シールド掘進方法及び装置
【課題】土被りが浅いシールドトンネルの掘進の際にも地山に悪影響を与えることのないシールド掘進方法及び装置を提供する。
【解決手段】シールド掘進機1は、前端部に地山を掘削するカッタ3を有し、本体の外殻を構成するスキンプレート13の上部表面には、ほぼ全面に亘って複数枚のシート15が設置されている。機内側にシート15を繰り出し可能に収納するシート収納部19及びシート15を連続的に繰り出すシート繰出部21が備えられ、スキンプレート13には、隣り合うもの同士が一直線に並ぶないようにジグザグに配置されたシート15の引き出し口が設けられている。
【解決手段】シールド掘進機1は、前端部に地山を掘削するカッタ3を有し、本体の外殻を構成するスキンプレート13の上部表面には、ほぼ全面に亘って複数枚のシート15が設置されている。機内側にシート15を繰り出し可能に収納するシート収納部19及びシート15を連続的に繰り出すシート繰出部21が備えられ、スキンプレート13には、隣り合うもの同士が一直線に並ぶないようにジグザグに配置されたシート15の引き出し口が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシールド掘進方法及び装置に関し、特に掘進時に地山に悪影響を与えることのないシールド掘進方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機は円形又は矩形断面等の外殻を有し、先端部に設けられたカッタで地山を保持して地山の崩壊を防ぎながら地中を掘進する。掘進動作は、推進ジャッキで既設セグメントに反力を取ってシールド掘進機を前方に推進させると共に、カッタで地山を掘削する。そして、この掘進の際には、スキンプレートと呼ばれるシールド掘進機の外殻が地山と接触しているので、スキンプレートと地山との間で摩擦力が発生し、シールド掘進機はこの摩擦力に抗して前進することになる。
そして、従来のシールド掘進機においては、スキンプレートと地山が直接接触しており両者の間に摩擦力が発生し、シールド掘進機周辺地盤にはスキンプレートからシールド掘進機の進行方向の力が作用する。このため、土被りが浅いシールドトンネルの場合、シールド掘進機周辺地盤の変状により地表面の沈下及び陥没につながるという問題があった。
この現象は例えば、多連式のシールド掘進機、矩形断面のシールド掘進機といった水平面積の大きいシールド掘進機の場合に顕著となる。
【0003】
そこで、シールド掘進機本体の先端付近の外周部に潤滑材注出口を設け、本体外周部と地山との間に潤滑材を注出する発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、シールド掘進機の内部から気泡を吐出させ、シールド掘進機の外周部と地山との間に気泡を介在させながら掘進する発明が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】実願昭61−038343号公報(実開昭62−154092号)のマイクロフィルム(5〜8頁、図1)
【特許文献1】特開昭61−142292号公報(2〜3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載された技術は、注出した潤滑材および吐出した気泡が、地山内に浸透したり、本体外周部の下面に向かって流れたりするため、特に本体外周部の上面において所望の潤滑効果が得られないことから、土被りが浅いシールドトンネルの掘進の際に、地山に悪影響を与えるという問題があった。
【0005】
本発明は、本発明はかかる問題を解決するためになされたものであり、土被りが浅いシールドトンネルの掘進の際にも地山に悪影響を与えることのないシールド掘進方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係るシールド掘進方法は、シールド掘進機の掘進に伴って複数枚のシートを順次繰り出し、該複数枚のシートを地山と前記シールド掘進機の外周面との間に介在させるものであって、
前記複数枚のシートのうち隣り合うもの同士を、前記シールド掘進機のスキンプレートに設けた一直線に並ばない引き出し口から機外側に繰り出すことを特徴とする。
【0007】
(2)本発明に係るシールド掘進機は、シートを繰り出し可能状態で格納するシート格納手段と、
シールド掘進機の前部側に設けられて前記シート格納手段に格納されたシートをシールド掘進機の掘進に伴って、前記シールド掘進機のスキンプレートに設けた一直線に並ばない引き出し口から機外側に繰り出すシート繰出部と、
を備えたことを特徴とする。
(3)また、前記(2)において、前記シート繰出部は、止水手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
よって、本発明においては、複数枚のシートを順次繰り出してスキンプレートと地山との間にシートを介在させて掘進するから、掘進時に地山がスキンプレートからの摩擦力による悪影響を受けることがない。また、シートの引き出し口を、隣り合うもの同士が一直線に並ばないようにしているから、一直線に並んだときのようなスキンプレートの強度が弱くなることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は本発明の一実施の形態の平面図、図2は側断面図、図3は図1における矢視A−A断面図、図4は図2における矢視B−B断面図である。なお、図4において本件発明の説明に不要と思われる部分は省略してある。
まず、図1〜図4に基づいてシールド掘進機を含めて全体構成を概説する。
1は矩形断面のシールド掘進機であり、前端部に地山を掘削するカッタ3を有し、また本体内部には、図2に示すように、掘削土砂を排出する排土管5、本体を推進させる複数のシールドジャッキ7、セグメントの組立をするエレクタ装置9を備えている。
11はシールド掘進機1の後方に設置されてエレクタ装置9にセグメントを供給するセグメント供給装置、12はエレクタ装置9で組み立てられた既設セグメントである。
【0010】
13はシールド掘進機1の本体の外殻を構成するスキンプレートであり、スキンプレート13は、図4に示すように、4隅及び上下面の中央部に円弧状の突出部が形成されている。
15はスキンプレート13の上部表面にほぼ全面に亘って設置された複数枚のシートである。シート15は後述するシート格納装置から順次繰り出されたものである。シート15の材質は例えばゴム、塩化ビニル、布等が考えられるが、いかなる材質のものを使用するかは、トンネル掘削断面積、形状、土被り等の条件により決定する。
【0011】
17は機内側に設置されて掘進に同期してシート15を繰り出すシート繰出装置であり、シート15を繰り出し可能に収納するシート収納部19及びシート15を連続的に繰り出すシート繰出部21を備えている。
シート繰出装置17はシールド掘進機1の前端部に幅方向に複数設置されているが、両端部は補助カッタを設置している関係から少しだけ後方にずらして設置してある(図3参照)。
また、両端部以外のものについても、シート15の引き出し口をスキンプレートに設ける関係から、隣り合うもの同士が一直線に並ぶとその部分だけスキンプレート13の強度が弱くなることを考慮してジグザグにずらしてある。
【0012】
シート収納部19は、機内側の上部に設けられ、回転可能な円筒にシートを巻回した構成であり、シート15を引っ張るとその張力により円筒が回転してシートを順次繰り出す構成である。
20はシート収納部19に巻き回されたシート15をシート繰出部21に案内するガイドローラである。
【0013】
図5は図2における円イで囲んだ部分の拡大図、図6は図5に示した部分を機内側から見た図である。
図5、図6に基づいてシート繰出部21の構成を説明する。23はシート15をガイドするガイド部材であり、シート15と接触する面が凸状の円弧面に形成されている。ガイド部材23は下部側23aがスチール製で、上部側23bがゴム製になっている。
上部側23bをゴム製にしたのは、後述のカバー体31との密着性を良くして止水性を向上させるためである。
【0014】
ガイド部材23は、スキンプレート13に固定された取り付け部25にシム27を介してボルト28によって取り付けられている。
29は下部側23aと取り付け部25との間に介装されたシール部材である。
【0015】
31はガイド部材23に対向して設置されたカバー体である。カバー体31におけるガイド部材23に対向する面は、ガイド部材23の凸状の円弧面に沿うような凹状の円弧面に形成されている。
カバー体31は、スキンプレート13に固定された取り付け部33にシム35を介してボルト36によって取り付けられている。
37はカバー体31と取り付け部33との間に介装されたシール部材である。
【0016】
上記のように構成されたシート繰出部21の作用について説明すると、シート繰出部21は、ガイド部材23の湾曲面がシート15を機内側から機外側に案内して該湾曲面に沿って機内側から機側に繰り出すと共に、ゴム製の上部側23bがカバー体31との隙間の止水をする。
【0017】
次に、上記のように構成された本実施の形態の動作を説明する。
シールド掘進機を発進立坑内に設置し、この状態でシート15をシールド掘進機1の上面を覆うように後端側まで引き出し、後端部を立坑内の仮セグメントに固定する。この状態で、シールド掘進機1を発進すると、シート15は掘進に伴って順次引き出されて地山とシールド掘進機1のスキンプレート13との間に設置される。
【0018】
掘進中においては地山からの土圧がスキンプレート13に作用することになるが、スキンプレート13と地山の間にシート15が介在して、なおかつシート15は順次繰り出されるので、シールド掘進機1はシート15の下を移動することになり、地山にはシールド掘進機1の掘進に伴う摩擦力が作用しない。よって、掘進に伴う地山への悪影響は全く出ないことになる。
【0019】
一定の距離を掘進して、シート収納部19のシート15が無くなったら、新たなシートを準備して先行のシートの後端に接続して連続的に繰り出すようにする。
なお、発進立坑に設置した仮セグメントは撤去する必要があるが、シールド掘進機1がある程度掘進すればシート15は既設セグメント12と地山との間に挟まれるので、シート15の後端部を固定していなくても順次繰り出すことが可能である。
【0020】
図7はシート繰出部の他の態様の説明図、図8は図7の矢視A−A断面図、図9は図7の機内側から見た図である。図において、41はシート繰出部、43はシート15の繰り出しをガイドするガイドローラ、45はガイドローラ43の両端部に設けられてガイドローラ43を回転自在に支持する軸受部材、47,49はそれぞれガイドローラ43の前後にガイドローラ43を覆うように設置された第1,2カバー体である。第1,第2カバー体47,49はガイドローラ43に対向する面が凹状の円弧面に形成されている。
【0021】
第1,第2カバー体47,49は、スキンプレート13に固定された取り付け部51にシム53を介してボルト55によって取り付けられている。
57は取り付け部51と第1,第2カバー体47,49の間に介装されたシール部材である。
【0022】
上記のように構成されたシート繰出部41の作用について説明すると、ガイドローラ43がシート15を機内側から機外側に案内し、第1,第2カバー体47,49がガイドローラ43とスキンプレート13との隙間をシールする。シート15の繰り出しに際しては、ガイドローラ43が回転し、シート15とガイドローラ43は転がり接触となり、円滑な繰り出しが実現できる。
【0023】
図10はシート繰出部の他の態様の説明図、図11は図10の矢視A−A断面図、図12は図10の機内側から見た図である。図において、図7〜図9と同一又は対応する部分には同一の符号を付している。
この態様のものは、第1,第2カバー体47,49とガイドローラ43との間にさらに第1,第2ガイドローラ61,63を設けたものである。
【0024】
第1ガイドローラ61を設けることにより、シート15は繰り出しの際にその両面において転がり接触となり、摩擦が小さくなり、さらに円滑な繰り出しが実現される。
また、第2ガイドローラ63を設けることにより、ガイドローラの回転を阻害することなくガイドローラ43とカバー体49との間のシールを確実にすることができる。
【0025】
以上のように本実施の形態においては、シート15を順次繰り出してスキンプレート13と地山との間にシート15を介在させて掘進するようにしたことにより、掘進時に地山がスキンプレート13からの摩擦力による悪影響を受けることがない。
【0026】
なお、本実施の形態においては、複数枚のシート15を繰り出す例を挙げたが、本発明はこれに限られるものではなく、シールド掘進機の外周面積が小さい場合には1枚のシートであってもよい。
また、必ずしも全面を覆わなくてもシールド掘進機の外周面の一部を覆えば一定の効果を奏することができる。
【0027】
さらに、シート繰出部21,41のシールについては、例えばリップシールのような周知の手段を併用することもできる。
【0028】
また、上記実施の形態においては扁平な横形矩形断面のシールド掘進機を例に挙げ、その上面側にのみシートを繰り出す例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、扁平な縦形矩形断面のシールド掘進機にも適用でき、またシールド掘進機の側面にシートを繰り出すようにしてもよい。
側面からシートを繰り出すようにした場合には、掘削中のシールドトンネルに近接する構造物への影響を防止できる。
【0029】
さらに、扁平な矩形断面のシールド掘進機に限られず、多連式のシールド掘進機や円形断面のシールド掘進機にも適用できることは言うまでもない。
【0030】
本発明は以上説明したように構成したので以下に示すような効果を奏する。
(i)掘進に伴ってシートを順次繰り出し、該シートを地山とシールド掘進機の外周面との間に介在させながら掘進するようにしたので、シールド掘進機本体と地山とが直接接触することがなく、掘進時に地山に悪影響を与えることがない。
(ii)また、シールド掘進機の外周面とシートとの間に滑剤を注入するようにしたので、シートとシールド掘進機の外周面の摩擦抵抗が低減され、掘進を円滑に行うことができる。
(iii)また、シートを繰り出し可能状態で格納するシート格納手段と、シールド掘進機の前部側に設けられて前記シート格納手段に格納されたシートをシールド掘進機の掘進に伴って機外側に繰り出すシート繰出手段とを備えたことにより、掘進に伴ってシートを順次繰り出して、該シートを地山とシールド掘進機の外周面との間に介在させながら掘進することが可能となる。このため、シールド掘進機本体と地山とが直接接触することがなく、掘進時に地山に悪影響を与えることがない。
。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように本発明によれば、シールド掘進機本体と地山とが直接接触することがなく、掘進時に地山に悪影響を与えることがないから、各種シールト掘進機および各種シールド掘進方法に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態1に係るシールド掘進機の平面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るシールド掘進機の側断面図である。
【図3】図2における矢視A−A断面図である。
【図4】図2における矢視B−B断面図である。
【図5】図2における楕円イで囲んだ部分の拡大図である。
【図6】図5に示した部分を機内側から見た図である。
【図7】本実施の形態におけるシート繰出部の他の態様の説明図である。
【図8】図7における矢視A−A断面図である。
【図9】図7に示した部分を機内側から見た図である。
【図10】本実施の形態におけるシート繰出部の他の態様の説明図である。
【図11】図10における矢視A−A断面図である。
【図12】図10に示した部分を機内側から見た図である。
【符号の説明】
【0033】
1 シールド掘進機
13 スキンプレート
15 シート
19 シート収納部
21 シート繰出部
41 シート繰出部
【技術分野】
【0001】
本発明はシールド掘進方法及び装置に関し、特に掘進時に地山に悪影響を与えることのないシールド掘進方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機は円形又は矩形断面等の外殻を有し、先端部に設けられたカッタで地山を保持して地山の崩壊を防ぎながら地中を掘進する。掘進動作は、推進ジャッキで既設セグメントに反力を取ってシールド掘進機を前方に推進させると共に、カッタで地山を掘削する。そして、この掘進の際には、スキンプレートと呼ばれるシールド掘進機の外殻が地山と接触しているので、スキンプレートと地山との間で摩擦力が発生し、シールド掘進機はこの摩擦力に抗して前進することになる。
そして、従来のシールド掘進機においては、スキンプレートと地山が直接接触しており両者の間に摩擦力が発生し、シールド掘進機周辺地盤にはスキンプレートからシールド掘進機の進行方向の力が作用する。このため、土被りが浅いシールドトンネルの場合、シールド掘進機周辺地盤の変状により地表面の沈下及び陥没につながるという問題があった。
この現象は例えば、多連式のシールド掘進機、矩形断面のシールド掘進機といった水平面積の大きいシールド掘進機の場合に顕著となる。
【0003】
そこで、シールド掘進機本体の先端付近の外周部に潤滑材注出口を設け、本体外周部と地山との間に潤滑材を注出する発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、シールド掘進機の内部から気泡を吐出させ、シールド掘進機の外周部と地山との間に気泡を介在させながら掘進する発明が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】実願昭61−038343号公報(実開昭62−154092号)のマイクロフィルム(5〜8頁、図1)
【特許文献1】特開昭61−142292号公報(2〜3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載された技術は、注出した潤滑材および吐出した気泡が、地山内に浸透したり、本体外周部の下面に向かって流れたりするため、特に本体外周部の上面において所望の潤滑効果が得られないことから、土被りが浅いシールドトンネルの掘進の際に、地山に悪影響を与えるという問題があった。
【0005】
本発明は、本発明はかかる問題を解決するためになされたものであり、土被りが浅いシールドトンネルの掘進の際にも地山に悪影響を与えることのないシールド掘進方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係るシールド掘進方法は、シールド掘進機の掘進に伴って複数枚のシートを順次繰り出し、該複数枚のシートを地山と前記シールド掘進機の外周面との間に介在させるものであって、
前記複数枚のシートのうち隣り合うもの同士を、前記シールド掘進機のスキンプレートに設けた一直線に並ばない引き出し口から機外側に繰り出すことを特徴とする。
【0007】
(2)本発明に係るシールド掘進機は、シートを繰り出し可能状態で格納するシート格納手段と、
シールド掘進機の前部側に設けられて前記シート格納手段に格納されたシートをシールド掘進機の掘進に伴って、前記シールド掘進機のスキンプレートに設けた一直線に並ばない引き出し口から機外側に繰り出すシート繰出部と、
を備えたことを特徴とする。
(3)また、前記(2)において、前記シート繰出部は、止水手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
よって、本発明においては、複数枚のシートを順次繰り出してスキンプレートと地山との間にシートを介在させて掘進するから、掘進時に地山がスキンプレートからの摩擦力による悪影響を受けることがない。また、シートの引き出し口を、隣り合うもの同士が一直線に並ばないようにしているから、一直線に並んだときのようなスキンプレートの強度が弱くなることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は本発明の一実施の形態の平面図、図2は側断面図、図3は図1における矢視A−A断面図、図4は図2における矢視B−B断面図である。なお、図4において本件発明の説明に不要と思われる部分は省略してある。
まず、図1〜図4に基づいてシールド掘進機を含めて全体構成を概説する。
1は矩形断面のシールド掘進機であり、前端部に地山を掘削するカッタ3を有し、また本体内部には、図2に示すように、掘削土砂を排出する排土管5、本体を推進させる複数のシールドジャッキ7、セグメントの組立をするエレクタ装置9を備えている。
11はシールド掘進機1の後方に設置されてエレクタ装置9にセグメントを供給するセグメント供給装置、12はエレクタ装置9で組み立てられた既設セグメントである。
【0010】
13はシールド掘進機1の本体の外殻を構成するスキンプレートであり、スキンプレート13は、図4に示すように、4隅及び上下面の中央部に円弧状の突出部が形成されている。
15はスキンプレート13の上部表面にほぼ全面に亘って設置された複数枚のシートである。シート15は後述するシート格納装置から順次繰り出されたものである。シート15の材質は例えばゴム、塩化ビニル、布等が考えられるが、いかなる材質のものを使用するかは、トンネル掘削断面積、形状、土被り等の条件により決定する。
【0011】
17は機内側に設置されて掘進に同期してシート15を繰り出すシート繰出装置であり、シート15を繰り出し可能に収納するシート収納部19及びシート15を連続的に繰り出すシート繰出部21を備えている。
シート繰出装置17はシールド掘進機1の前端部に幅方向に複数設置されているが、両端部は補助カッタを設置している関係から少しだけ後方にずらして設置してある(図3参照)。
また、両端部以外のものについても、シート15の引き出し口をスキンプレートに設ける関係から、隣り合うもの同士が一直線に並ぶとその部分だけスキンプレート13の強度が弱くなることを考慮してジグザグにずらしてある。
【0012】
シート収納部19は、機内側の上部に設けられ、回転可能な円筒にシートを巻回した構成であり、シート15を引っ張るとその張力により円筒が回転してシートを順次繰り出す構成である。
20はシート収納部19に巻き回されたシート15をシート繰出部21に案内するガイドローラである。
【0013】
図5は図2における円イで囲んだ部分の拡大図、図6は図5に示した部分を機内側から見た図である。
図5、図6に基づいてシート繰出部21の構成を説明する。23はシート15をガイドするガイド部材であり、シート15と接触する面が凸状の円弧面に形成されている。ガイド部材23は下部側23aがスチール製で、上部側23bがゴム製になっている。
上部側23bをゴム製にしたのは、後述のカバー体31との密着性を良くして止水性を向上させるためである。
【0014】
ガイド部材23は、スキンプレート13に固定された取り付け部25にシム27を介してボルト28によって取り付けられている。
29は下部側23aと取り付け部25との間に介装されたシール部材である。
【0015】
31はガイド部材23に対向して設置されたカバー体である。カバー体31におけるガイド部材23に対向する面は、ガイド部材23の凸状の円弧面に沿うような凹状の円弧面に形成されている。
カバー体31は、スキンプレート13に固定された取り付け部33にシム35を介してボルト36によって取り付けられている。
37はカバー体31と取り付け部33との間に介装されたシール部材である。
【0016】
上記のように構成されたシート繰出部21の作用について説明すると、シート繰出部21は、ガイド部材23の湾曲面がシート15を機内側から機外側に案内して該湾曲面に沿って機内側から機側に繰り出すと共に、ゴム製の上部側23bがカバー体31との隙間の止水をする。
【0017】
次に、上記のように構成された本実施の形態の動作を説明する。
シールド掘進機を発進立坑内に設置し、この状態でシート15をシールド掘進機1の上面を覆うように後端側まで引き出し、後端部を立坑内の仮セグメントに固定する。この状態で、シールド掘進機1を発進すると、シート15は掘進に伴って順次引き出されて地山とシールド掘進機1のスキンプレート13との間に設置される。
【0018】
掘進中においては地山からの土圧がスキンプレート13に作用することになるが、スキンプレート13と地山の間にシート15が介在して、なおかつシート15は順次繰り出されるので、シールド掘進機1はシート15の下を移動することになり、地山にはシールド掘進機1の掘進に伴う摩擦力が作用しない。よって、掘進に伴う地山への悪影響は全く出ないことになる。
【0019】
一定の距離を掘進して、シート収納部19のシート15が無くなったら、新たなシートを準備して先行のシートの後端に接続して連続的に繰り出すようにする。
なお、発進立坑に設置した仮セグメントは撤去する必要があるが、シールド掘進機1がある程度掘進すればシート15は既設セグメント12と地山との間に挟まれるので、シート15の後端部を固定していなくても順次繰り出すことが可能である。
【0020】
図7はシート繰出部の他の態様の説明図、図8は図7の矢視A−A断面図、図9は図7の機内側から見た図である。図において、41はシート繰出部、43はシート15の繰り出しをガイドするガイドローラ、45はガイドローラ43の両端部に設けられてガイドローラ43を回転自在に支持する軸受部材、47,49はそれぞれガイドローラ43の前後にガイドローラ43を覆うように設置された第1,2カバー体である。第1,第2カバー体47,49はガイドローラ43に対向する面が凹状の円弧面に形成されている。
【0021】
第1,第2カバー体47,49は、スキンプレート13に固定された取り付け部51にシム53を介してボルト55によって取り付けられている。
57は取り付け部51と第1,第2カバー体47,49の間に介装されたシール部材である。
【0022】
上記のように構成されたシート繰出部41の作用について説明すると、ガイドローラ43がシート15を機内側から機外側に案内し、第1,第2カバー体47,49がガイドローラ43とスキンプレート13との隙間をシールする。シート15の繰り出しに際しては、ガイドローラ43が回転し、シート15とガイドローラ43は転がり接触となり、円滑な繰り出しが実現できる。
【0023】
図10はシート繰出部の他の態様の説明図、図11は図10の矢視A−A断面図、図12は図10の機内側から見た図である。図において、図7〜図9と同一又は対応する部分には同一の符号を付している。
この態様のものは、第1,第2カバー体47,49とガイドローラ43との間にさらに第1,第2ガイドローラ61,63を設けたものである。
【0024】
第1ガイドローラ61を設けることにより、シート15は繰り出しの際にその両面において転がり接触となり、摩擦が小さくなり、さらに円滑な繰り出しが実現される。
また、第2ガイドローラ63を設けることにより、ガイドローラの回転を阻害することなくガイドローラ43とカバー体49との間のシールを確実にすることができる。
【0025】
以上のように本実施の形態においては、シート15を順次繰り出してスキンプレート13と地山との間にシート15を介在させて掘進するようにしたことにより、掘進時に地山がスキンプレート13からの摩擦力による悪影響を受けることがない。
【0026】
なお、本実施の形態においては、複数枚のシート15を繰り出す例を挙げたが、本発明はこれに限られるものではなく、シールド掘進機の外周面積が小さい場合には1枚のシートであってもよい。
また、必ずしも全面を覆わなくてもシールド掘進機の外周面の一部を覆えば一定の効果を奏することができる。
【0027】
さらに、シート繰出部21,41のシールについては、例えばリップシールのような周知の手段を併用することもできる。
【0028】
また、上記実施の形態においては扁平な横形矩形断面のシールド掘進機を例に挙げ、その上面側にのみシートを繰り出す例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、扁平な縦形矩形断面のシールド掘進機にも適用でき、またシールド掘進機の側面にシートを繰り出すようにしてもよい。
側面からシートを繰り出すようにした場合には、掘削中のシールドトンネルに近接する構造物への影響を防止できる。
【0029】
さらに、扁平な矩形断面のシールド掘進機に限られず、多連式のシールド掘進機や円形断面のシールド掘進機にも適用できることは言うまでもない。
【0030】
本発明は以上説明したように構成したので以下に示すような効果を奏する。
(i)掘進に伴ってシートを順次繰り出し、該シートを地山とシールド掘進機の外周面との間に介在させながら掘進するようにしたので、シールド掘進機本体と地山とが直接接触することがなく、掘進時に地山に悪影響を与えることがない。
(ii)また、シールド掘進機の外周面とシートとの間に滑剤を注入するようにしたので、シートとシールド掘進機の外周面の摩擦抵抗が低減され、掘進を円滑に行うことができる。
(iii)また、シートを繰り出し可能状態で格納するシート格納手段と、シールド掘進機の前部側に設けられて前記シート格納手段に格納されたシートをシールド掘進機の掘進に伴って機外側に繰り出すシート繰出手段とを備えたことにより、掘進に伴ってシートを順次繰り出して、該シートを地山とシールド掘進機の外周面との間に介在させながら掘進することが可能となる。このため、シールド掘進機本体と地山とが直接接触することがなく、掘進時に地山に悪影響を与えることがない。
。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように本発明によれば、シールド掘進機本体と地山とが直接接触することがなく、掘進時に地山に悪影響を与えることがないから、各種シールト掘進機および各種シールド掘進方法に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態1に係るシールド掘進機の平面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るシールド掘進機の側断面図である。
【図3】図2における矢視A−A断面図である。
【図4】図2における矢視B−B断面図である。
【図5】図2における楕円イで囲んだ部分の拡大図である。
【図6】図5に示した部分を機内側から見た図である。
【図7】本実施の形態におけるシート繰出部の他の態様の説明図である。
【図8】図7における矢視A−A断面図である。
【図9】図7に示した部分を機内側から見た図である。
【図10】本実施の形態におけるシート繰出部の他の態様の説明図である。
【図11】図10における矢視A−A断面図である。
【図12】図10に示した部分を機内側から見た図である。
【符号の説明】
【0033】
1 シールド掘進機
13 スキンプレート
15 シート
19 シート収納部
21 シート繰出部
41 シート繰出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機の掘進に伴って複数枚のシートを順次繰り出し、該複数枚のシートを地山と前記シールド掘進機の外周面との間に介在させるシールド掘進方法であって、
前記複数枚のシートのうち隣り合うもの同士を、前記シールド掘進機のスキンプレートに設けた一直線に並ばない引き出し口から機外側に繰り出すことを特徴とするシールド掘進方法。
【請求項2】
シートを繰り出し可能状態で格納するシート格納手段と、
シールド掘進機の前部側に設けられて前記シート格納手段に格納されたシートをシールド掘進機の掘進に伴って、前記シールド掘進機のスキンプレートに設けた一直線に並ばない引き出し口から機外側に繰り出すシート繰出部と、
を備えたことを特徴とするシールド掘進機。
【請求項3】
前記シート繰出部は、止水手段を備えることを特徴とする請求項2記載のシールド掘進機。
【請求項1】
シールド掘進機の掘進に伴って複数枚のシートを順次繰り出し、該複数枚のシートを地山と前記シールド掘進機の外周面との間に介在させるシールド掘進方法であって、
前記複数枚のシートのうち隣り合うもの同士を、前記シールド掘進機のスキンプレートに設けた一直線に並ばない引き出し口から機外側に繰り出すことを特徴とするシールド掘進方法。
【請求項2】
シートを繰り出し可能状態で格納するシート格納手段と、
シールド掘進機の前部側に設けられて前記シート格納手段に格納されたシートをシールド掘進機の掘進に伴って、前記シールド掘進機のスキンプレートに設けた一直線に並ばない引き出し口から機外側に繰り出すシート繰出部と、
を備えたことを特徴とするシールド掘進機。
【請求項3】
前記シート繰出部は、止水手段を備えることを特徴とする請求項2記載のシールド掘進機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−307643(P2006−307643A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224601(P2006−224601)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【分割の表示】特願平11−26889の分割
【原出願日】平成11年2月4日(1999.2.4)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【分割の表示】特願平11−26889の分割
【原出願日】平成11年2月4日(1999.2.4)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]