説明

シールド機の発進工法

【課題】シールド機の発進において、仮セグメントの代わりに中間支持材を使用し、仮掘進後の撤去作業を容易にすることであり、また、仮掘進中のセグメントの搬入・掘削土の搬出等を容易にすることである。
【解決手段】シールド機2を元押しジャッキ1により推進した後、元押しジャッキ1の下段ジャッキ11を縮めて、シールド機2と元押しジャッキ1の間に下段中間支持材5を挿入する。そして、元押しジャッキ1の上段ジャッキ12・13を縮めて、シールド機2と元押しジャッキ1の間に、上方に開放された上段中間支持材6を挿入する。次に、これら上段中間支持材6及び下段中間支持材5を介してシールド機2を元押しジャッキ1により推進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド機の発進工法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド機の発進工程において、元押しジャッキ、押し輪及びストラットが用いられる(例えば特許文献1参照)。
そして、立坑からの発進の場合、シールド機はエントランスに入り込むまで元押しジャッキにより推進され、その後、シールド機の推進ジャッキにより推進される(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−73686号公報
【特許文献2】特開2001−323774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、立坑から発進する場合、その直径方向にわたり仮セグメントを構築していかなければならず、仮掘進後は、その構築された仮セグメントを撤去する必要があった。
また、仮掘進中は、セグメントや資材の搬入および掘削土の搬出等を仮セグメントの後方よりすることとなり、狭い作業スペースの為、作業効率が悪くなった。
【0004】
本発明の課題は、シールド機の発進において、仮セグメントの代わりに中間支持材を使用し、仮掘進後の撤去作業を容易にすることであり、また、仮掘進中のセグメントの搬入・掘削土の搬出等を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、シールド機を元押しジャッキにより推進した後、元押しジャッキの下段ジャッキを縮めて、シールド機と元押しジャッキの間に下段中間支持材を挿入してから、元押しジャッキの上段ジャッキを縮めて、シールド機と元押しジャッキの間に、上方に開放された上段中間支持材を挿入し、次に、これら上段中間支持材及び下段中間支持材を介してシールド機を元押しジャッキにより推進することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシールド機の発進工法であって、前記シールド機がエントランスに入り込むまで、前記下段中間支持材の挿入、前記上段中間支持材の挿入、前記元押しジャッキによる推進を繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シールド機の発進において、仮セグメントの代わりに中間支持材を使用し、仮掘進後の撤去作業を容易にし、しかも、上方が開放された上段中間支持材を利用して仮掘進中のセグメント等の搬入作業および掘削土の搬出作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
図1は本発明を適用した一実施形態の構成として元押しジャッキ1とシールド機2のセット状態を示したもので、図示例において、元押しジャッキ1は、1段の下段ジャッキ11及び2段の上段ジャッキ12・13を備えている。この元押しジャッキ1の前方位置に、図示のように、シールド機2がセットされている。
【0009】
シールド機2は、2リングのセグメントを組んだセグメントリング3を、図示のように、押し輪4に当たるようにセットされている。セグメントリング3は、シールド機2のテールブラシ(テールパッキン)が押し輪4に当たらないところまで押し出されている。
【0010】
次に、図2は元押しジャッキ1によるシールド機2の推進状態を示したもので、図示のように、元押しジャッキ1の下段ジャッキ11及び上段ジャッキ12・13を押し出して押し輪4に当て、セグメントリング3及び不図示のシールドジャッキを介してシールド機2を推進する。このとき、元押しジャッキ1は下段ジャッキ11及び上段ジャッキ12・13を押し切って止めた状態に保持して、次の中間支持材を入れる準備をする。
【0011】
次に、図3は元押しジャッキ1の下段ジャッキ11を縮めた状態を示したもので、図示のように、元押しジャッキ1の下段ジャッキ11のみを縮めた状態に戻す。
【0012】
次に、図4は元押しジャッキ1とシールド機2の間に下段中間支持材5を挿入した状態を示したもので、元押しジャッキ1の下段ジャッキ11を縮めたことによるバックリング防止のため、下段中間支持材5でシールド機2を押える。すなわち、元押しジャッキ1の縮めた状態に戻した下段ジャッキ11とシールド機2側の押し輪4との間に、図示のように、下段中間支持材5を挿入する。
【0013】
この下段中間支持材5は、図示のように、元押しジャッキ1の下段ジャッキ11の延長上に位置するロッド状のものである。
【0014】
次に、図5は元押しジャッキ1の上段ジャッキ12・13を縮めた状態を示したもので、図示のように、元押しジャッキ1の2段の上段ジャッキ12・13を縮めた状態に戻す。
【0015】
次に、図6は元押しジャッキ1とシールド機2の間に上段中間支持材6を挿入した状態を示したもので、元押しジャッキ1の上段ジャッキ12・13を縮めたことによるバックリング防止のため、上段中間支持材6でシールド機2を押える。すなわち、元押しジャッキ1の縮めた状態に戻した上段ジャッキ12・13とシールド機2側の押し輪4との間に、図示のように、上段中間支持材6を挿入する。
【0016】
この上段中間支持材6は、図示例では、前後の押し材61・62を底版63及び2段のロッド材64・65で繋いだ構成のもので、前後の押し材61・62及びロッド材64・65で囲まれた内部空間は上方に開放されている。なお、底版63上には、図示しないが、レールが敷設されている。
【0017】
以上の上方に開放された上段中間支持材6を、図6に示したように、押し輪4に押し材61を当て、元押しジャッキ1の上段ジャッキ12・13に押し材62を当てて、元押しジャッキ1とシールド機2の間に挿入する。
【0018】
その後、元押しジャッキ1の下段ジャッキ11及び上段ジャッキ12・13を押し出す。
【0019】
次に、図7は元押しジャッキ1とシールド機2の間にさらに下段中間支持材5及び上段中間支持材6を挿入した状態を示したものである。すなわち、元押しジャッキ1の縮めた状態に戻した下段ジャッキ11とシールド機2側の下段中間支持材5との間に、図示のように、下段中間支持材5を挿入する。そして、元押しジャッキ1の縮めた状態に戻した上段ジャッキ12・13とシールド機2側の上段中間支持材6との間に、図示のように、上段中間支持材6を挿入する。
【0020】
以上のシールド発進は、図示しないエントランスにシールド機2が入り込むまで行われ、すなわち、元押しジャッキ1による推進でシールド機2の掘進が行われ、エントランスにシールド機2が入り込んだ後は、シールドジャッキによる推進で掘進が行われる。
【0021】
以上、実施形態のシールド機発進によれば、従来の仮セグメントを不要とし、中間支持材を使用することで、仮掘進後の撤去作業を容易にできる。また、仮セグメントのようにシールド機内で組立てないため、元押しジャッキストローク分の長さ毎に連続掘削が可能となり、掘削時間の短縮となる。
その上、上方に開放された上段中間支持材6の底版63上にレールが敷設されており、その上方からセグメント等の搬入および掘削土の搬出作業が容易にできるといった利点も得られる。
【0022】
なお、以上の実施形態においては、上下3段の元押しジャッキとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、上下4段以上であっても良い。
また、上段中間支持材の形状等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用した一実施形態の構成を示すもので、元押しジャッキとシールド機のセット状態を示した概略側面図である。
【図2】図1の元押しジャッキによるシールド機の推進状態を示した概略側面図である。
【図3】図2の元押しジャッキの下段ジャッキを縮めた状態を示した概略側面図である。
【図4】図3の元押しジャッキとシールド機の間に下段中間支持材を挿入した状態を示した概略側面図である。
【図5】図4の元押しジャッキの上段ジャッキを縮めた状態を示した概略側面図である。
【図6】図5の元押しジャッキとシールド機の間に上段中間支持材を挿入した状態を示した概略側面図である。
【図7】図6の元押しジャッキとシールド機の間にさらに下段中間支持材及び上段中間支持材を挿入した状態を示した概略側面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 元押しジャッキ
11 下段ジャッキ
12 上段ジャッキ
13 上段ジャッキ
2 シールド機
3 セグメントリング
4 押し輪
5 下段中間支持材
6 上段中間支持材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド機を元押しジャッキにより推進した後、
元押しジャッキの下段ジャッキを縮めて、シールド機と元押しジャッキの間に下段中間支持材を挿入してから、
元押しジャッキの上段ジャッキを縮めて、シールド機と元押しジャッキの間に、上方に開放された上段中間支持材を挿入し、
次に、これら上段中間支持材及び下段中間支持材を介してシールド機を元押しジャッキにより推進することを特徴とするシールド機の発進工法。
【請求項2】
前記シールド機がエントランスに入り込むまで、前記下段中間支持材の挿入、前記上段中間支持材の挿入、前記元押しジャッキによる推進を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載のシールド機の発進工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−79399(P2009−79399A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248779(P2007−248779)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】