シールド電線の加締め装置およびシールド電線の端末処理方法
【課題】編組線にシールドターミナルをシールドパイプを用いて加締めて接続する際に、シールドターミナルにバリが発生することを抑制するとともに、シールド電線の絶縁体が過剰に潰されることを防止する。
【解決手段】シールド電線Sの絶縁外皮14の端部に環状のシールドターミナル15が配置され、絶縁外皮14の端部から露出している編組線13がシールドターミナル15の先端部を覆うように折り返され、更にその上から環状のシールドパイプ16を被せて加締められたシールド電線の端末処理構造であって、シールドパイプ16は、該シールドパイプ16の外周面の円周方向に等分した3点以上で加締められている。
【解決手段】シールド電線Sの絶縁外皮14の端部に環状のシールドターミナル15が配置され、絶縁外皮14の端部から露出している編組線13がシールドターミナル15の先端部を覆うように折り返され、更にその上から環状のシールドパイプ16を被せて加締められたシールド電線の端末処理構造であって、シールドパイプ16は、該シールドパイプ16の外周面の円周方向に等分した3点以上で加締められている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド電線の末端部において加締めにより編組線にシールドターミナルを接続したシールド電線の加締め装置およびシールド電線の端末処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電線の末端部と端子とを加締めによって接続する電線端子接続構造として、図7に示すものが知られている(例えば、特許文献1参照)。図7において、端子1は、端子板2と円筒状のスリーブ3とを一体に形成したものからなり、電線4の導体5をスリーブ3の内部に挿入した状態でスリーブ3の外周が、例えば六角形に加締められることにより、電線4の導体5と結合されるようになっている。図8は、スリーブ3と導体5との加締め工程を示す図である。端子1のスリーブ3を同図(a)に示すような加締め装置の上型6、下型7を用いて、同図(b)に示すように上下から挟み込んで圧縮することにより、スリーブ3の断面形状は、同図(c)のように、上型6、下型7によって規定される六角形状に加締められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001‐326053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、導体5とスリーブ3との前記加締めを確実にするために、上型6および下型7に突起を設けて、加締め部に加わる外力を集中させる方法がある。図9乃至図12は、かかる突起を用いた加締め方法を、シールド電線の末端部において編組線とシールドターミナルとを加締めて接続する端末処理構造に応用した例を示す。
【0005】
図9および図10は、加締め対象となる編組線とシールドターミナルとを加締めて接続する前の端末処理構造G4を示す。この端末処理構造G4において、シールド電線Sは、導体11と、この導体11を被覆する絶縁体12と、この絶縁体12の周囲に配置された編組線13と、この編組線13を被覆する絶縁外皮14とからなる。前記絶縁外皮14の端部には環状のシールドターミナル15が配置され、絶縁外皮14の端部から露出している編組線13が前記シールドターミナル15の先端部を覆うように、図10に示すように折り返されている。更に、折り返された編組線13の上から環状のシールドパイプ16が被せられ、更に加締め装置の上型17および下型18間に介装されて、後述のように加締められる。
【0006】
加締め装置の上型17は、シールドパイプ16の上半部を加締める上型凹部17aを有し、同じく加締め装置の下型18はシールドパイプ16の下半部を加締める下型凹部18aを有する。これらの上型凹部17aおよび下型凹部18aは、上型17および下型18が付き合わされて圧接(型締め)されたとき、略正六角形(正六辺形)を形成する三面ずつの対峙面17b、18bを持つ。そして、これらの対峙面17b、18bのうち中央部にある対峙面には、突起19が連設されている。これらの突起19は、各対峙面17b、18bから対峙方向に突出して半球状をなす。
【0007】
そこで、かかる構成の上型17の上型凹部17aおよび下型18の下型凹部18a間に、シールドパイプ16位置で端末処理構造G4を図11に示すように介在し、下型18に対し上型17を圧接させる方向に下降させて型締めを開始する。この型閉めの過程では、まず、各突起19がシールドパイプ16外周の上下部2点に接触し、更にこれらの2点を集中的に圧迫(圧縮)していく。このためシールドパイプ16はこれらの2点を中心に略半球状に凹んでいき、その凹みに応じてシールドターミナル15および絶縁外皮14も凹んでいく。これにより各突起19で圧迫されて変形した部位でシ−ルドパイプ16はシールドターミナル15および絶縁外皮14、更には編組線13や絶縁体12を介して導体11に密着するように加締められる。この結果、シールドターミナル15はシールド電線Sの編組線13に加締められて、接続される。
【0008】
上述した電線の端末処理構造G4は、解決すべき以下の問題を有している。
即ち、シールド電線Sに対するシールドターミナル15の加締め工程においては、図11に示すように、各突起19によりシールドパイプ16の外周面の2点に対し圧迫を開始し、その圧迫力を強めると、これらの2点間でシールドパイプ16が上型凹部17aおよび下型凹部18a側へ逃げるように変形していくとともに、上型17および下型18の合わせ面間に位置するシールドパイプ16側部の一部が、前記加圧力を逃がすように変形しながら入り込む。従って、加締めを行った後、上型17および下型18を型開きした際に前述のように入り込んだ延出部分Dは、図11に示すように略台形のバリとなって突出する。このようなバリは、型開き後もシールドパイプ16外周面の側部に図12に示すように突出するように残り、シールドターミナル15を持つシールド電線Sのシールドコネクタ(図示しない)への組付けを困難にするほか、このバリが端末処理構造G4を破損する原因と成り得る。
【0009】
また、上型17および下型18の型閉め時に、シールドパイプ16の外周面のうちの対峙する2辺を加締めることによって、絶縁体12がその2辺によって過剰に潰され、絶縁体12による絶縁性能が低下する虞がある。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、編組線にシールドターミナルをシールドパイプを用いて加締めて接続する際に、シールドターミナルにバリが発生することを抑制するとともに、シールド電線の絶縁体が過剰に潰されることを防止することができるシールド電線の加締め装置およびシールド電線の端末処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明に係るシールド電線の加締め装置は、下記(1)を特徴としている。
(1) 導体と、この導体を被覆する絶縁体と、この絶縁体の周囲に配置された編組線と、この編組線を被覆する絶縁外皮とからなるシールド電線の前記絶縁外皮の端部に環状のシールドターミナルが配置され、前記絶縁外皮の端部から露出している編組線が前記シールドターミナルの先端部を覆うように折り返され、更にその上に環状のシールドパイプを被せた状態で、該シールドパイプを加締めるシールド電線の加締め装置であって、
前記シールドパイプの外周面の円周方向を等分した3点以上に接触する突起が突設された上型および下型と、
前記上型および下型の合わせ面に設けられ、加締め中のシールドパイプの一部が前記各合わせ面間に入り込むのを規制するパイプ侵入規制部材と、
を備えること。
また、前述した目的を達成するために、本発明に係るシールド電線の端末処理方法は、下記(2)を特徴としている。
(2) 導体と、この導体を被覆する絶縁体と、この絶縁体の周囲に配置された編組線と、この編組線を被覆する絶縁外皮とからなるシールド電線の、前記絶縁外皮の端部に環状のシールドターミナルを配置し、前記絶縁外皮の端部から露出している編組線を前記シールドターミナルの先端部を覆うように折り返し、更にその上から環状のシールドパイプを被せ、上型および下型間に該シールドパイプを介在して加締めるシールド電線の端末処理方法であって、
前記シールドパイプを、加締め装置の上型および下型に突設された突起によって該シールドパイプの外周面の円周方向に等分した3点以上で加締めるとともに、前記上型および下型の合わせ面に設けられたパイプ侵入規制部材によって、加締め中のシールドパイプの一部が前記各合わせ面間に入り込むのを規制する、
こと。
【0012】
また、上記(1)のシールド電線の加締め装置および上記(2)のシールド電線の端末処理方法によれば、加締めを行った後上型および下型を型開きした際、上型および下型の合わせ面間に位置するシールドパイプ側部にバリが発生しない。この結果、上型および下型による成形によってシールドパイプが所望の形状に精度良く成形される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシールド電線の加締め装置および本発明のシールド電線の端末処理方法によれば、加締めを行った後上型および下型を型開きした際、上型および下型の合わせ面間に位置するシールドパイプ側部にバリが発生しない。この結果、上型および下型による成形によってシールドパイプが所望の形状に精度良く成形される。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態にかかるシールド電線の端末処理構造を示す斜視図である。
【図2】図1に示す端末処理構造の要部の縦断面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態にかかるシールド電線の端末処理構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の更に他の実施の形態にかかるシールド電線の端末処理構造を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかるシールド電線の端末処理方法を実施する加締め装置の縦断面図である。
【図6】図1に示す端末処理構造の加締め工程を示す説明図である。
【図7】従来の電線端子接続構造を示す斜視図である。
【図8】従来の電線端子接続方法を示す説明図である。
【図9】編組線とシールドターミナルとを加締めて接続する前の端末処理構造を示す斜視図である。
【図10】編組線とシールドターミナルとを加締めて接続する前の端末処理構造を示す横断面図である。
【図11】上型および下型を型開きした直後の端末処理構造を示す縦断面図である。
【図12】加締められたシールドパイプの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態にかかるシールド電線の端末処理構造および端末処理方法を、図1乃至図6を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかるシールド電線の端末処理構造を示す斜視図である。図2は、図1に示す端末処理構造の要部の縦断面図である。図3は、本発明の他の実施の形態にかかるシールド電線の端末処理構造を示す斜視図である。図4は、本発明の更に他の実施の形態にかかるシールド電線の端末処理構造を示す斜視図である。
【0017】
図1に示すシールド電線の端末処理構造G1は、基本構造は図9および図10について述べたものと略同じである。シールド電線Sは、導体11と、この導体11を被覆する絶縁体12と、この絶縁体12の周囲に配置された編組線13と、この編組線13を被覆する絶縁外皮14とからなる。絶縁外皮14の端部には環状のシールドターミナル15が配置され、絶縁外皮14の端部から露出している編組線13がシールドターミナル15の先端部を覆うように、折り返されている。更に、折り返された編組線13の上から環状のシールドパイプ16が被せられ、更に上型17および下型18間に介装されて、例えば3角形以上の多角形、ここでは6角形に後述のように加締められる。
【0018】
この端末処理構造G1は、加締め装置の上型および下型間に介在するシールドパイプ16が上型および下型にそれぞれ3個ずつ形成された突起によって加締められ、略正6角筒状につぶれたシールドパイプ16外周の6面にそれぞれ1個の凹みFが形成された形態をなす。この端末処理構造G1の形成過程については、後述する。
【0019】
図2は、上型および下型により加締められた端末処理構造G1をシールドパイプ16部分で切断した断面図を示す。ここでは、シールドパイプ16は、加締め装置の上型および下型間に介在されて加締められるとき、上型凹部および下型凹部の内面に突設された突起によってシールドパイプ16の外周面(略6面)に凹みFが発生する。このシールドパイプ16の凹みFの形成によって、前記シールドパイプ16の内側の編組線13、シールドターミナル15および絶縁外皮14が導体11に向かって押圧され、断面形状全体が図2に示すような星型の端末処理構造G1となる。この場合に、最外層のシールドパイプ16は大きく撓んで、シールドターミナル15との間に僅かな空隙Hを生じている。
【0020】
このように、上型および下型の上型凹部および下型凹部に設けられた6個の突起を介して加締めを行うことによって、シールドパイプ16の外周面全体に押圧力をバランスよく作用させることができる。これにより、シールドパイプ16外周の一部のみに押圧力が集中することによる局部変形を避けることができる。この結果、この局部的な変形によって絶縁体12が潰れ肉薄化することによって、導体に対する絶縁体12の絶縁性能が劣化することを回避することができる。また、編組線13とシールドターミナル15とは6個の突起によるバランスの良い多点(6点)接触となるため、これら相互間の電気的導通が良好に保たれる。更に、従来のような2点でのシールドパイプの加締めに比べて、6点での加締めでは、シールドパイプ16、シールドターミナル15、絶縁外皮14および編組線13相互間の結着力が高められ、シールド電線Sに対するシールドターミナル15の接続強度を確実なものにすることができる。
【0021】
上述した実施の形態では、上型および下型の上型凹部および下型凹部に設けられた6個の突起を介して加締めを行うことによって、シールドパイプ16の外周面全体に押圧力をバランスよく作用させることができる場合について説明した。しかし、本発明のシールド電線の端末処理構造は、6点によって加締められたものに限るものではない。上型凹部および下型凹部に3個以上の突起を等間隔に配置することによって、シールドパイプ16外周面を3箇所以上で支え、押圧力をバランスよく分散させながら加締められたものも含まれる。
【0022】
図3は、前記上型凹部21aおよび下型凹部22aに設けられた3個の突起を介して加締めた他のシールド電線の端末処理構造G2を示し、図4は、上型凹部21aおよび下型凹部22aに設けられた4個の突起を介して加締めた更に他のシールド電線の端末処理構造G3を示す。このように、上型および下型の上型凹部および下型凹部に設けられた3個または4個の突起を介して加締めを行うことによって、シールドパイプ16の外周面全体に押圧力をバランスよく作用させることができる。これにより、シールドパイプ16外周の一部のみに押圧力が集中することによる局部変形を避けることができる。この結果、この局部的な変形によって絶縁体12が潰れ肉薄化することによって、導体に対する絶縁体12の絶縁性能が劣化することを回避することができる。また、編組線13とシールドターミナル15とは3個または4個の突起によるバランスの良い多点接触となるため、これら相互間の電気的導通が良好に保たれる。更に、従来のような2点でのシールドパイプの加締めに比べて、3点または4点での加締めでは、シールドパイプ16、シールドターミナル15、絶縁外皮14および編組線13相互間の結着力が高められ、シールド電線Sに対するシールドターミナル15の接続強度を確実なものにすることができる。
【0023】
ところで、上述したように、上型凹部および下型凹部に設けられた6個の突起を介してシールドパイプ16を加締め、シールドパイプ16の外周面全体に押圧力をバランスよく作用させることによって、加締めを行った後上型および下型を型開きした際、上型および下型の合わせ面間に位置するシールドパイプ側部の一部に発生するバリの突出高さを低くすることができる。しかしながら、それでも若干の高さのバリがシールドパイプ側部の一部に発生することが考えられる。このように僅かでもバリが発生し、シールドパイプの一部が上型凹部および下型凹部によって囲まれる空間から外部に突出してしまうと、内部に位置するシールドパイプが上型凹部および下型凹部の隅々まで行き渡らずにシールドパイプと上型凹部および下型凹部との間に空隙が生じ、シールドパイプが所望の形状に精度良く成形されない。
【0024】
そこで、本発明にかかるシールド電線の端末処理方法では、加締めを行った後上型および下型を型開きした際、上型および下型の合わせ面間に位置するシールドパイプ側部にバリが発生しない手法について説明する。図5は、本発明の実施の形態にかかるシールド電線の端末処理方法を実施する加締め装置の縦断面図である。図6は、図1に示す端末処理構造の加締め工程を示す説明図である。
【0025】
かかる構成のシールド電線の端末処理方法を、図5および図6に示す加締め装置20を用いて実施する場合を説明する。まず、加締め装置20の構成について述べる。加締め装置20は上型21および下型22とからなり、上型21はシールドパイプ16の上半部を加締める所定サイズの上型凹部21aを有し、下型22はシールドパイプ16の下半部を加締める所定サイズの下型凹部22aを有する。これらの上型凹部21aおよび下型凹部22aは上型21および下型22が付き合わされて圧接されたとき、略正六角形(正六辺形)を形成する三面ずつの対峙面21b、22bを持つ。そして、これらの各対峙面21b、22bの中央部付近に、各一の突起23が隆起している。これらの突起23は各対峙面21b、22bから対峙方向に突出して半球状をなす。尚、突起23の形状は、半球状に限られるものではなく、その断面が対峙方向に膨らむ円弧状となるものでもよく、また、一つの頂点が対峙方向に突出した多角錘形状であってもよい。要は、対峙面21b、22bの一部が対峙方向に隆起していればよい。
【0026】
また、上型21と下型22との合わせ面のうち、型締め時に上型凹部21aと下型凹部22aとが連続する6角穴部の頂点部分に臨む上型21側の合わせ面に、パイプ侵入規制部材を構成する棒状または板状のパイプ規制突起24が垂直方向に突設されている。一方、前記6角穴部の頂点部分を含む下型22側の合わせ面には、前記パイプ規制突起24が挿入可能な突起挿入穴25が設けられている。これらのパイプ規制突起24および突起挿入穴25は互いに密接状態にて嵌め込み可能であるとともに、上型21および下型22が合わせ面で接触することを妨げない長さとされている。
【0027】
そこで、かかる構成の上型21の上型凹部21aおよび下型22の下型凹部22a間に、加締め前の端末処理構造G4のシールドパイプ16を配置し、下型22に対し上型21を圧接させる方向に下降させて、加締め装置20による加締めを開始する。この加締め過程では、まず、各突起23がシールドパイプ16外周の略等間隔の6点に接触し、更にこれらの6点を集中的に圧迫していく。これによりシールドパイプ16は、図6に示すように、これらの6点を中心に次第に略半球状に凹んでいき、その凹みに応じて編組線13を凹んでいく。
【0028】
そして、更に各突起23による押圧を強めていくと、隣り合う突起23間に位置する部位のシールドパイプ16の円弧部分が次第に上型凹部21a内および下型凹部22a内に膨出するように変形していき、遂には対峙面21b、22bに膨出部の先端が接触することとなる。そして、上型21および下型22が合わせ面で密接する時点(型締め点)で加締め工程が終了する。これにより各突起23で圧迫されて窪んだ部位でシ−ルドパイプ16はシールドターミナル15および絶縁外皮14、更には編組線13や絶縁体12を介して導体11に密着するように加締められる。この結果、シールドターミナル15は編組線13に対して電気的、機械的に結着され、かつ安定保持される。
【0029】
次に、パイプ規制突起24および突起挿入穴25による作用について説明する。かかる上型21および下型22を用いて加締めを行い、前記端末処理構造G1を形成する過程で、突起挿入穴25内にパイプ規制突起24が挿入されると、上型凹部21aおよび下型凹部22aが作る6角穴部に臨む上型21および下型22の合わせ面間には隙間が生じ得ず、従って、上型凹部21aおよび下型凹部22a内の突起23の押圧を受けて変形するシールドパイプ16にバリが発生し得る空間はない。
【0030】
このため、本発明にかかるシールド電線の端末処理方法では、加締めを行った後上型および下型を型開きした際、上型および下型の合わせ面間に位置するシールドパイプ側部にバリが発生しない。この結果、上型および下型による成形によってシールドパイプが所望の形状に精度良く成形される。このようにシールドパイプ16が成形されたものが、図2に示す、シールドパイプ16の全周面の6箇所でその周方向に均等に加締められた端末処理構造G1である。
【0031】
以上のように、本実施の形態のシールド電線の端末処理構造によれば、シールドパイプ16外周の一部のみに押圧力が集中することによる局部変形を避けることができる。この結果、この局部的な変形によって絶縁体12が潰れ肉薄化することによって、導体に対する絶縁体12の絶縁性能が劣化することを回避することができる。また、編組線13とシールドターミナル15とは多点接触となるため、これら相互間の電気的導通が良好に保たれる。更に、従来のような2点でのシールドパイプの加締めに比べて、6点での加締めでは、シールドパイプ16、シールドターミナル15、絶縁外皮14および編組線13相互間の結着力が高められ、シールド電線Sに対するシールドターミナル15の接続強度を確実なものにすることができる。
【0032】
また、本実施の形態のシールド電線の加締め装置および本実施の形態のシールド電線の端末処理方法によれば、加締めを行った後上型21および下型22を型開きした際、上型21および下型22の合わせ面間に位置するシールドパイプ16側部にバリが発生しない。この結果、上型21および下型22による成形によってシールドパイプが所望の形状に精度良く成形される。
【符号の説明】
【0033】
11 導体
12 絶縁体
13 編組線
14 絶縁外皮
15 シールドターミナル
16 シールドパイプ
20 加締め装置
21 上型
22 下型
23 突起
24 パイプ規制突起(パイプ規制部材)
25 突起挿入穴
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド電線の末端部において加締めにより編組線にシールドターミナルを接続したシールド電線の加締め装置およびシールド電線の端末処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電線の末端部と端子とを加締めによって接続する電線端子接続構造として、図7に示すものが知られている(例えば、特許文献1参照)。図7において、端子1は、端子板2と円筒状のスリーブ3とを一体に形成したものからなり、電線4の導体5をスリーブ3の内部に挿入した状態でスリーブ3の外周が、例えば六角形に加締められることにより、電線4の導体5と結合されるようになっている。図8は、スリーブ3と導体5との加締め工程を示す図である。端子1のスリーブ3を同図(a)に示すような加締め装置の上型6、下型7を用いて、同図(b)に示すように上下から挟み込んで圧縮することにより、スリーブ3の断面形状は、同図(c)のように、上型6、下型7によって規定される六角形状に加締められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001‐326053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、導体5とスリーブ3との前記加締めを確実にするために、上型6および下型7に突起を設けて、加締め部に加わる外力を集中させる方法がある。図9乃至図12は、かかる突起を用いた加締め方法を、シールド電線の末端部において編組線とシールドターミナルとを加締めて接続する端末処理構造に応用した例を示す。
【0005】
図9および図10は、加締め対象となる編組線とシールドターミナルとを加締めて接続する前の端末処理構造G4を示す。この端末処理構造G4において、シールド電線Sは、導体11と、この導体11を被覆する絶縁体12と、この絶縁体12の周囲に配置された編組線13と、この編組線13を被覆する絶縁外皮14とからなる。前記絶縁外皮14の端部には環状のシールドターミナル15が配置され、絶縁外皮14の端部から露出している編組線13が前記シールドターミナル15の先端部を覆うように、図10に示すように折り返されている。更に、折り返された編組線13の上から環状のシールドパイプ16が被せられ、更に加締め装置の上型17および下型18間に介装されて、後述のように加締められる。
【0006】
加締め装置の上型17は、シールドパイプ16の上半部を加締める上型凹部17aを有し、同じく加締め装置の下型18はシールドパイプ16の下半部を加締める下型凹部18aを有する。これらの上型凹部17aおよび下型凹部18aは、上型17および下型18が付き合わされて圧接(型締め)されたとき、略正六角形(正六辺形)を形成する三面ずつの対峙面17b、18bを持つ。そして、これらの対峙面17b、18bのうち中央部にある対峙面には、突起19が連設されている。これらの突起19は、各対峙面17b、18bから対峙方向に突出して半球状をなす。
【0007】
そこで、かかる構成の上型17の上型凹部17aおよび下型18の下型凹部18a間に、シールドパイプ16位置で端末処理構造G4を図11に示すように介在し、下型18に対し上型17を圧接させる方向に下降させて型締めを開始する。この型閉めの過程では、まず、各突起19がシールドパイプ16外周の上下部2点に接触し、更にこれらの2点を集中的に圧迫(圧縮)していく。このためシールドパイプ16はこれらの2点を中心に略半球状に凹んでいき、その凹みに応じてシールドターミナル15および絶縁外皮14も凹んでいく。これにより各突起19で圧迫されて変形した部位でシ−ルドパイプ16はシールドターミナル15および絶縁外皮14、更には編組線13や絶縁体12を介して導体11に密着するように加締められる。この結果、シールドターミナル15はシールド電線Sの編組線13に加締められて、接続される。
【0008】
上述した電線の端末処理構造G4は、解決すべき以下の問題を有している。
即ち、シールド電線Sに対するシールドターミナル15の加締め工程においては、図11に示すように、各突起19によりシールドパイプ16の外周面の2点に対し圧迫を開始し、その圧迫力を強めると、これらの2点間でシールドパイプ16が上型凹部17aおよび下型凹部18a側へ逃げるように変形していくとともに、上型17および下型18の合わせ面間に位置するシールドパイプ16側部の一部が、前記加圧力を逃がすように変形しながら入り込む。従って、加締めを行った後、上型17および下型18を型開きした際に前述のように入り込んだ延出部分Dは、図11に示すように略台形のバリとなって突出する。このようなバリは、型開き後もシールドパイプ16外周面の側部に図12に示すように突出するように残り、シールドターミナル15を持つシールド電線Sのシールドコネクタ(図示しない)への組付けを困難にするほか、このバリが端末処理構造G4を破損する原因と成り得る。
【0009】
また、上型17および下型18の型閉め時に、シールドパイプ16の外周面のうちの対峙する2辺を加締めることによって、絶縁体12がその2辺によって過剰に潰され、絶縁体12による絶縁性能が低下する虞がある。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、編組線にシールドターミナルをシールドパイプを用いて加締めて接続する際に、シールドターミナルにバリが発生することを抑制するとともに、シールド電線の絶縁体が過剰に潰されることを防止することができるシールド電線の加締め装置およびシールド電線の端末処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明に係るシールド電線の加締め装置は、下記(1)を特徴としている。
(1) 導体と、この導体を被覆する絶縁体と、この絶縁体の周囲に配置された編組線と、この編組線を被覆する絶縁外皮とからなるシールド電線の前記絶縁外皮の端部に環状のシールドターミナルが配置され、前記絶縁外皮の端部から露出している編組線が前記シールドターミナルの先端部を覆うように折り返され、更にその上に環状のシールドパイプを被せた状態で、該シールドパイプを加締めるシールド電線の加締め装置であって、
前記シールドパイプの外周面の円周方向を等分した3点以上に接触する突起が突設された上型および下型と、
前記上型および下型の合わせ面に設けられ、加締め中のシールドパイプの一部が前記各合わせ面間に入り込むのを規制するパイプ侵入規制部材と、
を備えること。
また、前述した目的を達成するために、本発明に係るシールド電線の端末処理方法は、下記(2)を特徴としている。
(2) 導体と、この導体を被覆する絶縁体と、この絶縁体の周囲に配置された編組線と、この編組線を被覆する絶縁外皮とからなるシールド電線の、前記絶縁外皮の端部に環状のシールドターミナルを配置し、前記絶縁外皮の端部から露出している編組線を前記シールドターミナルの先端部を覆うように折り返し、更にその上から環状のシールドパイプを被せ、上型および下型間に該シールドパイプを介在して加締めるシールド電線の端末処理方法であって、
前記シールドパイプを、加締め装置の上型および下型に突設された突起によって該シールドパイプの外周面の円周方向に等分した3点以上で加締めるとともに、前記上型および下型の合わせ面に設けられたパイプ侵入規制部材によって、加締め中のシールドパイプの一部が前記各合わせ面間に入り込むのを規制する、
こと。
【0012】
また、上記(1)のシールド電線の加締め装置および上記(2)のシールド電線の端末処理方法によれば、加締めを行った後上型および下型を型開きした際、上型および下型の合わせ面間に位置するシールドパイプ側部にバリが発生しない。この結果、上型および下型による成形によってシールドパイプが所望の形状に精度良く成形される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシールド電線の加締め装置および本発明のシールド電線の端末処理方法によれば、加締めを行った後上型および下型を型開きした際、上型および下型の合わせ面間に位置するシールドパイプ側部にバリが発生しない。この結果、上型および下型による成形によってシールドパイプが所望の形状に精度良く成形される。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態にかかるシールド電線の端末処理構造を示す斜視図である。
【図2】図1に示す端末処理構造の要部の縦断面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態にかかるシールド電線の端末処理構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の更に他の実施の形態にかかるシールド電線の端末処理構造を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかるシールド電線の端末処理方法を実施する加締め装置の縦断面図である。
【図6】図1に示す端末処理構造の加締め工程を示す説明図である。
【図7】従来の電線端子接続構造を示す斜視図である。
【図8】従来の電線端子接続方法を示す説明図である。
【図9】編組線とシールドターミナルとを加締めて接続する前の端末処理構造を示す斜視図である。
【図10】編組線とシールドターミナルとを加締めて接続する前の端末処理構造を示す横断面図である。
【図11】上型および下型を型開きした直後の端末処理構造を示す縦断面図である。
【図12】加締められたシールドパイプの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態にかかるシールド電線の端末処理構造および端末処理方法を、図1乃至図6を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかるシールド電線の端末処理構造を示す斜視図である。図2は、図1に示す端末処理構造の要部の縦断面図である。図3は、本発明の他の実施の形態にかかるシールド電線の端末処理構造を示す斜視図である。図4は、本発明の更に他の実施の形態にかかるシールド電線の端末処理構造を示す斜視図である。
【0017】
図1に示すシールド電線の端末処理構造G1は、基本構造は図9および図10について述べたものと略同じである。シールド電線Sは、導体11と、この導体11を被覆する絶縁体12と、この絶縁体12の周囲に配置された編組線13と、この編組線13を被覆する絶縁外皮14とからなる。絶縁外皮14の端部には環状のシールドターミナル15が配置され、絶縁外皮14の端部から露出している編組線13がシールドターミナル15の先端部を覆うように、折り返されている。更に、折り返された編組線13の上から環状のシールドパイプ16が被せられ、更に上型17および下型18間に介装されて、例えば3角形以上の多角形、ここでは6角形に後述のように加締められる。
【0018】
この端末処理構造G1は、加締め装置の上型および下型間に介在するシールドパイプ16が上型および下型にそれぞれ3個ずつ形成された突起によって加締められ、略正6角筒状につぶれたシールドパイプ16外周の6面にそれぞれ1個の凹みFが形成された形態をなす。この端末処理構造G1の形成過程については、後述する。
【0019】
図2は、上型および下型により加締められた端末処理構造G1をシールドパイプ16部分で切断した断面図を示す。ここでは、シールドパイプ16は、加締め装置の上型および下型間に介在されて加締められるとき、上型凹部および下型凹部の内面に突設された突起によってシールドパイプ16の外周面(略6面)に凹みFが発生する。このシールドパイプ16の凹みFの形成によって、前記シールドパイプ16の内側の編組線13、シールドターミナル15および絶縁外皮14が導体11に向かって押圧され、断面形状全体が図2に示すような星型の端末処理構造G1となる。この場合に、最外層のシールドパイプ16は大きく撓んで、シールドターミナル15との間に僅かな空隙Hを生じている。
【0020】
このように、上型および下型の上型凹部および下型凹部に設けられた6個の突起を介して加締めを行うことによって、シールドパイプ16の外周面全体に押圧力をバランスよく作用させることができる。これにより、シールドパイプ16外周の一部のみに押圧力が集中することによる局部変形を避けることができる。この結果、この局部的な変形によって絶縁体12が潰れ肉薄化することによって、導体に対する絶縁体12の絶縁性能が劣化することを回避することができる。また、編組線13とシールドターミナル15とは6個の突起によるバランスの良い多点(6点)接触となるため、これら相互間の電気的導通が良好に保たれる。更に、従来のような2点でのシールドパイプの加締めに比べて、6点での加締めでは、シールドパイプ16、シールドターミナル15、絶縁外皮14および編組線13相互間の結着力が高められ、シールド電線Sに対するシールドターミナル15の接続強度を確実なものにすることができる。
【0021】
上述した実施の形態では、上型および下型の上型凹部および下型凹部に設けられた6個の突起を介して加締めを行うことによって、シールドパイプ16の外周面全体に押圧力をバランスよく作用させることができる場合について説明した。しかし、本発明のシールド電線の端末処理構造は、6点によって加締められたものに限るものではない。上型凹部および下型凹部に3個以上の突起を等間隔に配置することによって、シールドパイプ16外周面を3箇所以上で支え、押圧力をバランスよく分散させながら加締められたものも含まれる。
【0022】
図3は、前記上型凹部21aおよび下型凹部22aに設けられた3個の突起を介して加締めた他のシールド電線の端末処理構造G2を示し、図4は、上型凹部21aおよび下型凹部22aに設けられた4個の突起を介して加締めた更に他のシールド電線の端末処理構造G3を示す。このように、上型および下型の上型凹部および下型凹部に設けられた3個または4個の突起を介して加締めを行うことによって、シールドパイプ16の外周面全体に押圧力をバランスよく作用させることができる。これにより、シールドパイプ16外周の一部のみに押圧力が集中することによる局部変形を避けることができる。この結果、この局部的な変形によって絶縁体12が潰れ肉薄化することによって、導体に対する絶縁体12の絶縁性能が劣化することを回避することができる。また、編組線13とシールドターミナル15とは3個または4個の突起によるバランスの良い多点接触となるため、これら相互間の電気的導通が良好に保たれる。更に、従来のような2点でのシールドパイプの加締めに比べて、3点または4点での加締めでは、シールドパイプ16、シールドターミナル15、絶縁外皮14および編組線13相互間の結着力が高められ、シールド電線Sに対するシールドターミナル15の接続強度を確実なものにすることができる。
【0023】
ところで、上述したように、上型凹部および下型凹部に設けられた6個の突起を介してシールドパイプ16を加締め、シールドパイプ16の外周面全体に押圧力をバランスよく作用させることによって、加締めを行った後上型および下型を型開きした際、上型および下型の合わせ面間に位置するシールドパイプ側部の一部に発生するバリの突出高さを低くすることができる。しかしながら、それでも若干の高さのバリがシールドパイプ側部の一部に発生することが考えられる。このように僅かでもバリが発生し、シールドパイプの一部が上型凹部および下型凹部によって囲まれる空間から外部に突出してしまうと、内部に位置するシールドパイプが上型凹部および下型凹部の隅々まで行き渡らずにシールドパイプと上型凹部および下型凹部との間に空隙が生じ、シールドパイプが所望の形状に精度良く成形されない。
【0024】
そこで、本発明にかかるシールド電線の端末処理方法では、加締めを行った後上型および下型を型開きした際、上型および下型の合わせ面間に位置するシールドパイプ側部にバリが発生しない手法について説明する。図5は、本発明の実施の形態にかかるシールド電線の端末処理方法を実施する加締め装置の縦断面図である。図6は、図1に示す端末処理構造の加締め工程を示す説明図である。
【0025】
かかる構成のシールド電線の端末処理方法を、図5および図6に示す加締め装置20を用いて実施する場合を説明する。まず、加締め装置20の構成について述べる。加締め装置20は上型21および下型22とからなり、上型21はシールドパイプ16の上半部を加締める所定サイズの上型凹部21aを有し、下型22はシールドパイプ16の下半部を加締める所定サイズの下型凹部22aを有する。これらの上型凹部21aおよび下型凹部22aは上型21および下型22が付き合わされて圧接されたとき、略正六角形(正六辺形)を形成する三面ずつの対峙面21b、22bを持つ。そして、これらの各対峙面21b、22bの中央部付近に、各一の突起23が隆起している。これらの突起23は各対峙面21b、22bから対峙方向に突出して半球状をなす。尚、突起23の形状は、半球状に限られるものではなく、その断面が対峙方向に膨らむ円弧状となるものでもよく、また、一つの頂点が対峙方向に突出した多角錘形状であってもよい。要は、対峙面21b、22bの一部が対峙方向に隆起していればよい。
【0026】
また、上型21と下型22との合わせ面のうち、型締め時に上型凹部21aと下型凹部22aとが連続する6角穴部の頂点部分に臨む上型21側の合わせ面に、パイプ侵入規制部材を構成する棒状または板状のパイプ規制突起24が垂直方向に突設されている。一方、前記6角穴部の頂点部分を含む下型22側の合わせ面には、前記パイプ規制突起24が挿入可能な突起挿入穴25が設けられている。これらのパイプ規制突起24および突起挿入穴25は互いに密接状態にて嵌め込み可能であるとともに、上型21および下型22が合わせ面で接触することを妨げない長さとされている。
【0027】
そこで、かかる構成の上型21の上型凹部21aおよび下型22の下型凹部22a間に、加締め前の端末処理構造G4のシールドパイプ16を配置し、下型22に対し上型21を圧接させる方向に下降させて、加締め装置20による加締めを開始する。この加締め過程では、まず、各突起23がシールドパイプ16外周の略等間隔の6点に接触し、更にこれらの6点を集中的に圧迫していく。これによりシールドパイプ16は、図6に示すように、これらの6点を中心に次第に略半球状に凹んでいき、その凹みに応じて編組線13を凹んでいく。
【0028】
そして、更に各突起23による押圧を強めていくと、隣り合う突起23間に位置する部位のシールドパイプ16の円弧部分が次第に上型凹部21a内および下型凹部22a内に膨出するように変形していき、遂には対峙面21b、22bに膨出部の先端が接触することとなる。そして、上型21および下型22が合わせ面で密接する時点(型締め点)で加締め工程が終了する。これにより各突起23で圧迫されて窪んだ部位でシ−ルドパイプ16はシールドターミナル15および絶縁外皮14、更には編組線13や絶縁体12を介して導体11に密着するように加締められる。この結果、シールドターミナル15は編組線13に対して電気的、機械的に結着され、かつ安定保持される。
【0029】
次に、パイプ規制突起24および突起挿入穴25による作用について説明する。かかる上型21および下型22を用いて加締めを行い、前記端末処理構造G1を形成する過程で、突起挿入穴25内にパイプ規制突起24が挿入されると、上型凹部21aおよび下型凹部22aが作る6角穴部に臨む上型21および下型22の合わせ面間には隙間が生じ得ず、従って、上型凹部21aおよび下型凹部22a内の突起23の押圧を受けて変形するシールドパイプ16にバリが発生し得る空間はない。
【0030】
このため、本発明にかかるシールド電線の端末処理方法では、加締めを行った後上型および下型を型開きした際、上型および下型の合わせ面間に位置するシールドパイプ側部にバリが発生しない。この結果、上型および下型による成形によってシールドパイプが所望の形状に精度良く成形される。このようにシールドパイプ16が成形されたものが、図2に示す、シールドパイプ16の全周面の6箇所でその周方向に均等に加締められた端末処理構造G1である。
【0031】
以上のように、本実施の形態のシールド電線の端末処理構造によれば、シールドパイプ16外周の一部のみに押圧力が集中することによる局部変形を避けることができる。この結果、この局部的な変形によって絶縁体12が潰れ肉薄化することによって、導体に対する絶縁体12の絶縁性能が劣化することを回避することができる。また、編組線13とシールドターミナル15とは多点接触となるため、これら相互間の電気的導通が良好に保たれる。更に、従来のような2点でのシールドパイプの加締めに比べて、6点での加締めでは、シールドパイプ16、シールドターミナル15、絶縁外皮14および編組線13相互間の結着力が高められ、シールド電線Sに対するシールドターミナル15の接続強度を確実なものにすることができる。
【0032】
また、本実施の形態のシールド電線の加締め装置および本実施の形態のシールド電線の端末処理方法によれば、加締めを行った後上型21および下型22を型開きした際、上型21および下型22の合わせ面間に位置するシールドパイプ16側部にバリが発生しない。この結果、上型21および下型22による成形によってシールドパイプが所望の形状に精度良く成形される。
【符号の説明】
【0033】
11 導体
12 絶縁体
13 編組線
14 絶縁外皮
15 シールドターミナル
16 シールドパイプ
20 加締め装置
21 上型
22 下型
23 突起
24 パイプ規制突起(パイプ規制部材)
25 突起挿入穴
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、この導体を被覆する絶縁体と、この絶縁体の周囲に配置された編組線と、この編組線を被覆する絶縁外皮とからなるシールド電線の前記絶縁外皮の端部に環状のシールドターミナルが配置され、前記絶縁外皮の端部から露出している編組線が前記シールドターミナルの先端部を覆うように折り返され、更にその上に環状のシールドパイプを被せた状態で、該シールドパイプを加締めるシールド電線の加締め装置であって、
前記シールドパイプの外周面の円周方向を等分した3点以上に接触する突起が突設された上型および下型と、
前記上型および下型の合わせ面に設けられ、加締め中のシールドパイプの一部が前記各合わせ面間に入り込むのを規制するパイプ侵入規制部材と、
を備えることを特徴とするシールド電線の加締め装置。
【請求項2】
導体と、この導体を被覆する絶縁体と、この絶縁体の周囲に配置された編組線と、この編組線を被覆する絶縁外皮とからなるシールド電線の、前記絶縁外皮の端部に環状のシールドターミナルを配置し、前記絶縁外皮の端部から露出している編組線を前記シールドターミナルの先端部を覆うように折り返し、更にその上から環状のシールドパイプを被せ、上型および下型間に該シールドパイプを介在して加締めるシールド電線の端末処理方法であって、
前記シールドパイプを、加締め装置の上型および下型に突設された突起によって該シールドパイプの外周面の円周方向に等分した3点以上で加締めるとともに、前記上型および下型の合わせ面に設けられたパイプ侵入規制部材によって、加締め中のシールドパイプの一部が前記各合わせ面間に入り込むのを規制する、
ことを特徴とするシールド電線の端末処理方法。
【請求項1】
導体と、この導体を被覆する絶縁体と、この絶縁体の周囲に配置された編組線と、この編組線を被覆する絶縁外皮とからなるシールド電線の前記絶縁外皮の端部に環状のシールドターミナルが配置され、前記絶縁外皮の端部から露出している編組線が前記シールドターミナルの先端部を覆うように折り返され、更にその上に環状のシールドパイプを被せた状態で、該シールドパイプを加締めるシールド電線の加締め装置であって、
前記シールドパイプの外周面の円周方向を等分した3点以上に接触する突起が突設された上型および下型と、
前記上型および下型の合わせ面に設けられ、加締め中のシールドパイプの一部が前記各合わせ面間に入り込むのを規制するパイプ侵入規制部材と、
を備えることを特徴とするシールド電線の加締め装置。
【請求項2】
導体と、この導体を被覆する絶縁体と、この絶縁体の周囲に配置された編組線と、この編組線を被覆する絶縁外皮とからなるシールド電線の、前記絶縁外皮の端部に環状のシールドターミナルを配置し、前記絶縁外皮の端部から露出している編組線を前記シールドターミナルの先端部を覆うように折り返し、更にその上から環状のシールドパイプを被せ、上型および下型間に該シールドパイプを介在して加締めるシールド電線の端末処理方法であって、
前記シールドパイプを、加締め装置の上型および下型に突設された突起によって該シールドパイプの外周面の円周方向に等分した3点以上で加締めるとともに、前記上型および下型の合わせ面に設けられたパイプ侵入規制部材によって、加締め中のシールドパイプの一部が前記各合わせ面間に入り込むのを規制する、
ことを特徴とするシールド電線の端末処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−171057(P2011−171057A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32531(P2010−32531)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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