シールド掘削用壁体
【課題】トンネル掘進用立坑においてシールド掘進機による切削容易性を確保した上で、更に、斯かる切削容易壁体の土圧、水圧に対する強度を保証したシールド掘削用壁体を提供する。
【解決手段】シールド掘進機300の発進又は到達のための発進到達部を有するトンネル掘進用立坑200におけるシールド掘削用壁体203であって、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より大きい領域に渡って設置された、シールド掘進機300にて切削容易な切削容易壁体210と、切削容易壁体210の内壁面210aの少なくとも一部の領域を水平方向及び/又は鉛直方向に横断して、且つ、切削容易壁体210と一体に設置された、シールド掘進機300にて切削容易な細長形状の支持体30と、を有する。
【解決手段】シールド掘進機300の発進又は到達のための発進到達部を有するトンネル掘進用立坑200におけるシールド掘削用壁体203であって、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より大きい領域に渡って設置された、シールド掘進機300にて切削容易な切削容易壁体210と、切削容易壁体210の内壁面210aの少なくとも一部の領域を水平方向及び/又は鉛直方向に横断して、且つ、切削容易壁体210と一体に設置された、シールド掘進機300にて切削容易な細長形状の支持体30と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、地中を掘削するシールド掘進機の発進又は到達のための発進到達部を有するトンネル掘進用立坑に関するものであり、特に、トンネル掘進用立坑におけるシールド掘進機による切削容易なシールド掘削用壁体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図22に示すように、例えば鉄筋コンクリート製建造物であるトンネル掘進用立坑200は、例えば、ケーソン工法、SMW(ソイルミキシングウォール)工法などにより鉄筋コンクリート製などの立坑壁体201及び底板202などを造成して構築されるが、立坑200のシールド掘進機300が発進又は到達する鉄筋コンクリート製などの建造物の一部開口部分には、シールド掘進機300により掘削が可能なように、シールド掘削用壁体203が構築されることが提案され、又実施されている。シールド掘削用壁体203を切削容易なモルタルなどで作製することもできるが、該シールド掘削用壁体203として繊維補強コンクリート壁体を使用することが提案され、又実施されている。
【0003】
つまり、図23に示すように、例えばSMW工法によれば、立坑200の壁体201は、H型鋼或いは箱形鋼などの鋼部材101とされる打込部材100にて構築されているが、その一部であるシールド掘進機300により切削可能なシールド掘削用壁体203は、細長形状の縦方向に延在するシールド掘削用繊維補強材1を横方向に所定の間隔にて配列して構成される。シールド掘削用繊維補強材1としては、従来種々の構造が提案されている。
【0004】
特許文献1には、図24及び図25に示すように、切削可能なシールド掘削用繊維補強材1を備えた立坑壁用部材、即ち、土留め壁材100が記載されている。
【0005】
シールド掘削用繊維補強材1は、一対の上下方向に延在する中空FRP(繊維強化樹脂)部材1A、1B及びスペーサ1Cを有している。また、シールド掘削用繊維補強材1は、その上下両端部にH型鋼の継手金具(固定金具)10が接続されており、この継手金具10により、シールド掘削用繊維補強材1の上部及び下部に配置された各H型鋼101(図22、図23)と接続され、土留め壁材100が作製される。
【0006】
土留め壁材100は、図23に示すように、泥水溝(立坑用溝)204内に建て込まれ、溝内の間隔部にソイルモルタル、モルタル、又は、コンクリート等の経時硬化性材料(以下、「セメント硬化体」という。)205が充填されて硬化される。
【0007】
土留め壁材100を構成する一対の中空FRP部材1(1A、1B)及びスペーサ1Cは、シールド掘削機300の従来のビット301を備えたカッターヘッドで容易に切削することが可能であり、カッターヘッドに特別なビットを取り付けて切削する必要はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−38870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記構成の土留め壁材100を使用した立坑壁203は、シールド掘進機300により掘削が可能であるという特長を有しているが、次のような問題があることが分かった。
【0010】
つまり、図27に示すように、大型のシールド掘進機300を使用した場合には、シールド掘削機300の切削領域、即ち、切削開口直径(Ds)は大となり、切削可能領域を必然的に大とせざるを得ない。しかしながら、場合によっては、切削可能領域(切削可能直径Dw)を構成する切削容易壁体210の壁厚(Tw)を充分に厚く造成することができないことがあり、この場合は、土圧、水圧に対する切削容易壁体自体の強度を増強する必要がある。
【0011】
このために、切削容易壁体210を構成する繊維補強材1に使用する材料として、より高強度の材料をより多量に使用することも考えられるが、壁体の切削容易性を阻害したり、或いは、繊維補強材1の作製の手間及び製造コストの増大をもたらすことが考えられる。
【0012】
そこで、本発明の目的は、シールド掘削用壁体を備えたトンネル掘進用立坑においてシールド掘進機による切削容易性を確保した上で、更に、シールド掘削用壁体における切削容易壁体の土圧、水圧に対する強度を保証したシールド掘削用壁体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は本発明に係るシールド掘削用壁体にて達成される。要約すれば、本発明は、シールド掘進機の発進又は到達のための発進到達部を有するトンネル掘進用立坑におけるシールド掘削用壁体であって、
シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域に渡って設置された、シールド掘進機にて切削容易な切削容易壁体と、
前記切削容易壁体の内壁面の少なくとも一部の領域を水平方向及び/又は鉛直方向に横断して、且つ、前記切削容易壁体と一体に設置された、シールド掘進機にて切削容易な細長形状の支持体と、
を有することを特徴とするシールド掘削用壁体である。
【0014】
本発明の一実施態様によると、前記支持体は、前記切削容易壁体の内壁面の少なくとも上方及び/又は下方領域であって、且つ、シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域から小さい領域に渡って前記切削容易壁体と一体に設置される。
【0015】
本発明の他の実施態様によると、前記支持体は、前記切削容易壁体の内壁面の少なくとも左方及び/又は右方領域であって、且つ、シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域から小さい領域に渡って前記切削容易壁体と一体に設置される。
【0016】
本発明の他の実施態様によると、前記支持体は、前記切削容易壁体の内壁面の少なくとも略中央領域であって、且つ、切削容易壁体の直径方向に横断して前記切削容易壁体と一体に設置される。
【0017】
本発明の他の実施態様によると、前記支持体は、前記切削容易壁体の内壁面の上方及び下方領域であって、且つ、シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域から小さい領域に渡って前記切削容易壁体と一体に設置されるか、又は、
前記支持体は、前記切削容易壁体の内壁面の少なくとも左方及び右方領域であって、且つ、シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域から小さい領域に渡って前記切削容易壁体と一体に設置され、
前記上方及び下方、又は、左方及び右方に設置された前記支持体の間の空間領域を、
(a)セメント硬化体、
(b)繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体、
(c)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形の柱状体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体、又は、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の中実柱状体、
(d)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形又は多角形の柱状体にて補強されたセメント硬化体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体にて補強されたセメント硬化体、又は、繊維強化樹脂製ロッドにて補強された断面が多角形若しくは丸形のセメント硬化体、
(e)繊維強化樹脂製の板材、ロッド材、若しくは、その組み合わせた材料、
(f)ガラス繊維強化ウレタン、又は、
(g)木材、
で埋める。
【0018】
本発明の他の実施態様によると、前記支持体は、
(a)セメント硬化体、
(b)繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体、
(c)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形の柱状体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体、又は、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の中実柱状体、
(d)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形又は多角形の柱状体にて補強されたセメント硬化体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体にて補強されたセメント硬化体、又は、繊維強化樹脂製ロッドにて補強された断面が多角形若しくは丸形のセメント硬化体、又は、
(e)ガラス繊維強化ウレタン、
で作製する。
【0019】
本発明の他の実施態様によると、前記切削容易壁体は、
(a)セメント硬化体、
(b)繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体、
(c)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形の柱状体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体、又は、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の中実柱状体、又は、
(d)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形又は多角形の柱状体にて補強されたセメント硬化体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体にて補強されたセメント硬化体、又は、繊維強化樹脂製ロッドにて補強された断面が多角形若しくは丸形のセメント硬化体、
で構築する。
【0020】
本発明の他の実施態様によると、前記繊維強化樹脂は強化繊維に樹脂を含浸して構成され、前記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維、ボロン繊維等の無機繊維;チタン、スチール等の金属繊維;アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン、ポリアセタール、PBО、高強度ポリプロピレン等の有機繊維;から選択されるいずれかの繊維であるか、或いは、前記繊維を複数種混入したハイブリッドタイプとされ、
前記樹脂は、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、常温硬化型エポキシ樹脂、熱硬化型エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、若しくは、MMA等のラジカル反応系樹脂を少なくとも一種以上含むもの、又は、これら樹脂を発泡させたものである。
【0021】
本発明の他の実施態様によると、前記セメント硬化体は、
(a)モルタル、
(b)ソイルモルタル、
(c)コンクリート、
(d)発泡ミルク、又は、
(e)モルタル、ソイルモルタル、又はコンクリートを発泡させたもの、
である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、シールド掘削用壁体を備えたトンネル掘進用立坑においてシールド掘進機による切削容易性を確保した上で、更に、シールド掘削用壁体における切削容易壁体の土圧、水圧に対する強度を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るシールド掘削用壁体の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明に係るシールド掘削用壁体の一実施態様を説明する正面図である。
【図3】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する正面図である。
【図4】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する正面図である。
【図5】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する正面図である。
【図6】本発明に係るシールド掘削用壁体の一実施態様を説明する概略構成断面図である。
【図7】図7(a)は、シールド掘削用壁体に使用する支持体の一実施態様の斜視図であり、図7(b)は、横断面図である。
【図8】図8(a)は、シールド掘削用壁体に使用する支持体の他の実施態様の斜視図であり、図8(b)は、横断面図である。
【図9】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する概略構成断面図である。
【図10】図10(a)は、シールド掘削用壁体に使用する支持体の他の実施態様の正面図であり、図10(b)は、側面図である。
【図11】図10に示すシールド掘削用壁体に使用する支持体の横断面図である。
【図12】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する概略構成断面図である。
【図13】シールド掘削用壁体に使用する支持体の他の実施態様の斜視図である。
【図14】シールド掘削用壁体に使用する支持体の他の実施態様の斜視図である。
【図15】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する概略構成断面図である。
【図16】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する概略構成断面図である。
【図17】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する概略構成断面図である。
【図18】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する概略構成断面図である。
【図19】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する概略構成断面図である。
【図20】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する概略構成断面図である。
【図21】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する概略構成断面図である。
【図22】従来の立坑の構造を説明する概略構成断面図である。
【図23】従来の立坑壁の構造を説明する概略構成断面図である。
【図24】従来の繊維強化樹脂製補強材の一例を説明する斜視図である。
【図25】図24の繊維強化樹脂製補強材の横断面図である。
【図26】本発明にて使用し得る従来の繊維強化樹脂製補強材等を説明する断面図である。
【図27】従来の立坑壁の構造を説明する概略構成断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るシールド掘削用壁体を図面に則して更に詳しく説明する。
【0025】
実施例1
図1〜図5を参照して、本発明のトンネル掘進用立坑200におけるシールド掘削用壁体203について説明する。
【0026】
尚、図2〜図5は、先に図23を参照して説明した立坑壁体の正面図と同様の図であり、同じ部材には同じ参照番号を付して、先の説明を援用し、詳しい説明は省略する。
【0027】
本発明のトンネル掘進用立坑200及びシールド掘削用壁体203の全体構成は、図22、図23を参照して説明した従来のトンネル掘進用立坑200及びシールド掘削用壁体203と同様の構成とされるので、図22、図23をも参照されたい。
【0028】
本発明は、シールド掘進機300の発進又は到達のための発進到達部を有する、例えば鉄筋コンクリート製建造物とされるトンネル掘進用立坑200におけるシールド掘削用壁体203である。本発明のシールド掘削用壁体203は、
(a)シールド掘進機300の切削開口直径Dsより大きい領域(直径Dw)に渡って設置された、シールド掘進機300にて切削容易な切削容易壁体210と、
(b)切削容易壁体210の内壁面210a(即ち、立坑内面側の壁面)の少なくとも一部の領域を水平方向及び/又は鉛直方向に横断して、且つ、前記切削容易壁体210と一体に設置されたシールド掘進機にて切削容易な支持体30(30A、30B)と、
を有する。
【0029】
本発明のシールド掘削用壁体203において特徴部を構成する支持体30(30A、30B)は、詳しくは、後述するように、従来、切削容易壁部材として使用されている、例えば、上述の図24、図25に示すような、シールド掘進機300による切削容易な長さ(L)、幅(W)とされる細長部材(土留め壁材)100を好適に使用することができる。勿論、支持体30は、このような細長部材100を複数組み合わせることによって構成することができる。
【0030】
図1〜図5を参照して本発明の実施態様について説明する。図1は、トンネル掘進用立坑200における本発明に係るシールド掘削用壁体203の概略構成を示す。図2〜図5は、上述したように、先に説明した図23と同様の図であり、トンネル掘削用壁体203を示す。
【0031】
図1、図2を参照して本発明の第1の実施態様について説明すると、図24、図25に示す長さ(L)、幅(W)の細長部材100と同様の構成の支持体30(30A、30B)が、図1、図2に示すように、水平方向に延在するように配置して、且つ、切削容易壁体210の内壁面210a、即ち、シールド掘進機300が設置される側の壁面210aの上方及び下方領域に設置される。また、上方に配置した支持体30Aは、上下方向にシールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より大きい領域(直径Ds領域より外方領域)から小さい領域(直径Ds領域内)に渡って一体に設置されるのが好ましい。即ち、支持体30の幅(W)は、切削容易壁体210の上下方向にて、上方の支持体30Aについて言えば、支持体30Aの上端縁30aは、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より大きい外方領域に存在し、支持体30Aの下端縁30bは、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より小さい内方領域に存在している。場合によっては、支持体30Aの上方端縁30a及び下方端縁30bがシールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より小さい内方領域に存在していても良い。
【0032】
通常、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)は、500〜16000mmとされ、支持体30としては、シールド掘進機300による掘削が容易な領域を提供するに十分な長さ(L)、幅(W)とされ、長さ(L)が1000〜20000mm、幅(W)が100〜8000mmとされる。従って、図2にて、上方支持体30Aの上端縁30aの切削開口直径(Ds)からの外方領域への突出長さ(H1)は、0〜5000mm、内方領域への突出長さ(H2)は、100〜8000mmとされる。
【0033】
下方の支持体30Bについても同様であり、支持体30Bの幅(W)は、切削容易壁体210の上下方向にて、支持体30Bの上端縁30aは、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より小さい内方領域に存在し、支持体30Bの下端縁30bは、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より大きい外方領域に存在している。場合によっては、支持体30Bの上方端縁30a及び下方端縁30bがシールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より小さい内方領域に存在していても良い。
【0034】
本発明の第2の実施態様によれば、支持体30(30A、30B)は、図2にて、切削容易壁体210の上方或いは下方のいずれか一方の領域に設置することもできる。
【0035】
また、本発明の第3の実施態様によれば、図3に示すように、切削容易壁体の上下方向略中央部領域に、水平方向直径方向に延在して設置することもできる。
【0036】
上記第1〜第3の実施態様に構成とすることにより、即ち、切削容易壁体210の上下領域に支持体30(30A、30B)を設置することにより、図1に示すように、切削容器壁体210の曲げスパンSpを小さくすることができる。つまり、切削容易壁体210に作用する断面力(曲げモーメント、せん断力)を小さくすることができ、切削容易壁体210の土圧、水圧に対する強度を大幅に増大することができる。
【0037】
従って、例え、切削可能領域(直径Dw)(通常、直径Dwは、直径Dsより200〜500mmだけ大とされる。)を構成する切削容易壁体210の壁厚Twを充分に厚く造成することができない場合であっても、切削容易壁体210を構成する壁体材料として、より高強度の材料をより多量に使用すること等の必要はない。本発明の構成にて、壁体210の切削容易性を阻害したり、或いは、壁体210の作製の手間及び製造コストの増大をもたらすことが回避される。
【0038】
上記第1〜第3の実施態様の説明では、支持体30(30A、30B)は、切削容易壁体210の内壁面の少なくとも上方及び/又は下方領域に設置されるものとして説明したが、図4に示すように、本発明の第4の実施態様によると、上記長さ(L)、幅(W)の細長部材とされる支持体30(30A、30B)を鉛直方向に延在して配置して、且つ、切削容易壁体210の内壁面、即ち、シールド掘進機300が設置される側の壁面210aにおいて左方及び右方領域に設置することができる。その他の構成は、先に説明した第1〜第3の実施態様と同様である。
【0039】
つまり、支持体30(30A、30B)は、左右方向にシールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より大きい領域から小さい領域に渡って一体に設置されるのが好ましい。即ち、支持体の幅(W)は、切削容易壁体210の左右方向にて、左側の支持体30Aについて言えば、支持体30Aの左端縁3aは、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より大きい外方領域に存在し、支持体30Aの右端縁30bは、シールド掘進機の切削開口直径(Ds)より小さい内方領域に存在している。勿論、支持体30Aの左方端縁30a及び右方端縁30bがシールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より小さい内方領域に存在していても良い。
【0040】
右方の支持体30Bについても同様であり、支持体30Bの幅(W)は、切削容易壁体210の左右方向にて、支持体30Bの左端縁3aは、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より小さい内方領域に存在し、支持体30Bの右端縁30bは、シールド掘進機の切削開口直径Dsより大きい外方領域に存在している。勿論、支持体30Bの左方端縁30a及び右方端縁30bがシールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より小さい内方領域に存在していても良い。
【0041】
また、第5の実施態様によれば、支持体30は、切削容易壁体210の左方或いは右方のいずれかの領域に設置することもでき、また、第6の実施態様によれば、図5に示すように、切削容易壁体210の左右方向略中央部に設置することもできる。
【0042】
第4〜第6の実施態様においても、シールド掘進機の切削開口直径Dsと、長さ(L)、幅(W)の支持体30との配置関係は、先に説明した第1〜第3の実施態様と同様である。
【0043】
この第4〜第6の実施態様においても、即ち、切削容易壁体210の左右領域に支持体30(30A、30B)を設置することにより、上述したと同様に、曲げスパン(Sp)を小さくすることができる。つまり、切削容易壁体210に作用する断面力(曲げモーメント、せん断力)を小さくすることができ、切削容易壁体210の土圧、水圧に対する強度を大幅に増大することができ、先の実施態様と同様の効果を奏し得る。
【0044】
本発明の他の実施態様によると、必要に応じて、上記第1〜第6の実施態様の構成を適宜組み合わせた構成とすることもできる。この構成により、切削容易壁体210の強度を更に向上させることができる。
【0045】
次に、トンネル掘削用立坑におけるシールド掘進機による切削容易な、本発明に係るシールド掘削用壁体203を構成する各部材について説明する。
【0046】
(切削容易壁体)
本発明に係るシールド掘削用壁体203における切削容易壁体210は、従来提案されている種々の構造とすることができる。切削容易壁体210は、例えば、図22〜図25等を参照して説明したようにして構築される。
【0047】
つまり、図22、図23に示すように、例えばSMW工法によれば、立坑200の壁体201は、H型鋼或いは箱形鋼などの鋼部材101とされる打込部材にて構築されているが、その一部であるシールド掘進機300により切削可能なシールド掘削用壁体203は、細長形状のシールド掘削用繊維補強材1を縦方向に所定の間隔にて配列して構成される土留め壁材100で構築される。シールド掘削用繊維補強材1としては、従来種々の構造が提案されている。
【0048】
図24、図25に示すように、シールド掘削用繊維補強材1は、一対の上下方向に延在する中空FRP(繊維強化樹脂)部材1A、1B及びスペーサ1Cを有している。また、シールド掘削用繊維補強材1は、その上下両端部にH型鋼の継手金具10が接続されており、この継手金具10により、シールド掘削用繊維補強材1の上部及び下部に配置された各H型鋼101(図22、図23)と接続され、土留め壁材100が作製される。
【0049】
土留め壁材100は、図23に示すように、泥水溝(立坑用溝)204内に建て込まれ、溝内の間隔部にソイルモルタル、モルタル、又は、コンクリート等の経時硬化性材料(セメント硬化体)205が充填されて硬化される。
【0050】
土留め壁材100を構成する一対の中空FRP部材1(1A、1B)及びスペーサ1Cは、シールド掘削機300の従来のビット301を備えたカッターヘッドで容易に切削することが可能であり、カッターヘッドに特別なビットを取り付けて切削する必要はない。
【0051】
切削容易壁体210としては、上記従来構成のシールド掘削用繊維補強材1、更には、従来の当業者には周知の様々な繊維補強材を使用することができる。勿論、切削容易壁体210は、図24の繊維補強材1と同様の矩形断面を有した柱状体のセメント硬化体を使用して構築することもできる。また、当業者には周知のように、セメント硬化体を、種々の形状、構成とされる、強化繊維に樹脂を含浸して構成される繊維強化樹脂にて補強して作製することもできる。
【0052】
つまり、切削容易壁体210としては、図26に示すような壁部材、つまり、
(a)セメント硬化体22(図26(a))、
(b)繊維強化樹脂製の筋材24(24a、24b)にて補強されたセメント硬化体22(図26(b))、
(c)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形の柱状体25(図26(c))、繊維強化樹脂製の断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形の管状体25(図26(d)、(e))、又は、繊維強化樹脂製の断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形の中実柱状体25(図26(f)、(g))、又は、
(d)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形又は多角形(例えば矩形)の柱状体25にて補強されたセメント硬化体22(図26(h)、(i))、繊維強化樹脂製の断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形の管状体25にて補強されたセメント硬化体22(図26(j)、(k))、又は、断面が例えば矩形若しくは丸形の繊維強化樹脂製ロッド25にて補強された断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形のセメント硬化体22(図26(l)、(m))、
で作製することができる。
【0053】
また、セメント硬化体は、
(a)モルタル、
(b)ソイルモルタル、
(c)コンクリート、
(d)発泡ミルク、又は、
(e)モルタル、ソイルモルタル、又はコンクリートを発泡させたもの、
とすることができる。
【0054】
繊維強化樹脂における強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維、ボロン繊維等の無機繊維;チタン、スチール等の金属繊維;アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン、ポリアセタール、PBО、高強度ポリプロピレン等の有機繊維;から選択されるいずれかの繊維であるか、或いは、前記繊維を複数種混入したハイブリッドタイプとされる。
【0055】
又、樹脂としては、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、常温硬化型エポキシ樹脂、熱硬化型エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、若しくは、MMA等のラジカル反応系樹脂を少なくとも一種以上含むもの、又は、これら樹脂を発泡させたものを使用することができる。
【0056】
(支持体)
本発明の支持体30としては、図24〜図26を参照して上述したような、従来切削容易壁体210を構築する際に使用した壁部材と同様のシールド掘削用部材1を使用することができる。
【0057】
つまり、支持体30は、
(a)セメント硬化体22(図26(a))、
(b)繊維強化樹脂製の筋材24(24a、24b)にて補強されたセメント硬化体22(図26(b))、
(c)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形の柱状体25(図26(c))、繊維強化樹脂製の断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形の管状体25(図26(d)、(e))、又は、繊維強化樹脂製の断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形の中実柱状体25(図26(f)、(g))、又は、
(d)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形又は多角形(例えば矩形)の柱状体25にて補強されたセメント硬化体22(図26(h)、(i))、繊維強化樹脂製の断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形の管状体25にて補強されたセメント硬化体22(図26(j)、(k))、又は、断面が例えば矩形若しくは丸形の繊維強化樹脂製ロッド25にて補強された断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形のセメント硬化体22(図26(l)、(m))、更には、図26には示していないが、
(e)ガラス繊維強化ウレタン、
で構築することができる。
【0058】
勿論、支持体30を繊維強化樹脂製補強材を使用して作製する際に使用する強化繊維及び樹脂は、上記切削容易壁体210を構築する際の繊維補強材に使用した強化繊維及び樹脂と同様とされる。
【0059】
以下に、支持体30の具体例の幾つかについて説明する。
【0060】
具体例1
支持体30(30A、30B)は、図1及び図7(a)、(b)に示すように、断面矩形状とされる左右方向に延在するセメント硬化体とされる細長部材1(図26(a)の構成に相当)を有し、その左右両端部にH型鋼の固定金具(継手金具)10が接続されている。支持体30は、この固定金具10を介して立坑壁体201の部分のH型鋼101(図2)などと接続され、支持体30がシールド掘削用壁体203に一体的に固定される。
【0061】
具体例2
支持体30は、先に、図24及び図25を参照して説明した、切削容易壁体210を造成する際に使用したシールド掘削用繊維補強材(土留め壁材)100と同様の構成とすることができる。
【0062】
つまり、図6、図8(a)、(b)に示すように、支持体30は、繊維補強材で(図26(d)の構成に相当)ある一対の左右方向に延在する中空FRP部材1A、1B及びスペーサ1Cを有している。また、繊維補強材1は、その左右両端部にH型鋼の固定金具10が接続されており、支持体30は、この固定金具10により、立坑壁体201の部分のH型鋼101(図2)などと接続され、支持体30がシールド掘削用壁体203に一体的に固定される。
【0063】
具体例3
支持体30は、図9〜図11に示すように、補強筋24として、強化繊維に樹脂を含浸して作製された繊維強化樹脂製の筋材、即ち、主筋(FRPロッド)24a及びスターラップ筋(FRPスターラップ)24bを、例えば、籠状に組み立て、型枠内に設置して、セメント硬化体22を充填することにより作製される繊維補強材1(図26(b)の構成に相当)を有している。
【0064】
繊維補強材1の左右方向には、H型鋼などとされる固定金具10が接続されている。
【0065】
支持体30は、この固定金具10により、立坑壁体201の部分のH型鋼101(図2)などと接続され、支持体30がシールド掘削用壁体203に一体的に固定される。
【0066】
具体例4
支持体30は、図12、図13に示すように、シールド掘進機300により切削可能な、断面がI形又はH形の繊維強化樹脂製補強材1と、繊維強化樹脂製補強材1の上下両端に固定された固定金具10とを有する。
【0067】
つまり、繊維強化樹脂製補強材1は、所定の幅の平面部を有し、長手軸線方向に延在する複数のウェブ材2、3、4を、所定の横断面形状に、本実施例では、H形若しくはI形形状に一体に成形した繊維強化樹脂材である。即ち、本実施例にて、繊維強化樹脂製補強材1は、所定の幅にて長手軸線方向に沿って延在する平板状のウェブ材、即ち、中央ウェブ材2と、中央ウェブ材2の幅方向両端部において中央ウェブ材2に対して直交配置して長手軸線方向に沿って延在し、中央ウェブ材2と一体に形成された平板状のウェブ材、即ち、端ウェブ材3、4とにて形成される。ウェブ材3、4の平面部がシールド掘進機300のシールド掘進方向Xに対して略直交して配置される。
【0068】
支持体30は、固定金具10により、立坑壁体201の部分のH型鋼101(図2)などと接続され、支持体30がシールド掘削用壁体203に一体的に固定される。
【0069】
上記説明した具体例4では、繊維強化樹脂製補強材1は、図13に示すように、長手軸線方向に延在する所定の幅の平面部を有する複数のウェブ材2、3、4を、横断面形状がH形若しくはI形形状となるように一体に成形した繊維強化樹脂材(図26(c)の構成に相当)であるとして説明した。
【0070】
しかし、本発明の繊維強化樹脂製補強材1は、例えば、図14に示すように、4つのウェブ材を断面形状が矩形状(即ち、箱形)の中空管状体となるように、互いに接続することができる。即ち、該繊維補強材1は、図26(d)の構成に相当する。
【0071】
更には、上記支持体30は、図15に示すように、H型鋼をセメント硬化体で埋めることもできる(図26(h)の構成に相当)。更に、図14の箱形支持体の内部にはセメント硬化体22を充填することもできる(図26(j)の構成に相当)。セメント硬化体は、上記切削容易壁体210に関連して説明したセメント硬化体とされる。
【0072】
本発明に係るシールド掘削用壁体203における支持体30を設置することによりもたらされる効果を実証するために、上記具体例3に従って作製した支持体30を、上記第1の実施態様に示すように、切削容易壁体210の上下領域に設置してシールド掘削用壁体203を構築した。そして、該シールド掘削用壁体203の強度、及び、該シールド掘削用壁体203に対するシールド掘進機300の切削性を試験した。
【0073】
実験例
・シールド掘進機300
切削開口直径(Ds) 6000mm
・切削容易壁体210
繊維補強コンクリート杭+ソイルモルタル(図10、図11、図26(b)に示す構成)
厚さ(Tw) 1000mm
切削開口直径(Dw) 6300mm
・支持体30(30A、30B)
繊維補強コンクリート+ソイルモルタル(図26(l)に示す構成)
長さ(L) 7000mm
幅(W) 2000mm
厚さ(T) 500mm
【0074】
本発明に従って構築したシールド掘削用壁体203は、土圧、水圧に対する強度は、支持体30を設置しない場合に対して、鉛直支持材の中央に生じるモーメントは、1/3〜1/4倍程度にまで低減された。また、シールド掘進機300により切削性は、支持体30を設置しない場合に比較して劣ることはなく、シールド掘進機300にて容易に切削することができた。
【0075】
実施例2
次に、本発明に係るシールド掘削用壁体203の他の実施例について説明する。
【0076】
上記実施例1では、支持体30は、切削容易壁体210の内壁面210aの少なくとも上方及び/又は下方領域であって、且つ、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より大きい領域から小さい領域に渡って前記切削容易壁体210と一体に設置されるか、又は、支持体30は、切削容易壁体210の内壁面210aの少なくとも左方及び/右方領域であって、且つ、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より大きい領域から小さい領域に渡って切削容易壁体210と一体に設置されるものとした。
【0077】
本実施例では、支持体30(30A、30B)が、切削容易壁体210の内壁面210aの上方及び下方領域であって、且つ、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より大きい領域から小さい領域に渡って前記切削容易壁体210と一体に設置されるか、又は、支持体30(30A、30B)が、切削容易壁体210の内壁面210aの少なくとも左方及び右方領域であって、且つ、シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域から小さい領域に渡って切削容易壁体210と一体に設置される場合に、上方及び下方、又は、左方及び右方に設置された支持体30(30A、30B)の間の空間領域を、図26に示すような壁部材、つまり、
(a)セメント硬化体22(図26(a))、
(b)繊維強化樹脂製の筋材24(24a、24b)にて補強されたセメント硬化体22(図26(b))、
(c)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形の柱状体25(図26(c))、繊維強化樹脂製の断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形の管状体25(図26(d)、(e))、又は、繊維強化樹脂製の断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形の中実柱状体25(図26(f)、(g))、又は、
(d)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形又は多角形(例えば矩形)の柱状体25にて補強されたセメント硬化体22(図26(h)、(i))、繊維強化樹脂製の断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形の管状体25にて補強されたセメント硬化体22(図26(j)、(k))、又は、断面が例えば矩形若しくは丸形の繊維強化樹脂製ロッド25にて補強された断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形のセメント硬化体22(図26(l)、(m))、更には、図26には示していないが、
(e)繊維強化樹脂製の板材、ロッド材、若しくは、その組み合わせた材料、
(f)ガラス繊維強化ウレタン、又は、
(g)木材、
などで構築された壁体40で埋める構成とされる。壁体40の幅Twは、支持体30(30A、30B)と同様とされるが、これに限定されるものではない。
【0078】
セメント硬化体、並びに、繊維強化樹脂を作製する際の強化繊維及び樹脂などは、実施例1で説明したものと同様とされる。
【0079】
次に、本実施例の幾つかの具体例について説明する。
【0080】
具体例1
図16は、繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体とされる両支持体30(30A、30B)の間の空間領域を、セメント硬化体(図26(a)の構成に相当)とされる壁体40にて補強した例を示す。
【0081】
具体例2
図17は、繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体とされる両支持体30(30A、30B)の間の空間領域を、繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体(図26(b)の構成に相当)とされる壁体40にて補強した例を示す。
【0082】
具体例3
図18は、繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体とされる両支持体30(30A、30B)の間の空間領域を、繊維強化樹脂製の断面がI型又はH形の柱状体にて補強されたセメント硬化体(図26(h)の構成に相当)とされる壁体40にて補強した例を示す。
【0083】
具体例4
図19は、繊維強化樹脂製の断面がI型又はH形の柱状体にて補強されたセメント硬化体とされる両支持体30(30A、30B)の間の空間領域を、セメント硬化体(図26(a)の構成に相当)とされる壁体40にて補強した例を示す。
【0084】
具体例5
図20は、繊維強化樹脂製の断面がI型又はH形の柱状体にて補強されたセメント硬化体とされる両支持体30(30A、30B)の間の空間領域を、繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体(図26(b)の構成に相当)とされる壁体40にて補強した例を示す。
【0085】
具体例6
図21は、繊維強化樹脂製の断面がI型又はH形の柱状体にて補強されたセメント硬化体とされる両支持体30(30A、30B)の間の空間領域を、繊維強化樹脂製の断面がI型又はH形の柱状体にて補強されたセメント硬化体(図26(h)の構成に相当)とされる壁体40にて補強した例を示す。
【0086】
上記具体例1〜6は、支持体30(30A、30B)が、切削容易壁体210の内壁面210aの上方及び下方領域に設置された場合についての例であるが、支持体30が、切削容易壁体210の内壁面の左方及び右方領域に設置された場合も同様に構成される。
【0087】
本実施例によれば、実施例1と比較して、シールド掘進機300にて直接切削可能な壁部、即ち、切削容易壁体210の耐力を更に向上させることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 シールド掘削用繊維補強材
10 固定金具
22 セメント硬化体
24(24a、24b) 繊維強化樹脂製筋材
30(30A、30B) 支持体
100 土留め壁材
101 鋼部材
200 トンネル掘進用立坑
201 鉄筋コンクリート製立坑壁体
203 シールド掘削用壁体
210 切削容易壁体
300 シールド掘進機
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、地中を掘削するシールド掘進機の発進又は到達のための発進到達部を有するトンネル掘進用立坑に関するものであり、特に、トンネル掘進用立坑におけるシールド掘進機による切削容易なシールド掘削用壁体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図22に示すように、例えば鉄筋コンクリート製建造物であるトンネル掘進用立坑200は、例えば、ケーソン工法、SMW(ソイルミキシングウォール)工法などにより鉄筋コンクリート製などの立坑壁体201及び底板202などを造成して構築されるが、立坑200のシールド掘進機300が発進又は到達する鉄筋コンクリート製などの建造物の一部開口部分には、シールド掘進機300により掘削が可能なように、シールド掘削用壁体203が構築されることが提案され、又実施されている。シールド掘削用壁体203を切削容易なモルタルなどで作製することもできるが、該シールド掘削用壁体203として繊維補強コンクリート壁体を使用することが提案され、又実施されている。
【0003】
つまり、図23に示すように、例えばSMW工法によれば、立坑200の壁体201は、H型鋼或いは箱形鋼などの鋼部材101とされる打込部材100にて構築されているが、その一部であるシールド掘進機300により切削可能なシールド掘削用壁体203は、細長形状の縦方向に延在するシールド掘削用繊維補強材1を横方向に所定の間隔にて配列して構成される。シールド掘削用繊維補強材1としては、従来種々の構造が提案されている。
【0004】
特許文献1には、図24及び図25に示すように、切削可能なシールド掘削用繊維補強材1を備えた立坑壁用部材、即ち、土留め壁材100が記載されている。
【0005】
シールド掘削用繊維補強材1は、一対の上下方向に延在する中空FRP(繊維強化樹脂)部材1A、1B及びスペーサ1Cを有している。また、シールド掘削用繊維補強材1は、その上下両端部にH型鋼の継手金具(固定金具)10が接続されており、この継手金具10により、シールド掘削用繊維補強材1の上部及び下部に配置された各H型鋼101(図22、図23)と接続され、土留め壁材100が作製される。
【0006】
土留め壁材100は、図23に示すように、泥水溝(立坑用溝)204内に建て込まれ、溝内の間隔部にソイルモルタル、モルタル、又は、コンクリート等の経時硬化性材料(以下、「セメント硬化体」という。)205が充填されて硬化される。
【0007】
土留め壁材100を構成する一対の中空FRP部材1(1A、1B)及びスペーサ1Cは、シールド掘削機300の従来のビット301を備えたカッターヘッドで容易に切削することが可能であり、カッターヘッドに特別なビットを取り付けて切削する必要はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−38870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記構成の土留め壁材100を使用した立坑壁203は、シールド掘進機300により掘削が可能であるという特長を有しているが、次のような問題があることが分かった。
【0010】
つまり、図27に示すように、大型のシールド掘進機300を使用した場合には、シールド掘削機300の切削領域、即ち、切削開口直径(Ds)は大となり、切削可能領域を必然的に大とせざるを得ない。しかしながら、場合によっては、切削可能領域(切削可能直径Dw)を構成する切削容易壁体210の壁厚(Tw)を充分に厚く造成することができないことがあり、この場合は、土圧、水圧に対する切削容易壁体自体の強度を増強する必要がある。
【0011】
このために、切削容易壁体210を構成する繊維補強材1に使用する材料として、より高強度の材料をより多量に使用することも考えられるが、壁体の切削容易性を阻害したり、或いは、繊維補強材1の作製の手間及び製造コストの増大をもたらすことが考えられる。
【0012】
そこで、本発明の目的は、シールド掘削用壁体を備えたトンネル掘進用立坑においてシールド掘進機による切削容易性を確保した上で、更に、シールド掘削用壁体における切削容易壁体の土圧、水圧に対する強度を保証したシールド掘削用壁体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は本発明に係るシールド掘削用壁体にて達成される。要約すれば、本発明は、シールド掘進機の発進又は到達のための発進到達部を有するトンネル掘進用立坑におけるシールド掘削用壁体であって、
シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域に渡って設置された、シールド掘進機にて切削容易な切削容易壁体と、
前記切削容易壁体の内壁面の少なくとも一部の領域を水平方向及び/又は鉛直方向に横断して、且つ、前記切削容易壁体と一体に設置された、シールド掘進機にて切削容易な細長形状の支持体と、
を有することを特徴とするシールド掘削用壁体である。
【0014】
本発明の一実施態様によると、前記支持体は、前記切削容易壁体の内壁面の少なくとも上方及び/又は下方領域であって、且つ、シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域から小さい領域に渡って前記切削容易壁体と一体に設置される。
【0015】
本発明の他の実施態様によると、前記支持体は、前記切削容易壁体の内壁面の少なくとも左方及び/又は右方領域であって、且つ、シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域から小さい領域に渡って前記切削容易壁体と一体に設置される。
【0016】
本発明の他の実施態様によると、前記支持体は、前記切削容易壁体の内壁面の少なくとも略中央領域であって、且つ、切削容易壁体の直径方向に横断して前記切削容易壁体と一体に設置される。
【0017】
本発明の他の実施態様によると、前記支持体は、前記切削容易壁体の内壁面の上方及び下方領域であって、且つ、シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域から小さい領域に渡って前記切削容易壁体と一体に設置されるか、又は、
前記支持体は、前記切削容易壁体の内壁面の少なくとも左方及び右方領域であって、且つ、シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域から小さい領域に渡って前記切削容易壁体と一体に設置され、
前記上方及び下方、又は、左方及び右方に設置された前記支持体の間の空間領域を、
(a)セメント硬化体、
(b)繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体、
(c)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形の柱状体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体、又は、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の中実柱状体、
(d)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形又は多角形の柱状体にて補強されたセメント硬化体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体にて補強されたセメント硬化体、又は、繊維強化樹脂製ロッドにて補強された断面が多角形若しくは丸形のセメント硬化体、
(e)繊維強化樹脂製の板材、ロッド材、若しくは、その組み合わせた材料、
(f)ガラス繊維強化ウレタン、又は、
(g)木材、
で埋める。
【0018】
本発明の他の実施態様によると、前記支持体は、
(a)セメント硬化体、
(b)繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体、
(c)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形の柱状体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体、又は、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の中実柱状体、
(d)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形又は多角形の柱状体にて補強されたセメント硬化体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体にて補強されたセメント硬化体、又は、繊維強化樹脂製ロッドにて補強された断面が多角形若しくは丸形のセメント硬化体、又は、
(e)ガラス繊維強化ウレタン、
で作製する。
【0019】
本発明の他の実施態様によると、前記切削容易壁体は、
(a)セメント硬化体、
(b)繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体、
(c)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形の柱状体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体、又は、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の中実柱状体、又は、
(d)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形又は多角形の柱状体にて補強されたセメント硬化体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体にて補強されたセメント硬化体、又は、繊維強化樹脂製ロッドにて補強された断面が多角形若しくは丸形のセメント硬化体、
で構築する。
【0020】
本発明の他の実施態様によると、前記繊維強化樹脂は強化繊維に樹脂を含浸して構成され、前記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維、ボロン繊維等の無機繊維;チタン、スチール等の金属繊維;アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン、ポリアセタール、PBО、高強度ポリプロピレン等の有機繊維;から選択されるいずれかの繊維であるか、或いは、前記繊維を複数種混入したハイブリッドタイプとされ、
前記樹脂は、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、常温硬化型エポキシ樹脂、熱硬化型エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、若しくは、MMA等のラジカル反応系樹脂を少なくとも一種以上含むもの、又は、これら樹脂を発泡させたものである。
【0021】
本発明の他の実施態様によると、前記セメント硬化体は、
(a)モルタル、
(b)ソイルモルタル、
(c)コンクリート、
(d)発泡ミルク、又は、
(e)モルタル、ソイルモルタル、又はコンクリートを発泡させたもの、
である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、シールド掘削用壁体を備えたトンネル掘進用立坑においてシールド掘進機による切削容易性を確保した上で、更に、シールド掘削用壁体における切削容易壁体の土圧、水圧に対する強度を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るシールド掘削用壁体の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明に係るシールド掘削用壁体の一実施態様を説明する正面図である。
【図3】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する正面図である。
【図4】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する正面図である。
【図5】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する正面図である。
【図6】本発明に係るシールド掘削用壁体の一実施態様を説明する概略構成断面図である。
【図7】図7(a)は、シールド掘削用壁体に使用する支持体の一実施態様の斜視図であり、図7(b)は、横断面図である。
【図8】図8(a)は、シールド掘削用壁体に使用する支持体の他の実施態様の斜視図であり、図8(b)は、横断面図である。
【図9】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する概略構成断面図である。
【図10】図10(a)は、シールド掘削用壁体に使用する支持体の他の実施態様の正面図であり、図10(b)は、側面図である。
【図11】図10に示すシールド掘削用壁体に使用する支持体の横断面図である。
【図12】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する概略構成断面図である。
【図13】シールド掘削用壁体に使用する支持体の他の実施態様の斜視図である。
【図14】シールド掘削用壁体に使用する支持体の他の実施態様の斜視図である。
【図15】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する概略構成断面図である。
【図16】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する概略構成断面図である。
【図17】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する概略構成断面図である。
【図18】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する概略構成断面図である。
【図19】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する概略構成断面図である。
【図20】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する概略構成断面図である。
【図21】本発明に係るシールド掘削用壁体の他の実施態様を説明する概略構成断面図である。
【図22】従来の立坑の構造を説明する概略構成断面図である。
【図23】従来の立坑壁の構造を説明する概略構成断面図である。
【図24】従来の繊維強化樹脂製補強材の一例を説明する斜視図である。
【図25】図24の繊維強化樹脂製補強材の横断面図である。
【図26】本発明にて使用し得る従来の繊維強化樹脂製補強材等を説明する断面図である。
【図27】従来の立坑壁の構造を説明する概略構成断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るシールド掘削用壁体を図面に則して更に詳しく説明する。
【0025】
実施例1
図1〜図5を参照して、本発明のトンネル掘進用立坑200におけるシールド掘削用壁体203について説明する。
【0026】
尚、図2〜図5は、先に図23を参照して説明した立坑壁体の正面図と同様の図であり、同じ部材には同じ参照番号を付して、先の説明を援用し、詳しい説明は省略する。
【0027】
本発明のトンネル掘進用立坑200及びシールド掘削用壁体203の全体構成は、図22、図23を参照して説明した従来のトンネル掘進用立坑200及びシールド掘削用壁体203と同様の構成とされるので、図22、図23をも参照されたい。
【0028】
本発明は、シールド掘進機300の発進又は到達のための発進到達部を有する、例えば鉄筋コンクリート製建造物とされるトンネル掘進用立坑200におけるシールド掘削用壁体203である。本発明のシールド掘削用壁体203は、
(a)シールド掘進機300の切削開口直径Dsより大きい領域(直径Dw)に渡って設置された、シールド掘進機300にて切削容易な切削容易壁体210と、
(b)切削容易壁体210の内壁面210a(即ち、立坑内面側の壁面)の少なくとも一部の領域を水平方向及び/又は鉛直方向に横断して、且つ、前記切削容易壁体210と一体に設置されたシールド掘進機にて切削容易な支持体30(30A、30B)と、
を有する。
【0029】
本発明のシールド掘削用壁体203において特徴部を構成する支持体30(30A、30B)は、詳しくは、後述するように、従来、切削容易壁部材として使用されている、例えば、上述の図24、図25に示すような、シールド掘進機300による切削容易な長さ(L)、幅(W)とされる細長部材(土留め壁材)100を好適に使用することができる。勿論、支持体30は、このような細長部材100を複数組み合わせることによって構成することができる。
【0030】
図1〜図5を参照して本発明の実施態様について説明する。図1は、トンネル掘進用立坑200における本発明に係るシールド掘削用壁体203の概略構成を示す。図2〜図5は、上述したように、先に説明した図23と同様の図であり、トンネル掘削用壁体203を示す。
【0031】
図1、図2を参照して本発明の第1の実施態様について説明すると、図24、図25に示す長さ(L)、幅(W)の細長部材100と同様の構成の支持体30(30A、30B)が、図1、図2に示すように、水平方向に延在するように配置して、且つ、切削容易壁体210の内壁面210a、即ち、シールド掘進機300が設置される側の壁面210aの上方及び下方領域に設置される。また、上方に配置した支持体30Aは、上下方向にシールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より大きい領域(直径Ds領域より外方領域)から小さい領域(直径Ds領域内)に渡って一体に設置されるのが好ましい。即ち、支持体30の幅(W)は、切削容易壁体210の上下方向にて、上方の支持体30Aについて言えば、支持体30Aの上端縁30aは、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より大きい外方領域に存在し、支持体30Aの下端縁30bは、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より小さい内方領域に存在している。場合によっては、支持体30Aの上方端縁30a及び下方端縁30bがシールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より小さい内方領域に存在していても良い。
【0032】
通常、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)は、500〜16000mmとされ、支持体30としては、シールド掘進機300による掘削が容易な領域を提供するに十分な長さ(L)、幅(W)とされ、長さ(L)が1000〜20000mm、幅(W)が100〜8000mmとされる。従って、図2にて、上方支持体30Aの上端縁30aの切削開口直径(Ds)からの外方領域への突出長さ(H1)は、0〜5000mm、内方領域への突出長さ(H2)は、100〜8000mmとされる。
【0033】
下方の支持体30Bについても同様であり、支持体30Bの幅(W)は、切削容易壁体210の上下方向にて、支持体30Bの上端縁30aは、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より小さい内方領域に存在し、支持体30Bの下端縁30bは、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より大きい外方領域に存在している。場合によっては、支持体30Bの上方端縁30a及び下方端縁30bがシールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より小さい内方領域に存在していても良い。
【0034】
本発明の第2の実施態様によれば、支持体30(30A、30B)は、図2にて、切削容易壁体210の上方或いは下方のいずれか一方の領域に設置することもできる。
【0035】
また、本発明の第3の実施態様によれば、図3に示すように、切削容易壁体の上下方向略中央部領域に、水平方向直径方向に延在して設置することもできる。
【0036】
上記第1〜第3の実施態様に構成とすることにより、即ち、切削容易壁体210の上下領域に支持体30(30A、30B)を設置することにより、図1に示すように、切削容器壁体210の曲げスパンSpを小さくすることができる。つまり、切削容易壁体210に作用する断面力(曲げモーメント、せん断力)を小さくすることができ、切削容易壁体210の土圧、水圧に対する強度を大幅に増大することができる。
【0037】
従って、例え、切削可能領域(直径Dw)(通常、直径Dwは、直径Dsより200〜500mmだけ大とされる。)を構成する切削容易壁体210の壁厚Twを充分に厚く造成することができない場合であっても、切削容易壁体210を構成する壁体材料として、より高強度の材料をより多量に使用すること等の必要はない。本発明の構成にて、壁体210の切削容易性を阻害したり、或いは、壁体210の作製の手間及び製造コストの増大をもたらすことが回避される。
【0038】
上記第1〜第3の実施態様の説明では、支持体30(30A、30B)は、切削容易壁体210の内壁面の少なくとも上方及び/又は下方領域に設置されるものとして説明したが、図4に示すように、本発明の第4の実施態様によると、上記長さ(L)、幅(W)の細長部材とされる支持体30(30A、30B)を鉛直方向に延在して配置して、且つ、切削容易壁体210の内壁面、即ち、シールド掘進機300が設置される側の壁面210aにおいて左方及び右方領域に設置することができる。その他の構成は、先に説明した第1〜第3の実施態様と同様である。
【0039】
つまり、支持体30(30A、30B)は、左右方向にシールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より大きい領域から小さい領域に渡って一体に設置されるのが好ましい。即ち、支持体の幅(W)は、切削容易壁体210の左右方向にて、左側の支持体30Aについて言えば、支持体30Aの左端縁3aは、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より大きい外方領域に存在し、支持体30Aの右端縁30bは、シールド掘進機の切削開口直径(Ds)より小さい内方領域に存在している。勿論、支持体30Aの左方端縁30a及び右方端縁30bがシールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より小さい内方領域に存在していても良い。
【0040】
右方の支持体30Bについても同様であり、支持体30Bの幅(W)は、切削容易壁体210の左右方向にて、支持体30Bの左端縁3aは、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より小さい内方領域に存在し、支持体30Bの右端縁30bは、シールド掘進機の切削開口直径Dsより大きい外方領域に存在している。勿論、支持体30Bの左方端縁30a及び右方端縁30bがシールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より小さい内方領域に存在していても良い。
【0041】
また、第5の実施態様によれば、支持体30は、切削容易壁体210の左方或いは右方のいずれかの領域に設置することもでき、また、第6の実施態様によれば、図5に示すように、切削容易壁体210の左右方向略中央部に設置することもできる。
【0042】
第4〜第6の実施態様においても、シールド掘進機の切削開口直径Dsと、長さ(L)、幅(W)の支持体30との配置関係は、先に説明した第1〜第3の実施態様と同様である。
【0043】
この第4〜第6の実施態様においても、即ち、切削容易壁体210の左右領域に支持体30(30A、30B)を設置することにより、上述したと同様に、曲げスパン(Sp)を小さくすることができる。つまり、切削容易壁体210に作用する断面力(曲げモーメント、せん断力)を小さくすることができ、切削容易壁体210の土圧、水圧に対する強度を大幅に増大することができ、先の実施態様と同様の効果を奏し得る。
【0044】
本発明の他の実施態様によると、必要に応じて、上記第1〜第6の実施態様の構成を適宜組み合わせた構成とすることもできる。この構成により、切削容易壁体210の強度を更に向上させることができる。
【0045】
次に、トンネル掘削用立坑におけるシールド掘進機による切削容易な、本発明に係るシールド掘削用壁体203を構成する各部材について説明する。
【0046】
(切削容易壁体)
本発明に係るシールド掘削用壁体203における切削容易壁体210は、従来提案されている種々の構造とすることができる。切削容易壁体210は、例えば、図22〜図25等を参照して説明したようにして構築される。
【0047】
つまり、図22、図23に示すように、例えばSMW工法によれば、立坑200の壁体201は、H型鋼或いは箱形鋼などの鋼部材101とされる打込部材にて構築されているが、その一部であるシールド掘進機300により切削可能なシールド掘削用壁体203は、細長形状のシールド掘削用繊維補強材1を縦方向に所定の間隔にて配列して構成される土留め壁材100で構築される。シールド掘削用繊維補強材1としては、従来種々の構造が提案されている。
【0048】
図24、図25に示すように、シールド掘削用繊維補強材1は、一対の上下方向に延在する中空FRP(繊維強化樹脂)部材1A、1B及びスペーサ1Cを有している。また、シールド掘削用繊維補強材1は、その上下両端部にH型鋼の継手金具10が接続されており、この継手金具10により、シールド掘削用繊維補強材1の上部及び下部に配置された各H型鋼101(図22、図23)と接続され、土留め壁材100が作製される。
【0049】
土留め壁材100は、図23に示すように、泥水溝(立坑用溝)204内に建て込まれ、溝内の間隔部にソイルモルタル、モルタル、又は、コンクリート等の経時硬化性材料(セメント硬化体)205が充填されて硬化される。
【0050】
土留め壁材100を構成する一対の中空FRP部材1(1A、1B)及びスペーサ1Cは、シールド掘削機300の従来のビット301を備えたカッターヘッドで容易に切削することが可能であり、カッターヘッドに特別なビットを取り付けて切削する必要はない。
【0051】
切削容易壁体210としては、上記従来構成のシールド掘削用繊維補強材1、更には、従来の当業者には周知の様々な繊維補強材を使用することができる。勿論、切削容易壁体210は、図24の繊維補強材1と同様の矩形断面を有した柱状体のセメント硬化体を使用して構築することもできる。また、当業者には周知のように、セメント硬化体を、種々の形状、構成とされる、強化繊維に樹脂を含浸して構成される繊維強化樹脂にて補強して作製することもできる。
【0052】
つまり、切削容易壁体210としては、図26に示すような壁部材、つまり、
(a)セメント硬化体22(図26(a))、
(b)繊維強化樹脂製の筋材24(24a、24b)にて補強されたセメント硬化体22(図26(b))、
(c)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形の柱状体25(図26(c))、繊維強化樹脂製の断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形の管状体25(図26(d)、(e))、又は、繊維強化樹脂製の断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形の中実柱状体25(図26(f)、(g))、又は、
(d)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形又は多角形(例えば矩形)の柱状体25にて補強されたセメント硬化体22(図26(h)、(i))、繊維強化樹脂製の断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形の管状体25にて補強されたセメント硬化体22(図26(j)、(k))、又は、断面が例えば矩形若しくは丸形の繊維強化樹脂製ロッド25にて補強された断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形のセメント硬化体22(図26(l)、(m))、
で作製することができる。
【0053】
また、セメント硬化体は、
(a)モルタル、
(b)ソイルモルタル、
(c)コンクリート、
(d)発泡ミルク、又は、
(e)モルタル、ソイルモルタル、又はコンクリートを発泡させたもの、
とすることができる。
【0054】
繊維強化樹脂における強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維、ボロン繊維等の無機繊維;チタン、スチール等の金属繊維;アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン、ポリアセタール、PBО、高強度ポリプロピレン等の有機繊維;から選択されるいずれかの繊維であるか、或いは、前記繊維を複数種混入したハイブリッドタイプとされる。
【0055】
又、樹脂としては、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、常温硬化型エポキシ樹脂、熱硬化型エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、若しくは、MMA等のラジカル反応系樹脂を少なくとも一種以上含むもの、又は、これら樹脂を発泡させたものを使用することができる。
【0056】
(支持体)
本発明の支持体30としては、図24〜図26を参照して上述したような、従来切削容易壁体210を構築する際に使用した壁部材と同様のシールド掘削用部材1を使用することができる。
【0057】
つまり、支持体30は、
(a)セメント硬化体22(図26(a))、
(b)繊維強化樹脂製の筋材24(24a、24b)にて補強されたセメント硬化体22(図26(b))、
(c)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形の柱状体25(図26(c))、繊維強化樹脂製の断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形の管状体25(図26(d)、(e))、又は、繊維強化樹脂製の断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形の中実柱状体25(図26(f)、(g))、又は、
(d)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形又は多角形(例えば矩形)の柱状体25にて補強されたセメント硬化体22(図26(h)、(i))、繊維強化樹脂製の断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形の管状体25にて補強されたセメント硬化体22(図26(j)、(k))、又は、断面が例えば矩形若しくは丸形の繊維強化樹脂製ロッド25にて補強された断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形のセメント硬化体22(図26(l)、(m))、更には、図26には示していないが、
(e)ガラス繊維強化ウレタン、
で構築することができる。
【0058】
勿論、支持体30を繊維強化樹脂製補強材を使用して作製する際に使用する強化繊維及び樹脂は、上記切削容易壁体210を構築する際の繊維補強材に使用した強化繊維及び樹脂と同様とされる。
【0059】
以下に、支持体30の具体例の幾つかについて説明する。
【0060】
具体例1
支持体30(30A、30B)は、図1及び図7(a)、(b)に示すように、断面矩形状とされる左右方向に延在するセメント硬化体とされる細長部材1(図26(a)の構成に相当)を有し、その左右両端部にH型鋼の固定金具(継手金具)10が接続されている。支持体30は、この固定金具10を介して立坑壁体201の部分のH型鋼101(図2)などと接続され、支持体30がシールド掘削用壁体203に一体的に固定される。
【0061】
具体例2
支持体30は、先に、図24及び図25を参照して説明した、切削容易壁体210を造成する際に使用したシールド掘削用繊維補強材(土留め壁材)100と同様の構成とすることができる。
【0062】
つまり、図6、図8(a)、(b)に示すように、支持体30は、繊維補強材で(図26(d)の構成に相当)ある一対の左右方向に延在する中空FRP部材1A、1B及びスペーサ1Cを有している。また、繊維補強材1は、その左右両端部にH型鋼の固定金具10が接続されており、支持体30は、この固定金具10により、立坑壁体201の部分のH型鋼101(図2)などと接続され、支持体30がシールド掘削用壁体203に一体的に固定される。
【0063】
具体例3
支持体30は、図9〜図11に示すように、補強筋24として、強化繊維に樹脂を含浸して作製された繊維強化樹脂製の筋材、即ち、主筋(FRPロッド)24a及びスターラップ筋(FRPスターラップ)24bを、例えば、籠状に組み立て、型枠内に設置して、セメント硬化体22を充填することにより作製される繊維補強材1(図26(b)の構成に相当)を有している。
【0064】
繊維補強材1の左右方向には、H型鋼などとされる固定金具10が接続されている。
【0065】
支持体30は、この固定金具10により、立坑壁体201の部分のH型鋼101(図2)などと接続され、支持体30がシールド掘削用壁体203に一体的に固定される。
【0066】
具体例4
支持体30は、図12、図13に示すように、シールド掘進機300により切削可能な、断面がI形又はH形の繊維強化樹脂製補強材1と、繊維強化樹脂製補強材1の上下両端に固定された固定金具10とを有する。
【0067】
つまり、繊維強化樹脂製補強材1は、所定の幅の平面部を有し、長手軸線方向に延在する複数のウェブ材2、3、4を、所定の横断面形状に、本実施例では、H形若しくはI形形状に一体に成形した繊維強化樹脂材である。即ち、本実施例にて、繊維強化樹脂製補強材1は、所定の幅にて長手軸線方向に沿って延在する平板状のウェブ材、即ち、中央ウェブ材2と、中央ウェブ材2の幅方向両端部において中央ウェブ材2に対して直交配置して長手軸線方向に沿って延在し、中央ウェブ材2と一体に形成された平板状のウェブ材、即ち、端ウェブ材3、4とにて形成される。ウェブ材3、4の平面部がシールド掘進機300のシールド掘進方向Xに対して略直交して配置される。
【0068】
支持体30は、固定金具10により、立坑壁体201の部分のH型鋼101(図2)などと接続され、支持体30がシールド掘削用壁体203に一体的に固定される。
【0069】
上記説明した具体例4では、繊維強化樹脂製補強材1は、図13に示すように、長手軸線方向に延在する所定の幅の平面部を有する複数のウェブ材2、3、4を、横断面形状がH形若しくはI形形状となるように一体に成形した繊維強化樹脂材(図26(c)の構成に相当)であるとして説明した。
【0070】
しかし、本発明の繊維強化樹脂製補強材1は、例えば、図14に示すように、4つのウェブ材を断面形状が矩形状(即ち、箱形)の中空管状体となるように、互いに接続することができる。即ち、該繊維補強材1は、図26(d)の構成に相当する。
【0071】
更には、上記支持体30は、図15に示すように、H型鋼をセメント硬化体で埋めることもできる(図26(h)の構成に相当)。更に、図14の箱形支持体の内部にはセメント硬化体22を充填することもできる(図26(j)の構成に相当)。セメント硬化体は、上記切削容易壁体210に関連して説明したセメント硬化体とされる。
【0072】
本発明に係るシールド掘削用壁体203における支持体30を設置することによりもたらされる効果を実証するために、上記具体例3に従って作製した支持体30を、上記第1の実施態様に示すように、切削容易壁体210の上下領域に設置してシールド掘削用壁体203を構築した。そして、該シールド掘削用壁体203の強度、及び、該シールド掘削用壁体203に対するシールド掘進機300の切削性を試験した。
【0073】
実験例
・シールド掘進機300
切削開口直径(Ds) 6000mm
・切削容易壁体210
繊維補強コンクリート杭+ソイルモルタル(図10、図11、図26(b)に示す構成)
厚さ(Tw) 1000mm
切削開口直径(Dw) 6300mm
・支持体30(30A、30B)
繊維補強コンクリート+ソイルモルタル(図26(l)に示す構成)
長さ(L) 7000mm
幅(W) 2000mm
厚さ(T) 500mm
【0074】
本発明に従って構築したシールド掘削用壁体203は、土圧、水圧に対する強度は、支持体30を設置しない場合に対して、鉛直支持材の中央に生じるモーメントは、1/3〜1/4倍程度にまで低減された。また、シールド掘進機300により切削性は、支持体30を設置しない場合に比較して劣ることはなく、シールド掘進機300にて容易に切削することができた。
【0075】
実施例2
次に、本発明に係るシールド掘削用壁体203の他の実施例について説明する。
【0076】
上記実施例1では、支持体30は、切削容易壁体210の内壁面210aの少なくとも上方及び/又は下方領域であって、且つ、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より大きい領域から小さい領域に渡って前記切削容易壁体210と一体に設置されるか、又は、支持体30は、切削容易壁体210の内壁面210aの少なくとも左方及び/右方領域であって、且つ、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より大きい領域から小さい領域に渡って切削容易壁体210と一体に設置されるものとした。
【0077】
本実施例では、支持体30(30A、30B)が、切削容易壁体210の内壁面210aの上方及び下方領域であって、且つ、シールド掘進機300の切削開口直径(Ds)より大きい領域から小さい領域に渡って前記切削容易壁体210と一体に設置されるか、又は、支持体30(30A、30B)が、切削容易壁体210の内壁面210aの少なくとも左方及び右方領域であって、且つ、シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域から小さい領域に渡って切削容易壁体210と一体に設置される場合に、上方及び下方、又は、左方及び右方に設置された支持体30(30A、30B)の間の空間領域を、図26に示すような壁部材、つまり、
(a)セメント硬化体22(図26(a))、
(b)繊維強化樹脂製の筋材24(24a、24b)にて補強されたセメント硬化体22(図26(b))、
(c)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形の柱状体25(図26(c))、繊維強化樹脂製の断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形の管状体25(図26(d)、(e))、又は、繊維強化樹脂製の断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形の中実柱状体25(図26(f)、(g))、又は、
(d)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形又は多角形(例えば矩形)の柱状体25にて補強されたセメント硬化体22(図26(h)、(i))、繊維強化樹脂製の断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形の管状体25にて補強されたセメント硬化体22(図26(j)、(k))、又は、断面が例えば矩形若しくは丸形の繊維強化樹脂製ロッド25にて補強された断面が多角形(例えば箱形)若しくは丸形のセメント硬化体22(図26(l)、(m))、更には、図26には示していないが、
(e)繊維強化樹脂製の板材、ロッド材、若しくは、その組み合わせた材料、
(f)ガラス繊維強化ウレタン、又は、
(g)木材、
などで構築された壁体40で埋める構成とされる。壁体40の幅Twは、支持体30(30A、30B)と同様とされるが、これに限定されるものではない。
【0078】
セメント硬化体、並びに、繊維強化樹脂を作製する際の強化繊維及び樹脂などは、実施例1で説明したものと同様とされる。
【0079】
次に、本実施例の幾つかの具体例について説明する。
【0080】
具体例1
図16は、繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体とされる両支持体30(30A、30B)の間の空間領域を、セメント硬化体(図26(a)の構成に相当)とされる壁体40にて補強した例を示す。
【0081】
具体例2
図17は、繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体とされる両支持体30(30A、30B)の間の空間領域を、繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体(図26(b)の構成に相当)とされる壁体40にて補強した例を示す。
【0082】
具体例3
図18は、繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体とされる両支持体30(30A、30B)の間の空間領域を、繊維強化樹脂製の断面がI型又はH形の柱状体にて補強されたセメント硬化体(図26(h)の構成に相当)とされる壁体40にて補強した例を示す。
【0083】
具体例4
図19は、繊維強化樹脂製の断面がI型又はH形の柱状体にて補強されたセメント硬化体とされる両支持体30(30A、30B)の間の空間領域を、セメント硬化体(図26(a)の構成に相当)とされる壁体40にて補強した例を示す。
【0084】
具体例5
図20は、繊維強化樹脂製の断面がI型又はH形の柱状体にて補強されたセメント硬化体とされる両支持体30(30A、30B)の間の空間領域を、繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体(図26(b)の構成に相当)とされる壁体40にて補強した例を示す。
【0085】
具体例6
図21は、繊維強化樹脂製の断面がI型又はH形の柱状体にて補強されたセメント硬化体とされる両支持体30(30A、30B)の間の空間領域を、繊維強化樹脂製の断面がI型又はH形の柱状体にて補強されたセメント硬化体(図26(h)の構成に相当)とされる壁体40にて補強した例を示す。
【0086】
上記具体例1〜6は、支持体30(30A、30B)が、切削容易壁体210の内壁面210aの上方及び下方領域に設置された場合についての例であるが、支持体30が、切削容易壁体210の内壁面の左方及び右方領域に設置された場合も同様に構成される。
【0087】
本実施例によれば、実施例1と比較して、シールド掘進機300にて直接切削可能な壁部、即ち、切削容易壁体210の耐力を更に向上させることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 シールド掘削用繊維補強材
10 固定金具
22 セメント硬化体
24(24a、24b) 繊維強化樹脂製筋材
30(30A、30B) 支持体
100 土留め壁材
101 鋼部材
200 トンネル掘進用立坑
201 鉄筋コンクリート製立坑壁体
203 シールド掘削用壁体
210 切削容易壁体
300 シールド掘進機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機の発進又は到達のための発進到達部を有するトンネル掘進用立坑におけるシールド掘削用壁体であって、
シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域に渡って設置された、シールド掘進機にて切削容易な切削容易壁体と、
前記切削容易壁体の内壁面の少なくとも一部の領域を水平方向及び/又は鉛直方向に横断して、且つ、前記切削容易壁体と一体に設置された、シールド掘進機にて切削容易な細長形状の支持体と、
を有することを特徴とするシールド掘削用壁体。
【請求項2】
前記支持体は、前記切削容易壁体の内壁面の少なくとも上方及び/又は下方領域であって、且つ、シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域から小さい領域に渡って前記切削容易壁体と一体に設置されたことを特徴とする請求項1に記載のシールド掘削用壁体。
【請求項3】
前記支持体は、前記切削容易壁体の内壁面の少なくとも左方及び/又は右方領域であって、且つ、シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域から小さい領域に渡って前記切削容易壁体と一体に設置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のシールド掘削用壁体。
【請求項4】
前記支持体は、前記切削容易壁体の内壁面の少なくとも略中央領域であって、且つ、切削容易壁体の直径方向に横断して前記切削容易壁体と一体に設置されたことを特徴とする請求項御1〜3のいずれかの項に記載のシールド掘削用壁体。
【請求項5】
前記支持体は、前記切削容易壁体の内壁面の上方及び下方領域であって、且つ、シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域から小さい領域に渡って前記切削容易壁体と一体に設置されるか、又は、
前記支持体は、前記切削容易壁体の内壁面の少なくとも左方及び右方領域であって、且つ、シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域から小さい領域に渡って前記切削容易壁体と一体に設置され、
前記上方及び下方、又は、左方及び右方に設置された前記支持体の間の空間領域を、
(a)セメント硬化体、
(b)繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体、
(c)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形の柱状体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体、又は、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の中実柱状体、
(d)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形又は多角形の柱状体にて補強されたセメント硬化体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体にて補強されたセメント硬化体、又は、繊維強化樹脂製ロッドにて補強された断面が多角形若しくは丸形のセメント硬化体、
(e)繊維強化樹脂製の板材、ロッド材、若しくは、その組み合わせた材料、
(f)ガラス繊維強化ウレタン、又は、
(g)木材、
で埋めることを特徴とする請求項1に記載のシールド掘削用壁体。
【請求項6】
前記支持体は、
(a)セメント硬化体、
(b)繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体、
(c)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形の柱状体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体、又は、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の中実柱状体、
(d)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形又は多角形の柱状体にて補強されたセメント硬化体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体にて補強されたセメント硬化体、又は、繊維強化樹脂製ロッドにて補強された断面が多角形若しくは丸形のセメント硬化体、又は、
(e)ガラス繊維強化ウレタン、
で作製することを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載のシールド掘削用壁体。
【請求項7】
前記切削容易壁体は、
(a)セメント硬化体、
(b)繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体、
(c)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形の柱状体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体、又は、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の中実柱状体、又は、
(d)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形又は多角形の柱状体にて補強されたセメント硬化体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体にて補強されたセメント硬化体、又は、繊維強化樹脂製ロッドにて補強された断面が多角形若しくは丸形のセメント硬化体、
で構築することを特徴とする請求項1〜6のいずれかの項に記載のシールド掘削用壁体。
【請求項8】
前記繊維強化樹脂は強化繊維に樹脂を含浸して構成され、前記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維、ボロン繊維等の無機繊維;チタン、スチール等の金属繊維;アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン、ポリアセタール、PBО、高強度ポリプロピレン等の有機繊維;から選択されるいずれかの繊維であるか、或いは、前記繊維を複数種混入したハイブリッドタイプとされ、
前記樹脂は、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、常温硬化型エポキシ樹脂、熱硬化型エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、若しくは、MMA等のラジカル反応系樹脂を少なくとも一種以上含むもの、又は、これら樹脂を発泡させたものであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかの項に記載のシールド掘削用壁体。
【請求項9】
前記セメント硬化体は、
(a)モルタル、
(b)ソイルモルタル、
(c)コンクリート、
(d)発泡ミルク、又は、
(e)モルタル、ソイルモルタル、又はコンクリートを発泡させたもの、
であることを特徴とする請求項5〜8のいずれかの項に記載のシールド掘削用壁体。
【請求項1】
シールド掘進機の発進又は到達のための発進到達部を有するトンネル掘進用立坑におけるシールド掘削用壁体であって、
シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域に渡って設置された、シールド掘進機にて切削容易な切削容易壁体と、
前記切削容易壁体の内壁面の少なくとも一部の領域を水平方向及び/又は鉛直方向に横断して、且つ、前記切削容易壁体と一体に設置された、シールド掘進機にて切削容易な細長形状の支持体と、
を有することを特徴とするシールド掘削用壁体。
【請求項2】
前記支持体は、前記切削容易壁体の内壁面の少なくとも上方及び/又は下方領域であって、且つ、シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域から小さい領域に渡って前記切削容易壁体と一体に設置されたことを特徴とする請求項1に記載のシールド掘削用壁体。
【請求項3】
前記支持体は、前記切削容易壁体の内壁面の少なくとも左方及び/又は右方領域であって、且つ、シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域から小さい領域に渡って前記切削容易壁体と一体に設置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のシールド掘削用壁体。
【請求項4】
前記支持体は、前記切削容易壁体の内壁面の少なくとも略中央領域であって、且つ、切削容易壁体の直径方向に横断して前記切削容易壁体と一体に設置されたことを特徴とする請求項御1〜3のいずれかの項に記載のシールド掘削用壁体。
【請求項5】
前記支持体は、前記切削容易壁体の内壁面の上方及び下方領域であって、且つ、シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域から小さい領域に渡って前記切削容易壁体と一体に設置されるか、又は、
前記支持体は、前記切削容易壁体の内壁面の少なくとも左方及び右方領域であって、且つ、シールド掘進機の切削開口直径より大きい領域から小さい領域に渡って前記切削容易壁体と一体に設置され、
前記上方及び下方、又は、左方及び右方に設置された前記支持体の間の空間領域を、
(a)セメント硬化体、
(b)繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体、
(c)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形の柱状体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体、又は、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の中実柱状体、
(d)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形又は多角形の柱状体にて補強されたセメント硬化体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体にて補強されたセメント硬化体、又は、繊維強化樹脂製ロッドにて補強された断面が多角形若しくは丸形のセメント硬化体、
(e)繊維強化樹脂製の板材、ロッド材、若しくは、その組み合わせた材料、
(f)ガラス繊維強化ウレタン、又は、
(g)木材、
で埋めることを特徴とする請求項1に記載のシールド掘削用壁体。
【請求項6】
前記支持体は、
(a)セメント硬化体、
(b)繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体、
(c)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形の柱状体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体、又は、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の中実柱状体、
(d)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形又は多角形の柱状体にて補強されたセメント硬化体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体にて補強されたセメント硬化体、又は、繊維強化樹脂製ロッドにて補強された断面が多角形若しくは丸形のセメント硬化体、又は、
(e)ガラス繊維強化ウレタン、
で作製することを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載のシールド掘削用壁体。
【請求項7】
前記切削容易壁体は、
(a)セメント硬化体、
(b)繊維強化樹脂製の筋材にて補強されたセメント硬化体、
(c)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形の柱状体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体、又は、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の中実柱状体、又は、
(d)繊維強化樹脂製の断面がI形若しくはH形又は多角形の柱状体にて補強されたセメント硬化体、繊維強化樹脂製の断面が多角形若しくは丸形の管状体にて補強されたセメント硬化体、又は、繊維強化樹脂製ロッドにて補強された断面が多角形若しくは丸形のセメント硬化体、
で構築することを特徴とする請求項1〜6のいずれかの項に記載のシールド掘削用壁体。
【請求項8】
前記繊維強化樹脂は強化繊維に樹脂を含浸して構成され、前記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維、ボロン繊維等の無機繊維;チタン、スチール等の金属繊維;アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン、ポリアセタール、PBО、高強度ポリプロピレン等の有機繊維;から選択されるいずれかの繊維であるか、或いは、前記繊維を複数種混入したハイブリッドタイプとされ、
前記樹脂は、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、常温硬化型エポキシ樹脂、熱硬化型エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、若しくは、MMA等のラジカル反応系樹脂を少なくとも一種以上含むもの、又は、これら樹脂を発泡させたものであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかの項に記載のシールド掘削用壁体。
【請求項9】
前記セメント硬化体は、
(a)モルタル、
(b)ソイルモルタル、
(c)コンクリート、
(d)発泡ミルク、又は、
(e)モルタル、ソイルモルタル、又はコンクリートを発泡させたもの、
であることを特徴とする請求項5〜8のいずれかの項に記載のシールド掘削用壁体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2013−100646(P2013−100646A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243743(P2011−243743)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(306032316)新日鉄住金マテリアルズ株式会社 (196)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(306032316)新日鉄住金マテリアルズ株式会社 (196)
【Fターム(参考)】
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