説明

ジエニル−ルテニウム錯体の製造法

本発明は、式Ru(+II)(ジエニル)2のジエニル−ルテニウム錯体を製造するための一段処理に関し、その際、式Ru(II)(X)p(Y)qのRu(II)出発化合物を、無機塩基及び/又は有機塩基の存在においてジエン配位子と一段処理において反応させる。この場合、極性有機溶媒、好ましくは極性有機溶媒と水との混合物が使用される。本発明により製造された製造前記ジエニル−ルテニウム錯体は、均一系触媒用の前駆体として、機能塗料の製造のために及び治療適用のために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、ジエニル−ルテニウム錯体の製造法に関する。本発明の目的のために、これらの化合物は、中心のRuがサンドイッチ様に2つのジエニル配位子に結合している有機金属ルテニウム化合物である。本発明の錯体は、式Ru(II)(ジエニル)2によって表されることができる。中心のRu原子は、その中で+IIの酸化状態をとる。かかる化合物は、それらが非環式(open-chain)ジエニル配位子を含む場合、"オープンルテノセン"とも呼ばれる。
【0002】
ジエニル−ルテニウム錯体、殊にオープンルテノセンは、均一系触媒用の前駆体としてますます重要になってきている。これらの化合物は、例えば、オレフィン系炭化水素の不斉水素化のために使用され、且つ機能塗料を薄膜処理(例えばMOCVD(有機金属化学気相成長)によって又はPVD(物理気相成長)によって製造するためにも使用される。ジエニル−Ru錯体の治療適用もまた、現在、調べられている。
【0003】
ジエニル−ルテニウム錯体を製造するための様々な方法が文献から公知である。従来用いられてきた作製法は、Ru(II)、Ru(III)又はRu(IV)化合物から出発する。一般にこれらは、大過剰の適切なオレフィン、ジエン又はジエニル塩と、たいていは還元剤の存在において反応させられる。
【0004】
ルテニウム−オレフィン錯体を製造する公知の方法は、Ru(III)又はRu(II)化合物がグリニャール試薬と、配位子の存在において反応させられる、Fischer−Mueller合成である(J.Mueller他、Chemische Berichte,1975,108,pages 273−282を参照されたい)。この方法は再現し難く、且つ乏しい収率しか生まない。
【0005】
G.Vitulli,P Pertici他(J.C.S.Chem.Comm.,1975,p.846及びInorg.Synth,22,1983,pp.176−181)は、出発材料としての三塩化ルテニウム(III)水和物が、大(概して30〜50倍)過剰の適切な配位子と、還元剤としての亜鉛末の存在において反応させられる、環式ジエニル−ルテニウム錯体の製造法を記載する。亜鉛の残留物が留まり、且つ生成物を汚染することがある。大過剰の配位子又はオレフィンに基づき、該生成物は、付加的にポリマー物質又はオリゴマー物質によって汚染されている。これらの欠点に基づき、該方法は決して工業的な使用には適していない。
【0006】
R.D.Ernst他(Organometallics 1983,2,pp.1229−1234及びOrganometallic Synthesis,1986,pp.136−141)は、出発材料の三塩化ルテニウム(III)水和物が、大(概して15〜20倍)過剰の適切な配位子と、還元剤としての亜鉛末の存在において反応させられる、ビス(2,4−ジメチル−ペンタジエニル)ルテニウム(II)、すなわち、オープンルテノセンの製造法を記載する。生成物は不十分な収率でしか得られず、且つ高く汚染されているため、それは煩雑な精製に供されなければならない。この方法は、工業的な使用には不適切である。
【0007】
EP1283843B1及びEP1156055A1は、出発化合物のジクロロ(2,7−ジメチルオクタ−2,6−ジエン−1,8−ジイル)ルテニウム(IV)が、適切な配位子と、還元剤としての第一級アルコール又は第二級アルコールの存在において反応させられる、ビス(2,4−ジメチルペンタジエニル)ルテニウム(II)の更なる製造法を開示する。該方法は、Ru(IV)出発化合物が煩雑な処理において製造されなければならないという欠点を有する。還元が定量的に行われないと、Ru(III)又はRu(IV)、それにポリマー成分の残留物も留まる可能性がある。収率は、必要不可欠の昇華によって減少する。結果として、全体的な処理は高価であり、且つ決して工業的な使用には適していない。
【0008】
G.L.D.Ritchie他(J.Am.Chem.Soc.,Vol.105,No.16,1983,pp.5215−5219)は、クローズドの"古典的"ルテノセン、殊にビス(シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)の製造法を記載する。該方法は二段処理である。第一のステップで、シクロペンタジエニル−ナトリウム(Na−Cp)が、新鮮なシクロペンタジエン及び金属ナトリウムとから製造され、且つこれは配位子移動剤として機能する。第二のステップでは、出発材料のジクロロ(テトラキス(ジメチルスルホキシド)ルテニウム(II)がシクロペンタジエニルナトリウムと反応させられる。この方法の欠点は、空気及び湿気に非常に敏感であり、特別な反応条件(保護ガス技術、窒素飽和且つ乾燥した溶媒)が必要不可欠である、シクロペンタジエニル−ナトリウムの使用である。それゆえ該方法は煩雑且つ高価であり、且つ工業的な使用にはほとんど適していない。加えて、この方法は、相応するオープンジエニルのナトリウム塩が得難いことから、オープンジエニル−Ru錯体の製造に容易に適用することができない。
【0009】
それゆえ本発明の課題は、経済的、工業的な使用に適しており、且つ生成物を高純度且つ高収率で生じさせる、ジエニル−ルテニウム錯体、殊にオープンルテノセンの製造法を提供することであった。その上、該方法は一段処理であり、製造し易い出発化合物を基礎としているべきであり、且つ感受性の有機金属塩基の使用を回避するべきである。
【0010】
この課題は、本発明により、請求項1に記載の方法の提供によって達成される。
【0011】
本発明は、式
Ru(+II)(ジエニル)2
のジエニル−ルテニウム錯体の製造法において、式
Ru(+II)(X)p(Y)q
[式中、
X=アニオン性基、
Y=非帯電の2電子供与配位子、
p=1〜2の整数、
q=1〜6の整数]のルテニウム出発化合物を、無機塩基及び/又は有機塩基の存在においてジエン配位子Lと一段処理において反応させることを特徴とする方法に関する。該方法の更なる好ましい実施態様は、従属請求項の中で特徴付けられている。
【0012】
ジエン配位子Lと無機塩基及び/又は有機塩基とを反応させて(ジエニル)2−ルテニウム錯体を形成させる反応は、一段処理において実施される。ジエニル配位子LからのジエニルアニオンL-の生成は、ルテニウム(II)出発化合物の存在において実施される。それゆえ、先行するステップでのジエニルアニオンL-の別個の作製が省かれる。ジエン配位子の脱プロトン化のための(又はジエニルアニオンL-の製造のための)感受性の有機金属塩基の使用も同様に省かれる。
【0013】
該反応後、2つのジエン配位子Lはアニオンの形で(ジエニルアニオンL-として)ルテニウム錯体中に存在するため、2個の正電荷を持つ中心のRu原子と一緒にそれらは式Ru(+II)(ジエニル)2の電気的に中性なジエニル錯体を形成する。出発化合物のRu(+II)(X)p(Y)q中及びRu(+II)(ジエニル)2錯体中でのRu原子の酸化状態は一定(すなわち+II)であるので、還元剤はなんら必要とされない。
【0014】
本発明の目的のために、ジエン配位子Lは、>C=X型(式中、X=CR2、O、S、NR)の少なくとも2個の不飽和基をその分子構造中に有し、その際、これらの基の少なくとも1個が>C=C<二重結合を表す配位子である。本発明によるジエン配位子Lの脱プロトン化により、負電荷が共役π電子系全体に分布しているアニオンL-が形成される。好ましい実施態様において、この共役π電子系は非芳香族系である。
【0015】
ジエン配位子Lとして、そのつど一置換又は多置換されていてよい、環式ジエンと非環式ジエンのいずれも使用することが可能である。種々のジエン配位子の混合物及び組み合わせ物も使用することができる。ジエン配位子上の許容され得る置換基には、ハロゲン原子、アルキル基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シリル基、スタニル基、アミン基及びイミン基が包含される。適したジエン配位子Lの例は、以下のものである:
− 置換された又は非置換の非環式ペンタジエン、例えば1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,4−ペンタジエン、2,3,4−トリメチル−1,3−ペンタジエン、3−フェニル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン又は3−(トリメチル−シリル)−1,3−ペンタジエン、
− 置換された又は非置換の非環式のヘキサジエン又はヘプタジエン、
− ヘテロ原子置換されたジエン又はジエン類似体、例えばメシチルオキシド(2−メチル−4−オキソ−2−ペンテン)又は(N−3−ブテン−1−イリデン)メタンアミン、
− 置換された又は非置換の環式ジエン、例えばシクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン又はシクロオクタジエン、
− 置換された又は非置換の環式ジエン、例えば、脱プロトン後に芳香族π電子系を形成するシクロペンタジエン、フルオレン又はインデンである。
【0016】
個々のジエン配位子の組み合わせ物も、本発明による方法において可能とされる。それらにより、異なるジエニル配位子を有するジエニル−Ru(II)が作製される。
【0017】
添加される典型的な量のジエン配位子L又はジエン配位子混合物は、そのつどルテニウム錯体に対して、1〜4当量、好ましくは2〜3当量及び特に好ましくは2〜2.5当量である。2つの異なるジエン配位子が使用される場合、添加される全量は適した比に分けられ、且つ添加は、次いで平行に又は連続して実施されることができる。
【0018】
意想外な反応の経路についての可能な説明は、ジエン配位子Lがまず非帯電の形でルテニウムに配位することである。これはジエン配位子のC−H結合を弱め("アゴスチック相互作用"によるものと推定される)、比較的弱い無機又は有機の塩基ですら容易くこの結合を脱プロトン化することができる。反応後、ジエン配位子Lは、一価に負に帯電した形で(ジエニルアニオンL-として)形式的に存在する。
【0019】
中心のRu原子へのジエン配位子Lの配位は、非帯電の2電子供与配位子Yの存在によって促進される。本発明により、Ru(+II)(X)p(Y)q、その際、Ruは、酸化状態+IIにおいて存在し、Xは、アニオン性基であり、Yは、非帯電の2電子供与配位子であり、且つpは、1〜2の整数であり、且つqは、1〜6の整数である、のルテニウム出発化合物が使用される。非帯電の2電子供与配位子Yの例は、NH3、アミン及び、殊に溶媒分子、例えばアセトニトリル、水、THF、ジオキサン、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMF(ジメチルホルムアミド)、アセトン、ピリジン、ベンゾニトリル又はアクリロニトリルである。ルテニウム出発化合物は、種々の供与配位子Yの混合物及び組み合わせ物も有してよい。
【0020】
ルテニウム出発化合物中のアニオン性基Xの例は、モノアニオン、例えばハロゲン化物(例えばF-、Cl-、Br-、I-)、擬ハロゲン化物(例えばCN-、CNO-、SCN-)、トリフルオロメチルスルホネートアニオン(CF3SO3-)及び硝酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩又はトリフルオロ酢酸塩である。しかしながら、該アニオン性基は、ジアニオン、例えば硫酸イオン(SO42-)も包含してよい。
【0021】
Ru(+II)(X)p(Y)q型の適した出発化合物の例は、RuCl2(アセトニトリル)4、RuBr2(アセトニトリル)4、RuCl2(ピリジン)4、[Ru(H2O)6]Cl2、[Ru(H2O)6](トリフラート)2、[Ru(H2O)2](アセテート)2、RuCl2(DMSO)4、[Ru(NH36]Cl2、RuCl2(ベンゾニトリル)4である。かかる化合物は、当業者に公知であり、且つ文献の手法(例えばW.E.Newton and J.E,Searles,Inorganica Chimica Acta,1973,3,pp.349−352又はF.M.Lever,A.R.Powell,J.Chem.Soc.(A),1969,pp.1477−1482を参照されたい)によって製造されることができる。これらの出発化合物のなかには、種々の供給元から入手可能なものもある。
【0022】
本発明の方法の好ましい一実施態様において、Ru出発化合物は"in situ"でも製造されることができ、且つ中間体単離なしで直接的に使用されることができる(実施例8、11及び12における"ワンポット法"を参照されたい)。この変法は、容易に入手可能な単純な出発化合物(例えば塩化ルテニウム(III))が使用されるので、特に時間を節約し、且つ費用がかさまない。
【0023】
塩基として、無機塩基及び/又は有機塩基が使用される。無機塩基の例は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、例えばNaOH、KOH又はCa(OH)2、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、例えば炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)又は炭酸カルシウム(CaCO3)、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のリン酸塩、例えばNa3PO4、それに塩基性酸化物、例えば酸化カルシウム(CaO)又は酸化アルミニウム(Al23)である。
【0024】
有機塩基の例は、アンモニア、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ウロトロピン、ピリジン、エタノールアミン、ピリジン、トリエタノールアミン、DBU(1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)、DBN(ジアザビシクロノナン)、DABCO(1,4−ジアザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン)、イミダゾール及びエチレンジアミンである。挙げられた有機塩基及び無機塩基の混合物を使用することも可能である。無機塩基、殊に炭酸リチウム(Li2CO3)及び炭酸ナトリウム(Na2CO3)も好ましい。添加される塩基の量は、そのつどRu錯体に対して、1〜10当量、好ましくは2〜5当量である。
【0025】
他の塩基、殊にカルバ二オン(例えばn−ブチルリチウム、メチルリチウム、t−ブチルリチウム、Na−シクロペンタジエニド又はグリニャール試薬)を有する有機金属塩基は使用されない。例えば水に対する感受性に基づき、それらは本方法の条件には不適切である。
【0026】
本発明の方法は、原則的に、通常用いられる全ての極性有機溶媒中で実施されることができる。ここで使用されるのは、アルコール、ケトン、エーテル、アミド又はエステルの種類からの極性有機溶媒である。適した極性有機溶媒の例は、エタノール、アセトン、THF、ジメチルホルムアミド(DMF)又はジオキサン、それにそれらの混合物である。該有機溶媒は、使用前に乾燥される必要がない。該方法は、好ましくは極性有機溶媒と水との混合物(すなわち水性溶媒混合物)中で実施される。極性有機溶媒と水との適した混合物の例は、イソプロパノール/水、エタノール/水、アセトン/水、THF/水及びジオキサン/水であり、そのつど脱イオン水が使用される。極性有機溶媒/脱イオン水の体積に基づく混合比は、1:20〜20:1の範囲、好ましくは1:10〜10:1の範囲及び特に好ましくは1:5〜5:1の範囲にある。
【0027】
本発明による反応は、−30〜120℃、好ましくは20〜100℃の範囲の温度及び特に好ましくは還流下で実施される。
【0028】
該方法を実施するために、Ru(+II)出発化合物(例えば上記の文献の手法により製造されたもの)は、初めに極性有機溶媒中又は水性溶媒混合物中に装入される。
【0029】
次いで、適切なジエン配位子又はジエン配位子混合物及び塩基が一度に少量添加される。該混合物を、0.5〜10時間、好ましくは2〜5時間のあいだ、−30〜120℃の範囲の温度で、好ましくは還流下で加熱し、次いで冷却する。引き続き生成物を、非極性有機溶媒、例えばヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン又はトルエンで抽出してよい。溶媒を取り去った後、このようにして得られた生成物を乾燥する。代替的な後処理ステップにおいては、該生成物を極性プロトン性溶媒(例えば水又はエチレングリコール)の添加によって反応混合物から析出させ、次いで濾過によって分離し、且つ引き続き乾燥してもよい。
【0030】
本方法の更なる一実施態様において、Ru出発化合物は、先行するステップ("in situ")で製造され、且つ本方法においては中間体単離なしで直接的に使用される(実施例8、11及び12における"ワンポット"法を参照されたい)。ここで、Ru(II)(X)p(Y)q型のRu出発化合物の製造は、ジエニル−Ru錯体の製造と一つにされる。この変法は、容易に入手可能な単純なルテニウム塩(例えば塩化ルテニウム(III))が使用されるので、特に時間を節約し、且つ費用がかさまない。しかしながら、Ru(II)出発化合物を製造する還元ステップのために、この場合、保護ガスが用いられなければならない。
【0031】
意想外にも、本発明の方法がジエニル−Ru(II)錯体を高純度且つ非常に良好な収率で生じさせることがわかった。一般に、60〜95%の範囲の収率が達成され得る。非荷電の2電子供与配位子又は溶媒分子を含むRu(II)出発化合物の使用に基づき、ジエン配位子Lによる配位子交換が、非常に温和な条件下で、且つほぼ定量的に起こる。
【0032】
該方法は、水に反応せず、空気中で安定な無機塩基及び/又は有機塩基を使用するので、当該系を不活性化させる措置(保護ガス等)は一般に回避されることができる。更に、環境に優しい水性溶媒混合物を使用することが可能である。このために、本方法は工業的条件に特に適している。
【0033】
抽出又は析出後のジエニル−Ru化合物の純度は、95%を上回り、好ましくは98%を上回り、且つ特に好ましくは98%を上回る。高い純度を達成するために、生成物を昇華ステップに供してよい。これにより99.8%を超える純度を達成することが可能になる。
【0034】
以下の実施例は、本発明を例証するものである。
【0035】
実施例1
塩基としてLi2CO3を用いた、イソプロパノール/水(2:1)中でのビス(2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエニル)ルテニウム(II)の製造
【化1】

【0036】
RuCl2(CH3CN)4(文献の手法によって製造されたもの(Newton他、上記参照):20g、59.5ミリモル)及びLi2CO3(塩基、17.5g、238ミリモル、4当量)をフラスコに装入する。イソプロパノール(200ml)、脱イオン水(100ml)及び2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン(Aldrich社製;14.3g、149ミリモル、2.5当量)を添加する懸濁液を還流させる(油浴温度90℃)。
【0037】
1時間後、更に1当量のジエン 2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン(5.7g)を添加する。淡褐色の混合物を還流下で更に3時間のあいだ攪拌し(還流下で計4時間)、次いで室温に冷却する。反応混合物を、抽出物が無色になるまでn−ヘキサンで抽出する。複合有機相を水で洗浄し、且つ濾過助剤(セライト)で濾過する。透明な黄色の溶液を回転蒸発器で蒸発させ、且つ得られた淡黄色の生成物を恒量になるまで減圧下にて室温で乾燥する。
収率:15g=87%
1H−NMRによる純度測定:98.6%
融点:105℃。
1H−NMR (CDCl3),δ(ppm):0.61(s br,4H,CH2),1.9(s,12H,CH3),2.6(s,br,4H,CH2)、4.9(s,2H,CH)
13C−NMR (CDCl3),δ(ppm):26.3(s CH3),45.8(s,br,CH2),97.8(s,CH2)、100.3(s,C)。
【0038】
実施例2
塩基としてトリエチルアミン(NEt3)を用いた、イソプロパノール/水(2:1)中でのビス(2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエニル)ルテニウム(II)の製造
RuCl2(CH3CN)4(20g、59.5ミリモル)をフラスコに装入する。イソプロパノール(200ml)、水(100ml)、NEt3(19.9g、196ミリモル、3.3当量)及び2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン(14.3g、149ミリモル、2.5当量)を添加する。懸濁液を還流させる(油浴温度90℃)。1時間後、更に1当量のジエンの2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン(5.7g)を添加する。淡褐色の混合物を還流下で更に3時間のあいだ攪拌し(還流下で計4時間)、次いで室温に冷却する。反応混合物を、抽出物が無色になるまでn−ヘキサンで抽出する。
【0039】
複合有機相を水で洗浄し、且つセライトにより濾過する。透明な黄色の溶液を回転蒸発器で蒸発させ、且つ得られた結晶性の淡黄色の生成物を恒量になるまで減圧下にて室温で乾燥する。
収率:14.4g=83%。
【0040】
実施例3
塩基としてNa2CO3を用いた、イソプロパノール/水(2:1)中でのビス(2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエニル)ルテニウム(II)の製造
RuCl2(CH3CN)4(10g、29.7ミリモル)及びNa2CO3(12.6g、119ミリモル、4当量)をフラスコに装入する。イソプロパノール(100ml)、脱イオン水(50ml)及び2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン(10g、104ミリモル、3.5当量)を添加する。懸濁液を還流させ(油浴温度95℃)、還流下で4時間のあいだ攪拌し、次いで室温に冷却する。反応混合物を、抽出物が無色になるまでn−ヘキサンで抽出する。複合有機相を水で洗浄し、且つセライトにより濾過する。透明な黄色の溶液を回転蒸発器で蒸発させ、且つ得られた結晶性の淡黄色の生成物を恒量になるまで減圧下にて室温で乾燥する。
収率:7.2g、84%。
【0041】
実施例4
塩基としてトリエチルアミン(NEt3)を用いた、ジオキサン/水(2:1)中でのビス(2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエニル)ルテニウム(II)の製造
RuCl2(CH3CN)4(10g、29.7ミリモル)をフラスコに装入する。ジオキサン(100ml)、脱イオン水(50ml)、NEt3(8.4ml、60ミリモル、2当量)及び2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン(12g、90ミリモル、3当量)を添加する。懸濁液を還流させる(油浴温度110℃)。淡褐色の混合物を還流下で3時間のあいだ攪拌し、次いで室温に冷却する。反応混合物を、抽出物が無色になるまでn−ヘキサンで抽出する。複合有機相を水で洗浄し、且つセライトで濾過する。透明な黄色の溶液を回転蒸発器で蒸発させ、且つ得られた結晶性の淡黄色の生成物を恒量になるまで減圧下にて室温で乾燥する。
収率:5.8g、67%。
【0042】
実施例5
塩基としてLi2CO3を用いた、イソプロパノール/水(1:1)中でのビス(シクロヘプタジエニル)ルテニウム(II)の製造
【化2】

【0043】
RuCl2(CH3CN)4(4g、12ミリモル)及びLi2CO3(3.5g、47ミリモル、4当量)をフラスコに装入する。イソプロパノール(60ml)、水(60ml)及びシクロヘプタジエン(Aldrich社製、5ml、45ミリモル、3.8当量)を添加する。懸濁液を還流させる(油浴温度90℃)。淡褐色の混合物を還流下で4時間のあいだ攪拌し、次いで室温に冷却する。反応混合物を、抽出物が無色になるまでn−ヘキサンで抽出する。複合有機相を水で洗浄し、且つMgSO4により乾燥し、次いで濾過する。透明な黄色の溶液を回転蒸発器で蒸発させ、且つ得られた結晶性の淡黄色の生成物を恒量になるまで減圧下にて室温で乾燥する。
収率:2.96g、87%
1H−NMR (CD2Cl2),δ(ppm):1.4(m,4H,CH2),1.9(m,4H,CH2),3.8(m,4H,CH),4.45(m,4H,CH),5.18(m,2H,CH)。
【0044】
実施例6
塩基としてトリエチルアミン(NEt3)を用いた、イソプロパノール/水中でのRuCl2(DMSO)4からのビス(2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエニル)ルテニウム(II)の製造
Ru(II)−ジメチルスルホキシド錯体を、ルテニウム(II)出発化合物として使用する。RuCl2(DMSO)4(Strem社製;6.18g、12.5ミリモル)をフラスコに装入する。イソプロパノール(100ml)、脱イオン水(15ml)、NEt3(4.5ml、31ミリモル、2.5当量)及び2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン(6g、44ミリモル、3.5当量)を添加する。懸濁液を還流させる(油浴温度90℃)。固体は完全に溶解し、且つ溶液は赤色となり、次いでオレンジ色となる。該溶液を還流下で計4時間のあいだ攪拌し、次いで室温に冷却する。脱イオン水を添加して生成物を析出させる。析出した結晶性の淡黄色の生成物を濾過分離し、水で洗浄し、且つ恒量になるまで減圧下で室温にて乾燥する。
収率:1.6g、44%。分析データは、実施例1で報告したデータと合致する。
【0045】
実施例7
ビス(η5−2,4−ジメチル−1−オキサペンタジエニル)ルテニウム(II)の製造
【化3】

【0046】
RuCl2(CH3CN)4(10g、30ミリモル)及びLi2CO3(8.7g、118ミリモル、4当量)をフラスコに装入する。イソプロパノール(200ml)、水(100ml)及びメシチルオキシド(18,7ml、148ミリモル、5当量)を添加する。懸濁液を、保護ガスを用いて不活性化し、且つ還流させる(油浴温度90℃)。淡褐色の混合物を還流下で4時間のあいだ攪拌し、次いで室温に冷却する。後処理を空気中で継続する。反応混合物を、抽出物が無色になるまでn−ヘキサンで抽出する。複合有機相を水で一回洗浄し、且つMgSO4により乾燥し、次いで濾過する。透明な黄色の溶液を回転蒸発器で蒸発させ、且つ得られた結晶性の淡褐色の生成物を恒量になるまで減圧下にて室温で乾燥する。
2つの異性体の混合物としての収率:4.4g、50%。
【0047】
実施例8
ビス(2,4−ジメチルー1,3−ペンタジエニル)ルテニウム(II)のワンポット法における製造
RuCl3水和物(Umicore社製(Hanau在)、Ru 37.8%、20g、74.8ミリモル)をフラスコに装入し、且つEtOH(200ml)及びDMF(ジメチルホルムアミド、50ml)に溶解する。懸濁液を、保護ガスを用いて不活性化し、且つ還元剤(例えば水素/Ptブラック又はヒドラジン)によってRu(II)Cl2(DMF)n(n〜4)に還元する。トリエチルアミン(49ml、5当量)及び2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン(29ml、224ミリモル、3当量)を、結果生じる暗緑色の溶液に添加する。該混合物を室温で更に10時間のあいだ攪拌し、且つ水(400ml)を引き続き添加する。生成物は淡黄色の結晶の形で析出し、且つこれらを濾過分離し、水で洗浄し、且つ恒量になるまで減圧下で乾燥する。
収率:14g、65%
実施例9
塩基としてLi2CO3を用いた、イソプロパノール/水(2:1)中でのビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)の製造
【化4】

【0048】
RuCl2(CH3CN)4(10g、30ミリモル)及びLi2CO3(8.7g、118ミリモル、4当量)をフラスコに装入する。イソプロパノール(200ml)、脱イオン水(100ml)及びペンタメチルシクロペンタジエン(Aldrich社製、12.8g、88ミリモル、3当量)を添加する。懸濁液を還流させる(油浴温度90℃)。淡褐色の混合物を還流下で4時間のあいだ攪拌し、次いで室温に冷却する。
【0049】
次いで脱イオン水を添加し、析出した生成物を濾過分離し、且つ冷エタノールで洗浄する。得られた白色の結晶性生成物を恒量になるまで減圧下にて室温で乾燥する。
収率:10.9g、定量
1H−NMR (CD2Cl2),δ(ppm):1.54(s,CH3)。
【0050】
実施例10
塩基としてNa2CO3を用いた、アセトン/水(3:1)中でのビス(2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエニル)ルテニウム(II)の製造
RuCl2(CH3CN)4(10g、30ミリモル)及びNa2CO3(12.6g、119ミリモル、4当量)をフラスコに装入する。アセトン(100ml)、脱イオン水(30ml)及び2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン(10g、104ミリモル、3.5当量)を添加する。懸濁液を還流させ(油浴温度65℃)、且つ還流下で5時間のあいだ攪拌し、次いで室温に冷却する。反応混合物を、抽出物が無色になるまでn−ヘキサンで抽出する。複合有機相を水で洗浄し、MgSO4により乾燥し、且つセライトで濾過する。透明な黄色の溶液を回転蒸発器で蒸発させ、且つ得られた結晶性の淡黄色の生成物を恒量になるまで減圧下にて室温で乾燥する。
収率:7.9g、91%。
【0051】
実施例11
塩基としてNa2CO3を用いた、エタノール/アセトニトリル中でのビス(2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエニル)ルテニウム(II)のワンポット法における製造
RuCl3水和物(Umicore社製(Hanau在)、Ru 40.13%、40g、159ミリモル)をフラスコに装入し、且つEtOH(500ml)、脱イオン水(200ml)及びアセトニトリル(34ml、4当量)に溶解する。該混合物を、保護ガスを用いて不活性化し、且つ還元剤(例えば水素/Ptブラック又はヒドラジン)によってRu(II)Cl2(CH3CN)4に還元する。2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン(72ml、556ミリモル、3.5当量)及びNa2CO3(67g、4当量)を、結果生じる黄色−オレンジ色のRuCl2(CH3CN)4の溶液に添加する。懸濁液を還流させ(油浴温度85℃)、且つ還流下で3時間のあいだ攪拌し、次いで室温に冷却する。脱イオン水(300ml)を引き続き添加する。生成物は淡黄色の結晶として析出する。これらを濾過分離し、水で洗浄し、且つ恒量になるまで減圧下で乾燥する。該生成物は、それをn−ヘキサン又はトルエンに溶解し、それを活性炭で処理し、且つ溶液をセライト、シリカゲル又はアルミナで濾過することによって、更に精製することができる。結果生じる透明な黄色の溶液を、回転蒸発器により蒸発乾固させる。結晶性の淡黄色の生成物を真空下にて室温で乾燥する。
収率:33g、71%。
【0052】
実施例12
塩基としてNa3PO4を用いた、エタノール/アセトニトリル中でのビス(2,4−ジメチルー1,3−ペンタジエニル)ルテニウム(II)のワンポット法における製造
RuCl3水和物(Umicore社製(Hanau在)、Ru 40.13%、20g、79.4ミリモル)をフラスコに装入し、且つEtOH(200ml)、脱イオン水(50ml)及びアセトニトリル(17ml、4当量)に溶解する。該混合物を、保護ガスを用いて不活性化し、且つ還元剤(例えば水素/Ptブラック又はヒドラジン)によってRu(II)Cl2(CH3CN)4に還元する。2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン(36ml、278ミリモル、3.5当量)及びNa3PO4(68g、397ミリモル、5当量)を、結果生じる黄色−オレンジ色のRuCl2(CH3CN)4の溶液に添加する。懸濁液を還流させ(油浴温度85℃)、且つ還流下で4時間のあいだ攪拌し、次いで室温に冷却する。脱イオン水(400ml)を引き続き添加する。生成物は淡黄色の結晶として析出する。これらを濾過分離し、水で洗浄し、且つ恒量になるまで減圧下で乾燥する。該生成物は、それをn−ヘキサン又はトルエンに溶解し、それを活性炭で処理し、且つ溶液をセライト、シリカゲル又はアルミナで濾過することによって、更に精製することができる。結果生じる透明な黄色の溶液を、回転蒸発器により蒸発乾固させる。結晶性の淡黄色の生成物を真空下にて室温で乾燥する。
収率:18.3g、79%。
【0053】
実施例13
塩基としてLi2CO3を用いた、イソプロパノール/水(2:1)中でのビス(インデニル)ルテニウム(II)の製造
【化5】

【0054】
RuCl2(CH3CN)4(10g、30ミリモル)及びLi2CO3(8.7g、118ミリモル、4当量)をフラスコに装入する。イソプロパノール(200ml)、脱イオン水(100ml)及びインデン(Aldrich社製、7.3g、60ミリモル、2当量)を添加する。懸濁液を還流させる(油浴温度90℃)。淡褐色の混合物を還流下で4時間のあいだ攪拌し、次いで室温に冷却する。次いで脱イオン水を添加し、析出した生成物を濾過分離し、且つ冷エタノールで洗浄する。得られたオレンジ色の結晶性生成物を恒量になるまで減圧下にて室温で乾燥する。
収率:4.8g、50%。
NMRデータは公開されたものと一致する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

Ru(+II)(ジエニル)2
のジエニル−ルテニウム錯体の製造法であって、その際、式
Ru(+II)(X)p(Y)q
[式中、
X=アニオン性基、
Y=非荷電の2電子供与配位子、
p=1〜2の整数、
q=1〜6の整数]のルテニウム出発化合物を、無機塩基及び/又は有機塩基の存在においてジエン配位子Lと一段処理において反応させる方法。
【請求項2】
前記ジエン配位子Lからのジエニルアニオン(L-)の生成を、ルテニウム(II)出発化合物の存在において実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記反応を、極性有機溶媒中で又は極性有機溶媒と水との混合物中で実施する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記ジエン配位子Lが、>C=X型(式中、X=CR2、O、S、NR)の少なくとも2個の不飽和基をその分子構造中に有し、且つこれらの基の少なくとも1個が>C=C<二重結合を表し、且つ前記ジエン配位子Lと塩基との反応後に、負電荷が共役π電子系全体に分布しているジエニルアニオン(L-)が存在する、請求項1から3までのいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ジエン配位子Lが環式ジエンであり、且つ置換された又は非置換のシクロペンタジエン、フルオレン及びインデンから成る群から選択されている、請求項1から4までのいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ジエニルアニオン(L-)の負電荷が、非芳香族系である共役π電子系全体に分布している、請求項1から4までのいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ジエン配位子Lがオープンジエンであり、且つ置換された又は非置換のペンタジエン、ヘキサジエン及びヘプタジエンの群から選択されている、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記ジエン配位子Lが環式ジエンであり、且つ置換された又は非置換のシクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン又はシクロオクタジエンの群から選択されている、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記ジエン配位子Lが、ヘテロ原子置換されたジエン類似体であり、且つメシチルオキシド(2−メチル−4−オキソ−2−ペンテン)又は(N−3−ブテン−1−イリデン)−メタンアミンを有する、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記ジエン配位子Lが、1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,4−ペンタジエン、2,3,4−トリメチル−1,3−ペンタジエン、3−フェニル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン又は3−(トリメチルシリル)−1,3−ペンタジエン及びそれらの混合物の群から選択されている、請求項6記載の方法。
【請求項11】
添加される前記ジエン配位子の量が、1〜4当量、好ましくは2〜3当量(そのつどRu出発化合物に対して)である、請求項1から10までのいずれかに記載の方法。
【請求項12】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸水素塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のリン酸塩、塩基性酸化物、例えば酸化カルシウム又は酸化アルミニウム又はそれらの混合物を無機塩基として使用する、請求項1から11までのいずれかに記載の方法。
【請求項13】
アンモニア、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ウロトロピン、エタノールアミン、ピリジン、トリエタノールアミン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)、DBN(ジアザビシクロノナン)、DABCO(1,4−ジアザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン)、イミダゾール又はエチレンジアミン又はそれらの混合物を有機塩基として使用する、請求項1から11までのいずれかに記載の方法。
【請求項14】
添加される前記無機塩基及び/又は有機塩基の量が、1〜10当量、好ましくは2〜5当量(そのつどルテニウム化合物に対して)である、請求項1から13までのいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記Ru(II)出発化合物の非帯電の2電子供与配位子Yが、アセトニトリル、水、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、アセトン、ピリジン、ベンゾニトリル、ベンジルニトリル、アクリロニトリル、イソニトリル、アンモニア又はアミン基から選択されている、請求項1から14までのいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記ルテニウム(II)出発化合物のアニオン性基Xが、ハロゲン化物イオン、擬ハロゲン化物イオン、硫酸イオン(SO42-)、トリフルオロメチルスルホネートアニオン(CF3SO3-)、硝酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩又はトリフルオロ酢酸塩から選択されている、請求項1から15までのいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記ルテニウム(II)出発化合物が、RuCl2(アセトニトリル)4、RuBr2(アセトニトリル)4、RuCl2(ピリジン)4、[Ru(H2O)6]Cl2、[Ru(H2O)6](トリフラート)2、RuCl2(DMSO)4、[Ru(NH36]Cl2、RuCl2(ベンゾニトリル)4又はRuCl2(アクリロニトリル)4の群から選択されている、請求項1から16までのいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記ジエニル−ルテニウム錯体を、極性プロトン性溶媒(例えば水又はエチレングリコール)の添加によって反応混合物から析出させる、請求項1から17までのいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記Ru(II)出発化合物を、先行するステップで製造し、且つ中間体単離なしで直接的に方法において使用する("ワンポット法")、請求項1から18までのいずれかに記載の方法。
【請求項20】
請求項1から19までのいずれかに記載の方法によって得られるジエニル−ルテニウム錯体。
【請求項21】
均一系触媒用の前駆体としての請求項1から19までのいずれかに記載の方法により製造されたジエニル−ルテニウム錯体の使用。
【請求項22】
機能塗料を製造するための及び治療適用のための請求項1から19までのいずれかに記載の方法により製造されたジエニル−ルテニウム錯体の使用。

【公表番号】特表2011−521983(P2011−521983A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512011(P2011−512011)
【出願日】平成21年5月30日(2009.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003904
【国際公開番号】WO2009/146870
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】