説明

シール材装着構造

【課題】 シール溝内のシール材に剥がれやねじれ等が生じたまま、他の部品が組み付けられるといったことを防ぐことが可能な簡便なシール材装着構造を提供する。
【解決手段】 本シール材装着構造では、弾性を持つ閉曲線状のシール材4を、ハウジング2の外側面Sを一巡するシール溝21に装着するようになっている。シール材4は、このシール材4が延びる方向とは垂直に、シール材4から突出した突出部41を備える。突出部41には、シール材4のシール溝21への装着時における位置決めのための位置合わせ穴41aが形成されている。ハウジング2は、上記突出部41の形状に合わせて、シール溝21から連続して形成された溝部22を備え、この溝部22に、シール材4側の位置合わせ穴41aに挿入される位置合わせ突起22aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多角形状、円形状等の閉曲線状に形成された弾性を持つシール材を、ハウジングの側面を一巡するシール溝に装着するシール材装着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られたこの種のシール材装着構造の一つは、容器の上側筐体と下側筐体との水平面上の接合面をリング状のシール材で密閉するようになっていて、このシール材の縦横への誤装着を防止する構造を有する(特許文献1参照)。即ち、シール材からは、その中心付近に向かって、シール材の太さほどの棒状突部が突出している。上側筐体側の接合面上には、上記シール材を収納するためのシール溝が設けられており、このシール溝の内外2つの側壁の内の内側の側壁に、シール材の上記棒状突部を収納するための誤装着防止溝が形成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−242688号公報(図1,2、段落0032,0036等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記シール材装着構造では、上述の通り、上側筐体における下側筐体との接合面上に、シール溝が設けられ、このシール溝にシール材が装着されるようになっていた。ここでは、例えば、コネクタの四角筒状をしたハウジングの外側の側面に、シール溝が、各側面を一周するよう連続して形成されるといったことが想定されていない。
【0005】
四角筒状等のハウジングの側面に設けられたシール溝に、シール材が装着される場合、その装着の途中で、シール材の一部分が、剥がれたり、ねじれたり、また回転したりすることがあった。そうして、シール材に、剥がれやねじれ等が生じた状態のまま、このコネクタに、相手コネクタが嵌合されることがあった。コネクタと相手コネクタとのこのような嵌合状態では、十分なシール性能が発揮されない。仮に、シール材に上記棒状突部を設け、ハウジングのシール溝に上記誤装着防止溝を設けたとしても、その溝という形状から、シール溝内に収納されたシール材に、ねじれ等が生じたままとなっていることがあり得る。
【0006】
本発明の目的は、このような課題を解決することができるシール材装着構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係るシール材装着構造は、ハウジングの側面を一巡するシール溝に、弾性を持つシール材を装着するシール材装着構造において、前記シール材が、該シール材が延びる方向とは垂直に、該シール材から突出した突出部を備え、該突出部には、該シール材の前記シール溝への装着時における位置決めのための位置合わせ穴が形成されており、前記ハウジングが、前記シール材の前記突出部の形状に合わせて、前記シール溝から連続して形成された溝部を備え、該溝部には、シール材側の前記位置合わせ穴に挿入される位置合わせ突起が形成されていることを特徴とする。
請求項2に係るシール材装着構造は、請求項1に係るシール材装着構造において、前記ハウジングの前記シール溝が、該ハウジングの側面を一巡する2つの突条部により形成され、前記溝部は、該突条部の少なくとも一方に形成されることを特徴とする。
請求項3に係るシール材装着構造は、請求項1又は請求項2に係るシール材装着構造において、シール材側の前記位置合わせ穴が、該シール材が延びる方向への前記突出部の中心からずれた位置に、シール溝側の前記位置合わせ突起が、該シール溝が延びる方向への前記溝部の中心からずれた位置に、それぞれ設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシール材装着構造のシール材側の突出部の位置合わせ穴、及び、ハウジングのシール溝側の溝部の位置合わせ穴によると、簡便な構造で、シール溝内のシール材に剥がれやねじれ等が生じたまま、他の部品が組み付けられるといったことを防ぐことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、図面には、発明の構成又は効果を判り易く表すこと等を目的として、模式的に誇張、省略された部分が含まれる。
(最良の実施の形態)
本発明の最良の実施の形態であるシール材装着構造が設けられたコネクタにつき、図1〜図4を用いて説明する。図1に示すように、このコネクタ1は、ハウジング2と、複数の端子3とを有する。端子3側は、プリント基板上等に取り付けられ、ハウジング2側は、所定の相手コネクタに嵌合される。このコネクタ1では、シール材(パッキン)4を、ハウジング2の外側面Sを一巡するシール溝21に装着するようになっている。
本発明の特徴の一つは、作業者が、ハウジング2のシール溝21へのシール材4の装着を完了する際、シール溝21側に形成された位置合わせ突起22aが、シール材4側に形成された位置合わせ穴41aに挿入されるようになっている点である。
【0010】
a.先ず、シール材4、及び、ハウジング2のシール溝21の構成につき、順に詳しく説明する。シール材4は、合成ゴム等が矩形状に形成されたものであり、図2(a)、(b)のように、突出部41を備えている。この突出部41は、ハウジング2へのシール材4の装着方向Aの反対側へと、シール材4から垂直に突出するものである。さらに、突出部41には、シール材4のシール溝21への装着時における位置決めのための位置合わせ穴41aが形成されている。
【0011】
また、ハウジング2は、合成樹脂より成形されたものであり、このハウジング2には、図3(a)、(b)のように、シール溝21が、ハウジング2の外側面Sを一巡する2つの突条部21a,21bによって形成されている。その一方である突条部21aには、シール溝21から連続するようにして、且つ、シール材4の上記突出部41の形状に合わせて、溝部22が形成されている。この溝部22には、位置合わせ突起22aが形成されていて、この位置合わせ突起22aが、シール材4側の上記位置合わせ穴41aに挿入されるようになっている。
【0012】
シール材4側の位置合わせ穴41aの位置と、ハウジング2のシール溝21側の位置合わせ突起22aの位置とは、次のようになっている。即ち、シール溝21側の位置合わせ突起22aは、シール溝21が延びる方向への溝部22の中心からずれた位置に設けられている。この位置合わせ突起22aの位置に合わせて、シール材4側の位置合わせ穴41aが、シール材4が延びる方向への突出部41の中心からずれた位置に設けられる。要するに、位置合わせ突起22a及び位置合わせ穴41aは、それぞれ、溝部22の中心及び突出部41の中心を基準として、左右非対称となっているわけである。
【0013】
b.これらのシール材装着構造を有するコネクタ1では、その効果として、簡便な構造で、シール溝21内のシール材4にねじれ、回転、剥がれ等が生じた状態のまま、相手コネクタに嵌合されることを防ぐことが可能である。
つまり、(1)シール材4をハウジング2のシール溝21に装着する際、作業者は、シール材4をハウジング2の端部(図1の左下方)から通した状態で、シール材4の突出部41付近を指先でつまんで、装着方向Aへと引っ張っていく。ここでは、作業者が、シール材4のねじれや回転等が生じること自体を容易に防ぎながら、シール材4のハウジング2への装着作業を素早く行うことができる。
【0014】
(2)また、その装着作業の完了時に、作業者は、シール溝21側の位置合わせ突起22aを、シール材4側の位置合わせ穴41aに挿入するようになっている。この挿入によって、シール材4が装着されていく途中で、シール材4に、ねじれや回転等が一旦生じていたとしても、それらねじれや回転等は元の状態に戻されることになる。
図4は、従来のコネクタ11におけるハウジング12へのシール材13の装着状態の例を示している。矩形状のシール材13は、2つの長辺部と、2つの短辺部を有するが、長辺部の端部で、シール材13の撓みBが生じやすくなっている。このような撓みBが生じたまま相手コネクタと嵌合されると、シール性能が十分に発揮できない。本発明のシール材装着構造では、このような撓みBによるシール材4の剥がれやめくれがそのままの状態になることも防がれている。
【0015】
(3)さらに、上述の通り、位置合わせ突起22a及び位置合わせ穴41aのそれぞれは、左右非対称な位置に配置されている。そのため、シール材4が裏返った状態で、即ち、突出部41がシール材4本体よりも装着方向Aの前方に位置した状態で、作業者が、シール材4をシール溝21に装着しようとしても、そのような装着は、適切に阻まれることになる。位置合わせ突起22aの位置と、位置合わせ穴41aの位置とが合わなくなるからである。また、これらの突出部41及び溝部22等によって、シール材4がシール溝21以外の部分に装着されるといったことも未然に防がれている。
(4)本シール材装着構造では、シール材4の幅を、可能な限り小さく抑えることができ、簡素な構成によって、上述した(1)〜(3)の効果が達せられる。
【0016】
(他の実施の形態等)
以上、具体的な実施の形態により本発明を説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施の形態を変更して実施することができる。
a.例えば、上記実施の形態では、シール材4及びシール溝21は、矩形状に形成されるものとしたが、シール材4及びシール溝21は、三角形状若しくは五角形以上の多角形状、又は、円形状若しくは楕円形状等の形状としてもよい。
【0017】
b.シール材4のねじれ等を有効に抑えるといった観点からは、シール材の断面は、縦横比の大きな矩形状に形成することが好ましいが、シール材4を円形等に形成することも可能である。また、シール材4は、突出部41を、特に、ねじれや剥がれ等が生じ易い箇所に設けるようにすることによって、シール材4のそのような変形を有効に防止することができる。
c.シール材4側の位置合わせ突起22aは、溝部22の底面から垂直に突出させたが、溝部22の底面から斜め方向に突出していてもよい。
d.シール材4は、コネクタ1のハウジング2の外側面に取り付けるようにした。これとは異なり、シール材4を、筒状に形成されたハウジングの内側面に取り付けるようにしてもよい。
【0018】
e.ハウジング2へのシール材4の装着方向A(図1)に対し、その反対側へと、シール材4の一部分(1つの長辺部の中央)から突出部41が突出しているものとした。また、シール材4の突出部41のこの形状に対応するように、突条部21aの一部分に溝部22が形成されるものとした。
これらとは異なり、シール材の突出部、及び、シール溝からの溝部は、装着方向へ向かい突出するように形成してもよい。また、シール材4の一部分から装着方向の前後両側に突出するように突出部を設け、この突出部に位置合わせ穴を形成してもよい。これらに応じて、2つの突条部の双方の、シール溝を挟んで対向する位置に溝部を設け、各溝部に位置合わせ突起を形成するようにする。
【0019】
勿論、上下の向かい合う位置等に、例えば、矩形状をしたシール材及びシール溝の2つの長辺部の対向する位置に2組の誤装着防止形状(シール材の突出部及びその位置合わせ穴と、シール溝からの溝部及びその位置合わせ突起)を設けてもよい。さらに、誤装着防止形状を適宜の位置に2組以上設けてもよい。1組の誤装着防止形状において、位置合わせ穴及び位置合わせ突起を、互いに対応する位置に2組以上設けることも可能である。
【0020】
f.シール材4は、パッキンであることを想定したが、ガスケットとして用いられるものであってもよい。
g.上記実施の形態とは異なり、コネクタハウジングのシール溝に続く溝部に位置合わせ穴を形成し、シール材の突出部に位置合わせ突起を形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ハウジングにシール材を装着したコネクタを示す斜視図
【図2】シール材の構成を示す斜視図(a)と、上面図(b)
【図3】コネクタ(シール材非装着)の構成を示す斜視図(a)と、上面図(b)
【図4】従来のコネクタにおけるシール材の装着状態の例を示す図
【符号の説明】
【0022】
1……………………コネクタ
2……………………ハウジング
3……………………端子
4……………………シール材
21…………………シール溝
21a,21b……突条部
22…………………溝部
22a………………位置合わせ突起
41…………………突出部
41a………………位置合わせ穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの側面を一巡するシール溝に、弾性を持つシール材を装着するシール材装着構造において、
前記シール材は、該シール材が延びる方向とは垂直に、該シール材から突出した突出部を備え、該突出部には、該シール材の前記シール溝への装着時における位置決めのための位置合わせ穴が形成されており、
前記ハウジングは、前記シール材の前記突出部の形状に合わせて、前記シール溝から連続して形成された溝部を備え、該溝部には、シール材側の前記位置合わせ穴に挿入される位置合わせ突起が形成されていることを特徴とするシール材装着構造。
【請求項2】
前記ハウジングの前記シール溝は、該ハウジングの側面を一巡する2つの突条部により形成され、前記溝部は、該突条部の少なくとも一方に形成されることを特徴とする請求項1に記載のシール材装着構造。
【請求項3】
シール材側の前記位置合わせ穴は、該シール材が延びる方向への前記突出部の中心からずれた位置に、シール溝側の前記位置合わせ突起は、該シール溝が延びる方向への前記溝部の中心からずれた位置に、それぞれ設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシール材装着構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−38329(P2010−38329A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204516(P2008−204516)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】