説明

ジェットファンの電動機固定ボルトの探傷方法

【課題】道路トンネルの天井に設けられ、高速で回転し、かつ、自動車等の排気ガスや融雪剤などにさらされるジェットファンの電動機固定ボルトは、定期的に亀裂の有無などの点検を行う必要がある。しかし、大型で、トンネル天井に設けられたジェットファンの点検作業は非常に困難であるという課題がある。
【解決手段】棒状の胴部1と、その先端に設けたフライス加工機2aと、他端に設けた操作レバー4とで構成されたボルト研磨冶具5aを用い、このボルト研磨冶具5aをジェットファンの吹出口または吸込口から差し込み、前記吹出口または吸込口において操作レバー4を操作して電動機固定ボルトの頭を平面にした後、探傷作業を行うことにより、ジェットファンをトンネル天井に取り付けたままで電動機固定ボルトの点検を確実に短時間で行うことの出来る方法を提供することを目的とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内部の天井に取り付けられるジェットファンの電動機固定ボルトの探傷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長期間使用した金属製のボルトは、その使用形態で腐食による不具合が生じる恐れがある。特に、トンネル内部の天井に設けられ、高速で回転し、かつ、自動車等の排気ガスや融雪剤などにさらされるジェットファンについては、定期的に電動機固定ボルトの点検を行う必要がある。このようなジェットファンの構造について、図4を用いて説明する。ジェットファン101は、全長数メートルの円筒型の本体102と、その中心部に設けられる電動機103と、軸流型の羽根車104とで構成される。図4では、ジェットファン101の前後どちら側へも送風できるように電動機103を両軸型とし、その両方に軸流型の羽根車104を取り付けてある。2つの羽根車104は、逆向きに取り付け、ジェットファン101が前後双方向で同じ性能が得られるようになっている。ジェットファン101の本体102は、軸方向中心部に前後数本のサポート(図示せず)で支持され、風路を整える消音筒ハブ107を持つ前後の消音筒102aと電動機103が固定される送風筒102bで構成されている。電動機103は、送風筒102b内部に固定された台座105に電動機固定ボルト106で組み付けられている。
【0003】
このような電動機固定ボルト106の点検にあたっては、トンネル内部の天井に取り付けられたジェットファン101をリフターなどで下ろし、作業場所に移動させ、さらに、消音筒102aを取り外して行っていた。電動機固定ボルト106の探傷については、下記特許文献1等に記載されているとおり、超音波探触子の探触面を被測定物の面に対して密着するようにしなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−77234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなジェットファン101の電動機固定ボルト点検方法では、トンネル内部の天井に固定された全長数メートルのジェットファン101を、天井から下ろして分解しなくてはならないという課題がある。また、現場では交通規制をかけて決められた期間で確実に点検を実施するという課題がある。
【0006】
そこで本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、トンネル内に使用されるジェットファンの電動機固定ボルト点検方法において、ジェットファンをトンネル内部の天井に取り付けたままで電動機固定ボルトの点検を確実に短時間で行うことの出来る方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、この目的を達成するために、本発明は、送風筒と消音筒を備えたジェットファンの電動機固定ボルトの探傷方法において、棒状の胴部と、その先端に設けたフライス加工機と、他端に設けた操作部とで構成されたボルト研磨冶具を用い、このボルト研磨冶具を前記ジェットファンの吹出口または吸込口から差し込み、前記吹出口または吸込口において前記操作部を操作して電動機固定ボルトの頭を平面にした後、探傷作業を行うジェットファンの電動機固定ボルトの探傷方法であり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、送風筒と消音筒を備えたジェットファンの電動機固定ボルトの探傷方法において、棒状の胴部と、その先端に設けたフライス加工機と、他端に設けた操作部とで構成されたボルト研磨冶具を用い、このボルト研磨冶具を前記ジェットファンの吹出口または吸込口から差し込み、前記吹出口または吸込口において前記操作部を操作して電動機固定ボルトの頭を平面にした後、探傷作業を行うジェットファンの電動機固定ボルトの探傷方法により、離れた位置から操作してボルト頭を平面にした後、超音波探傷器の探触子をボルト頭に密着することが出来、正確に短時間で内部破断状況を診断できるという効果を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1のボルト研磨冶具の概略図
【図2】同座ぐり加工機を用いたボルト研磨冶具の概略図
【図3】同探傷冶具の概略図(A)全体図、(B)探触子の断面図
【図4】ジェットファンの構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の請求項1記載のジェットファンの電動機固定ボルトの探傷方法は、送風筒と消音筒を備えたジェットファンにおいて、棒状の胴部と、その先端に設けたフライス加工機と、他端に設けた操作部とで構成されたボルト研磨冶具を用い、このボルト研磨冶具を前記ジェットファンの吹出口または吸込口から差し込み、前記吹出口または吸込口において前記操作部を操作して電動機固定ボルトの頭を平面にした後、探傷作業を行うジェットファンの電動機固定ボルトの探傷方法としたものであり、全長数メートルのジェットファンをトンネルから下ろし、分解しなくても、電動機固定ボルトの点検を確実に短時間で探傷作業が実現可能であるという作用を有する。
【0011】
また、前記フライス加工機の粒度が変更できるようにしたものであり、全長数メートルのジェットファンをトンネルから下ろし、分解しなくても、電動機固定ボルトの点検を確実に短時間で探傷作業が実現可能であるという作用を有する。
【0012】
また、棒状の胴部と、その先端に設けた座ぐり加工機と、他端に設けた操作部とで構成されたボルト研磨冶具を用い、このボルト研磨冶具を前記ジェットファンの吹出口または吸込口から差し込み、前記吹出口または吸込口において前記操作部を操作して電動機固定ボルトの頭を超音波探傷器の探触子が接する面のみを座ぐり加工機で平面にした後、探傷作業を行うものであり、全長数メートルのジェットファンをトンネルから下ろし、分解しなくても、電動機固定ボルトの点検を確実に短時間で探傷作業が実現可能であるという作用を有する。
【0013】
また、ボルト頭を平面にした後、ゲル状のシール剤をボルト頭に塗布し、超音波探傷器によってボルト内の傷を探るものであり、全長数メートルのジェットファンをトンネルから下ろし、分解しなくても、電動機固定ボルトの点検を確実に短時間で探傷作業が実現可能であるという作用を有する。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
(実施の形態1)
従来の技術(図4)で示したように、ジェットファン101は、全長数メートルの円筒型の本体102と、その中心部に設けられる電動機103と、軸流型の羽根車104とで構成される。このジェットファン101は、前後どちら側へも送風できるように両軸型の電動機103を備え、その軸の両端部に軸流型の羽根車104を取り付けてある。2つの羽根車104は、逆向きに取りつけ、ジェットファン101が前後双方向で同じ性能が得られるようになっている。ジェットファン101の本体102は、電動機103が固定される送風筒102bと、その前後に設けられ、軸中心部に数本のサポートで支持された消音筒ハブ107を持つ消音筒102aとで構成されている。電動機103は、送風筒102b内部に固定された台座105に電動機固定ボルト106とナットで組み付けられている。そして、探傷作業が必要な電動機固定ボルト106は、長い消音筒102aを挟んだ中央部にある。この電動機固定ボルト106の探傷には、まず、電動機固定ボルト106の頭を平らにする必要がある。ジェットファン101を分解せずに電動機固定ボルト106の頭を平らにするため、図1に示すようなボルト研磨冶具5aを用いるのである。このボルト研磨冶具5aは、棒状の胴部1と、その先端に設けたフライス加工機2aと、他端に設けた操作部となる操作レバー4とで構成されている。フライス加工機2aの電源コード3は、胴部1内に収められている。次に、このボルト研磨冶具5aの使用方法について説明する。
【0016】
先に述べたように、傷の有無を調べたい電動機固定ボルト106は、ジェットファン101の端部開口から離れた中央部に位置している。まず、ボルト研磨冶具5aのフライス加工機2a側の先端を、消音筒102aの内面と消音筒ハブ107の間及び羽根車104の隙間を通し、電動機固定ボルト106の頭部にフライス加工機2aをあてがうようにする。その際には、フライス加工機2aが電動機固定ボルト106の頭面に平行に接するように位置を決定する。この状態で、操作レバー4を操作して、電動機固定ボルト106の頭を平面に加工するのである。すなわち、このような方法によって、ジェットファン101を分解することなく、短時間で電動機固定ボルト106の頭の平面研磨を可能にする。
【0017】
また、フライス加工機2aは電動機固定ボルト106のボルト頭の腐食や付着物の状況により、フライス加工機2aの粒度を変更して、適切な粒度を選定して電動機固定ボルト頭を平面にすることが可能であるので確実に短時間で点検が出来る。
【0018】
また、図2に示すように、先端に座ぐり加工機2bを用いたボルト研磨冶具5bとしても良い。この座ぐり加工機2bは、先端部は先端角が180°であるフラットな切削面を持ち、胴体部は切粉が外部へ吐き出すように螺旋状の溝が形成されている。この座ぐり加工機2bによれば、電動機固定ボルト106の頭を切削した際、電動機固定ボルト106のボルト頭の一部を超音波探傷器13の探触子13aが接する部分のみ平面加工が可能となる。従って、確実に短時間で電動機固定ボルト106の点検が出来る。
【0019】
次に、図3で示す探傷冶具11を用いて、実際に探傷作業を行う。この探傷冶具11は、棒状の胴部12と、その先端に二股に分かれたアームとで構成されている。このアームの一本は、超音波探傷器13の探触子13aが取り付けられる探触子アーム14である。他方のアームは、探触子アーム14で被測定物(固定ボルト)の測定箇所を押え付けるための支えアーム15である。探触子アーム14の先端は、胴部12と垂直に軸を設けて回動できるようになっている。この回動する部分に探触子13aが設けられている。探触子13aは、その接触面を支えアーム15に対面させている。探触子アーム14と支えアーム15は、探触子13aを被測定物(電動機固定ボルト106)の測定箇所に押え付けるために被測定物を挟むように、胴部12の手元側に設けた操作レバー16によって開閉動作ができるようになっている。
【0020】
このような構成の探傷冶具11による電動機固定ボルト106の探傷方法について説明する。
【0021】
傷の有無を調べたい電動機固定ボルト106に対し、探傷冶具11の先端を、電動機固定ボルト106の頭部側に探触子アーム14、ネジ部側またはナット側に支えアーム15をあてがうようにする。次に、操作レバー16を操作して探触子アーム14を閉じて、電動機固定ボルト106をつかむようにする。探触子アーム14の先端は回動自在に設けられており、探触子13aの接触面が電動機固定ボルト106の頭部に接触したとき、操作レバー16を完全に閉じる。探触子13aの接触面には、ゲル状のシール剤21を塗ってあるので、電動機固定ボルト106の頭部にゲル状のシール剤21が密着する。従って、電動機固定ボルト106の頭の表面の僅かな凹凸部分にゲル状のシール剤21が隙間を埋める状態を保持し、探触子13aと電動機固定ボルト106の頭が垂直に接することが容易となる。
【0022】
この状態で、超音波探傷器13を操作して電動機固定ボルト106の探傷検査を実施することで、手の届かない位置にある電動機固定ボルト106の点検を確実に短時間で実施することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、送風筒と消音筒を備えたジェットファンの電動機固定ボルトの探傷方法において、棒状の胴部と、その先端に設けたフライス加工機と、他端に設けた操作部とで構成されたボルト研磨冶具を用い、このボルト研磨冶具を前記ジェットファンの吹出口または吸込口から差し込み、前記吹出口または吸込口において前記操作部を操作して電動機固定ボルトの頭を平面にした後、探傷作業を行うジェットファンの電動機固定ボルトの探傷方法により、離れた位置から操作してボルト頭を平面にした後、超音波探傷器の探触子をボルト頭に密着することが出来、正確に短時間で内部破断状況を診断できるという効果を得ることが出来る。従って、トンネル内部の天井に設けられるようなジェットファンの点検、すなわち、電動機を固定する固定ボルトの探傷等に有用である。
【符号の説明】
【0024】
1 胴部
2a フライス加工機
2b 座ぐり加工機
3 電源コード
4 操作レバー
5a ボルト研磨冶具
5b ボルト研磨冶具
11 探傷冶具
12 胴部
13 超音波探傷器
13a 探触子
14 探触子アーム
15 支えアーム
16 操作レバー
21 シール剤
101 ジェットファン
102 本体
102a 消音筒
102b 送風筒
103 電動機
104 羽根車
105 台座
106 電動機固定ボルト
107 消音筒ハブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風筒と消音筒を備えたジェットファンの電動機固定ボルトの探傷方法において、
棒状の胴部と、その先端に設けたフライス加工機と、他端に設けた操作部とで構成されたボルト研磨冶具を用い、このボルト研磨冶具を前記ジェットファンの吹出口または吸込口から差し込み、前記吹出口または吸込口において前記操作部を操作して電動機固定ボルトの頭を平面にした後、探傷作業を行うジェットファンの電動機固定ボルトの探傷方法。
【請求項2】
前記フライス加工機の粒度が変更できる請求項1記載のジェットファンの電動機固定ボルトの探傷方法。
【請求項3】
送風筒と消音筒を備えたジェットファンの電動機固定ボルトの探傷方法において、棒状の胴部と、その先端に設けた座ぐり加工機と、他端に設けた操作部とで構成されたボルト研磨冶具を用い、このボルト研磨冶具を前記ジェットファンの吹出口または吸込口から差し込み、前記吹出口または吸込口において前記操作部を操作して電動機固定ボルトの頭を超音波探傷器の探触子が接する面のみを座ぐり加工機で平面にした後、探傷作業を行うジェットファンの電動機固定ボルトの探傷方法。
【請求項4】
ボルト頭を平面にした後、ゲル状のシール剤をボルト頭に塗布し、
超音波探傷器によってボルト内の傷を探る請求項1〜3いずれか一つに記載のジェットファンの電動機固定ボルトの探傷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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