説明

シール装置

【課題】 シール部材の駆動機構をシール部材の軸心方向に配置して装置構成の自由度を向上させることが可能なシール装置を提供する。
【解決手段】 ヒートシール部材31の移動機構は、一対の第1溝部41aと係合する一対の第1カムフォロワ42と、一対の第2溝部41bに係合する一対の第2カムフォロワ43と、これらの第1カムフォロワ42と第2カムフォロワ43とを連結する連結部44とを備えたリンク部材を有する。第1カムフォロワ42は、ヒートシール部材31の軸心方向に往復移動可能な移動部材51と、第1連結軸を介して連結されている。また、第2カムフォロワ43は、ヒートシール部材31を支持する支持部材と、第2連結軸52を介して連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被包装物を収納した包装袋の開口部を一対のシール部材により挟持して溶着することにより、被包装物を包装袋によりシールするシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなシール装置の一種としての減圧ヒートシール装置は、減圧されたチャンバー内において、被包装物を収納した包装袋の開口部を閉止することにより、被包装物を包装袋によりシールする構成を有する。この減圧ヒートシール装置は、弁操作によりチャンバーと真空ポンプ等の減圧手段とを連通することによりチャンバー内を真空とした後、このチャンバー内においてその内部に被包装物を収納した包装袋の開口部付近を一対のヒートシール部材により挟持して溶着することにより、被包装物を包装袋により減圧シールする構成を有する。
【0003】
そして、特許文献1には、チャンバーに対して固定された上ヒートシール部材と、上昇駆動機構により昇降する下ヒートシール部材とを備え、チャンバー内を減圧状態とした後に、上昇駆動機構により下ヒートシール部材の軸心と直交する方向から下ヒートシール部材を押圧して下ヒートシール部材を上昇させることにより、包装袋を上ヒートシール部材と下ヒートシール部材とにより挟持して、包装袋をヒートシールする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−22614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたように、駆動機構によりシール部材をその軸心と直交する方向から押圧して移動させる構成を採用した場合には、その駆動機構の配置が装置構成の自由度を制約するという問題がある。例えば、オペレータが包装袋をシール装置にセットする場合には、シール部材の軸心と直交する方向からシール部材にアクセスすることになるため、シール部材の駆動機構が包装袋のセットの支障となる場合がある。
【0006】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、シール部材の駆動機構をシール部材の軸心方向に配置して装置構成の自由度を向上させることが可能なシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、被包装物を収納した包装袋の開口部を、一対の長尺状のシール部材により挟持して溶着することにより、前記被包装物を前記包装袋によりシールするシール装置において、前記シール部材の軸心方向に延びる第1溝部と、前記第1溝部と交差する方向に延びる第2溝部とを備え、装置本体に固定された案内カムと、前記第1溝部と係合する第1カムフォロワと、前記第2溝部に係合する第2カムフォロワと、前記第1カムフォロワと前記第2カムフォロワとを連結する連結部とを備えたリンク部材と、前記シール部材の軸心方向に往復移動可能な移動部材と、前記第1カムフォロワと前記移動部材とを連結する第1連結軸と、前記シール部材を支持する支持部材と、前記第2カムフォロワと前記支持部材とを連結する第2連結軸と、を有する移動機構と、前記移動部材を前記シール部材の軸心方向から押圧することにより、前記リンク部材を介して前記シール部材を、当該シール部材の軸心と交差する方向に移動させる駆動手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記移動機構は、当該移動機構におけるシール部材の軸心が互いに平行となる状態で、一対、対向配設されている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記駆動手段は、前記各移動機構における一対のシール部材の軸線の延長方向に配設された直線駆動シリンダと、当該直線駆動シリンダのシリンダロットと前記各移動機構における一対の移動部材とを各々連結する連結部材とを有する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記一対の移動機構のうちの一方の移動機構のシール部材と支持部材との間には、ユニバーサルジョイントが配設される。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明において、前記第1溝部と前記第2溝部とは、互いに直交する方向に延びるとともに、前記第1カムフォロワの移動距離が前記第2カムフォロワの移動距離より大きくなるように、前記シール部材の軸心に対する前記連結部の配置角度を設定した。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明において、 前記シール部材は、熱により前記被包装物を収納した包装袋の開口部を溶着する。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、減圧されたチャンバー内において、前記被包装物を収納した包装袋の開口部を閉止することにより、前記被包装物を前記包装袋によりシールする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、シール部材の駆動機構をシール部材の軸心方向に配置することができ、装置構成の自由度を向上させることが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、一対の移動機構を使用して対応するシール部材を移動させることにより、包装袋を一対のシール部材による移動ストロークの中央部にセンタリングした状態で挟持することができる。このため、シールの精度を向上させることが可能となる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、単一の直線駆動シリンダを使用して一対のシール部材を互いに同期した状態で移動させることができる。このため、簡易な構成でありながら、シールの精度を向上させることが可能となる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、ユニバーサルジョイントの作用により、一対のシール部材を互いに平行とした状態で包装袋を挟持することができる。このため、包装袋を確実にシールすることが可能となる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、駆動機構による移動部材への押圧力より大きな力で、包装袋をシール部材により挟持することができる。このため、小さな押圧力の駆動機構を使用した場合においても、包装袋を強い力で挟持することができ、確実にシールを行うことが可能となる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、高精度にヒートシールを実行することが可能となる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、高精度に減圧ヒートシールを実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明に係る減圧ヒートシール装置の概要図である。
【図2】この発明に係る減圧ヒートシール装置の制御系を示すブロック図である。
【図3】移動機構をエアシリンダ24等とともに示す平面図である。
【図4】移動機構をエアシリンダ24等とともに示す平断面図である。
【図5】図4のZ−Z断面矢視図である。
【図6】移動機構の側面図である。
【図7】図4のY−Y断面矢視図である。
【図8】移動機構をエアシリンダ24等とともに示す斜視図である。
【図9】移動機構をエアシリンダ24等とともに示す斜視図である。
【図10】ユニバーサルジョイント61付近を拡大して示す模式図である。
【図11】第1カムフォロワ42および第2カムフォロワ43と、第1溝部41aおよび第2溝部41bとの配置関係を示す模式図である。
【図12】この発明に係る減圧ヒートシール装置によるヒートシール動作を示す説明図である。
【図13】この発明に係る減圧ヒートシール装置によるヒートシール動作を示す説明図である。
【図14】この発明に係る減圧ヒートシール装置によるヒートシール動作を示す説明図である。
【図15】この発明に係る減圧ヒートシール装置による減圧動作を示すフローチャートである。
【図16】この発明に係る減圧ヒートシール装置による減圧動作を示すフローチャートである。
【図17】この発明に係る減圧ヒートシール装置による減圧動作を示すフローチャートである。
【図18】この発明に係る減圧ヒートシール装置による減圧動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係るシール装置としての減圧ヒートシール装置の概要図である。
【0023】
この減圧ヒートシール装置は、減圧されたチャンバー内において、図示を省略した被包装物を収納した包装袋Cの開口部を閉止することにより、被包装物を包装袋Cによりシールするためのものである。ここで包装袋Cは、ラミネートセル等と呼称されるものであり、その三方が閉止し、一方が開放された袋状の形状を有する。なお、ここで示す包装袋の形状は一例であり、筒状など被包装物を包装できるものであれば良い。
【0024】
この減圧ヒートシール装置は、図1左側の側面に開口部を有するチャンバー本体11と、チャンバー蓋体12とを、パッキング14を介して当接させることにより、減圧可能なチャンバーが構成される構造を有する。チャンバー本体11とチャンバー蓋体12により構成されるチャンバー内には、各々シーズヒータ33を備えた一対のヒートシール部材31と、各々、水冷、空冷などの冷却媒体循環路34を備えた一対の冷却部材32とが配設されている。
【0025】
一対のヒートシール部材31は、エアシリンダ24の駆動により、後述するように、それらの間に包装袋Cを挟持して溶着させる挟持位置と、包装袋Cから離隔した待機位置との間を往復移動する。同様に、一対の冷却部材32は、エアシリンダ26の駆動により、それらの間に包装袋Cを挟持して冷却する挟持位置と、包装袋Cから離隔した待機位置との間を往復移動する。
【0026】
チャンバー蓋体12には、支持部材15が、ガイド部材19を介して昇降可能に配設されている。この支持部材15には、スクリューナット16が付設されており、このスクリューナット16は、モータ18の駆動により回転するスクリュー軸17と螺合している。このため、支持部材15は、モータ18の駆動により昇降可能となっている。そして、この支持部材15上には、包装袋Cを挟持して成形するための一対のプレスプレート21が設置されている。これらのプレスプレート21は、クランプレバー22を操作することにより、包装袋Cを挟持して成形する挟持位置と、包装袋Cを開放する解放位置の間を移動する構成となっている。プレスプレート21の形状は、特開2001−39408号公報に示されるような整形板でも良いし、特開平11−49113号公報のような複数段に分割されたものでも良い。
【0027】
また、チャンバー蓋体12は、ガイド部材28の作用により、チャンバー本体11に対して、図1における左右方向にスライド可能に構成されている。このチャンバー蓋体12は、オペレータがハンドル13を操作することにより、一対のプレスプレート21や支持部材15およびその昇降機構とともに、一対のプレスプレート21等がチャンバー本体11内に配置される減圧位置と、一対のプレスプレート等がチャンバー本体11の外部に配置される準備位置との間を移動する構成となっている。
【0028】
チャンバー本体11には、チャンバー本体11とチャンバー蓋体12とにより構成されるチャンバー内の圧力を測定するための真空計71と、このチャンバー内の圧力が大気圧となったことを確認するためのブルドン管72と、このチャンバー内を減圧する減圧機構とが接続されている。
【0029】
チャンバー本体11とチャンバー蓋体12とにより構成されるチャンバー内を減圧するための減圧機構は、メインバルブMVを備える第1排気路74と、スロー排気バルブBV1を備える第2排気路75と、スロー排気バルブBV2を備える第3排気路76を備える。これらのメインバルブMVおよびスロー排気バルブBV1、BV2は、電磁開閉弁より構成される。また、第2排気路75には、ニードルバルブNV1が配設されており、第3排気路76にはニードルバルブNV2が配設されている。第1、第2、第3排気路74、75、76の一端は、一方の端部がチャンバー本体11に連結され、他方の端部がチャンバーベントバルブVVを介して大気中に連通する共通管路77と接続されている。一方、第1、第2、第3排気路74、75、76の他端は、スクロール型ポンプ等の真空ポンプ78と連通する共通管路73と接続されている。この共通管路73には、ポンプリークバルブPLVが配設されている。
【0030】
図2は、この発明に係る減圧ヒートシール装置の制御系を示すブロック図である。
【0031】
この発明に係る減圧ヒートシール装置は、装置全体を制御する制御部80を備える。この制御部80は、上述したヒートシール部材31を移動させるためのエアシリンダ24と、冷却部材32を移動させるためのエアシリンダ26と、支持部材15を昇降させるためのモータ18とに接続されている。また、この制御部80は、チャンバー本体11に接続された真空計71と、真空ポンプ78とに接続されている。さらに、この制御部80は、減圧機構を構成するメインバルブMVと、スロー排気バルブBV1と、スロー排気バルブBV2と、チャンバーベントバルブVVと、ポンプリークバルブPLVとに接続されている。メインバルブMVと、スロー排気バルブBV1と、スロー排気バルブBV2と、チャンバーベントバルブVVと、ポンプリークバルブPLVとは、制御部80からの指令信号により開閉動作を実行する。
【0032】
次に、上述した一対のヒートシール部材31を挟持位置と待機位置との間で往復移動させるための、この発明の特徴部分である移動機構等の構成について説明する。図3は、一対のヒートシール部材31を移動させる移動機構をエアシリンダ24等とともに示す平面図であり、図4は、その平断面図である。図5は、図4のZ−Z断面矢視図である。図6は、移動機構の側面図であり、図7は、図4のY−Y断面矢視図である。さらに、図8および図9は、移動機構をエアシリンダ24等とともに示す斜視図である。なお、図3から図8は、一対のヒートシール部材31が待機位置にある状態を示しており、図9は、一対のヒートシール部材31が挟持位置にある状態を示している。
【0033】
一対のヒートシール部材31を挟持位置と待機位置との間で往復移動させるための移動機構は、各ヒートシール部材31に連結されてそれらを移動させるための、略同一の構成を有する部材が、互いに対向配置された対をなす構成を有する。各移動機構は、シール部材31の軸心方向(図3から図5における左右方向)に延びる第1溝部41aと、第1溝部41aと直交する方向に延びる第2溝部41bとが、各々一対形成された案内カム41を備える。第1溝部41aと第2溝部42bとは、互いに連結されている。この案内カム41は、装置本体に固定されている。
【0034】
また、各移動機構は、一対の第1溝部41aと係合する一対の第1カムフォロワ42と、一対の第2溝部41bに係合する一対の第2カムフォロワ43と、これらの第1カムフォロワ42と第2カムフォロワ43とを連結する連結部44とを備えたリンク部材を有する。図4に示すように、第1カムフォロワ42は、ヒートシール部材31の軸心方向に往復移動可能な移動部材51と、第1連結軸52を介して連結されている。また、第2カムフォロワ43は、ヒートシール部材31を支持する支持部材55と、第2連結軸53を介して連結されている。
【0035】
ここで、一対の移動機構のうち、一方の移動機構(図4において上側に示す移動機構)においては、ヒートシール部材31は支持部材55に直接支持されている。これに対して、一対の移動機構のうちの他方の移動機構(図4において下側に示す移動機構)においては、ヒートシール部材31は、図10に示すように、ユニバーサルジョイント61を介して、支持部材55に支持されている。ユニバーサルジョイント(universal joint)61は、自在継手とも呼称されるものであり、支持部材55に対するヒートシール部材31の角度位置を、一定の範囲で任意に変更し得るものである。このため、一対のヒートシール部材31の平行度が完全に保たれていない場合においても、挟持位置において一対のヒートシール部材31の全面を互いに当接させることが可能となる。
【0036】
図3および図6に示すように、各ヒートシール部材31は、そこに形成された溝部にその先端部が侵入する略コの字状の受け部材56により支持されており、この受け部材56は、連結部材57等を介して移動部材51と連結されている。この時、一対の移動機構のうちのユニバーサルジョイント61が付設された移動機構(図4において下側に示す移動機構)においては、受け部材56はヒートシール部材31を移動可能な状態で支持している。このため、このヒートシール部材31は、上述したユニバーサルジョイント61の作用による移動が可能となっている。
【0037】
なお、図3、図4、図8および図9に示すように、各ヒートシール部材31における互いに対向する面以外の面は、ヒートシール部材31からの放熱を軽減するために、断面が略コの字状の熱カバー58により覆われている。
【0038】
各移動機構における移動部材51は、連結部材54により互いに連結されている。そして、この連結部材54は、ヒートシール部材31の軸心方向に往復移動するエアシリンダ24のシリンダロッド25の先端に固定されている。このため、各移動機構における移動部材51は、エアシリンダ24の駆動により、ヒートシール部材31の軸心方向に互いに同期して往復移動する。
【0039】
以上のような構成を有する移動機構においては、図8に示すように一対のヒートシール部材31が互いに離隔した待機位置にある状態から、エアシリンダ24の駆動により連結部材54を図8における矢印と逆方向に移動させた場合には、これに伴って、各移動機構における移動部材51がヒートシール部材31の軸心方向に移動する。この移動に伴って、移動部材51と軸52により連結された第1カムフォロワ42が案内カム41における第1溝部41aに沿って、ヒートシール部材31の軸心方向に移動する。この第1カムフォロワ42に移動に伴って、第1カムフォロワ42と連結部44により連結された第2カムフォロワ43が、案内カム41における第2溝部41bに沿って、ヒートシール部材31の軸心方向と直交する方向に移動する。これにより、一対のヒートシール部材31は、図9に示すように、それらのヒートシール部材31が互いに包装袋Cを介して当接する挟持位置に移動することになる。
【0040】
このとき、この移動機構においては、一対のヒートシール部材31が待機位置から挟持位置に移動するときに、第1カムフォロワ42の移動距離が第2カムフォロワ43の移動距離より大きくなるように、シール部材の軸心に対する連結部44の配置角度を設定していることから、エアシリンダ24による移動部材51に対する押圧力以上の力で、一対のヒートシール部材31を移動させることが可能となる。
【0041】
この点について詳細に説明する。図11は、第1カムフォロワ42および第2カムフォロワ43と、第1溝部41aおよび第2溝部41bとの配置関係を示す模式図である。
【0042】
この図に示すように、第1カムフォロワ42と第2カムフォロワ43との軸心を結ぶ線、すなわち、連結部44の軸心と、ヒートシール部材31との軸心がなす角度θは、45度より大きい角度に設定されている。そして、第1溝部41aと第2に溝部41bとは、互いに直交する方向を向いている。このため、第1カムフォロワ42のヒートシール部材31の軸心方向の移動距離は、第2カムフォロワ43のヒートシール部材31の軸心と直交する方向の移動距離より大きくなる。従って、エアシリンダ24による移動部材51への押圧力(すなわち、第1カムフォロワ32に対する押圧力)より大きな力で第2カムフォロワ43(すなわち、ヒートシール部材31)がヒートシール部材31の軸心と直交する方向に押圧されることになる。
【0043】
このような構成を採用した場合においては、エアシリンダ24による移動部材51への押圧力より大きな力で、包装袋Cをヒートシール部材31により挟持することができる。このため、小さな押圧力のエアシリンダ24を使用した場合においても、包装袋Cを強い力で挟持することができ、確実にシールを行うことが可能となる。
【0044】
上述した実施形態においては、第1溝部41aと第2に溝部41bとが互いに直交する方向を向く場合について説明したが、必ずしも直交する方向を向く必要はない。但し、第1溝部41aと第2に溝部41bとが互いに直交する方向から所定の角度だけ傾斜した場合には、一対のヒートシール部材31は、これらのヒートシール部材31の軸心と直交する方向に対して、上記傾斜角度に対応した角度だけ傾斜した状態で互いに近接し、あるいは、離間する方向に移動することになる。
【0045】
なお、一対の冷却部材32を、エアシリンダ26の駆動により、それらの間に包装袋Cを挟持して冷却する挟持位置と、包装袋Cから離隔した待機位置との間を往復移動するための移動機構も、上述した一対のヒートシール部材31の移動機構と同様の構成を有する。
【0046】
次に、上述した減圧ヒートシール装置により被包装物を包装袋Cによりシールするヒートシール動作について説明する。図12から図14は、この発明に係る減圧ヒートシール装置によるヒートシール動作を示す説明図である。
【0047】
ヒートシールを行う場合には、最初に、オペレータがハンドル13を操作することにより、チャンバー蓋体12を一対のプレスプレート21や支持部材15等とともに、チャンバー本体11から引き出す。この状態においては、図12(a)に示すように、一対のプレスプレート21は、互いに離隔する解放位置に配置されている。この状態において、一対のプレスプレート21間に、その内部に被包装物を収納した包装袋Cを設置する。この包装袋Cは、その下端部を位置決めピン23により支持される。
【0048】
この状態において、オペレータが図1に示すクランプレバー22を操作することにより、一対のプレスプレート21を挟持位置に移動させる。これにより、これらのプレスプレート21により包装袋Cが挟持されて成形される。この状態においては、包装袋Cの開口部は、開放されている。そして、再度オペレータがハンドル13を操作することにより、チャンバー蓋体12を一対のプレスプレート21や包装袋C等とともに、チャンバー本体11内に収納する。この状態においては、チャンバー本体11とチャンバー蓋体12によりチャンバーが構成される。
【0049】
この状態において、チャンバー本体11とチャンバー蓋体12により構成されるチャンバー内を、チャンバー本体11に接続される減圧機構により減圧する。この時の減圧機構による減圧動作については、後程、詳細に説明する。
【0050】
チャンバー本体11とチャンバー蓋体12により構成されるチャンバーの内部が予め設定された真空圧まで減圧された後、一定の時間が経過すれば、包装袋Cのシールを行う。この場合には、図1および図2に示すモータ18の駆動によりスクリュー軸17を回転させて支持部材15を上昇させることにより、図13(a)に示すように、包装袋Cを一対のプレスプレート21および位置決めピン23とともに上昇させる。そして、エアシリンダ24の駆動により、一対のヒートシール部材31を挟持位置に移動さる。これにより、被包装物を収納した包装袋Cの開口部を溶着させて閉止することにより、被包装物を包装袋Cによりシールする。
【0051】
この時には、一対のヒートシール部材31が互いに近接する方向に移動して包装袋Cをシールすることから、包装袋Cを一対のヒートシール部材31による移動ストロークの中央部にセンタリングした状態で挟持することができる。このため、シールの精度を向上させることが可能となる。このとき、ユニバーサルジョイント61の作用により、一対のヒートシール部材31の平行度が完全に保たれていない場合においても、挟持位置において一対のヒートシール部材31の全面を互いに当接されることが可能となり、包装袋Cを確実にシールすることが可能となる。そして、一対のヒートシール部材31を移動させるためのエアシリンダ24がヒートシール部材31の軸心方向に配置されていることから、オペレータが包装袋Cを一対のプレスプレート21間にセットするために、プレスプレート21にアクセスする場合に、エアシリンダ24等のヒートシール部材31の移動機構が障害となることはない。
【0052】
シールが完了すれば、一対のヒートシール部材31を解放位置に移動させる。しかる後、次に、モータ18の駆動によりスクリュー軸17を回転させて支持部材15を下降させることにより、図13(b)に示すように、包装袋Cにおける溶着部分が一対の冷却部材32と対向する高さ位置まで、包装袋Cを一対のプレスプレート21および位置決めピン23とともに下降させる。そして、エアシリンダ26の駆動により、一対の冷却部材32を挟持位置に移動さる。これにより、包装袋Cにおける溶着部分が冷却される。
【0053】
冷却が完了すれば、一対の冷却部材32を解放位置に移動させる。そして、図14(a)に示すように、モータ18の駆動によりスクリュー軸17を回転させて支持部材15をさらに下降させることにより、包装袋Cを初期位置まで復帰させる。また、チャンバー本体11とチャンバー蓋体12により構成されるチャンバー内を大気圧に復帰させる。なお、チャンバー内が大気圧に復帰したか否かは、図1に示す真空計71の測定値に基づいて判断することができる。
【0054】
包装袋Cを初期位置まで復帰するとともに、チャンバー内が大気圧まで復帰すれば、オペレータが再度ハンドル13を操作することにより、チャンバー蓋体12を一対のプレスプレート21や包装袋C等とともに、チャンバー本体11から引き出す。そして、オペレータが再度クランプレバー22を操作することにより、図14(b)に示すように、一対のプレスプレート21を挟持位置から開放位置に移動させる。しかる後、ヒートシールの完了した包装袋Cを一対のプレスプレート21の間から取り出して、作業を終了する。
【0055】
次に、上述した減圧ヒートシール時に、チャンバー本体11とチャンバー蓋体12により構成されるチャンバー内を減圧機構により減圧する減圧動作について説明する。図15から図18は、この発明に係る減圧ヒートシール装置による減圧動作を示すフローチャートである。なお、以下に述べる減圧動作は、制御部80がメインバルブMV、スロー排気バルブBV1およびスロー排気バルブBV2等を開閉制御することにより実行される。
【0056】
減圧動作を開始する前には、第2排気路75のニードルバルブNV1の開度と第2排気路76のニードルバルブNV2の開度とが予め調整されることにより、第1排気路74と、第2排気路75と、第3排気路76とのコンダクタンスが、互いに異なる値に設定されている。ここで、コンダクタンスとは、管路内を気体が流れているとき、その流れ易さを表す係数である。このコンダクタンスは、管路内を気体が流れるときの抵抗値の逆数となる。ニードルバルブNV1およびNV2を調整することにより、各管路におけるオリフィスを変化させた場合には、その管路のコンダクタンスが変更され、排気速度が変化する。この実施形態においては、第1排気路74のコンダクタンスは第2排気路75のコンダクタンスより大きく、また、第2排気路75のコンダクタンスは第3排気路76のコンダクタンスより大きくなるように、ニードルバルブNV1およびNV2が予め調整されている。
【0057】
また、減圧動作を開始する前には、減圧時におけるチャンバー内の設定圧力Pと、チャンバー内を許容変動値ΔPと、圧力変動値ΔP1、ΔP2,ΔP3とを設定しておく。ここで、チャンバー内の圧力変動がプラスマイナスΔPの範囲内になるように制御する場合には、許容変動値がΔPとなる。ここでΔPは、例えば、1kPa(キロパスカル)未満となる値である。また、圧力変動値ΔP1、ΔP2,ΔP3は、ΔP1よりΔP2が大きく、また、ΔP2よりΔP3が大きくなる値であり、例えば、ΔP1+ΔP2+ΔP3が1kPa(キロパスカル)未満となる値である。
【0058】
減圧動作を開始するときには、最初に、チャンバーベントバルブVVと、メインバルブMVと、スロー排気バルブBV1、VB2を閉止する(ステップS1)。そして、真空ポンプ78が作動中であるか否かを確認する(ステップS2)。真空ポンプ78が作動中でない場合には、真空ポンプ78を作動するとともに(ステップS3)、ポンプリークバルブPLVを閉止する(ステップS4)。
【0059】
次に、スロー排気バルブBV1に対する設定圧力値が設定されているか否かを確認する(ステップS5)。スロー排気バルブBV1に対する設定圧力値が設定されている場合には、スロー排気バルブBV1を開放する。そして、図1に示す真空計71の測定値に基づいてチャンバー本体11とチャンバー蓋体12により構成されるチャンバー内の圧力がスロー排気バルブBV1に対する設定圧力値に達した場合には(ステップS7)、スロー排気バルブBV1を閉止する(ステップS8)。なお、スロー排気バルブBV1に対する設定圧力値が設定されていない場合には、ステップS6からステップS8はスキップされる。
【0060】
次に、スロー排気バルブBV2に対する設定圧力値が設定されているか否かを確認する(ステップS9)。スロー排気バルブBV2に対する設定圧力値が設定されている場合には、スロー排気バルブBV2を開放する。そして、図1に示す真空計71の測定値に基づいてチャンバー本体11とチャンバー蓋体12により構成されるチャンバー内の圧力がスロー排気バルブBV2に対する設定圧力値に達した場合には(ステップS11)、スロー排気バルブBV2を閉止する(ステップS12)。なお、スロー排気バルブBV2に対する設定圧力値が設定されていない場合には、ステップS10からステップS12はスキップされる。
【0061】
次に、メインバルブMVに対する設定圧力値が設定されているか否かを確認する(ステップS13)。メインバルブMVに対する設定圧力値が設定されている場合には、メインバルブMVを開放する。そして、図1に示す真空計71の測定値に基づいてチャンバー本体11とチャンバー蓋体12により構成されるチャンバー内の圧力がメインバルブMVに対する設定圧力値に達した場合には(ステップS15)、スロー排気バルブMVを閉止する(ステップS16)。なお、メインバルブMVに対する設定圧力値が設定されていない場合には、ステップS13からステップS15はスキップされる。
【0062】
なお、メインバルブMVに対する設定圧力は、一般的に、減圧時におけるチャンバー内の設定圧力Pと一致させている。このため、この状態においては、チャンバー本体11とチャンバー蓋体12により構成されるチャンバー内の圧力は設定圧力Pとなる。しかしながら、この状態において包装袋C内の被包装物からアウトガスが発生した場合には、チャンバー本体11とチャンバー蓋体12により構成されるチャンバー内の圧力が変動することになる。
【0063】
このため、図2に示す制御部80は、真空計71によるチャンバー内の圧力の測定値を常に監視している。そして、チャンバー内の圧力変動が圧力変動値ΔP1以下である場合には(ステップS17)、そのままの状態を維持している。一方、包装袋C内の被包装物からアウトガスが発生することにより、チャンバー内の圧力値がP+ΔP1を越えた場合には(ステップS17)、スロー排気バルブBV1を開放する(ステップS18)。この状態で、チャンバー内の圧力値がP−ΔP以下とならない場合には(ステップS19)、チャンバー内の圧力値がP+ΔP2以下であるか否かを判断する(ステップS21)。そして、チャンバー内の圧力値がP+ΔP2以下である場合には、この状態を維持し、チャンバー内の圧力値がP−ΔP以下となった場合には(ステップS19)、スロー排気バルブBV1を閉止して(ステップS20)、ステップS17に戻る。
【0064】
一方、チャンバー内の圧力値がP+ΔP2を越えた場合には(ステップS21)、スロー排気バルブBV1を閉止するとともに(ステップS22)、スロー排気バルブBV2を開放する(ステップS23)。この状態で、チャンバー内の圧力値がP−ΔP以下とならない場合には(ステップS24)、チャンバー内の圧力値がP+ΔP3以下であるか否かを判断する(ステップS26)。そして、チャンバー内の圧力値がP+ΔP3以下である場合には、この状態を維持し、チャンバー内の圧力値がP−ΔP以下となった場合には(ステップS24)、スロー排気バルブBV2を閉止して(ステップS25)、ステップS17に戻る。
【0065】
一方、チャンバー内の圧力値がP+ΔP3を越えた場合には(ステップS26)、スロー排気バルブBV2を閉止するとともに(ステップS27)、メインバルブMVを開放する(ステップS28)。そして、チャンバー内の圧力がP−ΔPとなるまでこの状態を維持し、チャンバー内の圧力がP−ΔPとなれば(ステップS29)、メインバルブMVを閉止して(ステップS30)、ステップS17に戻る。
【0066】
このように、上述した減圧機構によれば、被包装物から放出されるアウトガスによってチャンバー本体11とチャンバー蓋体12により構成されるチャンバー内の圧力が変動した場合においても、アウトガスの量による圧力の変動量に対応して、互いにコンダクタンスが異なる複数の排気路74、75、76から選択的に排気を行うことにより、チャンバー内の圧力変動を防止して、チャンバー内を一定の圧力に維持することが可能となる。このとき、チャンバー内の圧力変動に対応させてオリフィスを変化させる構成を採用した場合のように、被包装物から発生するアウトガスによる圧力変動に対するレスポンスの遅れにより、チャンバー内の圧力変動にオーバーシュートが生じることを有効に防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0067】
11 チャンバー本体
12 チャンバー蓋体
13 ハンドル
14 パッキング
15 支持部材
16 スクリューナット
17 スクリュー軸
18 モータ
21 プレスプレート
22 クランプレバー
24 エアシリンダ
25 シリンダロッド
26 エアシリンダ
28 ガイド部材
31 ヒートシール部材
32 冷却部材
33 シーズヒータ
34 冷却媒体循環路
41 案内カム
41a 第1溝部
41b 第2溝部
42 第1カムフォロワ
43 第2カムフォロワ
44 連結部
51 移動部材
52 第1連結軸
53 第2連結軸
56 受け部材
57 連結部材
61 ユニバーサルジョイント
71 真空計
72 ブルドン管
74 第1排気路
75 第2排気路
76 第3排気路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被包装物を収納した包装袋の開口部を、一対の長尺状のシール部材により挟持して溶着することにより、前記被包装物を前記包装袋によりシールするシール装置において、
前記シール部材の軸心方向に延びる第1溝部と、前記第1溝部と交差する方向に延びる第2溝部とを備え、装置本体に固定された案内カムと、
前記第1溝部と係合する第1カムフォロワと、前記第2溝部に係合する第2カムフォロワと、前記第1カムフォロワと前記第2カムフォロワとを連結する連結部とを備えたリンク部材と、
前記シール部材の軸心方向に往復移動可能な移動部材と、
前記第1カムフォロワと前記移動部材とを連結する第1連結軸と、
前記シール部材を支持する支持部材と、
前記第2カムフォロワと前記支持部材とを連結する第2連結軸と、
を有する移動機構と、
前記移動部材を前記シール部材の軸心方向から押圧することにより、前記リンク部材を介して前記シール部材を、当該シール部材の軸心と交差する方向に移動させる駆動手段と、
を備えたことを特徴とするシール装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシール装置において、
前記移動機構は、当該移動機構におけるシール部材の軸心が互いに平行となる状態で、一対、対向配設されているシール装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシール装置において、
前記駆動手段は、
前記各移動機構における一対のシール部材の軸線の延長方向に配設された直線駆動シリンダと、
当該直線駆動シリンダのシリンダロットと前記各移動機構における一対の移動部材とを各々連結する連結部材と、
を有するシール装置。
【請求項4】
請求項3に記載のシール装置において、
前記一対の移動機構のうちの一方の移動機構のシール部材と支持部材との間には、ユニバーサルジョイントが配設されるシール装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のシール装置において、
前記第1溝部と前記第2溝部とは、互いに直交する方向に延びるとともに、
前記第1カムフォロワの移動距離が前記第2カムフォロワの移動距離より大きくなるように、前記シール部材の軸心に対する前記連結部の配置角度を設定したシール装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のシール装置において、
前記シール部材は、熱により前記被包装物を収納した包装袋の開口部を溶着するシール装置。
【請求項7】
請求項6に記載のシール装置において、
減圧されたチャンバー内において、前記被包装物を収納した包装袋の開口部を閉止することにより、前記被包装物を前記包装袋によりシールするシール装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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