説明

シールリングおよびシールリングを備えたアッセンブリ

本発明は、シールリング(10)であって、該シールリング(10)が、その内周面に配置された1つの第1のシール面(26)と、シールリング(10)の外周面に配置された少なくとも1つの第2のシール面(13,14)とを備えているシールリングに関する。本発明によれば、シールリング(10)の両端面の少なくとも一方に、軸方向に少なくとも部分的に弾性変形可能な補償領域(17,18)が配置されていることが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールリングであって、該シールリングが、その内周面に配置された1つの第1のシール面と、シールリングの外周面に配置された少なくとも1つの第2のシール面とを備えているシールリングに関する。
【0002】
さらに、本発明は、前述したシールリングを備えたアッセンブリに関する。
【0003】
背景技術
このような形式のシールリングは、すでに一般的に公知である。この公知のシールリングは、特に構成部材の支持部内に挿入されている。この支持部内では、シールリングが軸方向で両端面において押圧されている。構成部材誤差、特に支持部の誤差に基づき、シールリングが軸方向で正確に嵌め込まれていることが保証されていない。これは、軸方向に遊びが生じる、すなわち、シールリングが軸方向で移動させられるかまたは軸方向の圧縮歪みが発生させられることを意味している。この圧縮歪みはシールリングの変形を招き、これによって、シールリングの半径方向の内面に設けられた第1のシール面が同様に変形させられることがある。このことは、結果的にシール機能にマイナスの影響を与える。極端な例では、これは、軸のシールを、たとえば確実に保証することができないことを意味している。
【0004】
発明の開示
上述した公知先行技術から出発して、本発明の課題は、請求項1の上位概念部に記載したシールリングを改良して、シールリングが軸方向で支持部内に固定された状態に位置決め可能であり、軸方向でのシールリングの、場合により生じる変形が、第1のシール面のシール機能にマイナスの影響を与えないようにすることである。
【0005】
この課題を解決するために本発明に係るシールリングによれば、シールリングの両端面の少なくとも一方に、軸方向に少なくとも部分的に弾性変形可能な補償領域が配置されている。
【0006】
本発明に係るシールリングの有利な態様によれば、軸方向に互いに間隔を置いて配置された2つの第2のシール面が設けられており、両方の第2のシール面が、中間の領域に配置されており、該中間の領域に軸方向で少なくとも1つの補償領域が続いている。
【0007】
本発明に係るシールリングの有利な態様によれば、少なくとも1つの補償領域が、中間の領域の、長手方向に延びる中心軸線の領域に配置されている。
【0008】
本発明に係るシールリングの有利な態様によれば、少なくとも1つの補償領域が、当付け領域を有している。
【0009】
本発明に係るシールリングの有利な態様によれば、シールリングの両端面に、それぞれ1つの補償領域が配置されている。
【0010】
本発明に係るシールリングの有利な態様によれば、第1のシール面が、中間の領域から半径方向内向きに突出しかつ半径方向に弾性的にばね作用するシールリップに配置されている。
【0011】
本発明に係るシールリングの有利な態様によれば、少なくとも1つの補償領域が、中間の領域の幅よりも少ない幅を有している。
【0012】
本発明に係るシールリングの有利な態様によれば、補償領域が、方形の第1の領域を有しており、該第1の領域に、横断面図で見て半円形の第2の領域が続いている。
【0013】
本発明に係るシールリングの有利な態様によれば、第1のシール面が、軸方向で見て、両方の第2のシール面の間のほぼ中間に配置されている。
【0014】
本発明に係るシールリングの有利な態様によれば、少なくとも1つの補償領域が、セグメント状に形成されており、これによって、補償領域の個々の区分の間にクリアランスが形成されている。
【0015】
さらに、前述した課題を解決するために本発明に係るアッセンブリによれば、シールリングが、軸方向で両側から仕切りエレメントによって押圧されている。
【0016】
本発明の根底には、シールリングの両端面の少なくとも一方に、軸方向に少なくとも部分的に弾性変形可能な補償領域が配置されているという思想がある。この軸方向の補償領域によって、普通に設けられている構成部材誤差において、支持部内でのシールリングの軸方向の移動がもはや生じず、少なくとも1つの補償領域によって軸方向の押圧力を受け止めることができる。この押圧力は、シールリングの、第2のシール領域を有する中間の領域の変形を招かない。
【0017】
本発明に係るシールリングの有利な変化態様は、従属請求項に記載してある。本発明の範囲には、明細書、特許請求の範囲および/または図面に開示した特徴の少なくとも2つから成る全ての組合せが含まれる。
【0018】
特に有利な態様では、軸方向に互いに間隔を置いて配置された2つの第2のシール面が設けられており、両方の第2のシール面が、中間の領域に配置されており、この中間の領域に軸方向で少なくとも1つの補償領域が続いていることが提案されている。これによって、特に良好なシール作用と、シールリングの半径方向に均一な負荷とを得ることができる。
【0019】
中間の領域が比較的フレキシブルに形成されている場合でも、この中間の領域の変形を排除するために、別の有利な態様では、補償領域が、中間の領域の、長手方向に延びる中心軸線の領域に配置されていることが提案されている。これによって、シールリングへの軸方向の力の発生時に、中間の領域を変形させる傾倒モーメントもしくは横方向力が発生させられないようになっている。
【0020】
本発明の特に有利な変化態様では、シールリングの両端面に、それぞれ1つの補償領域が配置されていることが提案されている。これによって、軸方向の力を2つの補償領域に加えることができるので、補償領域の特に良好なばね作用が得られる。さらに、両軸方向の一方からの軸方向力の急激な発生時に、シールリングが支持部内で軸方向に移動させられる前に、軸方向力を各補償エレメントによって受け止めることができる。
【0021】
シールしたいエレメント、たとえば軸への第1のシール面の特に良好な適合は、第1のシール面が、中間の領域から半径方向内向きに突出しかつ半径方向に弾性的にばね作用するシールリップに配置されている場合に得ることができる。
【0022】
補償領域の軸方向の変形可能性は、少なくとも1つの補償領域が、中間の領域の幅よりも少ない幅を有している場合に確保される。
【0023】
本発明の更なる利点、特徴および詳細は、有利な実施の形態の以下の説明ならびに図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】公知先行技術に係るシールリングのアッセンブリの部分縦断面図である。
【図2】本発明に係るシールリングの斜視図である。
【図3】図2のシールリングの一部の断面図である。
【図4】図2に示した本発明に係るシールリングを備えたアッセンブリの部分縦断面図である。
【0025】
図1には、公知先行技術に係るシールリング1を備えたアッセンブリが示してある。シールリング1は、たとえば軸2をシールするために働く。この軸2はその周面で偏心ブシュ3によって取り囲まれている。この偏心ブシュ3には、たとえば部分縦断面図で見てL字形の支持部4が形成されている。この支持部4はシールリング1を半径方向で取り囲んでいて、また、このシールリング1を軸方向で支持している。この軸方向では、偏心ブシュ3に補償ディスク5が続いている。
【0026】
シールリング1は、半径方向内側に配置された1つの第1のシール面6と、軸方向に互いに間隔を置いて半径方向外側に配置された2つの第2のシール面7,8とを有している。図1には、シールリング1が、偏心ブシュ3に設けられた支持部4を越えて幾分突出している形態が示してある。したがって、補償ディスク5と偏心ブシュ3との軸方向の接合時には、シールリング1が矢印9の方向において、シールリング1を変形させる力で軸方向に押圧されるようになっている。この変形は、結果として、第1のシール面6が配置されたシールリング1の領域の変形も招く。
【0027】
これと異なり、特に偏心ブシュ3の構成部材誤差に基づき、この偏心ブシュ3が、シールリング1の軸方向の延在量よりも大きい高さを支持部4の領域に有している形態では、シールリング1が支持部4に確かに完全に配置されているものの、そこで、軸方向に一義的に規定された位置をとらなくなってしまう。
【0028】
図2および図3には、本発明に係るシールリング10が示してある。このシールリング10は中間の領域11を有している。この中間の領域11の半径方向外向きに見た面には、両方の第2のシール面13,14が軸方向に互いに間隔を置いて配置されている。両シール面13,14の間では、シールリング10の外周面にくびれ15が形成されている。このくびれ15に基づき、シールリング10がその外周面において両方の第2のシール面13,14でしか支持体の支持部に接触しないことが保証される。中間の領域11には、シールリング10の軸方向で見て、それぞれ1つの補償領域17,18が続いている。各補償領域17,18は、横断面図で見て方形の第1の領域19を有している。この第1の領域19には、横断面図で見て半円形の第2の領域20が続いている。この第2の領域20は当付け面を形成している。さらに、両補償領域17,18は中間の領域11の中心軸線22の領域に位置している。
【0029】
特に図2につき認めることができるように、両補償領域17,18または両補償領域17,18の単に一方は半径方向に中断部16を備えて形成されていてよく、これによって、補償領域17;18がセグメント状に配置されている。これによって、万が一の変形をより良好に補償することができるかもしくは均質な圧力分配が得られる。
【0030】
中間の領域11には、半径方向内向きに突出した面にシールリップ25が一体成形されている。このシールリップ25は、その半径方向内向きに突出した面に第1のシール面26を有している。
【0031】
図4には、図1に示したアッセンブリが、本発明に係るシールリング10の使用下で示してある。図4では、補償ディスク5が偏心ブシュ3の一方の端面に完全に載置されている。これによって、シールリング10の両補償領域17,18と、補償ディスク5の対応する端面もしくは支持部4の底部との当付け接触が得られる。したがって、両軸方向から、シールリング10に軸方向力が加えられる。ただし、この軸方向力は、両補償領域17,18が弾性変形させられ、ひいては、中間の領域11の変形を排除していることにより、両補償領域17,18によって受け止められる。
【符号の説明】
【0032】
1 シールリング
2 軸
3 偏心ブシュ
4 支持部
5 補償ディスク
6 第1のシール面
7 第2のシール面
8 第2のシール面
9 矢印
10 シールリング
11 中間の領域
13 第2のシール面
14 第2のシール面
15 くびれ
16 中断部
17 補償領域
18 補償領域
19 第1の領域
20 第2の領域
22 中心軸線
25 シールリップ
26 第1のシール面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールリング(10)であって、該シールリング(10)が、その内周面に配置された1つの第1のシール面(26)と、シールリング(10)の外周面に配置された少なくとも1つの第2のシール面(13,14)とを備えているシールリングにおいて、シールリング(10)の両端面の少なくとも一方に、軸方向に少なくとも部分的に弾性変形可能な補償領域(17,18)が配置されていることを特徴とする、シールリング。
【請求項2】
軸方向に互いに間隔を置いて配置された2つの第2のシール面(13,14)が設けられており、両方の第2のシール面(13,14)が、中間の領域(11)に配置されており、該中間の領域(11)に軸方向で少なくとも1つの補償領域(17,18)が続いている、請求項1記載のシールリング。
【請求項3】
少なくとも1つの補償領域(17,18)が、中間の領域(11)の、長手方向に延びる中心軸線(22)の領域に配置されている、請求項2記載のシールリング。
【請求項4】
少なくとも1つの補償領域(17,18)が、当付け領域(20)を有している、請求項3記載のシールリング。
【請求項5】
シールリング(10)の両端面に、それぞれ1つの補償領域(17,18)が配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のシールリング。
【請求項6】
第1のシール面(26)が、中間の領域(11)から半径方向内向きに突出しかつ半径方向に弾性的にばね作用するシールリップ(25)に配置されている、請求項2から5までのいずれか1項記載のシールリング。
【請求項7】
少なくとも1つの補償領域(17,18)が、中間の領域(11)の幅よりも少ない幅を有している、請求項2から6までのいずれか1項記載のシールリング。
【請求項8】
補償領域(17,18)が、方形の第1の領域(19)を有しており、該第1の領域(19)に、横断面図で見て半円形の第2の領域(20)が続いている、請求項7記載のシールリング。
【請求項9】
第1のシール面(26)が、軸方向で見て、両方の第2のシール面(13,14)の間のほぼ中間に配置されている、請求項2から6までのいずれか1項記載のシールリング。
【請求項10】
少なくとも1つの補償領域(17,18)が、セグメント状に形成されており、これによって、補償領域(17,18)の個々の区分の間にクリアランス(16)が形成されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のシールリング。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載のシールリング(10)を備えたアッセンブリにおいて、シールリング(10)が、軸方向で両側から仕切りエレメント(3,5)によって押圧されていることを特徴とする、シールリングを備えたアッセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−500443(P2013−500443A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522050(P2012−522050)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057628
【国際公開番号】WO2011/012353
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】