説明

シール部材とそれを備えたシール構造及びミスト除去装置

【課題】 対向して接合する構造物の間をシールし、オイルミスト等の漏出を防ぐシール部材を備えたシール構造を提供すること。
【解決手段】 シール部材1の対向するシール面2に筒状体21の接合端部22に形成した接合面23を密接させ、シール面2に接合面23が密接した状態で、接合端部22の接合面23を互いにシール面2に向けて締付ける締付斜面31を有する固定部材30とを備え、固定部材30は、シール面2に接合面23を密接させた状態で、筒状体21の接合端部22を外周側からシール部材1の軸心方向に締付けることにより、締付斜面31が接合端部22にシール部材1を軸方向に押圧する力F3を対向して作用させる締付バンド32で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向して接合する構造物の間をシールするシール部材と、そのシール部材を備えたシール構造及びそれを備えたミスト除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オイル漏れなどを防ぐシール構造が種々の技術分野において採用されている。このシール構造は、例えば、2つの部品の対向する構造物の接続面の場合、それらの間にシール部材(「ガスケット」ともいう)を設けてシールが図られている。
【0003】
例えば、この種のシール部材に関する先行技術として、その断面において、上方部と下方部との間に長手方向溝部が連続的に形成されたガスケットがある。このガスケットには、上方部に第1延在部分と第2延在部分とこれらの間に上方長手方向溝部が設けられ、下方部の側面に第1外側長手方向溝部と第2長手方向溝部とを設けている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、シール構造に関する先行技術として、大径部と小径部とが同心に形成された軸と、同様に大径部と小径部とが同心に形成され、上記軸が挿通される軸孔を有するハウジングと、内周側シールリップと外周側シールリップとを有するシール部材とを備え、上記軸とハウジングとの間に上記シール部材を取付けて軸を挿入することで、上記内周側シールリップを内周面に向けて押付け、上記外周側シールリップを外周面に向けて押付ける押付部を備えたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
一方、例えば、機械工場等においては、工具の冷却や潤滑のために切削油が供給され、この切削油が加工時に空気中に飛散してオイルミスト(この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、「油性」、「水溶性」の両方を含む)となっている。このように飛散したオイルミストは、作業者の健康を害するとともに、周囲の機械を汚染する要因や、工場外部に排出すると大気汚染の原因にもなる。
【0006】
そこで、本出願人は、このような気体中のオイルミスト等を捕集して除去するミスト除去装置を発明し、先に出願した。このミスト除去装置は、管状フィルタを支持板上に立設し、その管状フィルタの中空部に下部からミスト含有気体を供給し、管状フィルタで捕集されたミストを管状フィルタから垂れ落として下方のミスト溜部へ排出するようにしている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−127270号公報
【特許文献2】特開2010−65810号公報
【特許文献3】特開2010−42402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載のガスケットは、対向する面の一方に設けた溝状部分に下方部を配置し、他方の面を上方部に配置して押圧することで、第1延在部分と第2延在部分とを変形させて2つの面をシールする構造であるため、限られた構造の構造物における接合部にしか利用できず、本発明のように、対向して接合する構造物の間をシールすることができるものではない。
【0009】
また、上記特許文献2に記載のシール構造は、軸をハウジングの軸孔に挿入することによってシールリップを広げるようにするものであり、本発明のように、対向して接合する構造物の間をシールすることができるものではない。
【0010】
さらに、上記特許文献3に記載のミスト除去装置の場合、管状フィルタを配設する配設部の高さを変更してフィルタ面積を容易に変更することができるが、更なるシール部分の安定したシール性保持と、組立の容易化等を図ることが望まれている。
【0011】
そこで、本発明は、対向して接合する構造物の間をシールし、オイルミスト等の漏出を防ぐシール部材と、そのシール部材を備えたシール構造及びそれを備えたミスト除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のシール部材は、筒状断面の構造物を軸方向に対向させて接合する接合端部におけるリング状のシール部材であって、前記構造物の接合端部に形成した接合面に密接するように対向してシール面を形成した所定厚さのシール本体部と、前記シール本体部の内周部に形成されて前記接合面の内周部分に回り込む内周凸部と、前記シール本体部の外周部に形成されて前記接合面の外周部分に回り込む外周凸部とを有している。この構成によれば、シール部材の対向するシール面に構造物の接合端部を密接すれば、シール本体部の内周凸部と外周凸部とに接合端部の接合面が広い面で密接してシールすることができる。
【0013】
また、前記シール面は、前記構造物の接合端部に形成された接合面の内周及び外周の円弧状部に密接する円弧状に形成されていてもよい。このように構成すれば、円弧状に形成されている接合端部の接合面とシール部材のシール面とが円弧状の面で密接するので、均等な面圧で密接して安定したシール性を保つことができる。
【0014】
また、前記内周凸部は、対向させて接合する接合面の内周まで回り込んで前記シール面の円弧中心近傍の高さまで延設された内周延設部分を有していてもよい。このように構成すれば、シール部材の内周凸部に形成された内周延設部分が接合面の内周まで回り込み、シール面の円弧中心近傍位置まで密接するので、この内周延設部分が筒状断面の構造物の内面に接して構造物の内部におけるオイルミストなどを構造物内面でシールすることができる。
【0015】
また、前記シール本体部は、内周部から外周部の所定位置まで径方向に延びるスリット部を有していてもよい。このように構成すれば、円盤状板材をスリット部に挿入すれば、シール部材の内周部分に板材を保持し、その板材の外周部分をシール部材でシールすることができる。
【0016】
一方、本発明のシール構造は、前記いずれかのシール部材を備えたシール構造であって、前記シール部材と、前記シール部材の対向するシール面に密接するように前記構造物の接合端部に形成した接合面と、前記接合面が前記シール面に密接した状態で、前記接合端部を互いにシール面に向けて締付ける締付斜面を有する固定部材とを備えている。この構成によれば、構造物の接合端部における接合面をシール部材のシール面に密接させた状態で、固定部材の締付斜面によって更に接合面をシール面に押圧するので、筒状体の接合端部におけるシールが可能となる。
【0017】
また、前記固定部材は、前記シール面に前記接合面を密接させた状態で、前記接合端部を外周側からシール部材の軸心方向に締付けることで、前記締付斜面が前記接合端部を前記シール部材に向けて押圧する力を対向して作用させる締付バンドを備えていてもよい。このように構成すれば、締付バンドによる接合端部の径方向締付け動作によって、締付斜面が接合端部をシール部材に向けて押圧する力を作用させて接合面をシール面に密接させるので、締付バンドの締付け動作で簡単にシールすることができる。
【0018】
また、前記締付バンドは、前記接合端部を軸心方向に締付ける締付斜面の力作用点が、前記スリット部に挿入した板材の外周端部よりも内周側に位置するように構成されていてもよい。このように構成すれば、締付バンドを軸心方向に締付けることによって接合端部を介してシール部材に作用する力が、スリット部に挿入した板材の外周端部よりも内周側に作用するので、シール部材による板材の保持とシールとを両立させることができる。
【0019】
一方、本発明のミスト除去装置は、前記いずれかのシール構造を備えたミスト除去装置であって、ミスト含有気体を供給するとともに、捕集したミストを排出するドレン部と、前記ドレン部の上方に位置して管状フィルタを縦向きに配設するフィルタ部と、前記フィルタ部の周囲を囲う筒状体と、前記筒状体の上端部を塞ぐ蓋体と、前記管状フィルタの中空部にミスト含有気体を供給する供給機とを備え、前記筒状体は、上下方向端部に接合端部を有し、前記筒状体を軸方向に接合する接合端部に前記シール構造を備えている。この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、ミスト含有気体中の捕集されたミストを「ミスト(mist)」という。また、管状フィルタの縦向き配設とは、軸心方向を縦向きにして配設することをいう。この構成によれば、ドレン部から管状フィルタの中空部内に下方から供給されたミスト含有気体中のミストを管状フィルタで捕集し、その捕集したミストを管状フィルタの下方へ排出するミスト除去装置において、フィルタ部を形成するように対向して接合する筒状体の接合端部をシール構造でシールすることができる。
【0020】
また、前記フィルタ部は、前記管状フィルタを取付けるフィルタ取付板を下端に有し、前記フィルタ取付板を前記シール部材のスリット部に挿入した状態で、前記固定部材で前記接合端部を締付けることによって前記シール部材にフィルタ取付板を固定するようにしてもよい。このように構成すれば、フィルタ取付板をシール部材のスリット部で保持してシールし、このシール部材の対向するシール面で接合端部の接合面をシールすることができ、シール部材によって3つの部材のシールを同時行うことができる。
【0021】
また、前記筒状体と同径の筒状体を有する延長ユニット部を備え、前記筒状体の接合端部に前記シール構造を備えてもよい。このように構成すれば、延長ユニット部をフィルタ部の上方に縦向き配置することで管状フィルタを配置する空間の高さ調節が可能であり、管状フィルタの長さを変更してフィルタ面積を容易に変更することができる。また、延長ユニット部は、脱臭材を有する脱臭ユニットが設けられたものでもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、対向して接合する構造物の接合端部におけるシール性を保ち、オイルミストなどの漏れを防ぐことが可能となる。しかも、構造物の組立時には、容易に接合端部の位置に配置して組むことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るシール部材の断面図である。
【図2】(a) 〜(f) は、図1に示すシール部材の異なる例の断面図である。
【図3】図1に示すシール部材の全体斜視図である。
【図4】本発明に係るシール構造を示す分解断面図である。
【図5】図4に示すシール構造における締付バンドの締付レバーを示す斜視図である。
【図6】図4に示すシール構造の組立状体の断面図である。
【図7】図6に示すシール構造におけるシール部材への力作用図である。
【図8】図4に示すシール構造を備えた本発明に係るミスト除去装置の一部断面正面図である。
【図9】図8に示すミスト除去装置の一部断面側面図である。
【図10】図9に示すX−X矢視断面図である。
【図11】図9に示すミスト除去装置の一部拡大断面図であり、(a) はXIA部における断面図であり、(b) はXIB部における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、筒状断面の構造物として、後述するミスト除去装置50における筒状体を例にし、その筒状体の接合端部をシールするシール部材1と、それを備えたシール構造20を説明する。また、以下の実施形態では、後述するように、筒状体の接合端部が円弧状に形成されているため、シール部材1のシール面2も円弧状に形成された例を説明する。
【0025】
図1に示すように、シール部材1は、その断面において、筒状体21(図4)の接合端部22(図4)に形成された接合面23(図4)に密接するように対向してシール面2が形成された所定厚さのシール本体部3を有している。この実施形態のシール面2は、接合端部22の接合面23と密接する円弧状に形成されている。
【0026】
また、シール本体部3には、内周部に上記接合面23の内周部分に回り込む内周凸部5が形成され、外周部に上記接合面23の外周部分に回り込む外周凸部6が形成されている。これら内周凸部5及び外周凸部6は、図示する断面でシール本体部3の中心に対して上下方向に対称形状で形成されている。
【0027】
上記内周凸部5は、対向させて接合する両方の接合面23の内周まで回り込むように形成された内周延設部分7を有している。この内周延設部分7は、上記シール面2の円弧中心Oの近傍位置まで回り込んで延設されている(組立状態は、図5参照)。
【0028】
さらに、この実施形態のシール部材1は、シール本体部3に、内周部から上記シール面2の円弧中心Oを越えて外周部の所定位置まで径方向に延びるスリット部8が設けられている。このスリット部8は、後述するミスト除去装置50のシール構造20として使用する場合において、フィルタ取付板40(図6)の周囲をシールして支持するために利用される。詳細は後述する。
【0029】
このようなシール部材1の断面における大きさの関係としては、内周凸部5の高さH1は外周凸部6の高さH2よりも大きく形成されている。スリット部8は、内周面から円弧中心Oまでの距離W1に対して、外周部の所定位置まで径方向に延びる距離W2まで形成されている。
【0030】
図2(a) 〜(f) は、上記シール部材1の異なる例の断面図であり、シール部材1は、上記図1に示す好ましい断面形状以外の形状であってもよい(符号は、図1の符号を付して示す)。図2(a) は、スリット部8が内周面と外周面との中間部分まで形成された例である。図2(b) は、スリット部8を設けない例であり、後述するフィルタ取付板40が無い所で使用されるシール部材として利用できる。また、図2(c) は、内周面が凸状に形成された例であり、図2(d) は、内周面が凹状に形成された例、図2(e) は、内周凸部5が低く形成された例である。図2(f) は、スリット部8の内周側端部にOリング9を挿入して使用する例である。この例の場合、後述するフィルタ取付板40を設ける所と共通のシール部材1を利用して、フィルタ取付板40が無い所で使用するときにシール部材1の余分な変形を抑えることができる。これらの形態は一例であり、シール部材1の部分的な断面形状は使用条件等に応じて決定すればよい。
【0031】
図3に示すように、上記シール部材1は、筒状体21を軸方向に対向させて接合する接合端部22と接するようにリング状に形成されている。この図では、シール部材1の直径に対して断面を誇張して示しているが、実際のシール部材1としては、例えば、断面の高さH1(図1)が約20mm程度で、直径600mm程度の大きさ等で形成される。
【0032】
このシール部材1の製造方法としては、例えば、押出し成形機等によって上記図1に示す断面形状の製品を直線的に押出し成形し、それを必要な円周長さで切断する。その際、その内面と外面との円周長さの差を考慮してスムーズなリング状に形成されるように切断する。そして、その端部を接着剤で接着してリング状のシール部材1を形成する方法がある。また、シール部材1の材質としては、使用条件により異なるが、オイルミスト除去装置等に使用する場合は、例えば、NBR60(ニトリルゴム 硬度60)などが用いられる。
【0033】
以上のように構成されたシール部材1によれば、後述するように、シール部材1の対向するシール面2に構造物の接合端部22を密接すれば、シール本体部3の内周凸部5と外周凸部6とに接合端部22の接合面23が密接してシールすることができる(後述する図6参照)。
【0034】
しかも、接合端部22の接合面23とシール部材1のシール面2とが円弧状の面で密接するので、安定したシール性を保つことができる。
【0035】
その上、シール部材1の内周凸部5に形成された内周延設部分7が接合面23の内周まで回り込み、シール面2の円弧中心Oの近傍位置まで達するので、この内周延設部分7が筒状断面の構造物の内面に接して構造物の内部におけるオイルミストなどの漏れを防ぐことができる。
【0036】
なお、上記スリット部8は、後述するように、円盤状のフィルタ取付板(板材)40を挿入すれば、シール部材1の内周部分にフィルタ取付板40を保持することができ、その状態で接合端部22の間に挟んで接合することによって、フィルタ取付板40の外周部分と上下の筒状体21の接合端部22との3つを1つのシール部材1でまとめてシールすることができる。
【0037】
次に、図4〜7に基づいて、上記シール部材1を備えたシール構造20を説明する。このシール構造20は、筒状体21を上下に接合する部分を例にしている。
【0038】
図4に示すように、シール構造20としては、上記シール部材1と、このシール部材1の対向するシール面2に密接させる筒状体21の接合端部22と、シール部材1のスリット部8に挿入するフィルタ取付板40と、接合端部22を外周側から締付ける固定部材30(後述する図9に平面視の全体を示す)とを備えている。
【0039】
この固定部材30には、シール部材1の対向するシール面2に接合端部22を当接させた状態で、この接合端部22の外周に形成された円弧部24を斜めに押圧する締付斜面31が形成された締付バンド32が設けられている(図6)。この締付斜面31が形成された締付バンド32は、断面が略コ字状に形成されている。この図の締付バンド32は、断面部分のみを示している。
【0040】
図5に示すように、締付バンド32は、いわゆる外レバーバンドであり、接合端部22を囲うように設けられた締付バンド32を、突き合わせ分割部分に設けられた締付レバー33を閉める方向に倒すことで縮径して接合端部22を径方向内側に締めて固定するようになっている。公知の技術であるが、この実施形態では、締付バンド32の対向する両端にそれぞれ固定されたピン34,35が設けられ、一方のピン34に締付レバー33の一端が回動自在に取付けられている。また、この締付レバー33の両側には、一端が上記ピン35に支持され、他端が締付レバー33の回動支点となるピン34を越えたところで締付レバー33にピン36で回動自在に支持されたリンクプレート37が設けられている。従って、締付レバー33を締付バンド32から離すと、締付バンド32の両端部間は開き、締付バンド32に沿わせるように寝かせると狭まり、縮径されるようになっている。
【0041】
このように、この実施形態の締付バンド32は、締付レバー33(図10)を閉めることでリング状の接合端部22の外周に位置させた締付バンド32の部分を縮径させて締付斜面31で接合端部22をシール部材1のシール面2に押圧して密閉するようになっている。この実施形態の締付バンド32は、締付レバー33によってワンタッチで接合端部22に向けて締付けることができる構造としているが、例えば、ボルトバンドのように、ボルトをねじ込むことで接合端部22を巻き締めて固定するような構造としてもよい。
【0042】
図6に示すように、このシール構造20によれば、シール部材1の対向するシール面2に上記筒状体21の接合端部22に形成された接合面23を密接させ、スリット部8にフィルタ取付板40を挿入し、上記シール面2に上記接合面23が密接した状態で接合端部22の外周側から締付バンド32で接合端部22を締付ける。
【0043】
そして、この締付バンド32で上記接合端部22を中心に向けて径方向に締付けることで、上記締付斜面31によって両方の接合端部22の接合面23をシール部材1のシール面2に向けて押圧する。
【0044】
この締付バンド32による接合端部22の径方向締付け力F1により、締付斜面31に接する接合端部22には互いにシール面2に向けて接合面23を斜めに締付ける力F2が作用し、この力F2と同様に接合端部22をシール部材1に向けて押圧する力F3によって接合面23をシール部材1のシール面2と密接させている。
【0045】
また、この締付バンド32の締付は、上記締付レバー33を閉めることで、リング状の接合端部22の外周に位置させた締付バンド32を縮径させて締付斜面31で接合端部22をシール部材1のシール面2に押圧できるので、簡単な操作で行うことができる。
【0046】
しかも、この実施形態ではフィルタ取付板40をスリット部8に挿入しているので、締付バンド32による接合端部22の締付けによって両接合端部22とフィルタ取付板40との3つを同時に固定することができる。その上、スリット部8の最外周端部を、締付バンド32の締付斜面31が接合端部22に接する位置(力作用点)よりも外側(上記力F3を結ぶ一点鎖線よりも外側)にしているので、接合端部22をシール部材1に押圧する力によってフィルタ取付部40を保持してシールすることができる。
【0047】
図7は、上記接合端部22でシール部材1を押圧した状態を模式的に示した図であり、接合端部22でシール面2を押圧することによってシール部材1が多少変形して接合端部22と密接している。
【0048】
以上のように、上記シール構造20によれば、シール部材1のシール面2に筒状体(構造物)21の接合端部22における接合面23を密接させた状態で、その接合端部22を外周側からシール部材1の軸心方向に向けて締付バンド32で締付けることにより、この締付バンド32の締付斜面31によって接合面23をシール面2に押圧する力が対向して作用するので、筒状体21の接合端部22におけるシールが可能となる。
【0049】
すなわち、締付バンド32による接合端部22の径方向締付け動作によって、締付斜面31が接合端部22をシール部材1に向けて押圧する力を作用させるので、この力によって接合面23をシール面2に押圧して密接させ、簡単な固定操作でシールすることができる。
【0050】
なお、上記シール構造20に備えられた上述するシール部材1は、内周凸部5と外周凸部6とが設けられているため、下方の筒状体21の接合端部22に載せた状態で位置決めができ、その上部に載せる筒状体21の接合端部22を上部に載せても位置決めができるので、筒状体21を載せる場合に作業性良くシール構造20を組むことができる。
【0051】
次に、図8〜11に基づいて、ミスト除去装置50を説明する。なお、上記図1、3〜7に示す構成と同一の構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0052】
図8,9に示すように、この実施形態のミスト除去装置50は、4個のキャスタ61によって支持された架台部60と、この架台部60の上部に設けられたドレン部70と、このドレン部70の上部に設けられたフィルタ部80と、このフィルタ部80の上部に設けられた延長ユニット部90とを有している。
【0053】
上記架台部60は、枠組み構造で下面にブロワ(供給機)62が設けられている。このブロワ62は、駆動モータ63によって駆動され、排気管64が接続された上記フィルタ部80の空気を吸引することで、後述するように管状フィルタ100の中空部にミスト含有気体Aを供給(吸引)するようになっている。ブロワ62の排気は、消音ダクト65を通じて放出されている。ブロワ62としては、出力可変なように構成されており、フィルタ部80の内部からの吸引量を可変制御できるようになっている。この可変制御としては、例えば、インバータ制御を採用することができる。
【0054】
架台部60の上端には、上記ドレン部70の底板75が固定されている。そして、この底板75にドレン部70の外殻を形成するドレン部筒状体71が固定されている。この底板75とドレン部筒状体71との固定は、図11(b) の断面図に示すように、底板75の周囲に形成された凹状受部76にパッキン77(例えば、ゴムパッキン)を設け、このパッキン77上にドレン部筒状体71の下端に形成された接合端部72を載せ、締付バンド39で締付けることによって行われる。この締付バンド39は、上述した締付バンド32と同じ構造であるが、高さ方向寸法が小さいものとなっている。
【0055】
図8,9に示すように、上記ドレン部70の上部に設けられたフィルタ部80は、このフィルタ部80の外殻を形成するフィルタ部筒状体81を有している。そして、このフィルタ部筒状体81の下端に設けられた接合端部82と、上記ドレン部筒状体71の上端に設けられた接合端部72とが、上述したシール構造20によって接合されている。
【0056】
また、このフィルタ部80の下端には、管状フィルタ100を配置するためのフィルタ取付板40が設けられている。このフィルタ取付板40は円盤状に形成され、その上面に複数本の管状フィルタ100を配置する取付部41が設けられている。フィルタ取付板40は、ドレン部70とフィルタ部80との仕切り板である。取付部41は、円形の開口穴42の周囲から上向きに鍔部43が設けられている。管状フィルタ100は、フィルタ取付板40に設けられた鍔部43と下端内径とが一致するようになっている。
【0057】
管状フィルタ100は、上端が塞がれた管状に形成されており、上記フィルタ取付板40の取付部41に設けられた鍔部43に上方から差し込むことで、軸方向を縦向きにした管状フィルタ100をフィルタ取付板40の上面に配設することができる。この実施形態の管状フィルタ100は、図10に示すように、上記フィルタ取付板40の上面に6本が等間隔で放射状に配設されている。
【0058】
なお、この実施形態では、6本の管状フィルタ100を設けているが、この管状フィルタ100は、個数を増減させることで、様々な切削機械等や使用条件等に応じてフレキシブルにフィルタ面積を変更して幅広く対応することができ、必要に応じた本数にすればよい。
【0059】
図8,9に示すように、管状フィルタ100としては、複数層で形成されたフィルタ等が用いられる。この管状フィルタ100によって捕集されたミストは、重力でドレン部70に落下して溜るようになっている。このミスト除去装置50では、円形断面の管状フィルタ100を用いているが、多角形断面等の管状フィルタ100でもよい。
【0060】
また、上記フィルタ部筒状体81の一側方には排気口85が設けられ、この排気口85と上記ブロワ62とが排気管64によって接続されている。これにより、ブロワ62を駆動することにより、排気管64を介してフィルタ部80内の空気aが排気口85から吸引される。
【0061】
従って、上記管状フィルタ100によれば、フィルタ取付板40の開口穴42から管状フィルタ100の中空部に入ったミスト含有気体Aが、管状フィルタ100の下部から側面周囲のフィルタ面101を通ってミストが捕集されて除去され、そのミストが除去された気体aが排気口85から排気管64を介してブロワ62へと流れる。
【0062】
さらに、フィルタ取付板40の中央部には、管状フィルタ100を垂れ落ちてフィルタの外周部からフィルタ取付板40上に漏れたミストを上記ドレン部70に排出するための逆止弁45が設けられている。このフィルタ部80からドレン部70へミストを排出する構成は、逆止弁45に限らない。
【0063】
また、上記延長ユニット部90には、延長ユニット部90の外殻を形成する延長ユニット部筒状体91が設けられている。この延長ユニット部筒状体91は、上記フィルタ部筒状体81と同一径で高さ寸法が異なっている。この延長ユニット部筒状体91にも、上端と下端の接合端部92に円弧状の接合面93が設けられている。
【0064】
そして、この延長ユニット部筒状体91の下端に設けられた接合端部92が、上記フィルタ部筒状体81の上部に設けられた接合端部82と、上述した図4〜6に示すシール構造20によって接合されている。この接合部は、上述した締付バンド32で容易に連結して接合することができる。
【0065】
しかも、シール構造20に備えられているシール部材1によって、両接合端部82,92の接合面83,93がシールされるので、フィルタ部筒状体81の内部及び延長ユニット部筒状体91の内部を密閉してオイルミストなどの漏れを防止することができる。
【0066】
また、延長ユニット部筒状体91の上部には、延長ユニット部筒状体91の上面を塞ぐ円盤状の蓋体95が設けられている。図11(a) に示すように、蓋体95は、その周囲に下向きに開口した半円状の凹部96が設けられ、この凹部96の下面にパッキン97が設けられている。この蓋体95は、周囲の凹部96が延長ユニット部筒状体91の上端に設けられた接合端部92に載せられた状態で締付バンド32を締付レバー33で締付けることにより、延長ユニット部筒状体91の接合端部92がパッキン97に密着させられて固定される。
【0067】
このようにして縦方向に接合させられた蓋体95と上記フィルタ取付板40との間が、管状フィルタ100の配置空間となっている。つまり、フィルタ部80と延長ユニット部90との内部空間が管状フィルタ100の配置空間となっている。また、上記フィルタ取付板40と上記底板75との間が、ミスト含有気体Aの供給空間及び捕集したミストmを溜める部分となっている。このドレン部筒状体71の側面に、ドレン部70にミスト含有気体Aを吸引する吸気口78が設けられている。
【0068】
なお、上記ドレン部筒状体71、フィルタ部筒状体81及び延長ユニット部筒状体91としては、例えば、1mm程度の金属板に屈曲部を形成して強度を持たせて筒状体に形成したものを採用することにより、軽量化とコスト削減を図るとともに、ミスト除去装置50の組立て等を容易に行うことができる。また、これらの筒状体71,81,91としては、金属板以外にプラスチックで形成することも可能であり、筒状体71,81,91の材質・形状等は限定されるものではない。しかも、架台部60、フィルタ部80、延長ユニット部90等の軽量化によってミスト除去装置50の軽量化も可能であり、設置条件等に応じた移動等も容易に行うことができる。
【0069】
また、上記延長ユニット部90としては、処理したガスに臭気成分が残る場合には、活性炭吸着、オゾン分解、紫外線照射等の機能を具備させたものとして脱臭するようにしてもよい。
【0070】
以上のように構成されたミスト除去装置50によれば、図8,9に示すように、ブロワ62を駆動すると、排気管64を介して排気口85からフィルタ部80内の気体aが吸引されてフィルタ部80内が負圧になるので、管状フィルタ100を介して上記ドレン部70に吸気口78からミスト含有気体Aが吸引される。
【0071】
このドレン部70に吸引されるミスト含有気体Aは、吸気口78からドレン部70の広い空間に吸引されるとその流速が落とされた後、フィルタ取付板40の開口穴42を介して管状フィルタ100の中空部に下方から供給される。この管状フィルタ100の下方から上方に向けて供給されるミスト含有気体Aは、複数の管状フィルタ100の広いフィルタ面を遅い流速で通過し、その通過時に管状フィルタ100でミストが捕集される。この管状フィルタ100で捕集されたミストは、重力によって管状フィルタ100を伝って開口穴42からドレン部70に垂れ落ちて溜められる。そして、この管状フィルタ100の周囲からフィルタ部80及び延長ユニット部90へ出た気体aは、排気口85から排気管64を介して消音ダクト65に排出される。
【0072】
このように、縦向きに配設した管状フィルタ100によって、ミスト濃度の高いミスト含有気体Aでも、管状フィルタ100の下部で捕集されたミストmは下部から下方へ排出されるので、管状フィルタ100の上部ではミスト濃度の薄いミスト含有気体Aが通過することとなり、管状フィルタ100によってミスト含有気体A中のミストを効率よく捕集することができる。
【0073】
また、管状フィルタ100の下部からフィルタ取付板40の上部に染み出たミストmは、フィルタ取付板40の中央部に設けられた逆止弁45(図8)を開放することによってドレン部70に排出することができる。
【0074】
なお、上記シール部材1をフィルタ取付板40が無いフィルタ部筒状体81と延長ユニット部筒状体91との間に用いる場合には、上述した図2(f) に示すように、上記スリット部8にフィルタ取付板40と同等厚のOリング9等を挿入してシール部材1の余分な変形を抑えるようにすればよい。
【0075】
一方、図8,9に示すように、上記延長ユニット部筒状体91を用いれば、フィルタ部筒状体81の上部に延長ユニット部筒状体91を載せ、これらの接合部分を締付バンド32(図示略)によって連結すれば管状フィルタ100を配置する高さを容易に増すことができるので、フィルタ取付板40に配設される管状フィルタ100を長い管状フィルタ100とすることで、フィルタ面積を容易に増やすことができる。
【0076】
つまり、この例では、フィルタ部80の上部に1段の延長ユニット部90を設けた例を示したが、延長ユニット部筒状体91を複数段接続するようにしてもよく、管状フィルタ100の必要面積等に応じて任意の数の延長ユニット部筒状体91をフィルタ部80の上部に縦向きに配置するようにしてもよい。この時、このミスト除去装置50に備えられたシール構造20によれば、延長ユニット部筒状体91を容易に連結することができ、管状フィルタ100の配置区間を変更する作業を容易に行って、フィルタ面積を容易に変更することができる。
【0077】
従って、上記ミスト除去装置50によれば、使用場所の変更やミスト含有気体Aの処理量等に応じたフィルタ面積に調節することが容易にでき、オイルミスト等をシールして種々の使用条件に対して容易に対応できるミスト除去装置を提供することが可能となる。
【0078】
なお、上記実施形態では、接合端部22を円弧状に形成した例を説明したが、接合端部22は、内周部分と外周部分とが円弧状に形成され、中間部分が直線状に形成された形状等であってもよく、接合端部22の形状は上記実施形態に限定されるものではない。
【0079】
また、上記実施形態では、延長ユニット部筒状体91まで延びる長い管状フィルタ100を設けた例を示しているが、図示しないジョイント機構によって長さを変更できるような管状フィルタ100を使用するようにしてもよい。
【0080】
さらに、上記実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係るシール部材は、ミスト除去装置などにおける筒状断面の構造物を軸方向に対向させて接合する接合端部のシールに利用できる。
【符号の説明】
【0082】
1 シール部材
2 シール面
3 シール本体部
5 内周凸部
6 外周凸部
7 内周延設部分
8 スリット部
9 Oリング
20 シール構造
21 筒状体(構造物)
22 接合端部
23 接合面
24 円弧部
30 固定部材
31 締付斜面
32 締付バンド
33 締付レバー
39 締付バンド
40 フィルタ取付板
41 取付部
42 開口穴
43 鍔部
45 逆止弁
50 ミスト除去装置
60 架台部
62 ブロワ(吸引機)
63 駆動モータ
64 排気管
65 消音ダクト
70 ドレン部
71 ドレン部筒状体
72 接合端部
73 接合面
75 底板
76 凹状受部
77 パッキン
78 吸気口
80 フィルタ部
81 フィルタ部筒状体
82 接合端部
83 接合面
85 排気口
90 延長ユニット部
91 延長ユニット部筒状体
92 接合端部
93 接合面
95 蓋体
96 凹部
97 パッキン
100 管状フィルタ
A ミスト含有気体
a 気体
m ミスト
O 円弧中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状断面の構造物を軸方向に対向させて接合する接合端部におけるリング状のシール部材であって、
前記構造物の接合端部に形成した接合面に密接するように対向してシール面を形成した所定厚さのシール本体部と、
前記シール本体部の内周部に形成されて前記接合面の内周部分に回り込む内周凸部と、
前記シール本体部の外周部に形成されて前記接合面の外周部分に回り込む外周凸部と、
を有していることを特徴とするシール部材。
【請求項2】
前記シール面は、前記構造物の接合端部に形成された接合面の内周及び外周の円弧状部に密接する円弧状に形成されている請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
前記内周凸部は、対向させて接合する接合面の内周まで回り込んで前記シール面の円弧中心近傍の高さまで延設された内周延設部分を有している請求項2に記載のシール部材。
【請求項4】
前記シール本体部は、内周部から外周部の所定位置まで径方向に延びるスリット部を有している請求項1〜3のいずれか1項に記載のシール部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のシール部材を備えたシール構造であって、
前記シール部材と、
前記シール部材の対向するシール面に密接するように前記構造物の接合端部に形成した接合面と、
前記接合面が前記シール面に密接した状態で、前記接合端部を互いにシール面に向けて締付ける締付斜面を有する固定部材と、を備えていることを特徴とするシール構造。
【請求項6】
前記固定部材は、前記シール面に前記接合面を密接させた状態で、前記接合端部を外周側からシール部材の軸心方向に締付けることで、前記締付斜面が前記接合端部を前記シール部材に向けて押圧する力を対向して作用させる締付バンドで構成されている請求項5に記載のシール構造。
【請求項7】
前記締付バンドは、前記接合端部を軸心方向に締付ける締付斜面の力作用点が、前記スリット部に挿入した板材の外周端部よりも内周側に位置するように構成されている請求項6に記載のシール構造。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載のシール構造を備えたミスト除去装置であって、
ミスト含有気体を供給するとともに、捕集したミストを排出するドレン部と、
前記ドレン部の上方に位置して管状フィルタを縦向きに配設するフィルタ部と、
前記フィルタ部の周囲を囲う筒状体と、
前記筒状体の上端部を塞ぐ蓋体と、
前記管状フィルタの中空部にミスト含有気体を供給する供給機と、を備え、
前記筒状体は、上下方向端部に接合端部を有し、
前記筒状体を軸方向に接合する接合端部に前記シール構造を備えていることを特徴とするミスト除去装置。
【請求項9】
前記フィルタ部は、前記管状フィルタを取付けるフィルタ取付板を下端に有し、
前記フィルタ取付板を前記シール部材のスリット部に挿入した状態で、前記固定部材で前記接合端部を締付けることによって前記シール部材にフィルタ取付板を固定するようにした請求項8に記載のミスト除去装置。
【請求項10】
前記筒状体と同径の筒状体を有する延長ユニット部を備え、
前記筒状体の接合端部に前記シール構造を備えた請求項9に記載のミスト除去装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−100840(P2013−100840A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243524(P2011−243524)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(399020522)川重テクノロジー株式会社 (6)
【Fターム(参考)】