ジェットポンプビーム取り付け状態確認方法
【課題】ジェットポンプビームに設けられたビームボルトによる押し付け力を精度良く確認できるジェットポンプビーム取り付け状態確認方法を提供する。
【解決手段】ジェットポンプビーム(以下、ビームという)27がトランジションピースの突出部25A,25Bに嵌め込まれ、ビーム27へのたわみ付与後に、ビーム27のビームボルト28を締め付ける。ビームボルト28の先端28Aがエルボ23に嵌め込まれたインサート31の上面に接触する。超音波センサヘッド40をビームボルト28に装着し、超音波センサヘッド40内の超音波センサ41から超音波をビームボルト28に送信する。超音波測定装置48は、ビームボルト28の先端28A及びインサート31の下面で生じた各反射波のエコー強度を求め、これらのエコー強度に基づいてエコー強度比Rを算出する。このエコー強度比Rによりビームの取り付け状態を確認する。
【解決手段】ジェットポンプビーム(以下、ビームという)27がトランジションピースの突出部25A,25Bに嵌め込まれ、ビーム27へのたわみ付与後に、ビーム27のビームボルト28を締め付ける。ビームボルト28の先端28Aがエルボ23に嵌め込まれたインサート31の上面に接触する。超音波センサヘッド40をビームボルト28に装着し、超音波センサヘッド40内の超音波センサ41から超音波をビームボルト28に送信する。超音波測定装置48は、ビームボルト28の先端28A及びインサート31の下面で生じた各反射波のエコー強度を求め、これらのエコー強度に基づいてエコー強度比Rを算出する。このエコー強度比Rによりビームの取り付け状態を確認する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェットポンプビームの取り付け状態確認方法に係り、特に、沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器内に設置されたジェットポンプに適用するのに好適なジェットポンプビームの取り付け状態確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉は、再循環系配管が接続された原子炉圧力容器(以下、RPVという)とRPV内の炉心を取り囲む円筒状の炉心シュラウドの間に形成された環状領域であるダウンカマ内に複数のジェットポンプを設置している。ジェットポンプは、エルボ、ノズル、ベルマウス、スロート及びディフューザを備える。再循環系配管に設けられた再循環ポンプの駆動によって昇圧された冷却水は、再循環系配管内を流れて、駆動水としてライザ管、トランジションピース及びエルボ内を通り、ノズルからベルマウス及びスロート内に噴出される。ノズルは駆動水の速度を増加させる。ダウンカマ内のノズル周囲に存在する冷却水が、噴出された駆動水の作用によって、被駆動水としてスロート内に吸込まれ、駆動水と運動量を交換しながらディフューザ内に流入する。ディフューザから排出された冷却水は、RPV内の下部プレナムを通って炉心に供給される。
【0003】
原子炉圧力容器内に設置されているジェットポンプに含まれるエルボ、ノズル、ベルマウス及びスロートは、一体化されて取り外し可能なインレットミキサを構成している。検査及び修理を行うとき、インレットミキサはトランジションピース及びディフューザから取り外される。
【0004】
ライザ管内を上昇した駆動水は、エルボで流れ方向が180°変えられて下向きの流れになり、ジェットポンプのノズルに流入する。この結果、上向きの流体反力がエルボに加わるため、ジェットポンプビームによってエルボの上面を押さえている。ジェットポンプビームは、ライザ管の上端に接続されたトランジションピースの上方に向かって伸びている一対の突出部のそれぞれに形成された溝に両端部が挿入され、たわみ状態で保持されている。
【0005】
特開昭63−168594号公報は、沸騰水型原子炉に用いられるジェットポンプを記載している。このジェットポンプは、ライザ管、インレットミキサ及びディフューザを備えている。インレットミキサは、ライザ管に接続されたエルボ、エルボに接続されたノズル、ノズルの下方に配置されたベルマウス、及びベルマウスの下端に設けられたスロートを有している。エルボを挟んで対向して配置された一対の突出部を有するトランジションピースが、ライザ管に取り付けられる。ジェットポンプビームが、一対の突出部に形成されたそれぞれの溝内に挿入され、テンショナがジェットポンプビームとエルボの頂部との間に配置されたテンショナによって、ジェットポンプビームにたわみ量δが付与される。このようにして、ジェットポンプビームのエルボがトランジションピースに取り付けられ、たわみ量δが付与されたジェットポンプビームによって、エルボがトランジションピースに押し付けられる。
【0006】
特許第4052377号公報は、ジェットポンプビーム固定装置を用いたジェットポンプビームの取り付け方法を記載している。このジェットポンプビーム固定装置は、ジェットポンプビームと噛み合ってこのジェットポンプビームを固定する際に用いられるビームボルトの周囲に形成されたラチェット歯と噛み合う固定装置をジェットポンプビームに取り付けている。特許第4052377号公報に記載された従来のジェットポンプビームの取り付け方法では、ジェットポンプビーム、トランジションピースに形成された溝、及びジェットポンプビームに取り付けられたビームボルトの下端部が接触する、エルボ頂部に形成された窪みに嵌め込まれたインサート上面における異物の有無を確認し、異物が存在する場合にそれを取り除くことが行われる。その後、ジェットポンプビームをトランジションピースの対向する一対の突出部に形成された各溝内に挿入してジェットポンプビームの中央部をテンショナで引っ張り上げてジェットポンプビームに所定のたわみ量を付与し、上記の固定装置によりビームボルトを締め付けている。
【0007】
特開2010−14674号公報は、ジェットポンプビームのボルト固定装置を用いたジェットポンプビームの取り付け方法を記載している。このボルト固定装置は、ビームボルトに軸方向に摺動可能に設けられたロックキャップ、ジェットポンプビームの上面に設置されてロックキャップを収納する本体ハウジングを有し、テーパ状外歯をロックキャップの外周側面に形成してこの外歯と噛み合う内歯状溝を本体ハウジングに形成している。特開2010−14674号公報におけるジェットポンプビームの取り付けは、以下のようにして行われる。ジェットポンプビームをトランジションピースの対向する一対の突出部に形成された各溝内に挿入し、ジェットポンプビームに回転可能に取り付けられたビームボルトによりインレットミキサのエルボを押し付けている。ボルト固定装置の外歯と内歯状溝を噛み合わせることによって、ビームボルトの回り止めを行っている。
【0008】
従来のジェットポンプの据付けでは、ジェットポンプビームのトラジションピースへの取り付け状態(ジェットポンプビームによるエルボの押付け力、及びビームボルト先端とインサートの間の異物の有無)を、ジェットポンプの据付け時に直接確認することができなかった。もし、ジェットポンプビームによるエルボの押付け力が不足したり、またはビームボルト先端とインサートの間に異物が介在していたりした場合には、流体反力に抗するに十分なエルボの押付け力が得られないことによるインレットミキサも振動等により、ジェットポンプの性能が想定どおりに生じないことが予想される。
【0009】
また、ボルトの取り付け状態の確認方法が、例えば、特開平2−88127号公報、特開平2−304325号公報及び特開平3−214033号公報に記載されている。
【0010】
特開平2−88127号公報は、ねじの着座確認装置を記載している。このねじの着座確認装置は、ホルダー内に設置された超音波センサ、超音波センサに超音波を送信する超音波パルス発生器、超音波センサからのエコー信号を受信する受信器、及び受信器及び超音波パルス発生器のそれぞれの出力信号を入力し、ねじ締結体を取り付ける対象物の、ねじ締結体頭部に接触する座面のエコー電圧レベルを検出するゲート回路を有する。特開平2−88127号公報に記載されたねじの着座確認は、ねじ締結体の対象物への着座時と未着座時では、着座時の方が、対象物の着座面の超音波反射率が減少して対象物の着座面エコーの電圧レベルが低下することに着目している。
【0011】
特開平2−304325号公報は、超音波ボルト締め付け作業確認方法を記載している。このボルト締め付け作業確認方法では、反射エコーのそれぞれの位置にゲートを設定し、予め記憶された基準ボルトの基準値と計測対象ボルトの計測値の差の絶対値もしくは予め記憶された基準値と計測値の比を取ることによって、ボルトの締結状態を確認する。
【0012】
さらに、特開平3−214033号公報は、ボルト締結前後での超音波の伝播時間とエコー高さに基づいて、ボルトの軸力及び曲がりを測定する技術を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭63−168594号公報
【特許文献2】特許第4052377号公報
【特許文献3】特開2010−14674号公報
【特許文献4】特開平2−88127号公報
【特許文献5】特開平2−304325号公報
【特許文献6】特開平3−214033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
沸騰水型原子炉に設けられたジェットポンプでは、ジェットポンプビームに回転可能に取り付けられたビームボルトの先端部に形成された曲面の曲率半径が、この先端部が接触する、エルボ上端部に形成された窪みに嵌め込まれたインサート上面に形成された下に凸の曲面の曲率半径よりも小さくなっている。
【0015】
発明者らは、上記した形状を有するビームボルトの先端面によるインサートの上面への押しつけ力を、超音波を用いて確認することを考えた。そこで、特開平2−88127号公報、特開平2−304325号公報及び特開平3−214033号公報に記載された、それぞれの超音波によるボルトの締結状態の確認技術の適用を検討した。
【0016】
特開平2−304325号公報に記載されたボルトの締結状態の確認では、計測対象のボルトでの測定値を、基準ボルトを用いて計測してあらかじめ記憶した基準値と比較してその締結状態を評価している。しかし、締結状態を確認する超音波センサを設置する対象物の表面状態により、超音波センサの音響的な接合状態が異なるため、測定値のバラつきが大きく評価精度が低下する。特に、沸騰水型原子炉に設けられたジェットポンプでは、先端面に曲面を有するビームボルトで、この曲面とは曲率半径が異なる、インサート上面に形成された下に凸の曲面を押圧するため、ビームボルトの先端とインサートの上面の接触部の状態の違いによって超音波センサの音響的な接合状態が異なり、その押しつけ力を精度良く確認することができない。
【0017】
特開平2−88127号公報に記載されたボルト(ねじ締結体)を対象物に締結した状態を確認する方法では、前述したように、ボルトの頭部の対象物への着座状態を、超音波を用いて確認しているが、この確認方法をビームボルトの先端面とインサートの上面との間での異物の有無の確認に適用したとしても、ビームボルトの先端とインサートの上面の接触部の状態の違いにより超音波センサの音響的な接合状態が異なるため、ジェットポンプビームに設けられたビームボルトの先端面によるインサートの上面への押しつけ力を精度良く確認することができない。特開平3−214033号公報に記載された、ボルトの軸力及び曲がりを測定する技術を、ジェットポンプビームに設けられたビームボルトの先端面によるインサートの上面への押しつけ力の確認に適用したとしても、同様な問題が生じる。
【0018】
また、ボルト締結の前後で超音波を用いた計測を行う場合でも、超音波センサを設置する対象のボルトの表面状態及び超音波センサからボルトへの超音波の入射方向が変わることなどにより、超音波センサの音響的な接合状態が変化する。このため、超音波による測定値のバラつきが大きくなり、ボルトの締結状態に対する評価精度が低下する。このような技術をジェットポンプビームに設けられたビームボルトの先端面によるインサートの上面への押しつけ力の確認に適用した場合には、押しつけ力を精度良く確認することができない。
【0019】
本発明の目的は、ジェットポンプビームに設けられたビームボルトによる取付け状態を精度良く確認することができるジェットポンプビーム取り付け状態確認方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、原子炉圧力容器内に設置されたディフューザに一端部が挿入され、原子炉圧力容器内に配置されたライザ管に他端部が連絡されたインレットミキサを、ライザ管に設けられたトランジションピースの一対の突出部の間に配置した状態で、一対の突出部にそれぞれ形成された溝内に、インレットミキサの上方に配置したジェットポンプビームの両端部を別々に嵌め込み、
ジェットポンプビームの中央部を上方に移動させてジェットポンプビームにたわみを付与し、
たわみが付与されたジェットポンプビームに噛み合った、下端部に第1曲面が形成されたネジ部材を、締め付けることにより、インレットミキサの上端部に嵌め込まれてその第1曲面の第1曲率半径よりも大きな第2曲率半径を有する第2曲面が上面に形成されたインサート部材のその第2曲面に押し付け、
ネジ部材の第1曲面がインサート部材の第2曲面に押し付けられている状態で、超音波センサからネジ部材に超音波を送信し、
第1曲面で生じた第1反射波の第1エコー強度、及びインサート部材の、第2曲面とは反対側の面で生じた第2反射波の第2エコー強度を求め、
第1エコー強度及び第2エコー強度を用いて、ジェットポンプビームの取り付け状態を確認することにある。
【0021】
本発明によれば、ネジ部材の第1曲面がインレットミキサの上端部に嵌め込まれたインサート部材の第2曲面に押し付けられている状態で超音波センサからネジ部材に送信された超音波により第1曲面で生じた第1反射波の第1エコー強度、及びその超音波によりインサート部材の、第2曲面とは反対側の面で生じた第2反射波の第2エコー強度をそれぞれ求め、第1エコー強度及び第2エコー強度を用いて、ジェットポンプビームの取り付け状態(ネジ部材による押しつけ力)を確認しているので、ビームボルトの第1曲面とインサート部材の第2曲面との接触状態が正常であるかを精度良く確認することができる。このように、本発明は、ジェットポンプビームの取り付け状態(ネジ部材による押しつけ力)を精度良く確認することができる。
【0022】
好ましくは、ジェットポンプビームの取り付け状態の確認は、第1エコー強度及び第2エコー強度を用いて求められたエコー強度比に基づいて行うことが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ジェットポンプビームに設けられたビームボルトによる取り付け状態を精度良く確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法を示す説明図である。
【図2】図1に示す超音波センサヘッドの縦断面図である。
【図3】図1に示すジェットポンプビーム取り付け状態確認方法が適用される沸騰水型原子炉の縦断面図である。
【図4】図3に示すジェットポンプ付近の拡大図である。
【図5】ジェットポンプビームが取り付けられたエルボ付近の斜視図である。
【図6】図5のVI−VI断面図である。
【図7】図1に示すジェットポンプビーム取り付け状態確認方法における作業工程のフローチャートである。
【図8】図7に示す超音波計測工程の作業を示す説明図である。
【図9】ジェットポンプビームに設けられたビームボルトに装着された超音波センサヘッドの超音波センサから送信された超音波の伝播挙動を示す説明図である。
【図10】ビームボルトとインサートが正常に接触している状態における、ジェットポンプビームのテンショニングの前と後での超音波エコー強度の測定結果を示す説明図である。
【図11】ビームボルトとインサートの間に異物が存在している状態における、ジェットポンプビームのテンショニングの前と後での超音波エコー強度の測定結果を示す説明図である。
【図12】正常状態及び異物介在状態のそれぞれにおけるビームボルト先端のエコー強度に対するインサート上面のエコー強度の強度比と、ジェットポンプビームのテンショニング力の関係を示す特性図である。
【図13】本発明の他の実施例である実施例2のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法における作業工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0026】
本発明の好適な一実施例である実施例1のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法を、図1、図2、図7、図8及び図9を用いて説明する。
【0027】
まず、本実施例のジェットポンプビームの取り付け方法を説明する前に、このジェットポンプが適用される沸騰水型原子炉の概略の構造を、図5及び図6を用いて以下に説明する。沸騰水型原子炉(BWR)は、原子炉圧力容器1を有し、原子炉圧力容器1内に炉心シュラウド4を設置している。炉心シュラウド4は、RPV1の内面に取り付けられたシュラウド支持構造物6によって支持される。原子炉圧力容器は、以下、RPVと称する。RPV1は、底部に下部鏡板である底部ヘッド2を有し、上端部に取り外し可能な上部ヘッド(上蓋)3を取り付けている。複数の燃料集合体が装荷された炉心5が、炉心シュラウド4内に配置される。気水分離器15及び蒸気乾燥器16がRPV1内で炉心5の上方に配置される。
【0028】
複数のジェットポンプ9が、RPV1と炉心シュラウド4の間に形成される環状のダウンカマ7内に配置され、シュラウド支持構造物6に設置される。RPV1に設けられる再循環系は、再循環系配管19及び再循環系配管19に設置された再循環ポンプ(図示せず)を有する。再循環系配管19の一端はRPV1のノズルに接続されてダウンカマ7に連絡される。再循環系配管19の他端は、RPV1の入口ノズル8に接続されてライザエルボ20(図4参照)に連絡される。ライザエルボ20はダウンカマ4内に配置されたライザ管21の下端に接続され、ライザ管13の上端はトランジションピース22に接続される。トランジションピース22は、実質的には、ライザ管13の一部である。
【0029】
ジェットポンプ9は、ディフューザ13及びインレットミキサ24を有する。インレットミキサ24は、エルボ23、ノズル10、ベルマウス及びスロート12を有し、これらが一体になって構成されている。トランジションピース22はジェットポンプ9のエルボ23に接続される。エルボ23の他端がノズル10に接続され、エルボ23で流路が180°曲げられている。ノズル10は、複数の支持板によってベルマウスに取り付けられ、このベルマウスの下端にスロート12が接続される。ディフューザ13の下端がシュラウド支持構造物6に接合される。スロート12とディフューザ13はスリップジョイントで接続され、このスリップジョイントにおいてスロート12の下端部がディフューザ13の上端部内に挿入されている。
【0030】
RPV1の内面に取り付けられて水平方向に伸びるライザブレース32は、ライザ管21を支持している。ライザ管13に取り付けられて水平方向に伸びているブラケット33が、ライザ管21の両隣に位置している2基のジェットポンプ9のそれぞれのスロート12を保持する。ブラケット33に取り付けられたサポート部材34が、スロート12を鉛直方向に固定している。
【0031】
トランジションピース22は上方に向かって伸びる対となる突出部25A,25Bを有しており、トランジションピース22に接続された一つのエルボ23が、突出部25Aと突出部25Bの間に配置される(図5及び図6参照)。このエルボ23は、1本のライザ管21に連絡される2基のジェットポンプ9のうちの1基のジェットポンプ9のエルボ23である。トランジションピース22の他の一対の突出部25A,25Bの間に、このトランジションピース22に接続された他のエルボ23が配置される(図5参照)。このエルボ23は、上記した2基のジェットポンプ9のうちの残りのジェットポンプ9のエルボ23である。トランジションピース22の内部には、ライザ管21と2本のエルボ23をそれぞれ連絡する駆動水通路が形成されている。水平方向に伸びる溝30Aが2本の突出部25Aに形成され、水平方向に伸びて溝30Aと対向する溝30Bが2本の突出部25Bに形成される(図6参照)。ビームアセンブリ26のジェットポンプビーム27が、対向して配置された一対の突出部25A,25Bに形成された溝30A,30B内に挿入されている。他のビームアセンブリ26のジェットポンプビーム27が、対向して配置された他の一対の突出部25A,25Bに形成された溝30A,30B内に挿入されている。
【0032】
両端部が溝30A,30B内に挿入されたジェットポンプビーム27に対して、ビームテンショニング(たわみ付与)が実施され、ジェットポンプビーム27に所定のたわみ量が付与される。その後、ジェットポンプビーム27に回転可能に取り付けられたビームボルト28を締め付けることによって、インレットミキサ24がトランジションピース22、すなわちライザ管21に押しつけられる。エルボ23の上端部に窪み36が形成されており(図1参照)、この窪み36内にインサート31が嵌め込まれている(図1及び図6参照)。インサート31の上面には、凹部となる下に凸の第1曲面が形成されている。締めつけられたビームボルト28の先端に形成された第2曲面が、インサート31の上面に形成された下に凸の第1曲面に接触している。第1曲面の曲率半径が第2曲面の曲率半径よりも大きくなっている。
【0033】
インレットミキサ24は、保守点検を行うとき、ビームボルト28を緩めてジェットポンプビーム27を突出部25A,25Bから取り外し、ブラケット33からサポート部材34を取り外すことによって、ディフューザ13、及びライザ管21、すなわちトランジションピース22から取り外すことができる。
【0034】
ビームアセンブリ26を、図6を用いて説明する。ビームアセンブリ26は、ジェットポンプビーム27及びビームボルト28を有する。ジェットポンプビーム27は、対向する突出部25A,25Bにおいて、突出部25Aに形成された溝30Aの垂直な面と、突出部25Bに形成された溝30Bの垂直な面との間の長さを有している。ジェットポンプビーム27の長手方向の中央部に、ビームボルト28が取り付けられている。ビームボルト28は、上下方向に伸びており、ジェットポンプビーム27に形成された上下方向に貫通するネジ穴と噛み合っている。キーパ29がジェットポンプビーム27の上面に設けられる。ジェットポンプビーム27の両端部が、対向する突出部25Aの溝30A及び突出部25Bの溝30Bに挿入されている。
【0035】
RPV1内の上部に存在する被駆動水である冷却水(被駆動流体、冷却材)は、給水配管18からRPV1に供給された給水と混合されてダウンカマ7内を下降する。ダウンカマ7内の冷却水は、再循環ポンプの駆動によって再循環系配管19内に吸引され、再循環ポンプによって昇圧される。この昇圧された冷却水を、便宜的に、駆動水(駆動流体)という。この駆動水は、再循環系配管19、ライザエルボ20、ライザ管21、トランジションピース22及びエルボ23内を流れてノズル10に達し、ノズル10からベルマウス及びスロート12内に噴出される。ダウンカマ7内でノズル10の周囲に存在する被駆動水である冷却水は、ノズル10からの駆動水の噴出によって、ノズル10とベルマウスの間に形成される冷却水通路を通り、ベルマウスを経てスロート12内に吸い込まれる。この冷却水は、駆動水と共にスロート12内を下降し、ディフューザ13の下端から吐出される。ディフューザ13から吐出された冷却水は、下部プレナム14を経て炉心5に供給される。
【0036】
冷却水は、炉心5を通過する際に加熱されて水及び蒸気を含む気液二相流となる。気水分離器15は気液二相流を蒸気と水に分離する。分離された蒸気は、更に蒸気乾燥器16で湿分を除去されて主蒸気配管17に導かれる。この蒸気は、主蒸気配管17により蒸気タービン(図示せず)に導かれ、蒸気タービンを回転させる。蒸気タービンに連結された発電機が回転し、電力が発生する。蒸気タービンから排出された蒸気は、復水器(図示せず)で凝縮されて水となる。この凝縮水は、給水として給水配管18によりRPV1内に供給される。気水分離器15及び蒸気乾燥器16で分離された水は、落下して冷却水としてダウンカマ7内に達する。
【0037】
エルボ14、ノズル16、ベルマウス17、スロート18及びディフューザ19を主要な構成要素とするジェットポンプ15は、ノズル16の周囲の冷却水を吸込むことにより、少ない駆動水の流量でより多くの冷却水を炉心5に送り込むことができる。
【0038】
所定のたわみ量が付与されたジェットポンプビーム27は、エルボ23、すなわち、インレットミキサ24をライザ管21側に押圧する押しつけ力を、ビームボルト28を介してエルボ23に加えている。具体的には、ジェットポンプビーム27及びビームボルト28は、エルボ23内を駆動水が流れる際に流体反力が作用するエルボ23に押しつけ力を付与する。
【0039】
例えば、インレットミキサ24の振動が増大したときには、沸騰水型原子炉の定期検査の期間中において、今まで用いられていたジェットポンプビーム27を新しいジェットポンプビーム27に交換する場合がある。この時におけるジェットポンプビームの取り付け方法を例に挙げて、本実施例のジェットポンプビームの取り付け方法を説明する。ビームボルト28を緩めてジェットポンプビーム27を一対の突出部25A,25Bの溝30A,30Bから抜き取る。その後、新しいジェットポンプビーム27を一対の突出部25A,25Bに取り付ける際において、本実施例のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法が実施される。このジェットポンプビーム取り付け状態確認方法を、図1、図2、図7、図8及び図9を用いて説明する。なお、新設の沸騰水型原子炉において、ジェットポンプビーム27をトランジションピース22の一対の突出部25A,25Bに取り付ける際にも本実施例を適用しても良い。
【0040】
本実施例のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法には、図1及び図2に示す取り付け状態確認装置67が用いられる。取り付け状態確認装置67は、超音波センサヘッド40及び超音波測定装置48を有する。
【0041】
超音波センサヘッド40は、超音波センサ41、固定機構42、筺体43、荷重調整おもり45及び押し付けバネ46を有する。筺体43は内部に孔部44を形成しており、この孔部44は筺体43の一端において外に向かって解放されている。筐体43において、傾斜面が孔部44の先端部に形成されている。この傾斜面は、ビームボルト28の頭部を孔部44に挿入する際のガイドとして機能する。
【0042】
超音波センサ41は、筺体43の孔部44内に配置され、孔部44内に配置された、少なくとも2軸を有するジンバル構造になっている固定機構42に取り付けられている。固定機構42は孔部44の軸方向に移動可能であり、固定機構42の一部が孔部44の内面に形成された少なくとも1つの溝(図示せず)内に挿入されている。この溝は孔部44の軸方向に伸びている。固定機構42の一部がその溝内に挿入されているので、固定機構42が孔部44の周方向に回転することが防止される。押し付けバネ46は、孔部44の底面と超音波センサ41の間に配置され、孔部44の底面及び超音波センサ41の一面に接触している。荷重調整おもり45が、筺体43の、孔部44が解放されていない他端に固定ネジ47を用いて取り付けられる。
【0043】
超音波測定装置48は、同軸ケーブル49により超音波センサ41に接続される。
【0044】
取り付け状態確認装置67を用いた本実施例のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法は、図7に示す作業工程に基づいて行われる。
【0045】
沸騰水型原子炉の定期検査の期間中において、RPV1の上部ヘッド3が取り外され、RPV1内の蒸気乾燥器16及び気水分離器15が取り外されてRPV1外に取り出される。炉心5内の全燃料集合体が、RPV1から取り出されて燃料貯蔵プールに移送される(図示せず)。燃料集合体の移送時には、冷却水66が、RPV1の真上に形成されている原子炉ウエル65内に充填されている(図8参照)。
【0046】
ビームボルト28を緩めて今まで使用されたジェットポンプビーム27をトランジションピース22の一対の突出部25A,25Bの溝30A,30Bから抜き取る。その後、新しいジェットポンプビーム27を一対の突出部25A,25Bに取り付けるときにおいて、本実施例のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法が実施される。
【0047】
異物が取合い部に存在しているかを確認する(ステップS1)。作業員は、新しいビーム27を取り付ける突出部25A,25Bの溝30A,30B、及びジェットポンプビーム27に設けられたビームボルト28の先端28Aが接触する、エルボ23の上部に形成された窪み31に嵌め込まれたインサート31の上面をそれぞれ点検する。また、作業員は、取り付けるジェットポンプビーム27の表面も点検する。それらにおいて異物が存在しているかを判定する(ステップS2)。異物が存在する(YES)と判定されたときには、該当する部分からその異物を除去する(ステップS7)。異物を除去した後、ステップS1における確認を再度行う。
【0048】
ステップS2において、異物が存在しない(NO)と判定された場合には、ジェットポンプビームの調整及び据え付けを行う(ステップS3)。図5及び図6に示すように、ビームボルト28を取り付けているジェットポンプビーム27を、対向する一対の突出部25A,25Bに装着する。ジェットポンプビーム27の一端部を突出部25Aの溝30Aに嵌め込み、そのジェットポンプビーム27の他端部をその突出部25Aと対向している突出部25Bの溝30Bに嵌め込む。その後、ジェットポンプビーム27を水平方向で溝30A,30Bに沿って移動させ、ジェットポンプビーム27の両端部を溝30A,30B内の所定の位置に位置決めする。そして、ビームテンショニング(たわみ付与)を実施する(ステップS4)。テンショナ(図示せず)をジェットポンプビーム27の長手方向での中央部に引っ掛けて、テンショナにより、ジェットポンプビーム27の中央部を上方に向かって引っ張り上げる。これにより、ジェットポンプビーム27にたわみが付与される。
【0049】
その後、ビームボルトが締め付けられる(ステップS5)。ジェットポンプビーム27をテンショナで引っ張り上げている状態で、ジェットポンプビーム27に形成されて上下方向に貫通するネジ穴に噛み合っているビームボルト28を締め付ける。この締め付けは、ビームボルト28の先端28Aが窪み31に嵌め込まれたインサート31の上面に接触するまで行われる。具体的には、ビームボルト28の先端28Aがインサート31の上面に形成された下に凸の曲面に接触する。ビームボルト28の締め付けが終了した後、突起部27A,27Bからテンショナが外される。テンショナが外された後においても、ビームボルト28の先端28Aが、インサート31の上面に形成された下に凸の曲面に接触しているので、ステップS4でジェットポンプビーム27に付与されたたわみが保持される。
【0050】
超音波計測が行われる(ステップS6)。この超音波計測は、ジェットポンプビーム27の取り付け状態を確認するために行われる。超音波計測を行うに際して、超音波センサヘッダ40が、RPV1内に設置されたジェットポンプ9のインレットミキサ24のエルボ23を抑えている、ジェットポンプビーム27に取り付けられたビームボルト28の頭部に装着される。
【0051】
超音波センサヘッダ40のビームボルト28への装着を、具体的に説明する。RPV1を収納する原子炉格納容器(図示せず)を内部に設置した原子炉建屋(図示せず)内の運転床68上に、作業台車(例えば、燃料交換機)63が設置されている(図8参照)。作業台車63は、冷却水が充填された原子炉ウエル65の上方を跨いでいる。超音波測定装置48が作業台車63上に設けられている。作業台車63に乗っている作業員が、超音波センサヘッダ40に取り付けられた保持機構64を持って、超音波センサヘッダ40を原子炉ウエル65からRPV1内へ下降させる。やがて、超音波センサヘッダ40の筺体43の下端が、ジェットポンプビーム27に取り付けられたビームボルト28の上端付近まで到達する。保持機構64による超音波センサヘッダ40の下降は、冷却水中に配置された監視カメラ(図示せず)で撮影されてモニタに表示された映像を監視しながら行われる。筺体43に形成された孔部44がビームボルト28の真上に位置しており、超音波センサヘッダ40がさらに下降すると、ビームボルト28の頭部が筺体43の孔部44内に挿入される。超音波センサ41がビームボルト28の上端に接触したとき、超音波センサヘッダ40の下降が停止される(図8参照)。
【0052】
ジンバル構造の固定機構42、及び押し付けバネ46の作用によって、超音波センサ41はビームボルト28の上端面に密着して押し付けられる。さらに、超音波センサ41による超音波計測時において、超音波センサ41のビームボルト28の上端面への押付け荷重を一定に保つために、超音波センサ41は、筺体43及び荷重調整おもり45により生じる所定の荷重でビームボルト28の上端に押し付けられる。押し付けバネ46は、超音波センサ41がビームボルト28の上端面に接触したときの衝撃により、超音波センサ41の表面が割れるのを防止する役割も兼ねている。
【0053】
超音波センサ41のビームボルト28の上端への押し付け荷重は、気中または水中の計測環境に応じて、押し付けバネ46及び荷重調整おもり45を変更することにより、所定の押し付け荷重に設定することができる。荷重調整おもり45は固定ネジ47により筺体43に取り付けられるので、固定ネジ47を外すことによって簡単に荷重調整おもり45を交換することができる。
【0054】
本実施例では、超音波センサ41が水中で用いられるため、RPV1内の冷却水が、超音波センサ41とビームボルト28の間でカプラントの役割を果たす。超音波センサヘッド40を原子炉ウエル65内の冷却水中に沈めたとき、筺体43の孔部44内の空気が、筺体43の上端部に形成されて孔部44に連通して筺体43の上方に解放される空気抜き孔(図示せず)を通して筺体43の外部に排気される。このため、冷却水が孔部44内に満たされる。
【0055】
なお、例えば、RPV1内の冷却水を排出して超音波センサヘッド40を気中に存在するビームボルト28に装着する場合には、超音波センサ41から送信された超音波をビームボルト28に入射するために、カプラント材(グリセリン系、油系、水など)を事前に超音波センサ41の先端もしくは、ビームボルト28の上端に予め塗布する。
【0056】
ビームボルト28の上端に接触した超音波センサ41から送信された超音波51が、ビームボルト28に入射される。この超音波51は、ビームボルト28内を下方に向かって伝播してビームボルト28の先端28Aに到達する。先端28Aに到達した超音波51の一部は先端28Aで反射された反射波52となり、残りの超音波51は透過波53となってインサート31に伝達される。この透過波53はインサート31の下面で反射されて反射波54になる。ビームボルト28内を上方に向かって伝播する反射波52は、超音波センサ41に受信されて第1エコー(第1受信波)となり、インサート31及びビームボルト28内を上方に向かって伝播する反射波54は、超音波センサ41に受信されて第2エコー(第2受信波)となる。反射波52の強度に対するインサート31に伝達される透過波(超音波)53の強度の割合は、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面の接触状態によって変化する。
【0057】
ここで、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面の接触状態が変化したときにおける第1エコー(第1受信波)及び第2エコー(第2受信波)違いを、図10及び図11を用いて具体的に説明する。
【0058】
図10は、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面が正常に接触している状態における、ジェットポンプビーム27のテンショニングの前と後での第1エコー強度56及び第2エコー強度57のそれぞれの測定結果を示している。前述したように、ビームボルト28の先端28は、曲面(具体的には、球面)を形成しており、この曲面よりも大きな曲率半径を有する、インサート31の上面に形成された下に凸の曲面(具体的には、球面)と接触している。インサート31の上面にビームボルト28の先端28Aを乗せただけのテンショニング前における状態では、ジェットポンプビーム27のたわみによる押し付け力がビームボルト28を介してインサート31の上面に作用していないため、ビームボルト28の先端28Aがビームボルト28の自重によりインサート31の上面に接触しているだけである。このため、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面の接触面積が小さくなる。この結果、ビームボルト28の先端28Aにおける反射波52のエコー強度56が大きく、また、インサート31内に伝達されてインサート31の下面で反射した反射波54のエコー強度57がエコー強度56よりも小さくなる(図7のテンショニング前を参照)。
【0059】
ジェットポンプビーム27に上向きの所定の荷重を付与したテンショニング後におけるジェットポンプビーム27がたわんでいる状態では、ビームボルト28の先端28Aの曲面(球面)の曲率半径は、たわんでいるジェットポンプビーム27による押し付け力によりインサート31の上面に押し付けられたビームボルト28の弾性変形に伴い、破線55で示すように増大する。ビームボルト28の先端28Aの曲面の曲率半径の増大は、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面との接触面積の増大をもたらす。この結果、ビームボルト28の先端28Aに到達した超音波51のうち、透過波53となってインサート31に伝達される超音波が増大する。これにより、ビームボルト28の先端28Aで発生する反射波52のエコー強度56はテンショニング前に比べて減少し、インサート31内に伝達した透過波53によりインサート31の下面で発生する反射波54のエコー強度57はテンショニング前に比べて増大する。
【0060】
次に、異物がビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面との間に存在する場合における反射波54のエコー強度57について説明する。図11は、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の間に異物59が存在している状態における、ジェットポンプビーム27のテンショニングの前と後での第1エコー強度56及び第2エコー強度57のそれぞれの測定結果を示している。異物59が存在する場合におけるジェットポンプビーム27のテンショニング前では、ビームボルト28の自重が異物59を介してインサート31の上面には加わっているだけであり、ビームボルト28の先端28Aの曲面の曲率半径はビームボルト28の製造直後でのその曲面の曲率半径と同じであり、また、異物59が介在するためにビームボルト28の先端28Aがインサート31の上面に直接接触していない。このため、異物59が存在する場合であってもテンショニング前では、ビームボルト28内を下方に向かって伝播した超音波51によって生じる反射波52のエコー強度56及び反射波54のエコー強度57は、実質的に、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面が正常に接触している状態(図10)でのテンショニング前におけるエコー強度56及び57のそれぞれと同じになる(図10及び図11のテンショニング前を参照)。反射波52のエコー強度56は反射波54のエコー強度57よりも大きくなる。
【0061】
異物59が存在する場合においても、ステップS4のテンショニングが行われた後においては、たわみを付与されたジェットポンプビーム27による押し付け力によりインサート31の上面に向かって押し付けられたビームボルト28の弾性変形に伴って、ジェットポンプビーム27に取り付けられたビームボルト28の先端28Aの曲面(球面)の曲率半径が、図11の上段において破線55で示すように、増大する。このとき、異物59もインサート31の上面に押し付けられる。この結果、ビームボルト28の先端28Aと異物59との接触面積は増大するが、ビームボルト28がインサート31に、直接、接触しないため、透過波53の伝達に寄与する、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面との接触面積はほとんど増大しない。したがって、異物59が存在する場合では、ビームボルト28の先端28Aで生じる反射波52のエコー強度56、及びインサート31の下面で生じる反射波54のエコー強度57は、テンショニングの前後においてほとんど変化しない。
【0062】
ただし、異物59が樹脂などのように柔らかい材質である場合には、ビームボルト28の先端28Aが異物59自体の塑性変形によりインサート31の上面により密着するため、反射波54が若干増大する場合がある。しかし、この場合でも、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面が正常な接触状態であるときと比較して、反射波54のエコー強度57は小さい。また、図9に示したように、ビームボルト28の上面に装着した超音波センサヘッド40において、ジンバル構造を有する固定機構42を用いて超音波センサ41をビームボルト28の上端に密着させる場合でも、超音波センサ41とビームボルト28の上端との接触状態により、超音波センサ41からビームボルト28に入射される超音波51のエネルギーが異なる場合がある。
【0063】
このため、反射波52のエコー強度56に対する反射波54のエコー強度57の比を求め、超音波センサ41とビームボルト28の上端との接触状態の影響を補償する必要がある。反射波52のエコー強度56をRA、及び反射波54のエコー強度57をRBとしたとき、エコー強度比Rは式(1)で求められる。
【0064】
R=RB/RA ……(1)
式(1)により求められたエコー強度比Rは、テンショニング時にジェットポンプビーム27に付与された荷重(テンショニング力)に対して図12のように変化する。図12において、特性60は、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面が正常に接触している場合におけるエコー強度比Rの変化を示している。特性61は、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面の間に異物59が存在する場合におけるエコー強度比Rの変化を示している。ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面が正常に接触している場合でのエコー強度比Rは、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面の間に異物59が存在している場合におけるエコー強度比Rに比べて、著しく増大する。
【0065】
図12に示されたエコー強度比Rとテンショニング力の関係を示す特性を用いることによって、トランジションピース22に取り付けられたジェットポンプビーム27の取り付け状態を確認することができる。
【0066】
本実施例では、試験により予め求めた、エコー強度比Rとテンショニング力の関係を示す特性(例えば、特性60及び61)が、超音波測定装置48のメモリ(図示せず)に記憶されている。超音波測定装置48のこのメモリには、エコー強度比Rの閾値62(図12参照)も記憶されている。この閾値62は、ジェットポンプビーム27の取り付け状態及びジェットポンプビーム27の荷重に基に、安全率を見込んで設定されている。ステップS6における超音波計測において、ビームボルト28への超音波センサヘッダ40の装着が終了した後、ビームボルト28の上端に接触している超音波センサ41から送信された超音波51が、ビームボルト28に入射される。
【0067】
ビームボルト28に入射された超音波51は、ビームボルト28内を下方に向かって伝播し、前述したように、ビームボルト28の先端28A及びインサート31の下面のそれぞれで反射される。ビームボルト28の先端28Aで生じた反射波52、及びインサート31の下面で生じた反射波54は、超音波センサ41で受信される。超音波センサ41で受信された反射波52及び54は、同軸ケーブル49を通して超音波測定装置48に入力される。
【0068】
超音波測定装置48は、設定した時間ゲート58(図10及び図11参照)の時間幅を通過した反射波52及び54を用いて、反射波52のエコー強度56及び反射波54のエコー強度57を求める。超音波測定装置48は、求めたエコー強度56及び57を式(1)に代入してエコー強度比Rを算出する。なお、超音波測定装置48には、ステップS4におけるジェットポンプビーム27へのテンショニング時に、ジェットポンプビーム27に付与した荷重(テンショニング力)が入力されて記憶されている。超音波測定装置48は、算出されたエコー強度比Rが記憶されたテンショニング力において閾値62以上であるかを判定する。算出されたエコー強度比Rが閾値62以上であるとき、ジェットポンプビーム27の取り付け状態(ビームボルト28による押しつけ力)は良好であり、ジェットポンプビーム27の取り付け状態の確認が終了する。
【0069】
ステップS6において、算出されたエコー強度比Rが記憶されたテンショニング力において閾値62未満であると判定されたときは、ジェットポンプビームが取り外される(ステップS8)。ビームボルト28を緩めるとともにジェットポンプビーム27のたわみが開放された後、トランジションピース22の突出部25A.25Bにそれぞれ形成された溝30A,30Bに嵌め込まれているジェットポンプビーム27が、溝30A,30Bから取り出される。その後、前述したステップS1〜S6の各作業工程(必要であれば、作業工程S7,S8を含む)が、エコー強度比Rが閾値62以上になってジェットポンプビーム27の取り付け状態が良好であると判定されるまで、繰り返される。
【0070】
本実施例によれば、ジェットポンプビーム27に取り付けられたビームボルト28の上端に接触された超音波センサ41からビームボルト28に送信された超音波51によりビームボルト28の先端28で生じる反射波52のエコー強度56、及びインサート31の下面で生じる反射波54のエコー強度57を用いて、トランジションピース22の突出部25A.25Bに取り付けられたジェットポンプビーム27に取り付けられたビームボルト28の取り付け状態(ビームボルト28による押しつけ力)を判定しているので、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面との接触状態が正常であるまたは異物59が存在して異常であるかを精度良く確認することができる。このように、本実施例はジェットポンプビーム27の取り付け状態を精度良く確認することができる。
【0071】
特に、本実施例は、エコー強度56及び57を用いてエコー強度比Rを算出してこのエコー強度比Rに基づいてジェットポンプビーム27の取り付け状態を確認しているので、超音波センサ41とビームボルト28の接触状態の影響を抑制してジェットポンプビーム27の取り付け状態をさらに精度良く確認することができる。
【0072】
また、ジェットポンプビーム27の両端部が突出部25Aの溝30A及び突出部25Bの溝30Bにそれぞれ挿入されたときにジェットポンプビーム27が傾いた状態で突出部25A,25Bに装着される場合がある。この状態では、ビームボルト28の中心軸と、ビームボルト28の先端28Aが接触する、インサート31の上面に形成された下に凸の曲面の曲率半径の中心が一致していない。このため、超音波センサ41からビームボルト28に入射されてビームボルト28の軸方向に伝播された超音波のうち、インサート31に入射される超音波が少なくなる。反射波54のエコー強度57が反射波52のエコー強度56よりも小さくなるので、ステップS6においてエコー強度比Rが閾値62よりも小さいと判定される。このように、エコー強度比Rを用いることによって、ジェットポンプビーム27の突出部25A,25Bへの装着が適切に行われていない場合(ジェットポンプビーム27が傾いて取り付けられた場合)においても、ジェットポンプビーム27の取り付け状態をさらに精度良く確認することができる。そのような場合には、ステップS8でジェットポンプビーム27を突出部25A,25Bから取り外し、ステップS3でジェットポンプビーム27の調整・取り付けを行うことによって、ジェットポンプビーム27を突出部25A,25Bに正常な状態で適切に取り付けることができる。
【0073】
本実施例は、筐体43内に形成されて一端が解放された孔部44内に超音波センサ41を取り付けているので、ビームボルト28を孔部44内に挿入することによって、超音波センサ41をビームボルト28の上端に容易に接触させることができる。このため、超音波センサ41をビームボルト28の上端に接触させるのに要する時間を短縮することができる。また、その孔部44内にビームボルト28を挿入するので、超音波センサヘッド40をビームボルト28により安定して保持することができる。
【0074】
また、エコー強度56及び57にそれぞれ時間ゲート58を設定してこの時間ゲート58を通過したエコー強度56及び57を用いてエコー強度比Rを算出しているので、算出されたエコー強度比Rに対するノイズの影響を抑制することができる。このため、エコー強度比Rの算出精度を高めることができる。
【0075】
超音波センサヘッド40の押し付けバネ46及び荷重調整おもり45は交換可能に筺体43に取り付けられているので、超音波センサヘッド40を気中及び水中のいずれかで用いる場合においても、適切な押し付け力で超音波センサ41をビームボルト28に押しつけることができる。
【0076】
また、図10及び図11で説明したように、従来の探傷器では、反射波形の絶対値による反射エコー強度を求めている。しかしながら、同様の動作は、例えば、パルサレシーバとオシロスコープの組み合わせによっても実施可能である。この場合、得られる信号はRF波形であるため、反射波のピーク(正側)−ピーク(負側)から反射波の振幅を求め、エコー強度の代用とすることができる。
【実施例2】
【0077】
本発明の他の実施例である実施例2のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法を、図13を用いて説明する。本実施例で実行される作業手順は、実施例1における作業手順に記録(ステップS9)を追加した作業手順である。本実施例のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法においても、実施例1で用いた取り付け状態確認装置67が用いられる。
【0078】
本実施例では、前述したステップS1〜S6の各作業手順が実行される。また、必要に応じてステップS7及びS8の各作業手順も実行される。ステップS6において、算出されたエコー強度比Rが記憶されたテンショニング力において閾値62以上であると判定されたとき、得られた情報を記録する(ステップS9)。ステップS9では、超音波センサ41が受信した反射波52及び54の各波形情報、エコー強度56及び57の各情報、算出されたエコー強度比Rの情報、及びエコー強度比Rの判定結果の情報が、超音波測定装置48のメモリ(図示せず)に記憶される。そして、本実施例のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法が終了する。
【0079】
本実施例は、実施例1で生じた各効果を得ることができる。本実施例では、上記した各情報がメモリに記憶されているので、ジェットポンプビームの取り付け状態の確認の記録を提出する場合には、超音波測定装置48のメモリに記憶された上記の各情報を基に報告書を作成することができる。
【符号の説明】
【0080】
1…原子炉圧力容器、4…炉心シュラウド、5…炉心、9…ジェットポンプ、10…ノズル、12…スロート、13…ディフューザ、21…ライザ管、22…トランジションピース、23…エルボ、24…インレットミキサ、25,25A.25B…突出部、26…ビームアセンブリ、27…ジェットポンプビーム、28…ビームボルト、28A…先端、30A,30B…溝、31…インサート、40…超音波センサヘッド、41…超音波センサ、42…固定機構、43…筺体、44…孔部、45…荷重調整おもり、48…超音波測定装置、67…取り付け状態確認装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェットポンプビームの取り付け状態確認方法に係り、特に、沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器内に設置されたジェットポンプに適用するのに好適なジェットポンプビームの取り付け状態確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉は、再循環系配管が接続された原子炉圧力容器(以下、RPVという)とRPV内の炉心を取り囲む円筒状の炉心シュラウドの間に形成された環状領域であるダウンカマ内に複数のジェットポンプを設置している。ジェットポンプは、エルボ、ノズル、ベルマウス、スロート及びディフューザを備える。再循環系配管に設けられた再循環ポンプの駆動によって昇圧された冷却水は、再循環系配管内を流れて、駆動水としてライザ管、トランジションピース及びエルボ内を通り、ノズルからベルマウス及びスロート内に噴出される。ノズルは駆動水の速度を増加させる。ダウンカマ内のノズル周囲に存在する冷却水が、噴出された駆動水の作用によって、被駆動水としてスロート内に吸込まれ、駆動水と運動量を交換しながらディフューザ内に流入する。ディフューザから排出された冷却水は、RPV内の下部プレナムを通って炉心に供給される。
【0003】
原子炉圧力容器内に設置されているジェットポンプに含まれるエルボ、ノズル、ベルマウス及びスロートは、一体化されて取り外し可能なインレットミキサを構成している。検査及び修理を行うとき、インレットミキサはトランジションピース及びディフューザから取り外される。
【0004】
ライザ管内を上昇した駆動水は、エルボで流れ方向が180°変えられて下向きの流れになり、ジェットポンプのノズルに流入する。この結果、上向きの流体反力がエルボに加わるため、ジェットポンプビームによってエルボの上面を押さえている。ジェットポンプビームは、ライザ管の上端に接続されたトランジションピースの上方に向かって伸びている一対の突出部のそれぞれに形成された溝に両端部が挿入され、たわみ状態で保持されている。
【0005】
特開昭63−168594号公報は、沸騰水型原子炉に用いられるジェットポンプを記載している。このジェットポンプは、ライザ管、インレットミキサ及びディフューザを備えている。インレットミキサは、ライザ管に接続されたエルボ、エルボに接続されたノズル、ノズルの下方に配置されたベルマウス、及びベルマウスの下端に設けられたスロートを有している。エルボを挟んで対向して配置された一対の突出部を有するトランジションピースが、ライザ管に取り付けられる。ジェットポンプビームが、一対の突出部に形成されたそれぞれの溝内に挿入され、テンショナがジェットポンプビームとエルボの頂部との間に配置されたテンショナによって、ジェットポンプビームにたわみ量δが付与される。このようにして、ジェットポンプビームのエルボがトランジションピースに取り付けられ、たわみ量δが付与されたジェットポンプビームによって、エルボがトランジションピースに押し付けられる。
【0006】
特許第4052377号公報は、ジェットポンプビーム固定装置を用いたジェットポンプビームの取り付け方法を記載している。このジェットポンプビーム固定装置は、ジェットポンプビームと噛み合ってこのジェットポンプビームを固定する際に用いられるビームボルトの周囲に形成されたラチェット歯と噛み合う固定装置をジェットポンプビームに取り付けている。特許第4052377号公報に記載された従来のジェットポンプビームの取り付け方法では、ジェットポンプビーム、トランジションピースに形成された溝、及びジェットポンプビームに取り付けられたビームボルトの下端部が接触する、エルボ頂部に形成された窪みに嵌め込まれたインサート上面における異物の有無を確認し、異物が存在する場合にそれを取り除くことが行われる。その後、ジェットポンプビームをトランジションピースの対向する一対の突出部に形成された各溝内に挿入してジェットポンプビームの中央部をテンショナで引っ張り上げてジェットポンプビームに所定のたわみ量を付与し、上記の固定装置によりビームボルトを締め付けている。
【0007】
特開2010−14674号公報は、ジェットポンプビームのボルト固定装置を用いたジェットポンプビームの取り付け方法を記載している。このボルト固定装置は、ビームボルトに軸方向に摺動可能に設けられたロックキャップ、ジェットポンプビームの上面に設置されてロックキャップを収納する本体ハウジングを有し、テーパ状外歯をロックキャップの外周側面に形成してこの外歯と噛み合う内歯状溝を本体ハウジングに形成している。特開2010−14674号公報におけるジェットポンプビームの取り付けは、以下のようにして行われる。ジェットポンプビームをトランジションピースの対向する一対の突出部に形成された各溝内に挿入し、ジェットポンプビームに回転可能に取り付けられたビームボルトによりインレットミキサのエルボを押し付けている。ボルト固定装置の外歯と内歯状溝を噛み合わせることによって、ビームボルトの回り止めを行っている。
【0008】
従来のジェットポンプの据付けでは、ジェットポンプビームのトラジションピースへの取り付け状態(ジェットポンプビームによるエルボの押付け力、及びビームボルト先端とインサートの間の異物の有無)を、ジェットポンプの据付け時に直接確認することができなかった。もし、ジェットポンプビームによるエルボの押付け力が不足したり、またはビームボルト先端とインサートの間に異物が介在していたりした場合には、流体反力に抗するに十分なエルボの押付け力が得られないことによるインレットミキサも振動等により、ジェットポンプの性能が想定どおりに生じないことが予想される。
【0009】
また、ボルトの取り付け状態の確認方法が、例えば、特開平2−88127号公報、特開平2−304325号公報及び特開平3−214033号公報に記載されている。
【0010】
特開平2−88127号公報は、ねじの着座確認装置を記載している。このねじの着座確認装置は、ホルダー内に設置された超音波センサ、超音波センサに超音波を送信する超音波パルス発生器、超音波センサからのエコー信号を受信する受信器、及び受信器及び超音波パルス発生器のそれぞれの出力信号を入力し、ねじ締結体を取り付ける対象物の、ねじ締結体頭部に接触する座面のエコー電圧レベルを検出するゲート回路を有する。特開平2−88127号公報に記載されたねじの着座確認は、ねじ締結体の対象物への着座時と未着座時では、着座時の方が、対象物の着座面の超音波反射率が減少して対象物の着座面エコーの電圧レベルが低下することに着目している。
【0011】
特開平2−304325号公報は、超音波ボルト締め付け作業確認方法を記載している。このボルト締め付け作業確認方法では、反射エコーのそれぞれの位置にゲートを設定し、予め記憶された基準ボルトの基準値と計測対象ボルトの計測値の差の絶対値もしくは予め記憶された基準値と計測値の比を取ることによって、ボルトの締結状態を確認する。
【0012】
さらに、特開平3−214033号公報は、ボルト締結前後での超音波の伝播時間とエコー高さに基づいて、ボルトの軸力及び曲がりを測定する技術を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭63−168594号公報
【特許文献2】特許第4052377号公報
【特許文献3】特開2010−14674号公報
【特許文献4】特開平2−88127号公報
【特許文献5】特開平2−304325号公報
【特許文献6】特開平3−214033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
沸騰水型原子炉に設けられたジェットポンプでは、ジェットポンプビームに回転可能に取り付けられたビームボルトの先端部に形成された曲面の曲率半径が、この先端部が接触する、エルボ上端部に形成された窪みに嵌め込まれたインサート上面に形成された下に凸の曲面の曲率半径よりも小さくなっている。
【0015】
発明者らは、上記した形状を有するビームボルトの先端面によるインサートの上面への押しつけ力を、超音波を用いて確認することを考えた。そこで、特開平2−88127号公報、特開平2−304325号公報及び特開平3−214033号公報に記載された、それぞれの超音波によるボルトの締結状態の確認技術の適用を検討した。
【0016】
特開平2−304325号公報に記載されたボルトの締結状態の確認では、計測対象のボルトでの測定値を、基準ボルトを用いて計測してあらかじめ記憶した基準値と比較してその締結状態を評価している。しかし、締結状態を確認する超音波センサを設置する対象物の表面状態により、超音波センサの音響的な接合状態が異なるため、測定値のバラつきが大きく評価精度が低下する。特に、沸騰水型原子炉に設けられたジェットポンプでは、先端面に曲面を有するビームボルトで、この曲面とは曲率半径が異なる、インサート上面に形成された下に凸の曲面を押圧するため、ビームボルトの先端とインサートの上面の接触部の状態の違いによって超音波センサの音響的な接合状態が異なり、その押しつけ力を精度良く確認することができない。
【0017】
特開平2−88127号公報に記載されたボルト(ねじ締結体)を対象物に締結した状態を確認する方法では、前述したように、ボルトの頭部の対象物への着座状態を、超音波を用いて確認しているが、この確認方法をビームボルトの先端面とインサートの上面との間での異物の有無の確認に適用したとしても、ビームボルトの先端とインサートの上面の接触部の状態の違いにより超音波センサの音響的な接合状態が異なるため、ジェットポンプビームに設けられたビームボルトの先端面によるインサートの上面への押しつけ力を精度良く確認することができない。特開平3−214033号公報に記載された、ボルトの軸力及び曲がりを測定する技術を、ジェットポンプビームに設けられたビームボルトの先端面によるインサートの上面への押しつけ力の確認に適用したとしても、同様な問題が生じる。
【0018】
また、ボルト締結の前後で超音波を用いた計測を行う場合でも、超音波センサを設置する対象のボルトの表面状態及び超音波センサからボルトへの超音波の入射方向が変わることなどにより、超音波センサの音響的な接合状態が変化する。このため、超音波による測定値のバラつきが大きくなり、ボルトの締結状態に対する評価精度が低下する。このような技術をジェットポンプビームに設けられたビームボルトの先端面によるインサートの上面への押しつけ力の確認に適用した場合には、押しつけ力を精度良く確認することができない。
【0019】
本発明の目的は、ジェットポンプビームに設けられたビームボルトによる取付け状態を精度良く確認することができるジェットポンプビーム取り付け状態確認方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、原子炉圧力容器内に設置されたディフューザに一端部が挿入され、原子炉圧力容器内に配置されたライザ管に他端部が連絡されたインレットミキサを、ライザ管に設けられたトランジションピースの一対の突出部の間に配置した状態で、一対の突出部にそれぞれ形成された溝内に、インレットミキサの上方に配置したジェットポンプビームの両端部を別々に嵌め込み、
ジェットポンプビームの中央部を上方に移動させてジェットポンプビームにたわみを付与し、
たわみが付与されたジェットポンプビームに噛み合った、下端部に第1曲面が形成されたネジ部材を、締め付けることにより、インレットミキサの上端部に嵌め込まれてその第1曲面の第1曲率半径よりも大きな第2曲率半径を有する第2曲面が上面に形成されたインサート部材のその第2曲面に押し付け、
ネジ部材の第1曲面がインサート部材の第2曲面に押し付けられている状態で、超音波センサからネジ部材に超音波を送信し、
第1曲面で生じた第1反射波の第1エコー強度、及びインサート部材の、第2曲面とは反対側の面で生じた第2反射波の第2エコー強度を求め、
第1エコー強度及び第2エコー強度を用いて、ジェットポンプビームの取り付け状態を確認することにある。
【0021】
本発明によれば、ネジ部材の第1曲面がインレットミキサの上端部に嵌め込まれたインサート部材の第2曲面に押し付けられている状態で超音波センサからネジ部材に送信された超音波により第1曲面で生じた第1反射波の第1エコー強度、及びその超音波によりインサート部材の、第2曲面とは反対側の面で生じた第2反射波の第2エコー強度をそれぞれ求め、第1エコー強度及び第2エコー強度を用いて、ジェットポンプビームの取り付け状態(ネジ部材による押しつけ力)を確認しているので、ビームボルトの第1曲面とインサート部材の第2曲面との接触状態が正常であるかを精度良く確認することができる。このように、本発明は、ジェットポンプビームの取り付け状態(ネジ部材による押しつけ力)を精度良く確認することができる。
【0022】
好ましくは、ジェットポンプビームの取り付け状態の確認は、第1エコー強度及び第2エコー強度を用いて求められたエコー強度比に基づいて行うことが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ジェットポンプビームに設けられたビームボルトによる取り付け状態を精度良く確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法を示す説明図である。
【図2】図1に示す超音波センサヘッドの縦断面図である。
【図3】図1に示すジェットポンプビーム取り付け状態確認方法が適用される沸騰水型原子炉の縦断面図である。
【図4】図3に示すジェットポンプ付近の拡大図である。
【図5】ジェットポンプビームが取り付けられたエルボ付近の斜視図である。
【図6】図5のVI−VI断面図である。
【図7】図1に示すジェットポンプビーム取り付け状態確認方法における作業工程のフローチャートである。
【図8】図7に示す超音波計測工程の作業を示す説明図である。
【図9】ジェットポンプビームに設けられたビームボルトに装着された超音波センサヘッドの超音波センサから送信された超音波の伝播挙動を示す説明図である。
【図10】ビームボルトとインサートが正常に接触している状態における、ジェットポンプビームのテンショニングの前と後での超音波エコー強度の測定結果を示す説明図である。
【図11】ビームボルトとインサートの間に異物が存在している状態における、ジェットポンプビームのテンショニングの前と後での超音波エコー強度の測定結果を示す説明図である。
【図12】正常状態及び異物介在状態のそれぞれにおけるビームボルト先端のエコー強度に対するインサート上面のエコー強度の強度比と、ジェットポンプビームのテンショニング力の関係を示す特性図である。
【図13】本発明の他の実施例である実施例2のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法における作業工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0026】
本発明の好適な一実施例である実施例1のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法を、図1、図2、図7、図8及び図9を用いて説明する。
【0027】
まず、本実施例のジェットポンプビームの取り付け方法を説明する前に、このジェットポンプが適用される沸騰水型原子炉の概略の構造を、図5及び図6を用いて以下に説明する。沸騰水型原子炉(BWR)は、原子炉圧力容器1を有し、原子炉圧力容器1内に炉心シュラウド4を設置している。炉心シュラウド4は、RPV1の内面に取り付けられたシュラウド支持構造物6によって支持される。原子炉圧力容器は、以下、RPVと称する。RPV1は、底部に下部鏡板である底部ヘッド2を有し、上端部に取り外し可能な上部ヘッド(上蓋)3を取り付けている。複数の燃料集合体が装荷された炉心5が、炉心シュラウド4内に配置される。気水分離器15及び蒸気乾燥器16がRPV1内で炉心5の上方に配置される。
【0028】
複数のジェットポンプ9が、RPV1と炉心シュラウド4の間に形成される環状のダウンカマ7内に配置され、シュラウド支持構造物6に設置される。RPV1に設けられる再循環系は、再循環系配管19及び再循環系配管19に設置された再循環ポンプ(図示せず)を有する。再循環系配管19の一端はRPV1のノズルに接続されてダウンカマ7に連絡される。再循環系配管19の他端は、RPV1の入口ノズル8に接続されてライザエルボ20(図4参照)に連絡される。ライザエルボ20はダウンカマ4内に配置されたライザ管21の下端に接続され、ライザ管13の上端はトランジションピース22に接続される。トランジションピース22は、実質的には、ライザ管13の一部である。
【0029】
ジェットポンプ9は、ディフューザ13及びインレットミキサ24を有する。インレットミキサ24は、エルボ23、ノズル10、ベルマウス及びスロート12を有し、これらが一体になって構成されている。トランジションピース22はジェットポンプ9のエルボ23に接続される。エルボ23の他端がノズル10に接続され、エルボ23で流路が180°曲げられている。ノズル10は、複数の支持板によってベルマウスに取り付けられ、このベルマウスの下端にスロート12が接続される。ディフューザ13の下端がシュラウド支持構造物6に接合される。スロート12とディフューザ13はスリップジョイントで接続され、このスリップジョイントにおいてスロート12の下端部がディフューザ13の上端部内に挿入されている。
【0030】
RPV1の内面に取り付けられて水平方向に伸びるライザブレース32は、ライザ管21を支持している。ライザ管13に取り付けられて水平方向に伸びているブラケット33が、ライザ管21の両隣に位置している2基のジェットポンプ9のそれぞれのスロート12を保持する。ブラケット33に取り付けられたサポート部材34が、スロート12を鉛直方向に固定している。
【0031】
トランジションピース22は上方に向かって伸びる対となる突出部25A,25Bを有しており、トランジションピース22に接続された一つのエルボ23が、突出部25Aと突出部25Bの間に配置される(図5及び図6参照)。このエルボ23は、1本のライザ管21に連絡される2基のジェットポンプ9のうちの1基のジェットポンプ9のエルボ23である。トランジションピース22の他の一対の突出部25A,25Bの間に、このトランジションピース22に接続された他のエルボ23が配置される(図5参照)。このエルボ23は、上記した2基のジェットポンプ9のうちの残りのジェットポンプ9のエルボ23である。トランジションピース22の内部には、ライザ管21と2本のエルボ23をそれぞれ連絡する駆動水通路が形成されている。水平方向に伸びる溝30Aが2本の突出部25Aに形成され、水平方向に伸びて溝30Aと対向する溝30Bが2本の突出部25Bに形成される(図6参照)。ビームアセンブリ26のジェットポンプビーム27が、対向して配置された一対の突出部25A,25Bに形成された溝30A,30B内に挿入されている。他のビームアセンブリ26のジェットポンプビーム27が、対向して配置された他の一対の突出部25A,25Bに形成された溝30A,30B内に挿入されている。
【0032】
両端部が溝30A,30B内に挿入されたジェットポンプビーム27に対して、ビームテンショニング(たわみ付与)が実施され、ジェットポンプビーム27に所定のたわみ量が付与される。その後、ジェットポンプビーム27に回転可能に取り付けられたビームボルト28を締め付けることによって、インレットミキサ24がトランジションピース22、すなわちライザ管21に押しつけられる。エルボ23の上端部に窪み36が形成されており(図1参照)、この窪み36内にインサート31が嵌め込まれている(図1及び図6参照)。インサート31の上面には、凹部となる下に凸の第1曲面が形成されている。締めつけられたビームボルト28の先端に形成された第2曲面が、インサート31の上面に形成された下に凸の第1曲面に接触している。第1曲面の曲率半径が第2曲面の曲率半径よりも大きくなっている。
【0033】
インレットミキサ24は、保守点検を行うとき、ビームボルト28を緩めてジェットポンプビーム27を突出部25A,25Bから取り外し、ブラケット33からサポート部材34を取り外すことによって、ディフューザ13、及びライザ管21、すなわちトランジションピース22から取り外すことができる。
【0034】
ビームアセンブリ26を、図6を用いて説明する。ビームアセンブリ26は、ジェットポンプビーム27及びビームボルト28を有する。ジェットポンプビーム27は、対向する突出部25A,25Bにおいて、突出部25Aに形成された溝30Aの垂直な面と、突出部25Bに形成された溝30Bの垂直な面との間の長さを有している。ジェットポンプビーム27の長手方向の中央部に、ビームボルト28が取り付けられている。ビームボルト28は、上下方向に伸びており、ジェットポンプビーム27に形成された上下方向に貫通するネジ穴と噛み合っている。キーパ29がジェットポンプビーム27の上面に設けられる。ジェットポンプビーム27の両端部が、対向する突出部25Aの溝30A及び突出部25Bの溝30Bに挿入されている。
【0035】
RPV1内の上部に存在する被駆動水である冷却水(被駆動流体、冷却材)は、給水配管18からRPV1に供給された給水と混合されてダウンカマ7内を下降する。ダウンカマ7内の冷却水は、再循環ポンプの駆動によって再循環系配管19内に吸引され、再循環ポンプによって昇圧される。この昇圧された冷却水を、便宜的に、駆動水(駆動流体)という。この駆動水は、再循環系配管19、ライザエルボ20、ライザ管21、トランジションピース22及びエルボ23内を流れてノズル10に達し、ノズル10からベルマウス及びスロート12内に噴出される。ダウンカマ7内でノズル10の周囲に存在する被駆動水である冷却水は、ノズル10からの駆動水の噴出によって、ノズル10とベルマウスの間に形成される冷却水通路を通り、ベルマウスを経てスロート12内に吸い込まれる。この冷却水は、駆動水と共にスロート12内を下降し、ディフューザ13の下端から吐出される。ディフューザ13から吐出された冷却水は、下部プレナム14を経て炉心5に供給される。
【0036】
冷却水は、炉心5を通過する際に加熱されて水及び蒸気を含む気液二相流となる。気水分離器15は気液二相流を蒸気と水に分離する。分離された蒸気は、更に蒸気乾燥器16で湿分を除去されて主蒸気配管17に導かれる。この蒸気は、主蒸気配管17により蒸気タービン(図示せず)に導かれ、蒸気タービンを回転させる。蒸気タービンに連結された発電機が回転し、電力が発生する。蒸気タービンから排出された蒸気は、復水器(図示せず)で凝縮されて水となる。この凝縮水は、給水として給水配管18によりRPV1内に供給される。気水分離器15及び蒸気乾燥器16で分離された水は、落下して冷却水としてダウンカマ7内に達する。
【0037】
エルボ14、ノズル16、ベルマウス17、スロート18及びディフューザ19を主要な構成要素とするジェットポンプ15は、ノズル16の周囲の冷却水を吸込むことにより、少ない駆動水の流量でより多くの冷却水を炉心5に送り込むことができる。
【0038】
所定のたわみ量が付与されたジェットポンプビーム27は、エルボ23、すなわち、インレットミキサ24をライザ管21側に押圧する押しつけ力を、ビームボルト28を介してエルボ23に加えている。具体的には、ジェットポンプビーム27及びビームボルト28は、エルボ23内を駆動水が流れる際に流体反力が作用するエルボ23に押しつけ力を付与する。
【0039】
例えば、インレットミキサ24の振動が増大したときには、沸騰水型原子炉の定期検査の期間中において、今まで用いられていたジェットポンプビーム27を新しいジェットポンプビーム27に交換する場合がある。この時におけるジェットポンプビームの取り付け方法を例に挙げて、本実施例のジェットポンプビームの取り付け方法を説明する。ビームボルト28を緩めてジェットポンプビーム27を一対の突出部25A,25Bの溝30A,30Bから抜き取る。その後、新しいジェットポンプビーム27を一対の突出部25A,25Bに取り付ける際において、本実施例のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法が実施される。このジェットポンプビーム取り付け状態確認方法を、図1、図2、図7、図8及び図9を用いて説明する。なお、新設の沸騰水型原子炉において、ジェットポンプビーム27をトランジションピース22の一対の突出部25A,25Bに取り付ける際にも本実施例を適用しても良い。
【0040】
本実施例のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法には、図1及び図2に示す取り付け状態確認装置67が用いられる。取り付け状態確認装置67は、超音波センサヘッド40及び超音波測定装置48を有する。
【0041】
超音波センサヘッド40は、超音波センサ41、固定機構42、筺体43、荷重調整おもり45及び押し付けバネ46を有する。筺体43は内部に孔部44を形成しており、この孔部44は筺体43の一端において外に向かって解放されている。筐体43において、傾斜面が孔部44の先端部に形成されている。この傾斜面は、ビームボルト28の頭部を孔部44に挿入する際のガイドとして機能する。
【0042】
超音波センサ41は、筺体43の孔部44内に配置され、孔部44内に配置された、少なくとも2軸を有するジンバル構造になっている固定機構42に取り付けられている。固定機構42は孔部44の軸方向に移動可能であり、固定機構42の一部が孔部44の内面に形成された少なくとも1つの溝(図示せず)内に挿入されている。この溝は孔部44の軸方向に伸びている。固定機構42の一部がその溝内に挿入されているので、固定機構42が孔部44の周方向に回転することが防止される。押し付けバネ46は、孔部44の底面と超音波センサ41の間に配置され、孔部44の底面及び超音波センサ41の一面に接触している。荷重調整おもり45が、筺体43の、孔部44が解放されていない他端に固定ネジ47を用いて取り付けられる。
【0043】
超音波測定装置48は、同軸ケーブル49により超音波センサ41に接続される。
【0044】
取り付け状態確認装置67を用いた本実施例のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法は、図7に示す作業工程に基づいて行われる。
【0045】
沸騰水型原子炉の定期検査の期間中において、RPV1の上部ヘッド3が取り外され、RPV1内の蒸気乾燥器16及び気水分離器15が取り外されてRPV1外に取り出される。炉心5内の全燃料集合体が、RPV1から取り出されて燃料貯蔵プールに移送される(図示せず)。燃料集合体の移送時には、冷却水66が、RPV1の真上に形成されている原子炉ウエル65内に充填されている(図8参照)。
【0046】
ビームボルト28を緩めて今まで使用されたジェットポンプビーム27をトランジションピース22の一対の突出部25A,25Bの溝30A,30Bから抜き取る。その後、新しいジェットポンプビーム27を一対の突出部25A,25Bに取り付けるときにおいて、本実施例のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法が実施される。
【0047】
異物が取合い部に存在しているかを確認する(ステップS1)。作業員は、新しいビーム27を取り付ける突出部25A,25Bの溝30A,30B、及びジェットポンプビーム27に設けられたビームボルト28の先端28Aが接触する、エルボ23の上部に形成された窪み31に嵌め込まれたインサート31の上面をそれぞれ点検する。また、作業員は、取り付けるジェットポンプビーム27の表面も点検する。それらにおいて異物が存在しているかを判定する(ステップS2)。異物が存在する(YES)と判定されたときには、該当する部分からその異物を除去する(ステップS7)。異物を除去した後、ステップS1における確認を再度行う。
【0048】
ステップS2において、異物が存在しない(NO)と判定された場合には、ジェットポンプビームの調整及び据え付けを行う(ステップS3)。図5及び図6に示すように、ビームボルト28を取り付けているジェットポンプビーム27を、対向する一対の突出部25A,25Bに装着する。ジェットポンプビーム27の一端部を突出部25Aの溝30Aに嵌め込み、そのジェットポンプビーム27の他端部をその突出部25Aと対向している突出部25Bの溝30Bに嵌め込む。その後、ジェットポンプビーム27を水平方向で溝30A,30Bに沿って移動させ、ジェットポンプビーム27の両端部を溝30A,30B内の所定の位置に位置決めする。そして、ビームテンショニング(たわみ付与)を実施する(ステップS4)。テンショナ(図示せず)をジェットポンプビーム27の長手方向での中央部に引っ掛けて、テンショナにより、ジェットポンプビーム27の中央部を上方に向かって引っ張り上げる。これにより、ジェットポンプビーム27にたわみが付与される。
【0049】
その後、ビームボルトが締め付けられる(ステップS5)。ジェットポンプビーム27をテンショナで引っ張り上げている状態で、ジェットポンプビーム27に形成されて上下方向に貫通するネジ穴に噛み合っているビームボルト28を締め付ける。この締め付けは、ビームボルト28の先端28Aが窪み31に嵌め込まれたインサート31の上面に接触するまで行われる。具体的には、ビームボルト28の先端28Aがインサート31の上面に形成された下に凸の曲面に接触する。ビームボルト28の締め付けが終了した後、突起部27A,27Bからテンショナが外される。テンショナが外された後においても、ビームボルト28の先端28Aが、インサート31の上面に形成された下に凸の曲面に接触しているので、ステップS4でジェットポンプビーム27に付与されたたわみが保持される。
【0050】
超音波計測が行われる(ステップS6)。この超音波計測は、ジェットポンプビーム27の取り付け状態を確認するために行われる。超音波計測を行うに際して、超音波センサヘッダ40が、RPV1内に設置されたジェットポンプ9のインレットミキサ24のエルボ23を抑えている、ジェットポンプビーム27に取り付けられたビームボルト28の頭部に装着される。
【0051】
超音波センサヘッダ40のビームボルト28への装着を、具体的に説明する。RPV1を収納する原子炉格納容器(図示せず)を内部に設置した原子炉建屋(図示せず)内の運転床68上に、作業台車(例えば、燃料交換機)63が設置されている(図8参照)。作業台車63は、冷却水が充填された原子炉ウエル65の上方を跨いでいる。超音波測定装置48が作業台車63上に設けられている。作業台車63に乗っている作業員が、超音波センサヘッダ40に取り付けられた保持機構64を持って、超音波センサヘッダ40を原子炉ウエル65からRPV1内へ下降させる。やがて、超音波センサヘッダ40の筺体43の下端が、ジェットポンプビーム27に取り付けられたビームボルト28の上端付近まで到達する。保持機構64による超音波センサヘッダ40の下降は、冷却水中に配置された監視カメラ(図示せず)で撮影されてモニタに表示された映像を監視しながら行われる。筺体43に形成された孔部44がビームボルト28の真上に位置しており、超音波センサヘッダ40がさらに下降すると、ビームボルト28の頭部が筺体43の孔部44内に挿入される。超音波センサ41がビームボルト28の上端に接触したとき、超音波センサヘッダ40の下降が停止される(図8参照)。
【0052】
ジンバル構造の固定機構42、及び押し付けバネ46の作用によって、超音波センサ41はビームボルト28の上端面に密着して押し付けられる。さらに、超音波センサ41による超音波計測時において、超音波センサ41のビームボルト28の上端面への押付け荷重を一定に保つために、超音波センサ41は、筺体43及び荷重調整おもり45により生じる所定の荷重でビームボルト28の上端に押し付けられる。押し付けバネ46は、超音波センサ41がビームボルト28の上端面に接触したときの衝撃により、超音波センサ41の表面が割れるのを防止する役割も兼ねている。
【0053】
超音波センサ41のビームボルト28の上端への押し付け荷重は、気中または水中の計測環境に応じて、押し付けバネ46及び荷重調整おもり45を変更することにより、所定の押し付け荷重に設定することができる。荷重調整おもり45は固定ネジ47により筺体43に取り付けられるので、固定ネジ47を外すことによって簡単に荷重調整おもり45を交換することができる。
【0054】
本実施例では、超音波センサ41が水中で用いられるため、RPV1内の冷却水が、超音波センサ41とビームボルト28の間でカプラントの役割を果たす。超音波センサヘッド40を原子炉ウエル65内の冷却水中に沈めたとき、筺体43の孔部44内の空気が、筺体43の上端部に形成されて孔部44に連通して筺体43の上方に解放される空気抜き孔(図示せず)を通して筺体43の外部に排気される。このため、冷却水が孔部44内に満たされる。
【0055】
なお、例えば、RPV1内の冷却水を排出して超音波センサヘッド40を気中に存在するビームボルト28に装着する場合には、超音波センサ41から送信された超音波をビームボルト28に入射するために、カプラント材(グリセリン系、油系、水など)を事前に超音波センサ41の先端もしくは、ビームボルト28の上端に予め塗布する。
【0056】
ビームボルト28の上端に接触した超音波センサ41から送信された超音波51が、ビームボルト28に入射される。この超音波51は、ビームボルト28内を下方に向かって伝播してビームボルト28の先端28Aに到達する。先端28Aに到達した超音波51の一部は先端28Aで反射された反射波52となり、残りの超音波51は透過波53となってインサート31に伝達される。この透過波53はインサート31の下面で反射されて反射波54になる。ビームボルト28内を上方に向かって伝播する反射波52は、超音波センサ41に受信されて第1エコー(第1受信波)となり、インサート31及びビームボルト28内を上方に向かって伝播する反射波54は、超音波センサ41に受信されて第2エコー(第2受信波)となる。反射波52の強度に対するインサート31に伝達される透過波(超音波)53の強度の割合は、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面の接触状態によって変化する。
【0057】
ここで、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面の接触状態が変化したときにおける第1エコー(第1受信波)及び第2エコー(第2受信波)違いを、図10及び図11を用いて具体的に説明する。
【0058】
図10は、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面が正常に接触している状態における、ジェットポンプビーム27のテンショニングの前と後での第1エコー強度56及び第2エコー強度57のそれぞれの測定結果を示している。前述したように、ビームボルト28の先端28は、曲面(具体的には、球面)を形成しており、この曲面よりも大きな曲率半径を有する、インサート31の上面に形成された下に凸の曲面(具体的には、球面)と接触している。インサート31の上面にビームボルト28の先端28Aを乗せただけのテンショニング前における状態では、ジェットポンプビーム27のたわみによる押し付け力がビームボルト28を介してインサート31の上面に作用していないため、ビームボルト28の先端28Aがビームボルト28の自重によりインサート31の上面に接触しているだけである。このため、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面の接触面積が小さくなる。この結果、ビームボルト28の先端28Aにおける反射波52のエコー強度56が大きく、また、インサート31内に伝達されてインサート31の下面で反射した反射波54のエコー強度57がエコー強度56よりも小さくなる(図7のテンショニング前を参照)。
【0059】
ジェットポンプビーム27に上向きの所定の荷重を付与したテンショニング後におけるジェットポンプビーム27がたわんでいる状態では、ビームボルト28の先端28Aの曲面(球面)の曲率半径は、たわんでいるジェットポンプビーム27による押し付け力によりインサート31の上面に押し付けられたビームボルト28の弾性変形に伴い、破線55で示すように増大する。ビームボルト28の先端28Aの曲面の曲率半径の増大は、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面との接触面積の増大をもたらす。この結果、ビームボルト28の先端28Aに到達した超音波51のうち、透過波53となってインサート31に伝達される超音波が増大する。これにより、ビームボルト28の先端28Aで発生する反射波52のエコー強度56はテンショニング前に比べて減少し、インサート31内に伝達した透過波53によりインサート31の下面で発生する反射波54のエコー強度57はテンショニング前に比べて増大する。
【0060】
次に、異物がビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面との間に存在する場合における反射波54のエコー強度57について説明する。図11は、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の間に異物59が存在している状態における、ジェットポンプビーム27のテンショニングの前と後での第1エコー強度56及び第2エコー強度57のそれぞれの測定結果を示している。異物59が存在する場合におけるジェットポンプビーム27のテンショニング前では、ビームボルト28の自重が異物59を介してインサート31の上面には加わっているだけであり、ビームボルト28の先端28Aの曲面の曲率半径はビームボルト28の製造直後でのその曲面の曲率半径と同じであり、また、異物59が介在するためにビームボルト28の先端28Aがインサート31の上面に直接接触していない。このため、異物59が存在する場合であってもテンショニング前では、ビームボルト28内を下方に向かって伝播した超音波51によって生じる反射波52のエコー強度56及び反射波54のエコー強度57は、実質的に、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面が正常に接触している状態(図10)でのテンショニング前におけるエコー強度56及び57のそれぞれと同じになる(図10及び図11のテンショニング前を参照)。反射波52のエコー強度56は反射波54のエコー強度57よりも大きくなる。
【0061】
異物59が存在する場合においても、ステップS4のテンショニングが行われた後においては、たわみを付与されたジェットポンプビーム27による押し付け力によりインサート31の上面に向かって押し付けられたビームボルト28の弾性変形に伴って、ジェットポンプビーム27に取り付けられたビームボルト28の先端28Aの曲面(球面)の曲率半径が、図11の上段において破線55で示すように、増大する。このとき、異物59もインサート31の上面に押し付けられる。この結果、ビームボルト28の先端28Aと異物59との接触面積は増大するが、ビームボルト28がインサート31に、直接、接触しないため、透過波53の伝達に寄与する、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面との接触面積はほとんど増大しない。したがって、異物59が存在する場合では、ビームボルト28の先端28Aで生じる反射波52のエコー強度56、及びインサート31の下面で生じる反射波54のエコー強度57は、テンショニングの前後においてほとんど変化しない。
【0062】
ただし、異物59が樹脂などのように柔らかい材質である場合には、ビームボルト28の先端28Aが異物59自体の塑性変形によりインサート31の上面により密着するため、反射波54が若干増大する場合がある。しかし、この場合でも、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面が正常な接触状態であるときと比較して、反射波54のエコー強度57は小さい。また、図9に示したように、ビームボルト28の上面に装着した超音波センサヘッド40において、ジンバル構造を有する固定機構42を用いて超音波センサ41をビームボルト28の上端に密着させる場合でも、超音波センサ41とビームボルト28の上端との接触状態により、超音波センサ41からビームボルト28に入射される超音波51のエネルギーが異なる場合がある。
【0063】
このため、反射波52のエコー強度56に対する反射波54のエコー強度57の比を求め、超音波センサ41とビームボルト28の上端との接触状態の影響を補償する必要がある。反射波52のエコー強度56をRA、及び反射波54のエコー強度57をRBとしたとき、エコー強度比Rは式(1)で求められる。
【0064】
R=RB/RA ……(1)
式(1)により求められたエコー強度比Rは、テンショニング時にジェットポンプビーム27に付与された荷重(テンショニング力)に対して図12のように変化する。図12において、特性60は、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面が正常に接触している場合におけるエコー強度比Rの変化を示している。特性61は、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面の間に異物59が存在する場合におけるエコー強度比Rの変化を示している。ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面が正常に接触している場合でのエコー強度比Rは、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面の間に異物59が存在している場合におけるエコー強度比Rに比べて、著しく増大する。
【0065】
図12に示されたエコー強度比Rとテンショニング力の関係を示す特性を用いることによって、トランジションピース22に取り付けられたジェットポンプビーム27の取り付け状態を確認することができる。
【0066】
本実施例では、試験により予め求めた、エコー強度比Rとテンショニング力の関係を示す特性(例えば、特性60及び61)が、超音波測定装置48のメモリ(図示せず)に記憶されている。超音波測定装置48のこのメモリには、エコー強度比Rの閾値62(図12参照)も記憶されている。この閾値62は、ジェットポンプビーム27の取り付け状態及びジェットポンプビーム27の荷重に基に、安全率を見込んで設定されている。ステップS6における超音波計測において、ビームボルト28への超音波センサヘッダ40の装着が終了した後、ビームボルト28の上端に接触している超音波センサ41から送信された超音波51が、ビームボルト28に入射される。
【0067】
ビームボルト28に入射された超音波51は、ビームボルト28内を下方に向かって伝播し、前述したように、ビームボルト28の先端28A及びインサート31の下面のそれぞれで反射される。ビームボルト28の先端28Aで生じた反射波52、及びインサート31の下面で生じた反射波54は、超音波センサ41で受信される。超音波センサ41で受信された反射波52及び54は、同軸ケーブル49を通して超音波測定装置48に入力される。
【0068】
超音波測定装置48は、設定した時間ゲート58(図10及び図11参照)の時間幅を通過した反射波52及び54を用いて、反射波52のエコー強度56及び反射波54のエコー強度57を求める。超音波測定装置48は、求めたエコー強度56及び57を式(1)に代入してエコー強度比Rを算出する。なお、超音波測定装置48には、ステップS4におけるジェットポンプビーム27へのテンショニング時に、ジェットポンプビーム27に付与した荷重(テンショニング力)が入力されて記憶されている。超音波測定装置48は、算出されたエコー強度比Rが記憶されたテンショニング力において閾値62以上であるかを判定する。算出されたエコー強度比Rが閾値62以上であるとき、ジェットポンプビーム27の取り付け状態(ビームボルト28による押しつけ力)は良好であり、ジェットポンプビーム27の取り付け状態の確認が終了する。
【0069】
ステップS6において、算出されたエコー強度比Rが記憶されたテンショニング力において閾値62未満であると判定されたときは、ジェットポンプビームが取り外される(ステップS8)。ビームボルト28を緩めるとともにジェットポンプビーム27のたわみが開放された後、トランジションピース22の突出部25A.25Bにそれぞれ形成された溝30A,30Bに嵌め込まれているジェットポンプビーム27が、溝30A,30Bから取り出される。その後、前述したステップS1〜S6の各作業工程(必要であれば、作業工程S7,S8を含む)が、エコー強度比Rが閾値62以上になってジェットポンプビーム27の取り付け状態が良好であると判定されるまで、繰り返される。
【0070】
本実施例によれば、ジェットポンプビーム27に取り付けられたビームボルト28の上端に接触された超音波センサ41からビームボルト28に送信された超音波51によりビームボルト28の先端28で生じる反射波52のエコー強度56、及びインサート31の下面で生じる反射波54のエコー強度57を用いて、トランジションピース22の突出部25A.25Bに取り付けられたジェットポンプビーム27に取り付けられたビームボルト28の取り付け状態(ビームボルト28による押しつけ力)を判定しているので、ビームボルト28の先端28Aとインサート31の上面との接触状態が正常であるまたは異物59が存在して異常であるかを精度良く確認することができる。このように、本実施例はジェットポンプビーム27の取り付け状態を精度良く確認することができる。
【0071】
特に、本実施例は、エコー強度56及び57を用いてエコー強度比Rを算出してこのエコー強度比Rに基づいてジェットポンプビーム27の取り付け状態を確認しているので、超音波センサ41とビームボルト28の接触状態の影響を抑制してジェットポンプビーム27の取り付け状態をさらに精度良く確認することができる。
【0072】
また、ジェットポンプビーム27の両端部が突出部25Aの溝30A及び突出部25Bの溝30Bにそれぞれ挿入されたときにジェットポンプビーム27が傾いた状態で突出部25A,25Bに装着される場合がある。この状態では、ビームボルト28の中心軸と、ビームボルト28の先端28Aが接触する、インサート31の上面に形成された下に凸の曲面の曲率半径の中心が一致していない。このため、超音波センサ41からビームボルト28に入射されてビームボルト28の軸方向に伝播された超音波のうち、インサート31に入射される超音波が少なくなる。反射波54のエコー強度57が反射波52のエコー強度56よりも小さくなるので、ステップS6においてエコー強度比Rが閾値62よりも小さいと判定される。このように、エコー強度比Rを用いることによって、ジェットポンプビーム27の突出部25A,25Bへの装着が適切に行われていない場合(ジェットポンプビーム27が傾いて取り付けられた場合)においても、ジェットポンプビーム27の取り付け状態をさらに精度良く確認することができる。そのような場合には、ステップS8でジェットポンプビーム27を突出部25A,25Bから取り外し、ステップS3でジェットポンプビーム27の調整・取り付けを行うことによって、ジェットポンプビーム27を突出部25A,25Bに正常な状態で適切に取り付けることができる。
【0073】
本実施例は、筐体43内に形成されて一端が解放された孔部44内に超音波センサ41を取り付けているので、ビームボルト28を孔部44内に挿入することによって、超音波センサ41をビームボルト28の上端に容易に接触させることができる。このため、超音波センサ41をビームボルト28の上端に接触させるのに要する時間を短縮することができる。また、その孔部44内にビームボルト28を挿入するので、超音波センサヘッド40をビームボルト28により安定して保持することができる。
【0074】
また、エコー強度56及び57にそれぞれ時間ゲート58を設定してこの時間ゲート58を通過したエコー強度56及び57を用いてエコー強度比Rを算出しているので、算出されたエコー強度比Rに対するノイズの影響を抑制することができる。このため、エコー強度比Rの算出精度を高めることができる。
【0075】
超音波センサヘッド40の押し付けバネ46及び荷重調整おもり45は交換可能に筺体43に取り付けられているので、超音波センサヘッド40を気中及び水中のいずれかで用いる場合においても、適切な押し付け力で超音波センサ41をビームボルト28に押しつけることができる。
【0076】
また、図10及び図11で説明したように、従来の探傷器では、反射波形の絶対値による反射エコー強度を求めている。しかしながら、同様の動作は、例えば、パルサレシーバとオシロスコープの組み合わせによっても実施可能である。この場合、得られる信号はRF波形であるため、反射波のピーク(正側)−ピーク(負側)から反射波の振幅を求め、エコー強度の代用とすることができる。
【実施例2】
【0077】
本発明の他の実施例である実施例2のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法を、図13を用いて説明する。本実施例で実行される作業手順は、実施例1における作業手順に記録(ステップS9)を追加した作業手順である。本実施例のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法においても、実施例1で用いた取り付け状態確認装置67が用いられる。
【0078】
本実施例では、前述したステップS1〜S6の各作業手順が実行される。また、必要に応じてステップS7及びS8の各作業手順も実行される。ステップS6において、算出されたエコー強度比Rが記憶されたテンショニング力において閾値62以上であると判定されたとき、得られた情報を記録する(ステップS9)。ステップS9では、超音波センサ41が受信した反射波52及び54の各波形情報、エコー強度56及び57の各情報、算出されたエコー強度比Rの情報、及びエコー強度比Rの判定結果の情報が、超音波測定装置48のメモリ(図示せず)に記憶される。そして、本実施例のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法が終了する。
【0079】
本実施例は、実施例1で生じた各効果を得ることができる。本実施例では、上記した各情報がメモリに記憶されているので、ジェットポンプビームの取り付け状態の確認の記録を提出する場合には、超音波測定装置48のメモリに記憶された上記の各情報を基に報告書を作成することができる。
【符号の説明】
【0080】
1…原子炉圧力容器、4…炉心シュラウド、5…炉心、9…ジェットポンプ、10…ノズル、12…スロート、13…ディフューザ、21…ライザ管、22…トランジションピース、23…エルボ、24…インレットミキサ、25,25A.25B…突出部、26…ビームアセンブリ、27…ジェットポンプビーム、28…ビームボルト、28A…先端、30A,30B…溝、31…インサート、40…超音波センサヘッド、41…超音波センサ、42…固定機構、43…筺体、44…孔部、45…荷重調整おもり、48…超音波測定装置、67…取り付け状態確認装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器内に設置されたディフューザに一端部が挿入され、前記原子炉圧力容器内に配置されたライザ管に他端部が連絡されたインレットミキサを、前記ライザ管に設けられたトランジションピースの一対の突出部の間に配置した状態で、前記一対の突出部にそれぞれ形成された溝内に、前記インレットミキサの上方に配置したジェットポンプビームの両端部を別々に嵌め込み、
前記ジェットポンプビームの中央部を上方に移動させて前記ジェットポンプビームにたわみを付与し、
たわみが付与された前記ジェットポンプビームに噛み合った、下端部に第1曲面が形成されたネジ部材を、締め付けることにより、前記インレットミキサの上端部に嵌め込まれて前記第1曲面の第1曲率半径よりも大きな第2曲率半径を有する第2曲面が上面に形成されたインサート部材の前記第2曲面に押し付け、
前記ネジ部材の前記第1曲面が前記インサート部材の前記第2曲面に押し付けられている状態で、超音波センサから前記ネジ部材に超音波を送信し、
前記第1曲面で生じた第1反射波の第1エコー強度、及び前記インサート部材の、前記第2曲面とは反対側の面で生じた第2反射波の第2エコー強度を求め、
前記第1エコー強度及び前記第2エコー強度を用いて、前記ジェットポンプビームの取り付け状態を確認することを特徴とするジェットポンプビーム取り付け状態確認方法。
【請求項2】
前記ジェットポンプビームの取り付け状態の確認は、前記第1エコー強度及び前記第2エコー強度を用いて求められたエコー強度比に基づいて行われる請求項1に記載のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法。
【請求項3】
前記超音波センサ、及び1つの開放端を有する孔部が形成されて前記孔部内に配置された前記超音波センサを保持する筺体を備えた超音波センサヘッドを用い、超音波センサから前記ネジ部材への前記超音波の送信は、前記ネジ部材の一部を前記筺体の前記孔部内に挿入して前記超音波センサを前記ネジ部材に接触させた状態で行う請求項1または2に記載のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法。
【請求項1】
原子炉圧力容器内に設置されたディフューザに一端部が挿入され、前記原子炉圧力容器内に配置されたライザ管に他端部が連絡されたインレットミキサを、前記ライザ管に設けられたトランジションピースの一対の突出部の間に配置した状態で、前記一対の突出部にそれぞれ形成された溝内に、前記インレットミキサの上方に配置したジェットポンプビームの両端部を別々に嵌め込み、
前記ジェットポンプビームの中央部を上方に移動させて前記ジェットポンプビームにたわみを付与し、
たわみが付与された前記ジェットポンプビームに噛み合った、下端部に第1曲面が形成されたネジ部材を、締め付けることにより、前記インレットミキサの上端部に嵌め込まれて前記第1曲面の第1曲率半径よりも大きな第2曲率半径を有する第2曲面が上面に形成されたインサート部材の前記第2曲面に押し付け、
前記ネジ部材の前記第1曲面が前記インサート部材の前記第2曲面に押し付けられている状態で、超音波センサから前記ネジ部材に超音波を送信し、
前記第1曲面で生じた第1反射波の第1エコー強度、及び前記インサート部材の、前記第2曲面とは反対側の面で生じた第2反射波の第2エコー強度を求め、
前記第1エコー強度及び前記第2エコー強度を用いて、前記ジェットポンプビームの取り付け状態を確認することを特徴とするジェットポンプビーム取り付け状態確認方法。
【請求項2】
前記ジェットポンプビームの取り付け状態の確認は、前記第1エコー強度及び前記第2エコー強度を用いて求められたエコー強度比に基づいて行われる請求項1に記載のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法。
【請求項3】
前記超音波センサ、及び1つの開放端を有する孔部が形成されて前記孔部内に配置された前記超音波センサを保持する筺体を備えた超音波センサヘッドを用い、超音波センサから前記ネジ部材への前記超音波の送信は、前記ネジ部材の一部を前記筺体の前記孔部内に挿入して前記超音波センサを前記ネジ部材に接触させた状態で行う請求項1または2に記載のジェットポンプビーム取り付け状態確認方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−233817(P2012−233817A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103473(P2011−103473)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
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