説明

シール構造および圧縮機

【課題】マフラー部材とヘッド部材とを密着させて、マフラー部材とヘッド部材との間から冷媒が漏れるのを抑制する。
【解決手段】圧縮された冷媒を吐出する吐出孔53cが形成されたヘッド部材50と、複数の締結部材43によってヘッド部材50に取り付けられるマフラー部材40とのシール構造では、マフラー部材40は、ヘッド部材50に当接する環状の当接部42を有しており、当接部42のヘッド部材50と反対側に配置され、少なくとも2つの締結部材43によって当接部42とともにヘッド部材50に取り付けられる押圧部材80を備えている。押圧部材80は、周方向に隣接する2つの締結部材43によって締結される2つの締結部81、82の間の部分において、当接部42をヘッド部材50に押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮された冷媒を吐出する吐出孔が形成されたヘッド部材と当該ヘッド部材に取り付けられるマフラー部材とのシール構造、およびそのシール構造を備えた圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧縮機では、圧縮された冷媒が吐出される吐出孔を有するヘッド部材に、吐出孔を覆うようにマフラー部材を取り付けてマフラー空間を形成し、吐出孔からの吐出に伴って発生する騒音を低減させている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−147375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、マフラー部材は、絞り加工などによって形成されているため、ヘッド部材に取り付ける面にうねりが生じて、マフラー部材とヘッド部材との間に隙間が生じる場合がある。また、ボルト等でマフラー部材とヘッド部材とを締結する場合に、マフラー部材に締結力が加わることによって、締結部分から離れた部分の密着性が低くなり、隙間が生じる場合がある。マフラー部材とヘッド部材との間に隙間があると、この隙間から冷媒が噴出することにより、騒音が発生する。
【0005】
そこで、この発明は、マフラー部材とヘッド部材とを密着させて、マフラー部材とヘッド部材との間から冷媒が漏れ出るのを抑制することができるシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、第1の発明に係るシール構造は、圧縮された冷媒を吐出する吐出孔が形成されたヘッド部材と、複数の締結部材によって前記ヘッド部材に取り付けられるマフラー部材とのシール構造であって、前記マフラー部材は、前記ヘッド部材に当接する環状の当接部を有しており、前記当接部の前記ヘッド部材と反対側に配置され、複数の前記締結部材によって前記当接部とともに前記ヘッド部材に取り付けられる押圧部材を備え、前記押圧部材は、周方向に隣接する2つの前記締結部材によって締結される2つの締結部の間の部分において、前記当接部を前記ヘッド部材に押圧することを特徴とする。
【0007】
このシール構造では、マフラー部材の当接部のうち、周方向に隣接する2つの締結部材によってヘッド部材に締結される部分の間の部分を、押圧部材によって押圧してヘッド部材に密着させることができる。したがって、マフラー部材の当接部とヘッド部材との間から冷媒が漏れ出るのを抑制することができる。
【0008】
第2の発明に係るシール構造は、第1の発明に係るシール構造において、前記押圧部材が、前記当接部を全周にわたって前記ヘッド部材に押圧することを特徴とする。
【0009】
このシール構造では、押圧部材によって、当接部を全周にわたってヘッド部材に密着させることができる。
【0010】
第3の発明に係るシール構造は、第1または第2の発明に係るシール構造において、前記押圧部材は、前記ヘッド部材上に配置されて締結される前の状態において、周方向に隣接する前記2つの締結部の間に、前記当接部に向かって突出する突出部を有していることを特徴とする。
【0011】
このシール構造では、突出部の突出先端によってマフラー部材の当接部をヘッド部材側に押圧することができるため、突出部を設けずに広い面で均一に当接部を押圧する場合に比べて、局所的に面圧を高くできる。したがって、したがって、当接部とヘッド部材とをより確実に密着させることができる。
【0012】
第4の発明に係るシール構造は、第3の発明に係るシール構造において、前記押圧部材は、前記ヘッド部材上に配置されて締結される前の状態において、前記突出部が、前記2つの締結部の先端を含む平面より前記当接部側に突出した部分を含むことを特徴とする。
【0013】
このシール構造では、押圧部材による押圧力を大きくでき、当接部とヘッド部材との密着性をより向上させることができる。
【0014】
第5の発明に係るシール構造は、第3または第4の発明に係るシール構造において、前記突出部は、周方向に隣接する2つの前記締結部の間の周方向中央に対応した位置に配置されることを特徴とする。
【0015】
このシール構造では、マフラー部材の当接部とヘッド部材との当接部分のうち、締結力が作用することによって密着性が低くなりやすい2つの締結部材の間の周方向中央の部分の密着性を向上させることができる。
【0016】
第6の発明に係るシール構造は、第5の発明に係るシール構造において、前記突出部は、前記2つの締結部の間の周方向中央に対応した位置において最も突出することを特徴とする。
【0017】
このシール構造では、マフラー部材の当接部とヘッド部材との当接部分のうち、2つの締結部材の間の周方向中央の部分を、最も突出している突出部によって確実に密着させることができる。なお、最も突出している突出部とは、締結部の先端を含む平面からの突出高さが最も大きい突出部をいう。
【0018】
第7の発明に係るシール構造は、第3〜第6のいずれかの発明に係るシール構造において、前記ヘッド部材は、前記当接部と当接する部分の径方向内側に配置され、前記吐出孔が形成された凹部を有しており、前記突出部は、前記ヘッド部材の前記凹部の径方向外側に配置されることを特徴とする。
【0019】
このシール構造では、マフラー部材の当接部とヘッド部材との当接部分のうち、冷媒の圧力脈動が大きいために冷媒の漏れが生じやすい凹部の径方向外側の部分の密着性を向上させることができる。
【0020】
第8の発明に係るシール構造は、第7の発明に係るシール構造において、前記突出部は、前記ヘッド部材の前記凹部の径方向外側において最も突出することを特徴とする。
【0021】
このシール構造では、マフラー部材の当接部とヘッド部材との当接部分のうち、凹部の径方向外側の部分を、最も突出している突出部によって確実に密着させることができる。
【0022】
第9の発明に係るシール構造は、第7または第8の発明に係るシール構造において、前記突出部は、前記ヘッド部材の前記吐出孔の径方向外側に配置されることを特徴とする。
【0023】
このシール構造では、マフラー部材の当接部とヘッド部材との当接部分のうち、多量の冷媒が漏れやすい吐出孔の径方向外側の部分の密着性を向上させることができる。
【0024】
第10の発明に係るシール構造は、第3〜第9のいずれかの発明に係るシール構造において、前記突出部は、突出先端に向かって断面積が小さくなっていることを特徴とする。
【0025】
このシール構造では、突出部の先端が平坦状の場合に比べて、当接部を押圧する面圧を大きくすることができ、当接部とヘッド部材との密着性を向上させることができる。
【0026】
第11の発明に係るシール構造は、第3〜第10のいずれかの発明に係るシール構造において、前記突出部は、前記2つの締結部の間の部分において、周方向に離れた位置に複数配置されていることを特徴とする。
【0027】
このシール構造では、複数の突出部が配置された周方向の範囲において、マフラー部材の当接部とフロントヘッドとの密着性を向上させることができる。
【0028】
第12の発明に係るシール構造は、第1〜第11のいずれかの発明に係るシール構造において、前記押圧部材は、前記マフラー部材よりも剛性が高いことを特徴とする。
【0029】
このシール構造では、押圧部材が当接部を押圧する力を大きくすることができるため、当接部とヘッド部材との密着性をより向上させることができる。
【0030】
第13の発明に係るシール構造は、第1〜第12のいずれかの発明に係るシール構造において、前記冷媒が、COであることを特徴とする。
【0031】
このシール構造では、冷媒として、吐出圧力脈動が大きく漏れが生じやすいCO冷媒を用いているため、特に有効である。
【0032】
第14の発明に係る圧縮機は、第1〜第13のいずれかの発明に係るシール構造を備えることを特徴とする。
【0033】
この圧縮機では、第1〜第13の発明に係るシール構造と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0034】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0035】
第1の発明では、マフラー部材の当接部のうち、周方向に隣接する2つの締結部材によってヘッド部材に締結される部分の間の部分を、押圧部材によって押圧してヘッド部材に密着させることができる。したがって、マフラー部材の当接部とヘッド部材との間から冷媒が漏れ出るのを抑制することができる。
【0036】
第2の発明では、押圧部材によって、当接部を全周にわたってヘッド部材に密着させることができる。
【0037】
第3の発明では、突出部の突出先端によってマフラー部材の当接部をヘッド部材側に押圧することができるため、突出部を設けずに広い面で均一に当接部を押圧する場合に比べて、局所的に面圧を高くできる。したがって、したがって、当接部とヘッド部材とをより確実に密着させることができる。
【0038】
第4の発明では、押圧部材による押圧力を大きくでき、当接部とヘッド部材との密着性をより向上させることができる。
【0039】
第5の発明では、マフラー部材の当接部とヘッド部材との当接部分のうち、締結力が作用することによって密着性が低くなりやすい2つの締結部材の間の周方向中央の部分の密着性を向上させることができる。
【0040】
第6の発明では、マフラー部材の当接部とヘッド部材との当接部分のうち、2つの締結部材の間の周方向中央の部分を、最も突出している突出部によって確実に密着させることができる。なお、最も突出している突出部とは、締結部の先端を含む平面からの突出高さが最も大きい突出部をいう。
【0041】
第7の発明では、マフラー部材の当接部とヘッド部材との当接部分のうち、冷媒の圧力脈動が大きいために冷媒の漏れが生じやすい凹部の径方向外側の部分の密着性を向上させることができる。
【0042】
第8の発明では、マフラー部材の当接部とヘッド部材との当接部分のうち、凹部の径方向外側の部分を、最も突出している突出部によって確実に密着させることができる。
【0043】
第9の発明では、マフラー部材の当接部とヘッド部材との当接部分のうち、多量の冷媒が漏れやすい吐出孔の径方向外側の部分の密着性を向上させることができる。
【0044】
第10の発明では、突出部の先端が平坦状の場合に比べて、当接部を押圧する面圧を大きくすることができ、当接部とヘッド部材との密着性を向上させることができる。
【0045】
第11の発明では、複数の突出部が配置された周方向の範囲において、マフラー部材の当接部とフロントヘッドとの密着性を向上させることができる。
【0046】
第12の発明では、押圧部材が当接部を押圧する力を大きくすることができるため、当接部とヘッド部材との密着性をより向上させることができる。
【0047】
第13の発明では、冷媒として、吐出圧力脈動が大きく漏れが生じやすいCO冷媒を用いているため、特に有効である。
【0048】
第14の発明の圧縮機では、第1〜第13の発明に係るシール構造と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態に係る圧縮機の断面である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図2のB−B線断面図である。
【図4】ヘッド部材の平面図である。
【図5】マフラー部材の平面図である。
【図6】押圧部材の平面図である。
【図7】(a)は本発明の第2実施形態に係る圧縮機の図3に相当する断面図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
【図8】図7に示す押圧部材の平面図である。
【図9】第2実施形態の変更例に係る押圧部材の使用状態を示す部分拡大図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る圧縮機が備える押圧部材の平面図である。
【図11】図10のC−C線断面図であって、(a)は締結される前の状態を示し、(b)は締結された状態を示す。
【図12】第3実施形態の変更例に係る押圧部材の平面図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係る圧縮機が備える押圧部材の平面図である。
【図14】図10のD−D線断面図であって、(a)は締結される前の状態を示し、(b)は締結された状態を示す。
【図15】第3実施形態の変更例に係る押圧部材の締結前の状態の断面図である。
【図16】第3実施形態の変更例に係る押圧部材の平面図である。
【図17】第3実施形態の変更例に係る押圧部材の部分斜視図である。
【図18】本発明の他の実施形態に係る押圧部材の断面図である。
【図19】本発明の他の実施形態に係る押圧部材の平面図である。
【図20】(a)は本発明の他の実施形態に係る押圧部材の平面図であり、(b)は(a)のE−E線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の圧縮機1は、密閉ケーシング10と、密閉ケーシング10内に配置される駆動機構20及び圧縮機構30とを備えている。なお、図1の断面図は、ハッチングの一部を省略して表示している。この圧縮機1は、例えば、空調装置などの冷凍サイクルに組み込まれて使用され、導入管11から導入された冷媒(本実施形態では、CO2)を圧縮して、排出管12から排出する。
【0051】
密閉ケーシング10の上部には、圧縮された冷媒を排出するための排出管12と、駆動機構20の後述する固定子21bのコイルに電流を供給するためのターミナル端子13が設けられている。密閉ケーシング10の側部には、冷媒を圧縮機1に導入するための導入管11が設けられている。また、密閉ケーシング10の下部には、圧縮機構30の摺動部の動作を滑らかにするための潤滑油が貯留されている。この潤滑油が溜められている部分を、油貯留部14とする。
【0052】
駆動機構20は、圧縮機構30を駆動するために設けられており、駆動源となるモータ21と、モータ21に取り付けられるシャフト22とを備えている。
【0053】
モータ21は、密閉ケーシング10の内面に固定されている略円筒状の固定子21bと、この固定子21bの径方向内側にエアギャップを介して配置される回転子21aとを備えている。回転子21aは磁石(図示省略)を有し、固定子21bはコイルを有している。モータ21は、コイルに電流を流すことによって発生する電磁力によって、回転子21aを回転させる。また、固定子21bの外周面は、全周にわたって密閉ケーシング10の内周面に密着しておらず、固定子21bと密閉ケーシング10との間には、上下方向に貫通した隙間(図示省略)が形成されている。
【0054】
シャフト22は、駆動機構20の駆動力を圧縮機構30に伝達するために設けられている。シャフト22は、回転子21aの内周面に固定されており、回転子21aと一体的に回転する。また、シャフト22には、後述するシリンダ60のシリンダ室60a内に位置するように、偏心部22aが設けられている。偏心部22aは、略円柱形状であって、その軸心がシャフト22の回転中心から偏心している。偏心部22aの外周面には、後述するローラ61aが装着されており、シャフト22を回転させることにより、偏心部22aおよびローラ61aが偏心回転運動する。
【0055】
また、シャフト22の下側略半分の内部には、上下方向に延在する給油路22bが形成されている。給油路22bは、シャフト22(偏心部22aを含む)の側面に形成された複数の排出口22c〜22fと連通している。給油路22b内の下側部分には、螺旋羽根形状のポンプ部材(図示省略)が配置されている。ポンプ部材は、シャフト22の回転に伴って、油貯留部14の潤滑油を給油路22b内に吸い上げる機能を有している。吸い上げられた潤滑油は、排出口22c〜22fから排出されて、シャフト22(偏心部22aを含む)の外周面に供給される。
【0056】
圧縮機構30は、導入管11から導入された冷媒を圧縮するために設けられている。圧縮機構30は、シャフト22の回転軸方向に沿って上から下に向かって、マフラー部材40と、フロントヘッド(ヘッド部材)50と、シリンダ60及びピストン61と、リアヘッド70とを備えている。また、マフラー部材40の後述する当接部42の上面には、押圧部材80が配置されている。
【0057】
図1および図2に示すように、シリンダ60は、略円筒形状の部材であって、その外周面が密閉ケーシング10の内周面に固定されている。なお、図2ではシャフト22を省略している。シリンダ60には、水平断面が略円形状のシリンダ室60aと、このシリンダ室60aに連通し、導入管11が内嵌される導入路60bとが形成されている。シリンダ室60a内には、ピストン61が配置されている。シリンダ室60aは、フロントヘッド50に形成された吐出孔53c(図3参照)を介して後述するマフラー空間Aと連通している。また、図2に示すように、シリンダ60には、シリンダ室60aの径方向外側に、上下方向に貫通する複数の油戻し通路60cが形成されている。
【0058】
図1に示すように、ピストン61は、偏心部22aの外周面に回転可能に装着された円筒状のローラ61aと、このローラ61aの外周面からに径方向外側に延在し、先端がシリンダ60に揺動可能かつ前記延在方向に進退可能に支持されたブレード(図示省略)とから構成されている。シャフト22の回転により、ローラ61aはシリンダ室60aの内周面に接しつつ偏心回転運動する。これにより、ローラ61aの外周面とブレードとシリンダ室60aとによって囲まれる空間の容積が変化するため、シリンダ室60a内に導入された冷媒が圧縮される。
【0059】
図1に示すように、フロントヘッド(ヘッド部材)50は、シリンダ60の上面に固定され、シリンダ60のシリンダ室60aの上方の開口を閉塞する。図2〜図4に示すように、フロントヘッド50は、シャフト22が回転可能に内挿される軸受け孔51aが形成された環状円盤状の本体部51と、軸受け孔51aを囲むように当該本体部51から上方に突出する円筒状のボス部52とから構成されている。フロントヘッド50は、金属粉を焼結することで製造されているが、鋳造や削り出し加工等の焼結以外の方法で製造されていてもよい。
【0060】
図3および図4に示すように、本体部51の上面には、凹部53が形成されている。この凹部53は、平面視が扇状の扇状凹部53aと、扇状凹部53aの径方向の一辺から延在する弁収容凹部53bとから構成されている。扇状凹部53aの底面には、シリンダ室60aと連通し、シリンダ室60aにおいて圧縮された冷媒が吐出される吐出孔53cが形成されている。
【0061】
また、凹部53内には、吐出孔53cの出口を開閉する吐出弁54(図4参照、図3では図示省略)と、この吐出弁54の上面に配置され、吐出弁の開放を規制する押さえ部材(図示省略)とが配置されている。この吐出弁54と押さえ部材の基端部は、弁収容凹部53bの底面に形成されたピン嵌合孔53dに嵌め込まれたピン(図示省略)によって固定されている。シリンダ室60aから吐出孔53cに送られた冷媒の圧力により、吐出弁54の先端部(図4中の右端部)が上方に押し上げられて、吐出孔53cから冷媒が吐出される。このとき、吐出孔53cから吐出される冷媒は、吐出弁54によって誘導されて、主に図4中の左方向以外に噴出する。
【0062】
本体部51には、マフラー部材40を取り付けるためのボルト43が挿通されるボルト孔51c、51dが形成されている。ボルト孔51c、51dの内周面にはネジ溝が形成されている。なお、シリンダ60のボルト孔51c、51dに対応する位置に、ボルト43が螺合されるネジ孔が形成されている場合には、ボルト孔51c、51dにはネジ溝は形成されていなくてよい。本体部51の上面の外周側部分には、マフラー部材40の後述する当接部42の下面が当接する。上述した扇状凹部53aの外周縁は、マフラー部材40の下面と当接する部分と近接している。
【0063】
図3に示すように、マフラー部材40は、フロントヘッド50の上側に取り付けられており、フロントヘッド50との間にマフラー空間Aを形成している。この構成により、冷媒の吐出に伴う騒音の低減を図っている。図3および図5に示すように、マフラー部材40は、フロントヘッド50との間にマフラー空間Aを形成する突出部41と、フロントヘッド50の後述する本体部51の上面に当接する当接部42とから構成されている。マフラー部材40は、板金(金属平板)を絞り加工等することで製造されているが、絞り加工以外の方法で製造されていてもよい。
【0064】
突出部41には、フロントヘッド50の後述するボス部52が貫通する開口41aと、マフラー空間Aから冷媒を外部に吐出するための2つの吐出口41b、41cが形成されている。2つの吐出口41b、41cは、シャフト22を中心とした対称な位置(180°ずれた位置)に形成されている。
【0065】
当接部42は、環状であって、突出部41の下端から水平方向外側に延びている。当接部42には、ボルト43が挿通されるボルト孔42c、42dが形成された締結部42a、42bが設けられている。ボルト孔42c、42dは、フロントヘッド50のボルト孔51c、51dに対応する位置に形成されている。
【0066】
図3に示すように、押圧部材80は、マフラー部材40の当接部42の上面(フロントヘッド50と反対側の面)に配置され、ボルト43によってマフラー部材40と共にフロントヘッド50に取り付けられている。図6に示すように、押圧部材80は、平面視の形状が当接部42とほぼ同形状の環状であって、マフラー部材40の2つの締結部42a、42bと当接する2つの締結部81、82と、2つの円弧状部83、84とから構成されている。締結部81、82には、ボルト43が挿通されるボルト孔81a、82aが形成されている。図2および図3に示すように、このボルト孔42c、42dに挿通されるボルト43によって、押圧部材80は、マフラー部材40とともにフロントヘッド50に取り付けられている。
【0067】
押圧部材80(締結部81、82および円弧状部83、84)の下端面は、軸方向(図3中の上下方向)に直交した平坦状である。押圧部材80は、締結部81、82がボルト43によって当接部42と共にフロントヘッド50に締結された状態では、締結部81、82において当接部42をフロントヘッド50側に押圧しているとともに、円弧状部83、84においても当接部42を押圧している。つまり、押圧部材80は、当接部42を全周にわたってフロントヘッド50側に押圧している。
【0068】
押圧部材80は、焼結、鋳造または削り出し加工等で製造されている。また、押圧部材80は、複数の薄い金属平板を積層したものであってもよい。押圧部材80の剛性は、少なくとも、締結部81、82が締結されたときに、円弧状部83、84によってマフラー部材40をフロントヘッド50側に押圧可能な程度の剛性であって、マフラー部材40の剛性よりも高いことが好ましい。
【0069】
図1に示すように、リアヘッド70は、シリンダ60の下面に固定され、シリンダ60のシリンダ室60aの下方の開口を閉塞している。また、リアヘッド70には、シャフト22が回転可能に内挿されている。
【0070】
次に、圧縮機1の動作について説明する。
この圧縮機1では、導入管11および導入路60bを介してシリンダ室60aに冷媒を導入してから、モータ21の駆動によりローラ61aを偏心回転させることによって、シリンダ室60a内において冷媒を圧縮する。シリンダ室60aで圧縮された冷媒は、フロントヘッド50の吐出孔53cからマフラー空間A内に吐出された後、マフラー部材40の吐出口41b、41cを介して圧縮機構30の外部に吐出される。圧縮機構30から吐出された冷媒は、固定子21bと回転子21aとの間のエアギャップを通過した後、排出管12から排出される。
【0071】
以上説明した本実施形態の圧縮機1では、マフラー部材40の当接部42のうち、締結部42a、42b以外の部分を、押圧部材80の円弧状部83、84によって押圧してフロントヘッド50に密着させることができる。
したがって、マフラー部材40を絞り加工した際に当接部42にうねりが生じて当接部42が平坦状でない場合であっても、当接部42をフロントヘッド50に密着させることができる。
また、押圧部材80を設けない従来の圧縮機では、マフラー部材40の当接部42は、締結力が作用することにより、締結部42a、42bから離れた部分においてフロントヘッド50との密着性が低下するが、本実施形態では、押圧部材80を設けることにより、当接部42の締結部42a、42bから離れた部分を、フロントヘッド50に密着させることができる。
このように、本実施形態の圧縮機1では、マフラー部材40の当接部42とフロントヘッド50との密着性を向上させることができるため、当接部42とフロントヘッド50との間から冷媒が漏れ出るのを抑制することができる。
【0072】
また、押圧部材80は、当接部42を全周にわたってフロントヘッド50側に押圧しているため、当接部42を全周にわたってフロントヘッド50に密着させることができる。
【0073】
また、押圧部材80がマフラー部材40よりも剛性が高い場合、押圧部材80が当接部42を押圧する力を大きくすることができるため、当接部42とフロントヘッド50の密着性をより向上させることができる。
【0074】
また、本実施形態の圧縮機1は、冷媒として、吐出圧力脈動が大きく漏れが生じやすいCO冷媒を使用しているため、上述したような押圧部材80を用いたマフラー部材40とフロントヘッド50とのシール構造は、特に有効である。
【0075】
なお、本実施形態の押圧部材80の円弧状部83、84は、径方向長さが一定であるが、一定でなくてもよい。例えば、径方向長さが大きい部分と小さい部分とが周方向に交互に形成されていてもよい。
【0076】
また、本実施形態の押圧部材80の円弧状部83、84は、径方向長さがマフラー部材40の当接部42と同じであって、当接部42の径方向の全範囲を押圧するようになっているが、径方向長さが当接部42よりも短く、当接部42の径方向の一部を押圧するようになっていてもよい。
【0077】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。但し、上記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
図7に示すように、本実施形態の圧縮機は、押圧部材の構成が上記第1実施形態と異なっており、その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0078】
図8に示すように、本実施形態の押圧部材180は、平面視の外形が当接部42とほぼ同形状の環状の部材であって、2つの締結部181、182と、2つ円弧状部183、184とから構成されている。締結部181、182は、上記第1実施形態の締結部81、82とほぼ同じ形状である。
【0079】
円弧状部183、184は、平面視の形状が円弧形状であって、2つの締結部181、182をそれぞれ連結している。円弧状部183は、フロントヘッド50の吐出孔53cの径方向外側に配置される。
【0080】
図7に示すように、円弧状部183、184の下端部は、径方向中央部において下方(当接部42側)に突出している。即ち、円弧状部183、184の下端部は、下方に向かって断面積が小さくなっている。この突出した部分を突出部183a、184aとする。図8に示すように、突出部183a、184aは、周方向に延在しており、円弧状部183、184の周方向全域に形成されている。
【0081】
また、突出部183a、184aの先端は、押圧部材180が当接部42上に配置されて締結される前の状態において、締結部181、182の下端面と同一平面上に位置している。押圧部材180は、ボルト締結された状態では、締結部181、182において当接部42をフロントヘッド50側に押圧しているとともに、突出部183a、184aの突出先端においても当接部42をフロントヘッド50側に押圧している。つまり、押圧部材80は、当接部42を全周にわたってフロントヘッド50側に押圧している。
【0082】
押圧部材180は、焼結、鋳造または削り出し加工等によって製造されている。押圧部材180の剛性は、上記第1実施形態の押圧部材80と同様である。
【0083】
本実施形態によると、押圧部材180の突出部183a、184aの突出先端によって、マフラー部材40の当接部42をフロントヘッド50側に押圧することができるため、上記第1実施形態のように突出部を設けずに広い面で均一に当接部42を押圧する場合に比べて、局所的に面圧を高くできる。したがって、当接部42とフロントヘッド50とをより確実に密着させることができる。
【0084】
また、押圧部材180は環状であって、当接部42を全周にわたってフロントヘッド50側に押圧しているため、第1実施形態と同様に、当接部42とフロントヘッドとを全周にわたって密着させることができる。
【0085】
また、円弧状部183、184の突出部183a、184aは、突出先端に向かって断面積が小さくなる形状であるため、突出部の先端が平坦状の場合に比べて、当接部42を押圧する面圧を大きくすることができ、当接部42とフロントヘッド50との密着性を向上させることができる。
【0086】
なお、本実施形態の押圧部材180の円弧状部183、184は、径方向長さがマフラー部材40の当接部42の締結部42a、42b以外の部分の径方向長さと同じであるが、それよりも短くても、長くてもよい。
【0087】
また、本実施形態の押圧部材180の突出部183a、184aは、突出先端が円弧状部183、184の径方向中央に形成されているが、突出先端の位置はこれに限定されない。
例えば、図9(a)に示す押圧部材1180の突出部1183aのように、突出先端が、円弧状部183の外周側に形成されていてもよい。
また、例えば、図9(b)に示す押圧部材2180の突出部2183aのように、突出先端が、円弧状部183の内周側に形成されていてもよい。
また、例えば、図9(c)に示す押圧部材3180のように、複数(図9(c)では2つ)の突出部3183a、3983cが径方向に並んで形成されていてもよい。
【0088】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。但し、上記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
本実施形態の圧縮機は、押圧部材の構成が上記第1実施形態と異なっており、その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0089】
図10および図11(a)に示すように、本実施形態の押圧部材280は、平面視の外形が当接部42とほぼ同形状の環状の部材であって、2つの締結部281、282と、2つの締結部181、182の間にそれぞれ配置されている2つの連結部283、284と、連結部283に設けられた突出部285と、連結部284に設けられた突出部286とから構成されている。締結部281、282は、上記第1実施形態の締結部81、82とほぼ同じ形状である。
【0090】
図10に示すように、連結部283は、平面視の形状が円弧形状であって、2つの締結部281、282を連結している。連結部283は、フロントヘッド50の吐出孔53cの径方向外側に位置している。図11(a)に示すように、連結部283の上端面は、締結部281、282の上端面と同一平面に形成されている。連結部283の軸方向(図11中の上下方向)の長さは、締結部281、282の軸方向長さよりも小さい。また、連結部283の上下端面は、押圧部材280が当接部42上に配置されて締結される前の状態において、軸方向に直交している。連結部284は、連結部283よりも周方向長さが短い点以外は、連結部283と同様の形状である。
【0091】
図11(a)に示すように、突出部285、286は、連結部283、284の下面から下方(当接部42側)に突出し、連結部283、284の周方向に沿って延在している。
【0092】
図10に示すように、突出部285の周方向長さSは、連結部283の周方向長さLの略半分である。突出部285の周方向中央の位置は、連結部283の周方向中央の位置(即ち、締結部281、282との間の周方向中央の位置)とほぼ同じである。なお、本実施形態では、連結部283の周方向中央の位置と、フロントヘッド50の吐出孔53cの径方向外側の位置とはほぼ同じである。突出部285は、扇状凹部53aの径方向外側の領域を含む範囲に形成されている。
【0093】
また、突出部286の周方向長さSは、連結部284の周方向長さLの略半分である。突出部286の周方向中央の位置は、連結部284の周方向中央の位置(即ち、締結部281、282との間の周方向中央の位置)とはほぼ同じである。
【0094】
突出部285、286は、径方向断面が矩形状であり、突出先端は平坦状に形成されている。したがって、連結部283と突出部285(連結部284と突出部286)の径方向断面は、上記第1実施形態の円弧状部83(84)の径方向断面(図3参照)と同様の形状である。
【0095】
突出部285、286の先端面は、押圧部材280が当接部42上に配置されて締結される前の状態において、締結部281、282の下端面を含む平面(図11(a)中二点鎖線で表示)よりも下方に突出している。突出部285と突出部286の該平面からの突出高さは互いに同じであっても、異なっていてもよい。図11(b)に示すように、押圧部材280は、締結部281、282がボルト43によって当接部42と共にフロントヘッド50に締結されたとき、連結部283、284がたわみ変形して、突出部285、286の先端面が、締結部281、282の下端面を含む平面と同一面となり、締結部281、282において当接部42をフロントヘッド50側に押圧するとともに、突出部285、286においても当接部42をフロントヘッド50側に押圧する。
【0096】
押圧部材280は、焼結、鋳造または削り出し加工等によって製造されている。また、押圧部材280は、連結部283、284に、突出部285、286が接着剤によって接着されることで製造されていてもよい。
【0097】
押圧部材280の剛性は、ボルト締結されたときに、締結部281、282と突出部285、286とが当接部42に接触可能となるようにたわみ変形可能で、かつ、突出部285、286によって当接部42をフロントヘッド50側に押圧可能であるような剛性である。また、マフラー部材40の剛性にもよるが、上記条件を満たす範囲であれば、押圧部材280はマフラー部材40よりも高い剛性を有することが好ましい。
【0098】
本実施形態によると、押圧部材280の突出部285、286の突出先端によって、マフラー部材40の当接部42をフロントヘッド50側に押圧することができるため、上記第1実施形態のように突出部を設けずに広い面で均一に当接部42を押圧する場合に比べて、局所的に面圧を高くできる。したがって、当接部42とフロントヘッド50とをより確実に密着させることができる。
【0099】
また、突出部285、286は、連結部283、284の周方向中央の位置(締結部281、282の間の周方向中央の位置)に形成されているため、当接部42とフロントヘッド50との当接部分のうち、締結力が作用することによって密着性が低くなりやすい2つのボルト43の間の周方向中央の部分の密着性を向上させることができる。
【0100】
また、突出部285は、フロントヘッド50の凹部53の径方向外側に形成されているため、当接部42とフロントヘッド50との当接部分のうち、冷媒の圧力脈動が大きいために冷媒の漏れが生じやすい凹部53の径方向外側の部分の密着性を向上させることができる。
さらに、突出部285は、フロントヘッド50の吐出孔53cの径方向外側の位置に形成されているため、特に多量の冷媒が漏れやすい凹部53の径方向外側の当接部分の密着性を向上させることができる。
【0101】
また、ボルト締結前の状態において、突出部285、286は、締結部281、282の下端面を含む平面から突出しているため、突出していない場合に比べて、突出部285、286による押圧力を大きくすることができ、当接部42とフロントヘッド50との密着性を向上させることができる。
【0102】
なお、押圧部材280の突出部285、286の周方向長さおよび形成位置は、本実施形態で示したものに限定されない。
突出部285、286の周方向長さを本実施形態よりも短くする場合には、例えば、図12(a)に示す押圧部材1280の突出部1285、1286のように、その周方向中央の位置が、連結部283、284の周方向中央の位置に一致することが好ましい。
また、例えば、図12(b)に示す押圧部材2280の突出部2285のように、フロントヘッド50の扇状凹部53aの径方向外側にのみ形成してもよい。この場合には、突出部2285の周方向中央の位置は、連結部283の周方向中央の位置に一致していなくてよい。フロントヘッド50の扇状凹部53aの外縁部がマフラー部材40と当接する部分に近接していること、および、吐出孔53cから吐出された冷媒の吐出方向が図4中の左方向以外の方向であることから、押圧部材を設けない従来の圧縮機では、扇状凹部53aの径方向外側において特に冷媒の漏れが生じやすくなっている。そのため、図12(b)に示すような押圧部材2280を用いることにより、突起部2285の周方向長さが短くても、冷媒の漏れを効果的に抑制できる。
【0103】
また、本実施形態の押圧部材280は、締結前の状態において、突出部285、286が、ボルト締結部281、282の下端面を含む平面よりも下方に突出しているが、突出先端が該平面上に位置していてもよい。
【0104】
また、本実施形態の押圧部材280の突出部285、286は、突出先端が当接部42に面接触するように平坦状に形成されているが、突出先端の形状は、上記第2実施形態のように、周方向に沿って線接触する形状であってもよい。
【0105】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。但し、上記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
本実施形態の圧縮機は、押圧部材の構成が上記第1実施形態と異なっており、その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0106】
図13および図14(a)に示すように、本実施形態の押圧部材380は、平面視の外形が当接部42とほぼ同形状の環状の部材であって、2つの締結部381、382と、2つの締結部381、382の間にそれぞれ配置されている2つの連結部383、383と、連結部383に設けられた3つの突出部385〜387と、連結部384に設けられた3つの突出部388〜390とから構成されている。
締結部381、382は、上記第1実施形態の締結部81、82とほぼ同じ形状であり、連結部383、384は、上記第3実施形態の押圧部材280の連結部283、284と同じ形状である。
【0107】
図14(a)に示すように、突出部385〜387および突出部388〜390は、連結部383および連結部384の下面から下方(当接部42側)に突出している。
【0108】
図13に示すように、突出部386は、連結部383の周方向中央の位置(即ち、締結部381、382との間の周方向中央の位置)に形成されており、突出部385および突出部387は、突出部386から周方向に逆方向に同じ距離だけ離れた位置に形成されている。なお、本実施形態では、連結部383の周方向中央の位置と、フロントヘッド50の吐出孔53cの径方向外側の位置とはほぼ同じである。また、突出部385と締結部381との間隔(突出部387と締結部382との間隔)は、突出部385〜387の配置間隔とほぼ同じである。
【0109】
また、突出部389は、連結部384の周方向中央の位置(即ち、締結部381、382との間の周方向中央の位置)に形成されており、突出部388および突出部390は、突出部389から周方向に逆方向に同じ距離だけ離れた位置に形成されている。また、突出部388と締結部381との間隔(突出部390と締結部382との間隔)は、突出部388〜390の配置間隔とほぼ同じである。
【0110】
突出部385〜390は、略直方体状であって、突出先端が平坦状に形成されている。突出部385〜390の先端面は、押圧部材380が締結される前の状態において、締結部381、382の下端面を含む平面よりも下方に突出している。突出部385と突出部387の該平面からの突出高さH2は互いに同じであり、突出部386の該平面からの突出高さH1は、突出部385、387の突出高さH2よりも大きい。また、図示は省略するが、突出部388と突出部390の該平面からの突出高さは互いに同じであり、突出部386の該平面からの突出高さは、突出部385、387の突出高さよりも大きい。突出部386と突出部389の該平面からの突出高さは同じであっても、異なっていてもよい。また、突出部385、387と、突出部388、390の該平面からの突出高さは同じであっても、異なっていてもよい。
【0111】
図14(b)に示すように、押圧部材380は、締結部381、382がボルト43によって当接部42と共にフロントヘッド50に締結されたとき、連結部383、384がたわみ変形して、突出部385〜390の先端面が、締結部381、82の下端面を含む平面と同一面となり、締結部381、382において当接部42をフロントヘッド50側に押圧するとともに、突出部385〜390においても当接部42をフロントヘッド50側に押圧する。
【0112】
押圧部材380は、焼結、鋳造または削り出し加工等によって製造されている。また、押圧部材380は、連結部383および連結部384に、突出部385〜387および突出部388〜390が接着剤によって接着されることで製造されていてもよい。
【0113】
押圧部材380の剛性は、締結されたときに、締結部381、382と突出部385、387、388、390とが当接部42に接触可能となるようにたわみ変形可能で、かつ、突出部385〜390によって当接部42をフロントヘッド50側に押圧可能であるような剛性である。また、マフラー部材40の剛性にもよるが、上記条件を満たす範囲であれば、押圧部材380はマフラー部材40よりも高い剛性を有することが好ましい。
【0114】
本実施形態によると、押圧部材380の突出部385〜390の突出先端によって、マフラー部材40の当接部42をフロントヘッド50側に押圧することができるため、上記第1実施形態のように突出部を設けずに広い面で均一に当接部42を押圧する場合に比べて、局所的に面圧を高くできる。したがって、当接部42とフロントヘッド50とをより確実に密着させることができる。
【0115】
また、突出部386、389は、連結部383、384の周方向中央の位置(2つの締結部381、382の間の周方向中央の位置)に形成されているため、当接部42とフロントヘッド50との当接部分のうち、締結力が作用することによって密着性が低くなりやすい2つのボルト43の間の周方向中央の部分の密着性を向上させることができる。
【0116】
また、突出部386、387は、フロントヘッド50の凹部53の径方向外側に形成されているため、当接部42とフロントヘッド50との当接部分のうち、冷媒の圧力脈動が大きいために冷媒の漏れが生じやすい凹部53の径方向外側の部分の密着性を向上させることができる。
さらに、突出部386は、フロントヘッド50の吐出孔53cの径方向外側の位置に形成されているため、特に多量の冷媒が漏れやすい吐出孔53cの径方向外側の当接部分の密着性を向上させることができる。
【0117】
また、ボルト締結前の状態において、突出部385〜390は、締結部381、382の下端面を含む平面から突出しているため、突出していない場合に比べて、突出部385〜390による押圧力をより大きくすることができ、当接部42とフロントヘッド50との密着性を向上させることができる。
【0118】
さらに、ボルト締結前の状態において、突出部385〜387のうち突出部386が最も突出しているため、この突出部386によって、当接部42をフロントヘッド50に確実に密着させることができる。また、ボルト締結前の状態において、突出部388〜390のうち突出部389が最も突出しているため、この突出部389によって、当接部42をフロントヘッド50に確実に密着させることができる。
【0119】
なお、本実施形態の押圧部材380では、ボルト締結前の状態において、突出部385と突出部387とは、締結部381、382の下端面を含む平面からの突出高さH2が互いに同じであるが、異なっていてもよい。突出部388と突出部390についても同様である。
【0120】
また、本実施形態の押圧部材380では、ボルト締結前の状態において、突出部386は、締結部381、382の下端面を含む平面からの突出高さH1が、突出部385、387の該平面からの突出高さH2よりも大きいが、図15(a)に示す押圧部材1380のように、3つの突出部1385〜1387は、該平面からの突出高さが全て同じであってもよい。突出部388〜390についても同様である。
【0121】
また、本実施形態の押圧部材380では、ボルト締結前の状態において、突出部385〜390の突出先端は全て、締結部381、382の下端面を含む平面から突出しているが、この構成に限定されない。
例えば、図15(b)に示す押圧部材2380のように、3つの突出部2385〜2387のうち中央の突出部2386の突出先端のみが該平面から突出し、突出部2385、2387の突出先端が該平面上に位置していてもよい。
また、例えば、図15(c)に示す押圧部材3380のように、突出部3385〜3387の突出先端が、全て該平面上に位置していてもよい。この場合、押圧部材3380の剛性は、本実施形態の剛性よりも高く、第1および第2実施形態と同様の剛性であることが好ましい。
また、例えば、連結部384に形成された突出部388〜390の突出先端は該平面上に位置し、連結部383に形成された突出部385〜397の突出先端は本実施形態と同様に該平面から突出していてもよい。
【0122】
また、本実施形態の押圧部材380では、突出部385〜387のうち最も突出している突出部386、および、突出部388〜390のうち最も突出している突出部389は、それぞれ連結部383、384の周方向中央の位置に形成されているが、最も突出している突出部386、389の形成位置はこの位置に限定されない。
例えば、図16(a)に示す押圧部材4380のように、連結部383に設けられた3つの突出部4385〜4387のうち、最も突出している突出部4386を、扇状凹部53aの周方向中央の位置に形成してもよい。
また、本実施形態では、連結部383の周方向中央の位置と、フロントヘッド50の吐出孔53cの径方向外側の位置とがほぼ同じであるが、この2つの位置が異なっている場合、最も突出している突出部を、フロントヘッド50の吐出孔53cの径方向外側の位置に形成してもよい。
【0123】
また、本実施形態の押圧部材380では、突出部385〜387は、周方向に等間隔で離れているが、離間間隔は等間隔でなくてもよい。突出部388〜390についても同様である。
【0124】
また、本実施形態の押圧部材380では、1つの連結部383(384)に対して3つの突出部385〜387(388〜390)を設けているが、1つの連結部に対する突出部の数は3つに限定されるものではない。2つ以下であっても、4つ以上であってもよい。
例えば、図16(b)に示す押圧部材5380のように、連結部383に6つの突出部5385〜5390が形成されていてもよい。6つの突出部5385〜5390のうち突出部5387〜5389は、扇状凹部53aの径方向外側に形成されており、突出部5388は、扇状凹部53aの周方向中央の位置に形成されており、突出部5387は、連結部383のほぼ周方向中央に形成されている。この構成によると、本実施形態よりも周方向に広い範囲において、当接部42とフロントヘッド50との密着性を向上させることができる。
この押圧部材5380の場合、ボルト締結前の状態において6つの突出部5385〜5390のうち最も突出しているのは、突出部5387であっても、突出部5388であっても、3つの突出部5387〜5389であってもよい。
【0125】
また、本実施形態の押圧部材380の突出部385〜390は、突出先端が当接部42に面接触するように平坦状に形成されているが、突出先端の形状は、当接部42に線接触または点接触する形状(即ち、先端に向かって断面積が小さくなる形状)でよい。
例えば、図17(a)に示す押圧部材6380の突出部6385のように、突出先端が、径方向に沿って線接触する形状でもよい。
また、例えば、図17(b)に示す押圧部材7380の突出部7385のように、突出先端が、当接部42の内周側において周方向に沿って線接触する形状でもよい。
また、例えば、図17(c)に示す押圧部材8380の突出部8385のように、突出先端が点接触する形状でもよい。
また、周方向に線接触または点接触する形状の場合、例えば、図17(d)に示す押圧部材9380のように、複数(図17(d)では2つ)の突出部9385a、9385bが径方向に並んで形成されていてもよい。
【0126】
以上、本発明の実施形態について説明したが、具体的な構成は、上記第1〜第4実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記第1〜第4実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0127】
例えば、上記第1〜第4実施形態の押圧部材では、ボルト締結前の状態において、円弧状部または連結部(第3実施形態の場合、連結部と突出部)は、軸方向に直交しているが、周方向の一部において下方(当接部42側)に突出(湾曲)していてもよい。
例えば、図18(a)に示す押圧部材480の円弧状部483は、上記第1実施形態の押圧部材80の円弧状部83を、周方向方向の一部において下方に突出(湾曲)させたような形状である。最も突出した部分483aが、本発明の突出部に相当する。突出部483aの位置は、円弧状部483の周方向中央の位置(フロントヘッドの吐出孔53cの径方向外側の位置)か、フロントヘッド50の扇状凹部50aの径方向外側の位置とすることが好ましい。押圧部材480の剛性および湾曲角度(突出量)は、ボルト締結時に締結部481、482の下面が当接部42に当接可能に設定する。この構成によると、突出部483aによって、当接部42をフロントヘッド50側に押圧することができるため、局所的に面圧を高くできる。
なお、上記第2実施形態の円弧状部183、184、または、上記第3実施形態の連結部283、284および突出部285、286を、周方向の一部において下方に突出(湾曲)させた場合も、上記と同様の効果が得られる。
また、図18(b)に示す押圧部材580の連結部583は、上記第4実施形態の押圧部材380の連結部383を、周方向方向の略中央において下方に突出(湾曲)させたような形状である。連結部383をこのような形状とすることにより、ボルト締結前の状態において、3つの突出部585〜587は、連結部583の下面からの突出高さが同じであっても、締結部581、582の下端面を含む平面からの突出高さが互いに異なるようにできる。
【0128】
また、上記第1〜第4実施形態では、押圧部材は環状の部材であるが、半環状の部材であってもよい。例えば、図19に示すように、2つの締結部681、682と、円弧状部683とで構成された押圧部材680でもよい。円弧状部683は、上記第1または第2実施形態の円弧状部、または、上記第3または第4実施形態の連結部および突出部と同様の形状である。
【0129】
また、上記第1〜第4実施形態では、押圧部材は1つの部材で構成されているが、分割可能な複数の部材で構成されていてもよい。例えば、図20(a)に示すように、2つの半環状の押圧部材片780a、780bからなる押圧部材780でもよい。押圧部材片780aは、2つの締結部781a、782aと、円弧状部783aとで構成されている。押圧部材片780bは、締結部781a、782aの上に配置される2つの締結部781b、782bと、円弧状部783bとで構成されている。なお、円弧状部783a、783bの形状は、図20(b)では、上記第1実施形態の円弧状部83と同様の形状であるが、上記第2実施形態の円弧状部、または、上記第3または第4実施形態の連結部および突出部と同様の形状であってもよい。
【0130】
また、上記実施形態の圧縮機構30は、マフラー部材40とフロントヘッド50とが、2つのボルト43によって固定されているが、3つ以上のボルト43で固定されていてもよい。
【0131】
また、上記実施形態の圧縮機は、冷媒としてCO2を用いているが、CO2冷媒以外の冷媒を用いてもよい。
【0132】
また、上記実施形態では、フロントヘッド50の上に1枚のマフラー部材40が配置された1重マフラ構造の圧縮機に本発明を適用した例について説明したが、フロントヘッド50の上に2枚のマフラー部材が配置され、上下2つのマフラ空間が形成された2重マフラ構造の圧縮機にも本発明は適用可能である。この場合、押圧部材は、上側のマフラー部材の上に配置される。なお、フロントヘッド50に押圧される下側のマフラー部材が、本発明のマフラー部材に相当する。
【0133】
また、上記実施形態では、1シリンダ型の圧縮機に本発明を適用した例について説明したが、例えば、2シリンダ型の圧縮機にも本発明は適用可能である。この場合、リア側のマフラ部材とリアヘッドとのシール構造にも本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明を利用すれば、マフラー部材とヘッド部材とを密着させて、マフラー部材とヘッド部材との間から冷媒が漏れるのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0135】
1 圧縮機
22 シャフト(軸部材)
30 圧縮機構
40 マフラー部材
42 当接部(当接部)
43 ボルト(締結部材)
50 フロントヘッド(ヘッド部材)
51a 軸受け孔
53 凹部
53c 吐出孔
80、180、280、380、480、580、680、780、1180、1280、1380、2180、2280、2380、3180、3380、4380、5380、6380、7380、8380、9380 押圧部材
81、82、181、182、281、282、381、382、481、482、581、582、681、682、781a、781b、782a、782b 締結部
183a、184a、285、286、385〜390、483a、585〜587、1183a、1285、1286、1385〜1387、2183a、2285、2286、2385〜2837、3183a、3385〜3837、4385〜4837、5385〜5390、6385、7385、8385、9385 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮された冷媒を吐出する吐出孔が形成されたヘッド部材と、複数の締結部材によって前記ヘッド部材に取り付けられるマフラー部材とのシール構造であって、
前記マフラー部材は、前記ヘッド部材に当接する環状の当接部を有しており、
前記当接部の前記ヘッド部材と反対側に配置され、複数の前記締結部材によって前記当接部とともに前記ヘッド部材に取り付けられる押圧部材を備え、
前記押圧部材は、周方向に隣接する2つの前記締結部材によって締結される2つの締結部の間の部分において、前記当接部を前記ヘッド部材に押圧することを特徴とするシール構造。
【請求項2】
前記押圧部材が、前記当接部を全周にわたって前記ヘッド部材に押圧することを特徴とする請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記ヘッド部材上に配置されて締結される前の状態において、周方向に隣接する前記2つの締結部の間に、前記当接部に向かって突出する突出部を有していることを特徴とする請求項1または2に記載のシール構造。
【請求項4】
前記押圧部材は、前記ヘッド部材上に配置されて締結される前の状態において、前記突出部が、前記2つの締結部の先端を含む平面より前記当接部側に突出した部分を含むことを特徴とする請求項3に記載のシール構造。
【請求項5】
前記突出部は、周方向に隣接する2つの前記締結部の間の周方向中央に対応した位置に配置されることを特徴とする請求項3または4に記載のシール構造。
【請求項6】
前記突出部は、前記2つの締結部の間の周方向中央に対応した位置において最も突出することを特徴とする請求項5に記載のシール構造。
【請求項7】
前記ヘッド部材は、前記当接部と当接する部分の径方向内側に配置され、前記吐出孔が形成された凹部を有しており、
前記突出部は、前記ヘッド部材の前記凹部の径方向外側に配置されることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載のシール構造。
【請求項8】
前記突出部は、前記ヘッド部材の前記凹部の径方向外側において最も突出することを特徴とする請求項7に記載のシール構造。
【請求項9】
前記突出部は、前記ヘッド部材の前記吐出孔の径方向外側に配置されることを特徴とする請求項7または8に記載のシール構造。
【請求項10】
前記突出部は、突出先端に向かって断面積が小さくなっていることを特徴とする請求項3〜9のいずれかに記載のシール構造。
【請求項11】
前記突出部は、前記2つの締結部の間の部分において、周方向に離れた位置に複数配置されていることを特徴とする請求項3〜10のいずれかに記載のシール構造。
【請求項12】
前記押圧部材は、前記マフラー部材よりも剛性が高いことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のシール構造。
【請求項13】
前記冷媒が、COであることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のシール構造。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のシール構造を備えることを特徴とする圧縮機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate