説明

シール装着工具

【課題】ガスが流通する管継手へのシールの装着を容易にする工具及び方法を提供する。
【解決手段】その工具は、シールを受容して保持する大きさにされた第1ソケットと、第1ソケットに隣接して配置され管継手を受容する第2ソケットとを備えるスリーブを有する。シャフトがスリーブ内を移動可能であり、シールに係合可能な接触表面をその一端に有する。シャフトは、管継手に連通する入口と大気に連通する出口とを有する。シールは第1ソケットの中に配置され、第2ソケットは管継手に係合され、シャフトは、シールを第1ソケットから管継手の中に押し入れるために前進せしめられる。管継手を通して流れるガスが、導管によって大気へ導かれ、シールの後ろ側のガス圧力が高まることを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールを管継手に装着するための工具及び方法に関するものである。例えばシリコン基板上への集積回路の製造のような工業プロセスにおいて用いられるガスは、それらが化学的に活性であり続けること、及び更にそれらが使われる加工部材を汚染しないことを保障するために高いレベルの純度で維持されなければならない。ガスは、しばしば反応性が高くまた有害であり、また微量の水分、酸素、又は粒子が著しい悪影響を与えることがあり、したがってそれらは避けられなければならない。
【背景技術】
【0002】
ガスは、圧縮された状態でタンク内に貯蔵され、前記タンクは様々な弁、シール、及び製造プロセスにおいてガスを用いる他の機器に該タンクを接続するために必要な管継手を有する。弁、シール、及び管継手は要求される高い程度のガスの純度を維持するように設計及び製造される一方で、管継手を着脱するとき前述の汚染をガスに導入する可能性があるために難問が生じる。この問題は、管継手が接続されていない間にパージガスを管継手から流すことを許容することによって効果的に回避される。パージガスは、管継手が流体密で他の構成要素に再接続されるまで水分、酸素、又は粒子が管継手に進入して汚染の問題を引き起こすことを効果的に防ぐ。
【0003】
パージガスの流れは、ゲージ圧で約68.9kPa(10psi)から187.9kPa(20psi)の間の圧力を生じる。この比較的高い圧力は、対になる管継手への取付の前にシールを管継手に手で装着することを困難にする。シールが手で着座させられるとき、指又は親指はシールを管継手内に正確に着座させるためにシールに力を加えなければならないので、シールの開口を障害物のない状態で維持することが困難である。着座する間にシールの開口が塞がれることによって、パージガスの圧力がシールの後ろ側で増大し、取り付け作業における力が除かれたときパージガス圧力の結果としてシールが管継手から急に飛び出ることがよくある。
【0004】
シールの取り付けプロセスを更に複雑にすることは、技術者が、ガスの有害な性質のためにかさばる防護服をしばしば着用しなければならないことである。防護服は、手袋を含んでおり、前記手袋は、シール及び他のハードウェアの汚染を防ぐが、触覚を鈍くさせ、その結果シールを器用に取り扱うことを困難にする。さらに、管継手はハウジング内のくぼんだ所に隠れていることがよくあり、シールが取り付けられるときに見ることができない。これらの複雑さは、取り付作業中にシールが落下するか又は増強したパージガス圧力のために管継手からはじき出されるのでシールの紛失という結果を招き、また相当な時間の損失と、ガスが使用される工業プロセスに対する余分の費用とを発生させる。パージガスが流通する管継手へのシールの装着を容易にする工具及び方法に対する必要性が明らかに存在する。
【発明の開示】
【0005】
本発明はシールを管継手に装着するための工具に関するものである。工具は、シールを受容する大きさにされた第1ソケットとこの第1ソケットに隣接して配置された第2ソケットとを有するスリーブを具備する。第2ソケットは、スリーブの開放端を形成し、また管継手を受容する大きさにされている。プッシャ要素がスリーブ内を移動可能である。プッシャ要素は、プッシャ要素がスリーブに対して移動せしめられたときシールを第1ソケットから運び出して管継手内に運び入れるための、シールに係合可能な接触表面を有する。
【0006】
好適には、プッシャ要素は、接触表面を一端に有するシャフトを具備する。シャフトはその中に導管を有する。導管は、管継手との流体連通を提供する一端に配置された入口と、大気との流体連通を提供する出口とを有する。出口は、第2ソケットが管継手に係合されたとき管継手から大気へガスを逃がすことを可能にする。ハンドルが、スリーブに対して間隔をあけて取り付けられている。付勢要素が、スリーブとハンドルとの間に配置される。付勢要素は、スリーブをハンドルから離れる方向に付勢する。
【0007】
本発明は、ガスが流通する管継手にシールを装着する方法も含んでいる。その方法は、
(a)シールを保持する第1ソケットと、第1ソケットに隣接して管継手を受容する第2ソケットとを有するスリーブを準備する段階、
(b)シールをスリーブから管継手の中に押し入れるための、スリーブ内を移動可能なプッシャ要素にして、スリーブ内に位置決めされる入口と、大気と流体連通をしている出口とを備えた導管を有するプッシャ要素を準備する段階、
(c)シールを第1ソケット内に配置する段階、
(d)第2ソケットを管継手に係合する段階、
(e)シールを第1ソケットから管継手の中へ押入れて係合させるためにプッシャ要素をスリーブに対して移動させる段階、及び
(f)ガスが管継手からスリーブと導管とを通して大気へ流れ出ることを許容する段階、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、仮想線で示されたタンク14のような加圧ガスの供給源に接続された管継手12(図2〜4を参照)と共に使用されるシール10の斜視図である。シール10は、例えば、ニッケルめっきをされたステンレス鋼ワッシャである。ステンレス鋼は、その不活性な特性のために有利であり、またそれ故に汚染源となる傾向はない。ニッケルめっきは、不活性な性質を増進するとともに、管継手12の座に係合されたときに流体密シールを容易に形成する表面を提供する。シール10は、横断面において丸く、約14.3mm(9/16in)の呼び径と約3.2mm(1/8in)の厚さを有している。これらの寸法は、単に例示を目的に提示されたものであって、本明細書に記載されて請求されるシール又は工具のサイズを限定するものではない。
【0009】
やはりステンレス鋼から好適に形成されたラジアルスプリング18が、シールの周囲を巡る溝20の中に配置されている。ラジアルスプリング18は、間隙を有する大きめの割りリングから構成され、前記間隙は割りリングが半径方向に可撓であることを可能にする。ラジアルスプリングは、可撓性要素にして、それが半径方向内側に圧縮されたとき半径方向外側に方向付けられた力を及ぼす可撓性要素を提供する。ラジアルスプリング18は、シール10を管継手12内に摩擦保持し、管継手12はラジアルスプリング18の直径よりも小さな直径の開口22を有する。シール10が開口22の中に挿入されたとき、管継手側壁24がラジアルスプリングを半径方向に圧縮し、前記ラジアルスプリングは押し返してシールを管継手内に摩擦保持する。
【0010】
管継手が他の構成要素に接続されていないとき、水分、酸素、及び粒子のような汚染物質が管継手12に侵入するのを防ぐために、パージガスがタンク14から管継手12を通って流れることが許容され、パージガスの流れは、タンクと管継手との間にあるパージガス弁28によって制御される。パージガスが管継手を流通している間にシール10の管継手12内への装着を容易にするために、工具30が使用される。工具30は、シール10を受容しかつ保持する大きさにされた第1ソケット34を有するスリーブ32を具備する。シールが第1ソケット34内に挿入されたときシールがラジアルスプリング18の作用によって第1ソケット34内に摩擦保持されるように、第1ソケット34の直径はラジアルスプリング18より小さい。
【0011】
スリーブ32は、第1ソケット34に隣接して配置された第2ソケット36を有している。第2ソケットは第1ソケットよりも大きな直径を有しており、またスリーブの開放端38を形成している。第2ソケットは、開放端38を通して管継手12を同軸に受容するような大きさにされており、また第1ソケットと第2ソケットは、シールを座16に装着するためにシール10を管継手12の開口22に整列させるように協働する。
【0012】
好適にはシャフト40の形をしたプッシャ要素がスリーブ32内で軸方向に移動可能である。シャフト40は、第1ソケット34内に着座されたシール10に係合できる接触表面42を一端44に有している。スリーブ32は、シャフト40の一端44の近くに設けられた溝48内に装着されたOリング46によってシャフトに保持される。Oリングはシャフトよりも大きな外径を有し、スリーブ内の肩部50に係合し、肩部とOリングとの間の相互作用はスリーブが一端44の方へ移動することを制限し、スリーブがシャフトから外れて落下することを防ぐ。例えばスナップリング等の他の保持要素も可能である。
【0013】
ハンドル52が、シャフトの一端44から遠く離されてシャフト40に取り付けられている。ハンドルは、ポリマー樹脂から形成され、また手による良好なグリップ感を提供するために人間工学的な利点を得るように大きさ及び形状を決められている。好適には圧縮スプリング54の形をした付勢要素が、ハンドルとスリーブとの間に配置されている。スプリング54は、スリーブ32をハンドル52から離すように付勢し、肩部50をOリング46に押し付けて、シールが第1ソケット34内に保持されているとき、シャフト40の一端44の接触表面42をシール10から離間された状態に維持する。
【0014】
シャフト40は、それの中に設けられた導管56も有している(図5を参照)。導管は、管継手12が第2ソケット36の中に受容されたとき管継手12と流体連通をするように、シャフトの一端44に配置された入口58を有する。導管56は、大気との流体連通を提供する出口60を有している。出口はシャフトの反対端62に配置されてよく、又は出口はハンドル52とスリーブ32との間に有利に配置されてもよい。出口60のための他の位置も可能である。
【0015】
作動中、図3に示されるように、シール10は第1ソケット34内に挿入される。次に工具30は、第2ソケット36を管継手12に係合するように操作されて、スリーブ32の開放端38が管継手12を同軸に受容し、シール10が管継手開口22に整列する。管継手を通して流れているパージガスは、入口58に進入し、導管56を通して導かれ、出口60を通して大気へ出て行く。導管56の結果として、顕著なパージガスの圧力が管継手内で生じることは不可能である。
【0016】
図4に示されるように、管継手が第2ソケット36内に受容された状態で、力がハンドル52に手で加えられて、シャフト40をスプリング54の付勢力に対抗しながらスリーブ32内で軸方向に前進させてスプリングを圧縮する。スリーブは、管継手との係合によって相対的に固定されたままである。シャフト40の一端44の接触表面42は、シール10を第1ソケット34から管継手開口22の中へ押し込み、シールを座16に対して着座させる。ラジアルスプリング18は、管継手側壁24とシール10との間で圧縮され、そのことによりシールを管継手内で摩擦保持する。次いで工具30は、引き抜かれて、接触表面42をシールから、及び第2ソケット36を管継手から引き離すが、シール10を管継手内に着座した状態で残す。シャフト40内の導管56は、パージガスが装着プロセスの全体をとおして絶えず流れることを可能にし、したがってパージガスは、工具が取り除かれたときシールを座から外すことになるシールの後側の顕著な圧力を生じる機会を全く有さない。付勢スプリング54は、工具を管継手から引き離すと、スリーブ32をハンドル52から離す方向で押して、シャフト40を第1ソケット34から片付けるので他のシールを他の管継手に対する取付けのために装填することを可能にする。
【0017】
実質的に不活性であってそれ故重大な汚染源とはならない丈夫な工具を提供するために、スリーブ32、シャフト40、及びスプリング54をステンレス鋼から製作することが有利である。他の材料も可能である。Oリング46は、その不活性で低摩擦な性質のためにポリテトラフルオロエチレンのようなフルオロカーボンコンパウンドであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】加圧ガス管継手のための例示的シールの斜視図である。
【図2】仮想線で概略的に示された加圧ガスタンクに接続されてパージガスが流通する管継手と、シールを管継手内に着座させるための本発明による工具との縦断面図である。
【図3】作動中の状態で描いた工具の一部及び管継手の拡大した縮尺の縦断面図である。
【図4】作動中の状態で描いた工具の一部及び管継手の拡大した縮尺の縦断面図である。
【図5】図3の切断線5−5に沿って得られた横断面図である。
【符号の説明】
【0019】
10 シール
12 管継手
30 工具
32 スリーブ
34 第1ソケット
36 第2ソケット
40 シャフト
42 接触表面
56 導管
58 入口
60 出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールを管継手に装着する工具であって、
スリーブにして、前記シールを受容するような大きさにされた第1ソケット、及び前記第1ソケットに隣接して配置されるとともに、該スリーブの開放端を形成して前記管継手を受容するような大きさにされた第2ソケットを有するスリーブと、
前記スリーブ内を移動できるプッシャ要素にして、該プッシャ要素が前記スリーブに対して移動せしめられるとき前記シールを前記第1ソケットから運び出して前記管継手の中に運び入れるための、前記シールに係合可能な接触表面を有するプッシャ要素と、を具備する工具。
【請求項2】
前記プッシャ要素が、前記接触表面を一端に有するシャフトを具備する、請求項1に記載の工具。
【請求項3】
加圧ガスを収容するタンクの管継手にシールを装着するための工具であって、
スリーブにして、前記シールを同軸に受容して保持するような大きさにされた第1ソケット、並びに前記第1ソケットに隣接し且つ同軸に配置されるとともに、前記第1ソケットよりも大きい直径を有し、該スリーブの開放端を形成し、及び前記管継手を同軸に受容するような大きさにされた第2ソケットを有するスリーブと、
前記スリーブ内を軸方向に移動できるシャフトにして、該シャフトが前記スリーブに対して移動せしめられるとき前記シールを前記第1ソケットから運び出して前記管継手に運び入れるための、前記シールに係合可能な接触表面を一端に有するシャフトと、
前記スリーブに対して間隔をあけて前記シャフトに取り付けられたハンドルと、
前記スリーブを前記ハンドルから離す方向に付勢するために前記ハンドルと前記スリーブとの間に配置された付勢要素と、を具備する工具。
【請求項4】
前記シャフトがその中に導管を有し、前記導管は、前記第2ソケットが前記管継手に係合されたときガスが前記管継手から大気へ流出することを可能にするために、前記一端に配置されて前記管継手との流体連通を提供する入口と、大気との連通を提供する出口とを有する、請求項2又は3に記載の工具。
【請求項5】
前記スリーブから離間されて前記シャフトに取り付けられたハンドルを更に具備し、前記出口が前記ハンドルと前記スリーブとの間に配置される、請求項4に記載の工具。
【請求項6】
加圧ガスを収容するタンクの管継手に、前記ガスが前記管継手を通して流れている間にシールを装着するための工具であって、
スリーブにして、前記シールを同軸に受容して保持するような大きさにされた第1ソケット、並びに前記第1ソケットに隣接し且つ同軸に配置されるとともに、前記第1ソケットより大きい直径を有し、該スリーブの開放端を形成し、及び前記管継手を同軸に受容するような大きさにされた第2ソケットを有するスリーブと、
前記スリーブ内を軸方向に移動できるシャフトにして、該シャフトが前記スリーブに対して軸方向に移動せしめられるとき前記シールを前記第1ソケットから運び出して前記管継手の中に運び入れるための、前記シールに係合可能な接触表面を一端に有するシャフトと、
前記シャフトを貫通して延びる導管にして、前記一端に配置されて前記管継手との流体連通を提供する入口と、大気との流体連通を提供する出口とを有し、前記第2ソケットが前記管継手に係合されたとき前記ガスが該導管を通して大気へ流れるところの導管と、を具備する工具。
【請求項7】
前記出口が、前記シャフトの他端に配置される、請求項4又は6に記載の工具。
【請求項8】
前記スリーブから離間されて前記シャフトに取り付けられたハンドルを更に具備する、請求項2又は6に記載の工具。
【請求項9】
前記出口が、前記スリーブと前記ハンドルとの間の前記シャフトに配置されている、請求項4又は8に記載の工具。
【請求項10】
前記スリーブと前記ハンドルとの間に配置された付勢要素であって、前記スリーブを前記ハンドルから離す方向に付勢する付勢要素を更に具備する、請求項8に記載の工具。
【請求項11】
前記付勢要素が、前記スリーブと前記ハンドルとの間で働く圧縮スプリングからなる、請求項10に記載の工具。
【請求項12】
ガスが流通する管継手へのシールの装着方法であって、
前記シールを保持する第1ソケットと、前記第1ソケットに隣接して前記管継手を受容する第2ソケットとを有するスリーブを準備する段階と、
前記シールを前記スリーブから前記管継手の中に押し入れるための、前記スリーブ内を移動可能なプッシャ要素にして、前記スリーブ内に位置決めされる入口と、大気と流体連通をする出口とを備える導管を有するプッシャ要素を準備する段階と、
シールを前記第1ソケット内に配置する段階と、
前記第2ソケットを前記管継手に係合する段階と、
前記シールを前記第1ソケットから前記管継手の中へ押入れて係合させるために前記プッシャ要素を前記スリーブに対して移動させる段階と、
前記ガスが前記管継手から前記スリーブと前記導管とを通して大気へ流れ出ることを許容する段階と、を含んでなるシールの装着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−218428(P2007−218428A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33712(P2007−33712)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】