説明

ジエチレントリアミン型金属キレート構造を有する高級脂肪酸エステル及びアミド誘導体

【課題】溶解性等に優れ、病巣選択的なリポソーム造影剤に適した化合物の提供。
【解決手段】下記の一般式(I):


[式中、Rは8〜30個の炭素原子からなるアルキル基またはアルケニル基を示し;X1及びX2はそれぞれ独立に単結合、−O−、又は−NZ1−(Z1は水素原子、または炭素原子1〜3個の低級アルキル基を示す)を示すが、X1及びX2が同時に単結合を示すことはなく;X3は−O−又は−NZ2−(Z2は水素原子、または炭素原子1〜3個の低級アルキル基を示す)を示し;nは1〜10の整数を示し;Lは2価の連結基を示す。]で表される化合物、該化合物を有するキレート化合物、又はこれらいずれかの塩。該化合物等を含むリポソームを含む造影剤を用いたMRI造影又はシンチグラフィー造影により血管の病巣を選択的に造影できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジエチレントリアミン型金属キレート構造を有する高級脂肪酸エステル及びアミド誘導体に関する。本発明はさらに該化合物、該化合物を含むキレート化合物、又はそれらいずれかの塩を膜構成成分として含むリポソーム及び該リポソームを含む造影剤に関する。
【背景技術】
【0002】
非侵襲的な動脈硬化の診断法としては、主にX線血管造影法が挙げられる。しかし、この方法は、水溶性のヨード造影剤で血液の流れを造影する方法であるため、病変組織と正常組織との区別がつけにくい。そのため、狭窄が50%以上進んだ病巣しか検出することができず、虚血性疾患の発作が発症する前に病巣を検出することが困難である。
【0003】
上記以外の診断法として、近年、動脈硬化巣プラーク中に多く動態分布される造影剤を用いて核磁気共鳴トモグラフィー(MRI)により疾患を検出する方法が報告されている。しかし、該造影剤として報告されている化合物はいずれも診断法に用いることには問題がある。例えば、ヘマトポルフィリン誘導体(特許文献1参照)は皮膚への沈着・着色の欠点が指摘されており、また、脂質に富んだプラークに集積するとの報告があるパーフルオロ側鎖を有するガドリニウム錯体(非特許文献1参照)は、脂肪肝・腎臓上皮・筋組織の腱などの、生体における脂質豊富な組織、器官への集積が危惧されている。
【0004】
化合物の観点からは、2個の脂肪酸エステルを有するフォスファチジルエタノールアミン(PE)とジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)をアミド結合した化合物が知られており(例えば、非特許文献2)、この化合物のガドリニウム錯体のリポソームに関する報告(非特許文献3)もある。しかし、この錯体は難溶解性であるためにリポソーム化の際の操作性が悪く、また、生体内での蓄積性や毒性における懸念がある。
【0005】
別に報告されている1個の脂肪酸エステルを疎水性基として導入したガドリニウム錯体(特許文献2、非特許文献4参照)は、前記化合物と比較して溶解性は向上している。しかし、該錯体脂肪酸エステル部分とガドリニウム錯体部分を連結するリンカー部にメチレン鎖を用いており疎水性が高いため、リポソーム製剤化の際のリポソーム構成リン脂質との親和性の不足が懸念される。
【特許文献1】米国特許第4577636号明細書
【特許文献2】米国特許第6652834号明細書
【非特許文献1】サーキュレーション(Circulation), 109, 2890 (2004)
【非特許文献2】ポリメリック マテリアルズ サイエンス アンド エンジニアリング(Polymeric Materials Science and Engineering), 89, 148 (2003)
【非特許文献3】インオーガニカ キミカ アクタ(Inorganica Chimica Acta), 331, 151 (2002)
【非特許文献4】アメリカ化学会誌(Journal of the American Chemical Society), 126, 3097 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、病巣選択的な造影のためのリポソーム造影剤に適した化合物であって、特に溶解性及びリポソーム膜構成成分との相溶性に優れた化合物を提供することである。また、本発明の課題は、該化合物を含むMRI造影剤及びシンチグラフィー造影剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記の課題を解決すべく研究を行った結果、本発明のジエチレントリアミン型金属キレート構造を有する高級脂肪酸エステル及びアミド化合物が溶解性に富み、また、MRI造影剤としてのリポソームの構成成分として優れた性質を有していることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の一般式(I):
【化1】

[式中、Rは8〜30個の炭素原子からなるアルキル基またはアルケニル基を示し;X1及びX2はそれぞれ独立に単結合、−O−、又は−NZ1−(Z1は水素原子、または炭素原子1〜3個の低級アルキル基を示す)を示すが、X1及びX2が同時に単結合を示すことはなく;X3は−O−又は−NZ2−(Z2は水素原子、または炭素原子1〜3個の低級アルキル基を示す)を示し;nは1〜10の整数を示し;Lは2価の連結基(Lは炭素原子、水素原子及びヘテロ原子(ヘテロ原子とは酸素原子、窒素原子および硫黄原子をいう)からなる群から選択される原子により構成され、かつLを構成する酸素原子は0〜9個、窒素原子は0〜4個、硫黄原子は0〜2個であり、Lの炭素原子及びヘテロ原子の総原子数は1〜20個である)を示す。]で表される化合物又はその塩を提供するものである。
【0009】
本発明の好ましい態様によれば、X1、X2およびX3の少なくとも1つが酸素原子である上記化合物又はその塩;X3が酸素原子である上記化合物又はその塩;Lが炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び水素原子からなる群から選択される原子により構成される2価の連結基である上記化合物又はその塩;Lが炭素原子、酸素原子、及び水素原子により構成される2価の連結基、またはLが炭素原子及び水素原子により構成される2価の連結基である上記化合物又はその塩が提供される。
【0010】
本発明の別の好ましい態様によれば、Lの主鎖(主鎖とはX2とX3を最短個数で結ぶ原子団をいう)、X2、及びX3に含まれるヘテロ原子数の和をj、Lの主鎖に含まれる炭素原子数をkとしたとき、kをjで割った商が3以下である上記化合物又はその塩;該商が2以下である上記化合物又はその塩;X2が−O−又は−NZ1−であり(Z1は水素原子、又は炭素原子1〜3個の低級アルキル基を表す)、Lが炭素原子1〜12個のアルキレン基、又は−(CH2CH2Y)mCH2CH2−(mは1〜6の整数を示し、Yは−O−又は−NZ3−(Z3は水素原子又はメチル基を示す)を示し、mが2以上のとき複数のYは同一でも異なっていてもよい)で表される連結基である上記化合物又はその塩;X2が−O−又は−NZ1−であり(Z1は水素原子、又は炭素原子1〜3個の低級アルキル基を表す)、Lが−(CH2CH2Y)mCH2CH2−(mは1〜6の整数を示し、Yは−O−又は−NZ3−(Z3は水素原子又はメチル基を示す)を示し、mが2以上のとき複数のYは同一でも異なっていてもよい)で表される連結基である上記化合物又はその塩;X2が−O−又は−NZ1−であり(Z1は水素原子、または炭素原子1〜3個の低級アルキル基を示す)、かつLが−(CH2CH2O)lCH2CH2−(lは1〜6の整数を示す)で表される連結基である上記化合物又はその塩;Rが10〜22個の炭素原子からなる直鎖状のアルキル基もしくはアルケニル基、または分岐鎖状のアルキル基もしくはアルケニル基である上記化合物又はその塩が提供される。
【0011】
本発明のさらに別の好ましい態様によれば、上記いずれかの化合物および金属イオンから成るキレート化合物又はその塩;金属イオンが原子番号21-29、31、32、37-39、42-44、49、57-83に相当する元素の金属イオンである該キレート化合物またはその塩;金属イオンが原子番号21-29、42、44、57-71に相当する常磁性元素の金属イオンである該キレート化合物又はその塩が提供される。
【0012】
本発明の別の観点からは、上記の化合物又はその塩を膜構成成分として含むリポソームが提供され、その好ましい態様によれば、ホスファチジルコリン及びホスファチジルセリンを膜構成成分として含む該リポソームが提供される。
また、本発明により、上記のリポソームを含むMRI造影剤が提供される。この発明の好ましい態様によれば、血管疾患の造影に用いる上記MRI造影剤;泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋細胞の造影に用いる上記MRI造影剤;マクロファージが局在化する組織又は疾患部位の造影に用いる上記のMRI造影剤;マクロファージが局在化する組織が肝臓、脾臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、及び腎臓上皮からなる群から選ばれる上記のMRI造影剤;マクロファージが局在化する疾患部位が腫瘍、炎症部位、及び感染部位からなる群から選ばれる上記のMRI造影剤が提供される。
【0013】
また、同様に、本発明により上記のリポソームを含むシンチグラフィー造影剤が提供される。この発明の好ましい態様によれば、血管疾患の造影に用いる上記シンチグラフィー造影剤;泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋細胞の造影に用いる上記シンチグラフィー造影剤;マクロファージが局在化する組織又は疾患部位の造影に用いる上記のシンチグラフィー造影剤;マクロファージが局在化する組織が肝臓、脾臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、及び腎臓上皮からなる群から選ばれる上記のシンチグラフィー造影剤;マクロファージが局在化する疾患部位が腫瘍、炎症部位及び感染部位からなる群から選ばれる上記のシンチグラフィー造影剤が提供される。
【0014】
本発明のさらに別の観点からは、上記MRI造影剤/シンチグラフィー造影剤の製造のための上記の化合物、キレート化合物、又はそれらいずれかの塩の使用;MRI造影/シンチグラフィー造影法であって、上記の化合物、キレート化合物、又はそれらいずれかの塩を膜構成成分として含むリポソームを、ヒトを含む哺乳類動物に投与した後にMRI造影/シンチグラフィー造影する工程を含む方法;血管疾患の病巣の造影方法であって、上記の化合物、キレート化合物、又はそれらいずれかの塩を膜構成成分として含むリポソームを、ヒトを含む哺乳類動物に投与した後にMRI造影/シンチグラフィー造影する工程を含む方法が本発明により提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の化合物、キレート化合物及びこれらいずれかの塩は、MRI造影剤のためのリポソームの構成脂質として優れた性質を有しており、この化合物を含むリポソームを用いてMRI造影/シンチグラフィー造影することにより血管の病巣を選択的に造影できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
Rは8〜30個の炭素原子からなるアルキル基またはアルケニル基を表す。該アルキル基またはアルケニル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよいが、直鎖状、分岐鎖状が好ましい。Rを構成する炭素原子の数は8〜25個がより好ましく、10〜22個が最も好ましい。Rがアルケニル基を表す場合、その二重結合はEまたはZ配置のいずれであってもよく、また、複数ある場合は両者の混合物であっても構わないが、二重結合がビシナル2置換である場合はZ配置が好ましい。また、二重結合の位置、および個数は特に規定されない。
【0017】
1、X2はそれぞれ独立に単結合、−O−又は−NZ1−を表す。ただしX1、X2の両者が同時に単結合を示すことはない。Z1は水素原子、または炭素原子1〜3の低級アルキル基を表すが、Z1は水素原子またはメチル基であることが好ましい。X3は−O−または−NZ2−を表す。Z2は水素原子、または炭素数1〜3個の低級アルキル基を表すが、Z2は水素原子またはメチル基であることが好ましい。X1、X2、X3が表す好ましい態様としては、X1、X2、X3のうち少なくとも1つが酸素原子を表す場合であり、X3が酸素原子を表す場合が最も好ましい。
【0018】
nは1〜10の整数を表す。好ましくはnは1〜4であり、最も好ましくはnは1である。
【0019】
Lは主鎖(主鎖とはX2とX3を最短個数で結ぶ原子団をいう)が炭素原子又は炭素原子とヘテロ原子を任意に組み合わせた原子群で構成される二価の連結基を表す。ここでヘテロ原子とは窒素原子、酸素原子及び硫黄原子を意味する。ヘテロ原子として好ましくは窒素原子及び酸素原子であり、最も好ましくは酸素原子である。Lは炭素原子及び水素原子のみで構成されていてもよい。Lを構成する炭素原子及びヘテロ原子の総数は1〜20個であるが、5〜20個が好ましく、8〜18個がより好ましい。Lが炭素原子及びヘテロ原子で構成される場合、Lを構成する酸素原子は0〜9個、窒素原子は0〜4個、硫黄原子は0〜2個の間である。Lを構成するヘテロ原子のうち、好ましい酸素原子数は1〜7個、より好ましくは1〜5個である。好ましい窒素原子数は0〜3個、より好ましくは0〜2個である。好ましい硫黄原子数は0〜1個である。Lの主鎖としてより好ましくは、炭素原子に対し、酸素原子または窒素原子が一定の割合以上で含まれている場合である。好ましい割合はLの主鎖、X2及びX3に含まれるヘテロ原子数の和をj、Lの主鎖に含まれる炭素原子数をkとしたとき、kをjで割った商が3以下の場合であり、より好ましくは当該商が2以下の場合である。
【0020】
Lで表される2価の連結基において、Lを構成する原子は上述の主鎖への置換基として含まれていてもよい。該置換基の個数、置換位置は特に限定されず、2個以上の置換基が存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。ただし、置換基を有する部分構造を含めたLを構成する炭素原子及びヘテロ原子の総数は20個を超えないものとする。置換基の例としては、アルキル、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、エーテル、アシルオキシ、カルバモイルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アミノ、アシルアミノ、アミノカルボニルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、スルファモイルアミノ、アルキルスルホニルアミノ、メルカプト、アルキルチオ、スルファモイル、スルホ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アシル、アルコキシカルボニル、カルバモイル、アゾ、イミド等が挙げられるが、これらに限定されない。置換基として好ましくは、アルキル、オキソ、カルボキシル、ヒドロキシル、エーテル、アシルオキシ、カルバモイルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アミノ、アシルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アルコキシカルボニル、カルバモイル基であり、より好ましくはアルキル、オキソ、ヒドロキシル基である。
【0021】
Lは直鎖状、分岐鎖状、環状又はそれらの組み合わせのいずれでもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。また、該連結基は飽和の基であっても、不飽和結合を含む基であってもよい。Lが不飽和結合を含む基である場合、その種類、位置、個数は特に規定されない。Lの好ましい例として、アルキレン構造、ポリエチレングリコール構造、ポリプロピレングリコール構造、ポリグリセリン構造、ポリグリコール酸構造、ポリ乳酸構造、ポリエチレンアミン構造、ポリペプチド構造又はその組み合わせなどを挙げることができる。より好ましくはアルキレン構造、ポリエチレングリコール構造、ポリプロピレングリコール構造、ポリエチレンアミン構造又はその組み合わせであり、さらに好ましくはアルキレン構造、ポリエチレングリコール構造、ポリエチレンアミン構造又はその組み合わせである。具体的には、Lは1〜12個の炭素原子からなるアルキレン基、又は−(CH2CH2Y)mCH2CH2−(mは1〜6の整数を示し、Yは−O−又は−NZ3−(Z3は水素原子又はメチル基を示す)を示し、mが2以上のとき複数のYは同一でも異なっていてもよい)で表される連結基であることが好ましく、−(CH2CH2Y)mCH2CH2−で表される連結基であることがより好ましく、−(CH2CH2O)lCH2CH2−(lは1〜6の整数を表す)で表される連結基であることが最も好ましい。mおよびlは、好ましくは2〜6であり、さらに好ましくは2〜4である。
【0022】
以下に本発明の化合物の好ましい例を示すが、本発明の化合物はこれらの例に限定されることはない。
【化2】

【0023】
【表1】


【0024】
【表2】


【0025】
以下に、本発明の化合物の一般的な合成法について説明するが、本発明の化合物の合成法はこれらに限定されるものではない。本発明の化合物の部分構造である長鎖脂肪酸は、通常市販されているものを使用してもよく、あるいは用途に応じて適宜合成してもよい。合成により入手する場合には、例えばRichard C. Larock著、Comprehensive organic transformations(VCH)に記載の方法により、対応するアルコールやアルキルハライド等を原料として用いることができる。
【0026】
前記の長鎖脂肪酸は、ジエチレングリコール、ジエタノールアミン、ジエチレントリアミンなどのなどのα、ω―ジオールまたはジアミン、α−アミノ−ω−アルコールと縮合してモノアシル化合物へと導く。この際、必要な場合には保護基を用いることもできるが、この場合の保護基とは、例えば、T. W. Green & P. G. M. Wuts著、Protecting groups in organic synthesis(John Wiley & Sons, Inc.)に記載のものを適宜選択して用いることができる。
【0027】
上記のモノアシル化合物は、ω位のヒドロキシ基またはアミノ基と金属配位能を有するポリアミン誘導体と連結することで本発明の化合物が合成できる。その方法は、例えば、Bioconjugate Chem. 10, 137 (1999)に記載の手法に準じて合成することができる。しかし、これらの方法は一例であり、これに限定されるものではない。
【0028】
本発明のキレート化合物は上述の化合物及び金属イオンからなるキレート化合物である。金属イオンとしては、特に限定されないが、MRI、X線、超音波コントラスト、シンチグラフィーなどの造影、放射線治療の目的に適切な金属イオンとして、常磁性金属、重金属、放射性金属同位体の放射性金属の金属イオンを用いることが好ましい。より具体的には、原子番号21-29、31、32、37-39、42-44、49、57-83から選択される元素の金属イオンが好ましい。また、MRI造影剤として本発明のキレート化合物を使用する場合に適切な金属イオンとしては、原子番号21-29、42、44、57-71から選択される元素の金属イオンがあげられる。正のMRI剤の調製に用いるためにより好ましい金属は、原子番号24(Cr)、25(Mn)、26(Fe)、63(Eu)、64(Gd)、66(Dy)、67(Ho)であり、負のMRI剤の調製に用いるために、より好ましい金属は、原子番号62(Sm)、65(Tb)、66(Dy)である。最も好ましくは、原子番号25(Mn)、26(Fe)、64(Gd)であり、特にMn(II)、Fe(III)、Gd(III)の場合が好ましい。
【0029】
本発明の化合物又はキレート化号物は1以上の不斉中心を有するが、この場合、不斉中心に基づく光学活性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する。純粋な形態の任意の立体異性体、任意の立体異性体の混合物、又はラセミ体などは、いずれも本発明の範囲に包含される。また、本発明の化合物はオレフィン性の二重結合を1個又は2個以上有する場合があるが、その配置はE又はZのいずれであってもよく、両者の混合物として存在していてもよい。本発明の化合物は互変異性体として存在する場合もあるが、任意の互変異性体、又はそれらの混合物は本発明の範囲に包含される。さらに、本発明の化合物は塩を形成する場合があり、遊離形態の化合物又は塩の形態の化合物が水和物又は溶媒和物を形成する場合もあるが、このような場合も本発明の範囲に包含される。塩の種類は特に限定されず、酸付加塩又は塩基付加塩のいずれであってもよい。
【0030】
本発明の化合物又はその塩はリポソームの膜構成成分として用いることができる。本発明の化合物又はその塩を用いてリポソームを調製する場合、本発明の化合物又はその塩の使用量は、膜構成成分の全質量に対して10から90質量%程度、好ましくは10から80質量%、さらに好ましくは20から80質量%である。本発明の化合物は膜構成成分として1種類を用いてもよいが、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
リポソームの他の膜構成成分としては、リポソームの製造に通常用いられている脂質化合物をいずれも用いてもよい。例えば、Biochim. Biophys. Acta 150(4), 44 (1982)、Adv. In Lipid. Res. 16(1), 1 (1978)、RESEARCH IN LIPOSOMES_ (P. Machy, L. Leserman著、John Libbey EUROTEXT社)、「リポソーム」(野島、砂本、井上編、南江堂)等に記載されている。脂質化合物としてはリン脂質が好ましく、特に好ましいのはホスファチジルコリン(PC)類である。ホスファチジルコリン類の好ましい例としては、eggPC、ジミリストイルPC(DMPC)、ジパルミトイルPC(DPPC)、ジステアロイルPC(DSPC)、ジオレイルPC(DOPC)等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
リポソームの膜構成成分として好ましい例としては、ホスファチジルコリンとホスファチジルセリン(PS)との組み合わせを挙げることができる。ホスファチジルセリンとしては、ホスファチジルコリンの好ましい例として挙げたリン脂質と同様の脂質部位を有する化合物が挙げられる。ホスファチジルコリンとホスファチジルセリンとを組み合せて用いる場合、PCとPSの好ましい使用モル比はPC:PS=90:10から10:90の間であり、さらに好ましくは、30:70から70:30の間である。
本発明のリポソームとして好ましい別の例としては、膜構成成分として、ホスファチジルコリンとホスファチジルセリンとを含み、さらにリン酸ジアルキルエステルを含むリポソームが挙げられる。リン酸ジアルキルエステルのジアルキルエステルを構成する2個のアルキル基は同一であることが好ましく、それぞれのアルキル基の炭素数は6以上であることが好ましく、10以上がより好ましく、12以上がさらに好ましい。好ましいリン酸ジアルキルエステルの例としては、ジラウリルフォスフェート、ジミリスチルフォスフェート、ジセチルフォスフェート等が挙げられるが、これらに限定されることはない。この態様において、ホスファチジルコリン及びホスファチジルセリンの合計質量に対するリン酸ジアルキルエステルの好ましい使用量は1から50質量%までであり、好ましくは1から30質量%であり、さらに好ましくは1から20質量%である。
【0032】
ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、リン酸ジアルキルエステ及び本発明の化合物を膜構成成分として含むリポソームにおいて、上記成分の好ましい質量比はPC:PS:リン酸ジアルキルエステル:本発明の化合物が5〜40質量%:5〜40質量%:1〜10質量%:15〜80質量%の間で選択することができる。
本発明のリポソームの構成成分は上記4者に限定されず、他の成分を加えることができる。その例としては、コレステロール、コレステロールエステル、スフィンゴエミリン、FEBS Lett. 223, 42 (1987); Proc. Natl. Acad. Sci., USA 85, 6949 (1988)等に記載のモノシアルガングリオキシドGM1誘導体、Chem. Lett. 2145 (1989); Biochim. Biophys. Acta 1148, 77 (1992)等に記載のグルクロン酸誘導体、Biochim. Biophys. Acta 1029, 91 (1990); FEBS Lett. 268, 235 (1990)等に記載のポリエチレングリコール誘導体が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0033】
本発明のリポソームは、当業者が利用可能ないかなる方法で製造してもよい。製造法の例としては、先に挙げたリポソームの総説成書類の他、Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9, 467 (1980)、"Liposomes" (M. J. Ostro編、MARCELL DEKKER、INC.)等に記載されている。具体例としては、超音波処理法、エタノール注入法、フレンチプレス法、エーテル注入法、コール酸法、カルシウム融合法、凍結融解法、逆相蒸発法等が挙げられるが、これらに限られるものではない。本発明のリポソームのサイズは、上記の方法で作成できるサイズのいずれであってもよいが、通常は平均が400 nm以下であり、200 nm以下が好ましい。リポソームの構造は特に限定されず、ユニラメラ又はマルチラメラなどのいずれの形態でもよい。また、リポソームの内部に適宜の薬物や他の造影剤の1種又は2種以上を配合することも可能である。
【0034】
本発明のリポソームを造影剤として用いる場合には、好ましくは非経口的に投与することができ、より好ましくは静脈内投与することができる。例えば、注射剤や点滴剤などの形態の製剤を凍結乾燥形態の粉末状組成物として提供し、用事に水又は他の適当な媒体(例えば生理食塩水、ブドウ等輸液、緩衝液など)に溶解ないし再懸濁して用いることができる。本発明のリポソームを造影剤として用いる場合、投与量はリポソーム中の化合物含有量が従来の造影剤の化合物含有量と同程度になるように適宜決定することが可能である。
【0035】
いかなる特定の理論に拘泥するわけではないが、動脈硬化、若しくはPTCA後の再狭窄等の血管疾患においては、血管の中膜を形成する血管平滑筋細胞が異常増殖を起こすと同時に内膜に遊走し、血流路を狭くすることが知られている。正常の血管平滑筋細胞が異常増殖を始めるトリガーはまだ完全に明らかにされていないが、マクロファージの内膜への遊走と泡沫化が重要な要因であることが知られており、その後に血管平滑筋細胞がフェノタイプ変換(収縮型から合成型)をおこすことが報告されている。
【0036】
本発明のリポソームを用いると、泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋に対して規定の造影剤となる化合物を選択的に取り込ませることができる。その結果、病巣と非疾患部位とをコントラストをつけて造影することが可能である。従って、本発明の造影剤は、特に血管疾患のMRI造影に好適に使用でき、例えば、動脈硬化巣やPTCA後の再狭窄等の造影を行うことができる。
【0037】
また、例えば J. Biol. Chem., 265, 5226 (1990)に記載されているように、リン脂質よりなるリポソーム、特にPCとPSから形成されるリポソームが、スカベンジャーレセプターを介してマクロファージに集積しやすいことが知られている。従って本発明のリポソームを使用することにより、本発明の化合物をマクロファージが局在化している組織又は疾患部位に集積させることができる。本発明のリポソームを用いると、公知技術であるサスペンジョン又はオイルエマルジョンを用いる場合に比べて、より多くの規定の化合物をマクロファージに集積させることが可能である。
【0038】
マクロファージの局在化が認められ、本発明のリポソームで好適に造影可能な組織としては、例えば、血管、肝臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、腎臓上皮を挙げることができる。また、ある種の疾患においては、疾患部位にはマクロファージが集積していることが知られている。こうした疾患としては、腫瘍、動脈硬化、炎症、感染等を挙げることができる。従って、本発明のリポソームを用いることにより、これらの疾患部位を特定することができる。特に、アテローム性動脈硬化病変の初期過程において、スカベンジャーレセプターを介して変性LDLを大量に取り込んだ泡沫化マクロファージが集積していることが知られており〔Am. J. Pathol., 103, 181(1981)、Annu. Rev. Biochem., 52, 223(1983)〕、このマクロファージに本発明のリポソームを集積化させてMRI造影をすることにより、他の手段では困難な動脈硬化初期病変の位置を特定することが可能である。
【0039】
本発明のリポソームを用いた造影方法は特に限定されない。例えば、通常のMRI造影剤を用いた造影方法と同様にして水のT1/T2緩和時間の変化を測定することにより造影を行うことができる。また、適宜、適切な金属イオンを用いることで、シンチグラフィー造影剤、X線造影剤、光像形成剤、超音波コントラスト剤としても使用することも可能である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。なお、下記の実施例中の化合物番号は上記に示した化合物例の番号に対応している。また、実施例中の化合物の構造はNMRスペクトル、およびマススペクトルにより確認した。
【0041】
本発明の化合物及びそのガドリニウム錯体は下記に示す合成経路に従って合成した。
【化3】

【0042】
化合物A24
フィタン酸1.5gとテトラエチレングリコール3.5mLをトルエン20mLに溶解し、濃硫酸を数滴加えた。ディーンスターク抽出器を取り付けて4時間還流し、生じた水分を留去した。冷却後、飽和重曹水を加えて中和した。水層を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒留去後,シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒系:ヘキサン/酢酸エチル=1:1)にて精製し、化合物A241.8g(61%)を得た。
1H−NMR (300MHz、CDCl3)δ:4.21〜4.27(2H,m)、3.58〜3.76(14H,m)、2.33(1H,dd)、2.15(1H,dd)、1.88〜2.00(1H,m)、0.98〜1.60(21H,m)、0.92(3H,d)、0.81〜0.89(12H,m)。
【0043】
化合物A101
パルミチン酸5.1gとジエチレングリコール9.5mLをトルエン30mLに溶解し、濃硫酸を数滴加えた。ディーンスターク抽出器を取り付けて3時間還流し、生じた水分を留去した。冷却後、飽和重曹水を加えて中和した。水層を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒留去後、化合物A1016.8g(99%)を得た。
1H−NMR (400MHz、CDCl3)δ:4.22〜4.26(2H,m)、3.58〜3.63(2H,m)、3.68〜3.78(4H,m)、2.33(2H,t)、1.58〜1.67(2H,m)、1.21〜1.36(24H,m)、0.88(3H,t)。
【0044】
化合物A102
パルミチン酸5.1gとトリエチレングリコール13.3mLをトルエン30mLに溶解し、濃硫酸を数滴加えた。ディーンスターク抽出器を取り付けて3時間還流し、生じた水分を留去した。冷却後、飽和重曹水を加えて中和した。水層を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒留去後ヘキサンに溶解し−20度に冷却した。析出した結晶を濾取し、化合物A1027.5g(97%)を得た。
1H−NMR (400MHz、CDCl3)δ:4.22〜4.25(2H,m)、3.60〜3.78(10H,m)、2.33(2H,t)、1.57〜1.68(2H,m)、1.20〜1.36(24H,m)、0.88(3H,t)。
【0045】
化合物A103
パルミチン酸5.1gとテトラエチレングリコール13.8mLをトルエン20mLに溶解し、濃硫酸を数滴加えた。ディーンスターク抽出器を取り付けて3時間還流し、生じた水分を留去した。冷却後、飽和重曹水を加えて中和した。水層を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒留去後,シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒系:ヘキサン/酢酸エチル=1:1)にて精製し、化合物A1034.9g(57%)を得た。
1H−NMR (400MHz、CDCl3)δ:4.22〜4.25(2H,m)、3.58〜3.75(14H,m)、2.33(2H,t)、1.58〜1.68(2H,m)、1.21〜1.35(24H,m)、0.88(3H,t)。
【0046】
化合物A104
パルミチン酸2.6gとペンタエチレングリコール4.2mLをトルエン100mLに溶解し、濃硫酸を数滴加えた。ディーンスターク抽出器を取り付けて5時間還流し、生じた水分を留去した。冷却後、飽和重曹水を加えて中和した。水層を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒留去後,シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒系:ヘキサン/酢酸エチル=1:1〜1:2)にて精製し、化合物A1041.6g(34%)を得た。
1H−NMR (300MHz、CDCl3)δ:4.20〜4.26(2H,m)、3.58〜3.76(18H,m)、2.32(2H,t)、1.55〜1.68(2H,m)、1.20〜1.38(24H,m)、0.87(3H,t)。
【0047】
化合物A105
パルミチン酸2.6gとヘキサエチレングリコール5.0mLをトルエン20mLに溶解し、濃硫酸を数滴加えた。ディーンスターク抽出器を取り付けて5時間還流し、生じた水分を留去した。冷却後、飽和重曹水を加えて中和した。水層を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒留去後,シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒系:ヘキサン/酢酸エチル=2:3〜酢酸エチルのみ)にて精製し、化合物A1053.0g(58%)を得た。
1H−NMR (400MHz、CDCl3)δ:4.20〜4.27(2H,m)、3.58〜3.75(22H,m)、2.33(2H,t)、1.58〜1.68(2H,m)、1.20〜1.36(24H,m)、0.88(3H,t)。
【0048】
化合物A109
パルミチン酸5.1gと2−(メチルアミノ)エタノール4.6mLをジクロロメタン50mLに溶解し、N、N−ジメチルアミノピリジン100mgとEDC7.7gを0℃にて加えた。1時間後、室温に昇温し更に一晩撹拌した。水を加えて反応を停止し、抽出操作で過剰量のアミンと反応副生成物を除去し、水層を酢酸エチルで逆抽出した。得られた有機層をあわせて飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒留去後,シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒系:ヘキサン/アセトン=1:4)にて精製し、化合物A1094.5g(63%)を得た。
1H−NMR (300MHz、CDCl3)δ:4.19(2H,t)、3.57(2H,t)、2.71(2H,t)、2.60(2H,t)、2.33(3H,s)、2.31(2H,t)、1.55〜1.69(2H,m)、1.20〜1.37(24H,m)、0.88(3H,t)。
【0049】
化合物A118
パルミチン酸2−(2−ブロモエトキシ)エチル1.6g、THF30mLおよびDMF10mLの混合溶液に、2−(2−アミノエトキシ)エタノール1.8mLを加え、室温で1日、50度に加熱して1日撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応終了し、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒留去後得られた組成生物をジオキサン10mLに溶解し0℃冷却し、二炭酸ジt−ブチル0.82mLと1M水酸化ナトリウム水溶液3.6mLを同時に滴下した。1時間撹拌後、室温に昇温して更に4時間撹拌した。反応溶液を水及び酢酸エチルで希釈して抽出を行い、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。反応溶液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒系:ヘキサン/酢酸エチル=2:1〜1:1)、目的の化合物D1180.80g(20%/2段階)を得た。
1H−NMR (400MHz、CDCl3)δ:4.19〜4.24(2H,m)、3.39〜3.73(14H,br.m)、2.33(2H,t)、1.55〜1.67(2H,m)、1.46(9H,s)、1.20〜1.35(24H,m)、0.88(3H,t)。
【0050】
化合物A128
パルミチン酸2.6gと1,7−ヘプタンジオール3.5mLをトルエン30mLに溶解し、濃硫酸を数滴加えた。ディーンスターク抽出器を取り付けて3時間還流し、生じた水分を留去した。冷却後、飽和重曹水を加えて中和した。水層を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒留去後,シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒系:ヘキサン/酢酸エチル=4:1〜3:1)にて精製し、化合物A1282.3g(62%)を得た。
1H−NMR (400MHz、CDCl3)δ:4.07(2H,t)、3.64(2H,q)、2.28(2H,t)、1.52〜1.68(6H,m)、1.18〜1.45(30H,m)、0.88(3H,t)。
【0051】
化合物A129
パルミチン酸2.2gと1,12−ドデカンジオール3.3gをトルエン90mLに溶解し、濃硫酸を数滴加えた。ディーンスターク抽出器を取り付けて3時間還流し、生じた水分を留去した。冷却後、飽和重曹水を加えて中和した。水層を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒留去後,シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒系:ヘキサン/酢酸エチル=5:1)にて精製し、化合物A1292.3g(61%)を得た。
1H−NMR (400MHz、CDCl3)δ:4.05(2H,t)、3.64(2H,q)、2.29(2H,t)、1.52〜1.68(6H,m)、1.18〜1.45(40H,m)、0.89(3H,t)。
【0052】
化合物B
アスパラギン酸β−ベンジル−α−t−ブチルエステル塩酸塩(5.3g)と2−ブロモエチルジ(t−ブチルオキシカルボニルメチル)アミン(13.4g)をアセトニトリル40mLに懸濁し、リン酸緩衝溶液(pH7:K2HPO432.6gとNaH2PO44.7gに純水100mLを加えて調製した)40mLを加え室温で2時間激しく撹拌した。分液して水層をアセトニトリルで抽出(10mL×3)して有機層に加えた。有機層に新たにリン酸緩衝溶液40mLを加え、20時間激しく撹拌した。反応後、水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒留去した残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒系:ヘキサン/酢酸エチル=4:1)、目的の化合物B9.2g(66%)を得た。
1H−NMR (300MHz、CDCl3)δ:7.37−7.29(5H,m)、5.13(1H,d)5.07(1H,d)、3.82(1H,t)、3.41(8H,s)、2.81(1H,dd)、2.72(8H,br.s)、2.56(1H,dd)、1.47(9H,s)、1.44(36H,s)。
【0053】
化合物C
化合物B1.3gをエタノール9mL、シクロヘキセン4.5mLの混合溶媒に溶解した。10%Pd/C0.18gを加え、1.5時間加熱還流した。反応溶液を冷却後、セライト濾過を行って触媒を除去した。溶媒留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒系:ヘキサン/酢酸エチル=1:1)、目的の化合物C1.1g(93%)を得た。
1H−NMR (400MHz、CDCl3)δ:4.35(1H,t)、3.45(4H,d)、3,41(4H,d)、2.92(8H,br.s)、2.68−2.72(1H,br.m)、1.49(9H,s)、1.45(36H,s)。
【0054】
化合物D24
アルコールA240.27g、カルボン酸C0.30gをCH2Cl21.0mLに溶解し、N,N−ジメチルアミノピリジン(10mg)とEDC(0.10g)を0℃で加え2時間撹拌し、室温に昇温後22時間撹拌し、さらに6時間加熱還流した。反応溶液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒系:ヘキサン/酢酸エチル=2:1)、目的の化合物D240.28g(57%)を得た。
1H−NMR(300MHz、CDCl3)δ:4.17〜4.24(4H,m)、3.76(1H,t)、3.62〜3.71(12H,m)、3.42(8H,s)、2.79(1H,dd)、2.66〜2.77(8H,br.s)、2.54(1H,dd)、2.31(1H,dd)、2.14(1H,dd)、1.88〜2.00(1H,m)、1.45(45H,s)、0.98〜1.62(21H,m)、0.92(3H,d)、0.81〜0.89(12H,m)。
【0055】
化合物D101
アルコールA1010.13g、カルボン酸C0.25gをCH2Cl20.8mLに溶解し、N,N−ジメチルアミノピリジン(10mg)とEDC(0.08g)を0℃で加え2時間撹拌し、室温に昇温後さらに20時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒系:ヘキサン/酢酸エチル=3.5:1)、目的の化合物D1010.21g(52%)を得た。
1H−NMR (400MHz、CDCl3)δ:4.20〜4.24(4H,m)、3.83(1H,t)、3.67〜3.71(4H,m)、3.44(8H,s)、2.81(1H,dd)、2.72〜2.81(8H,br.s)、2.57(1H,dd)、2.32(2H,t)、1.59〜1.65(2H,m)、1.45(45H,s)、1.22〜1.34(24H,m)、0.88(3H,t)。
【0056】
化合物D102
アルコールA1020.15g、カルボン酸C0.25gをCH2Cl20.8mLに溶解し、N,N−ジメチルアミノピリジン(10mg)とEDC(0.08g)を0℃で加え2時間撹拌し、室温に昇温後さらに20時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒系:ヘキサン/酢酸エチル=3:1)、目的の化合物D1020.25g(67%)を得た。
1H−NMR (300MHz、CDCl3)δ:4.18〜4.24(4H,m)、3.78(1H,t)、3.66〜3.72(4H,m)、3.63(4H,s)、3.41(8H,s)、2.79(1H,dd)、2.68〜2.76(8H,br.s)、2.53(1H,dd)、2.33(2H,t)、1.58〜1.64(2H,m)、1.45(45H,s)、1.22〜1.30(24H,m)、0.88(3H,t)。
【0057】
化合物D103
アルコールA1030.21g、カルボン酸C0.33gをCH2Cl21.5mLに溶解し、N,N−ジメチルアミノピリジン(10mg)とEDC(0.10g)を0℃で加え2時間撹拌し、室温に昇温後さらに20時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒系:ヘキサン/酢酸エチル=2:1)、目的の化合物D1030.52g(99%)を得た。
1H−NMR (300MHz、CDCl3)δ:4.22(4H,m)、3.78(1H,t)、3.66(12H,m)、3.40(8H,s)、2.81(1H,dd)、2.72(8H,br.s)、2.53(1H,dd)、2.31(2H,t)、1.62(2H,m)、1.58(9H,s)、1.45(36H,s)、1.25(24H,m)、0.88(3H,t)。
【0058】
化合物D104
アルコールA1040.29g、カルボン酸C0.40gをCH2Cl21.1mLに溶解し、N,N−ジメチルアミノピリジン(10mg)とEDC(0.13g)を0℃で加え2時間撹拌し、室温に昇温後さらに22時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒系:ヘキサン/酢酸エチル=1:1〜2:1)、目的の化合物D1040.51g(78%)を得た。
1H−NMR (300MHz、CDCl3)δ:4.18〜4.23(4H,m)、3.76(1H,t)、3.62〜3.72(16H,m)、3.42(8H,s)、2.80(1H,dd)、2.68〜2.76(8H,br.s)、2.53(1H,dd)、2.32(2H,t)、1.58〜1.66(2H,m)、1.45(45H,s)、1.21〜1.35(24H,m)、0.88(3H,t)。
【0059】
化合物D105
アルコールA1050.31g、カルボン酸C0.40gをCH2Cl21.1mLに溶解し、N,N−ジメチルアミノピリジン(10mg)とEDC(0.13g)を0℃で加え2時間撹拌し、室温に昇温後さらに22時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒系:ヘキサン/酢酸エチル=1:1)、目的の化合物D1050.42g(62%)を得た。
1H−NMR (300MHz、CDCl3)δ:4.18〜4.25(4H,m)、3.76(1H,t)、3.62〜3.72(20H,m)、3.42(8H,s)、2.79(1H,dd)、2.68〜2.76(8H,br.s)、2.53(1H,dd)、2.31(2H,t)、1.58〜1.65(2H,m)、1.45(45H,s)、1.22〜1.35(24H,m)、0.88(3H,t)。
【0060】
化合物D109
アルコールA1090.24g、カルボン酸C0.50gをCH2Cl23.4mLに溶解し、N,N−ジメチルアミノピリジン(10mg)とEDC(0.26g)を0℃で加え2時間撹拌し、室温に昇温後さらに20時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒系:ヘキサン/酢酸エチル=3.5:1〜2:1)、目的の化合物D1090.26g(36%)を得た。
1H−NMR (400MHz、CDCl3)δ:4.12〜4.20(4H,m)、3.78(1H,t)、3.42(8H,s)、2.78(1H,dd)、2.65〜2.78(12H,br.m)、2.50(1H,dd)、2.35(3H,s)、2.32(2H,t)、1.53〜1.65(2H,m)、1.45(45H,s)、1.22〜1.34(24H,m)、0.87(3H,t)。
【0061】
化合物D118
アルコールA1180.22g、カルボン酸C0.30g、Ph3P0.13g、をTHF1.0mLに溶解し、ジエチルアゾジカルボキシレートトルエン溶液(2.2M、0.23mL)を0℃で加え15分撹拌した。室温に昇温後20時間撹拌し、50度でさらに8時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒系:ヘキサン/酢酸エチル=3:1〜2:1)、目的の化合物D1180.22g(45%)を得た。
1H−NMR (400MHz、CDCl3)δ:4.16〜4.22(4H,m)、3.76(1H,t)、3.40〜3.65(12H,br.m)、3.42(8H,s)、2.79(1H,dd)、2.68〜2.80(8H,br.s)、2.54(1H,dd)、2.32(2H,t)、1.54〜1.64(2H,m)、1.44(54H,s)、1.22〜1.37(24H,m)、0.88(3H,t)。
【0062】
化合物D128
アルコールA1280.29g、カルボン酸C0.29g、Ph3P0.12gをTHF1.0mLに溶解し、ジエチルアゾジカルボキシレートトルエン溶液(2.2M,0.20mL)を室温で加え24時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒系:ヘキサン/酢酸エチル=10:1)、目的の化合物D1280.26g(59%)を得た。
1H−NMR(300MHz、CDCl3)δ:4.00〜4.08(4H,m)、3.77(1H,t)、3.42(8H,s)、2.76(1H,dd)、2.67〜2.78(8H,br.s)、2.48(1H,dd)、2.27(2H,t)、1.55〜1.68(6H,m)、1.45(45H,s)、1.20〜1.40(30H,m)、0.87(3H,t)。
【0063】
化合物D129
アルコールA1290.29g、カルボン酸C0.50gをCH2Cl21.0mLに溶解し、N,N−ジメチルアミノピリジン(10mg)とEDC(0.16g)を0℃で加え2時間撹拌し、室温に昇温後22時間撹拌した。さらにEDC(0.08g)を追加し24時間撹拌後、反応溶液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒系:ヘキサン/酢酸エチル=5:1)、目的の化合物D1290.35g(46%)を得た。
1H−NMR(300MHz、CDCl3)δ:4.00〜4.10(4H,m)、3.77(1H,t)、3.41(8H,s)、2.67〜2.82(9H,m)、2.49(1H,dd)、2.28(2H,t)、1.55〜1.66(6H,m)、1.45(45H,s)、1.21〜1.37(40H,m)、0.88(3H,t)。
【0064】
化合物24acid,24Gd
化合物D240.28gを4M塩化水素ジオキサン溶液4.0mLに室温にて溶解し、19時間撹拌した。ジオキサンを留去し生じた白色結晶をヘキサン/酢酸エチル混合溶媒で洗い、濾取して化合物24acid0.18g(74%)を得た。化合物24acidをメタノール9mLに溶解し、塩化ガドリニウム0.068gを加えて2時間撹拌した後、1M水酸化ナトリウム水溶液を滴下し溶液pHを6に調整した。生じた結晶を濾別して水およびメタノールで洗浄し、乾燥して化合物24Gd0.14g(71%)を得た。
【0065】
化合物101acid,101Gd
化合物D1010.21gを4M塩化水素ジオキサン溶液2.5mLに室温にて溶解し、26時間撹拌する。NMRにて反応終了を確認後ジオキサンを留去し白色結晶をえた(化合物101acid)。Mass(MALDI−TOF):m/z (A−cyano−4−hydroxycinnamic acid) 778(M−3HCl)+。このものを単離することなくメタノール10mLに溶解し、塩酸ガドリニウム0.055gを加えて2時間撹拌した後、1M水酸化ナトリウム水溶液を滴下しpH6に調整した。生じた結晶を濾別し、乾燥させて化合物101Gd0.074g(38%/2段階)を得た。
【0066】
化合物102acid,102Gd
化合物D1020.25gを4M塩化水素ジオキサン溶液2.8mLに室温にて溶解し、14時間撹拌した。ジオキサンを留去し白色結晶をえた(化合物102acid)。Mass(MALDI−TOF) : m/z (A−cyano−4−hydroxycinnamic acid) 822(M−3HCl)+。このものを単離することなくメタノール12mLに溶解し、塩酸ガドリニウム0.064gを加えて2時間撹拌した後、1M水酸化ナトリウム水溶液を滴下しpH6に調整した。生じた結晶を濾別し、乾燥させて化合物102Gd0.08g(36%/2段階)を得た。
【0067】
化合物103acid,103Gd
化合物D1030.52gを4M塩化水素ジオキサン溶液に室温にて溶解し、14時間撹拌した。ジオキサンを留去し生じた白色結晶をえた(化合物103acid)。このものを単離することなくメタノール20mLに溶解し、酢酸ガドリニウム4水和物0.19gを加えて2時間撹拌した後、1M水酸化ナトリウム水溶液を滴下しpH6に調整した。生じた結晶を濾別し、乾燥させて化合物103Gd0.24g(51%)を得た。Mass(MALDI−TOF) : m/z (A−cyano−4−hydroxycinnamic acid)1041(M−Na)-
【0068】
化合物104acid,104Gd
化合物D1040.51gを4M塩化水素ジオキサン溶液5.4mLに室温にて溶解し、8時間撹拌する。ジオキサンを留去し生じた白色結晶をヘキサン/酢酸エチル混合溶媒で洗い、濾取して化合物104acidを得た(0.27g、84%)。Mass(MALDI−TOF):m/z (A−cyano−4−hydroxycinnamic acid) 910(M−3HCl)+。化合物104acid0.28gをメタノール14mLに溶解し、塩化ガドリニウム0.11gを加えて1時間撹拌した後、1M水酸化ナトリウム水溶液を滴下しpH6に調整した。生じた結晶を濾別し、乾燥させて化合物104Gd0.17g(56%)を得た。Mass(MALDI−TOF) : m/z (A−cyano−4−hydroxycinnamic acid)1085(M−Na)-
【0069】
化合物105acid、105Gd
化合物D1050.42gを4M塩化水素ジオキサン溶液4.3mLに室温にて溶解し、8時間撹拌する。ジオキサンを留去し生じた白色結晶をヘキサン/酢酸エチル混合溶媒で洗い、濾取して化合物105acid0.30g(83%)を得た。Mass(MALDI−TOF):m/z (A−cyano−4−hydroxycinnamic acid)954(M−3HCl)+。化合物105acid0.20gをメタノール9mLに溶解し、塩化ガドリニウム0.075gを加えて1時間撹拌した後、1M水酸化ナトリウム水溶液を滴下しpH6に調整した。生じた結晶を濾別し、乾燥させて化合物105Gd0.10g(46%)を得た。
【0070】
化合物109acid,109Gd
化合物D1010.26gを4M塩化水素ジオキサン溶液4mLに室温にて溶解し、6時間撹拌した。MSにて反応終了を確認後ジオキサンを留去し白色結晶の化合物109acid0.20g(87%)を得た。Mass(MALDI−TOF):m/z (A−cyano−4−hydroxycinnamic acid) 791(M−3HCl)+。109acid0.14gをメタノール8mLに溶解し、塩酸ガドリニウム0.06gを加えて2時間撹拌した後、1M水酸化ナトリウム水溶液を滴下しpH6に調整した。生じた結晶を遠心分離法にて沈澱させ、溶媒を除去後乾燥させて化合物109Gd0.05g(33%)を得た。Mass(MALDI−TOF):m/z (A−cyano−4−hydroxycinnamic acid) 966(M―Na)-
【0071】
化合物118acid,118Gd
化合物D1180.22gを4M塩化水素ジオキサン溶液4mLに室温にて溶解し、20時間撹拌後ジオキサンを留去し白色結晶をえた(化合物118acid)。Mass(MALDI−TOF):m/z (A−cyano−4−hydroxycinnamic acid) 865(M−3HCl)+。このものを単離することなくメタノール13mLに溶解し、塩酸ガドリニウム0.098gを加えて2時間撹拌した後、1M水酸化ナトリウム水溶液を滴下しpH6に調整した。生じた結晶を濾別し、乾燥させて化合物118Gd0.15g(76%/2段階)を得た。
【0072】
化合物128acid、128Gd
化合物D1280.25gを4M塩化水素ジオキサン溶液3.5mLに室温にて溶解し、21時間撹拌する。ジオキサンを留去し生じた白色結晶をヘキサン/酢酸エチル混合溶媒で洗い、濾取して化合物128acid0.19g(89%)を得た。化合物105acid0.19gをメタノール11mLに溶解し、塩化ガドリニウム0.082gを加えて2時間撹拌した後、1M水酸化ナトリウム水溶液を滴下しpH6に調整した。生じた結晶を濾別し、乾燥させて化合物128Gd0.11g(57%)を得た。
【0073】
化合物129acid、129Gd
化合物D1280.35gを4M塩化水素ジオキサン溶液6mLに室温にて溶解し、9時間撹拌する。ジオキサンを留去し生じた白色結晶をヘキサン/酢酸エチル混合溶媒で洗い、濾取して化合物129acidを得た。化合物129acidをメタノール16mLに溶解し、塩化ガドリニウム0.12gを加えて2時間撹拌した後、1M水酸化ナトリウム水溶液を滴下しpH6に調整した。生じた結晶を濾別し、乾燥させて化合物129Gd0.12g(36%/2段階)を得た。Mass(MALDI−TOF):m/z (A−cyano−4−hydroxycinnamic acid)1027(M―2Na+H)―。
【0074】
試験例1:溶解性試験
下記に示すガドリニウム錯体をそれぞれ1mMになるように秤量し、クロロホルム/メタノール(1/1)混合溶媒を1mL加え、その際の溶解性(室温25℃)を調べた。その結果、本発明の化合物は比較化合物1と比べて均一な溶液となり、リポソーム製剤化するための優れた特性を有していることが明らかである。
【表3】

【0075】
【化4】

【0076】
試験例2:リポソームの作成方法
J. Med. Chem., 25(12), 1500 (1982) に記載の方法に従い、ジ・パルミトイル PC(フナコシ社製、No.1201-41-0225)、ジ・パルミトイル PS(フナコシ社製、No.1201-42-0237)、化合物103Gdを下記の濃度比でナス型フラスコ内でクロロホルムに溶解して均一溶液とした後、溶媒を減圧で留去してフラスコ底面に薄膜を形成した。この薄膜を真空で乾燥後、0.9%生理食塩水(光製薬社製、No512)を適当量加え、超音波照射(Branson社製、No.3542プローブ型発振器、0.1mW)を氷冷下5分実施した後にリポソーム調製器(セントラル科学社製)を用いて粒子径85から120nmのリポソーム分散液を調製した。

濃度比:PS 50 nmol + PC 50 nmol + 化合物103Gd1 nmol
【0077】
試験例3:マウス3日間連続投与毒性試験
ICRマウス雄6週齢(日本チャールスリバー)を購入し、1週間の検疫期間の後、クリーン動物舎内(空調:へパフィルター クラス1000、室温:20℃〜24℃ 湿度:35%〜60%)で1週間馴化した。その後、MTD値を求めるため、尾静脈よりマウス血清懸濁液を投与した。マウス血清懸濁液は、生理食塩水(光製薬社製)又はグルコース溶液(大塚製薬社製)のいずれかを溶媒として投与した。次に求められたMTD値をもとに、その1/2量の上記化合物103Gdを3日間、尾静脈より3日間連続で投与した(n=3匹とする)。症状観察は各投与後6時間までとし、神経毒性を観察後、剖検を行ない、主要臓器について所見を取った。結果を下記に示す。本発明の化合物は低毒性で、神経毒性も示さないことが明らかであり、MRI造影剤のためのリポソームの構成脂質として優れた性質を有することが明らかである。
化合物:MTD(mg/kg);神経毒性(「−」は神経毒性陰性、「+」は神経毒性陽性を示す)
化合物103Gd(50mg/kg):−

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I):
【化1】

[式中、Rは8〜30個の炭素原子からなるアルキル基又はアルケニル基を示し;X1及びX2はそれぞれ独立に単結合、−O−、又は−NZ1−(Z1は水素原子、又は炭素原子1〜3個の低級アルキル基を示す)を示すが、X1及びX2が同時に単結合を示すことはなく;X3は−O−又は−NZ2−(Z2水素原子、又は炭素原子1〜3個の低級アルキル基を示す)を示し;nは1〜10の整数を示し;Lは2価の連結基(Lは炭素原子、水素原子及びヘテロ原子(ヘテロ原子とは酸素原子、窒素原子および硫黄原子をいう)からなる群から選択される原子により構成され、かつLを構成する酸素原子は0〜9個、窒素原子は0〜4個、硫黄原子は0〜2個であり、Lの炭素原子及びヘテロ原子の総原子数は1〜20個である)を示す。]で表される化合物又はその塩。
【請求項2】
1、X2、及びX3の少なくとも1つが酸素原子である請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
3が酸素原子である請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項4】
Lが炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び水素原子からなる群から選択される原子により構成される2価の連結基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項5】
Lが炭素原子、酸素原子、及び水素原子により構成される2価の連結基、またはLが炭素原子及び水素原子により構成される2価の連結基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項6】
Lの主鎖(主鎖とはX2とX3を最短個数で結ぶ原子団をいう)、X2、及びX3に含まれるヘテロ原子数の和をj、Lの主鎖に含まれる炭素原子数をkとしたとき、kをjで割った商が3以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項7】
kをjで割った商が2以下である請求項6に記載の化合物又はその塩。
【請求項8】
2が−O−又は−NZ1−であり(Z1は水素原子、又は炭素原子1〜3個の低級アルキル基を表す)、Lが炭素原子1〜12個のアルキレン基、又は−(CH2CH2Y)mCH2CH2−(mは1〜6の整数を示し、Yは−O−又は−NZ3−(Z3は水素原子又はメチル基を示す)を示し、mが2以上のとき複数のYは同一でも異なっていてもよい)で表される連結基である請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項9】
2が−O−又は−NZ1−であり(Z1は水素原子、又は炭素原子1〜3個の低級アルキル基を表す)、Lが−(CH2CH2Y)mCH2CH2−(mは1〜6の整数を示し、Yは−O−又は−NZ3−(Z3は水素原子又はメチル基を示す)を示し、mが2以上のとき複数のYは同一でも異なっていてもよい)で表される連結基である請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項10】
2が−O−又は−NZ1−であり(Z1は水素原子、又は炭素原子1〜3個の低級アルキル基を示す)、かつLが−(CH2CH2O)lCH2CH2−(lは1〜6の整数を示す)で表される連結基である請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項11】
Rが10〜22個の炭素原子からなる直鎖状のアルキル基もしくはアルケニル基、又は分岐鎖状のアルキル基もしくはアルケニル基である請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物及び金属イオンからなるキレート化合物又はその塩。
【請求項13】
金属イオンが原子番号21-29、31、32、37-39、42-44、49及び57-83から選択される元素の金属イオンである請求項12に記載のキレート化合物又はその塩。
【請求項14】
金属イオンが原子番号21-29、42、44、57-71に相当する常磁性元素の金属イオンである請求項12に記載のキレート化合物又はその塩。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物又はその塩を膜構成成分として含むリポソーム。
【請求項16】
ホスファチジルコリン及びホスファチジルセリンを膜構成成分として含む請求項15に記載のリポソーム。
【請求項17】
請求項15又は16に記載のリポソームを含むMRI造影剤。
【請求項18】
血管疾患の造影に用いるための請求項17に記載のMRI造影剤。
【請求項19】
泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋細胞の造影に用いる請求項17に記載のMRI造影剤。
【請求項20】
マクロファージが局在化する組織又は疾患部位の造影のための請求項17に記載のMRI造影剤。
【請求項21】
マクロファージが局在化する組織が肝臓、脾臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、及び腎臓上皮からなる群から選ばれる請求項20に記載のMRI造影剤。
【請求項22】
マクロファージが局在化する疾患部位が腫瘍、炎症部位、及び感染部位からなる群から選ばれる請求項20に記載のMRI造影剤。
【請求項23】
請求項15又は16に記載のリポソームを含むシンチグラフィー造影剤。
【請求項24】
血管疾患の造影に用いるための請求項23に記載のシンチグラフィー造影剤。
【請求項25】
泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋細胞の造影に用いる請求項23に記載のシンチグラフィー造影剤。
【請求項26】
マクロファージが局在化する組織又は疾患部位の造影のための請求項23に記載のシンチグラフィー造影剤。
【請求項27】
マクロファージが局在化する組織が肝臓、脾臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、及び腎臓上皮からなる群から選ばれる請求項26に記載のシンチグラフィー造影剤。
【請求項28】
マクロファージが局在化する疾患部位が腫瘍、炎症部位、及び感染部位からなる群から選ばれる請求項26に記載のシンチグラフィー造影剤。

【公開番号】特開2007−91640(P2007−91640A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283461(P2005−283461)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】