説明

ジアルキルアミンの脱水方法

【課題】 金属不純物を低減する必要のあるジアルキルアミンにおいて、蒸留精製をしなくとも、ジアルキルアミンの含水量を充分に低減できる脱水方法を提供する。
【解決手段】、脱水剤として、ジアルキルアミンの用途上、含有されることを許容し得る金属とジアルキルアミンとから得られる金属アミドを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアルキルアミンの脱水方法に関し、詳しくは、脱水剤として、ジアルキルアミンの用途上、含有されることを許容し得る金属とジアルキルアミンとから得られる金属アミドを使用するジアルキルアミンの脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム、テトラキス(ジエチルアミノ)チタン、テトラキス(ジエチルアミノ)ジルコニウム、テトラキス(ジエチルアミノ)ハフニウム、テトラキス(エチルメチルアミノ)チタン、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム、テトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウムは、CVD法またはALD法により、金属酸化物薄膜、金属窒化物薄膜、金属炭化物薄膜、酸化窒化物薄膜、炭化窒化物薄膜等の薄膜を形成するためのプレカーサとして有用である(特許文献1、特許文献2)。これら薄膜は、半導体素子のキャパシタ、バリア、ゲート絶縁、電極、ゲートとして使用されるので、プレカーサについては、できる限り金属不純物を除去したものが求められている。
【0003】
また、これらプレカーサ中に水分を含有すると、CVD法やALD法におけるパーティクル発生の要因となるため、水分のコントロールが必要である。上記プレカーサを製造するときに使用されるジアルキルアミン中の水分含有量が多いと、得られるプレカーサ中の水分も多くなる。
【0004】
ジアルキルアミンの脱水方法としては、金属ナトリウム、ナトリウムアミド、水素化ナトリウム、リチウムアルミハイドライド等の塩基性脱水剤を使用することが知られているが、これらを使用すると、ジアルキルアミン中にろ過困難な不純物金属化合物が存在する問題があり、脱水後に蒸留精製を行う必要があった。また、ろ過除去が可能なゼオライトやモレキュラーシーブス等の固体吸着型の脱水剤は、充分な脱水の能力を示さない問題がある(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−60170号公報
【特許文献2】米国公開特許2006/0141695
【特許文献3】特開平7−278064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、金属不純物低減の必要のあるジアルキルアミンにおいて、蒸留精製を必要としない、ジアルキルアミンの脱水方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、検討を重ねた結果、脱水剤として金属アミドを使用することで上記課題を解決することを見出し、本発明に到達した。
【0008】
本発明の第1は、ジアルキルアミンの脱水方法であり、脱水剤としてジアルキルアミンの用途上含有されることを許容し得る金属とジアルキルアミンとから得られる金属アミドを使用する方法を提供するものである。
【0009】
本発明の第2は、ジアルキルアミンが下記一般式(1)で表されるものであり、脱水剤が下記一般式(2)で表される金属アミドであり、脱水剤の使用量がジアルキルアミン1モルに対して0.01〜0.2モルの割合である第1の発明に記載の方法を提供するものである。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Rは、エチル基を表し、Rは、メチル基またはエチル基を表し、Mは、チタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムを表す。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蒸留精製を必要としないジアルキルアミンの脱水方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るジアルキルアミンとしては、特に制限されることなく周知一般に知られるものであり、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ第3ブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチルメチルアミン、エチルイソプロピルアミン等が挙げられる。
【0014】
本発明に係る脱水剤である、許容し得る金属とジアルキルアミンとから得られる金属アミドとは、脱水されるジアルキルアミンの使用用途上、含有されても問題のない金属元素と脱水されるジアルキルアミンとの反応物であり、金属原子にジアルキルアミンからプロトンが除かれた残基が結合した化合物である。
【0015】
上記の金属アミドは、水分と反応してジアルキルアミンと金属酸化物または金属水酸化物を生成する脱水機構を有する。即ち、被脱水物内には、不純物として含有が許容される金属酸化物または金属水酸化物が残留する。
【0016】
本発明のジアルキルアミンの脱水方法は、脱水剤として金属アミドを使用する前に不純物金属を増加させない予備脱水工程を設けてもよい。予備脱水工程としては、ゼオライト、モレキュラーシーブス等の固体吸着型脱水剤の使用、水吸着フィルターを使用する方法が挙げられる。
【0017】
本発明の脱水方法を適用できる典型例としては、CVDやALDのプレカーサに使用されるテトラキス(ジエチルアミノ)チタン、テトラキス(ジエチルアミノ)ジルコニウム、テトラキス(ジエチルアミノ)ハフニウム、テトラキス(エチルメチルアミノ)チタン、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム、テトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム等の原料となる上記一般式(1)で表されるジアルキルアミンの脱水が挙げられる。
【0018】
例えば、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウムの原料に使用されるエチルメチルアミンの脱水剤としては、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウムを使用すればよく、テトラキス(ジエチルアミノ)ハフニウムの原料となるジエチルアミンの脱水剤としては、テトラキス(ジエチルアミノ)ハフニウムを使用すればよい。
【0019】
この場合、上記一般式(1)で表されるジアルキルアミン1モルに対して脱水剤として使用する一般式(2)で表される金属アミドの好ましい使用量は、0.01モル〜0.2モルである。0.01モルより少ないと充分な脱水効果が得られない場合があり、0.2モルより多くても脱水効果の向上は認められない。
【0020】
また、脱水される一般式(1)で表されるジアルキルアミンの含水量は、0.5%以下が好ましく、0.1%以下がより好ましい。含水量が0.5%より大きい場合は、予備脱水工程を設けて、0.5%以下にすると、金属アミドの使用量を低減することができコスト的に好ましい。
【0021】
一般式(1)で表されるジアルキルアミンの場合、脱水剤に適正なモレキュラーシーブスを選択して使用すると含水量は、1000ppm〜100ppm程度となるので、予備脱水工程として好適である。
【実施例】
【0022】
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例によって制限を受けるものではない。
【0023】
[実施例]
含水量5129ppmのエチルメチルアミンに50質量%モレキュラーシーブス4A1/16(和光純薬工業社製)を投入し、240時間静置して予備脱水を行ない含水量440ppmのエチルメチルアミンを得た。これに、エチルメチルアミン1モルに対して0.05モルのテトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウムを加え、1分間撹拌し、30分静置した。得られたエチルメチルアミンの含水量を測定した結果、6.5ppmであった。なお、含水量は、間接通気共沸蒸留方式によるカールフィッシャー法で測定した。(測定装置:平沼微量水分測定装置;AQ−2100、気化装置:潤滑油水分気化装置;EV−2000L、陽極液:アクアミクロンAX;三菱化学社製、陰極液:アクアライトCN;関東化学社製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアルキルアミンの脱水方法であり、脱水剤としてジアルキルアミンの用途上含有されることを許容し得る金属とジアルキルアミンとから得られる金属アミドを使用する方法。
【請求項2】
ジアルキルアミンが下記一般式(1)で表されるものであり、脱水剤が下記一般式(2)で表される金属アミドであり、脱水剤の使用量がジアルキルアミン1モルに対して0.01〜0.2モルの割合である請求項1に記載の方法。
【化1】

(式中、Rは、エチル基を表し、Rは、メチル基またはエチル基を表し、Mは、チタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムを表す。)