説明

シールド電線の端末接続構造およびその接続構造を有する端子付きシールド電線並びにその製造方法

【課題】高周波対応のシールド電線に外導体端子をオーバーラップ圧着する際に、端子の回転が抑制され、良好な電線固着力や電気的な接続を備えた端子付きシールド電線およびその製造方法を提供すること。
【解決方法】
ワイヤバレルとインシュレーションバレルを有する外導体端子20にシールド電線10の剥き出しにされた端末部分を挟着するに際し、これら2つのバレル26,28がどちらもオーバーラップしてシールド電線を挟着されている状態において、それぞれの対をなす圧着片30a,30bおよび30c,30dの重なり方がワイヤバレル26とインシュレーションバレル28とでは互いに外導体端子20の左右逆側の圧着片が上になって重なり合っている状態となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシールド電線の端末接続構造および、その接続構造を有する端子付きシールド電線並びにその製造方法に関し、更に詳しくは、ワイヤーハーネスのシールド電線の端末部にコネクタの外導体端子を接続するに際し、端子の回転を防止し高周波特性の改善に好適なシールド電線の端末接続構造とその接続構造を有する端子付きシールド電線およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車、OA機器、家電製品等を中心に高性能、多機能化が急速に進められてきており、それに伴い伝送される電気信号は高速化(高周波化)されてきている。一般に、このような高周波の電気信号を伝送するためにシールド電線が用いられるが、このシールド電線に接続される端子にも高周波特性への対応の要求が高まっている。
【0003】
従来、このようなシールド電線の端末接続構造としては例えば特開2000−260540号公報(特許文献1)や特開2000−323246号公報(特許文献2)のようなものが知られている。これは、シールド電線の端末部の絶縁外被を皮剥ぎして露出された編組線を外被側に折り返し、露出された絶縁内皮の端末を更に切除して信号導体を露出させ、その芯線の端末にはコネクタの内導体端子を接続する一方で、外導体端子の備えるワイヤバレルの一対の圧着片でシールド電線の外被側に折り返された編組線を圧着し、さらにインシュレーションバレルの一対の圧着片で、絶縁外被側を圧着したものである。
【0004】
特許文献1に記載の発明にかかる構成では、外導体端子の備えるワイヤバレルとインシュレーションバレルの先端が電線を丁度一周して突き当たるように設計されている。そのためバレル長が短いことによって編組線の圧着が不十分となり、バレル先端の隙間に挟まった編組線のはみ出しや線切れによる短絡のおそれがある。
【0005】
そこで、特許文献2に記載の発明のようにワイヤバレルとインシュレーションバレルのバレル先端長を長くしてオーバーラップ圧着する事も行われている。この場合には圧着時に編組線を大きく巻き込むので圧着漏れのおそれが減り、バレル先端の突き当たりがないため、隙間に編組線が挟まって切れたりせず、短絡のおそれもなくなる。また、同軸線の太さが多少変わっても、圧着高さ(C/H)および圧着幅(C/W)を調整してバレル先端のラップ量を調整することにより対応可能なため、ある程度広い電線サイズに対応でき、端子の種類を減らすことができてコストメリットも図れる。
【0006】
しかしながら、従来のオーバーラップ圧着には次のような問題があった。図4はその構造を示している。図4(a)は、シールド電線10の端末に外導体端子21が圧着される前の状態を示したもの、図4(b)は圧着加工後の状態を示したものである。ここでシールド電線10としては高周波の電気信号の伝送に適した同軸線の例で示す。
【0007】
このような高周波信号を伝送するシールド電線10の両端に接続されるコネクタ端子には、シールド電線10の信号導体18に内導体端子33が接続され、外導体端子21の両端が開口された角筒状の嵌合筒部23に誘電体35を介して収容される。そして、シールド電線10の編組線(シールド導体)14はこの嵌合筒部23に延設されるワイヤバレル26の一対の圧着片30a,30bによりオーバーラップ圧着され、又シールド電線10の絶縁外被12の部分はインシュレーションバレル28の一対の圧着片30c,30dによりオーバーラップ圧着されている。
【0008】
しかし、図4(b)に示されるように、その外導体端子21のワイヤーバレル26、インシュレーションバレル28のオーバーラップ圧着状態をみると、いずれも同じ方向の重ね合わせ状態であることが分かる。すなわち外導体端子21の一方のサイドの圧着片30a,30cが下側に、そして他方の圧着片30b,30cが上側に重ね合わされた状態となっている。
【0009】
このような従来のオーバーラップ圧着構造だと、次のような問題がある。図5は、外導体端子21のワイヤバレル26、インシュレーションバレル28によりシールド電線10をオーバーラップ圧着する過程を断面図で示したものである(図面の便宜上インシュレーションバレル28のみを示す)が、この場合図5(a)に示されるように、圧着金型のクリンパ44は、高さの異なる山を2つ連ねたような左右非対称の型内壁面形状に形成されており、これによって、対をなす圧着片のそれぞれが屈曲するタイミングがずらされ、圧着片先端部の衝突が回避されて圧着不良が起こらないようにしている(特許文献3)。
【0010】
そしてワイヤバレル26側の圧着金型であるクリンパ41もこのインシュレーションバレル28側の圧着金型と同じように高さの異なる山を2つ連ねたような左右非対称の型内壁面形状を有しており、両クリンパ41,44の型内壁面形状が外導体端子片側の圧着片30a,30cの曲げ加工側よりも反対側の圧着片30b,30dの曲げ加工側の方を大きく(深く)してある。
【0011】
そしてこのような金型構造とする事によりクリンパ41,44が下降してくると、ワイヤバレル26、インシュレーションバレル28はクリンパ41,44とアンビル42,46とに挟圧されてその対となる圧着片30a,30bおよび30c,30dがクリンパ41,44のそれぞれの型内壁面70,74(ワイヤバレル側とインシュレーションバレル側とで略同一形状)に沿って屈曲し始め、図5(b)に示されるようにシールド電線10を包み込むような形に屈曲される。そしてクリンパ41,44の窪みの浅い方の型内壁面74に沿って屈曲された圧着片30a,30cが反対側の圧着片30b,30dの下に回り込む形となり、図5(c)および(d)に示すように、図中左側の圧着片30b,30dの先端は右側から屈曲してきた圧着片30a,30cの先端とクリンパ40,44の型内壁面70,74の境界に位置する突出部72に押さえ込まれることになる。
【0012】
この時、外導体端子21が固定されていないため圧着片30b,30dは、突出部72を越えて右側に屈曲していくことができず、先に屈曲を始めた左側の圧着片30a,30cのみ屈曲が進行し、圧着片30b,30dの下側へ回り込んでいく。すると、外導体端子21は図5(d)の矢印60の示す方向に回転していることになり、ワイヤバレル26の方も図示はしないが、同様の屈曲過程をたどり、圧着片30aが圧着片30bの下側に回り込んで屈曲していき、同じく図5(d)の矢印60の示す方向に回転してしまう。そして最終的には、図5(e),(f)に示すように、ワイヤバレル26,インシュレーションバレル28ともにシールド電線10の中心軸と信号導体の中心軸がずれてしまい、信号導体が横に引っ張られる、およびシールド電線が捻られる等の不具合が生じ、信号導体18が断線してしまうおそれがある。
【0013】
尚、従来より、図6(a)に示されるように端子圧着装置内には端子のベンドアップ・ダウン等を防止するための端子押さえ50が備えられており、角筒状の嵌合筒部23を有する端子においては、嵌合筒部を押さえることで端子を無理なく固定することができた。そのため左右非対称なクリンパ41,44がワイヤバレル26やインシュレーションバレル28を挟着しても、端子が回転することがなく、圧着片30b,30dは突出部72を越えて右側に屈曲していき、圧着片30aと30b,30cと30dは左右均等に互いに重なり合って良好なオーバーラップ圧着を施すことができた。
【0014】
【特許文献1】特開2000−260540号公報
【特許文献2】特開2000−323246号公報
【特許文献3】特開平3−165478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、近年、電送信号の高周波化に対応するために、嵌合筒部が円筒状の外導体端子が多く用いられるようになってきており、これら円筒状の端子においては、図6(b)に示すように外導体端子の嵌合筒部22を端子押さえ52で押さえても端子の回転を止めることができない。そのため、端子が図6(b)に示す例のように回転してしまい、良好なオーバーラップ圧着を施すことが困難である。
【0016】
また、電線固着力や電気的接続の信頼性は、生産後に全数検査することが難しく、事前に圧着加工時の圧着高さ(C/H)および圧着幅(C/W)を調整して電線固着力、接触抵抗等を管理しているが、圧着時に端子が回転すると、安定した圧着ができず製品の性能保証ができない。このように、圧着時に端子が回転すると、電線固着力や電気的な接続にばらつきが生じやすくなる。
【0017】
本発明が解決しようとする課題は、高周波対応のシールド電線に外導体端子をオーバーラップ圧着する際に、端子の回転が抑制され、良好な電線固着力や電気的な接続を備えた端末接続構造を有する端子付きシールド電線およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1は、内導体端子に接続される信号導体の周りに絶縁性の内被を介してシールド導体が被覆され、更にその外周を絶縁性の外被により被覆されたシールド電線の端末部に外導体端子が接続されるシールド電線の端末構造において、前記外導体端子に前記シールド電線端末の剥き出しにされたシールド導体を挟着する一対の圧着片からなるワイヤバレルと、シールド電線の外被部分を挟着する同じく一対の圧着片からなるインシュレーションバレルとが前後して形成され、前記ワイヤバレルの対をなす圧着片の先端部と、前記インシュレーションバレルの対をなす圧着片の先端部がいずれも一方の圧着片の上に他方の圧着片がオーバーラップしてシールド電線を挟着するものであって、それぞれの対をなす圧着片の重なり方が前記ワイヤバレルと前記インシュレーションバレルとでは左右逆側の圧着片が上になって重なり合っている状態であることを要旨とするものである。
【0019】
また、本発明の請求項2は上記端末接続構造を有する端子付きシールド電線であることを要旨とするものである。
【0020】
また、本発明の請求項3は、上記端末接続構造を有する端子付きシールド電線の製造方法であって、内導体端子に接続される信号導体の周りに絶縁性の内被を介してシールド導体が被覆され、更にその外周を絶縁性の外被により被覆されたシールド電線の端末部に外導体端子を接続するに際し、その外導体端子が備えるワイヤバレルの一対の圧着片により前記シールド電線の剥き出しとなった前記シールド導体をオーバーラップ圧着し、同じく外導体端子が備えるインシュレーションバレルの一対の圧着片では前記ワイヤーバレルの圧着片の重なり方とは逆の重なり方をするように、前記シールド電線端末の外被をオーバーラップ圧着することを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0021】
上記請求項1に記載されるシールド電線の端末接続構造によれば、シールド電線のシールド導体を挟着するワイヤバレルのバレル先端のオーバーラップ圧着状態と絶縁外被の部分を挟着するインシュレーションバレルのバレル先端のオーバーラップ圧着状態とが互いに左右逆側の圧着片が上になって重なり合っている状態となるので、シールド電線に外導体端子を圧着加工する際のワイヤバレルにかかる回転とインシュレーションバレルにかかる回転とが互いに逆方向で相殺され、端子全体にかかる回転を抑えられる。従って、端子の中心軸と電線の中心軸がずれるようなことはなく、信号導体が横に引っ張られたり、あるいはシールド電線が捻らたりして信号導体が断線してしまうといった不具合が生じることはなく、良好なオーバーラップ圧着を施されたシールド電線の端末接続構造を得ることができる。
【0022】
また、このようなシールド電線の端末接続構造を有する端子付きシールド電線によれば、特に外導体端子の嵌合筒部が円筒形状である高周波信号の伝送に対応した端子においても、圧着加工時の外導体端子にかかる回転を抑えることができるので、良好な電気的接続状態が得られる。そのため例えば自動車のワイヤーハーネスのカーナビゲーションシステム等の高周波信号の伝送用に好適に用いられる。
【0023】
また、本発明に係る端子付きシールド電線の製造方法によれば、外導体端子をシールド電線に接続するに際し、その外導体端子が備えるワイヤバレルとインシュレーションバレルとが互いに逆の重なり方をするようにそれぞれオーバーラップ圧着しているので、端子の回転が効果的に抑えられる。従って、これまでオーバーラップ圧着を良好に施すのが難しかった高周波に対応した円筒状の嵌合筒部を備える外導体端子の接続に好適であり、また、外導体端子のシールド電線への圧着加工時に端子の回転でシールド電線が捻られたり、信号導体が断線したり、圧着面の中心からずれたり、あるいは引っ張られたりする等の不具合による不用意な電気的性能の低下を防ぐことができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態に係る端子付きシールド電線について図1〜3を参照して詳細に説明する。図1(a)は、シールド電線10の端末に外導体端子20が圧着される前の状態を示したものである。また、図1(b)は圧着加工後の状態を示している。
【0025】
図1に示したシールド電線10の端末接続構造では、シールド電線10が電気信号等の伝送路として金属製の複数の素線を撚り束ねた信号導体18の周りに絶縁性の内被16を介して同じく複数の素線を編んだ編組線よりなるシールド導体14が被覆され、その外周を絶縁性の外被12で覆った同軸線のシールド構造になっており、シールド導体14が信号導体18の外周を隙間なく覆うことで高周波の電気信号の伝送に適したものとなっている。そして、その先端は外被12と絶縁性の内被16が所定長さ皮剥きされて信号導体18およびシールド導体14が露出されている。この信号導体18には内導体端子32が接続されており、外導体端子20の円筒状をした嵌合筒部22に挿入されている。
【0026】
この外導体端子20は、導電性板材を型抜きした後、プレス等の曲げ加工により成型され、前後に開口した円筒状に形成された嵌合筒部22と、この嵌合筒部22の後端に、シールド電線10のシールド導体14を挟着する圧着片30a,30bが上方に向かって突出するように形成されたワイヤバレル26と、その更に後端にシールド導体10の外被12を挟着する圧着片30c,30dが同じく上方に向かって突出するように形成されたインシュレーションバレル28とが形成されている。
【0027】
このワイヤバレル26およびインシュレーションバレル28の上に、所定長さ皮剥され、その信号導体18に内導体端子32を接続されたシールド電線10が載置される。そして、ワイヤバレル26とその上に載置されたシールド電線10の上方にはクリンパ40、そのワイヤバレル26の下方にはアンビル42が配置され、インシュレーションバレル28とその上に載置されたシールド電線10の上方にはクリンパ44、そのワイヤバレル28の下方にはアンビル46が配置される。そして、ワイヤバレルの対をなす圧着片30a、30bは皮剥されたシールド電線10のシールド導体14と圧着接続され、インシュレーションバレル28の対をなす圧着片30c,30dは外被12と圧着される。
【0028】
図2(a)は、ワイヤバレル用クリンパ40とアンビル42を、図2(b)はインシュレーションバレル用クリンパ44とアンビル46を外導体端子の嵌合面側から見た形状を示しており、図2(a)と図2(b)は相似で左右反転された形状に形成されている。これらクリンパ40,44は高さの異なる山を2つ連ねたような左右非対称の型内壁面形状に形成されており、クリンパ40においては左に浅い窪み76、中央付近に2つの窪みのつながる突出部分78、その右に深い窪み80が形成されている。一方、クリンパ44においては、左に深い窪み70、中央付近に2つの窪みのつながる突出部分72、続いてその右に浅い窪み74が形成されている。これによって、左右対をなす圧着片30a,30bおよび30c,30dのそれぞれが屈曲するタイミングをずらして、圧着加工時に対になる圧着片の先端が衝突し、圧着不良を起こすのを防いでいる。
【0029】
図3は、本発明の端子付きシールド電線の金型によるバレル圧着工程を順を追って示すものである。図3(a)に示されるように、ワイヤバレル26とその上に載置されたシールド電線10の上方にはクリンパ40、そのワイヤバレル28の下方にはアンビル42が配置され、インシュレーションバレル28とその上に載置されたシールド電線10の上方にはクリンパ44、そのインシュレーションバレル28の下方にはアンビル46が配置されている。
【0030】
圧着加工時には、ワイヤバレル26とその上に載置されたシールド電線10の上方からはワイヤバレル用のクリンパ44が下降し、最初にクリンパ44の窪みの浅い方の型内壁面76に、図中左側の圧着片30bが接触し、型内壁面76に沿って内側に屈曲し始める。一方インシュレーションバレル28とその上に載置されたシールド電線10の上方からはインシュレーションバレル用のクリンパ44が下降し、最初にクリンパ44の窪みの浅い方の型内壁面74に、図中右側の圧着片30cが接触し、型内壁面74に沿って内側に屈曲し始める。
【0031】
更にクリンパ40が下降を続け、クリンパ40の窪みの深い方の型内壁面80に右側の圧着片30aが接触し、この圧着片30aも左側の圧着片30bに同じく型内壁面80にそって内側に屈曲し始める。一方インシュレーションバレル側でも、クリンパ44が下降を続け、クリンパ44の窪みの深い方の型内壁面70に左側の圧着片30dが接触し、この圧着片30dも型内壁面70にそって内側に屈曲し始める。
【0032】
また、ワイヤバレルの下に配置されたアンビル42、および、インシュレーションバレルの下に配置されたアンビル46は、クリンパ40,44との間で、このワイヤバレル26およびインシュレーションバレル28とその上に載置されたシールド電線10を挟み込む。そして図3(b)に示されるように圧着片30a,30bおよび30c,30dの先端がクリンパの中心軸付近の突出部72,78まで達し、シールド電線を包み込む形となる。
【0033】
図3(c)に示すように、ワイヤバレル側では先に屈曲を始めた左側の圧着片30bの先端は、クリンパ40の中心付近にある突出部78にガイドされて下方に導かれる。更に、遅れて屈曲し始めた右側の圧着片30aの先端は、左側の圧着片30bの上に重なるように屈曲する。同じくインシュレーションバレル側でも、先に屈曲を始めた右側の圧着片30cの先端が、クリンパ44の中心付近にある突出部72にガイドされて下方に導かれ、遅れて屈曲し始めた左側の圧着片30dの先端は、右側の圧着片30cの上に重なるように屈曲する。更に前記クリンパ40,44は下降を続け、それぞれのクリンパの中心付近の突出部72,78まで達した圧着片30a,30bおよび30c,30dの先端が衝突することなく屈曲が進行する。
【0034】
ここで、ワイヤバレル側ではクリンパ40の窪みの浅い方の型内壁面76に沿って屈曲された圧着片30bが反対側の圧着片30aの下に回り込む形となり、図3(c)および(d)に示されるように、図中右側の圧着片30aの先端は左側から屈曲してきた圧着片30bの先端とクリンパ40の突出部78に挟まれて押さえ込まれる。この時、圧着片30aの先端は図3(b)の矢印62で示す方向に押されることになる。一方、インシュレーションバレル側ではクリンパ44の窪みの浅い方の型内壁面74に沿って屈曲された圧着片30cが反対側の圧着片30dの下に回り込む形となり、図中左側の圧着片30dの先端は右側から屈曲してきた圧着片30cの先端とクリンパ44の突出部72に挟まれて押さえ込まれる。ここで、圧着片30dの先端はワイヤバレル側とは逆の方向、つまり図3(b)の矢印64で示す方向に押されることになる。
【0035】
このように、ワイヤバレル側とインシュレーションバレル側で外導体端子20は相対する向きに押されるので、ワイヤバレル側およびインシュレーションバレル側にかかる力は相殺され結果として外導体端子20は回転しない。そのためワイヤバレルの圧着片30a、インシュレーションバレルの圧着片30cはクリンパ40,44の突出部72,78を越えて左側に屈曲していき、圧着片30b,30dはクリンパ44の突出部72を越えて右側に屈曲していく。
【0036】
クリンパ40,44は更に下降を続け、図3(d)に示すように、ワイヤバレル側では、左側の圧着片30bの先端は右側の圧着片30aの下側に、右側の圧着片30aの先端は左側の圧着片30bの上側に左右両方から均等に重なり合ってオーバーラップしていく。一方逆に、インシュレーションバレル側では、右側の圧着片30cの先端は左側の圧着片30dの下側に、また左側の圧着片30dの先端は右側の圧着片30cの上側に、同じく左右両方から均等に重なり合ってオーバーラップしていき、最終的に図3(e)に示すように、左右均等に圧着片が屈曲し、シールド電線の中心と信号導体のずれのない良好な圧着状態を得ることができる。
【0037】
このように、本発明によれば、外導体端子20は、前後して設けられるワイヤバレル26とインシュレーションバレル28で圧着片の重なり方が左右逆になるようにシールド電線10に圧着される。例えば図3に示す例において、インシュレーションバレル28は左側の圧着片30dが右側の圧着片30cの上に重なってオーバーラップ圧着されている。同時に、ワイヤバレルは右側の圧着片30aが左側の圧着片30bの上に重なってオーバーラップ圧着される。このとき、インシュレーションバレル28では右回り、ワイヤバレル26では左回りに回転が発生するが、この2つの回転は相対する向きとなる。そのため、この右回りと左回りの回転が相殺されて、外導体端子20は全体としては回転が抑えられ、図3(e)に示すような良好な圧着を施すことができる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、上記実施例においては、ワイヤバレルの右側の圧着片が上側、インシュレーションバレルの左側の圧着片が上側になるようにオーバーラップさせた場合について説明したが、逆方向にオーバーラップさせても全くかまわないことは言うまでもない。
【0039】
また、シールド電線に同軸線の例をあげて説明したが、その他のシールド電線にも適用できる。その他にも、電線に接続される端子が2対以上の圧着片を前後して有しているものなら適用でき、それら複数の対をなす圧着片の重なり合い方を互い違いにしてオーバーラップ圧着することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る端子付きシールド電線は、高周波信号の伝送に適し、端子と電線の強い固着力や高い電気的接続の信頼性を有しているので、例えば、自動車用ワイヤハーネスのコネクタ部材およびその製造等に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態に係る端子付きシールド電線の端子接続構造を示したもので、(a)は接続前の状態、(b)は端子接続後の状態を示したものである。
【図2】図1の外導体端子の圧着用金型のクリンパとアンビルの断面形状を示した図である。
【図3】本発明の実施形態に係る端子付きシールド電線のワイヤバレルおよびインシュレーションバレルの圧着過程を示した図である。
【図4】従来の端子付きシールド電線の端子接続前状態を(a)に、端子接続後を(b)に示したものである。
【図5】従来の端子付きシールド電線のインシュレーションバレルの圧着過程を示した図である。
【図6】端子接続加工時の端子押さえを示した図である。
【符号の説明】
【0042】
10 シールド電線
20 外導体端子
22 嵌合筒部
26 ワイヤバレル
28 インシュレーションバレル
40 ワイヤバレル用クリンパ
42 ワイヤバレル用アンビル
44 インシュレーション用クリンパ
46 インシュレーション用アンビル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内導体端子に接続される信号導体の周りに絶縁性の内被を介してシールド導体が被覆され、更にその外周を絶縁性の外被により被覆されたシールド電線の端末部に外導体端子が接続されるシールド電線の端末接続構造において、
前記外導体端子に前記シールド電線端末の剥き出しにされたシールド導体を挟着する一対の圧着片からなるワイヤバレルと、シールド電線の外被部分を挟着する同じく一対の圧着片からなるインシュレーションバレルとが前後して形成され、
前記ワイヤバレルの対をなす圧着片の先端部と、前記インシュレーションバレルの対をなす圧着片の先端部がいずれも一方の圧着片の上に他方の圧着片がオーバーラップしてシールド電線を挟着するものであって、それぞれの対をなす圧着片の重なり方が前記ワイヤバレルと前記インシュレーションバレルとでは左右逆側の圧着片が上になって重なり合っている状態であることを特徴とするシールド電線の端末接続構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載の端末接続構造を有する端子付きシールド電線。
【請求項3】
内導体端子に接続される信号導体の周りに絶縁性の内被を介してシールド導体が被覆され、更にその外周を絶縁性の外被により被覆されたシールド電線の端末部に外導体端子を接続するに際し、その外導体端子が備えるワイヤバレルの一対の圧着片により前記シールド電線の剥き出しとなった前記シールド導体をオーバーラップ圧着し、同じく外導体端子が備えるインシュレーションバレルの一対の圧着片では前記ワイヤーバレルの圧着片の重なり方とは逆の重なり方をするように前記シールド電線端末の外被をオーバーラップ圧着するようにした端子付きシールド電線の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−147223(P2006−147223A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332859(P2004−332859)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】