説明

シールド構造体及び携帯端末

【課題】本発明は、シールド効果を適切に行うことができるシールド構造体を提供することを目的とする。
【解決手段】回路基板に装着され、電磁ノイズを遮蔽するシールド構造体であって、前記回路基板の主面に対し対向する天板部10と、その外周部から前記回路基板の主面に対して垂下される側壁11とを有し、前記側壁の回路基板との着接面に、回路基板に締結する複数の締結部13A〜13Gと、前記着接面の一部を突出させた凸部14A〜14Hが、回路基板に当接するように形成され、前記締結部又は前記凸部と、前記側壁に沿って隣接する締結部又は凸部いずれかとの間隔が、回路で使用する周波数帯域の電磁ノイズの波長よりも短く設定されていることを特徴とするシールド構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路の電磁ノイズを遮蔽するシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器の回路基板上には、多くの電子部品が実装され、その中には、高周波等を発生する電子部品も実装されている。これら電子部品からの高周波等が他の電子部品に与える悪影響を抑制すると共に、回路基板に実装された電子部品に対する外部からの高周波等の影響を防ぐために、シールド構造体で回路基板全体を覆ったり、該当する電子部品を囲むことによって、ノイズの侵入や漏洩を軽減させている。
【0003】
しかしながら、シールド構造体によるシールドが十分であったとしても回路基板とシールド構造体との密着度が不十分であると、当該隙間を通じての電磁波漏れが生じ、シールド効果を損なうことがある。
図6に従来のシールド構造体の一例の斜視図を示す。
側壁101と仕切壁102の回路基板に着接する面104の一部には回路基板と締結するためのねじ孔103A〜103Nが複数形成されている。
【0004】
当該シールド構造体を回路基板に被せて締結する場合には、回路基板上に、当該シールド構造体のねじ孔103A〜103Nに合う位置にそれぞれねじ孔を設け、ねじにより締付けして回路基板と当該シールド構造体を締結する。
このように、シールド構造体を回路基板に締結することによって、回路基板上の電子部品がシールド構造体によって囲繞される。
【0005】
また、特許文献1には、回路基板全体をシールド構造体で覆う場合のシールドケース本体と蓋体の当接度の接触力を強める構造のシールド構造体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平06-066092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、回路基板とシールド構造体を締結する場合に、着接面の平滑度の悪さや、回路基板やシールド構造体に生じるゆがみが原因で回路基板とシールド構造体の着接面において、断続的に点接触しているような状態になり、回路基板とシールド構造体の着接面に隙間が生じ、シールド効果が低下するという問題があった。
回路基板とシールド構造体の着接面の密着度を上げるためには、ねじ止めする部分を増やすことが考えられる。
【0008】
しかしながら、ねじ孔周辺の強度確保のために側壁や仕切壁の壁厚を考慮せねばならず、回路基板やシールド構造体の大きさの点で不利になり、部品点数も増加し、取付作業も煩雑になる。
そこで、本発明は、係る問題に鑑みてなされたものであり、シールド効果を適切に行うことが可能なシールド構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係るシールド構造体は、回路基板に装着され、電磁ノイズを遮蔽するシールド構造体であって、前記回路基板の主面に対し対向する天板部と、その外周部から前記回路基板の主面に対して垂下される側壁とを有し、前記側壁の回路基板との着接面に、回路基板に締結する複数の締結部と、前記着接面の一部を突出させた1以上の凸部とが、回路基板に当接するように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上述の構成により、本発明に係るシールド構造体は、シールド効果を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係るシールド構造体の斜視図
【図2】(a)は本発明の実施の形態に係るシールド構造体と回路基板の締結の模式図 (b)は本発明の実施の形態に係るシールド構造体の底面図 (c)は回路基板の平面図
【図3】実施の形態のシールド構造体と回路基板との締結状態を示す説明図
【図4】凸部の形状の変形例の説明図
【図5】ねじ間に凸部を複数形成したときの説明図
【図6】従来のシールド構造体の一例の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<1.実施の形態1>
<構成>
以下、本発明の実施の形態に係るシールド構造体の構成を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るシールド構造体1の斜視図である。本実施例のシールド構造体1は、携帯電話に搭載された電気回路の電磁波ノイズを遮蔽するために回路基板に締結されて用いられるものである。
【0013】
前記シールド構造体1は、Mg(マグネシウム)合金から成り、一方が開口した底の浅い箱状であり、天板10と天板10の外縁部に形成された側壁11と、天板10と側壁11で囲まれた内部をさらに仕切る仕切壁12A及び仕切壁12Bとから構成されている。 Mg合金はアルミニウムや一般的な樹脂と比較して強度が高く、耐凹み性が強く、電磁波シールド性も高いといった特徴がある。
【0014】
側壁11及び仕切壁12A、12Bの開口側端面には回路基板と締結するためのねじ孔13A〜13Gが設けられている。
同じく、側壁11及び仕切壁12A、12Bの開口側端面であって前記ねじ孔とねじ孔の間には凸部14A〜14Hが形成されている。
凸部14A〜14Hの高さは、その両側のねじ孔にねじを挿入して回路基板に締結した場合に、凸部も回路基板に当接するのに必要な高さとしている。従って、回路基板の表面の凹凸深さ及びシールド構造体の回路基板に着接する面の凹凸深さの程度によって、凸部14A〜14Hの高さは異なってくるが、本実施例のように、携帯電話機の回路基板に適用する場合は、50um程度に設定している。
凸部14A〜14Hの形状としては、この実施例では図1に見られるように円弧状としている。
また、凸部14A〜14Hを設ける位置は、図1に見られるようにねじ孔13A〜13Gとねじ孔13A〜13Gの間のほぼ中間位置としている。中間位置とすると、隣り合う2つのねじ孔13A〜13Gまでの距離を等しく且つ最小にすることができて、シールド効果を高めやすいのに加えて、ねじ止め時のトルクのばらつきによりシールド構造体や回路基板の歪みの影響を少なくすることができるからである。
なお、ねじ孔と凸部との距離は、回路の使用周波数帯域で干渉する電磁ノイズの1/4波長以下の長さとなるように設定すると、高いシールド効果が得られる。
例えば2.4GHz帯の電波を通信に使用する携帯電話の場合には、2.4GHzの電波の波長の1/4の長さは約3cm(センチメートル)であるので、側壁や仕切壁に沿って隣接するねじ止めの締結部間の距離が3cm以上の場合に、当該締結部間に着接面を突出させた凸部形状に形成し、どの隣接する締結部間の距離並びに締結部と凸部までの距離が3cm以上になる箇所がないように形成することにより回路基板上の電子部品から発生するこれら周波数帯域の電磁ノイズを効果的に遮蔽することができる。
もしも、隣り合うねじ孔の間隔が電磁ノイズの1/2波長よりも長い場合は、そのねじ孔とねじ孔の間に2個以上の凸部を設けることによって対処すればよい。
<締結方法>
図2(a)は、図1に示すシールド構造体1を回路基板2に被せて締結する場合を説明する斜視図である。
【0015】
回路基板2は、携帯電話に実装される基板であり、その上には携帯電話の機能を実現するための部品や回路、メモリ等が実装される。なお、本実施の形態においては、部品や回路、メモリ等を総称して電子部品と呼ぶ。
例えば図2(a)にて示す電子部品23A〜23Hが、携帯端末の機能を実現するための部品や回路、メモリ等に相当する。
【0016】
電子部品23A〜23Hは、自身の動作によりノイズを発するものであり、他に影響を及ぼすものである。また、電子部品22は、アンテナであり、外部から到来する電波を受信するため、他の電子部品から発するノイズによって動作に影響が出るものである。
図2(b)はシールド構造体1の底面図であり、図2(c)は回路基板2の平面図である。回路基板2上には、シールド構造体の側壁11及び仕切壁12A、12Bが回路基板2に着接する端面に沿ってGND(グランド)パターン24が形成されており、さらにシールド構造体1の側壁11及び仕切壁12A、12Bに形成されたねじ孔13A〜13Gに対応する位置にねじ孔21A〜21Gが形成されている。
【0017】
シールド構造体1は、側壁と仕切壁の端面が、このGNDパターンに合うように回路基板2に被せられ、導電性のあるねじを用いて締付けて、回路基板2に締結される。
このように締結すると、ねじ孔とねじ孔の間は、丁度、図3に示すように、シールド構造体側の凸部14が回路基板側のGND電極と当接した状態で、ねじの締付けによりシールド構造体の端面と回路基板側GND電極とのギャップが狭小化する。そして、ねじ45A、45Bと凸部14との間は1/4波長以下の距離に保たれているので、電磁波漏れが効果的に防止される。
<2.変形例>
以上、1つの実施の形態を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限られない。
例えば、以下のような変形例が考えられる。
【0018】
(1)上記実施の形態において凸部の突出量を50umとしたが、これに限定されない。凸部の突出量は製造等の誤差により生ずる着接面の粗さの凸凹の大きさよりも突出しておればよい。
この製造等の誤差により生ずる面粗さの凸凹の大きさは、想定している基準面に対して通常プラスマイナス50umの範囲に収まる。このような場合にシールド構造体の一部を突出させる突出量を50um〜100um(面粗さの凸凹量の2倍程度)の範囲の突出量にすれば、着接面の一部を突出させた凸部で確実に当接させることができ、シールド効果を発揮させることができる。
【0019】
(2)実施例において、凸部の形状は弧状としたが、これに限らず、図4(a)に示すように三角形状としてもよく、或いは(b)に示すようにかまぼこ型としてもよく、さらには(c)のように陸屋根型状、或いは(d)のようにドーム形状としてもよい。これらはシールド構造体が設置される回路基板に応じて適宜選択できるものである。
(3)図5にねじ孔とねじ孔の間に凸部を2か所以上設ける例を示す。
図5に示すように、ねじ止めの締結部間には、2箇所の凸部95A、95Bが形成されている。凸部95A、95Bの最大の突出量は同じ突出量に形成するのが望ましい。図3で示した場合と同様に、ねじにより締付け締結すると、凸部95A、95Bで回路基板2と当接する。このとき、凸部95A、95Bは、各々側壁又は仕切壁に沿って隣接するねじ止め位置又は他の凸部から距離が電磁ノイズの波長の1/4以下の長さになる位置に形成されることが望ましい。さらに、ねじ止め締結部間に等間隔に形成することが望ましい。
【0020】
このように凸部95A、95Bを形成することにより、効率よく凸部を形成することができる。また、ねじで締付けたときにどちらか一方の凸部での回路基板との当接が不十分になることを防止することができ、ねじ止め締結部間に1つの凸部を形成する場合と同様の効果を発揮させることができる。
(4)シールド構造体として、1又は複数の電子部品を囲繞する形状は、上記実施の形態にて示す形状に限定されない。1又は複数の電子部品を囲繞する形状は、平面多角形状であればよい。
【0021】
(5)上記実施の形態において、Mg合金を用いたシールド構造体の例を示したが、これに限定されない。例えば、アルミ蒸着樹脂を用いたシールド構造体でもよく、電磁ノイズの遮蔽効果があり、回路基板に締結したときに回路基板のGNDパターンと同電位になるよう導電性があればよい。
(6)上記実施の形態においてシールド構造体と回路基板の締結はねじ止めによって締結しているが、これに限定されない。例えば、リベットなどの係止ピンによりシールド構造と回路基板とを締結してもよい。
【0022】
(7)上記実施の形態及び変形例を組み合わせるとしてもよい。
(8)上記実施の形態にて示すシールド構造体1が実装される電子機器としては、携帯電話に限定されるものではない。無線通信を行う情報機器や携帯端末であってもよい。
<3.まとめ>
(1)本発明の一実施形態に係るシールド構造体は、回路基板に装着され、電磁ノイズを遮蔽するシールド構造体であって、前記回路基板の主面に対し対向する天板部と、その外周部から前記回路基板の主面に対して垂下される側壁とを有し、前記側壁の回路基板との着接面に、回路基板に締結する複数の締結部と、前記着接面の一部を突出させた1以上の凸部とが、回路基板に当接するように形成されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によると、シールド構造体の回路基板に着接する着接面の一部を突出させ凸部とすることで、回路基板に締結したときにこの凸部で確実に回路基板に当接する。
(2)ここで、前記締結部又は前記凸部と、前記側壁に沿って隣接する締結部又は凸部いずれかとの間隔が、回路で使用する周波数帯域の電磁ノイズの波長よりも短く設定してもよい。
【0024】
この構成によると、回路基板と当接する締結部及び凸部に隣接する締結部又は凸部までの間隔が全て回路で使用する周波数帯域の電磁ノイズの波長よりも短く設定されているので、電磁波漏れが効果的に防止できる。
(3)ここで、隣接する締結部又は凸部の間隔は、回路で使用する周波数帯域の電磁ノイズの波長の1/4以下の長さになるようにしてもよい。
【0025】
この構成によると、回路基板と当接する締結部及び凸部に隣接する締結部又は凸部までの間隔が全て回路で使用する周波数帯域の電磁ノイズの波長の1/4以下に保たれているので、電磁波漏れが効果的に防止できる。
(4)ここで、前記凸部の形状は、最も突出した位置から前記側壁の着接面の長手方向に沿って離れるに従って突出量が減少する形状に形成するようにしてもよい。
【0026】
この構成によると、前記凸部の突出量は、着接面に製造等による粗さの凹凸よりも、大きく突出させているので、当該凸部で確実に当接させることができる。
(5)ここで、前記締結部は、螺着により締結するようにしてもよい。
この構成によると、締結部においてねじ止めするので締結部で回路基板と確実に当接し、
ねじの締付けにより、シールド構造体の着接面と回路基板側の端面とのギャップが狭小化するので締結部間の凸部においても確実に当接させることができるので電磁波漏れが効果的に防止される。
(6)ここで、前記シールド構造体はMg合金を用いて構成してもよい。
【0027】
Mg合金は、アルミニウムや一般的な樹脂と比較して強度が高く、耐凹み性も強い。その上、安定した電磁波シールド性を備えているといった特徴がある。
この構成によると、上記特徴を持つMg合金を用いてシールド構造体を形成するので、丈夫でシールド効果の高いシールド構造体とすることができる。
(7)ここで、前記シールド構造体の前記天板と前記側壁に覆われた内部に、隔離する仕切壁を形成して、当該仕切壁に、前記側壁と同様の締結部と凸部を形成するようにしてもよい。
【0028】
この構成によると、回路基板上の電気部品をさらに細かい領域に分けて囲繞することができるので、それぞれの電気部品同士の電磁ノイズの影響も防止できる。
(8)ここで、シールド構造体の締結部と締結部の間に凸部が1箇所だけ形成されている場合には、締結部と締結部のほぼ中間に凸部を形成するようにしてもよい。
この構成によると、隣接する締結部間のほぼ中間位置にあるので、締結部での圧着力のばらつきによるシールド構造体や回路基板の歪みを抑えることができる。
(9)また、上述のシールド構造体は、一実施形態として、無線通信を行う携帯端末において、無線通信で使用する通信周波数帯域の波長の電磁ノイズをシールドするために、携帯端末の回路基板に装着される。
【0029】
この構成によると、シールド構造体を備える携帯端末では、通信性能の低下が抑えられる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係るシールド構造体は、電気回路のノイズ輻射を防止するものであり、電気回路のシールド構造体及び当該シールド構造体を備える携帯端末に対して有用である。
【符号の説明】
【0031】
1 シールド構造体
10 天板
11 側壁
12A、12B 仕切壁
13A〜13G ねじ孔
14、14A〜14H 凸部
2 回路基板
24 GND(グランド)パターン
21A〜21G ねじ孔
22 アンテナ
23A〜23H 電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に装着され、電磁ノイズを遮蔽するシールド構造体であって、
前記回路基板の主面に対し対向する天板部と、その外周部から前記回路基板の主面に対して垂下される側壁とを有し、
前記側壁の回路基板との着接面に、回路基板に締結する複数の締結部と、
前記着接面の一部を突出させた1以上の凸部とが、回路基板に当接するように形成されている
ことを特徴とするシールド構造体。
【請求項2】
前記締結部又は前記凸部と、前記側壁に沿って隣接する締結部又は凸部いずれかとの間隔が、回路で使用する周波数帯域の電磁ノイズの波長よりも短く設定されている
ことを特徴とする請求項1のシールド構造体。
【請求項3】
前記電磁ノイズの波長より短い長さは、電磁ノイズの波長の1/4以下とする
ことを特徴とする請求項2に記載のシールド構造体。
【請求項4】
前記凸部は、最も突出した位置から前記側壁の着接面の長手方向に沿って離れるに従って突出量が減少する形状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のシールド構造体。
【請求項5】
前記締結部において、回路基板と螺着により締結されている
ことを特徴とする請求項1に記載のシールド構造体。
【請求項6】
前記シールド構造体はマグネシウム合金を用いて構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のシールド構造体。
【請求項7】
前記シールド構造体は、
前記天板と前記側壁に覆われた内部に隔離する仕切壁を有し、
前記仕切壁には前記側壁と同様の締結部と凸部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のシールド構造体。
【請求項8】
前記凸部は、締結部と締結部の間に1箇所だけ形成される場合に、当該それぞれの締結部までの距離がほぼ等しい距離に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のシールド構造体。
【請求項9】
無線通信を行う携帯端末であって、
前記回路で使用する周波数帯域は、前記無線通信で使用する通信周波数帯域である請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のシールド構造体を備える
ことを特徴とする携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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