説明

シールド電線

【課題】 環境保全性が高く、難燃性に優れたシールド電線を提供する。
【解決手段】 シールド層13とシース層14との間の金属テープ層20に重ね巻きされている金属テープ21が、金属部分22同士が直接接触するように折り曲げられているので、シールド電線10の燃焼時に金属テープ21の樹脂テープ部分23が燃焼したり収縮したりしても、金属部分22同士が密着して内部を遮断する。このため、内部から可燃性ガスが噴出するのを防止することができ、その内部への延焼を防止することができることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシールド電線に係り、例えば環境に悪影響を与えることなく難燃性の高いシールド電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来シールド電線のシース層にはPVC(ポリ塩化ビニル)が含まれており、燃焼した際にPVCに含まれているハロゲン元素(例えば、塩素)が環境に悪影響を与えるという理由から、シース層にハロゲン元素を含まないハロゲンフリー電線の需要が増加している。そこで、環境に悪影響を与えることのないシールド電線が提案されている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、シースにハロゲン元素を含まないようにすると、難燃性においてハロゲン元素を含むものよりも劣るため、難燃性の維持が望まれていた。
【0003】
図5に示すように、特許文献1に開示されているシールド電線100は、導体101上に内部半導電層102を介して、架橋ポリエチレン等からなる絶縁層103を設け、その上に外部半導電層104から構成されるケーブルコア105を内部に有している。そして、ケーブルコア105の外側には、銅の細線を多数本横巻きしたワイヤシールド106が設けられ、その外側にはアルミテープの片面に、熱融着層が設けられているラミネートテープ107を、熱融着層を外側に向けて縦添え等により設けられて遮水層が形成されている。さらに、ラミネートテープ107の外側の最外層は、ハロゲン元素を含まないプラスチックシース108により被覆されており、熱融着層を介してラミネートテープ107と一体となるように設けられている。
【特許文献1】特開2001−6446号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているシールド電線100では、プラスチックシース108の材料にハロゲン元素を含まないノンハロゲン系の材料を用いることにより、燃焼時の塩素ガスやダイオキシン等の有害物質の発生を防止して環境への悪影響を防ぐとともに、アルミテープが貼り付けられたラミネートテープ107を重ね巻きすることにより遮水製性の向上を図っている。
しかしながら、ラミネートテープ107は燃焼時に大きく収縮する材質であり、重ね巻きされているアルミテープとアルミテープとの間には必ずラミネートテープ107が存在するため、シールド電線100の燃焼時にはラミネートテープ107の重なり部分に隙間ができて、この隙間から内部コアの燃焼ガスが噴出して燃焼が継続するおそれがあるという不都合があった。
【0005】
本発明の目的は、環境保全性が高く、難燃性に優れたシールド電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明にかかるシールド電線は、中心に配された中心導体と、この中心導体の外側の絶縁被覆層と、この絶縁被覆層の外側のシールド層と、このシールド層の外側の金属テープ層と、この金属テープ層の外側のノンハロゲン系の材料から成るシース層とを有するシールド電線であって、前記金属テープ層が、金属部分と樹脂テープ部分とを貼り合わせて形成される金属テープを前記金属部分が内側になるように重ね巻きして形成され、前記金属テープが、重なり部分において前記金属部分同士が接触するように折り曲げられたものであることにある。
【0007】
このように構成されたシールド電線においては、シールド層とシース層との間の金属テープ層に重ね巻きされている金属テープが、金属部分同士が直接接触するように折り曲げられているので、シールド電線の燃焼時に金属テープの樹脂テープ部分が燃焼したり収縮したりしても、金属部分同士が密着して内部を遮断する。このため、金属テープ層内部から絶縁被覆層が高温のためガス化した可燃性ガスが噴出するのを防止することができ、内部への延焼を防止することができることになる。
【0008】
また、本発明にかかるシールド電線は、絶縁被覆された導体線が複数本撚られていることにある。
【0009】
このように構成されたシールド電線においては、複数の絶縁被覆された導体線を撚ることにより、シールド層の内側に隙間があっても内部への延燃を防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ノンハロゲン系材料によりシース層を形成することにより環境保全性を維持するとともに、シールド電線の燃焼時には、シールド層とシース層との間の金属テープ層において金属テープの金属部分同士が直接接触して、その内部を遮断するので、難燃性を高めることができるシールド電線を提供することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明のシールド電線に係る実施形態を示す断面図、図2は金属テープの斜視図、図3は金属テープを重ね巻きした状態を示す断面図である。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施形態であるシールド電線10は、中心に配された中心導体11と、この中心導体11の外側の絶縁被覆層12と、この絶縁被覆層12の外側のシールド層13と、このシールド層13の外側の金属テープ層20と、この金属テープ層の外側のノンハロゲン系の材料から成るシース14層とを有するシールド電線10であって、前記金属テープ層20が、金属部分22と樹脂テープ部分23とを貼り合わせて形成される金属テープ21を前記金属部分22が内側になるように重ね巻きして形成され、前記金属テープ21が、重なり部分において前記金属部分22同士が接触するように折り曲げられたものである(図3参照)。
【0013】
金属テープ層20は、図2に示すような金属テープ21を、図3に示すように、シールド層13の外側に、一部重ねて重ね巻きしたものである。
図2に示すように、金属テープ21は、例えば銅箔やアルミ箔のような金属部分22と、例えばポリエチレンテレフタレートのような樹脂テープ23とを貼り合わせ、金属部分22が外側に位置するように例えば断面J字状に折り曲げたものである。この金属テープ21を、図3に示すように、一部が重なるようにシールド層13の外側に重ね巻きして金属テープ層20を形成している。
このとき、先に巻いてある金属テープ21の金属部分22と、次に巻かれた金属テープ21の金属部分22とが、重なり部分22aにおいて直接接触するように外側に重ね巻きする。こうして、金属テープ層はその重なりの部分で金属どうしが直接接触する。金属テープの折り返し幅はテープ幅の1/5から3/4とするのがよい。重なり部分の幅をテープ幅の1/5以上とすると、VW−1の垂直燃焼試験方法(アメリカUL規格)をクリアできるものと思われる。重なり部分があまり大きいと生産性が下がるので重なり部分の幅はせいぜい3/4とするのが現実的である。
【0014】
また、中心導体11は、通常、規格されている電気用軟銅線が用いられており、複数本が撚られて形成されている。
なお、図4に示すように、複数の絶縁被覆された導体線を撚り、その外周にシールド層を形成することもできる。図では2心撚りを示したが、3心以上が撚られてもよく、また、単心であってもよい。
絶縁被覆層12には、例えば、耐熱性のポリエチレンを用いることができる。
また、シールド層13は、例えば、軟銅線を横巻きして形成することができる。また、編組シールドとすることもできる。スズメッキはあっても、なくてもよい。
また、シース層14には、例えば、難燃性のポリエチレンなどの難燃性のポリオレフィンを用いることができ、金属水酸化物等の難燃剤や難燃助剤等を適宜配合することもできる。
【0015】
なお、本発明のシールド電線10は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
例えば、前述した実施形態において、金属テープ21の折り曲げ形状をJ字状としたがこれは一例であり、同様の作用・効果を有する形状であれば例えばS字状その他の形状でも適用可能である。
また、その他、中心導体11、絶縁被覆層12、シールド層13、シース層14等において例示した材質等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0016】
以上のように、本発明に係るシールド電線は、ノンハロゲン系材料によりシース層を形成することにより環境保全性を維持するとともに、シールド電線の燃焼時には、シールド層とシース層との間の金属テープ層において金属テープの金属部分同士が直接接触して内部を遮断するので、難燃性を高めることができるという効果を有し、環境に悪影響を与えることなく難燃性の高いシールド電線として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るシールド電線の実施形態を示す断面図である。
【図2】金属被覆樹脂テープの斜視図である。
【図3】金属被覆樹脂テープを重ね巻きした状態を示す断面図である。
【図4】2心撚りの中心導体であって、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【図5】従来のシールド電線を示す断面図である。
【符号の説明】
【0018】
10 シールド電線
11 中心導体
12 絶縁被覆層
13 シールド層
14 シース層
20 金属被覆樹脂テープ層
22 金属部分
22a 重なり部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心に配された中心導体と、この中心導体の外側の絶縁被覆層と、この絶縁被覆層の外側のシールド層と、このシールド層の外側の金属テープ層と、この金属テープ層の外側のノンハロゲン系の材料から成るシース層とを有するシールド電線であって、
前記金属テープ層が、金属部分と樹脂テープ部分とを貼り合わせて形成される金属テープを前記金属部分が内側になるように重ね巻きして形成され、
前記金属テープが、重なり部分において前記金属部分同士が接触するように折り曲げられたものであることを特徴とするシールド電線。
【請求項2】
絶縁被覆された導体線が複数本撚られていることを特徴とする請求項1に記載のシールド電線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−5096(P2007−5096A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182634(P2005−182634)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】