説明

ジオルガノ錫ジカルボキシレートを含む電着可能コーティング組成物

【課題】 高性能の電着可能組成物を提供すること
【解決手段】 (a)カソード上に電着可能な、活性水素を含有し、カチオン性塩の基を含有する樹脂;(b)キャップ化ポリイソシアネート硬化剤;および(c)ジオルガノ錫ジカルボキシレートを含有する電着組成物が提供される。ここでジカルボキシレートは14個から22個の炭素原子を有する少なくとも1つの長鎖カルボキシレートであり、そしてジオルガノ錫ジカルボキシレートは電着可能組成物中にこの電着可能組成物の総固形分の重量を基準として少なくとも0.01重量%の錫の量で存在する。この組成物はジブチル錫オキシドを沈殿させることなく改良された貯蔵安定性を提供し、そして伝導性基材上に電着されたとき、硬化応答および外観特性の損失がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はカチオン性の電着可能組成物、および電着におけるこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
電着によるコーティングの塗布は、印加される電位の影響下における、導電性基材に対するフィルム形成組成物の析出を包含する。非電気泳動コーティング方法と比較して、電着がより高い塗装用途、顕著な耐腐食性、および低環境汚染を提供するので、電着は塗料(コーティング)産業において傑出している。工業的な電着プロセスでの初期の試みにおいては、コーティングされる製造過程の部品がアノードとして機能するアニオン性電着が使用されていた。しかし、1972年に、カチオン性の電着が商業的に導入された。その時以来、カチオン性の電着はますます一般的になり、今日では電着の最も普及した方法である。世界中で製造される全自動車の80%を上回るものがカチオン性の電着によってプライマーコーティングされている。
【0003】
今日使用される多くのカチオン性の電着組成物は、ポリエポキシドおよびキャップされたポリイソシアネート硬化剤から誘導した活性水素含有樹脂をベースにしている。これらのカチオン性電着組成物は、電着組成物の硬化を活性化するために、ジブチル錫オキシドのような固体有機錫(organotin)触媒を通常含む。これらの有機錫触媒は室温で固体なので、電着組成物中に配合するのは困難であり得、分散ビヒクルと共にミリング(milling)して、電着組成物に添加されるペーストを形成することを必要とする。ミリング操作は、更なる時間、労力および装置を必要とし、そして電着組成物の調製のコストを増加させる。ジブチル錫オキシド(dibutyltinoxide)のミリングのひとつの代替法は、ジブチル錫ジアセテートのような液体のジブチル錫酸化物誘導体を電着コーティングに配合することである。これらのタイプの触媒を含む電着組成物は、しばしば貯蔵安定性を欠き、そして時間が経つと加水分解して固体錫化合物の沈殿を生じる傾向にある。
【0004】
米国特許第4,332,927号は第6欄第27〜37行に、2成分ポリウレタン系のためのポリオール中のジアルキル錫ジカルボキシレート触媒の安定性を報告する。この系の別個の第2成分はイソシアネート末端プレポリマーである。この2つの成分は、ポリウレタン系を形成し、濾過カラムおよび分離カラムのような生物医学的用途のための非毒性のポッティング(potting)樹脂またはシーリング樹脂として働く。
【0005】
硬化フィルムの特性または外観を損なうことなく向上した貯蔵安定性を示す電着組成物であって、このような向上した貯蔵安定性を補い、かつ従来技術の触媒の欠点を有しない触媒を含む、電着可能組成物を提供することが所望される。
【特許文献1】米国特許第4,332,927号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の要旨
本発明によれば、(a) 電極としての基材上に電着可能な、活性水素を含有し、イオン性塩の基を含有する樹脂;(b)キャップ化ポリイソシアネート硬化剤;および(c)ジオルガノ錫ジカルボキシレートを含む電着可能組成物が提供される。ここでジカルボキシレートのうちの少なくとも1つは14個から22個の炭素原子を有する長鎖カルボン酸の残基であり、そしてこのジオルガノ錫ジカルボキシレートは、電着可能組成物中に、この電着可能組成物の総固形分の重量を基準として少なくとも0.01重量%の錫の量で存在する。
【0007】
硬化フィルムの特性または外観を損なうことなく向上した貯蔵安定性を示す電着組成物であって、このような向上した貯蔵安定性を補い、かつ従来技術の触媒の欠点を有しない触媒を含む、電着可能組成物を提供することが所望される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、電着可能組成物が提供される。より具体的には、例えば、以下の組成物などが提供される。
【0009】
(a)カソード上に電着可能な、活性水素を含有し、カチオン性塩の基を含有する樹脂;(b)キャップ化ポリイソシアネート硬化剤;および(c)ジオルガノ錫ジカルボキシレートを含有する電着可能組成物であって、ここで該ジカルボキシレートが14個から22個の炭素原子を有する少なくとも1つの長鎖カルボキシレートであり、そして該ジオルガノ錫ジカルボキシレートが該電着可能組成物中に該電着可能組成物の総固形分の重量を基準として少なくとも0.01重量%の錫の量で存在する、組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上述した課題を解決する電着可能組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
詳細な説明
成分(a)(以下、適切な場合には「成分A」と呼ぶ)のイオン性樹脂は、当業者に公知のアニオン性樹脂およびカチオン性樹脂を包含する。カソードとしての基材上への電着のためには、カチオン性樹脂が好ましい。カチオン性樹脂は、通常優れた耐腐食性を提供するからである。成分Aは、好ましくはポリエポキシドから誘導され、これは、鎖延長またはこのポリエポキシドの分子量を増加させるために、ポリエポキシドと、アルコール性ヒドロキシル基含有物質およびフェノール性ヒドロキシル基含有物質から選択されるポリヒドロキシ基含有物質とを共に反応させることによって鎖延長され得る。この樹脂は、カチオン性塩の基と、脂肪族ヒドロキシルならびに第一級および第二級アミノから選択される活性水素基とを含む。そのようなカチオン性樹脂は、米国特許第3,663,389号;同3,922,253号;同3,984,299号;3,947,339号;同3,947,388号;および同4,031,050号に記載のような樹脂であり得る。
【0012】
鎖延長ポリエポキシドは、典型的には、ポリエポキシドとポリヒドロキシル基含有物質とを、溶媒なし(ニート、neat)で、あるいはケトン(メチルイソブチルケトンおよびメチルアミルケトンを包含する)、芳香族(例えば、トルエンおよびキシレン)、およびグリコールエーテル(例えば、ジエチレングリコールのジメチルエーテル)のような不活性有機溶媒の存在下で共に反応させることによって調製される。反応は通常、約80℃から160℃の温度で約30分間から180分間かけてエポキシ基含有樹脂状反応生成物が得られるまで行われる。
【0013】
反応物の当量比、すなわち、エポキシ:ポリヒドロキシル基含有物質は、典型的には、約1.00:0.75〜1.00:2.00である。
【0014】
ポリエポキシドは、好ましくは少なくとも2つの1,2−エポキシ基を有する。通常、このポリエポキシドのエポキシド当量重量は、100〜約2000、典型的には約180〜500の範囲である。エポキシ化合物は、飽和または不飽和であり得、環式または非環式であり得、脂肪族、脂環式、芳香族またはヘテロ環式であり得る。これらは、ハロゲン、ヒドロキシル、およびエーテル基のような置換基を含み得る。
【0015】
ポリエポキシドの例は、1,2−エポキシ当量が1より大きく、そして好ましくは2であるもの、すなわち、1分子当たり平均して2つのエポキシド基を有するポリエポキシドである。好ましいポリエポキシドは、環式ポリオールのポリグリシジルエーテルである。特に好ましいのは、ビスフェノールAのような多価フェノールのポリグリシジルエーテルである。これらのポリエポキシドは、多価フェノールをエピクロロヒドリンまたはジクロロヒドリンのようなエピハロヒドリンまたはジハロヒドリンでアルカリの存在下でエーテル化することによって生成され得る。多価フェノールの他に、他の環式ポリオールが環式ポリオールのポリグリシジルエーテルの調製に使用され得る。他の環式ポリオールの例としては、脂環式ポリオール、特に、1,2−シクロヘキサンジオールおよび1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンのような環状脂肪族ポリオールが挙げられる。好ましいポリエポキシドは、約180〜500、好ましくは約186〜350の範囲の分子量を有する。エポキシ基含有アクリルポリマーもまた使用され得るが、好ましくはない。
【0016】
ポリエポキシドを鎖延長するか、またはポリエポキシドの分子量を増加させる(すなわち、ヒドロキシル−エポキシ反応を通じて)ために使用されるポリヒドロキシル基含有物質の例としては、アルコール性ヒドロキシル基含有物質およびフェノール性ヒドロキシル基含有物質が挙げられる。アルコール性ヒドロキシル基含有物質の例には、ネオペンチルグリコールのような単純ポリオール;米国特許第4,148,772号に記載されるようなポリエステルポリオール;米国特許第4,468,307号に記載されるようなポリエーテルポリオール;および米国特許第4,931,157号に記載されるようなウレタンジオールがある。フェノール性ヒドロキシル基含有物質の例には、ビスフェノールA、フロログルシノール、カテコール、およびレゾルシノールのような多価フェノールがある。アルコール性ヒドロキシル基含有物質およびフェノール性ヒドロキシル基含有物質の混合物もまた使用され得る。ビスフェノールAが好ましい。
【0017】
活性水素含有カチオン性樹脂はまた、カチオン性塩の基も含む。カチオン性塩の基は、好ましくは、上記のように調製されたエポキシ基含有樹脂状反応生成物とカチオン性塩の基の形成剤とを反応させることによって樹脂中に取り込まれる。
「カチオン性塩の基形成剤」は、エポキシ基との反応性があり、そしてエポキシ基との反応前、反応中、または反応後に酸性化され得、カチオン性塩の基を生成する物質を意味する。適切な物質の例としては、エポキシ基との反応後に酸性化され得、アミン塩の基を形成する、第1級アミンまたは第2級アミン、あるいはエポキシ基との反応前に酸性化され得、そしてエポキシ基との反応後に第4級アンモニウム塩の基を形成する第3級アミンのようなアミンが挙げられる。他のカチオン性塩の基形成剤の例には、エポキシ基との反応前に酸と混合され得、そして続いてのエポキシ基との反応において三元スルホニウム塩の基を形成するスルフィドがある。
【0018】
アミンをカチオン性塩形成剤として使用する場合、モノアミンが好ましく、そしてヒドロキシル含有アミンが特に好ましい。ポリアミンを使用してもよいが、樹脂をゲル化する傾向のため推奨しない。
【0019】
第1級アミンがエポキシ基に対して多官能性であり、そして反応混合物をゲル化する傾向がより強いので、第3級および第2級アミンが第1級アミンよりも好ましい。ポリアミンまたは第1級アミンを使用する際には、これらは、ゲル化を防ぐためにポリエポキシドにおけるエポキシ官能基に対して実質的に化学量論的な過剰量で用いられるべきであり、そして過剰量のアミンは、反応混合物から、反応の終了時に真空ストリッピングまたは他の技術によって除去されるべきである。エポキシは過剰量のアミンを確保するためアミンに添加され得る。
【0020】
ヒドロキシル含有アミンの例には、アルカノール基、アルキル基、およびアリール基のそれぞれにおいて1個〜18個の炭素原子、好ましくは1個〜6個の炭素原子を含有するアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、トリアルカノールアミン、アルキルアルカノールアミン、およびアラルキルアルカノールアミンがある。具体的な例としては、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、およびN−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジンが挙げられる。
【0021】
ヒドロキシル基を含有しないモノ、ジ、およびトリアルキルアミンならびに混合されたアリールアルキルアミン、またはアミンとエポキシとの間の反応に悪影響を及ぼさないヒドロキシル以外の基で置換されたアミンのようなアミンもまた使用され得る。具体的な例としては、エチルアミン、メチルエチルアミン、トリエチルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、ジココアミン(dicocoamine)、およびN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンが挙げられる。
【0022】
上記アミンの混合物もまた使用され得る。
【0023】
第1級アミンおよび/または第2級アミンとポリエポキシドとの反応は、アミンおよびポリエポキシドを混合すると起こる。アミンはポリエポキシドに添加され得るか、またはその反対に添加され得る。反応は、ニートにて、あるいはメチルイソブチルケトン、キシレン、または1−メトキシ−2−プロパノールのような適切な溶媒の存在下で行われ得る。反応は一般的に発熱反応であり、そして冷却が所望され得る。しかし、約50℃〜150℃の穏やかな温度まで加熱することにより反応は促進し得る。
【0024】
第1級アミンおよび/または第2級アミンとポリエポキシドとの反応生成物は、酸との少なくとも部分的な中和によってカチオン性および水分散性になる。適切な酸の例としては、ギ酸、酢酸、乳酸、リン酸、およびスルファミン酸のような有機酸および無機酸が挙げられる。スルファミン酸が好ましい。中和の程度は、含まれる特定の反応生成物と共に変化する。しかし、充分な酸が水中で電着可能組成物を分散させるために使用されるべきである。代表的には、使用される酸の量は、少なくとも全中和量の全ての少なくとも20%を提供する。過剰量の酸もまた、100%全中和量に対して必要とされる量を上回って使用され得る。
【0025】
第3級アミンとポリエポキシドとの反応では、第3級アミンは、酸と中和することにより前もって反応(prereact)してアミン塩を生成し得、次いで、このアミン塩はポリエポキシドと反応して第4級塩の基を含有する樹脂を生成し得る。反応は、水中でアミン塩とポリエポキシドとを混合することにより行われる。代表的には、水は全反応混合物固形分に基づいて約1.75重量%〜約20重量%の範囲の量で存在する。
【0026】
第4級アンモニウム塩の基を含有する樹脂の形成において、反応温度は反応が進行する最低温度(一般には室温またはそれより僅かに高い温度)から、(大気圧で)約100℃の最高温度まで変化され得る。高圧下では、より高い反応温度が用いられ得る。好ましくは、反応温度は、約60℃〜100℃の範囲である。立体的に妨害された(hindered)エステル、エーテル、または立体的に妨害されたケトンのような溶媒が使用され得るが、それらの使用は必須ではない。
【0027】
上記に開示される第1級、第2級、および第3級アミンに加えて、ポリエポキシドと反応するアミンの一部は、米国特許第4,104,147号、第6欄、第23行目から第7欄、第23行目までに記載されるような、ポリアミンのケチミンであり得る。ケチミン基は水中でのアミン−エポキシ樹脂反応生成物の分散時に分解する。
【0028】
アミン塩および第4級アンモニウム塩の基を含有する樹脂に加えて、三元スルホニウム基を含有するカチオン性樹脂が本発明の組成物中の活性水素含有カチオン性樹脂の形成において使用され得る。これらの樹脂およびそれらの調製方法の例は、DeBonaの米国特許第3,793,278号およびBossoらの第3,959,106号に記載されている。
【0029】
カチオン性塩の基の形成の程度は、樹脂が水性媒体および他の成分と混合される場合に、電着可能組成物の安定な分散体が形成するような程度であるべきである。「安定な分散体」は、沈降しないものまたはいくらかの沈降が生じても容易に再分散し得るものを意味する。さらに、分散体は、電位が水性分散体中に浸漬されたアノードおよびカソードの間に印加される場合に分散した樹脂粒子がカソードに向かって移動しそしてカソード上に電着する、十分なカチオン性の性質を有するべきである。
【0030】
一般的に、本発明の電着可能組成物の活性水素含有カチオン性樹脂は、非ゲル状(non−gelled)であり、樹脂固形分1g当たり約0.1ミリ当量〜3.0ミリ当量、好ましくは、約0.1ミリ当量〜0.7ミリ当量のカチオン性塩の基を含有する。活性水素含有カチオン性樹脂は、好ましくは、約2,000〜約15,000、より好ましくは約5,000〜約10,000の範囲の数平均分子量を有する。「非ゲル状(non−gelled)」は、樹脂が実質的に架橋されておらず、そしてカチオン性塩の基の形成前に、樹脂を適切な溶媒中に溶解した場合、それが測定可能な固有粘度を有することを意味する。対照的に、ゲル化した樹脂(本質的に莫大な分子量を有する)は、高すぎて測定不可能な固有粘度を有する。
【0031】
活性水素含有カチオン性樹脂内の活性水素は、当業者に公知のように、約93℃から204℃の温度範囲内、好ましくは約121℃から177℃の温度範囲内でのイソシアネートとの反応性を有する任意の活性水素を包含する。最も多くの場合、活性水素は、ヒドロキシルならびに第一級および第二級アミノからなる群から選択され、ヒドロキシルと第一級アミノのような混合基を包含する。好ましくは、活性水素含有カチオン性樹脂は、樹脂固形分1グラム当たり約1.7〜10ミリ当量、より好ましくは約2.0〜5ミリ当量の活性水素含量を有する。
【0032】
活性水素カチオン性塩含有樹脂としてのエポキシ−アミン反応生成物の他に、活性水素含有イオン性樹脂はまた米国特許第3,455,806号および同3,928,157号に記載もののようなカチオン性アクリル樹脂から選択され得る。さらに、イオン性基および活性水素基を含む、活性カチオン性ポリエステル樹脂など。
【0033】
典型的には、成分Aとしての活性水素含有カチオン性樹脂は、主ビヒクル樹脂固形分の重量を基準として約50〜75重量%、好ましくは約55〜70重量%の量で電着可能組成物中に存在する。「主ビヒクル樹脂固形分」は、成分Aの活性水素を含有しカチオン性塩の基を含有する樹脂と成分Bのポリイソシアネート硬化剤とに起因する樹脂固形分を意味し、そのためこれらの成分の総量は100重量%に等しい。
【0034】
本発明の電着可能組成物はまた、キャップ化ポリイソシアネート硬化剤を含む。成分(b)のポリイソシアネート硬化剤(以下、適切な場合には「成分B]とよぶ)は、遊離のイソシアネート基を実質的に含まない完全キャップ化ポリイソシアネートであり得、あるいはこれは部分的にキャップ化されていてもよく、そして米国特許第3,984,299号および同5,356,529号に記載のように樹脂骨格と反応していてもよい。ポリイソシアネートは、脂肪族または芳香族のポリイソシアネート、あるいはこれら2種の混合物であり得る。より多価のポリイソシアネートをジイソシアネートの代わりにあるいはジイソシアネートと組み合わせて使用し得るとはいえ、ジイソシアネートが好ましい。
【0035】
適切な脂肪族ジイソシアネートの例は、1,4−テトラメチレンジイソシアネートおよび1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのような直鎖脂肪族ジイソシアネートである。環状脂肪族ジイソシアネートもまた使用され得る。例として、イソホロンジイソシアネートおよび4,4’−メチレン−ビス−(シクロヘキシルイソシアネート)が挙げられる。適切な芳香族ジイソシアネートの例は、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートおよび2,4−または2,6−トルエンジイソシアネートである。適切な多価ポリイソシアネートの例は、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、1,2,4−ベンゼントリイソシアネートおよびポリメチレンポリフェニルイソシアネートである。
【0036】
イソシアネートプレポリマー、例えば、ポリイソシアネートとポリオール(例えば、ネオペンチルグリコールおよびトリメチロールプロパン)との反応生成物、またはポリマー性ポリオール(例えば、ポリカプロラクトンジオールおよびトリオール)との反応生成物(NCO/OH当量比が1より大きい)もまた使用され得る。ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートとポリメチレンポリフェニルイソシアネートとの混合物が好ましい。
【0037】
任意の適切な脂肪族、環状脂肪族、または芳香族アルキルのモノアルコールまたはフェノール化合物が、本発明の組成物におけるキャップ化ポリイソシアネート硬化剤のためのキャップ化剤として使用され得、例えば、メタノール、エタノール、およびn−ブタノールのような低級脂肪族アルコール類;シクロヘキサノールのような環状脂肪族アルコール類;フェニルカルビノールおよびメチルフェニルカルビノールのような芳香族−アルキルアルコール;ならびにフェノール自体および置換フェノール(ここで置換基はコーティング操作に影響を与えない)(例えばクレゾールおよびニトロフェノール)のようなフェノール性化合物が挙げられる。グリコールエーテルもまたキャップ化剤として使用され得る。適切なグリコールエーテルとしては、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルが挙げられる。ジエチレングリコールブチルエーテルがグリコールエーテル類のなかでもとりわけ好ましい。
【0038】
他の適切なキャップ化剤としては、メチルエチルケトオキシム、アセトンオキシムおよびシクロヘキサンオキシムのようなオキシム類、ε−カプロラクタムのようなラクタム類、およびジブチルアミンのようなアミン類が挙げられる。
【0039】
成分Bのキャップ化ポリイソシアネート硬化剤は、典型的には、この電着可能組成物中に、主ビヒクル樹脂固形分の重量を基準にして約25〜50重量%、好ましくは約30〜45重量%の量で存在する。典型的には、本発明の組成物中には、成分Aのカチオン性樹脂中の各活性水素当たり約0.1〜約1.2のキャップ化イソシアネート基が提供されるに十分なポリイソシアネートが存在する。
【0040】
本発明の電着組成物中には、有機錫触媒もまた存在し、これは好ましくは本発明の組成物中に容易に配合される液体の形状で存在する。従来の触媒は固体であることが多く、そして典型的には、磨砕(grinding)またはミリングプロセスによって、米国特許第4,007,154号に開示されるもののような従来の顔料磨砕ビヒクル(pigment grinding vehicle)中に分散される。本発明の組成物中の有機錫触媒は、ジオルガノ錫ジカルボキシレートであり、これは式(I):
【0041】
【化001】

【0042】
で構造的に示され得る。ここでこの構造は模式的であり、結合は実際の結合角を表すことを意図するものではない。
【0043】
構造(I)において、有機基R、R、R、およびR(まとめて「R」基と呼ぶ)のうちの任意の2つは、同じでも異なっていてもよく、飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖のカルボキシレートラジカルであり、これらのうち少なくとも1つは14個から22個の炭素原子を含み(「長鎖カルボキシレート」と呼ぶ)、好ましくは14個から18個の炭素原子、そして最も好ましくは16個から18個の炭素原子を含む。カルボキシレートラジカルはカルボン酸のカルボキシレート基から水素原子を除去した結果得られる構造である。適切な長鎖カルボキシレートの具体例は、オレエート、パルミテート、ステアレート、ミリステート、9,11−オクタデカジエノエート、ならびに不飽和の天然または合成の一塩基性脂肪族脂肪カルボキシレートおよび天然の高級脂肪カルボキシレート、例えば、大豆油脂肪カルボキシレート、およびトール油脂肪カルボキシレートであり、これらの混合物を包含する。例えば、上記の適切なカルボキシレートは、その対応するカルボン酸、例えば、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、9,11−オクタデカジエン酸、およびそれらの混合物、ならびに上記の適切なカルボキシレートの対応物として当業者に公知の他のカルボン酸、の誘導体である。長鎖酸ではない他のアルキル鎖カルボキシレート(「他のカルボン酸」)は、13個以下の炭素原子を含むようなカルボキシレート類であり得る。これは酢酸(acetate acid)、プロピオネート、ブタノエートなどを包含する。また、クロトネート、イソクロトネート、3−ブテノエート、1−シクロヘキセン−1−カルボキシレート、およびシンナメートのようなエチレン性不飽和モノカルボキシレートを包含する不飽和酸由来のカルボキシレート、ならびにアビエテートのような不飽和酸およびロジンおよび他の天然産物から抽出される不飽和酸由来のカルボキシレートであり得る。
【0044】
構造(I)で示されるように、ジカルボキシレートではない、R、R、R、およびRのうちの他の2つの「R」有機基は、同じかまたは異なるアルキル;シクロヘキシルのようなシクロアルキル、フェニルのようなアリール;ならびに置換アルキルおよびアリールであり、ここで置換基は硬化反応に悪影響を与えないものであり、例えば、トリルのようなアルカリールおよびベンジルのようなアラルキルである。ジオルガノ錫ジカルボキシレート中のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、およびオクチルのような1個から10個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルが挙げられる。
【0045】
好ましくは、本発明の有機錫化合物は、模式的構造(I)に示されるように、「R」有機基R、R、R、およびRのうち2つを同じ長鎖カルボキシレートであるジカルボキシレートとして有する。ここで最も好ましいのはオレエートである。また、カルボキシレートではない2つの「R」有機基は、好ましくは同じアルキル基であり、そしてより好ましくはブチル基である。
【0046】
成分(c)であるジオルガノ錫ジカルボキシレートは、1種またはそれ以上の異なるタイプのカルボン酸化合物(ここで少なくとも1種は長鎖カルボン酸である)をジブチル錫オキシドのようなジオルガノ錫化合物と、約1:1より大きいモル比(好ましくは約2対1)で反応させることによって調製され得る。それより高いモル比も使用できるが特に利点はない。なぜなら、過剰量のカルボン酸の使用により未反応のカルボン酸を生じるからである。成分(c)としてのジオルガノ錫ジカルボキシレートはまた、長鎖カルボン酸および他のカルボン酸をジブチル錫オキシドのようなジオルガノ錫オキシドと、約1:1より大きいカルボン酸:ジオルガノ錫オキシドのモル比で反応させることによって調製され得る。これもまた、好ましいモル比は約2:1であり、より高いモル比は、未反応の過剰のカルボン酸の存在のため収益を低下させる結果となる。用語「ジカルボキシレート」が2個のカルボキシレート基を有する錫錯体のみを包含することを意味するのではなく、少なくとも1種の長鎖カルボン酸(または少なくとも1種の長鎖カルボン酸および他のカルボン酸)とジオルガノ錫化合物との、約1:1を超えるカルボン酸:ジオルガノ錫オキシドのモル比での反応から得られる反応生成物の統計的混合物として表される混合物もまた包含することが理解される。長鎖カルボン酸と他のカルボン酸との混合物が使用される場合、かなりの量の長鎖カルボン酸が常に存在し、そしてそのような量はカルボン酸反応物の混合物のおよそ50重量%以上のような主要量であることが特に適切である。
【0047】
ジブチル錫ジオレエートのようなジオルガノ錫ジカルボキシレートは、Aceto Chemical Co., Inc.(Waterbury, Connecticut)の一部門であるPfaltz and Bauer, Inc.から入手可能である。また、ジアルキル錫ジカルボキシレートのようなジオルガノ錫ジカルボキシレートを生産するための当業者に公知の任意の方法が使用され得る。例えば、ある適切な反応において、ジオルガノ化合物が長鎖カルボン酸(単独で、または1種以上の他のカルボン酸と組み合わせて)と、上記の適当なモル比で、窒素雰囲気の反応容器へ組み合わされ得る。この混合物を高温かつ反応により生成される水の除去を促進する適当な圧力で加熱する。上記の好ましい反応物について、適切な温度は、ジオルガノ錫ジカルボキシレートの良好な収率が得られるに十分な時間で約100℃から約180℃の範囲の温度を包含し、そして好ましくは約140℃である。この反応で形成される水を除去するための1つの適切な方式は蒸留である。他の適切な方法としては、N. I. Sheverdina、L. V. Abramova、I. E. PaleevaおよびK. A. Kocheshkov. Khim. Prom.による”Preparation of Dibutyltin Organic Salts” 1962(10)、707−8 Chemical Abstracts 59、8776C(これは本明細書中に参考として援用される)に示されるようなジオルガノ錫ジカルボキシレートの調製法が挙げられる。
【0048】
また、長鎖カルボン酸(または長鎖カルボン酸と少なくとも1種の他のカルボン酸)と有機錫化合物との間の反応は、必要に応じて任意の有機媒体中で行われ得る。その非限定的な例としては、キシレン中でのジプロピル錫オキシド、ジフェニル錫オキシド、またはジシクロヘキシル錫ヒドロキシドのようなジオルガノ錫化合物と長鎖カルボン酸(または長鎖カルボン酸および他のカルボン酸)との反応が挙げられる。これらの成分はキシレンの沸点まで加熱され、そして反応の水は、ブリッジまたは水の除去について当業者に公知の他の適切な蒸留装置を通じて、同時に共沸的に留去される。また、キシレン、あるいは芳香族炭化水素のような他の不活性液体希釈剤などの希釈剤(水との共沸混合物を形成する)を使用すると、この物質の一部はおそらく水と共に除去され得る。また、カルボン酸は、溶媒または希釈剤中で、あるいはそれらのいずれも使用せずに、ジオルガノ錫オキシド、ジオルガノ錫ヒドロキシド、またはジオルガノ錫クロリドと反応し得る。溶媒または希釈剤を使用すると、反応の副生成物として形成された水は、従来的には大気圧下または減圧下で操作される蒸留によって除去される。
【0049】
ジオルガノ錫ジカルボキシレートは、電着可能組成物中にいくつかの方法で配合され得る。ジオルガノ錫ジカルボキシレートは、主ビヒクル(すなわち活性水素含有樹脂)の最終反応混合物に、上記のような水と酸による可溶化の直前に添加され得る。あるいは、ジオルガノ錫ジカルボキシレートは、最終組成物中に剪断される(sheared into)べく、十分高い固形分に維持された部分的に可溶化された樹脂に添加され得る。あるいは、ジオルガノ錫ジカルボキシレートは、米国特許第4,423,166号に記載のようなポリエポキシド−ポリオキシアルキレン−ポリアミン修飾抗クレーター樹脂と共分散され得る。ジオルガノ錫ジカルボキシレートはまた、米国特許第4,007,154号に開示されるような従来の顔料磨砕ビヒクルに加えられることにより、顔料ペーストの成分として添加され得る。
【0050】
特に好ましい実施態様において、ジオルガノ錫ジカルボキシレートは、電着可能組成物中に安定な乳濁液の形態で配合される。そのような乳濁液は、ジオルガノ錫ジカルボキシレートを水性の酸性溶液中で非イオン性および/またはカチオン性の界面活性剤と混合することによって調製され得る。得られる混合物はホモジナイザーを用いて高剪断応力に供され、それによって水性媒体中にジオルガノ錫ジカルボキシレート微粒子の安定な分散体が形成される。米国特許第5,084,506号(Falerら)および同5,071,904号(Martinら)に記載のような、乳濁液を調製するための当業者に公知の任意の高剪断応力ホモジナイザーが使用され得る。適切な界面活性剤の例としては、Rhodameen C−5(Rhone−Poulenc, Specialty Chemicals Ltd.から入手可能な界面活性剤)が挙げられ、エトキシ化アミンおよび/または第三級アミンを有するアミドおよび第一級タロウアミンのエトキシ化物の系列において(in their line)、これは黄褐色の外観の液体であり、1%での曇点が40〜70、ガードナー色度(Gardner color)が最大12、第三級アミンの百分率が最小95、水分含有量が最大0.5%、水酸基価が265〜285、中和当量が420〜440、そして百万分率で表した灰分(ash value)が、触媒なしで調製された場合、最小200である。このような適切な界面活性剤を使用すると、本発明のジオルガノ錫ジカルボキシレートはホモジナイザーでより容易に調製され得、水で希釈可能な処方物が生成される。また、1種以上の乳化剤を添加した不活性有機溶媒(例えば、アルコール、ケトン、シクロヘキサノン、キシレンまたはより高沸点の芳香族化合物)中のジオルガノ錫ジカルボキシレートの溶液から、乳濁可能な濃縮物が調製され得る。ジオルガノ錫ジカルボキシレートが液体の場合、溶媒の量は減らすことができるか、あるいは完全に省略され得る。他の可能性のある適切な界面活性剤は、例えば、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ならびに脂肪酸ポリグリコールエステル、アルキルアリールポリグリコールエーテル、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、プロピレンオキシド−エチレンオキシド縮合生成物、およびアルキルポリグリコールエーテルのような非イオン性乳化剤である。
【0051】
従来のジブチル錫ジオキシドのような固体の有機錫触媒およびジブチル錫ジアセテートおよびジブチル錫ジラウレートのような先行技術の液体有機錫触媒とは異なり、本発明の電着可能組成物において使用されるジアルキル錫ジカルボキシレートは、時間が経っても組成物からのジブチル錫オキシドのような固体の沈殿を引き起こさない。本発明の組成物は熱安定性および貯蔵安定性である。
【0052】
成分(c)のジオルガノ錫ジカルボキシレートは、本発明の電着可能組成物中に、電着可能組成物の総固形分の重量を基準にして少なくとも約0.01重量%の錫、好ましくは約0.01〜1.5重量%の錫、そしてより好ましくは約0.1〜0.5重量%の錫の量で存在する。ジオルガノ錫ジカルボキシレートが上記のような安定なホモジナイズされた乳濁液の形態で電着可能組成物中に配合される場合、それは好ましくは電着可能組成物の総固形分の重量を基準にして約0.1〜0.3重量%の錫の量で存在する。
【0053】
特に好適な実施態様において、成分(c)のジオルガノ錫ジカルボキシレートはジブチル錫オキシドとの組み合わせで組成物中に存在する。この実施態様において、ジオルガノ錫ジカルボキシレートおよびジブチル錫オキシドの各々の量は、ジオルガノ錫ジカルボキシレート中の錫とジブチル錫ジオキシド中の錫との重量比が総固形分を基準にして約0.25:0.6、そして好ましくは0.3:0.5の比であるような量である。
【0054】
本発明の組成物は、好ましくは、水性分散体の形態で電着プロセスに使用される。「分散体」とは、2相の、透明、半透明、または不透明の水性樹脂系であり、ここで樹脂、硬化剤、顔料、および水不溶性物質が分散相であり、そして水および水溶性物質が連続相を構成する。分散相は、平均粒子サイズが約10ミクロン(10−6メートル)未満、好ましくは5ミクロン(10−6メートル)未満である。水性分散体は、分散体の特定の最終使用用途に応じて、好ましくは少なくとも約0.05重量%、そして通常約0.05〜50重量%の樹脂固形分を含む。
【0055】
水性分散体は、任意に、炭化水素、アルコール、エステル、エーテルおよびケトンのような共溶媒(coalescing solvent)を含み得る。好ましい共溶媒の例は、イソプロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコールおよびプロピレングリコールのような、ポリオール類を含むアルコール類;エチレングリコールのモノブチルエーテルおよびモノヘキシルエーテルのようなエーテル類;ならびに4−メチル−2−ペンタノン(MIBK)およびイソホロンのようなケトン類である。共溶媒は通常、水性媒体の総重量に基づいて約40重量%までの量で、好ましくは約0.05〜25重量%の範囲の量で存在する。
【0056】
本発明の電着可能組成物はさらに、顔料、ならびに触媒、可塑剤、界面活性剤、湿潤剤、消泡剤、およびクレーター形成防止剤(anti−cratering agent)のような種々の他の任意の添加剤を含み得る。
【0057】
適切な界面活性剤および湿潤剤の例としては、Geigy Industrial ChemicalsからGEIGY AMINE Cとして入手可能なもののようなアルキルイミダゾリン、およびAir Products and ChemicalsからSURFYNOL 104として入手可能なアセチレン性アルコールが挙げられる。消泡剤の例としては、Crucible Materials Corp.からFOAMKILL 63として入手可能な不活性ケイソウ土を含む炭化水素が挙げられる。クレーター形成防止剤の例は、米国特許第4,432,850号に記載のようなポリオキシアルキレン−ポリアミン反応生成物である。これらの任意成分は、存在する場合、樹脂固形分重量基準で30重量%までの量で、典型的には1〜20重量%の量で通常使用される。
【0058】
適切な顔料としては、例えば、酸化鉄、カーボンブラック、コールダスト(coal dust)、二酸化チタン、タルク、粘土(クレー)、および硫酸バリウムが挙げられる。鉛顔料もまた使用され得る。水性分散体の顔料含有量は、一般に顔料対樹脂(またはバインダー)比(P/B)として表され、通常約0.1:1〜1:1である。
【0059】
電着プロセスにおいて、水性分散体は、電気伝導性のアノードおよびカソードと接触して配置される。水性分散体に接触しているアノードとカソードとの間に電流を通すと、電着可能な組成物の接着フィルムが実質的に連続的な様式でカソード上に析出する。電着は通常、約1ボルトから数千ボルト、典型的には50〜500ボルトの間の範囲の定電圧で行われる。電流密度は、通常、平方フィートあたり約1.0アンペアから15アンペア(平方メートルあたり10.8〜161.5アンペア)の間であり、そして電着プロセスの間に急速に低下する傾向にあり、これは連続的な自己絶縁フィルムの形成を示唆する。任意の電気伝導性基材、特に鋼、亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウムなどのような金属基材が、本発明の電着可能組成物でコーティングされ得る。鋼基材が好ましい。なぜなら、この組成物は鋼基材に対して顕著な耐腐食性を提供するからである。鋼基材をリン酸転換コーティング(phosphate conversion coating)、次いでクロム酸リンスで前処理することが従来的であるが、本発明の組成物はクロムリンスをしていない鋼基材に適用することができ、それでもなお優れた耐腐食性を提供する。
【0060】
析出の後、コーティングを加熱して、析出した組成物を硬化させる。加熱または硬化操作は通常120℃から250℃、好ましくは120℃から190℃の温度範囲で、10分から60分の範囲の時間で行われる。得られるフィルムの厚みは通常約10〜50ミクロン(10−6m)である。
【0061】
この組成物は、電着以外の手段(刷毛塗り、浸漬、流し塗り、スプレー塗りなどを包含する)によっても塗装され得るが、最も多くは電着によって塗装される。
【0062】
本発明を以下の実施例を参照してさらに説明する。特に指示のない限り、全ての部は重量部である。
【実施例】
【0063】
(実施例)
【0064】
【表001】

【0065】
ビスフェノールAのポリグリシジルエーテル(Shell Oil and Chemical Co.から入手可能)
キャップ化ポリイソシアネート架橋剤は以下の主成分の混合物から調製された(存在し得る任意の微量物質は無視する):
【0066】
【表002】

【0067】
ポリマー性MDI、Miles Inc.からMONDUR MR.として入手可能
ポリイソシアネート、メチルイソブチルケトンおよびジブチル錫ジラウレートを窒素雰囲気下反応フラスコに仕込んだ。2−(2−ブトキシエトキシ)エタノールをゆっくりと添加し、反応物を45℃から50℃の間の温度まで発熱させた。添加終了後、反応混合物を50℃で30分間維持した。2−ブトキシエタノールを添加し、そして混合物を110℃に発熱させ、そして赤外分析で未反応のNCOが残っていないことが示されるまで、そこで維持した。
ジエチレントリアミンおよびメチルイソブチルケトンから誘導されるジケチミン(メチルイソブチルケトン中、固形分73%)。
ジブチル錫ジオレエートは以下の成分の混合物から調製された:
【0068】
【表003】

【0069】
EMERSOL 210オレイン酸の商標で市販のオレイン酸固体とEmery Group of Henkel Corporation による他の脂肪酸との混合物(これは、71%のオレイン酸、8%のリノール酸、6%のパルミトレイン酸、5%のパルミチン酸、4%のミリストレイン酸、3%のミリスチン酸、および各々1%のマルガリン酸(margaric acid)、ステアリン酸、およびリノレン酸から構成されると報告されている)。
【0070】
ジブチル錫オキシドおよびオレイン酸を窒素雰囲気下反応フラスコに仕込み、そしてこの混合物を140℃に加熱し、そして反応から形成された水を蒸留によって除去して、ジブチル錫ジオレエートを得た。この特定の樹脂においては、これをMIBK溶液(90%固形分)として添加した。
【0071】
樹脂例Aはジブチル錫ジラウレートを含むカチオン性電着主ビヒクルの調製を記載する。EPON 828、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物、ビスフェノールAおよびメチルイソブチルケトンを反応容器に仕込み、そして窒素雰囲気下で125℃まで加熱した。次いでヨウ化エチルトリフェニルホスホニウムを添加し、そして反応混合物を約145℃まで発熱させた。反応を145℃で2時間維持し、そしてエポキシ当量を得た。エポキシ当量は通常、目標とするエポキシ当量重量付近でそれ以上増えなくなる。この時点で、架橋剤、ジケチミンおよびN−メチルエタノールアミンを順次添加した。混合物を発熱させ、そして次に130℃の温度を確立した。130℃で1時間の後、反応混合物を110℃に冷却した。ジブチル錫ジラウレートおよびオレイン酸を混合物に添加し、そして混合物を110℃で5分間混合させた。樹脂混合物(1700部)を、37.19部のスルファミン酸と1226.09部の脱イオン水との混合物に加えることによって、水性媒体中に分散させた。この分散体をさらに658.51部の脱イオン水および667.17部の脱イオン水で段階的に薄め、そして減圧ストリップして有機溶媒を除去し、45.01%の固形分含量および860オングストロームの粒子サイズを有する分散体を得た。
【0072】
樹脂例Bはジブチル錫ジオレエートを含むカチオン性電着主ビヒクルの調製を記載する。これは、有機錫触媒の添加までは上記例Aと同様の方法で調製された。例Bの場合、ジブチル錫ジオレエートを混合物に添加し、そして混合物を110℃で5分間混合させた。樹脂混合物(1700部)を、37.05部のスルファミン酸と1213.38部の脱イオン水との混合物に加えることによって、水性媒体中に分散させた。この分散体をさらに、655.65部の脱イオン水および664.28部の脱イオン水で段階的に薄め、そして減圧ストリップして有機溶媒を除去し、43.09%の固形分含量および900オングストロームの粒子サイズを有する分散体を得た。
【0073】
樹脂例Cはジブチル錫オキシド触媒を含むカチオン性電着浴のためのカチオン性電着主ビヒクル樹脂の調製を記載する。主ビヒクル樹脂は、架橋剤、ジケチミン、およびN−メチルエタノールアミンの順次添加において例Aの処方物と異なる架橋剤の処方物を用いること以外は上記例Aと同様の方法で調製された。また、この添加の後、反応混合物を発熱させ、そして132℃の温度を確立して1時間維持した。この樹脂混合物(1684部)を、38.34部のスルファミン酸と1220.99部の脱イオン水との混合物に加えることによって、水性媒体中に分散させた。この分散体をさらに657.63部の脱イオン水および666.28部の脱イオン水で段階的に薄め、そして減圧ストリップして有機溶媒を除去し、41.2%の固形分含量および984オングストロームの粒子サイズを有する分散体を得た。
【0074】
樹脂例Dはジブチル錫ジオレエート触媒を含むカチオン性電着浴のためのカチオン性電着主ビヒクル樹脂の調製を記載する。主ビヒクル樹脂は、ジブチル錫ジオレエートを有する1500部の樹脂混合物を32.86部のスルファミン酸と1081.42部の脱イオン水との混合物に加えることによって水性媒体中に分散させたこと以外は、例Bと同様の方法で調製された。この分散体をさらに580.95部の脱イオン水および588.59部の脱イオン水で段階的に薄め、そして48.03%の含有量および890オングストロームの粒子サイズを得た。
【0075】
樹脂例Eはジブチル錫ジオレエート触媒を含むカチオン性電着浴のためのカチオン性電着主ビヒクル樹脂の調製を記載する。主ビヒクル樹脂は、ジブチル錫ジオレエートを混合物に添加し、そして混合物を100℃で15分間混合したこと以外は上記例Bと同様の方法で調製された。樹脂混合物(368.23部)を、8.27部のスルファミン酸と262.7部の脱イオン水との混合物に加えることによって、水性媒体中に分散させた。この分散体をさらに142.5部の脱イオン水および144.4部の脱イオン水で段階的に薄め、そして減圧ストリップして有機溶媒を除去し、42.7%の固形分含量および976オングストロームの粒子サイズを有する分散体を得た。
【0076】
実施例I
樹脂例AおよびBは、各々固形分の0.6%の錫を含み、それぞれジブチル錫ジラウレートおよびジブチル錫ジオレエートを含むカチオン性電着主ビヒクルの分散安定性を比較する。樹脂例AおよびBの樹脂を140°F(60℃)の温室に置いた。72日後、樹脂Aは明らかに2つの別個の層に相分離していた。樹脂Bは1つの均質な相のままであった。
【0077】
実施例II
実施例II−AからII−Mは、カチオン電着コーティング系において、主樹脂固形分の0.62%かつ総浴固形分の0.45%という等しい錫レベルで、ジブチル錫オキシドと種々の錫ジカルボキシレートとを比較する。
【0078】
実施例II−A
この実施例はジブチル錫オキシド触媒を含むカチオン電着浴の調製を記載する。上記表1の例Cに従って調製されたカチオン性電着可能主ビヒクル樹脂を、以下のようにして、ジブチル錫オキシド触媒を含む浴中に調製した。
【0079】
顔料ペーストを以下の成分から調製した:
【0080】
【表004】

【0081】
顔料磨砕ビヒクルを、まず四級化剤を調製し、次にその四級化剤とエポキシ樹脂とを反応させることによって調製した。四級化剤を以下のように調製した:
【0082】
【表005】

【0083】
2−エチルヘキサノールハーフキャップ化トルエンジイソシアネートを室温で適切な反応容器中のDMEAに添加した。混合物は発熱した。そして80℃で1時間攪拌した。次に乳酸水溶液を仕込み、次いで2−ブトキシエタノールを添加した。反応混合物を65℃で約1時間攪拌して、四級化剤を形成した。
【0084】
顔料磨砕ビヒクルを以下のように調製した:
【0085】
【表006】

【0086】
Shell Oil and Chemical Co.から入手可能なビスフェノールAのジグリシジルエーテル
EPON 829およびビスフェノールAを窒素雰囲気下で適切な反応器中に仕込み、そして150℃から160℃に加熱して、発熱を開始した。反応混合物を150℃から160℃で1時間発熱させた。次いで反応混合物を120℃に冷却し、そして2−エチルヘキサノールハーフキャップ化トルエンジイソシアネートを添加した。反応混合物の温度を110℃から120℃で1時間維持し、次に2−ブトキシエタノールを添加した。次いで反応混合物を85℃から90℃に冷却し、ホモジナイズし、そして水を仕込み、次に四級化剤を仕込んだ。酸価が1となるまで反応混合物の温度を80℃から85℃に維持した。最終生成物は57.1%の固形分含有量を有していた。
E. I. du Pont de Nemours and Co.からR−900として入手可能。
Engelhard Corp.からASP−200として入手可能。
Eagle−Picher Industries, Inc.からEP−202として入手可能。
Cabot CorporationからCSX−333ペレットとして入手可能。
【0087】
顔料ペーストをHegman値が7になるまでサンドミルにかけた。ジブチル錫オキシドペーストは以下の成分から調製された:
【0088】
【表007】

【0089】
ジブチル錫オキシドペーストをHegman値が7になるまでサンドミルにかけた。カチオン性電着浴を以下の成分から調製した:
【0090】
【表008】

【0091】
米国特許第4,423,166号におおむね従った柔軟化剤(flexibilizer)−流動調節剤の水性分散体を、電着可能組成物と共に使用するために調製した。柔軟化剤−流動調節剤を、ポリエポキシド(EPON 828)およびポリオキシアルキレン−ポリアミン(Texaco Chemical Co.のJeffamine D−2000)から調製した。柔軟化剤−流動調節剤を、乳酸の助けを借りて水性媒体中に分散させた。そしてこの分散体の樹脂固形分含量は35.5%であった。
米国特許第4,891,111号に一般的に記載されているのと同様にして調製された、2モルのジエチレングリコールブチルエーテルおよび1モルのホルムアルデヒドの反応生成物。
米国特許第5,096,556号の実施例AおよびBに一般的に記載されているのと(乳酸のかわりに酢酸を使用して実施例Aの石鹸を分散させたこと、MIBKの変わりにエチレングリコールブチルエーテルを実施例Aの石鹸中の溶媒として使用したこと、および実施例Bにおけるストリッピングの前ではなく、ストリッピングの後にEPON 828溶液を添加したこと以外は)同様にして調製されたカチオン性マイクロゲル。樹脂は、最終固形分含有量18.1%を有した。
【0092】
実施例II−B
以下のようにして、ジブチル錫ジオレエート触媒を含むカチオン性電着浴の調製において、表1の樹脂Dのカチオン性電着可能主ビヒクル樹脂を用いた:
【0093】
【表009】

【0094】
主ビヒクルおよび電着浴を実施例II−Bに一般的に記載されているようにして調製した。しかし、以下の表2に報告される種々のジアルキル錫ジカルボキシレート触媒を、130℃のアミンを1時間維持した後、110℃に冷却し、この触媒を添加し、そして水性媒体中で分散の前に5分間攪拌することによって、カチオン性主ビヒクル反応混合物に添加した。
【0095】
上記例のための浴を限外濾過し、浴の総重量の20%を限外濾液として取り去り、そしてこの限外濾液を脱イオン水で置き換えた。リン酸亜鉛で前処理した鋼パネルを浴中に浸漬し、そして電着可能組成物で、275ボルトで2分間、浴温87°Fから95°F(30.5℃から35℃)で電着塗装した。脱イオン水でリンスした後、パネルを30分間、310°F(154.5℃)および340°F(171.1℃)で焼き付けた。得られたフィルムの厚み(build)は約0.9ミル(22.9ミクロン(10−6m))であった。この硬化コーティングを、以下で説明する表面プロファイル(R)で測定される外観、およびアセトン耐性で測定される硬化応答について評価した。結果を表2に報告する。
【0096】
実施例II−BからII−Kの主ビヒクルの試料を室温および140°F(60℃)でのエージングで観察した。実施例II−Kは室温および140°F(60℃)の両方で5日後に2相に分離した。実施例II−Cは室温で82日後に2相に分離した。実施例II−Bは室温で99日後に沈殿の発生が始まった。残りのすべての試料は室温で99日後に安定のままであった。実施例II−BからII−Jは140°F(60℃)で99日後にわずかに沈殿を生じた。これらの結果は表2に含まれている。
【0097】
【表010】

【0098】
2週間エージングした浴中でコーティングされたパネルから得られたデータ。コーティング表面の相対粗度を表面分析計Model 21−9010−01、Federal Products, Inc.で測定する。報告された数字は平均粗度、すなわち表面を横切って動く針によって決定されるセンターラインから表面の任意の点までの平均垂直距離であり、マイクロインチ(上記表に示すように/ナノメートル)で表される。数字が小さいほど平滑度が高いことを示す。これらのデータは340°F(171℃)で30分間硬化したパネルから得られた。
アセトンを染み込ませた布で硬化コーティング表面を前後にきつく擦った。報告された数字は金属表面を露出するのに必要とされる往復(double rubs)の回数である。これらのデータは、310°F(154.5℃)で30分間硬化したパネルから得られた。
NAは「適用できない(Not Applicable)」である。なぜなら電着浴を調製するためにペーストの形態のジブチル錫オキシドを触媒として従来の方法で添加したからである。
9−11酸としてHightstown、New JerseyのNL Industrial Chemicalsから市販されている。これは9,11および9,12オクタデカンジエン酸である。
【0099】
実施例III
実施例IIIは、ジブチル錫オキサイドとジブチル錫ジオレエートとの組み合わせを使用すると、総錫含量が総浴固形分の0.34%と少なくても良好な特性を与え得ることを示す。
【0100】
カチオン性顔料ペーストを以下の成分から調製した:
【0101】
【表011】

【0102】
ペーストをHegman値が7、かつ固形分が60%となるまでサンドミルにかけた。
【0103】
カチオン性電着浴を以下の成分から調製した:
【0104】
【表012】

【0105】
実施例IIに記載のように、浴を20%限外濾過し、脱イオン水で置き換えた。リン酸亜鉛処理鋼パネルを275ボルトで2分間89°F(31.7℃)で0.95ミルのフィルム厚に電着塗装し、310°F(154℃)で30分間焼き付けした。実施例IIに記載のようなアセトン耐性は>100(往復摩擦)であった。2週間攪拌して、電着し、そして340°F(171℃)で30分間焼き付けした。実施例IIに記載のようなそのRは8.4μ−インチであった。
【0106】
実施例IV
この実施例は総固形分の0.45%の錫を含む浴を記載し、ここでジブチル錫ジオレエートは独立したマイクロ流動化(microfluidized)脂肪アミン乳濁液として添加され、そして次にジブチル錫オキシドと組み合わせて使用される。
【0107】
【表013】

【0108】
酢酸を室温でRhodameentm C−5と水の混合物に、pH6まで添加した。次いでジブチル錫ジオレエートを混合物に加え、そして乳濁液をマイクロ流動化(20,000psi、1パス)に供した。この結果ジブチル錫ジオレエートの安定な乳濁液が得られた。固形分は29.9%であった。
【0109】
カチオン電着浴を以下の成分から調製した:
【0110】
【表014】

【0111】
PPG Industries Inc.から市販の顔料ペースト。これは27.2%のTiO、1.4%のカーボンブラック、15.9%のケイ酸アルミニウム、5.7%の塩基性ケイ酸鉛、および3.8%のジブチル錫オキシドを含む。
【0112】
実施例IIに記載のように、浴を20%限外濾過し、脱イオン水で置き換えた。リン酸亜鉛処理鋼パネルを275ボルトで2分間86°F(30℃)で0.93ミルのフィルム厚に電着塗装した。310°F(154℃)で30分間焼き付けした。実施例IIに記載のようなアセトン耐性は>100(往復摩擦)であった。2週間攪拌して、電着塗装し、そして340°F(171℃)で30分間焼き付けし、実施例IIに記載のようなそのRは7.8μ−インチであった。
【0113】
上述した通りであるので、本発明によれば、以下の組成物などが提供される。
【0114】
1.(a)カソード上に電着可能な、活性水素を含有し、カチオン性塩の基を含有する樹脂;(b)キャップ化ポリイソシアネート硬化剤;および(c)ジオルガノ錫ジカルボキシレートを含有する電着可能組成物であって、ここで該ジカルボキシレートが14個から22個の炭素原子を有する少なくとも1つの長鎖カルボキシレートであり、そして該ジオルガノ錫ジカルボキシレートが該電着可能組成物中に該電着可能組成物の総固形分の重量を基準として少なくとも0.01重量%の錫の量で存在する、組成物。
【0115】
2.前記活性水素を含有し、カチオン性塩の基を含有する樹脂がポリエポキシドから誘導される、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0116】
3.前記ポリエポキシドが多価フェノールのポリグリシジルエーテルである、上記項2に記載の電着可能組成物。
【0117】
4.前記カチオン性塩の基がアミン塩の基である、上記項2に記載の電着可能組成物。
【0118】
5.前記アミン塩の基が、ギ酸、酢酸、乳酸、リン酸、スルファミン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸で中和された塩基性窒素基から誘導される、上記項4に記載の電着可能組成物。
【0119】
6.前記長鎖カルボキシレートが14個から18個の炭素原子を有する、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0120】
7.前記長鎖カルボキシレートが16個から18個の炭素原子を有する、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0121】
8.前記ジカルボキシレートが、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、9,11−オクタデカジエン酸、およびそれらの混合物からなる群のカルボキシレート誘導体から選択される少なくとも1つの長鎖カルボキシレートである、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0122】
9.前記長鎖カルボキシレートがオレイン酸由来である、上記項8に記載の電着可能組成物。
【0123】
10.前記ジカルボキシレートが、14個から22個の炭素原子を有する1つの長鎖カルボキシレート、および13個未満の炭素原子を有する1つのカルボキシレートである、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0124】
11.前記ジカルボキシレートが、14個から22個の炭素原子を有する1つ以上の長鎖カルボキシレートと13個未満の炭素原子を有する1つ以上のカルボキシレートとの混合物から構成される、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0125】
12.前記ジオルガノ錫ジカルボキシレート中のアルキル基がブチル基である、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0126】
13.前記ジオルガノ錫ジカルボキシレートが、14個から22個の炭素原子を有する少なくとも1つの長鎖カルボキシレートとジブチル錫オキシドとを1:1より大きいモル比で反応させた反応生成物である、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0127】
14.前記活性水素を含有し、カチオン性塩の基を含有する樹脂が、主ビヒクル樹脂固形分の重量を基準にして50〜75重量%の量で存在する、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0128】
15.前記キャップ化ポリイソシアネート硬化剤が、主ビヒクル樹脂固形分の重量を基準にして25〜50重量%の量で存在する、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0129】
16.前記ジオルガノ錫ジカルボキシレートが、前記電着組成物の総固形分の重量を基準にして0.01〜1.5重量%の錫の量で存在する、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0130】
17.鉛を含む、上記項16に記載の電着可能組成物。
【0131】
18.120℃から190℃の温度範囲で硬化可能である、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0132】
19.前記ジオルガノ錫ジカルボキシレートが室温で液体である、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0133】
20.ジブチル錫オキシドをさらに含む、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0134】
21.前記ジオルガノ錫ジカルボキシレートが、安定なホモジナイズされた乳濁液の形態で電着可能組成物中に配合される、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0135】
22.前記ジオルガノ錫ジカルボキシレートが式(I):
【0136】
【化002】

【0137】
で示される構造を有する上記項1に記載の電着可能組成物であって、ここで該構造が模式的であり、結合が実際の結合角を表すことを意図せず、そしてここで有機基R、R、R、およびRのうち任意の2つが同じかまたは異なる、飽和または不飽和の、直鎖または分岐鎖の、カルボキシレートラジカル(そのうちの少なくとも1つが14個から22個の炭素原子を含む)であり、そしてジカルボキシレートではないR、R、R、およびRのうち他の2つの「R」有機基が、同じかまたは異なるアルキル;シクロヘキシルのようなシクロアルキル、フェニルのようなアリール;ならびに置換アルキルおよびアリールであり、ここで該置換基は硬化反応に悪影響を与えない、
組成物。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明によれば、高性能の電着可能組成物が提供される。より具体的には、例えば、以下の組成物などが提供される。
【0139】
1.(a)カソード上に電着可能な、活性水素を含有し、カチオン性塩の基を含有する樹脂;(b)キャップ化ポリイソシアネート硬化剤;および(c)ジオルガノ錫ジカルボキシレートを含有する電着可能組成物であって、ここで該ジカルボキシレートが14個から22個の炭素原子を有する少なくとも1つの長鎖カルボキシレートであり、そして該ジオルガノ錫ジカルボキシレートが該電着可能組成物中に該電着可能組成物の総固形分の重量を基準として少なくとも0.01重量%の錫の量で存在する、組成物。
【0140】
2.前記活性水素を含有し、カチオン性塩の基を含有する樹脂がポリエポキシドから誘導される、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0141】
3.前記ポリエポキシドが多価アルコールのポリグリシジルエーテルである、上記項2に記載の電着可能組成物。
【0142】
4.前記カチオン性塩の基がアミン塩の基である、上記項2に記載の電着可能組成物。
【0143】
5.前記アミン塩の基が、ギ酸、酢酸、乳酸、リン酸、スルファミン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸で中和された塩基性窒素基から誘導される、上記項4に記載の電着可能組成物。
【0144】
6.前記長鎖カルボキシレートが14個から18個の炭素原子を有する、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0145】
7.前記長鎖カルボキシレートが16個から18個の炭素原子を有する、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0146】
8.前記ジカルボキシレートが、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、9,11−オクタデカジエン酸、およびそれらの混合物からなる群のカルボキシレート誘導体から選択される少なくとも1つの長鎖カルボキシレートである、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0147】
9.前記長鎖カルボキシレートがオレイン酸由来である、上記項8に記載の電着可能組成物。
【0148】
10.前記ジカルボキシレートが、14個から22個の炭素原子を有する1つの長鎖カルボキシレート、および13個未満の炭素原子を有する1つのカルボキシレートである、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0149】
11.前記ジカルボキシレートが、14個から22個の炭素原子を有する1つ以上の長鎖カルボキシレートと13個未満の炭素原子を有する1つ以上のカルボキシレートとの混合物から構成される、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0150】
12.前記ジオルガノ錫ジカルボキシレート中のアルキル基がブチル基である、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0151】
13.前記ジオルガノ錫ジカルボキシレートが、14個から22個の炭素原子を有する少なくとも1つの長鎖カルボキシレートとジブチル錫オキシドとを1:1より大きいモル比で反応させた反応生成物である、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0152】
14.前記活性水素を含有し、カチオン性塩の基を含有する樹脂が、主ビヒクル樹脂固形分の重量を基準にして約50〜75重量%の量で存在する、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0153】
15.前記キャップ化ポリイソシアネート硬化剤が、主ビヒクル樹脂固形分の重量を基準にして約25〜50重量%の量で存在する、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0154】
16.前記ジオルガノ錫ジカルボキシレートが、前記電着組成物の総固形分の重量を基準にして約0.01〜1.5重量%の錫の量で存在する、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0155】
17.鉛を含む、上記項16に記載の電着可能組成物。
【0156】
18.約300°F〜340°F(148.8℃〜171.1℃の温度範囲で硬化可能である、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0157】
19.前記ジオルガノ錫ジカルボキシレートが室温で液体である、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0158】
20.ジブチル錫オキシドをさらに含む、上記項1に記載の電着可能組成物。
【0159】
21.前記ジオルガノ錫ジカルボキシレートが、安定なホモジナイズされた乳濁液の形態で電着可能組成物中に配合される、上記項1に記載の電着可能組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジオルガノ錫ジカルボキシレートを含む電着可能コーティング組成物。

【公開番号】特開2006−188716(P2006−188716A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66763(P2006−66763)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【分割の表示】特願平9−523809の分割
【原出願日】平成8年12月23日(1996.12.23)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】