説明

シール材

【課題】従来のゴムスポンジ製のシール材と同等の高い圧縮性を有するとともに、ヘタリが生じ難く、従来のシール材よりも長寿命とすることのできるシール材を提供すること。
【解決手段】第1部材に形成されたシール溝に装着されるとともに、このシール溝の内部に挿入される第2部材によって押圧されることで、第1部材と第2部材との間をシールするシール材であって、シール材は断面中空状に形成され、シール溝の底面側に配向されるシール材の上面部の外面側には凹部が形成されるとともに、この凹部にはシール材の中空部と連通する空気孔が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシール材に関し、特に、放射性廃棄物を収容する容器に用いられて好適な放射性廃棄物収容器用のシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所などから発生した低レベル放射性廃棄物は、ドラム缶に詰められた後にコンクリートなどで固型化され、そのドラム缶ごと放射性廃棄物収容器に収容された状態で処分場まで運搬される。
【0003】
このような低レベル放射性廃棄物を収容・運搬する放射性廃棄物収容器は、主に鉄や鉛などの金属を切断、加工、溶接などして製造されるため寸法公差が大きい。このため、放射性廃棄物収容器に用いられるシール材には、高いシール性とともに寸法公差を吸収するだけの高い圧縮性が要求される。
【0004】
このような背景から、従来の放射性廃棄物収容器用のシール材としては、例えば図17および図18に示したような高い圧縮性を有するゴムスポンジ製の放射性廃棄物収容器用のシール材100が使用されてきた。ここで図17は、従来の放射性廃棄物収容器用のシール材が、シール溝に装着されている状態を示した断面図、図18は、従来の放射性廃棄物収容器用のシール材が、蓋と容器本体との間をシールしている状態を示した断面図である。
【0005】
この従来のゴムスポンジ製のシール材100は、図17に示したように、断面視で略正方形状をなしており、その断面は中空形状に形成されている。そして、このシール材100は、蓋130の下面側の外周縁に形成された矩形状のシール溝132に接着剤によって固定されて装着されている。そして蓋130によって容器本体を閉止すると、容器本体の側壁140の先端部分140aがシール材100を圧接し、シール材100が図18に示した如く変形し、この変形したシール材100によって、蓋130と容器本体との間が封止されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ゴムスポンジ製である従来のシール材100は圧縮復元性に劣るため、長期間、高い圧縮力で締め付けられると、いわゆるヘタリと呼ばれる圧縮永久歪みが生じ、シール性能が低下するという欠点があった。このため、シール材100の寿命は短く、頻繁にシール材を交換する必要があった。
【0007】
さらに、上述したように、シール材100は接着剤によってシール溝132に固定されているため、シール材を交換する際に、シール材100をシール溝132から取り外すのが困難であった。また、シール材100を取り外せたとしても、シール溝132に付着している接着剤を除去するのに大変な労力を要していた。
【0008】
本発明は、上述したような従来の課題に鑑みなされたものであって、従来のゴムスポンジ製のシール材と同等の高い圧縮性を有するとともに、ヘタリが生じ難く、従来のシール材よりも長寿命とすることのできるシール材を提供することを目的としている。
【0009】
また、本発明は、接着剤を用いずともシール溝に固定、装着することができ、したがって、簡単に交換することができるシール材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述したような従来技術の問題点を解決するために発明されたものであって、
本発明のシール材は、
第1部材に形成されたシール溝に装着されるとともに、該シール溝の内部に挿入される第2部材によって押圧されることで、第1部材と第2部材との間をシールするシール材であって、
前記シール材は断面中空状に形成され、前記シール溝の底面側に配向される該シール材の上面部の外面側には凹部が形成されるとともに、該凹部には該シール材の中空部と連通する空気孔が形成されていることを特徴とする。
【0011】
このように構成される本発明のシール材は、断面中空状に形成されるとともに、中空部と連通する空気孔が形成されている。したがって、第2部材によって押圧されて圧縮された際に、中空部の空気が空気孔を通じてシール材の外部に排出されるため、小さい押圧力で大きく変形する高い圧縮性を備えている。
【0012】
上記発明において、
前記シール材が、密実なゴム材によって形成されている。
このように、本発明のシール材が、ゴムスポンジではなく密実なゴム材によって形成されていれば、ヘタリが生じ難いとともに、海水中の塩分や雨水などが浸入しないため、シール材との接触面が腐食することがない。
【0013】
また、上記発明において、
前記シール溝の側面の開口側端部には、シール溝の開口幅を狭窄する脱落防止凸部が形成されていることが望ましい。
【0014】
このように、シール溝の側面の開口側端部にシール溝の開口幅を狭窄する脱落防止凸部が形成されていれば、シール溝に装着されたシール材の脱落が防止されるため、接着剤を用いることなく、本発明のシール材をシール溝に固定することが可能となる。
【0015】
上記発明において、
前記脱落防止凸部が、シール溝に別部材を固定することで形成されたものであることが望ましい。
【0016】
このように、シール溝に別部材を固定することで脱落防止凸部を形成すれば、シール溝それ自体を加工変形して脱落防止凸部を形成するよりも、簡単にシール溝に脱落防止凸部を形成することができる。
【0017】
また、上記発明において、
前記空気孔が、シール材の長さ方向に対して間隔をあけて複数形成されていることが望ましい。
【0018】
このように構成することで、長尺もののシール材や環状にシール材に対して、小さい押圧力で大きく変形する高い圧縮性を備えさせることができる。
また、上記発明において、
前記シール材の上面部に形成されている凹部と対向する位置にある前記シール溝の底面には、前記第1部材を貫通する排気孔が形成されていることが望ましい。
【0019】
このような排気孔が第1部材を貫通して形成されていれば、シール材の中空部から排出された空気を排気孔を介してシール溝の外部に排出することができるため、本発明のシール材において、小さい押圧力で大きく変形する高い圧縮性をより好適に発揮させることができる。
【0020】
また、上記発明において、
前記シール溝には、前記シール材の上面部に形成されている凹部と対向する位置にあるシール溝の底面から、シール溝の側面の開口側端部まで連続する排気溝が形成されていることが望ましい。
【0021】
このような排気溝がシール溝に形成されていれば、シール材の中空部から排出された空気を排気溝を介してシール溝の外部に排出することができるため、本発明のシール材において、小さい押圧力で大きく変形する高い圧縮性をより好適に発揮させることができる。
【0022】
上記発明において、
前記排気溝または前記排気孔が、シール溝の長さ方向に対して間隔をあけて複数形成されていることが望ましい。
【0023】
このように構成されていれば、長尺もののシール材や環状にシール材において、小さい押圧力で大きく変形する高い圧縮性をより好適に発揮させることができる。
また、上記発明において、
前記第2部材が当接する前記シール材の下面部の外面には、前記第2部材が固着するのを防止するための表面処理が施されていることが望ましい。
【0024】
このように、シール材の下面部の外面に、第2部材が固着するのを防止するための表面処理が施されていれば、長期間にわたってシール材が第2部材によって押圧されたとしても、シール材の下面部の外面と第2部材とが固着することがない。
【0025】
なお、本明細書において、第2部材が固着するのを防止するための表面処理とは、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などからなる各種のゴム用表面処理剤のコーティング、PTFEシート等のライニング、およびハロゲン処理などが挙げられる。
【0026】
また、上記発明の一実施形態では、
前記シール材の下面部が、外面側に膨出した湾曲状に形成されている。
このように、シール材の下面部が外面側に膨出した湾曲状に形成されていれば、本発明のシール材により高い圧縮性を備えさせることができる。
【0027】
また、上記発明の一実施形態では、
前記シール材の下面部の外面が、内面側に凹んだ湾曲状に形成されている。
このように、シール材の下面部の外面が内面側に凹んだ湾曲状に形成されていれば、シール材の下面と第2部材との接触位置がずれるのを防止することができる。
【0028】
また、上記発明の一実施形態では、
前記シール材の下面部が、中央部から端部にかけて肉厚が薄くなる山形状に形成されており、この際、シール材の下面部が、中空部側に凸に形成された山形状であることが望ましい。
【0029】
このように、シール材の下面部が中央部から端部にかけて肉厚が薄くなる山形状に形成されていれば、肉厚が厚く形成されている中央部において大きい反力を得ることができるとともに、肉厚が薄く形成されている端部は変形し易くなる。このため、例えば第2部材の当接位置が左右にずれて、シール材が左右非対称に変形した場合であっても、下面部において大きい反力を得ることができるとともに、下面部が変形することによってシール材に作用する押圧力が吸収されるため、側面部に座屈などの異常な変形が生ずるのを防止することができる。またこの作用効果は、特に、シール材の下面部が中空部側に凸に形成されている場合に、より顕著に発生する。
【0030】
また、上記発明において、
前記シール材の側面部が、シール材の下面部から上面部に向かって肉厚が厚くなるように形成されていることが望ましく、この際、前記シール材の下面部と側面部との接続部分の外面が、R面またはテーパー面に形成されていることが望ましい。
【0031】
このように、シール材の側面部がシール材の下面部から上面部に向かって肉厚が厚くなるように形成されていれば、シール材が圧縮変形した際に、シール溝の底面から大きい反力を得ることができるとともに、下面部の変形に合わせて側面部が変形し易くなる。この際、シール材の下面部と側面部との接続部分がR面またはテーパー面に形成されていれば、下面部の変形に合わせて側面部がより変形し易くなる。したがって、例えば第2部材の当接位置が左右にずれてシール材が左右非対称に変形した場合であっても、側面部から大きい反力を得ることができるとともに、下面部の変形に合わせて側面部も変形するため、シール材の側面部に過剰な軸方向力が作用して側面部が座屈などの異常な変形をするのを防止することができる。
【0032】
また、上記発明において、
前記シール材の下面部が、前記シール溝の幅よりも幅広に形成されていることが望ましく、この際、前記シール材の側面部の外面には、シール材の下面部から上面部に向かって内向きのテーパーが付されていることが望ましい。
【0033】
このように、シール材の下面部がシール溝の幅よりも幅広に形成されていれば、シール溝に装着されたシール材がシール溝から脱落しにくくなる。またこの際、シール材の側面部の外面にシール材の下面部から上面部に向かって内向きのテーパーが付されていれば、シール材をシール溝に装着し易くなる。
【0034】
また、上記発明において、
前記シール材が、放射性廃棄物が収容される放射性廃棄物収容器に用いられることが望ましい。
【0035】
本発明のシール材は、高い圧縮性を備えるとともに、高い圧縮復元性も備えるため、放射性廃棄物収容器用のシール材として好適に用いることが可能である。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、従来のゴムスポンジ製のシール材と同等の高い圧縮性を有するとともに、ヘタリが生じ難く、海水中の塩分や雨水などが浸入してシール溝を腐食させることもなく、したがって、従来のシール材よりも長寿命とすることのできるシール材を提供することができる。
【0037】
また、本発明は、接着剤を用いずともシール溝に固定、装着することができ、したがって、簡単に交換することができるシール材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明のシール材が装着される容器の蓋を示した部分拡大断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態のシール材を示した断面図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施形態のシール材が、シール溝に装着されている状態を示した断面図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施形態のシール材が、蓋と容器本体との間をシールしている状態を示した断面図である。
【図5】図5は、本発明の第1の実施形態のシール材が、排気溝が形成されているシール溝に装着されて、蓋と容器本体との間をシールしている状態を示した断面図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施形態のシール材を示した断面図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施形態のシール材が、シール溝に装着されている状態を示した断面図である。
【図8】図8は、本発明の第2の実施形態のシール材が、蓋と容器本体との間をシールしている状態を示した断面図である。
【図9】図9は、本発明の第3の実施形態のシール材を示した断面図である。
【図10】図10は、本発明の第3の実施形態のシール材が、シール溝に装着されている状態を示した断面図である。
【図11】図11は、本発明の第3の実施形態のシール材が、蓋と容器本体との間をシールしている状態を示した断面図である。
【図12】図12は、本発明の第4の実施形態のシール材を示した断面図である。
【図13】図13は、本発明の第4の実施形態のシール材が、シール溝に装着されている状態を示した断面図である。
【図14】図14は、本発明の第4の実施形態のシール材が、蓋と容器本体との間をシールしている状態を示した断面図である。
【図15】図15は、本発明の第4の実施形態のシール材が、左右非対称に変形した状態を示した断面図である。
【図16】図16は、本発明の第4の実施形態のシール材において、シール材の下面部と側面部との接続部分の外面がテーパー状に形成された例を示した断面図である。
【図17】図17は、従来の放射性廃棄物収容器用のシール材が、シール溝に装着されている状態を示した断面図である。
【図18】図18は、従来の放射性廃棄物収容器用のシール材が、蓋と容器本体との間をシールしている状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
なお、本明細書においてシール材の「上面部」とは、図中のシール材1の上側の部分、すなわち、シール材1がシール溝32に装着された状態において、シール溝32の底面側に配向される部分を指す。また、シール材の「下面部」とは、図中のシール材1の下側の部分、すなわち、シール材1がシール溝32に装着された状態において、シール溝32の開口側に配向される部分を指す。
【0040】
図1は、本発明のシール材が装着される容器の蓋を示した部分拡大断面図である。
本発明のシール材1は、図1に示したように、第1部材(例えば蓋30)に形成されたシール溝32に装着されるとともに、このシール溝32の内部に挿入される第2部材(例えば容器本体の側壁40の先端部40a)によって押圧されることで、第1部材と第2部材との間をシールするものである。
<第1の実施形態>
図2は、本発明の第1の実施形態のシール材を示した断面図である。図3は、本発明の第1の実施形態のシール材が、シール溝に装着されている状態を示した断面図である。図4は、本発明の第1の実施形態のシール材が、蓋と容器本体との間をシールしている状態を示した断面図である。
【0041】
本実施形態のシール材1は、図2に示したように、上面部12、下面部14、およびこれら上面部12と下面部14とを接続する側面部16,16とからなる断面中空状に形成されており、このシール材1の略中央部分には、略矩形状をなした中空部10が形成されている。そして、これら下面部14および側面部16,16は略同一の厚さに形成されているのに対して、上面部12はこれらよりも肉厚が厚く形成されている。
【0042】
また、上面部12の外面12a側には、水平面である外面12aよりも凹んだ部分として、凹部18が形成されている。そして、この凹部18には、上述した中空部10と連通する空気孔20が形成されている。
【0043】
また、上面部12と側面部16,16との接続部分の外面には、シール材1の内側に向けて傾斜するテーパー面22,22が形成されている。このテーパー面22,22は、後述するように、脱落防止凸部36,36によって開口部が狭窄されているシール溝32にシール材1を嵌挿することが出来るように、適当な傾斜角度および長さに形成されている。
【0044】
また、下面部14と側面部16,16との接続部分の外面には、円弧状をなしたR面24,24が形成されている。このR面24,24は、シール材1をシール溝32に装着した際に、シール溝32の側面の開口側端部に形成されている脱落防止凸部36,36に当接するように、適当な形状に形成されている。
【0045】
このような断面形状を有するシール材1は、平面視で環状または長尺状に形成されている。そして、上述した空気孔20は、シール材1の長手方向に所定間隔をあけて複数形成されている。
【0046】
このような本実施形態のシール材1は、従来のシール材のようにゴムスポンジではなく密実なゴム材によって形成されている。すなわち、ゴムスポンジのように内部に無数の孔が形成された多孔質のゴムではなく、密実な内部構造を有する、いわゆる一般的なゴム材から形成されている。なお、ゴムスポンジの比重が0.1〜0.3程度であるのに対し、一般的なゴム材の比重は約0.8以上であり、両者は明確に区別されるものである。
【0047】
このようなゴム材としては、例えば、天然ゴムや、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、布入りゴムなどの各種合成ゴム材が挙げられる。本実施形態のシール材1は、シリコーンゴムにより形成されている。
【0048】
このような密実なゴム材は、ゴムスポンジと比べて弾性変形に対する復元性が高く、長期間にわたって圧縮されても、大きな永久歪みは生じない。本発明のシール材1は、このような復元性の高いゴム材によって形成されているため、上述した従来のゴムスポンジ製のシール材100と比べて、ヘタリが生じ難くなっている。また、このような密実なゴム材は、ゴムスポンジのように塩分や雨水などが浸入しないため、シール溝32のシール材1との接触面が腐食することもない。
【0049】
このような断面形状を有するシール材1は、図1および図3に示したように、蓋30の下面側外周縁に形成されているシール溝32に装着される。なお、本実施形態における蓋30は、放射性廃棄物が収容された放射性廃棄物収容器の蓋であるものとする。
【0050】
このシール溝32は断面略矩形状に形成されており、そのシール溝32の幅は、シール材1の幅と略同一となっている。また、シール溝32の高さは、シール材1の高さと略同一となっている。
【0051】
また、図3に示したように、シール溝32の左右両側面の開口側端部には、脱落防止凸部36,36が形成されている。このような脱落防止凸部36,36が形成されることで、シール溝32の開口幅はシール材1のシール幅よりも狭くなっている。本実施形態では、この脱落防止凸部36,36は、蓋30とは別部材から構成されており、例えばステンレスなどの金属製の線材が、蓋30のシール溝32に溶接によって固定されることで形成されている。
【0052】
なお、本実施形態では、上述したように、シール溝32に別部材である線材を固定することで脱落防止凸部36,36を形成しているが、本発明はこれに限定されず、例えば、シール溝32の側面の開口側端部を加工変形して脱落防止凸部36,36を形成してもよい。しかしながら、シール溝32自体を加工変形して脱落防止凸部36,36を形成するよりも、シール溝32に線材などの別部材を固定して脱落防止凸部36,36を形成する方が、簡単にシール溝32に脱落防止凸部36,36を形成することができるため好ましい。
【0053】
また、本実施形態の脱落防止凸部36,36は、図3に示したように、断面視で円形に形成されているが、本発明はこれに限定されない。シール材1をシール溝32に嵌挿する際にシール材1を傷つけないような形状であれば、例えば半円形や、楕円形や、矩形で角部が面取りされているような形状であっても構わない。
【0054】
また、図3に示したように、シール材1の凹部18と対向する位置にあるシール溝32の底面には、シール溝32の底面を貫通する排気孔35が形成されている。この排気孔35は、シール溝32の長手方向に所定間隔をあけて複数形成されている。
【0055】
そして本発明のシール材1は、シール溝32に対して、上面部12の外面12aがシール溝32の底面と当接するように、上面部12を頭にしてシール溝32に嵌挿される。この際、シール材1の上面部12と側面部16,16との間にはテーパー面22,22が形成されているため、脱落防止凸部36,36によって開口部が狭窄されていても、シール溝32に上面部12を嵌挿することができるようになっている。また、シール材1の側面部16,16は、中空部10が形成されている内面側に変形し易いため、脱落防止凸部36,36によって開口部が狭窄されていても、側面部16,16を内面側に変形させることで、シール材1をシール溝32に容易に嵌挿することができるようになっている。
【0056】
このようにして、シール溝32に嵌挿されたシール材1は、図3に示したように、そのR面24,24と脱落防止凸部36,36とが当接した状態で、シール溝32に装着される。したがって、接着剤などでシール材1をシール溝32に固定しなくても、シール材1がシール溝32から脱落しないようになっている。
【0057】
そして、シール溝32にシール材1が装着された状態において、蓋30によって容器本体を閉止すると、図4に示したように、シール溝32の内部に側壁40の先端部40aが挿入され、先端部40aが下面部14の外面14aを圧接する。そして、押圧されたシール材1が圧縮変形することで、蓋30と容器本体との間が封止される。
【0058】
この際、上述したように、シール材1には中空部10と連通する空気孔20が形成されており、シール材1が圧縮変形した際に、中空部10内の空気が空気孔20を通じてシール材1の外部に排出されるようになっている。このため、本発明のシール材1は、小さい押圧力で大きく変形する高い圧縮性を備えており、従来のゴムスポンジ製のシール材と同等以上の高い圧縮性を有している。
【0059】
また上述したように、シール溝32の底面を貫通する排気孔35が形成されており、シール材1が圧縮変形した際に、シール材1の凹部18に排出された中空部10内の空気が、この排気孔35を通じてシール溝32の外部に排出される。これにより、本発明のシール材1において、より小さい押圧力で大きく変形する高い圧縮性を発揮させることができる。
【0060】
また、本実施形態のシール材1において、下面部14の外面14aに表面処理を施すこともできる。表面処理は、外面14aの摩擦係数を低減するとともに、接触する部材が外面14aに固着するのを防止するために行なわれるものであり、このような表面処理としては、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などからなる各種のゴム用表面処理剤をコーティングしたり、PTFEシート等をライニングしたり、ハロゲン処理などの化学的処理が挙げられる。
【0061】
このような表面処理が下面部14の外面14aに施されていれば、長期間にわたって先端部40aが外面14aを圧接したとしても、外面14aと先端部40aとの間で固着が生じ難くなる。よって、外面14aと先端部40aとが固着すると、蓋30を取り外す際に、シール材1がシール溝32から脱落したり、固着部分が無理やり剥がされることによってシール材1が損傷することがあるが、外面14aに表面処理を施すことで、このような問題を予め防止することができるようになる。
【0062】
以上のとおり、本発明のシール材1は、従来のゴムスポンジ製のシール材と同等以上の高い圧縮性を有するとともに、ヘタリが生じ難く、従来のシール材よりも長寿命とすることのできるシール材1となっている。
【0063】
また、本発明のシール材1は、接着剤を用いずともシール溝に固定、装着することができ、したがって、簡単に交換することができるシール材1となっている。
なお、上述した実施形態では、シール溝32の底面を貫通する排気孔35が形成されており、中空部10内の空気が排気孔35を通じて容器内部に排出されるようになっていた。しかしながら本発明はこれに限定されず、例えば図5に示したように、排気孔35に代えて、シール材1の凹部18と対向する位置にあるシール溝32の底面から、シール溝32の左側面の開口側端部まで連続して形成された溝である、排気溝34が形成されていてもよい。また図示しないが、このような排気溝34がシール溝32の右側面側に形成されていてもよく、また例えば、このような排気溝34がシール溝32の両側面に形成されていてもよいものである。
【0064】
ただし、上述した排気孔35および排気溝34は、上述した実施形態のように、その排出口が容器内部に位置するように形成されることが好ましい。このように、排出口が容器内部に位置するように形成されていれば、容器外部からシール溝32に塩分や雨水などが浸入することを防止することができる。
【0065】
また、上述した実施形態では、シール材1の下面部14が水平に形成されるとともに、シール材1の高さがシール溝32の高さと同一に形成されている。しかしながら、本発明のシール材1はこれに限定されず、例えば、図6〜図8に示したようなシール材1とすることや、図9〜図11に示したようなシール材1とすることも可能である。
<第2の実施形態>
図6は、本発明の第2の実施形態のシール材を示した断面図である。図7は、本発明の第2の実施形態のシール材が、シール溝に装着されている状態を示した断面図である。図8は、本発明の第2の実施形態のシール材が、蓋と容器本体との間をシールしている状態を示した断面図である。なお、この第2の実施形態のシール材1は、上述した実施形態のシール材1と基本的には同様の構成となっており、同一の部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0066】
この第2の実施形態のシール材1では、図6に示したように、シール材1の下面部14が外面14a側に膨出するように湾曲状に形成されている点が、上述した実施形態と異なっている。そして、図7に示したように、湾曲状の下面部14の外面14aの先端側の一部が、シール溝32から突出した状態でシール溝32に装着されている。
【0067】
このようにしてなる第2の実施形態のシール材1は、上述した実施形態と基本的に同一の作用効果を奏するとともに、中空部10の体積が大きい分だけ、下面部14が水平に形成されている上述した実施形態のシール材1よりも、高い圧縮性を備えている。
【0068】
<第3の実施形態>
図9は、本発明の第3の実施形態のシール材を示した断面図である。図10は、本発明の第3の実施形態のシール材が、シール溝に装着されている状態を示した断面図である。図11は、本発明の第3の実施形態のシール材が、蓋と容器本体との間をシールしている状態を示した断面図である。なお、この第3の実施形態のシール材1は、上述した実施形態のシール材1と基本的に同様の構成となっており、同一の部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0069】
この第3の実施形態のシール材1では、図9および図10に示したように、シール材1の下面部14の外面14aが内面14b側に凹むように湾曲状に形成されている点が上述した実施形態と異なっている。
【0070】
このように、下面部14の外面14aが中空部10側に凹んだ湾曲状に形成されていれば、図11に示したように、先端部40aが外面14aを圧接する際に、この湾曲状に凹んだ部分に先端部40aが当接する形となる。したがって、外面14aと先端部40aとの接触位置がずれ難くなっている。
【0071】
また、容器本体を蓋30で閉止する際に、先端部40aが外面14aに対して多少ずれた状態で接触したとしても、外面14aが湾曲状に形成されているため、その接触位置のずれが自動的に矯正されるようになっている。この際、上述したように、外面14aに表面処理が施されていれば、先端部40aとの間の摩擦抵抗が小さくなるため、外面14aが凹んだ湾曲状に形成されていることと相まって、外面14aと先端部40aとの接触位置のずれがより確実に矯正されるようになる。
【0072】
<第4の実施形態>
図12は、本発明の第4の実施形態のシール材を示した断面図である。図13は、本発明の第4の実施形態のシール材が、シール溝に装着されている状態を示した断面図である。図14は、本発明の第4の実施形態のシール材が、蓋と容器本体との間をシールしている状態を示した断面図である。図15は、本発明の第4の実施形態のシール材が、左右非対称に変形した状態を示した断面図である。なお、この第4の実施形態のシール材1は、上述した実施形態のシール材1と基本的に同様の構成となっており、同一の部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0073】
この第4の実施形態のシール材1では、図12および図13に示したように、上述した実施形態とは異なり、下面部14の外面14aは水平に形成されているが、内面14bは中空部10側に凸に形成されており、下面部14の全体としては中空部10側に凸設した山形状に形成されている。そして下面部14が、中央部から端部にかけて肉厚が薄くなるように形成されている。
【0074】
このように、シール材1の下面部14が中央部から端部にかけて肉厚が薄くなる山形状に形成されていれば、肉厚が厚く形成されている中央部において大きい反力を得ることができるとともに、肉厚が薄く形成されている端部は変形し易くなる。したがって、図14に示したように、先端部40aが外面14aを圧接する際に、シール材1から大きい反力を得ることができるため、高いシール性を備えている。また、下面部14の全体が中空部10側に大きく変形するため、高い圧縮性を備えている。
【0075】
また例えば、図15に示したように、先端部40a当接位置が左右にずれ、シール材1が左右非対称に変形した場合であっても、下面部14が変形することによってシール材1に作用する押圧力が吸収されるため、側面部16,16の一方に過剰な軸方向力が作用することがなく、側面部16,16に座屈なども生じない。
【0076】
なお、このような作用効果は、シール材1の下面部14が中央部から端部にかけて肉厚が薄くなる山形状に形成されていればよく、例えばシール材1の下面部14が外面14a側に凸に形成されていても奏するものである。しかしながら、上述した実施形態の様に、シール材1の下面部14が中空部10側に凸設した山形状に形成されている方が、このような作用効果がより顕著に発生する。
【0077】
またこの第4の実施形態のシール材1では、上述した実施形態とは異なり、シール材1の側面部16,16が、シール材1の下面部14から上面部12に向かって肉厚が厚くなるように形成されているとともに、シール材1の下面部14が、シール溝32の幅よりも幅広に形成されている。また、シール材1の側面部16,16の外面16a,16aには、下面部14から上面部12に向かって内向きのテーパーが付されている。
【0078】
このように本実施形態のシール材1は、下面部14がシール溝32の幅よりも幅広に形成されているため、仮にシール溝32の開口端部に脱落防止凸部36,36が形成されていなくても、シール溝32に装着されたシール材1がシール溝32から脱落しにくくなっている。この場合であっても、下面部14が変形し易く構成されていることから、下面部14を幅方向に圧縮することで、シール材1をシール溝32に簡単に装着することができる。また、側面部16,16の外面16a,16aに、下面部14から上面部12に向かって内向きのテーパーが付されているため、シール材1をシール溝32に簡単に装着することができる。
【0079】
なお勿論、シール溝32の開口端部に脱落防止凸部36,36が形成されている方が、シール溝32に装着されたシール材1がシール溝32から脱落するのをより確実に防止することができるため、好ましい。
【0080】
またこの第4の実施形態のシール材1では、上述した実施形態と同様に、シール材1の下面部14と側面部16との接続部分の外面にR面24が形成されており、下面部14の変形に合わせて側面部16,16が変形し易くなっている。
【0081】
よって、シール材1が左右非対称に変形した場合であっても、下面部14の変形に伴って側面部16,16も緩やかに変形し、側面部16,16に過剰な軸方向力が作用して座屈などが生ずることがないようになっている。
【0082】
なお、このような下面部14と側面部16,16との接続部分の形状としては、上述したR面24のほかに、図16に示したようなテーパー面24´であっても良い。
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0083】
例えば上述した実施形態では、空気孔20は同一断面上に1つだけ形成されていたが、本発明のシール材1はこれに限定されず、同一断面上に複数の空気孔20を形成することも勿論可能である。
【0084】
また、上述した実施形態では、本発明のシール材1が、容器の蓋30に形成されているシール溝32に装着される場合を例に説明したが、本発明のシール材1はこれに限定されず、例えば、容器本体にシール溝32が形成されていてもよいものである。
【0085】
また、本発明のシール材1は、上述したように、放射性廃棄物が収容される放射性廃棄物収容器用のシール材として好適に使用できるものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、上術した実施形態と同様に、シール材に高い圧縮性と圧縮復元性が要求される容器や機械等であれば、本発明のシール材1を使用することが可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 シール材
10 中空部
12 上面部
14 下面部
16 側面部
18 凹部
20 空気孔
22 テーパー面
24 R面
24´ テーパー面
30 蓋
32 シール溝
34 排気溝
35 排気孔
36 脱落防止凸部
40 側壁
40a 先端部
100 シール材
130 蓋
132 シール溝
140 側壁
140a 先端部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材に形成されたシール溝に装着されるとともに、該シール溝の内部に挿入される第2部材によって押圧されることで、第1部材と第2部材との間をシールするシール材であって、
前記シール材は断面中空状に形成され、前記シール溝の底面側に配向される該シール材の上面部の外面側には凹部が形成されるとともに、該凹部には該シール材の中空部と連通する空気孔が形成されていることを特徴とするシール材。
【請求項2】
前記シール材が、密実なゴム材によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシール材。
【請求項3】
前記シール溝の側面の開口側端部には、シール溝の開口幅を狭窄する脱落防止凸部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のシール材。
【請求項4】
前記脱落防止凸部が、シール溝に別部材を固定することで形成されたものであることを特徴とする請求項3に記載のシール材。
【請求項5】
前記空気孔が、シール材の長さ方向に対して間隔をあけて複数形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のシール材。
【請求項6】
前記シール材の上面部に形成されている凹部と対向する位置にある前記シール溝の底面には、前記第1部材を貫通する排気孔が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のシール材。
【請求項7】
前記シール溝には、前記シール材の上面部に形成されている凹部と対向する位置にあるシール溝の底面から、シール溝の側面の開口側端部まで連続する排気溝が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のシール材。
【請求項8】
前記排気溝または前記排気孔が、シール溝の長さ方向に対して間隔をあけて複数形成されていることを特徴とする請求項6または7に記載のシール材。
【請求項9】
前記第2部材が当接する前記シール材の下面部の外面には、前記第2部材が固着するのを防止するための表面処理が施されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のシール材。
【請求項10】
前記シール材の下面部が、外面側に膨出した湾曲状に形成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のシール材。
【請求項11】
前記シール材の下面部の外面が、内面側に凹んだ湾曲状に形成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のシール材。
【請求項12】
前記シール材の下面部が、中央部から端部にかけて肉厚が薄くなる山形状に形成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のシール材。
【請求項13】
前記シール材の下面部が、前記中空部側に凸に形成された山形状であることを特徴とする請求項12に記載のシール材。
【請求項14】
前記シール材の側面部が、シール材の下面部から上面部に向かって肉厚が厚くなるように形成されていることを特徴とする請求項12または13に記載のシール材。
【請求項15】
前記シール材の下面部と側面部との接続部分の外面が、R面またはテーパー面に形成されていることを特徴とする請求項14に記載のシール材。
【請求項16】
前記シール材の下面部が、前記シール溝の幅よりも幅広に形成されていることを特徴とする請求項14または15に記載のシール材。
【請求項17】
前記シール材の側面部の外面には、シール材の下面部から上面部に向かって内向きのテーパーが付されていることを特徴とする請求項16に記載のシール材。
【請求項18】
前記シール材が、放射性廃棄物が収容される放射性廃棄物収容器に用いられることを特徴とする請求項1から17のいずれかに記載のシール材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−92298(P2012−92298A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173796(P2011−173796)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【Fターム(参考)】