説明

シールド機の推進補助装置およびシールド機の推進方法

【課題】 シールド機の通過後に、筒体内に残ったセグメントの動揺を防止できるシールド機の推進補助装置およびシールド機の推進方法を提供すること。
【解決手段】 立坑の坑口コンクリート16の内周面14にエントランスパッキン17を設け、坑口15付近に筒体13を設け、筒体13の内周面18に注入袋9およびエントランスパッキン19を設ける。筒体13は、シールド機1の発進室として用いられる。シールド機1は、スキンプレート7の内部で仮組セグメント5を組み立てつつ、発進室11から発進する。エントランスパッキン17、エントランスパッキン19は、シールド機1の発進時に、地下水が発進立坑内23に流入することを防ぎ、止水性を確保する。シールド機1の通過後、注入袋9の内部に充填材27を注入して膨張させ、注入袋9を仮組セグメント5の外周面に接触させて、仮組セグメント5の形状および位置を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド機の推進補助装置およびシールド機の推進方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネルの施工において、シールド発進坑口には、エントランスパッキンと呼ばれる止水を目的とするパッキンが設置される。大深度・高水圧作用下で施工する場合や、シールドマシン外周に同時注入管などの突起物がある場合などには、このパッキンからの出水を防止するために、発進室と呼ぶ筒状体をシールド発進坑口に取り付け、筒状体の後部にさらにパッキンを設置して、二重に止水を図ることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭61−72193号公報
【0004】
シールド発進時、シールドマシンは、発進室の内部に設置されたレール等を用いて、発進室内の所定の位置を通過する。シールドマシン通過後には、発進室内にシールドセグメントが残るが、シールドマシンの外径よりもシールドセグメントの外径の方が小さいため、このシールドセグメントはレールに載らずに室内に浮いた状態となる。従来、発進室内に浮いた状態で残ったセグメントについて、特別な処置をしない場合や、発進室内に裏込め充填材を充填して浮きや動揺を解消する場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発進室に裏込め充填材を充填しない場合、シールドマシンの掘進時に作用するジャッキ推力によって、セグメントが動き、シールド掘進に支障が生じる可能性がある。発進室に裏込め充填材を充填する場合、充填材が発進坑口側に設置したエントランスパッキンを発進室側から押してしまうので、本来のエントランスパッキンの効果が期待できなくなってしまう。さらに、発進室解体の際に、裏込め充填材の撤去に多くの労力を要する。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、シールド機の通過後に、筒体内に残ったセグメントの動揺を防止できるシールド機の推進補助装置およびシールド機の推進方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するための第1の発明は、筒体内側に設けられた袋体を膨張させてセグメントに接触させ、前記セグメントを固定することを特徴とするシールド機の推進補助装置である。
【0008】
筒体は、例えば、立坑の側壁の後方に設けられ、シールド機の発進室として用いられる。袋体は、折りたたんだ状態で筒体に設置される。筒体には開口が設けられ、開口内に、袋体に設けられたパイプが挿入される。袋体内には、パイプを介して、筒体の外側から流体が注入される。必要に応じて、立坑坑口付近に、筒体の内周面方向に第1のエントランスパッキンが、筒体の後端部付近の内側に、第2のエントランスパッキンが設けられる。
【0009】
第1の発明では、シールド機の通過後、筒体内側に設けられた袋体の内部に裏込め充填材等の流体を注入して膨張させ、袋体を筒体内のセグメントに接触させることにより、セグメントの形状及び位置を保持する。
【0010】
第2の発明は、立坑の側壁の後方に設けられた筒体内からシールド機を前進させる工程(a)と、前記シールド機の後端部の通過後に、前記筒体の内側に設けられた袋体を膨張させてセグメントに接触させる工程(b)とを具備することを特徴とするシールド機の推進方法である。
【0011】
立坑坑口付近には第1のエントランスパッキンが、筒体の後端部付近の内側には第2のエントランスパッキンが、必要に応じて設けられる。第1および第2のエントランスパッキンは、立坑内への水の流入を防ぐ。また、筒体に設けられた開口内には、袋体に設けられたパイプが挿入される。工程(b)では、パイプを介して、筒体の外側から袋体内に裏込め充填材等の流体を注入する。
【0012】
第2の発明では、立坑の側壁の後方に設けられた筒体内からシールド機を前進させる。そして、シールド機の後端部の通過後に、筒体の内側に設けられた袋体を膨張させてセグメントに接触させる。膨張した袋体は、筒体内のセグメントの形状及び位置を保持する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシールド機の推進補助装置およびシールド機の推進方法によれば、シールド機の通過後に、筒体内に残ったセグメントの動揺を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、推進補助装置2のシールド軸方向の垂直断面図、図2は、推進補助装置2のシールド周方向の垂直断面図、図3は、注入袋9の折りたたんだ状態の斜視図を示す。図1は、図2のB−Bによる断面を示す図、図2は、図1のA−Aによる断面を示す図である。
【0015】
図1に示すように、推進補助装置2は、発進立坑内23に設けられる。発進立坑の立坑側壁3の内側には、坑口コンクリート16が設けられる。坑口コンクリート16は、シールド機1の発進予定位置の周囲に、筒状に配置される。
【0016】
図1、図2に示すように、推進補助装置2は、第1のエントランスパッキン17、第2のエントランスパッキン19、筒体13、注入袋9等からなる。エントランスパッキン17は、坑口コンクリート16の内周面14側に固定される。筒体13は、坑口コンクリート16の後端部の坑口15付近に固定される。エントランスパッキン19は、筒体13の後端部の内周面18側に固定される。
【0017】
図3に示すように、注入袋9は、袋状の本体37と、固定具31と、パイプ29からなる。注入袋9は、図3に示すような折りたたんだ状態で、固定具31を用いて、筒体13の内周面18側に固定される。注入袋9は、図1、図2に示すように、シールド機1のスキンプレート7に触れないように設置される。
【0018】
図2に示すように、筒体13には開口35が設けられ、開口35に沿ってパイプ33が設置される。注入袋9に設けられるパイプ29の外径は、パイプ33の内径より小さいものとする。パイプ29は、開口35のパイプ33内に挿入され、パイプ29とパイプ33とは止水溶接される。図1、図2に示すように、注入袋9は、各仮組セグメント5に対して、周方向に所定の間隔をおいて設置するのが望ましい。
【0019】
注入袋9は、内部に充填材27(図4、図5)を充填した際に、充填材27(図4、図5)が漏れないような材質とする。また、充填材27(図4、図5)を充填した際に、仮組セグメント5と筒体13との隙間を塞ぐことができる大きさとする。
【0020】
シールド機1は、スキンプレート7、同時注入管25等からなる。同時注入管25は、スキンプレート7の上半部に、機体の軸方向に沿って設置される。スキンプレート7の内部およびスキンプレート7の後端部の後方には、スキンプレート7より外径が小さい仮組セグメント5が組み立てられる。仮組セグメント5の後端部には、反力受材21が設けられる。シールド機1の下方には、シールド受材22が設けられる。
【0021】
筒体13の内部は、シールド機1の発進室11として用いられる。筒体13の形状は、シールド機1の形状に合わせて決定される。例えば、図2に示すように、シールド機1の周方向断面が円形の場合、筒体13は円筒状とする。
【0022】
次に、シールド機1を発進室11から推進させる方法について説明する。図4は、推進補助装置2を用いてシールド機1を発進室11から発進させた状態を示す図、図5は、推進補助装置2を用いて仮組セグメント5の形状を保持している状態を示す図、図6は、充填材を充填した注入袋9の斜視図を示す。図4は、図5のD−Dによる断面図を、図5は、図4のC−Cによる断面図を示す。
【0023】
図1に示す状態のシールド機1は、スキンプレート7内で仮組セグメント5を組み立てつつ発進室11内を前進し、立坑側壁3を掘削し、さらに前進する。シールド機1が発進室11内を前進し、立坑側壁3を通過した後は、エントランスパッキン17およびエントランスパッキン19が、坑口コンクリート16や筒体13とスキンプレート7との間からの止水性を保つ。
【0024】
シールド機1のスキンプレート7の後端部が通過した後、図4、図5に示すように、筒体13の内周面18側に固定された注入袋9に充填材27を順次充填する。充填材27は、図5の矢印Eに示すように、筒体13の外側から、パイプ29を介して充填される。
【0025】
充填材27を充填した注入袋9は、図6に示すように膨張し、図4、図5に示すように、仮組セグメント5の外周面に接触する。膨張した注入袋9は、発進室11内の仮組セグメント5の形状及び位置を保持し、シールド機1のジャッキ推力による仮組セグメント5の動揺を防ぐ。
【0026】
このように、本実施の形態によれば、筒体13の内周面18に注入袋9を設け、注入袋9に充填材27を充填し膨張させることにより、シールド機1の通過後に発進室11内に残された仮組セグメント5の形状を保持し、位置を固定することができる。仮組セグメント5を固定することにより、シールド機1の掘進時の推力の反力を仮組セグメント5から確実に取って掘進の精度を確保することができ、施工の安全性が高まる。また、充填材27の入った注入袋9を容易に回収できるため、推進補助装置2は容易に解体撤去が可能である。
【0027】
なお、注入袋9の設置位置や設置数、形状は、図1から図6に示すものに限らない。注入袋9は、シールド機1の通過後に発進室11内に残される仮組セグメント5の形状や位置を固定できるように、適切な箇所に設置される。また、筒体13、シールド機1の断面は、円形でなくてもよい。
【0028】
以上、添付図面を参照しながら本発明にかかるシールド機の推進補助装置およびシールド機の推進方法の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】推進補助装置2のシールド軸方向の垂直断面図
【図2】推進補助装置2のシールド周方向の垂直断面図
【図3】注入袋9の折りたたんだ状態の斜視図
【図4】推進補助装置2を用いてシールド機1を発進室11から発進させた状態を示す図
【図5】推進補助装置2を用いて仮組セグメント5の形状を保持している状態を示す図
【図6】充填材を充填した注入袋9の斜視図
【符号の説明】
【0030】
1………シールド機
2………推進補助装置
3………立坑側壁
5………仮組セグメント
7………スキンプレート
9………注入袋
11………発進室
13………筒体
17、19………エントランスパッキン
25………同時注入管
27………充填材
29、33………パイプ
35………開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体内側に設けられた袋体を膨張させて、前記筒体内に配置されたセグメントに接触させ、前記セグメントを固定することを特徴とするシールド機の推進補助装置。
【請求項2】
前記袋体が、折りたたんだ状態で設置されることを特徴とする請求項1記載のシールド機の推進補助装置。
【請求項3】
前記筒体に開口が設けられ、前記開口内に、前記袋体に設けられたパイプが挿入されることを特徴とする請求項1記載のシールド機の推進補助装置。
【請求項4】
前記パイプを介して、前記筒体の外側から前記袋体内に流体が注入されることを特徴とする請求項3記載のシールド機の推進補助装置。
【請求項5】
立坑の側壁の後方に設けられた筒体内からシールド機を前進させる工程(a)と、
前記シールド機の後端部の通過後に、前記筒体の内側に設けられた袋体を膨張させてセグメントに接触させる工程(b)と、
を具備することを特徴とするシールド機の推進方法。
【請求項6】
前記筒体に設けられた開口内に、前記袋体に設けられたパイプが挿入され、前記工程(b)で、前記パイプを介して、前記筒体の外側から前記袋体内に流体を注入することを特徴とする請求項5記載のシールド機の推進方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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