シールド機の水中回収方法及び水中回収構造
【課題】シールド機内部の嫌水性部品を水浸しにすることなく、シールド機を確実に遠隔操作で押し出すことにより、シールド機を回収できるシールド機の水中回収構造及び水中回収方法を提供する。
【解決手段】シールド機1のシールドフレーム2内を、嫌水性部品(17、18、23、19X)が収容された前方の気密室3とその後方の領域4とにマシン側止水壁5で仕切り、マシン側止水壁5より後方のトンネル6内に水を導入し、シールド機1の上方の水底土砂41Xを取り除き、シールドフレーム2に設けられた接続ユニット12に、電源又は油圧ライン42をシールドフレーム2の外部から接続し、電源又は油圧ライン42及び接続ユニット12を介してシールドフレーム2内に設けられたジャッキ11をシールドフレーム2の外部から作動させ、シールドフレーム2をトンネル6の前方に押し出すようにした。
【解決手段】シールド機1のシールドフレーム2内を、嫌水性部品(17、18、23、19X)が収容された前方の気密室3とその後方の領域4とにマシン側止水壁5で仕切り、マシン側止水壁5より後方のトンネル6内に水を導入し、シールド機1の上方の水底土砂41Xを取り除き、シールドフレーム2に設けられた接続ユニット12に、電源又は油圧ライン42をシールドフレーム2の外部から接続し、電源又は油圧ライン42及び接続ユニット12を介してシールドフレーム2内に設けられたジャッキ11をシールドフレーム2の外部から作動させ、シールドフレーム2をトンネル6の前方に押し出すようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底地山の内部で停止したシールド機を水中で回収するための方法及び構造に関する。
【背景技術】
【0002】
水底地山を掘り抜いたシールド機を水中で回収する方法として、下記特許文献1には、水底地山を発進立坑から斜め下方の海中の傾斜面に向けて水中に抜け出す到達位置直前までシールド掘進する工程と、そのシールド機を前記到達位置直前に置いたまま坑内及び発進立坑内に注水する工程と、注水後に前記シールド機を遠隔操作により水中に押し出す工程と、押し出されたシールド機を水中より取り出す工程とを備えた方法が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特許第2963632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記方法においては、坑内に注水したときシールド機の内部の嫌水性部品(電装機器、モータ等)が水浸しになってしまうため、何等かの防水対策が必要となる。また、注水後にシールド機を遠隔操作により水中に押し出す際、どのようにして遠隔操作するかについて明示されていない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、シールド機内部の嫌水性部品を水浸しにすることなく、シールド機を確実に遠隔操作で押し出すことができるシールド機の水中回収方法及び水中回収構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に係る発明は、水底地山の内部で停止したシールド機を水中で回収するための方法であって、上記シールド機のシールドフレーム内を、嫌水性部品が収容された前方の気密室とその後方の領域とにマシン側止水壁で仕切り、該マシン側止水壁より後方のトンネル内に水を導入し、上記シールド機の上方の水底土砂を取り除き、上記シールドフレームに設けられた接続ユニットに、電源又は油圧ラインを上記シールドフレームの外部から接続し、該電源又は油圧ライン及び上記接続ユニットを介して上記シールドフレーム内に設けられたジャッキを上記シールドフレームの外部から作動させ、上記シールドフレームを上記トンネルの前方に押し出すようにしたものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、水底地山の内部で停止したシールド機を水中で回収するための方法であって、上記シールド機のシールドフレーム内を、嫌水性部品が収容された前方の気密室とその後方の領域とにマシン側止水壁で仕切り、上記シールド機の後方に構築されたトンネル内をトンネル側止水壁で前後に仕切り、該トンネル側止水壁と上記マシン側止水壁との間に形成された注水室に水を導入し、上記シールド機の上方の水底土砂を取り除き、上記シールドフレームに設けられた接続ユニットに、電源又は油圧ラインを上記シールドフレームの外部から接続し、該電源又は油圧ライン及び上記接続ユニットを介して上記シールドフレーム内に設けられたジャッキを上記シールドフレームの外部から作動させ、上記シールドフレームを上記トンネルの前方に押し出すようにしたものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記ジャッキの先端に間座を取り付け、該間座を上記シールドフレーム内の既設セグメントに当接させて上記シールド機を押し出すようにしたものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、水底地山の内部で停止したシールド機を水中で回収するための構造であって、上記シールド機のシールドフレーム内を、嫌水性部品が収容された前方の気密室とその後方の領域とに仕切るマシン側止水壁と、該マシン側止水壁の後方のトンネル内に水を導入するための注水手段と、上記シールド機を上記トンネルの前方に押し出すため上記シールドフレーム内に装着されたジャッキと、該ジャッキを上記シールドフレームの外部から作動させるため上記シールドフレームに設けられた接続ユニットとを備えたものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、水底地山の内部で停止したシールド機を水中で回収するための構造であって、上記シールド機のシールドフレーム内を、嫌水性部品が収容された前方の気密室とその後方の領域とに仕切るマシン側止水壁と、上記シールド機の後方に構築されたトンネル内を前後に仕切るトンネル側止水壁と、該トンネル側止水壁と上記マシン側止水壁との間に形成された注水室に水を導入するための注水手段と、上記シールド機を上記トンネルの前方に押し出すため上記シールドフレーム内に装着されたジャッキと、該ジャッキを上記シールドフレームの外部から作動させるため上記シールドフレームに設けられた接続ユニットとを備えたものである。
【0011】
請求項6に係る発明は、上記ジャッキの先端に間座を取り付け、該間座を上記シールドフレーム内の既設セグメントに当接させたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るシールド機の水中回収方法及び水中回収構造によれば、シールド機内部の嫌水性部品を水浸しにすることなく、シールド機を確実に遠隔操作でトンネルの前方に押し出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好適実施形態を添付図面を用いて説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る水中回収方法及び水中回収構造が適用されるシールド機1は、海岸の近傍に形成された立坑50から海側に向けて発進し、水底地山(海底地山)41の内部で停止するものである。海底地山41の内部で停止したシールド機1は、以下に説明する水中回収方法によって海底地山41から回収される。この水中回収方法を行うための水中回収構造を説明する。
【0015】
本実施形態に係るシールド機1の水中回収構造は、図2に示すように、シールド機1のシールドフレーム2内を、嫌水性部品が収容された前方の気密室3とその後方のセグメント組立領域4とに仕切るマシン側止水壁5と、マシン側止水壁5の後方のトンネル6内に水(海水)を導入するための注水手段9と、シールド機1をトンネル6の前方に押し出すためシールドフレーム2内に装着されたジャッキ11(本実施形態ではシールドジャッキであるが別のジャッキでもよい)と、ジャッキ11をシールドフレーム2の外部から作動させるためシールドフレーム2に設けられた接続ユニット12とを備えている。
【0016】
上記シールド機1の概要を説明すると、このシールド機1は、筒状のシールドフレーム2と、シールドフレーム2内の前部をカッタ室13と坑内14とに仕切る隔壁15と、隔壁15に回転可能に支持されたカッタ16と、カッタ16を回転駆動するためのギヤ機構17及びモータ18と、隔壁15に設けられたアジテータ19及び排土装置20と、シールドフレーム2内の後部にてセグメントをリング状に組み立てるためのエレクタ21(セグメント組立装置)と、シールドフレーム2内に装着され既設セグメント10に反力を取ってシールド機1を前進させるためのシールドジャッキ11と、シールドフレーム2の後部内周面に取り付けられ既設セグメント10とシールドフレーム2との間を止水するためのテールシール22とを備えている。なお、アジテータ19は省略可能である。
【0017】
上記シールドフレーム2は、本実施形態では、前胴2Xと後胴2Yとが屈曲可能に接続された中折れ構造となっており、一端が前胴2Xに他端が後胴2Yに固定された中折れジャッキ23によって中折れされるようになっている。但し、中折れ機構の無い通常のシールドフレームであっても構わない。
【0018】
上記排土装置20は、本実施形態では、カッタ室13内に泥水を供給する送泥管20Xとカッタ室13内の掘削泥土を排泥する排泥管20Yとから成る。送泥管20X及び排泥管20Yには、夫々開閉弁24X、24Yが介設されており、各開閉弁24X、24Yよりも坑口側の部分の管25X、25Yが取り外し可能となっている。なお、上記送泥管20X及び排泥管20Yの代わりにスクリューコンベヤを隔壁15に装着してもよい。
【0019】
上記エレクタ21は、後胴2Y内のセグメント組立領域4(テールシール22よりも前方の領域)にて、セグメントをリング状に組み立てるものである。エレクタ21は、後胴2Yの内部に周方向に間隔を隔てて複数配置されたローラ26と、これらローラ26によって回転可能に支持された旋回リング27と、旋回リング27に同芯的に取り付けられた駆動ギヤ28と、駆動ギヤ28と噛合するピニオン(図示せず)と、ピニオンを回転させるためのモータ(図示せず)と、旋回リング27の坑口側面に設けられた第1基部29と、第1基部29にトンネル径方向に移動可能に取り付けられた第2基部30と、第2基部30にセグメントを把持するために取り付けられた把持部31とを備えている。上記ローラ26は後胴2Yの内面に取り付けられたブラケット32に軸支されている。
【0020】
以下、上記シールド機1に適用される水中回収構造について詳述する。
【0021】
図2に示すように、上記シールド機1のシールドフレーム2(後胴2Y)の内部には、シールドフレーム2内を、嫌水性部品(カッタ用モータ18、ギヤ機構17、中折れジャッキ23、アジテータ19のモータ19X、その他電装品等)が収容された前方の気密室3と、その後方のセグメント組立領域4とに仕切るようにして、マシン側止水壁5が取り付けられる。マシン側止水壁5は、略円形の板体から成り、エレクタ21、送泥管20X及び排泥管20Yの一部(開閉弁24X、24Yより坑口側の管25X、25Y)を取り外した後、後胴2Yの内面に水密に設けられたフランジ状(ドーナッツ板状)の金具33の坑口側面に、ボルトナットや溶接等によって水密に取り付けられる。金具33は、中折れジャッキ23、シールドジャッキ11の取付金具でもある。
【0022】
マシン側止水壁5の後方のトンネル6の天井部には、トンネル6内に水を導入するための注水手段9として、注水管9Xが設けられる。注水管9Xは、トンネル6の内部から天井部を貫通して上方に延出されており、トンネル6の外部の水をトンネル6内に導くものであって、トンネル6の外部の部分に開閉弁35Xを有する。開閉弁35Xは、図1に示すように、海底41Zより上方の注水管9Xに装着される。開閉弁35Xを開放すると、水(海水)が注水管9Xを通ってトンネル6内に流入し、トンネル6及び立坑50内が注水状態とされる。
【0023】
図2に戻って、シールドフレーム2の内部には、エレクタ21によってセグメント組立領域4で組み立てられた既設セグメント10に反力を取ってシールド機1を既設セグメントの前方に押し出すためのジャッキ11が設けられている。このジャッキ11は、本実施形態では前記シールドジャッキ11をそのまま用いているが、シールドジャッキ11を取り外して回収し、上述の機能を発揮する別のジャッキを取り付けてもよい。
【0024】
シールドフレーム2(前胴2X)には、上記ジャッキ11をシールドフレーム2の外部から作動させるための接続ユニット12が設けられている。接続ユニット12は、シールドジャッキ11のヘッド側油圧室と連通するためのジャッキ押しカップリング12Xと、ジャッキ11のロッド側油圧室と連通するためのジャッキ引きカップリング12Yとを有し、前胴2Xに凹設された取付部36の底面に取り付けられている。
【0025】
取付部36は、図例では前胴2Xの天井部に設けたが、後述するように(図6参照)シールド機1の上方の水底土砂を取り除いたとき水中に晒される部分であれば天井部に限定されるものではなく、前胴2Xの側部に設けてもよい。図2に戻って、ジャッキ押しカップリング12Xとジャッキ11のヘッド側油圧室との間、ジャッキ引きカップリング12Yとジャッキ11のロッド側油圧室との間には、それぞれ内部油圧ライン(油圧ホース)37X、37Yが着脱可能に介設される。取付部36には、前胴2Xの外面と略面一となる蓋部材38が、着脱可能に設けられる。
【0026】
シールドジャッキ11の先端部(伸縮ロッドのシュー)11Xには、間座(スペーサ)39がボルトナットや溶接等によって取り付けられ、その間座39が既設セグメント10に当接される。間座39は、図例では、セグメント10と略等しいトンネル軸方向長さを有するロッドから成るが、セグメント10と同じ形状のものでもよい。
【0027】
図2の状態からシールドジャッキ11を略フルストローク伸長させてシールド機1を前進させたとき、テールシール22の後端が間座39の後端よりも前方に位置するように、後胴2Yの長さ、間座39の長さ及びジャッキ11のストロークが設定されている。なお、ジャッキ11のストロークを略二倍にすることで、ジャッキ11を略フルストロークさせたときテールシール22の後端がシュー11Xの後端よりも前方に位置するようになっていれば、間座39は省略できる。
【0028】
シールドフレーム2の外面の上部(及び/又は側部)には、シールド機1を吊り上げるための吊り金具40が、ボルトナットやピン等により着脱可能に設けられる。吊り金具40は、図3に示すようにシールド機1が地山を掘進するときには取り外され、図6に示すようにシールド機1の上方の水底土砂を取り除いた後に取り付けられる。
【0029】
以上説明したシールド機1の水中回収構造の作用、即ちシールド機1の水中回収方法について説明する。
【0030】
図1及び図3に示すように、上記シールド機1を用いて立坑50から海底地山41を掘進し、所定の回収位置にてシールドジャッキ11を略フルストローク伸長させた状態でシールド機1を停止する。
【0031】
停止後、図3及び図4に示すように、各シールドジャッキ11を順次収縮させてシュー11Xに間座39を取り付け、間座39を既設セグメント10に当接させて切羽土圧を支持させる。送泥管20X及び排泥管20Yの各開閉弁24X、24Yを閉じ、各開閉弁24X、24Yよりも坑口側の部分の管25X、25Yを取り外し、エレクタ21を撤去する。接続ユニット12のジャッキ押しカップリング12Xとシールドジャッキ11のヘッド側油圧室との間、ジャッキ引きカップリング12Yとジャッキ11のロッド側油圧室との間に、夫々内部油圧ライン37X、37Yを介設する。その後、マシン側止水壁5を取り付け、シールドフレーム2内を嫌水性部品(カッタ用モータ18、ギヤ機構17、中折れジャッキ23、アジテータ19のモータ19X、その他電装品等)が収容された前方の気密室3とその後方のセグメント組立領域4とに仕切る。なお、間座39の取り付け、管25X、25Yの取り外し、エレクタ21の撤去、内部油圧ライン37X、37Yの介設の順番は問わない。
【0032】
図4に示すように、マシン側止水壁5の取り付け後、マシン側止水壁5の後方のトンネル6の天井部に、トンネル6内に水を導入するための注水手段9として、注水管9Xを取り付ける。注水管9Xの上部は、海底41Zの上方まで突き出されていて、その部分に開閉弁35Xが設けられる。また、注水管9Xの下方のトンネル6内の底部に、水当たり板9Yを設置する。開閉弁35Xを開放すると、図5に示すように、水(海水)が注水管9Xを通ってトンネル6内に流入し、トンネル6及び立坑50(図1)内が注水状態となる。
【0033】
トンネル6及び立坑50への注水後、図5及び図6に示すように、シールド機1の上方の水底土砂41Xを浚渫する。このとき、シールド機1の後方のトンネル6の上方の水底土砂41Yをも不可避的に有る程度浚渫されてしまうが、トンネル6内が注水されているためトンネル6が浮き上がることは無い。なお、浚渫の前に、注水管9Xを引き抜く等して取り除いておき、注水管9Xが浚渫のための装置と干渉しないようにすることが好ましい。浚渫後、水中に露出した接続ユニット12の蓋部材38を水中にて取り外す。
【0034】
蓋部材38の取り外しによりジャッキ押しカップリング12Xとジャッキ引きカップリング12Yとが水中に露出するので、図7に示すように、それらカップリング12X、12Yに外部油圧ライン(油圧ホース)42(42X、42Y)を夫々接続する。各外部油圧ライン42X、42Yは、水面(海面)の作業船に搭載された油圧機器から延伸されている。また、シールドフレーム2(前胴2X、後胴2Y)に、シールド機1を吊り上げるための吊り金具40を取り付ける。なお、吊り金具40の取付時期は、浚渫以降、何時でも構わない。
【0035】
各カップリング12X、12Yに外部油圧ライン42X、42Yを接続した後、図8に示すように、上記作業船の油圧機器によって外部油圧ライン42X、42Y、カップリング12X、12Y及び内部油圧ライン37X、37Yを介してジャッキ11を伸長させ、シュー11Xに固定された間座39を既設セグメント10に押し付けることで、シールド機1を上記既設セグメント10よりも前方に押し出す(図7、図8参照)。これにより、図8において、テールシール22の後端は間座39の後端よりも所定距離Lだけ前方に位置する。
【0036】
このようにシールド機1を前進させた後、図9に示すようにジャッキ11を収縮させて、シールド機1をトンネル6(既設セグメント10)から切り離す。このときテールシール22の後端とトンネル6の前端との間には上記所定距離Lの隙間が形成される。ここで、トンネル6内には図6に示すように予め水が充満されているので、上記距離Lの隙間から注水室8内に水が流入することは無い。仮に、注水室8に水が充満されていないとすると、前記浚渫時にトンネル6が浮き上がってしまうという問題が生じるのみならず、上記距離Lの隙間から水が勢いよく注水室8内に流れ込みその動圧によってマシン側止水壁5が破損する可能性があるが、上述のように注水室8に水を充満させておけば上記止水壁5には静圧が加わるのみなので、強度的に有利となる。
【0037】
最後に、図10に示すように吊り金具40にワイヤ43を固定して水面の作業船(フローティングクレーン等)によってシールド機1を引き上げ、回収する。回収されたシールド機1は、船上にて又は地上に戻されて、吊り金具40、間座39、マシン側止水壁5及び内部油圧ライン37X、37Y等が取り外され、図2に示すエレクタ21、送泥管20X及び排泥管20Yの一部25X、25Y、蓋部材38等が取り付けられて再生され、別のトンネル工事(水底トンネル等)の施工に用いられる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係るシールド機1の水中回収構造及び水中回収方法によれば、マシン側止水壁5によって仕切られたシールドフレーム2内の前方の空間を止水できるのでシールド機1の内部の嫌水性部品(既述)を水浸しにすることなく回収できる。
【0039】
また、接続ユニット12のカップリング12X、12Yに内部油圧ライン37X、37Yと外部油圧ライン42X、42Yを接続することで、シールド機1を確実にシールドフレーム2の外部からの遠隔操作でトンネル6に対して押し出すことができる。
【0040】
別の実施形態を図11以降を用いて説明する。
【0041】
この実施形態に係るシールド機の水中回収構造は、図11に示すように、シールド機1のシールドフレーム2内を、嫌水性部品が収容された前方の気密室3とその後方のセグメント組立領域4とに仕切るマシン側止水壁5と、シールド機1の後方に構築されたトンネル6内を前後に仕切るトンネル側止水壁7と、トンネル側止水壁7とマシン側止水壁5との間に形成された注水室8に水を導入するための注水手段9と、セグメント組立領域4で組み立てられた既設セグメント10に反力を取ってシールド機1を既設セグメント10の前方に押し出すためシールドフレーム2内に装着されたジャッキ11(本実施形態ではシールドジャッキであるが別のジャッキでもよい)と、ジャッキ11をシールドフレーム2の外部から作動させるためシールドフレーム2に設けられた接続ユニット12とを備えている。
【0042】
上記シールド機1は前実施形態のシールド機1と同様の構成となっているため、対応する構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。また、本実施形態に係る水中回収構造のマシン側止水壁5、ジャッキ11及び接続ユニット12は、前実施形態に係る水中回収構造のマシン側止水壁5、ジャッキ11及び接続ユニット12と同様の構成となっているため、対応する構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
以下、本実施形態について、前実施形態と比較したときの相違部分(特徴部分)を説明する。相違部分は、トンネル側止水壁7、注水室8及び注水手段9である。
【0044】
図11に示すように、トンネル6内には、トンネル側止水壁7がトンネル6内を前後に仕切るようにして取り付けられる。詳しくは、トンネル6の内面に、フランジ状の固定金具34がボルトナットや溶接等によって水密に取り付けられ、固定金具34の切羽側面に、円板状に成形されたトンネル側止水壁7が、ボルトナットや溶接等によって水密に取り付けられる。これにより、トンネル側止水壁7とマシン側止水壁5との間のトンネル6内には、注水室8が区画される。なお、図20に示すように、トンネル6を成すトンネル軸方向に隣接するセグメント10同士の間にフランジ34Xを挟み込み、フランジ34Xの切羽側の面にトンネル側止水壁7をボルト等によって取り付けてもよい。
【0045】
図11に戻って、トンネル側止水壁7には、該止水壁7よりも坑口側のトンネル6内における作業によって注水室8に水を導入するための注水手段9として、注水管9Xと空気抜き管9Yとが設けられる。注水管9Xは、一端が止水壁7の後方から止水壁7を貫通して前方に延出され、他端が止水壁7の後方からトンネル6の天井部分の既設セグメントを貫通して上方に延出されており、トンネル6の外部の水を注水室8に導くものであって、止水壁7の後方に開閉弁35Xを有する。空気抜き管9Yは、止水壁7の後方から止水壁7を貫通して前方に延出され、注水に伴って注水室8内の空気を排出するものであって、止水壁7の後方に開閉弁35Yを有する。
【0046】
以上説明したシールド機1の水中回収構造の作用、即ちシールド機1の水中回収方法について説明する。
【0047】
図12に示すように、上記シールド機1を用いて水底地山41(海底地山)を掘進し、所定位置にてシールドジャッキ11を略フルストローク伸長させた状態でシールド機1を停止する。
【0048】
停止後、図12及び図13に示すように、各シールドジャッキ11を順次収縮させてシュー11Xに間座39を取り付け、間座39を既設セグメント10に当接させて切羽土圧を支持させる。送泥管20X及び排泥管20Yの各開閉弁24X、24Yを閉じ、各開閉弁24X、24Yよりも坑口側の部分の管25X、25Yを取り外す。エレクタ21を撤去する。接続ユニット12のジャッキ押しカップリング12Xとシールドジャッキ11のヘッド側油圧室との間、ジャッキ引きカップリング12Yとジャッキ11のロッド側油圧室との間に、夫々内部油圧ライン37X、37Yを介設する。その後、マシン側止水壁5を取り付け、シールドフレーム2内を嫌水性部品(カッタ用モータ18、ギヤ機構17、中折れジャッキ23、アジテータ19のモータ19X、その他電装品等)が収容された前方の気密室3とその後方のセグメント組立領域4とに仕切る。なお、間座39の取り付け、管25X、25Yの取り外し、エレクタ21の撤去、内部油圧ライン37X、37Yの介設の順番は問わない。
【0049】
マシン側止水壁5の取り付け後、図14に示すように、シールド機1の後方に構築されたトンネル6内をトンネル側止水壁7で前後に仕切る。これにより、トンネル側止水壁7とマシン側止水壁5との間のトンネル6内には、注水室8が区画される。その後、トンネル側止水壁7に注水管9Xと空気抜き管9Yとを装着し、注水室8内に水を導入する。トンネル側止水壁7のトンネル6の長手方向における設置位置は、後述するようにシールド機1の上方の水底土砂41Xを取り除くとき(浚渫するとき)、不可避的にシールド機1の後方のトンネル6の上方の水底土砂41Yをも浚渫されてしまうことによって生じる、トンネル6内の空気の浮力によるトンネル6の浮き上がりを防止できる位置に設定される。
【0050】
注水室8への注水後、図14及び図15に示すように、シールド機1の上方の水底土砂41Xを浚渫する。このとき、シールド機1の後方のトンネル6の上方の水底土砂41Yをも不可避的に有る程度浚渫されてしまうが、注水室8が注水されているためトンネル6が浮き上がることは無い。なお、浚渫の前に、注水管9Xの上方延出部分9Zをトンネル6内から引き抜く等して取り除いておき、上方延出部分9Zが浚渫のための装置と干渉しないようにすることが好ましい。浚渫後、水中に露出した接続ユニット12の蓋部材38を水中にて取り外す。
【0051】
蓋部材38の取り外しによりジャッキ押しカップリング12Xとジャッキ引きカップリング12Yとが水中に露出するので、図16に示すように、それらカップリング12X、12Yに外部油圧ライン(油圧ホース)42(42X、42Y)を夫々接続する。各外部油圧ライン42X、42Yは、水面(海面)の作業船に搭載された油圧機器から延伸されている。また、シールドフレーム2(前胴2X、後胴2Y)に、シールド機1を吊り上げるための吊り金具40を取り付ける。なお、吊り金具40の取付時期は、浚渫以降、何時でも構わない。
【0052】
各カップリング12X、12Yに外部油圧ライン42X、42Yを接続した後、図17に示すように、上記作業船の油圧機器によって外部油圧ライン42X、42Y、カップリング12X、12Y及び内部油圧ライン37X、37Yを介してジャッキ11を伸長させ、シュー11Xに固定された間座39を既設セグメント10に押し付けることで、シールド機1を上記既設セグメント10よりも前方に押し出す(図16、図17参照)。これにより、図17において、テールシール22の後端は間座39の後端よりも所定距離Lだけ前方に位置する。
【0053】
このようにシールド機1を前進させた後、図18に示すようにジャッキ11を収縮させて、シールド機1をトンネル6(既設セグメント10)から切り離す。このときテールシール22の後端とトンネル6の前端との間には上記所定距離Lの隙間が形成される。ここで、注水室8(図15)には予め水が充満されているので、上記距離Lの隙間から注水室8内に水が流入することは無い。仮に、注水室8に水が充満されていないとすると、前記浚渫時にトンネル6が浮き上がってしまうという問題が生じるのみならず、上記距離Lの隙間から水が勢いよく注水室8内に流れ込みその動圧によってマシン側止水壁5やトンネル側止水壁7が破損する可能性があるが、上述のように注水室8に水を充満させておけば上記各止水壁5、7には静圧が加わるのみなので、強度的に有利となる。
【0054】
最後に、図19に示すように吊り金具40にワイヤ43を固定して水面の作業船(フローティングクレーン等)によってシールド機1を引き上げ、回収する。回収されたシールド機1は、船上にて又は地上に戻されて、吊り金具40、間座39、マシン側止水壁5及び内部油圧ライン37X、37Y等が取り外され、図11に示すエレクタ21、送泥管20X及び排泥管20Yの一部25X、25Y、蓋部材38等が取り付けられて再生され、別のトンネル工事(水底トンネル等)の施工に用いられる。
【0055】
回収されたシールド機1を再生している間および再生したシールド機1を別のトンネル工事に用いている間に、上記トンネル6内のトンネル側止水壁7よりも坑口側の部分はその止水壁7によって止水されてことから、かかる部分に二次覆工を施すことができる。すなわち、本実施形態においては、前記文献1に記載されたもののようにトンネル内を二次覆工して坑内を注水した後にシールド機をトンネルから押し出す必要は無く、トンネル6内を二次覆工する前にシールド機1をトンネル6から押し出すことができるので、シールド機1をより早期に回収できシールド機1の稼動効率が向上する。なお、上記トンネル6のトンネル側止水壁7よりも切羽側(前方)の部分の内周面には、止水壁7の取り付け前に二次覆工を施しておく。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係るシールド機1の水中回収構造及び水中回収方法によれば、マシン側止水壁5によって仕切られたシールドフレーム2内の前方の空間を止水できるのでシールド機1の内部の嫌水性部品(既述)を水浸しにすることなく回収できる。
【0057】
また、接続ユニット12のカップリング12X、12Yに内部油圧ライン37X、37Yと外部油圧ライン42X、42Yを接続することで、シールド機1を確実にシールドフレーム2の外部からの遠隔操作でトンネル6に対して押し出すことができる。
【0058】
また、トンネル側止水壁7によってトンネル6内を止水できるのでトンネル6内の二次覆工を待たずにシールド機1を回収できシールド機1を再利用するときの稼動効率が向上する。
【0059】
本発明は上記実施形態に限定されない。
【0060】
例えば、図1〜図20を用いて前述した上記ジャッキ11は油圧式のものであるが、電動式のジャッキでも構わない。この場合、上記内部油圧ライン37X、37Y、外部油圧ライン42X、42Yの代わりに、内部電線、外部電源ケーブルを用いるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の好適実施形態を示す水中回収方法及び水中回収構造が適用されるシールド機の掘削経路を示す断面図である。
【図2】本発明の好適実施形態を示すシールド機の水中回収構造を示す側断面図である。
【図3】上記水中回収構造の使用方法、即ちシールド機の水中回収方法の最初の工程を示す側断面図である。
【図4】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図5】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図6】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図7】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図8】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図9】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図10】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図11】本発明の別の好適実施形態を示すシールド機の水中回収構造を示す側断面図である。
【図12】上記水中回収構造の使用方法、即ちシールド機の水中回収方法の最初の工程を示す側断面図である。
【図13】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図14】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図15】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図16】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図17】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図18】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図19】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図20】トンネル側水壁の別の取付構造を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 シールド機
2 シールドフレーム
3 気密室
4 セグメント組立領域
5 マシン側止水壁
6 トンネル
7 トンネル側止水壁
8 注水室
9 注水手段
10 既設セグメント
11 ジャッキ
11X ジャッキの先端(シュー)
12 接続ユニット
17、18、23、19X 嫌水性部品
39 間座
40 吊り金具
41 水底地山
41X 水底土砂
42X、42Y 油圧ライン(外部油圧ライン)
43 ワイヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底地山の内部で停止したシールド機を水中で回収するための方法及び構造に関する。
【背景技術】
【0002】
水底地山を掘り抜いたシールド機を水中で回収する方法として、下記特許文献1には、水底地山を発進立坑から斜め下方の海中の傾斜面に向けて水中に抜け出す到達位置直前までシールド掘進する工程と、そのシールド機を前記到達位置直前に置いたまま坑内及び発進立坑内に注水する工程と、注水後に前記シールド機を遠隔操作により水中に押し出す工程と、押し出されたシールド機を水中より取り出す工程とを備えた方法が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特許第2963632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記方法においては、坑内に注水したときシールド機の内部の嫌水性部品(電装機器、モータ等)が水浸しになってしまうため、何等かの防水対策が必要となる。また、注水後にシールド機を遠隔操作により水中に押し出す際、どのようにして遠隔操作するかについて明示されていない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、シールド機内部の嫌水性部品を水浸しにすることなく、シールド機を確実に遠隔操作で押し出すことができるシールド機の水中回収方法及び水中回収構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に係る発明は、水底地山の内部で停止したシールド機を水中で回収するための方法であって、上記シールド機のシールドフレーム内を、嫌水性部品が収容された前方の気密室とその後方の領域とにマシン側止水壁で仕切り、該マシン側止水壁より後方のトンネル内に水を導入し、上記シールド機の上方の水底土砂を取り除き、上記シールドフレームに設けられた接続ユニットに、電源又は油圧ラインを上記シールドフレームの外部から接続し、該電源又は油圧ライン及び上記接続ユニットを介して上記シールドフレーム内に設けられたジャッキを上記シールドフレームの外部から作動させ、上記シールドフレームを上記トンネルの前方に押し出すようにしたものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、水底地山の内部で停止したシールド機を水中で回収するための方法であって、上記シールド機のシールドフレーム内を、嫌水性部品が収容された前方の気密室とその後方の領域とにマシン側止水壁で仕切り、上記シールド機の後方に構築されたトンネル内をトンネル側止水壁で前後に仕切り、該トンネル側止水壁と上記マシン側止水壁との間に形成された注水室に水を導入し、上記シールド機の上方の水底土砂を取り除き、上記シールドフレームに設けられた接続ユニットに、電源又は油圧ラインを上記シールドフレームの外部から接続し、該電源又は油圧ライン及び上記接続ユニットを介して上記シールドフレーム内に設けられたジャッキを上記シールドフレームの外部から作動させ、上記シールドフレームを上記トンネルの前方に押し出すようにしたものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記ジャッキの先端に間座を取り付け、該間座を上記シールドフレーム内の既設セグメントに当接させて上記シールド機を押し出すようにしたものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、水底地山の内部で停止したシールド機を水中で回収するための構造であって、上記シールド機のシールドフレーム内を、嫌水性部品が収容された前方の気密室とその後方の領域とに仕切るマシン側止水壁と、該マシン側止水壁の後方のトンネル内に水を導入するための注水手段と、上記シールド機を上記トンネルの前方に押し出すため上記シールドフレーム内に装着されたジャッキと、該ジャッキを上記シールドフレームの外部から作動させるため上記シールドフレームに設けられた接続ユニットとを備えたものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、水底地山の内部で停止したシールド機を水中で回収するための構造であって、上記シールド機のシールドフレーム内を、嫌水性部品が収容された前方の気密室とその後方の領域とに仕切るマシン側止水壁と、上記シールド機の後方に構築されたトンネル内を前後に仕切るトンネル側止水壁と、該トンネル側止水壁と上記マシン側止水壁との間に形成された注水室に水を導入するための注水手段と、上記シールド機を上記トンネルの前方に押し出すため上記シールドフレーム内に装着されたジャッキと、該ジャッキを上記シールドフレームの外部から作動させるため上記シールドフレームに設けられた接続ユニットとを備えたものである。
【0011】
請求項6に係る発明は、上記ジャッキの先端に間座を取り付け、該間座を上記シールドフレーム内の既設セグメントに当接させたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るシールド機の水中回収方法及び水中回収構造によれば、シールド機内部の嫌水性部品を水浸しにすることなく、シールド機を確実に遠隔操作でトンネルの前方に押し出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好適実施形態を添付図面を用いて説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る水中回収方法及び水中回収構造が適用されるシールド機1は、海岸の近傍に形成された立坑50から海側に向けて発進し、水底地山(海底地山)41の内部で停止するものである。海底地山41の内部で停止したシールド機1は、以下に説明する水中回収方法によって海底地山41から回収される。この水中回収方法を行うための水中回収構造を説明する。
【0015】
本実施形態に係るシールド機1の水中回収構造は、図2に示すように、シールド機1のシールドフレーム2内を、嫌水性部品が収容された前方の気密室3とその後方のセグメント組立領域4とに仕切るマシン側止水壁5と、マシン側止水壁5の後方のトンネル6内に水(海水)を導入するための注水手段9と、シールド機1をトンネル6の前方に押し出すためシールドフレーム2内に装着されたジャッキ11(本実施形態ではシールドジャッキであるが別のジャッキでもよい)と、ジャッキ11をシールドフレーム2の外部から作動させるためシールドフレーム2に設けられた接続ユニット12とを備えている。
【0016】
上記シールド機1の概要を説明すると、このシールド機1は、筒状のシールドフレーム2と、シールドフレーム2内の前部をカッタ室13と坑内14とに仕切る隔壁15と、隔壁15に回転可能に支持されたカッタ16と、カッタ16を回転駆動するためのギヤ機構17及びモータ18と、隔壁15に設けられたアジテータ19及び排土装置20と、シールドフレーム2内の後部にてセグメントをリング状に組み立てるためのエレクタ21(セグメント組立装置)と、シールドフレーム2内に装着され既設セグメント10に反力を取ってシールド機1を前進させるためのシールドジャッキ11と、シールドフレーム2の後部内周面に取り付けられ既設セグメント10とシールドフレーム2との間を止水するためのテールシール22とを備えている。なお、アジテータ19は省略可能である。
【0017】
上記シールドフレーム2は、本実施形態では、前胴2Xと後胴2Yとが屈曲可能に接続された中折れ構造となっており、一端が前胴2Xに他端が後胴2Yに固定された中折れジャッキ23によって中折れされるようになっている。但し、中折れ機構の無い通常のシールドフレームであっても構わない。
【0018】
上記排土装置20は、本実施形態では、カッタ室13内に泥水を供給する送泥管20Xとカッタ室13内の掘削泥土を排泥する排泥管20Yとから成る。送泥管20X及び排泥管20Yには、夫々開閉弁24X、24Yが介設されており、各開閉弁24X、24Yよりも坑口側の部分の管25X、25Yが取り外し可能となっている。なお、上記送泥管20X及び排泥管20Yの代わりにスクリューコンベヤを隔壁15に装着してもよい。
【0019】
上記エレクタ21は、後胴2Y内のセグメント組立領域4(テールシール22よりも前方の領域)にて、セグメントをリング状に組み立てるものである。エレクタ21は、後胴2Yの内部に周方向に間隔を隔てて複数配置されたローラ26と、これらローラ26によって回転可能に支持された旋回リング27と、旋回リング27に同芯的に取り付けられた駆動ギヤ28と、駆動ギヤ28と噛合するピニオン(図示せず)と、ピニオンを回転させるためのモータ(図示せず)と、旋回リング27の坑口側面に設けられた第1基部29と、第1基部29にトンネル径方向に移動可能に取り付けられた第2基部30と、第2基部30にセグメントを把持するために取り付けられた把持部31とを備えている。上記ローラ26は後胴2Yの内面に取り付けられたブラケット32に軸支されている。
【0020】
以下、上記シールド機1に適用される水中回収構造について詳述する。
【0021】
図2に示すように、上記シールド機1のシールドフレーム2(後胴2Y)の内部には、シールドフレーム2内を、嫌水性部品(カッタ用モータ18、ギヤ機構17、中折れジャッキ23、アジテータ19のモータ19X、その他電装品等)が収容された前方の気密室3と、その後方のセグメント組立領域4とに仕切るようにして、マシン側止水壁5が取り付けられる。マシン側止水壁5は、略円形の板体から成り、エレクタ21、送泥管20X及び排泥管20Yの一部(開閉弁24X、24Yより坑口側の管25X、25Y)を取り外した後、後胴2Yの内面に水密に設けられたフランジ状(ドーナッツ板状)の金具33の坑口側面に、ボルトナットや溶接等によって水密に取り付けられる。金具33は、中折れジャッキ23、シールドジャッキ11の取付金具でもある。
【0022】
マシン側止水壁5の後方のトンネル6の天井部には、トンネル6内に水を導入するための注水手段9として、注水管9Xが設けられる。注水管9Xは、トンネル6の内部から天井部を貫通して上方に延出されており、トンネル6の外部の水をトンネル6内に導くものであって、トンネル6の外部の部分に開閉弁35Xを有する。開閉弁35Xは、図1に示すように、海底41Zより上方の注水管9Xに装着される。開閉弁35Xを開放すると、水(海水)が注水管9Xを通ってトンネル6内に流入し、トンネル6及び立坑50内が注水状態とされる。
【0023】
図2に戻って、シールドフレーム2の内部には、エレクタ21によってセグメント組立領域4で組み立てられた既設セグメント10に反力を取ってシールド機1を既設セグメントの前方に押し出すためのジャッキ11が設けられている。このジャッキ11は、本実施形態では前記シールドジャッキ11をそのまま用いているが、シールドジャッキ11を取り外して回収し、上述の機能を発揮する別のジャッキを取り付けてもよい。
【0024】
シールドフレーム2(前胴2X)には、上記ジャッキ11をシールドフレーム2の外部から作動させるための接続ユニット12が設けられている。接続ユニット12は、シールドジャッキ11のヘッド側油圧室と連通するためのジャッキ押しカップリング12Xと、ジャッキ11のロッド側油圧室と連通するためのジャッキ引きカップリング12Yとを有し、前胴2Xに凹設された取付部36の底面に取り付けられている。
【0025】
取付部36は、図例では前胴2Xの天井部に設けたが、後述するように(図6参照)シールド機1の上方の水底土砂を取り除いたとき水中に晒される部分であれば天井部に限定されるものではなく、前胴2Xの側部に設けてもよい。図2に戻って、ジャッキ押しカップリング12Xとジャッキ11のヘッド側油圧室との間、ジャッキ引きカップリング12Yとジャッキ11のロッド側油圧室との間には、それぞれ内部油圧ライン(油圧ホース)37X、37Yが着脱可能に介設される。取付部36には、前胴2Xの外面と略面一となる蓋部材38が、着脱可能に設けられる。
【0026】
シールドジャッキ11の先端部(伸縮ロッドのシュー)11Xには、間座(スペーサ)39がボルトナットや溶接等によって取り付けられ、その間座39が既設セグメント10に当接される。間座39は、図例では、セグメント10と略等しいトンネル軸方向長さを有するロッドから成るが、セグメント10と同じ形状のものでもよい。
【0027】
図2の状態からシールドジャッキ11を略フルストローク伸長させてシールド機1を前進させたとき、テールシール22の後端が間座39の後端よりも前方に位置するように、後胴2Yの長さ、間座39の長さ及びジャッキ11のストロークが設定されている。なお、ジャッキ11のストロークを略二倍にすることで、ジャッキ11を略フルストロークさせたときテールシール22の後端がシュー11Xの後端よりも前方に位置するようになっていれば、間座39は省略できる。
【0028】
シールドフレーム2の外面の上部(及び/又は側部)には、シールド機1を吊り上げるための吊り金具40が、ボルトナットやピン等により着脱可能に設けられる。吊り金具40は、図3に示すようにシールド機1が地山を掘進するときには取り外され、図6に示すようにシールド機1の上方の水底土砂を取り除いた後に取り付けられる。
【0029】
以上説明したシールド機1の水中回収構造の作用、即ちシールド機1の水中回収方法について説明する。
【0030】
図1及び図3に示すように、上記シールド機1を用いて立坑50から海底地山41を掘進し、所定の回収位置にてシールドジャッキ11を略フルストローク伸長させた状態でシールド機1を停止する。
【0031】
停止後、図3及び図4に示すように、各シールドジャッキ11を順次収縮させてシュー11Xに間座39を取り付け、間座39を既設セグメント10に当接させて切羽土圧を支持させる。送泥管20X及び排泥管20Yの各開閉弁24X、24Yを閉じ、各開閉弁24X、24Yよりも坑口側の部分の管25X、25Yを取り外し、エレクタ21を撤去する。接続ユニット12のジャッキ押しカップリング12Xとシールドジャッキ11のヘッド側油圧室との間、ジャッキ引きカップリング12Yとジャッキ11のロッド側油圧室との間に、夫々内部油圧ライン37X、37Yを介設する。その後、マシン側止水壁5を取り付け、シールドフレーム2内を嫌水性部品(カッタ用モータ18、ギヤ機構17、中折れジャッキ23、アジテータ19のモータ19X、その他電装品等)が収容された前方の気密室3とその後方のセグメント組立領域4とに仕切る。なお、間座39の取り付け、管25X、25Yの取り外し、エレクタ21の撤去、内部油圧ライン37X、37Yの介設の順番は問わない。
【0032】
図4に示すように、マシン側止水壁5の取り付け後、マシン側止水壁5の後方のトンネル6の天井部に、トンネル6内に水を導入するための注水手段9として、注水管9Xを取り付ける。注水管9Xの上部は、海底41Zの上方まで突き出されていて、その部分に開閉弁35Xが設けられる。また、注水管9Xの下方のトンネル6内の底部に、水当たり板9Yを設置する。開閉弁35Xを開放すると、図5に示すように、水(海水)が注水管9Xを通ってトンネル6内に流入し、トンネル6及び立坑50(図1)内が注水状態となる。
【0033】
トンネル6及び立坑50への注水後、図5及び図6に示すように、シールド機1の上方の水底土砂41Xを浚渫する。このとき、シールド機1の後方のトンネル6の上方の水底土砂41Yをも不可避的に有る程度浚渫されてしまうが、トンネル6内が注水されているためトンネル6が浮き上がることは無い。なお、浚渫の前に、注水管9Xを引き抜く等して取り除いておき、注水管9Xが浚渫のための装置と干渉しないようにすることが好ましい。浚渫後、水中に露出した接続ユニット12の蓋部材38を水中にて取り外す。
【0034】
蓋部材38の取り外しによりジャッキ押しカップリング12Xとジャッキ引きカップリング12Yとが水中に露出するので、図7に示すように、それらカップリング12X、12Yに外部油圧ライン(油圧ホース)42(42X、42Y)を夫々接続する。各外部油圧ライン42X、42Yは、水面(海面)の作業船に搭載された油圧機器から延伸されている。また、シールドフレーム2(前胴2X、後胴2Y)に、シールド機1を吊り上げるための吊り金具40を取り付ける。なお、吊り金具40の取付時期は、浚渫以降、何時でも構わない。
【0035】
各カップリング12X、12Yに外部油圧ライン42X、42Yを接続した後、図8に示すように、上記作業船の油圧機器によって外部油圧ライン42X、42Y、カップリング12X、12Y及び内部油圧ライン37X、37Yを介してジャッキ11を伸長させ、シュー11Xに固定された間座39を既設セグメント10に押し付けることで、シールド機1を上記既設セグメント10よりも前方に押し出す(図7、図8参照)。これにより、図8において、テールシール22の後端は間座39の後端よりも所定距離Lだけ前方に位置する。
【0036】
このようにシールド機1を前進させた後、図9に示すようにジャッキ11を収縮させて、シールド機1をトンネル6(既設セグメント10)から切り離す。このときテールシール22の後端とトンネル6の前端との間には上記所定距離Lの隙間が形成される。ここで、トンネル6内には図6に示すように予め水が充満されているので、上記距離Lの隙間から注水室8内に水が流入することは無い。仮に、注水室8に水が充満されていないとすると、前記浚渫時にトンネル6が浮き上がってしまうという問題が生じるのみならず、上記距離Lの隙間から水が勢いよく注水室8内に流れ込みその動圧によってマシン側止水壁5が破損する可能性があるが、上述のように注水室8に水を充満させておけば上記止水壁5には静圧が加わるのみなので、強度的に有利となる。
【0037】
最後に、図10に示すように吊り金具40にワイヤ43を固定して水面の作業船(フローティングクレーン等)によってシールド機1を引き上げ、回収する。回収されたシールド機1は、船上にて又は地上に戻されて、吊り金具40、間座39、マシン側止水壁5及び内部油圧ライン37X、37Y等が取り外され、図2に示すエレクタ21、送泥管20X及び排泥管20Yの一部25X、25Y、蓋部材38等が取り付けられて再生され、別のトンネル工事(水底トンネル等)の施工に用いられる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係るシールド機1の水中回収構造及び水中回収方法によれば、マシン側止水壁5によって仕切られたシールドフレーム2内の前方の空間を止水できるのでシールド機1の内部の嫌水性部品(既述)を水浸しにすることなく回収できる。
【0039】
また、接続ユニット12のカップリング12X、12Yに内部油圧ライン37X、37Yと外部油圧ライン42X、42Yを接続することで、シールド機1を確実にシールドフレーム2の外部からの遠隔操作でトンネル6に対して押し出すことができる。
【0040】
別の実施形態を図11以降を用いて説明する。
【0041】
この実施形態に係るシールド機の水中回収構造は、図11に示すように、シールド機1のシールドフレーム2内を、嫌水性部品が収容された前方の気密室3とその後方のセグメント組立領域4とに仕切るマシン側止水壁5と、シールド機1の後方に構築されたトンネル6内を前後に仕切るトンネル側止水壁7と、トンネル側止水壁7とマシン側止水壁5との間に形成された注水室8に水を導入するための注水手段9と、セグメント組立領域4で組み立てられた既設セグメント10に反力を取ってシールド機1を既設セグメント10の前方に押し出すためシールドフレーム2内に装着されたジャッキ11(本実施形態ではシールドジャッキであるが別のジャッキでもよい)と、ジャッキ11をシールドフレーム2の外部から作動させるためシールドフレーム2に設けられた接続ユニット12とを備えている。
【0042】
上記シールド機1は前実施形態のシールド機1と同様の構成となっているため、対応する構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。また、本実施形態に係る水中回収構造のマシン側止水壁5、ジャッキ11及び接続ユニット12は、前実施形態に係る水中回収構造のマシン側止水壁5、ジャッキ11及び接続ユニット12と同様の構成となっているため、対応する構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
以下、本実施形態について、前実施形態と比較したときの相違部分(特徴部分)を説明する。相違部分は、トンネル側止水壁7、注水室8及び注水手段9である。
【0044】
図11に示すように、トンネル6内には、トンネル側止水壁7がトンネル6内を前後に仕切るようにして取り付けられる。詳しくは、トンネル6の内面に、フランジ状の固定金具34がボルトナットや溶接等によって水密に取り付けられ、固定金具34の切羽側面に、円板状に成形されたトンネル側止水壁7が、ボルトナットや溶接等によって水密に取り付けられる。これにより、トンネル側止水壁7とマシン側止水壁5との間のトンネル6内には、注水室8が区画される。なお、図20に示すように、トンネル6を成すトンネル軸方向に隣接するセグメント10同士の間にフランジ34Xを挟み込み、フランジ34Xの切羽側の面にトンネル側止水壁7をボルト等によって取り付けてもよい。
【0045】
図11に戻って、トンネル側止水壁7には、該止水壁7よりも坑口側のトンネル6内における作業によって注水室8に水を導入するための注水手段9として、注水管9Xと空気抜き管9Yとが設けられる。注水管9Xは、一端が止水壁7の後方から止水壁7を貫通して前方に延出され、他端が止水壁7の後方からトンネル6の天井部分の既設セグメントを貫通して上方に延出されており、トンネル6の外部の水を注水室8に導くものであって、止水壁7の後方に開閉弁35Xを有する。空気抜き管9Yは、止水壁7の後方から止水壁7を貫通して前方に延出され、注水に伴って注水室8内の空気を排出するものであって、止水壁7の後方に開閉弁35Yを有する。
【0046】
以上説明したシールド機1の水中回収構造の作用、即ちシールド機1の水中回収方法について説明する。
【0047】
図12に示すように、上記シールド機1を用いて水底地山41(海底地山)を掘進し、所定位置にてシールドジャッキ11を略フルストローク伸長させた状態でシールド機1を停止する。
【0048】
停止後、図12及び図13に示すように、各シールドジャッキ11を順次収縮させてシュー11Xに間座39を取り付け、間座39を既設セグメント10に当接させて切羽土圧を支持させる。送泥管20X及び排泥管20Yの各開閉弁24X、24Yを閉じ、各開閉弁24X、24Yよりも坑口側の部分の管25X、25Yを取り外す。エレクタ21を撤去する。接続ユニット12のジャッキ押しカップリング12Xとシールドジャッキ11のヘッド側油圧室との間、ジャッキ引きカップリング12Yとジャッキ11のロッド側油圧室との間に、夫々内部油圧ライン37X、37Yを介設する。その後、マシン側止水壁5を取り付け、シールドフレーム2内を嫌水性部品(カッタ用モータ18、ギヤ機構17、中折れジャッキ23、アジテータ19のモータ19X、その他電装品等)が収容された前方の気密室3とその後方のセグメント組立領域4とに仕切る。なお、間座39の取り付け、管25X、25Yの取り外し、エレクタ21の撤去、内部油圧ライン37X、37Yの介設の順番は問わない。
【0049】
マシン側止水壁5の取り付け後、図14に示すように、シールド機1の後方に構築されたトンネル6内をトンネル側止水壁7で前後に仕切る。これにより、トンネル側止水壁7とマシン側止水壁5との間のトンネル6内には、注水室8が区画される。その後、トンネル側止水壁7に注水管9Xと空気抜き管9Yとを装着し、注水室8内に水を導入する。トンネル側止水壁7のトンネル6の長手方向における設置位置は、後述するようにシールド機1の上方の水底土砂41Xを取り除くとき(浚渫するとき)、不可避的にシールド機1の後方のトンネル6の上方の水底土砂41Yをも浚渫されてしまうことによって生じる、トンネル6内の空気の浮力によるトンネル6の浮き上がりを防止できる位置に設定される。
【0050】
注水室8への注水後、図14及び図15に示すように、シールド機1の上方の水底土砂41Xを浚渫する。このとき、シールド機1の後方のトンネル6の上方の水底土砂41Yをも不可避的に有る程度浚渫されてしまうが、注水室8が注水されているためトンネル6が浮き上がることは無い。なお、浚渫の前に、注水管9Xの上方延出部分9Zをトンネル6内から引き抜く等して取り除いておき、上方延出部分9Zが浚渫のための装置と干渉しないようにすることが好ましい。浚渫後、水中に露出した接続ユニット12の蓋部材38を水中にて取り外す。
【0051】
蓋部材38の取り外しによりジャッキ押しカップリング12Xとジャッキ引きカップリング12Yとが水中に露出するので、図16に示すように、それらカップリング12X、12Yに外部油圧ライン(油圧ホース)42(42X、42Y)を夫々接続する。各外部油圧ライン42X、42Yは、水面(海面)の作業船に搭載された油圧機器から延伸されている。また、シールドフレーム2(前胴2X、後胴2Y)に、シールド機1を吊り上げるための吊り金具40を取り付ける。なお、吊り金具40の取付時期は、浚渫以降、何時でも構わない。
【0052】
各カップリング12X、12Yに外部油圧ライン42X、42Yを接続した後、図17に示すように、上記作業船の油圧機器によって外部油圧ライン42X、42Y、カップリング12X、12Y及び内部油圧ライン37X、37Yを介してジャッキ11を伸長させ、シュー11Xに固定された間座39を既設セグメント10に押し付けることで、シールド機1を上記既設セグメント10よりも前方に押し出す(図16、図17参照)。これにより、図17において、テールシール22の後端は間座39の後端よりも所定距離Lだけ前方に位置する。
【0053】
このようにシールド機1を前進させた後、図18に示すようにジャッキ11を収縮させて、シールド機1をトンネル6(既設セグメント10)から切り離す。このときテールシール22の後端とトンネル6の前端との間には上記所定距離Lの隙間が形成される。ここで、注水室8(図15)には予め水が充満されているので、上記距離Lの隙間から注水室8内に水が流入することは無い。仮に、注水室8に水が充満されていないとすると、前記浚渫時にトンネル6が浮き上がってしまうという問題が生じるのみならず、上記距離Lの隙間から水が勢いよく注水室8内に流れ込みその動圧によってマシン側止水壁5やトンネル側止水壁7が破損する可能性があるが、上述のように注水室8に水を充満させておけば上記各止水壁5、7には静圧が加わるのみなので、強度的に有利となる。
【0054】
最後に、図19に示すように吊り金具40にワイヤ43を固定して水面の作業船(フローティングクレーン等)によってシールド機1を引き上げ、回収する。回収されたシールド機1は、船上にて又は地上に戻されて、吊り金具40、間座39、マシン側止水壁5及び内部油圧ライン37X、37Y等が取り外され、図11に示すエレクタ21、送泥管20X及び排泥管20Yの一部25X、25Y、蓋部材38等が取り付けられて再生され、別のトンネル工事(水底トンネル等)の施工に用いられる。
【0055】
回収されたシールド機1を再生している間および再生したシールド機1を別のトンネル工事に用いている間に、上記トンネル6内のトンネル側止水壁7よりも坑口側の部分はその止水壁7によって止水されてことから、かかる部分に二次覆工を施すことができる。すなわち、本実施形態においては、前記文献1に記載されたもののようにトンネル内を二次覆工して坑内を注水した後にシールド機をトンネルから押し出す必要は無く、トンネル6内を二次覆工する前にシールド機1をトンネル6から押し出すことができるので、シールド機1をより早期に回収できシールド機1の稼動効率が向上する。なお、上記トンネル6のトンネル側止水壁7よりも切羽側(前方)の部分の内周面には、止水壁7の取り付け前に二次覆工を施しておく。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係るシールド機1の水中回収構造及び水中回収方法によれば、マシン側止水壁5によって仕切られたシールドフレーム2内の前方の空間を止水できるのでシールド機1の内部の嫌水性部品(既述)を水浸しにすることなく回収できる。
【0057】
また、接続ユニット12のカップリング12X、12Yに内部油圧ライン37X、37Yと外部油圧ライン42X、42Yを接続することで、シールド機1を確実にシールドフレーム2の外部からの遠隔操作でトンネル6に対して押し出すことができる。
【0058】
また、トンネル側止水壁7によってトンネル6内を止水できるのでトンネル6内の二次覆工を待たずにシールド機1を回収できシールド機1を再利用するときの稼動効率が向上する。
【0059】
本発明は上記実施形態に限定されない。
【0060】
例えば、図1〜図20を用いて前述した上記ジャッキ11は油圧式のものであるが、電動式のジャッキでも構わない。この場合、上記内部油圧ライン37X、37Y、外部油圧ライン42X、42Yの代わりに、内部電線、外部電源ケーブルを用いるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の好適実施形態を示す水中回収方法及び水中回収構造が適用されるシールド機の掘削経路を示す断面図である。
【図2】本発明の好適実施形態を示すシールド機の水中回収構造を示す側断面図である。
【図3】上記水中回収構造の使用方法、即ちシールド機の水中回収方法の最初の工程を示す側断面図である。
【図4】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図5】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図6】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図7】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図8】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図9】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図10】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図11】本発明の別の好適実施形態を示すシールド機の水中回収構造を示す側断面図である。
【図12】上記水中回収構造の使用方法、即ちシールド機の水中回収方法の最初の工程を示す側断面図である。
【図13】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図14】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図15】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図16】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図17】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図18】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図19】上記水中回収方法の次の工程を示す側断面図である。
【図20】トンネル側水壁の別の取付構造を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 シールド機
2 シールドフレーム
3 気密室
4 セグメント組立領域
5 マシン側止水壁
6 トンネル
7 トンネル側止水壁
8 注水室
9 注水手段
10 既設セグメント
11 ジャッキ
11X ジャッキの先端(シュー)
12 接続ユニット
17、18、23、19X 嫌水性部品
39 間座
40 吊り金具
41 水底地山
41X 水底土砂
42X、42Y 油圧ライン(外部油圧ライン)
43 ワイヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底地山の内部で停止したシールド機を水中で回収するための方法であって、
上記シールド機のシールドフレーム内を、嫌水性部品が収容された前方の気密室とその後方の領域とにマシン側止水壁で仕切り、
該マシン側止水壁より後方のトンネル内に水を導入し、
上記シールド機の上方の水底土砂を取り除き、
上記シールドフレームに設けられた接続ユニットに、電源又は油圧ラインを上記シールドフレームの外部から接続し、
該電源又は油圧ライン及び上記接続ユニットを介して上記シールドフレーム内に設けられたジャッキを上記シールドフレームの外部から作動させ、
上記シールドフレームを上記トンネルの前方に押し出すようにしたことを特徴とするシールド機の水中回収方法。
【請求項2】
水底地山の内部で停止したシールド機を水中で回収するための方法であって、
上記シールド機のシールドフレーム内を、嫌水性部品が収容された前方の気密室とその後方の領域とにマシン側止水壁で仕切り、
上記シールド機の後方に構築されたトンネル内をトンネル側止水壁で前後に仕切り、
該トンネル側止水壁と上記マシン側止水壁との間に形成された注水室に水を導入し、
上記シールド機の上方の水底土砂を取り除き、
上記シールドフレームに設けられた接続ユニットに、電源又は油圧ラインを上記シールドフレームの外部から接続し、
該電源又は油圧ライン及び上記接続ユニットを介して上記シールドフレーム内に設けられたジャッキを上記シールドフレームの外部から作動させ、
上記シールドフレームを上記トンネルの前方に押し出すようにしたことを特徴とするシールド機の水中回収方法。
【請求項3】
上記ジャッキの先端に間座を取り付け、該間座を上記シールドフレーム内の既設セグメントに当接させて上記シールド機を押し出すようにした請求項1又は2記載のシールド機の水中回収方法。
【請求項4】
水底地山の内部で停止したシールド機を水中で回収するための構造であって、
上記シールド機のシールドフレーム内を、嫌水性部品が収容された前方の気密室とその後方の領域とに仕切るマシン側止水壁と、
該マシン側止水壁の後方のトンネル内に水を導入するための注水手段と、
上記シールド機を上記トンネルの前方に押し出すため上記シールドフレーム内に装着されたジャッキと、
該ジャッキを上記シールドフレームの外部から作動させるため上記シールドフレームに設けられた接続ユニットとを備えたことを特徴とするシールド機の水中回収構造。
【請求項5】
水底地山の内部で停止したシールド機を水中で回収するための構造であって、
上記シールド機のシールドフレーム内を、嫌水性部品が収容された前方の気密室とその後方の領域とに仕切るマシン側止水壁と、
上記シールド機の後方に構築されたトンネル内を前後に仕切るトンネル側止水壁と、
該トンネル側止水壁と上記マシン側止水壁との間に形成された注水室に水を導入するための注水手段と、
上記シールド機を上記トンネルの前方に押し出すため上記シールドフレーム内に装着されたジャッキと、
該ジャッキを上記シールドフレームの外部から作動させるため上記シールドフレームに設けられた接続ユニットとを備えたことを特徴とするシールド機の水中回収構造。
【請求項6】
上記ジャッキの先端に間座を取り付け、該間座を上記シールドフレーム内の既設セグメントに当接させた請求項4又は5記載のシールド機の水中回収構造。
【請求項1】
水底地山の内部で停止したシールド機を水中で回収するための方法であって、
上記シールド機のシールドフレーム内を、嫌水性部品が収容された前方の気密室とその後方の領域とにマシン側止水壁で仕切り、
該マシン側止水壁より後方のトンネル内に水を導入し、
上記シールド機の上方の水底土砂を取り除き、
上記シールドフレームに設けられた接続ユニットに、電源又は油圧ラインを上記シールドフレームの外部から接続し、
該電源又は油圧ライン及び上記接続ユニットを介して上記シールドフレーム内に設けられたジャッキを上記シールドフレームの外部から作動させ、
上記シールドフレームを上記トンネルの前方に押し出すようにしたことを特徴とするシールド機の水中回収方法。
【請求項2】
水底地山の内部で停止したシールド機を水中で回収するための方法であって、
上記シールド機のシールドフレーム内を、嫌水性部品が収容された前方の気密室とその後方の領域とにマシン側止水壁で仕切り、
上記シールド機の後方に構築されたトンネル内をトンネル側止水壁で前後に仕切り、
該トンネル側止水壁と上記マシン側止水壁との間に形成された注水室に水を導入し、
上記シールド機の上方の水底土砂を取り除き、
上記シールドフレームに設けられた接続ユニットに、電源又は油圧ラインを上記シールドフレームの外部から接続し、
該電源又は油圧ライン及び上記接続ユニットを介して上記シールドフレーム内に設けられたジャッキを上記シールドフレームの外部から作動させ、
上記シールドフレームを上記トンネルの前方に押し出すようにしたことを特徴とするシールド機の水中回収方法。
【請求項3】
上記ジャッキの先端に間座を取り付け、該間座を上記シールドフレーム内の既設セグメントに当接させて上記シールド機を押し出すようにした請求項1又は2記載のシールド機の水中回収方法。
【請求項4】
水底地山の内部で停止したシールド機を水中で回収するための構造であって、
上記シールド機のシールドフレーム内を、嫌水性部品が収容された前方の気密室とその後方の領域とに仕切るマシン側止水壁と、
該マシン側止水壁の後方のトンネル内に水を導入するための注水手段と、
上記シールド機を上記トンネルの前方に押し出すため上記シールドフレーム内に装着されたジャッキと、
該ジャッキを上記シールドフレームの外部から作動させるため上記シールドフレームに設けられた接続ユニットとを備えたことを特徴とするシールド機の水中回収構造。
【請求項5】
水底地山の内部で停止したシールド機を水中で回収するための構造であって、
上記シールド機のシールドフレーム内を、嫌水性部品が収容された前方の気密室とその後方の領域とに仕切るマシン側止水壁と、
上記シールド機の後方に構築されたトンネル内を前後に仕切るトンネル側止水壁と、
該トンネル側止水壁と上記マシン側止水壁との間に形成された注水室に水を導入するための注水手段と、
上記シールド機を上記トンネルの前方に押し出すため上記シールドフレーム内に装着されたジャッキと、
該ジャッキを上記シールドフレームの外部から作動させるため上記シールドフレームに設けられた接続ユニットとを備えたことを特徴とするシールド機の水中回収構造。
【請求項6】
上記ジャッキの先端に間座を取り付け、該間座を上記シールドフレーム内の既設セグメントに当接させた請求項4又は5記載のシールド機の水中回収構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2007−205096(P2007−205096A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27340(P2006−27340)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】
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