説明

シール溝、シール材

【課題】例えば、曲面と平面が滑らかに繋がった面構成の部材面にシール溝を形成する場合に、平面でも曲面でも同じ断面形状になるシール溝と、これに取り付けられるシール材を提供する。
【解決手段】シール材2を嵌め込むシール溝1は、逆Ω形状のように入口1A付近が括れていて、奥1Bがその入口1A付近の括れより広い円形の断面形状になるようにする。このような断面形状のシール溝1に嵌め込むシール材2は、前記シール溝1の奥1Bの断面形状に対応する円形部2Bと、この円形部2Bから突出した突出部2Aとを備えた形状にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材を嵌め込むシール溝と、該シール溝に嵌め込んで使用されるシール材に関し、特に、曲面と平面が滑らかに繋がった面構成の部材面にシール溝を形成する場合に、平面でも曲面でも同じ断面形状のシール溝が得られるようにすることで、シール性能の向上を図れるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1のゲートバルブではOリングからなるシール材(4)を使用しており、かかるシール材(4)は図示しない溝を利用して閉鎖部材(3)の密封面(1)に取り付けている(同文献の図1(b)、第4頁左上欄第17行−18行を参照)。
【0003】
Oリングからなるシール材(4)の取付けに利用される溝(以下「シール溝」という)として、アリ溝は周知である(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
ところで、特許文献1のシール材(4)の取付け面、すなわち密封面(1)は図4のように曲面S2と平面S1とが滑らかに繋がった面構成になっている。かかる平面S1と曲面S2に亘って連続するシール溝として周知のアリ溝を形成する場合は、アリ溝の断面形状と同じ断面形状の刃部を備えたエンドミル(以下「アリ溝カッター30」という)を使用し、平面S1では該平面S1に沿ってアリ溝カッター30を平行移動させて行き、曲面S2になったら該曲面S2から所定距離だけ離れた点Pを中心にアリ溝カッター30を旋回させるようにする。
【0005】
しかしながら、旋回するアリ溝カッター30先端の刃部30Aは、図4のように旋回方向前方部よりも後方部の方が外側に若干張り出して移動する。このため、図4のBのように平面S1に形成されるアリ溝の底面に比べ、曲面S2に形成されるアリ溝の底面は図4のAのように円弧面になって深くなり、平面S1と曲面S2とで同じ断面形状のアリ溝(シール溝)を得ることができない。
【0006】
前記のように平面S1と曲面S2に亘って連続的に形成したアリ溝(シール溝)を利用してシール材(4)を取付ける場合は、シール材(4)を平面S1と曲面S2のアリ溝(シール溝)に圧入で嵌め込み、嵌め込んだシール材(4)先端が平面S1と曲面S2から突出するように設置するが、前述のように曲面S2でアリ溝(シール溝)が深いと、曲面S2から突出しているシール材(4)部分が他の部分に比べて低くなり、シール材の突出高さにバラツキが生じることから、シール性能の低下を招く等の問題点がある。
【0007】
尚、前記カッコ内の符号は特許文献1で用いられている符号である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−113178号公報
【0009】
【特許文献2】特開2003−240123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、例えば、曲面と平面が滑らかに繋がった面構成の部材面にシール溝を形成する場合に、平面でも曲面でも同じ断面形状になるシール溝と、これに取り付けられるシール材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、シール材を嵌め込むシール溝であって、前記シール溝は、逆Ω形状のように入口付近が括れ、奥がその入口付近の括れより広い円形の断面形状になっていることを特徴とする。
【0012】
本発明は、シール溝に嵌め込まれるシール材であって、前記シール溝は、逆Ω形状のように入口付近が括れ、奥がその入口付近の括れより広い円形の断面形状になっていて、前記シール材は、前記シール溝の奥の断面形状に対応する円形部と、この円形部から突出した突出部とを備えた形状になっていることを特徴とする。
【0013】
本発明において「逆Ω形状のように」とは、シール溝の断面形状の一例として逆Ω形状が含まれることを意味するものであり、シール溝の断面形状を逆Ω形状のみに限定する趣旨ではない。シール溝の入口付近が括れていて、そのシール溝の奥が入口付近の括れより広い円形の断面形状であるなら、そのシール溝は本発明の「シール溝」に含まれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、シール溝の具体的な断面形状として「逆Ω形状のように入口付近が括れ、奥がその入口付近の括れより広い円形の断面形状」を採用した。このため、曲面と平面が滑らかに繋がった面構成の部材面にシール溝を形成する場合に、平面でも曲面でも同じ断面形状のシール溝が得られ、従来のシール溝(アリ溝)のように平面と曲面で深さが異なることもなく、よって、シール溝から突出するシール材の突出高さが均一になり、シール性能の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明に係るシール溝の断面図、(b)は(a)のシール溝を形成するための溝カッターの正面図、(c)は本発明に係るシール材の断面図、(d)は(c)のシール材を(a)のシール溝に嵌め込んだ状態の断面図。
【図2】平面と曲面が滑らかに繋がった部材面に、図1(b)の溝カッターを使用して図1(a)のシール溝を形成する時の溝カッター動作説明図。
【図3】図1(a)のシール溝及び図1(c)のシール材を適用したゲートバルブ(開の状態)の斜視図。
【図4】平面と曲面が滑らかに繋がった部材面に、アリ溝カッターを使用してシール溝を形成する時のアリ溝カッター動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1(a)は、本発明に係るシール溝の断面図である。同図のシール溝1は、逆Ω形状のように、入口1A付近が括れ、奥1Bがその入口1Aの括れより広い円形の断面形状になっている。
【0018】
図1(b)は、同図(a)のシール溝を形成するための溝カッターの説明図である。この溝カッター3の刃部3Aは、円錐台の先端に球体が結合した形状になっていて、その円錐台と球体の一部を刃物となるように鋭く切り欠いてある。尚、円錐台と球体の境界部付近の断面形状はシール溝1の入口1A付近の括れの断面形状に対応し、また、球体の断面形状はシール溝1の奥1Bの断面形状(円形)に対応している。従って、円錐台と球体の境界部付近の刃物で部材面を切り込むことにより、シール溝1の入口1A付近の括れが形成される一方、球体の部分の刃物で部材面を切り込むことにより、シール溝1の奥1Bの断面形状(円形)が形成される。
【0019】
図2は、平面S1と曲面S2が滑らかに繋がった部材面に、図1(b)の溝カッター3を使用して図1(a)のシール溝1を形成する時の溝カッター動作説明図である。図2の例では、図上一番上に位置する平面S1から曲面S2、平面S1、曲面S2、平面S1の順に図1(b)の溝カッター3を移動させてシール溝1を形成しており、平面S1では該平面S1に沿って溝カッター3を平行移動させ、曲面S2では該曲面S2から所定距離だけ離れた点Pを中心に溝カッター3を旋回させるようにしている。
【0020】
先に説明したように図1(a)のシール溝1はその奥1Bが円形の断面形状になっており、これに対応して溝カッター3の刃部3A最先端(球体)の断面形状も円形になっている(図1(b)参照)。このため、平面S1でも曲面S2でもシール溝1の奥1Bの断面形状は円形になる。また、曲面S2において旋回する溝カッター3の刃部3A先端は図2のようにその旋回方向前方部と後方部の双方が同じ軌跡で移動する。この際、図4の従来のアリ溝カッター30のように旋回方向前方部よりも後方部の方が外側に張り出すことはないので、平面S1と曲面S2に形成されるシール溝1の断面形状は図2のAとBのように同一になる。
【0021】
図1(c)は、本発明に係るシール材の断面図であり、図1(d)は、同図(c)のシール材を同図(a)のシール溝に嵌め込んだ状態の断面図である。
【0022】
同図(c)のシール材2は、同図(a)のシール溝1に嵌め込むゴム等の弾性体からなるシール材であって、シール溝1の奥1Bの断面形状に対応する円形部2Bと、円形部2Bから突出した突出部2Aとを備えている。そして、シール材2の円形部2Bをシール溝1の入口1Aから奥1Bへ押し込む圧入方式により、同図(d)のように、シール材2はシール溝1に嵌め込まれ、そのシール材2の突出部2A先端だけがシール溝入口1Aから外部に飛び出るように配置される。
【0023】
図3は図1(a)のシール溝及び図1(c)のシール材を適用したゲートバルブ(開の状態)の斜視図である。
【0024】
同図のゲートバルブGVは、受け面4を有する受け部材5と、受け面4に対向する押付け面6を有する押付け部材7と、受け面4に一端を開口したゲート8と、受け面4と押付け面6との間に介在し、ゲート8の受け面4側開口端周囲の隙間をシールするシール材2と、を備えている。
【0025】
前記シール材2は、図1(c)のシール材2からなり、押付け部材7の押付け面6に取り付けてある。また、押付け面6と受け面4は、いずれも、ゲート8に通されたシート状部材Wの部材面と平行な平面4A、6A、及びそのシート状部材Wの部材面に対して傾斜した平面4B、6Bを有し、かつ、それぞれの平行な平面4A、6Aどうしが互いに対向し、それぞれの傾斜した平面4B、6Bどうしが互いに対向するようになっている。さらに、傾斜した平面4B、6Bと平行な平面4A、6Aとの境界はそれぞれの面に滑らかに連続する曲面4C、6Cになっている。
【0026】
以上の構成からなる本ゲートバルブGVでは、先に説明した押付け面6の平面6A、6Bと曲面6Cに図1(a)のシール溝1(図3ではシール溝を省略)が連続して形成してあり、この押付け面6のシール材2は図1(d)のように当該シール溝1に嵌め込むことによって押付け面6に取付けてある。尚、シール材2は受け面4に取り付けてもよく、この場合は受け面4の平面4A、4Bと曲面4Cに図1(a)のシール材取付け用のシール溝1が形成される。
【0027】
尚、図3のゲートバルブGVは、ゲート8にシート状部材Wを通した状態で、押付け面6を受け面4に押付けると、押付け面6によりゲート8の受け面4側開口端が塞がれるとともに、シール材2によりゲート8の受け面4側開口端周囲の隙間がシールされる。
【0028】
先に説明した通り、図1(a)のような断面形状のシール溝1によると、平面4A、4B、6A、6B(S1)でも曲面4C、6C(S2)でも同じ断面形状になるので、従来のシール溝(アリ溝)のように平面と曲面で深さが異なることもなく、よって、シール溝1から突出するシール材2の突出高さが均一になり、ゲートバルブGVのシール性能の向上を図れる。
【符号の説明】
【0029】
1 シール溝
1A シール溝の入口
1B シール溝の奥
2 シール材
2A シール材の突出部
2B シール材の円形部
3 溝カッター
3A 溝カッターの刃部
4 受け面
5 受け部材
6 押付け面
7 押付け部材
8 ゲート
30 アリ溝カッター
W シート状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール材を嵌め込むシール溝であって、
前記シール溝は、逆Ω形状のように入口付近が括れ、奥がその入口付近の括れより広い円形の断面形状になっていること
を特徴とするシール溝。
【請求項2】
シール溝に嵌め込まれるシール材であって、
前記シール溝は、逆Ω形状のように入口付近が括れ、奥がその入口付近の括れより広い円形の断面形状になっていて、
前記シール材は、前記シール溝の奥の断面形状に対応する円形部と、この円形部から突出した突出部とを備えた形状になっていること
を特徴とするシール材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate