記ゲル化後に加える水の量は特に既定しないが、添加材の製造予定量に応じて調整することが望ましい。例えば、添加材の製造予定量の2〜4割程度の水をゲル化後に加えるように調製すると、速やかにゲル化珪酸質水性物を生成させることができる上、ゾル化のための強制撹拌を効率よく行うことができるので好ましい。
【0048】
前記ゲル化後に加える水は、前記ゲル化後であれば、図2に示すように、強制撹拌前(1)、強制撹拌中(2)、強制撹拌後(3)のいずれのタイミングにおいて加えても良い。
なお、強制撹拌後(3)に水を加える場合には、当該加えた水を均一化させるための撹拌が必要となる。
また、強制撹拌前(1)と強制撹拌中(2)、強制撹拌中(2)と強制撹拌後(3)、または強制撹拌前(1)と強制撹拌後(3)の二回に分けて加えることもでき、強制撹拌前(1)、強制撹拌中(2)、強制撹拌後(3)の3回に分けて加えることもできる。
特に、前記ゲル化後、且つ強制撹拌前(1)または強制撹拌中(2)に水を加えてゾル化を行い、一旦強制撹拌を停止し、そのゾル(珪酸質ペースト)の状態によって更に水を添加するか否かを判断し、流動性を調整するとより好ましい。
【0049】
なお、前記ゲル化は1〜2分で起こるが、二液を混合したことによる反応自体は20〜30分の時間をかけて進行する。添加材としての性能を発揮する珪酸質ペーストを形成するためには1〜2分のゲル化時間で足りるが、ゲル化時間を30分程度とれば形成されたゲルはより安定な状態となり、良好な性状の珪酸質ペーストを形成することができる。
また、より硬くしっかりとしたゲル状の珪酸質水性物を生成させた後に、ゾル化させた珪酸質ペーストは、添加材として良好な性状を示す傾向がある。
【0050】
以上のように、3号珪酸ソーダの水溶液と重炭酸カリウムと、アニオン系ポリアクリルアミドの混合物の水溶液と、を混合してゲル化した珪酸質水性物を生成するために要するゲル化時間が短く、1mの添加材を製造する場合では1〜2分であり、更にゲル化した珪酸質水性物を撹拌、粉砕してゾル化させる時間は、3〜4分程度であり、トータル4〜5分の短時間で添加材を製造することができる。
【0051】
すなわち、容量1mの添加材製造装置を用いた場合には、1時間あたり15〜20mの添加材を作製することが可能となり、従来の硫酸を用いた添加材製造方法(2m/h)よりも製造効率を飛躍的に向上させることができる。したがって、当該添加材製造装置の小型化が可能となり、省スペース化および低コスト化を図ることができる。製造装置を小型化することによって、掘削現場近く(例えばトンネル内)において添加材製造を行うことも可能となる。
【0052】
[実施例1]
次に、本発明の実施例に係るシールド工法により、地下にトンネルを掘削する場合について説明する。
本実施例において用いられる掘削機は、従来から用いられているものでよく、その特徴的構造として、回転しながら地盤を掘削できる切羽カッター部と、掘削した土を充満させ得る土圧室と、土圧室内の掘削ずりを排出する排出手段とを備えている。また、前記掘削機は、土圧室内の掘削ずりを撹拌する撹拌手段を備えている。
【0053】
切羽に添加材を添加する添加材導入手段は、添加ラインにより添加材供給プラントと連通されている。前記添加材供給プラントは圧送ポンプを介して添加ラインと接続されている。添加ラインには必要に応じて中継ポンプを設けてもよい。
【0054】
ここで、添加材供給プラントは地上に配置し、長い添加ラインによって前記添加材導入手段と連通することもできるが、本発明に係る添加材は前述の通り製造効率が良く、該添加材の貯留量を少なくすることができるので、添加材供給プラントを小規模化し、地下の施工現場近くに配置することも可能である。その場合には、掘削機と添加材供給プラントとの距離が短くなり、添加ラインを短くすることができる。また、圧送ポンプの容量も小さくて足り、圧送ポンプの小型化を図ることができる。
【0055】
前記添加材導入手段によって切羽面に添加材を添加しながら、切羽カッターを回転させて地盤を掘削する。添加材導入手段は、前記添加材を均一に添加しながら切羽カッターによる掘削を行うことができるように構成されていることが望ましい。例えば、切羽カッターが設けられている面板に、前記添加材の供給口を複数設けることができる。
【0056】
前記添加材を切羽面に添加しながら掘削を行うことによって、切羽面または土圧室内において、掘削ずりの土粒子間および礫間に当該添加材が充填される。土圧室内に充満された掘削ずりと添加材とを撹拌手段によって均一に混合すると、土圧室内に対抗土圧が発生し、これによって切羽土圧及び地下水土圧が抑制され、切羽から水が噴出する恐れを確実に防ぐことができる。
【0057】
切羽面への添加材の添加量は、地盤の有効間隙率または間隙率を目安に行い、排出土砂の礫が均一に混合された状態の塑性化土に改質されるように調節される(以下、改質土と称する)。
【0058】
土圧室内の改質土は、スクリューコンベアまたはリボンスクリュー等の排出手段によって排出される。その際、スクリューの回転制御によって排出手段のスクリュー内にも前記改質土を充満させ、土圧を制御しながら排出ゲートから排出する。これらを連続的に行うことによって掘進が行われる。
【0059】
切羽面への添加材の添加によって、掘削ずりを粘度が高く均一性が高い改質土とすることができ、切羽の止水性及び掘削ずりの保水性を向上させることができる。すなわち、掘削ずりは全体に絡まりが良好となり、切羽から水が噴出する恐れを確実に防ぐことができる。
【0060】
[実施例2]
次に、本発明の実施例に係るシールド工法により、地下にトンネルを掘削する場合について、他の例を挙げて説明する。本実施例は、実施例1に説明したようなシールド工法によって掘削を行う際に、掘削途中で地盤の土質変化があった場合に、添加材を希釈水によって希釈しながら掘削を行う方法である。
本実施例において用いられる掘削機の基本的な構成は、実施例1と同様であるため、その説明は省略する。
【0061】
掘削機による掘進を行うと途中で土質(含水比、礫率等)が変化する場合がある。切羽に添加する添加材は、その土質に応じて変更する必要があるが、本実施例では、前記希釈水を添加材に供給し、その供給量を調整することよって、該添加材の性状をコントロールする。
【0062】
添加材への希釈水の供給は、例えば図3に示すように、添加材貯留タンク3と、希釈水貯留タンク4とをラインで繋ぎ、供給量を流量調整バルブ5、6によって調整しながら添加材1と希釈水2とを合流させ、合流した添加材1と希釈水2とがラインミキサー7により均一に混合されて切羽に添加できるように構成するとよい。
【0063】
珪酸質ペーストの添加材1は、予想される地盤の土質に基づいて、高濃度の珪酸質ペーストを調製しておき、その高濃度珪酸質ペーストを添加材1として用いながら、土質の変化に応じて希釈水2を供給し、該希釈水2の供給量を増減させる。このことによって幅広い範囲の含水率、礫率の地盤に対して対応可能となり、土質の変化によって添加材を変更することなく連続的に掘削を行うことができる。
【0064】
[実施例3]
次に、本発明の実施例に係るシールド工法により、地下にトンネルを掘削する場合について、更に他の例を挙げて説明する。本実施例は、混合することによって添加材を形成する二液を個別のラインを用いて切羽の近くまで圧送し、該切羽直前で二液を混合して添加材を形成させ、その添加材を切羽に添加して掘削を行うシールド工法の例である。
本実施例において用いられる掘削機の基本的な構成は、実施例1と同様であるため、その説明は省略する。
【0065】
本実施例において前記添加材は、珪酸ソーダの水溶液と重炭酸塩の水溶液、または珪酸ソーダの水溶液と重炭酸塩と高分子凝集剤の混合物の水溶液、の二液を個別のラインで切羽の近くまで送り、該切羽の近くで前記二液を混合して珪酸質ペーストを形成させたものである。切羽の近くで形成させた当該珪酸質ペーストの添加材を切羽面に添加して掘削機による掘進を行う。
【0066】
珪酸ソーダの水溶液と重炭酸塩の水溶液の二液を混合して、珪酸質ペーストを形成させる場合を例に挙げて説明する。
珪酸ソーダの水溶液と重炭酸塩の水溶液は、それぞれ別のプラントに貯留されている。珪酸ソーダの水溶液を貯留するプラントと、重炭酸塩の水溶液を貯留するプラントに、それぞれ圧送ポンプを介してラインが接続され、二液が切羽の近くまで圧送される。各ラインには必要に応じて中継ポンプを設けてもよい。
【0067】
個別のラインで切羽の近くまで送られた前記二液は、そのラインの端部(先端)において混合される。例えば、二重管、またはY字管を用いて合流させ、ラインミキサーによって撹拌して二液を混合することができるように構成することができる。
【0068】
前記二液を混合すると速やかにゲル化した珪酸質水性物が生成し、該ゲル化した珪酸質水性物を更に強制撹拌することによってゾル化した珪酸質ペーストが形成される。形成された珪酸質ペーストを添加材として切羽に添加し、掘削機による掘進を行う。
【0069】
すなわち、珪酸ソーダの水溶液と、重炭酸塩の水溶液を混合することによって進行するゲル化反応は、極めて速やかに進行するため、切羽に添加する直前に二液を混合して珪酸質ペーストの添加材を形成させ、その添加材を切羽に添加して掘削を行うことができる。
このことによって、施工現場において前記二液を混合し添加材を製造するための、二液混合撹拌槽や、製造した添加材の貯槽が不要となり、省スペース化を図ることができる。
【0070】
前記重炭酸塩の水溶液の代わりに、重炭酸塩と高分子凝集剤との混合物の水溶液を用いることによって、珪酸ソーダの水溶液と重炭酸塩と高分子凝集剤との混合物の水溶液からなる珪酸質ペーストを形成させることができる。
【0071】
更に、珪酸ソーダの水溶液、重炭酸塩の水溶液、重炭酸塩と高分子凝集剤との混合物の水溶液は、いずれの水溶液も添加材(珪酸質ペースト)より粘性が低いため圧送が容易であり、より長距離の圧送が可能となる。更に、添加材を切羽面に添加するに際して、当該添加材に希釈水を供給し、該希釈水の供給量を調整するように構成することによって、幅広い範囲の含水率、礫率の地盤に対して対応することができる。
【0072】
[添加材の性能評価試験]
本発明に係る添加材の性能評価のための試験(スランプ試験)を行った。本試験は、礫率70%以上の礫率の高い地盤を対象とするものである。
【0073】
<珪酸ソーダの水溶液(水溶液A)の調製>
3号珪酸ソーダ126gを清水に溶解し、0.5リットルの珪酸ソーダ水溶液(以下、この水溶液を水溶液Aと称する場合がある)を調製した。
【0074】
<重炭酸塩とアクリルアミド系ポリマーの混合物の水溶液(水溶液B)の調製>
礫率70%以上の地盤を対象とするため、重炭酸塩と高分子凝集剤の混合物の水溶液を用いた。重炭酸塩として重炭酸カリウム、高分子凝集剤としてアニオン系ポリアクリルアミドを用い、高分子凝集剤(アニオン系ポリアクリルアミド)の添加量の異なる二種類の重炭酸塩と高分子凝集剤の混合物の水溶液(以下、水溶液B1および水溶液B2と称する場合がある)を調製した。
[水溶液B1]:重炭酸カリウム38.5g、アニオン系ポリアクリルアミド1.5gを清水に溶解し、0.5リットルの重炭酸塩と高分子凝集剤の混合物の水溶液とした。
[水溶液B2]:重炭酸カリウム38.5g、アニオン系ポリアクリルアミド1.0gを清水に溶解し、0.5リットルの重炭酸塩と高分子凝集剤の混合物の水溶液とした。
【0075】
<被検地盤>
添加材を添加する被検地盤としては、礫率の高い二種類の地盤[モデルII(礫率70%)およびモデルIII(礫率85%)]を用いた。モデルIIおよびモデルIIIの粒径加積曲線を図4に、モデルIIおよびモデルIIIの地盤の性状を表1に示す。モデルIIおよびモデルIIIの地盤の含水率は、それぞれのモデルについて含水率5%および含水率8%の条件のものを用意した。
【0076】
【表1】

【0077】
<添加材>
添加材としては、前記水溶液Aと前記水溶液B(水溶液B1および水溶液B2)を下記の割合で配合した4種類のについて試験を行った。
【0078】
タイプ1:水溶液A+水溶液B1(50:50)
タイプ2:水溶液A+水溶液B2(50:50)
タイプ3:水溶液A+水溶液B1+清水(40:40:20)
タイプ4:水溶液A+水溶液B2+清水(40:40:20)
【0079】
<スランプ試験>
スランプ試験は、JIS−A1101に準じて行った。即ち、上端内径10cm、下端内径20cm、高さ30cmの円筒状のスランプコーン(試験器)に、地盤に対して添加材を加えた試料(改質土)を入れ、静かにスランプコーンを引き上げた後、引き上げる前のコーン上部からのさがり距離を測定しこれをスランプ(cm)とした。
各被検地盤に対して、タイプ1〜タイプ4の添加材を15vol%または20vol%の添加率で加えて試験1〜試験9を行った。その結果を表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
試験1〜試験6は、同条件の被検地盤(礫率70%、含水率5%)に対して行ったものである。タイプ1の添加材を添加すると、添加率15vol%(試験1)では、改質土の粘性が高く糸を引く状態であり、保水性は優れているものの流動性が不足していた。添加率20vol%(試験2)では、添加材の添加量が増えたことによりスランプは大きくなった(9.0cm)が、改質土の流動性はまだ不十分であった。タイプ1の添加材を水で希釈した添加材であるタイプ3の添加材を用いた場合(試験3および試験4)も、試験1および試験2とほとんど同じような結果となった。
【0082】
タイプ1よりも高分子凝集剤の添加量が少ないタイプ2の添加材を添加率20vol%で添加した場合(試験5)では、スランプが良好(8.0cm)であるとともに、高分子凝集剤の添加量が多い試験2の場合に比して改質土の粘性が低下し、流動性が改善された。更に、タイプ2の添加材を水で希釈した添加材であるタイプ4の添加材を用いた場合(試験6)では、適度なスランプの値を示し、更に改質土の絡まり状態がよく、流動性も確保され、特に良好な改質土の状態であった。
【0083】
試験7および試験8は、試験1〜6と同じモデルIIの地盤であるが、含水率が高い被検地盤(礫率70%、含水率8%)について試験を行ったものである。
タイプ4の添加材を用い、添加率15vol%に設定した試験7では、適度なスランプの値を示したが、改質土としては糸を引く状態で、全体の絡まりがやや不十分であった。
試験7と同じタイプ4の添加材を用い、添加率を20vol%に増加した試験8は、全体的に改質土の絡まりが良い状態であり、流動性も確保され、特に良好な改質土の状態であった。
【0084】
試験9は、礫率の高いモデルIII(礫率85%)を用いた試験である。タイプ4の添加材を添加率20vol%で添加することによって、スランプの値が大きくばらけ易いが、改質土の絡まりは良い状態であった。
【0085】
以上のように、本発明に係る添加材は、礫率70%以上の地盤に対して良好な改質土を形成させることが可能であるとともに、礫率および含水比が変化した場合でも、該添加材を希釈水によって希釈して用いたり、高分子凝集剤の含有量を調整したりすることによって、改質土の性状(土性値)を容易に調整することができる。
【0086】
特に、本発明に係る添加材は、礫率85%(細粒分0%)という高礫率の地盤に対して用いた場合(試験9)においても良好な改質土を形成することでき、多様な地盤性状に対応することが可能であると言える。
このように、添加材の添加量を調整することによって、改質土の保水性を確保するとともに、ポンプによる圧送を行うことができる流動性をもたせることができる。このことによって、礫率85%のような高礫率の地盤においても掘削した土砂(改質土)を圧送により排出することが可能となり、作業効率を大幅に向上させることができる。
【0087】
更に、地盤の含水比が高い(8%など)の場合でも、土性値は変わることなく改良が可能であり、地下水の量による影響を受けにくいと考えられる。
なお、図4および表1に示すモデルI(礫率52%)のような、礫率の低い地盤に対しては、高分子凝集剤を添加しない添加材を用いることも可能である。
【0088】
本発明によれば、掘削機による掘削の対象地盤、すなわち地下水が豊富な砂、砂礫、玉石層等の地盤において、その含水比や礫率等の大きな変動があっても、添加材の添加率の増減、希釈水の添加、高分子凝集剤の含有量の調整等によって、改質土の性状(土性値)を容易に調整することができるので、他の性能の添加材に取り換える必要なくそのまま掘削を続行することができ、作業効率が向上すると共にコストの低減も図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、切羽面に添加材を添加しながら地盤を掘進するシールド工法または推進工法によってトンネルを構築するトンネル工法に利用可能である。また、前記シールド工法または前記推進工法において用いる添加材、およびその製造方法として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明に係る添加材の製造方法の一例を示すフロー図である。
【図2】本発明に係る添加材の製造方法の他の例を示すフロー図である。
【図3】実施例2における添加材への希釈水供給方法の一例を説明する図である。
【図4】被検地盤(モデルI〜モデルIII)の粒径加積曲線を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
1 添加材、 2 希釈水、
3 添加材貯留タンク、 4 希釈水貯留タンク、
5、6 流量調整バルブ、 7 ラインミキサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪酸ソーダと、重炭酸塩と、水と、を混合してゲル化した珪酸質水性物を、粉砕してゾル化した珪酸質ペーストであることを特徴とする、シールド工法または推進工法に用いる添加材。
【請求項2】
珪酸ソーダと、重炭酸塩と、高分子凝集剤と、水と、を混合してゲル化した珪酸質水性物を、粉砕してゾル化した珪酸質ペーストであることを特徴とする、シールド工法または推進工法に用いる添加材。
【請求項3】
珪酸ソーダの水溶液と、
重炭酸塩、または重炭酸塩と高分子凝集剤との混合物、の水溶液と、
を混合し、ゲル化した珪酸質水性物を生成し、
前記ゲル化した珪酸質水性物を、更に粉砕することによってゾル化させて珪酸質ペーストにすることを特徴とする、シールド工法または推進工法に用いる添加材の製造方法。
【請求項4】
回転する切羽カッター部と、土圧室と、前記土圧室内の掘削ずりを排出する排出手段と、を備えた掘削機を作動させ、切羽面に添加材を添加しながら地盤を掘進する、トンネル工法であって、
前記添加材として、請求項1または2に記載の珪酸質ペーストの添加材を用いることを特徴とする、トンネル工法。
【請求項5】
回転する切羽カッター部と、土圧室と、前記土圧室内の掘削ずりを排出する排出手段と、を備えた掘削機を作動させ、切羽面に添加材を添加しながら地盤を掘進する、トンネル工法であって、
前記添加材は、請求項1または2に記載の珪酸質ペーストの添加材であり、該添加材を前記切羽面に添加するに際して、当該添加材に希釈水を供給すると共に、該希釈水の供給量を調整することを特徴とする、トンネル工法。
【請求項6】
請求項4または5に記載されたトンネル工法において、
珪酸ソーダの水溶液と、
重炭酸塩、または重炭酸塩と高分子凝集剤との混合物、の水溶液と、
の二液を個別のラインで切羽の近くまで送り、前記二液を混合して前記珪酸質ペーストの添加材にして前記切羽面に添加することを特徴とする、トンネル工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−308868(P2008−308868A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157166(P2007−157166)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000148346)株式会社錢高組 (67)
【出願人】(390006758)株式会社立花マテリアル (17)
【Fターム(参考)】