ジクロフェナクゲル
本発明は、優れた経皮フラックス特性を有し、例えば変形性関節症における、痛みの局所治療に使用することができる、ジクロフェナクナトリウムを含むゲル製剤を提供する。
【発明の詳細な説明】
【関連出願に対する相互参照】
【0001】
本出願は、米国仮出願第60/829,756号(2006年10月17日出願)の優先権を主張する。前記出願の教示はすべての目的についてその全体において参照することにより本明細書に組み込まれる。
【発明の分野】
【0002】
本発明は、一般に、変形性関節症を治療する組成物及び方法に関するものである。
【発明の背景】
【0003】
1.変形性関節症
変形性関節症(OA)は、関節軟骨の進行性変性を特徴とする慢性関節疾患である。症状は、関節痛及び運動障害を含む。OAは、世界的に身体障害の主要原因の一つであり、健康管理システムに対する主要な財政負担である。それは、米国だけで1500万人を超える成人を苦しめていると見積もられている。Boh L.E.Osteoarthritis.In:DiPiro J.T.,Talbert R.L.,Yee G.C.,et al.,editors.Pharmacotherapy:a pathophysiological approach.4th ed.Norwalk(CT):Appleton & Lange,pp.1441−59(1999)を参照のこと。
【0004】
経口非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、OAマネージメントの柱である。それらは、鎮痛、抗炎症及び解熱作用を有し、痛み及び炎症の減少に有用である。しかしながら、NSAIDSは、悪心、嘔吐、消化性潰瘍疾患、GI(胃腸)出血、及び心臓血管イベントを含む重篤な潜在的副作用を伴う。
【0005】
局所NSAIDsは、全身性副作用のリスクを減少又は排除しながら、局部の治療的有用性を達成する可能性を提供する。OA治療へのこのアプローチに広範囲な興味が存在していたが、しかしOA治療において局所NSAIDsの効能を支持するデータは、限られている。例えば、特にOA治療の使用のために試験された様々な局所NSAIDsの13の無作為化プラセボ対照試験(RCT’s)の研究では、それらがOAの慢性的使用には一般に効果的ではなかったことが結論された。(Lin et al.,Efficacy of topical non−steroidal anti−inflammatory drugs in the treatment of osteoarthritis:meta−analysis of randomized controlled trials,BMJ,doi:10.1136/bmj.38159.639028.7C(2004))。
【0006】
一般にOA治療の効能を評価するのに使用される3つの結果(outcomes)が存在する。すなわち痛み、身体機能、及び患者全般評価(patient global assessment)である。Bellamy N.,Kirwan J.,Boers M.,Brooks P.,Strand V.,Tugwell P.,et al.Recommendations for a core set of outcome measures for future phase III clinical trials in knee,hip and hand osteoarthritis.Consensus development at OMERACT III.,J Rheumatol,24:799−802(1997)を参照のこと。慢性的使用に適するためには、療法は、一般に持続した時間期間にわたりこれら3つの可変要素に効能を示さなければならない。例えば米国においては、食品医薬品局(FDA)は、OA療法が12週の期間にわたりプラセボを超える優位性を示すことを要求する。OA治療における局所NSAIDsに対する大きな潜在的可能性にもかかわらず、本出願を提出する時点において、米国でそのような治療は承認されていない。
【0007】
米国特許第4,575,515号及び第4,652,557号明細書には、局所NSAID組成物が開示されており、その一つが、1.5%ジクロフェナクナトリウム、45.5%ジメチルスルホキシド、11.79%エタノール、11.2%プロピレングリコール、11.2%グリセリン、及び水からなり、慢性OA治療に有効であることが示されている。Towheed,Journal of Rheumatology 33:3 567−573(2006)及び更にOregon Evidence Based Practice Center entitled“Comparative Safety and Effectiveness of Analgesics for Osteoarthritis”,AHRQ Pub.No.06−EHC009−EFを参照のこと。この特定の組成物は、本明細書の実施例の項において、「比較液体製剤」又は「比較例」と呼ばれる。しかしながら、これらの先行発明の組成物は、なかなか乾燥せず流れやすいという欠点を有する。それらはまた、OAにおける効能を達成するために、1日当たり3〜4回の頻回投与を必要とし、それが、潜在的な皮膚刺激物への暴露を増して皮膚刺激のリスクを増す。
【0008】
一般に、局所NSAIDsがOAにおいてそれらの期待を満たすことができないのは、一つには、治療効果を及ぼすのに十分な量でしかも治療自体が耐えられるような仕方で、皮膚を通して分子を送達することに伴う困難性のためであり得る。一般に、OAの臨床効能では、関節の滑膜及び滑液を含む下層の炎症性組織中へ、十分な量で、有効成分の吸収及びその浸透が必要であると信じられている。Rosenstein,Topical agents in the treatment of rheumatic disorders,Rheum.Dis.Clin North Am.,25:899−918(1999)を参照のこと。
【0009】
しかしながら、皮膚は、薬物浸透への大きなバリアであり、40年近くの広範な研究にもかかわらず、経皮的な薬物送達の成功は、一般に依然としてかなり限られたままであり、少数の経皮薬物製品だけが市販されている。
【0010】
皮膚に適用される局所投薬形態と関連して、賦形剤−皮膚、賦形剤−薬物、及び薬物−皮膚を含めて、多数の相互作用が、起こる可能性がある。それぞれが、局所投薬形態からの活性薬剤放出に影響を及ぼし得る(Roberts,M.S.:Structure−permeability considerations in percutaneous absorption.In Prediction of Percutaneous Penetration,ed.by R.C.Scott et al.,vol.2,pp.210−228,IBC Technical Services,London,1991)。従って、有効成分、賦形剤、pH、及び活性物の賦形剤対皮膚中への比溶解度を含めて、様々な要因が、吸収速度及び浸透深さに影響を及ぼし得る(Ostrenga J.et al.,Significance of vehicle composition I:relationship between topical vehicle composition,skin penetrability,and clinical efficacy,Journal of Pharmaceutical Sciences,60:1175−1179(1971))。より具体的には、薬物の溶出速度、展延性、粘着性、及び膜透過性を変える能力などの賦形剤属性だけでなく、溶解度、サイズ及び電荷などの薬物属性も、透過性への著しい影響を有し得る。
【0011】
製剤においては、一見ささいな変化の程度から観察される重要な可変性が存在する。例えば、Naitoは、組成物に使用されるゲル化剤をただ変えることによる、局所NSAID製剤の間での浸透の重要な可変性を明らかにしている(Naito et al.,Percutaneous absorption of diclofenac sodium ointment,Int.Jour.of Pharmaceutics,24:115−124(1985))。同様に、Hoは、アルコール、プロピレングリコール、及び水の割合を変えることによる、浸透の重要な可変性に注目している(Ho et al.,The influence of cosolvents on the in−vitro percutaneous penetration of diclofenac sodium from a gel system,J.Pharm.Pharmacol.,46:636−642(1994))。そのような変化が、はっきり異なる3つの可変要素、すなわち(i)賦形剤中への薬物の溶解度、(ii)分配係数、及び(iii)皮膚構造の変化に対する効果に影響を及ぼすことが注目された。
【0012】
Ho et al.(1994)はまた、(i)賦形剤のpH、(ii)薬物の溶解度、及び(iii)ゲルマトリックスの粘度が、ゲル投薬形態からの浸透に影響し得ることに注目した。pH値は、異なる浸透特性を有する薬物のイオン化形態と非イオン化形態の間の平衡に影響を及ぼす(Obata,International Journal of Pharmaceutics,89:191−198(1993))。粘度は、ゲルマトリックスを通りぬける薬物の拡散及び賦形剤から皮膚中への薬物の放出に影響を及ぼし得る。賦形剤中への薬物の溶解度は、製剤と受容者(recipient)の膜/組織との間の薬物の分配係数に影響を及ぼすであろう(Ho et al.1994)。
【0013】
化学的浸透促進剤は、皮膚バリアを可逆的に低くする一つの手段である。他の方法としては、イオン導入法、超音波、電気穿孔法、加熱、及び顕微針が挙げられる。少なくとも250の化学薬品が、皮膚透過性を増加し得る促進剤として確認されている。一般的カテゴリーとしては、ピロリドン、脂肪酸、エステル及びアルコール、スルホキシド、精油、テルペン、オキサゾリジン、界面活性剤、ポリオール、エイゾン及び誘導体、並びに表皮酵素が挙げられる。
【0014】
浸透促進剤が皮膚バリア機能を低下させるメカニズムは、よく分かっていない(Williams and Barry“Penetration Enhancers”Advanced Drug Delivery Reviews 56:603−618(2004)を参照のこと)。もっともメカニズムを3つの広いカテゴリー、すなわち脂質崩壊、角質細胞透過性の増加、及び薬物の組織中への分配促進、に分類することができることが提案されてはいるが。
【0015】
化学的浸透促進剤の使用についての難問は、耐えられるレベルで薬物輸送の著しい又は治療的な促進を誘発することがほとんどないように見えるということである。これは、皮膚バリアを崩壊する作用が、皮膚刺激を引き起こす潜在能力を有するからである。崩壊の増加とともに、皮膚刺激がより大きい問題となるであろう。このことは、局所OA治療については特に問題である。その場合は、目標が、関節組織中へ活性物を浸透させることであり、薬物が疾患の本質により長期基準で使用されなければならないからである。本発明者らは、これまでの既知の組成物よりも、単位用量当たり、より多くの有効成分を送達する方法及び組成物を開発した。そしてこれにより、皮膚刺激の発生率がより低くなることが期待されるであろう。
【0016】
本発明の組成物は、一般的に使用されるNSAIDであるジクロフェナクナトリウムを使用する。ジクロフェナクは、4種の異なる塩を有し、それらは異なる溶媒を使用する溶液中の透過度において著しい可変性を示す。例えば、Minghettiは、有機塩基とのジクロフェナク塩が局所適用に対して最もよいということを教示している(Minghetti et al.,Ex vivo study of trandermal permeation of four diclofenac salts from different vehicles,Jour.of Pharm.Sci,DOI 10.1002/jps.20770(2007))。
【0017】
他の研究では、ジクロフェナクナトリウムの送達手段としてマイクロエマルション製剤が提示されている(Kantarci et al.,In vitro permeation of diclofenac sodium from novel microemulsion formulations through rabbit skin,Drug Development Research,65:17−25(2005);及びSarigullu I.et al.,Transdermal delivery of diclofenac sodium through rat skin from various formulations,APS PharmSciTech,7(4)Article 88,E1−E7(2006))。
【0018】
他の局所ジクロフェナク組成物は、米国特許第4,543,251号明細書、米国特許第4,670,254号明細書、米国特許第5,374,661号明細書、米国特許第5,738,869号明細書、米国特許第6,399,093号明細書及び米国特許第6,004,566号明細書を含めて、多数の特許に開示されている。米国特許出願第20050158348号では、ゲル製剤用に様々な溶媒が広く使用されることを指摘するが、しかしそれらは皮膚刺激のために将来性が制限されることに注目している。この引用文献ではまた、皮膚上層部において溶液から活性物が沈殿するので、ゲル組成物は迅速な作用停止を伴い、より深部の組織中での抗炎症作用が制限されることにも注目している。本発明のゲルは、その反対のこと、すなわち長期の作用及びより深部の組織中で抗炎症作用を達成するように設計される。
【0019】
2.ジクロフェナクのゲル製剤
これまでの引用文献のどれにも、本発明の組成物又はOA治療におけるそれらの使用が開示されていない。むしろ、これらの引用文献では、慢性的使用のための局所OA治療、及び一般的な経皮輸送の複雑さ(そこでは、組成物要素又はそれらの相対的割合を変えることによって透過性の著しい可変性が観察される)に関して、未だ満たされていない顕著な必要性が強調されている。
【0020】
前述のことに照らして、OA治療に長期間使用するのに適した局所NSAIDの開発において考慮すべき改良の必要性が存在する。課題は、長期基準でOAを治療するのに十分な濃度で活性薬剤を下層の組織へ送達し、一方では皮膚バリアを崩壊することによって引き起こされる耐えられない皮膚刺激の発生を低減又は最小化して、患者の薬剤服用遵守につながりそれを促進するような製剤及び用量を提供する、至適製剤を開発することであった。本発明は、これらの及びその他の必要性を満たすものである。
【発明の要約】
【0021】
本発明は、以前に記載された組成物に比較するとき、よりよい乾燥時間、より高い粘度、増加した経皮フラックス(transdermal flux)、及びインビボでのより大きい薬物動態学的吸収(pharmacokinetic absorption)を表す、変形性関節症治療のためのジクロフェナクナトリウムゲル製剤を提供することにより先行技術の不利な点を克服するものである。更に、本発明の好ましいジクロフェナクナトリウムゲル製剤は、粘度における任意の実質的変化の欠如、低温での相分離及び結晶化の不在、並びに低レベルの不純物に反映されるように、六(6)カ月での好ましい安定性を含む他の利点を提供する。その上、本ゲル製剤は、以前に記載された組成物と比較して、皮膚によく粘着し、容易に展延し、より速く乾燥し、より大きいインビボでの吸収を示す。従って、本発明のゲル製剤は、以前に記載された製剤と比較して、変形性関節症治療のために皮膚を通してのジクロフェナクナトリウム送達の優れた手段を提供する。
【0022】
そのようなものとして、或る実施態様においては、本発明は:
(i)ジクロフェナクナトリウム;
(ii)DMSO;
(ii)エタノール;
(iii)プロピレングリコール;
(v)増粘剤;
(vi)場合によりグリセロール;及び
(vii)水
を含むか、から本質的になるか、又はからなるゲル製剤を提供する。
【0023】
別の実施態様においては、本発明は、関節の痛みに苦しむ対象者(subject)の変形性関節症を治療する方法であって、前記方法が:
(i)ジクロフェナクナトリウム;
(ii)DMSO;
(ii)エタノール;
(iii)プロピレングリコール;
(v)増粘剤;
(vi)場合によりグリセロール;及び
(vi)水
を含むか、から本質的になるか、又はからなる治療的有効量のゲル製剤を、対象者の苦痛関節域に局所投与し、それにより変形性関節症を治療することを含む、前記方法を提供する。
【0024】
更なる実施態様は、痛み治療のための医薬の製造におけるジクロフェナクナトリウムの使用であって、前記医薬が:
(i)ジクロフェナクナトリウム;
(ii)DMSO;
(ii)エタノール;
(iii)プロピレングリコール;
(v)増粘剤;
(vi)場合によりグリセロール;及び
(vii)水
を含むか、から本質的になるか、又はからなるゲル製剤を含む、前記使用を提供する。
【0025】
更に更なる実施態様においては、本発明は、ジクロフェナクナトリウム溶液、並びにセルロースポリマー、カルボマーポリマー、カルボマー誘導体、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、多糖類、及びその混合物から選択することができる少なくとも1の増粘剤、を含むか、から本質的になるか、又はからなるゲル製剤を提供する。
【0026】
この実施態様の観点においては、ジクロフェナクナトリウム溶液は:
(i)ジクロフェナクナトリウム;
(ii)DMSO;
(ii)エタノール;
(iii)プロピレングリコール;
(iv)場合によりグリセロール;及び
(v)水
を含むか、から本質的になるか、又はからなる。
【0027】
上記の実施態様の観点においては、増粘剤は、セルロースポリマー、カルボマーポリマー、カルボマー誘導体、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、多糖類、及びその混合物から選択することができる。
【0028】
上記のゲル実施態様の観点においては、ジクロフェナクナトリウムは、1〜5%w/w、例えば1、2、3、4、又は5%w/wで存在し;DMSOは、30〜60%w/wで存在し;エタノールは、1〜50%w/wで存在し;プロピレングリコールは、1〜15%w/wで存在し;グリセロールは、0〜15%w/wで存在し、増粘剤は、ゲルの最終粘度が10と50000センチポアズの間にあるように存在し;及び水は添加されて、100%w/wになる。他の観点においては、グリセロールは、0〜4%w/wで存在する。更なる観点においては、グリセロールは、存在しない。
【0029】
上記の実施態様の別の観点においては、ジクロフェナクナトリウムは、2%w/wで存在し;DMSOは、45.5%w/wで存在し;エタノールは、23〜29%w/wで存在し;プロピレングリコールは、10〜12%w/wで存在し;ヒドロキシプロピルセルロース(HY119)は、0〜6%w/wで存在し;グリセロールは、0〜4%で存在し、及び水は、100%w/wになるように添加される。他の観点においては、ゲル製剤中にグリセロールは存在しない。更なる観点においては、ゲルの最終粘度は、500〜5000センチポアズである。
【0030】
上記のゲル製剤の特徴は、そのような製剤が皮膚に適用されるとき、以前に記載された組成物、例えば米国特許第4,575,515号及び第4,652,557号明細書のものよりも、乾燥速度がより速く、経皮フラックスがより高いことである。好ましい製剤の更なる特徴は、6カ月の間に0.04%未満だけ分解するジクロフェナクナトリウムの分解の減少、及びpH6.0〜10.0、例えば約pH9.0を含む。
【0031】
特定の実施態様においては、本発明のゲル製剤は、1〜5%のグリセロールを含み、その場合、ゲル製剤は、皮膚に適用されるとき、比較液体製剤より大きい乾燥速度と経皮フラックスを有する。ある観点においては、乾燥速度は、結果的に24時間後に出発量の多くとも50%の残渣をもたらし、経皮フラックスは、有限投与若しくは無限投与又は両方でフランツセル(Franz cell)法により測定するとき、比較液体製剤より1.5以上大きい。
【0032】
他の実施態様においては、ゲル製剤及びその使用方法は、製剤を局所に適用するとき、12週にわたり痛みの減少を与える。様々な観点においては、ゲル製剤は、1日2回適用され、痛みは、変形性関節症に起因し得る。
【0033】
これらの及びその他の目的、実施態様、並びに利点は、あとに続く図及び詳細な記載とともに読んだときに、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】HEC及びPVPゲルのフラックス速度の棒グラフを示す。フランツ拡散セルは、フランツセル当たり15mgで投与された。
【0035】
【図2】カルボポール(Carbopol)981及びウルトレツ(Ultrez)10で作られるゲルのフラックス速度の棒グラフを示す。フランツ拡散ゲルは、フランツセル当たり200μLで投与された。
【0036】
【図3】カルボポール971及びカルボポール981ゲルのフラックス速度の棒グラフを示す。フランツ拡散セルは、セル当たり50μLで投与された。
【0037】
【図4】様々なゲル及び比較液体製剤のフラックス速度の棒グラフを示す。フランツセルは、フランツセル当たり10mgで投与された。
【0038】
【図5】様々なゲル及び比較液体製剤のpHのフラックス速度に対する影響を説明する棒グラフを示す。フランツ拡散セルは、セル当たり7mgで投与された。
【0039】
【図6】様々なゲルのフラックス速度の棒グラフを示す。フランツセルは、フランツセル当たり7mgで投与された。
【0040】
【図7】様々なジクロフェナク製剤のフラックス速度の棒グラフを示す。比較液体製剤(1.5%ジクロフェナクナトリウム)は、フランツセル当たり20mgで投与され、Solaraze(商標)(市販の3%ジクロフェナクナトリウムゲル)は、フランツセル当たり10mgで投与され、及び本発明の製剤F14/2は、フランツ拡散セル当たり15mgで投与された。この投与量で、すべてのセルが、ジクロフェナクナトリウムの当量で投与されたことになる。
【0041】
【図8】多回投与実験におけるフラックス速度の棒グラフを示す。比較液体製剤は、0、4、8、及び12時間に、フランツセル当たり0.9mgで投与された。本発明の製剤F14/2は、0及び6時間にフランツセル当たり1.5mgで投与された。
【0042】
【図9】様々なジクロフェナク製剤のフラックス速度の棒グラフを示す。フランツセルは、セル当たり20mgで投与された。
【0043】
【図10】Baboota et al.において開示されたゲル及び本発明のゲルからのジクロフェナクフラックス速度に関するデータの棒グラフを示す。フランツセルは、セル当たり4mgで投与された。
【0044】
【図11】ジクロフェナクナトリウムの3つのゲル製剤及び1つの液体製剤の時間的乾燥プロファイルを示す。
【0045】
【図12】液体又はゲル製剤のいずれかを投与した後のジクロフェナクナトリウムのインビボ定常状態の血漿濃度を示す。
【発明の詳細な説明】
【0046】
I.定義
用語「経皮(transdermal)」は、本明細書においては、一般に皮膚を通して起こるプロセスを包含するために使用される。用語「経皮(transdermal)」及び「皮膚を通しての(percutaneous)」は、本明細書全体を通じて交換可能に使用される。
【0047】
用語「局所製剤」は、本明細書においては、一般に皮膚又は粘膜に適用することができる製剤を包含するために使用される。局所製剤は、例えば、患者には治療的有用性を、又は消費者には化粧品的利益を与えるために使用することができる。局所製剤は、物質の局所投与にも経皮投与にも使用することができる。
【0048】
用語「局所投与」は、本明細書においては、一般に治療的に活性な薬剤などの物質の皮膚又は身体の局所部位への送達を包含するために使用される。
【0049】
用語「経皮投与」は、本明細書においては、一般に皮膚を通しての投与を包含するために使用される。経皮投与は、しばしば活性物の全身性送達が望ましい場合に適用される。もっとも経皮投与はまた、最小の全身性吸収の状態で皮膚の下層の組織へ活性物を送達するためにも有用であり得るのだが。
【0050】
用語「浸透促進剤」は、本明細書においては、一般に活性薬剤(例えば医薬)などの分子の皮膚中への又は皮膚を通しての輸送を向上させる剤(agent)を包含するために使用される。化合物の目標への送達の必要性を生み出す様々な状態が、皮膚中又は皮膚下のいずれかの身体の異なる部位で起こり得る。例えば、変形性関節症の治療においては、治療的有用性を達成するため、比較的深部に横たわる関節組織中への活性薬剤の送達が必要であり得る。従って、「浸透促進剤」は、皮膚若しくは下層の組織へ直接に、又は全身性分配を通して疾患部位へ間接に、活性薬剤の送達を助けるために使用することができる。浸透促進剤は、純粋物質であることができ又は様々な化学物質の混合物を含むことができる。
【0051】
用語「有限投与」は、本明細書においては、一般に活性薬剤の制限されたリザーバー(reservoir)の適用を包含するために使用される。活性薬剤のリザーバーは、時間とともに使い果たされ、最大吸収速度が達成された後に能動的吸収速度の先細りをもたらす。
【0052】
用語「無限投与」は、本明細書においては、一般に活性薬剤の大きいリザーバーの適用を包含するために使用される。リザーバーは、時間とともに著しく使い果たされるわけではなく、それにより能動的吸収の長期連続的定常状態を提供する。
【0053】
本明細書において使用される用語「比較液体形成物」又は「比較例」は、1.5%ジクロフェナクナトリウム、45.5%ジメチルスルホキシド、11.79%エタノール、11.2%プロピレングリコール、11.2%グリセリン、及び水からなる、米国特許第4,575,515号及び第4,652,557号明細書に記載される製剤のような製剤を指す。
【0054】
II.ゲル製剤
1.ゲル製剤の成分
時間的安定性を維持しながら、乾燥時間、経皮フラックスの増加、及びインビボでのより大きい薬物動態学的吸収、より高い粘度、皮膚への良好な粘着性、及び易展延性という改良された特性を有するジクロフェナクナトリウムゲル製剤を提供するために、本発明者らは、以下の成分の驚くほど有利な組み合わせを、本発明のゲル組成物の製剤において使用することができることを見出した。
【0055】
本発明は、活性薬剤、好ましくは非ステロイド性抗炎症薬又は薬学的に許容可能なその塩を含むゲル製剤を提供する。より好ましくは、非ステロイド性抗炎症は、ナトリウム、カリウム、及びジエチルアミン形態を含む様々な塩形態で存在することができる、ジクロフェナクである。好ましい実施態様においては、ジクロフェナクのナトリウム塩が使用される。ジクロフェナクナトリウムは、約0.1%〜10%の範囲で、例えば1、2、3、4、又は5%w/wで存在することができる。ナトリウム塩の使用は、より高い塩濃度では、特定の増粘剤との相互作用によりゲルマトリックスの崩壊が引き起こされ得るという点で、水性ゲルの安定性に関して難問を生じることが知られている。
【0056】
別の実施態様においては、本発明は、浸透促進剤を含む。浸透促進剤は、ジメチルスルホキシド(「DMSO」)又はその誘導体であることができる。DMSOは、重量で1%〜70%、より好ましくは25%と60%の間、例えば25、30、40、45、50、55、又は60%w/wの量で存在することができる。好ましくは、DMSOは、本発明においては、約40〜約50%w/w、例えば41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50%、並びに間にある全部分、例えば44、44.5、45、45.5、46、及び46.5%などの濃度で使用される。
【0057】
特定の実施態様においては、本発明は、低級アルカノール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール又はその混合物を含む。特定の実施態様においては、アルカノールは、約1〜約50%w/wで存在する。好ましくは、エタノールは、約1〜50%w/w、例えば1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50%w/w、及び間にある全部分で使用される。
【0058】
特定の実施態様においては、本発明は、多価アルコール、例えばグリコールを含む。適したグリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキサントリオール及びその組み合わせが挙げられる。好ましくは、プロピレングリコールは、約1〜15%w/w、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15%w/w、及び間にある全部分で使用される。
【0059】
特定の実施態様においては、本発明は、グリセロール(本明細書においては、グリセリンともいう)を0〜12%w/wの濃度で含む。好ましくは、グリセロールは、0〜4%w/wで、例えば0、1、2、3、又は4%w/w、及び間にある全部分で使用される。ある実施態様においては、製剤中に、グリセロールは使用されない。
【0060】
好ましい実施態様においては、本発明は、ジクロフェナク溶液及び少なくとも1のゲルを作る増粘剤を含む製剤を提供する。本発明の少なくとも1の増粘剤は、アクリルポリマー(例えば、Noveon Inc.of Cleveland,Ohioから市販されているカルボポール(Carbopol)ポリマー、ノベオン(Noveon)ポリカルボフィル及びペムレン(Pemulen)ポリマー乳化剤)、アクリルポリマー誘導体、セルロースポリマー、セルロースポリマー誘導体、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、多糖類又はその混合物であることができる。好ましくは、少なくとも1の増粘剤は、最終粘度が10と50000センチポアズ(cps)の間にあるように使用されるヒドロキシプロピルセルロース(HPC)である。より好ましくは、最終粘度は、500と20000cpsの間にある。
【0061】
本ゲル製剤は、場合により少なくとも1の酸化防止剤及び/又は1のキレート化剤を含むことができる。
【0062】
本発明で使用する好ましい酸化防止剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、リノール酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、アスコルビルトコフェロールマレエート、アスコルビン酸カルシウム、カロテノイド、コウジ酸、チオグリコール酸、トコフェロール、トコフェロールアセテート、トコフェレス(tocophereth)−5、トコフェレス−12、トコフェレス−18、トコフェレス−80、及びその混合物からなる群から選択することができる。
【0063】
好ましいキレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTA二アンモニウム、EDTA二カリウム、EDTAカルシウム二ナトリウム、HEDTA、TEA−EDTA、EDTA四ナトリウム、EDTA三カリウム、リン酸三ナトリウム、クエン酸二アンモニウム、ガラクタル酸、ガラクツロン酸、グルコン酸、グルクロン酸、フミン酸(humic acid)、シクロデキストリン、クエン酸カリウム、EDTMPカリウム、クエン酸ナトリウム、EDTMPナトリウム、及びその混合物からなる群から選択することができる。
【0064】
加えて、本発明の局所製剤はまた、pH調整剤を含むこともできる。或る特定の実施態様においては、pH調整剤は、塩基である。適したpH調整塩基としては、重炭酸塩、炭酸塩、並びに水酸化物、例えば水酸化アルカリ又はアルカリ土類金属及び水酸化遷移金属が挙げられる。あるいは、pH調整剤はまた、酸、酸の塩、又はその混合物であることもできる。更に、pH調整剤はまた、緩衝液であることもできる。適した緩衝液としては、クエン酸塩/クエン酸緩衝液、酢酸塩/酢酸緩衝液、リン酸塩/リン酸緩衝液、ギ酸塩/ギ酸緩衝液、プロピオン酸塩/プロピオン酸緩衝液、乳酸塩/乳酸緩衝液、炭酸塩/炭酸緩衝液、及びアンモニウム/アンモニア緩衝液などが挙げられる。pH調整剤は、組成物のpHを、約pH4.0〜約10.0の間まで、より好ましくは約pH7.0〜約9.5の間まで調整するのに十分な量で存在する。特定の実施態様においては、混合した成分の未調整pHが、8と10の間、例えば9であり、任意のpH調整剤の添加を必要としない。
【0065】
2.ゲル製剤の特性
a)経皮フラックス
下の実施例に示すように、本発明は、以前に記載された製剤と比較する場合、驚くほど有効な経皮フラックスの速度を示すジクロフェナクナトリウムゲル製剤を提供する。
【0066】
従って、或る実施態様においては、本ゲル製剤は、非ステロイド性抗炎症及び少なくとも1の増粘剤を含み、有限投与フランツセル法で測定されるフラックスが比較液体製剤のフラックスより大きいか等しいフラックスを有する。好ましくは、フラックスは、比較液体製剤のフラックスよりも少なくとも1.5倍大きい。換言すれば、(i)非ステロイド性抗炎症及び少なくとも1の増粘剤を含むゲル製剤のフラックス、対(ii)比較液体製剤のフラックス、の比率は、好ましくは、1.0よりも大きく、より好ましくは、少なくとも約1.5である。
【0067】
更なる実施態様においては、本発明は更に、ジクロフェナク溶液及び少なくとも1の増粘剤を含み、有限フランツセル法で測定されるフラックスがジクロフェナク溶液単独のフラックスと少なくとも同等のフラックスを有するジクロフェナクナトリウムゲル製剤を提供する。好ましくは、ジクロフェナクナトリウムゲル製剤は、ジクロフェナクナトリウム溶液単独のフラックスに比べて少なくとも2.0倍大きいフラックスを有する。より好ましくは、本発明は、ジクロフェナクナトリウム溶液単独のフラックスに比べて少なくとも4.0倍大きいフラックスを有するジクロフェナクナトリウムゲル製剤を提供する。換言すれば、(i)ジクロフェナクナトリウムゲル製剤のフラックス、対(ii)ジクロフェナクナトリウム溶液のフラックス、の比率は、少なくとも約1.0、好ましくは少なくとも約2.0、より好ましくは少なくとも約4.0である。
【0068】
更に更なる実施態様においては、本発明は、ジクロフェナクナトリウム及び少なくとも1の増粘剤を含み、複数回有限投与フランツセル法(0及び6時間に2.5mg/cm2で投与する)で測定されるフラックスが24時間で少なくとも0.1μg/hr/cm2、好ましくは、24時間で少なくとも0.2μg/hr/cm2を有するジクロフェナクナトリウムゲル製剤を提供する。
【0069】
b)粘度
別の実施態様においては、本発明は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)及び少なくとも1の増粘剤を含むゲル製剤であって、前記ゲル製剤が少なくとも100cPの粘度を有する、前記ゲル製剤を提供する。好ましくは、ゲル製剤は、少なくとも500cPの粘度を有する。より好ましくは、ゲル製剤は、少なくとも1000cPの粘度を有する。他の実施態様においては、粘度は、5000〜10,000、10,000〜15,000、又は15,000〜20,000cPである。
【0070】
更なる実施態様においては、本発明は、ジクロフェナク溶液及び少なくとも1の増粘剤を含むジクロフェナクゲル製剤であって、前記ゲル製剤が約1000cPの粘度及び多数回有限投与フランツセル法(0及び6時間に2.5mg/cm2)により24時間で測定されるフラックスが少なくとも0.2μg/cm2/hrのフラックスを有する、前記ゲル製剤を提供する。
【0071】
c)安定性
薬物製品組成物の安定性は、薬物開発の期間及び費用、官公庁への提出書類を裏付けるのに必要な研究の性質、並びに最終的な安全性及び承認可能性に著しい影響を有し得る。
【0072】
例えば、組成物中の様々な成分間の相互作用によりゆっくり時間をかけて生じる不純物又は分解産物の量を最小限に抑えることは重要である。このことは、皮膚透過性を増すように設計される組成物においては、特に重要であり得る。
【0073】
従って、ある実施態様においては、本発明は、室温で6カ月の間に1%未満だけ分解するジクロフェナクナトリウムゲル製剤を提供する。より好ましくは、分解速度は、室温で6カ月の間に、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2未満、又は0.1%未満、及び間にある全部分である。
【0074】
d)乾燥時間
米国特許第4,575,515号及び第4,652,557号明細書の組成物などの既に開示された組成物(本明細書においては「比較液体製剤」又は「比較例」と称する)と比較して、本発明の組成物は、薬物のより高い経皮フラックスを達成しながら、より速く乾燥する。皮膚の水分補給が経皮フラックス又は浸透を増すことが知られているので、より高いフラックス速度及びより速い乾燥を、合わせて達成することができることは、驚くべきことである。迅速な蒸発により引き起こされる皮膚の乾燥は、皮膚上に残存する薬物の経皮輸送を減らす傾向があるであろう。等しい量の2つの製品を、反対側の手足で試験する場合、乾燥時間の差は明らかである。三十(30)分以内に、本発明の組成物は、ほとんど完全に乾燥するのに対して、以前に記載された液体製剤は、著しい量が残存する。
【0075】
より定量的に乾燥時間を比較するために、並列比較を行なった。これを達成するために、発明者らは、先行技術の製剤及び本発明の組成物の等しい量(100mg)を、10cm2面積を覆う秤量皿に入れて、時間的に残存量を秤量することにより、製剤の残渣重量を測定した。この方法論を用いて、違いは、直ちに目に見え、4時間では劇的に違ってくる(表11及び図10)。
【0076】
e)薬物動態
本発明の組成物及び米国特許第4,575,515号及び第4,652,557号明細書からの比較組成物についてジクロフェナクナトリウム吸収の比較を、動物で行なった。本発明のゲルは、これらの特許の比較液体組成物よりも、投与量基準当たりで吸収を改良したことが示された。絶対量では、本発明のゲルの臨床用量は、定常状態での最大観測血漿濃度(Cmax)81ng/mL及び濃度曲線下面積(AUC)584ng/mLを送達した。これは、比較組成物に対する12ng/mL及び106ng/mLに匹敵する。
【0077】
これらの結果は、活性薬剤の送達において、賦形剤の特性を支持する。ゲルについての1日当たり二(2)回(全量4.0mL)に比べて、溶液組成物を1日当たり四(4)回投与(全量5.2mL)したにもかかわらず、ゲルについてのより高い数値が見られた。
【0078】
III.ゲル製剤の製造
別の実施態様においては、本発明は、ジクロフェナクナトリウムのゲル製剤を作る方法を提供する。本発明のゲル製剤は、好ましくは次の工程を実施することにより作られる:(i)増粘剤、その誘導体及び/又はその混合物をジメチルスルホキシド中に分散して、1時間撹拌する工程;(ii)ジクロフェナクナトリウムを水性アルコール混合物(例えばエタノール/水混合物)中に溶解する工程;(iii)プロピレングリコール及びグリセロールを(ii)からのNSAID溶液中に分散する工程;並びに(iv)得られたNSAID溶液を増粘剤/ジメチルスルホキシドブレンド中に混合して、周囲温度で1時間撹拌する工程。代替方法としては、本発明のゲル製剤は、次の工程を実施することにより作ることができる:(i)NSAID(例えばジクロフェナクナトリウム)をDMSOのアルコール溶液(例えばエタノール/ジメチルスルホキシド混合物)中に分散する工程;(ii)増粘剤、その誘導体及び/又はその混合物を水/プロピレングリコール/グリセロール溶液中に分散して、1時間撹拌する工程;(iii)(i)からのNSAID溶液を(ii)からの増粘剤ブレンド中に混合して、周囲温度で1時間撹拌する工程。ゲル形成を促進するのを助けるために、これらの混合プロセスの間に、加熱を使用することもできる。
【0079】
ジクロフェナクナトリウムは、約0.1%〜10%w/w、例えば0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、及び9.0%w/wの範囲に存在することができる。
【0080】
IV.使用の方法
本発明の組成物は、慢性的に変形性関節症(OA)の治療に使用するのに特に適している。それらはまた、関節痛、関節軟骨の変性、運動障害、及び硬直(stiffness)を特徴とする他の慢性関節疾患の治療に有用でもあり得る。適した関節としては、膝、肘、手、手首及び股関節が挙げられる。
【0081】
より高いフラックス及びより大きいインビボの吸収という特性によって、本発明の製剤は、以前に記載された製剤より低い投与量で投与することができると考えられる。具体的には、本発明の組成物は、OAの治療において1日2回投与又は1日1回投与で使用することができることが期待される。これは、有意義な改良を表わすであろう。何故ならより低い投与量が、慢性病態を治療することにおいて重要な因子である、患者のよりよい薬剤服用遵守を伴うからである。
【0082】
1投与当たりに適した量は、一般には、個人ごとに及び関節ごとに変わる関節のサイズに依存するであろうが、しかしながら、適した量は、0.5μL/cm2〜4.0μL/cm2の範囲にあり得る。好ましくは、その量は、2.0〜3.0μL/cm2の範囲にある。
【0083】
本発明の組成物は、必要なら、有効成分を含有する1以上の単位投薬形態を含有する、FDAにより承認される、ボトル若しくはジャー又はその他の容器中に存在することができる。包装又はディスペンサーはまた、医薬の製造、使用又は販売を規制する政府機関により処方される形態で容器に付けた注意書を添えることもできる。その注意書は、ヒト又は獣医用投与のための組成物形態の当局による承認を表示するものである。そのような注意書は、例えば、処方医薬品のために米国食品医薬品局により承認されたラベル付けであるか又は承認を得た製品の添付文書であることができる。適合性の医薬担体中に製剤化される本発明の製剤を含む組成物はまた、調製し、適当な容器に入れて、指示された病態の治療用にラベルを貼ることもできる。
【0084】
以下の実施例は、請求の範囲に記載されている発明を説明するために提供されるが、これに限定されるものではない。
【0085】
V.実施例
実施例1:材料及び方法
表1は、下に与えられる実施例に使用される材料のリストを与える:
【表1】
【0086】
与えられるそれぞれの実施例の製剤に対する一般的方法論は、別に指示しない限り、下記のとおりである。
【0087】
それぞれの製剤のための最終重量は、50mLガラスバイアル中に調製した25gであった。ゲルを混合するために、ボルテキシング又は電磁撹拌棒を使用した。
【0088】
粘度は、LV Spindle #31を備えたプログラム制御可能なレオメーター Brookfield DV−III Ultraを用いて、10rpm、22℃で測定した。安定性試験のためには、ゲルを、周囲温度又はインキュベーター中50℃で貯蔵した。変色又は時間的相分離を含む外観の変化を評価した。
【0089】
DMSOの濃度は、全実験において終始変わらないようにした(45.5%w/w)。プロピレングリコールは、11又は11.2%w/wのいずれかであった。エタノール濃度は、11%から30%w/wまで変動した。グリセロール濃度は、0から11.2%w/wまで変動した。ジクロフェナクナトリウム濃度は、1.5%(w/w)又は2%(w/w)のいずれかであった。水は、溶液中に存在する不活性物、増粘剤、及びジクロフェナクナトリウムの量を補うように調整した。
【0090】
様々なゲル製剤の基質膜を横切るジクロフェナクナトリウムフラックス速度を解析するために、フランツ拡散セル実験を用いた。フランツ拡散セルは、経皮フラックス速度を測定するために通常よく知られている方法である。一般的なフランツセル法は、Franz,T.J.,Percutaneous absorption:on the relevance of in vitro data.J Invest Derm,64:190−195(1975)に記載されている。以下は、本実施例において使用した方法論であった。
【0091】
3mLのレセプターウェル容積を有するフランツセルを、分層死体皮膚(split thickness cadaver skin)(0.015”〜0.018”,AlloSource)と併せて用いた。ドナーウェルは、〜0.5cm2の面積を有した。レセプターウェルを、0.01%アジ化ナトリウムをドーピングした等張リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で満たした。完全密封を確保するためにフランツセルのフランジに、真空グリースを塗布して、ピンチクランプ(SS#18VWR80073−350)を用いて一様な圧力で締め付けた。フランツセルを組み立てた後、皮膚を、PBSで45分間、予め水和させた。次いで、PBSを除去した後、適当量の製剤を皮膚に添加する。投与レベルは、2mg/cm2(有限投与を考慮)から200mg/cm2(無限投与を考慮)まで変動した。次いで、ドナーウェルに蓋をして蒸発を防止した。フランツセルのレセプターウェルは、撹拌棒による断続的撹拌を備えた撹拌ドライブロック中、37℃(皮膚表面の温度は、〜31℃である)に維持した。様々な時点でレセプターウェルからサンプルを取り出した。6回反復で測定を行なった。サンプル中のジクロフェナク濃度は、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析した。本発明の製剤は、無限投与とは対照的に、インビボ状況での製剤性能のはるかに良好な予知因子である有限投与−有限投与の限界において、比較例よりも良好に機能した。
【0092】
A)比較液体ベース溶液から得るゲル製剤
実施例2:比較液体製剤ベース溶液中に様々な増粘剤を用いるゲル製剤
最初に、カルボマー、ポリビニルピロリドン、ローカストガム、セルロースポリマー及びポリビニルアルコールを含むいくつかの増粘剤を、ベース溶液として比較液体製剤を用いるジクロフェナクナトリウムゲル形成におけるその有効性について試験した。本実施例のゲル製剤においては、比較液体製剤溶液を製造し、次いでこのベースに直接に増粘剤を添加した。増粘剤の混和を促進するために、激しいボルテキシング/ホモジナイズ処理と一緒に超音波及び加熱(60℃で)を行なった。
【0093】
いくつかの増粘剤、特にグアールガム、ローカストビーンガム、メトセル(HPMC)、ポリビニルアルコール、及びポロキサマー407は、安定なゲルを形成できなかった。具体的には、即時の分離、非効率的な濃厚化、及び増粘剤の不溶性が注目された。ヒドロキシエチルセルロース(ナトロゾールHHX)及びヒドロキシプロピルセルロース(HY119)を含むいくつかのセルロースポリマーについては、初期安定性を示したゲルが形成された。初期に安定なゲルを示したその他の増粘剤は、PVP、及びアクリルポリマー増粘剤であった。
【0094】
それぞれの増粘剤に対するゲル製剤の明細を下に与える:
HEC増粘剤:
低重量分子量のヒドロキシエチルセルロース(特にヒドロキシエチルセルロース(HEC)Type 250 M Pharm(Natrosol(商標)))を、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコール、グリセリン及び水の混合物中に分散して、約1時間膨潤させて置いた。ジクロフェナクナトリウムを、エタノールに溶解し、HEC/溶媒ブレンドに添加して、最終製剤を得た。HECゲルは、比較的容易に形成し、良好なフラックスプロファイルを示すけれども、ゲルは、黄色味がかった色をして、長期間にわたる貯蔵により相分離しやすい。表2は、これらの製剤の組成物を示し、これらの組成物について得られたフラックス値を、比較液体製剤と比較して、図1に示す。
【0095】
PVP増粘剤:
比較液体ベース製剤のすべての他の成分を混合した後に、PVPを8%w/vまで添加した。PVPゲルは、本質的に透明であるが、乾燥時に望ましくない粘着性の感触を欠点として持つ。表2及び図1は、このゲルに対する組成物及びフラックスデータを示す。この実施例においては、フランツ拡散セルは、フランツセル当たり15mgで投与された。図1に見ることができるように、PVPゲルは、かなり良好に機能したが、しかしその望ましくない美的性質により、市販用の実施態様に対して理想的なものとはならない。
【表2】
【0096】
カルボポール増粘剤:
カルボポールゲルを次の工程により形成した:(1)アクリルポリマーを、水、グリセロール、及びプロピレングリコールの混合物中に分散し、そのあと1時間撹拌する工程;(2)エタノール及びDMSO中に溶解した1.5%ジクロフェナクナトリウムの第2の溶液を調製する工程;(3)ジクロフェナク溶液を、カルボポール相中に混合する工程。カルボポールゲルを形成する代替方法は、次のとおりである:(1)カルボポールを、ジメチルスルホキシド中に分散して、1時間撹拌する工程;(2)ジクロフェナクナトリウムを、エタノール/水/プロピレングリコール混合物中に溶解する工程;(3)グリセロールを、ジクロフェナク溶液中に分散する工程;及び(4)ジクロフェナク溶液を、ポリマー/ジメチルスルホキシドブレンド中に混合して、周囲温度で1時間撹拌する工程。これらの混合方法は、室温で、又は必要なら高い温度で実施することができる。カルボポール1342、941、971、981、974及びウルトレツ10(Noveon,Inc.)を含むゲルを作るために、様々なカルボポールを使用した。すべてのカルボポールゲルは、透明であり、凍結−解凍サイクルに対しても1カ月間高い温度(50℃)でのインキュベーションに対しても安定であることがわかり、良好な流動特性を有していた。表2、3、及び4は、これらのゲルの組成物を示し、図1、2、及び3は、それらの相対的フラックスを示す。安定なそして透明なゲルは、1.5%w/wジクロフェナクナトリウムでゲルを作るとき、〜>0.3%w/wのカルボポール濃度で形成され得るであろう。2%w/wジクロフェナクナトリウムを有するゲルに対しては、〜>0.9%w/wカルボポールが、安定なゲルをつくるのに必要であった。ゲルを形成するのに必要なカルボポールの正確な量は、用いるカルボポールの型に依存する。
【0097】
表3の製剤に対しては、フランツ拡散ゲルは、フランツセル当たり200μLで投与された。カルボポールゲルは、一様に、比較例製剤を超えるフラックス速度の増加を示した(図2を参照のこと)。より高粘度のゲル(すなわち、より高い重量パーセントのカルボポールを含むゲル)は、より低い重量パーセントの同じカルボポールを含む組成物よりも少ないフラックスを有する傾向があった。
【表3】
【0098】
酸化防止剤及びキレート化剤はまた、カルボポール、HEC、又はPVPゲルに添加することもできる。EDTAのカルボポールゲルへの添加はそれだけで、わずかに曇ったゲルをもたらす。BHAゲルは、より高い温度でのインキュベーションで色が変わった。BHT及びEDTAのカルボポールゲルへの混合は、任意の変色を示さず、透明のままであった。表4の製剤については、フランツ拡散セルは、セル当たり50μLで投与された。図3は、これらのゲルからのフラックス速度を示す。キレート化剤及び保存剤の添加では、フラックス速度に対して影響がなかった。
【表4】
【0099】
B.比較実施例
実施例3:比較液体製剤に対する様々なDMSOゲル製剤の経皮フラックスの比較
ベース溶液を比較ベース製剤から変えて、一連のジクロフェナクゲル製剤を作成した。具体的には、プロピレングリコール、エタノール、グリセリン、水、及びジクロフェナクの重量パーセントを変えた。これらの新しい製剤においては、構成化学薬品の重量パーセントは、次の通りであった:45.5%DMSO、20〜30%エタノール、10〜12%プロピレングリコール、0〜4%グリセリン、2%ジクロフェナクナトリウム、増粘剤、そして水を100%w/wまで添加した。
【0100】
この新しいベース溶液中で、いくつかの増粘剤を試験した。多数のこれらの増粘剤が、安定なゲルを形成できなかった;特に、カルボポールゲルは、安定なままでは存在しなかった。しかしながら、セルロースゲルは、ゲル形成において一様に有効であった。これらのゲルのうち最も美的に満足を与えるものは、ヒドロキシプロピルセルロース(HY117、HY119、HY121)で形成された。これらのゲルは、容易に展延し、本質的に一様であり、速く乾燥し、及び良好な流動特性を示した。
【0101】
ヒドロキシプロピルセルロースゲルは、すべての構成成分を混合し、次いで最後に増粘剤を添加し、そのあと撹拌することにより形成した。ゲルはまた、ヒドロキシプロピルセルロースを、溶媒添加前に、水相中に分散することにより形成することもできる。ゲル形成を促進するために加熱を用いることができる。ヒドロキシプロピルセルロースゲルは、透明であり、容易に流動した。それらは、少なくとも6カ月間安定なままであり、相分離がなく、pHの変化は無視し得るほどであり、分解生成物量は低い(<0.04%)ことを示している。図4〜9のデータは、表5〜10の製剤から得られるが、本発明のジクロフェナクナトリウムのヒドロキシプロピルセルロースゲル製剤がまた、比較液体製剤より4倍もの高い経皮フラックス速度をも与えることを示している。
【0102】
米国特許第4,575,515号及び第4,652,557号明細書の比較液体製剤(表5〜10の「比較例」)と比較して、本発明の様々なジクロフェナクゲル製剤の相対的経皮フラックスを測定するために研究を行なった。それに応じて、様々なジクロフェナクゲル製剤のジクロフェナクフラックス速度を比較液体製剤と比較するために、上記のフランツセル法を用いた。
【0103】
表5の製剤に対しては、フランツセルは、フランツセル当たり10mgで投与された。新しいゲル(F14/2)は、比較液体製剤を超える変更されたベース溶液を有し、より速い乾燥時間とより良好なフラックス動力学との両方を示す(図4を参照のこと)。これらのゲルに対するフラックス速度は、カルボポールゲル(F971)ほど高くはないが、乾燥速度は、実質的により速い。
【表5】
【0104】
表6の製剤に対しては、フランツ拡散セルは、セル当たり7mgで投与された。pHを下げることにより、フラックス速度の顕著な増加が示される(図5を参照のこと)。
【表6】
【0105】
表7の製剤に対しては、フランツセルは、フランツセル当たり7mgで投与された。これらの製剤のそれぞれに対して得られたフラックス速度を、図6に示す。
【表7】
【0106】
表8の製剤に対しては、比較液体製剤(1.5%ジクロフェナクナトリウム)は、フランツセル当たり20mgで投与された。Solaraze(商標)(市販の3%ジクロフェナクナトリウムゲル)は、フランツセル当たり10mgで投与され、F14/2は、フランツ拡散セル当たり15mgで投与された。この投与においては、すべてのセルが、当量のジクロフェナクナトリウムで投与されたことになる。F14/2は、引き続きその他の製剤を超える性能の増加を示した(図7を参照のこと)。
【表8】
【0107】
表9の製剤に対しては、比較液体製剤は、フランツセル当たり0.9mgで、0、4、8、及び12時間に投与された。F14/2は、フランツセル当たり1.5mgで、0及び6時間に投与された。ゲルからの累積投与量は、比較例溶液と比較してかなり高く、〜1.5倍のフラックスの増加を与えた(図8を参照のこと)。
【表9】
【0108】
表10の製剤に対しては、フランツセルは、セル当たり20mgで投与された。これらの製剤に対して得られたフラックス速度を図9に示す。
【表10】
【0109】
実施例4:様々なジクロフェナクゲルの経皮フラックスについての比較例データ
Baboota(Baboota et al.,Methods Find.Exp.Clin.Pharmacol.,28:109−114(2006))により記載されたジクロフェナクジエチルアミンゲル製剤などの既に開示された製剤と比較して、本発明のジクロフェナクゲル製剤の相対的経皮フラックスを測定するために研究を行なった。従って、Babootaにより記載されたジクロフェナク製剤のうちの3つのフラックス速度を本発明のゲル賦形剤と比較するために、上記のフランツセル法を用いた。Babootaが用いた形態と同様に、ジクロフェナクのジエチルアミン形態を、活性薬剤として用いた。この研究に使用される製剤の正確な組成を、下の表11に示す。Babootaの製剤は、FY1、FY2、及びFY3とラベルされ、一方、活性物としてジクロフェナクジエチルアミンを含む本発明の賦形剤を用いるゲル製剤は、G14/2_mとラベルされる。比較液体製剤もこの研究に含まれた(「比較例」)。Babootaの製剤の組成物と本発明に開示されるものとの間の主要な違いの中には、本製剤のより高いDMSO濃度が在る(45.5%w/w対10%w/w)。
【0110】
図10に示すデータから明らかなように、もっともBabootaの製剤もゲルではあるが、本発明の賦形剤は、著しくより大きいフラックス速度を与える。12時間後に、本発明のゲルは、累積投与量が、Babootaの最高性能ゲルの8.9μg/cm2に対して26.8μg/cm2を与える。従って、本発明のゲルは、Babootaにより記載される類似のゲルよりも3倍近く大きいジクロフェナクのフラックスと累積の速度を有する。ここで留意すべきは、これらの実験が、定期的に適用される非閉塞組成物の臨床投与のより代表的なものであるが、しかし皮膚との連続的な接触にあることを意味しない、有限投与で行なわれたことである。更に、Babootaのゲルはまた、本発明の賦形剤を用いる組成物の2%w/wと比較して3.4%w/wという、より高いパーセンテージの活性薬剤を含有していた。
【0111】
Babootaのゲルと比較する場合、本発明のゲルの粘稠度と安定性を含めて、その他の利点も観察された。本ゲルの滑らかな一様な粘稠度と対照的に、Babootaのゲル製剤は、曇った塊だらけの、従って、ゲル様粘稠度を維持することができないものであった。こういう理由で、Babootaの組成物は、何らかの安定性の問題及び短い貯蔵寿命を有することが予想されるであろう。
【0112】
従って、有限投与プロトコルを用いて、直接比較を行なう場合、両方ともゲル製剤であるにもかかわらず、Baboota et al.により記載されたもう一つのゲル製剤と比較した場合、本発明の製剤は、ジクロフェナク活性薬剤の経皮送達においてかなり有効である。更に、図7に示すように、本発明の製剤はまた、市場で現在売られている製品であるジクロフェナクゲルSolaraze(商標)と比較する場合、著しく良好に機能した。従って、本発明は、Babootaにより記載された既に開示されたジクロフェナクジエチルアミンゲル製剤又はSolaraze(商標)ゲルにより具体化されたジクロフェナクナトリウム製剤と比較する場合、思いがけなく優れた特性(例えば、経皮フラックス速度、好ましい組成物粘稠度、及びより大きい安定性と自己寿命などのパラメーターについて)を有するジクロフェナクナトリウムゲル製剤を提供するものである。
【表11】
【0113】
実施例5:比較液体製剤溶液 対 対応するゲルの乾燥時間/残渣重量の比較
比較液体製剤溶液の乾燥時間を対応するゲルと比較して評価するために、この実施例に記載される研究を行なった。比較液体製剤溶液又はジクロフェナクナトリウムゲル製剤のいずれかの等重量の量(100mg)を、プラスチック秤量皿上に計り取り、10cm2の面積に展延し、次いで周囲温度にさらして放置した。選択した時点(複数)で、プラスチック秤量皿を再び秤量して、秤量皿上に残存する組成物の質量を測定した。下の表12及び図11のデータにより示されるように、驚くべきことには、24時間の乾燥期間の後でさえ、最初に適用した比較液体製剤組成物重量のほとんどすべて(90%近く)が、秤量皿上に残存したことが見出された。従って、比較液体製剤の重量は、測定した時点にわたりほんの少ししか変化しなかった。これは、液体製剤の乾燥が非常にゆっくり起こったことを示している。
【0114】
対照的に、最初の5分以内でさえ、3つのゲル製剤は、液体製剤よりも迅速な乾燥を示した。乾燥時間4時間後に、残存した液体製剤が90%を超えるのに比較して、2%又は4%HPCを含有した2つのゲルの重量の70%が残存した。24時間までには、残存した液体製剤がほとんど90%であるのに比較して、それぞれ2%及び4%HPCを含有する2つのゲル製剤の重量の20%及び30%をわずかに超える量が残存し、F971ゲルの重量の60%をわずかに下回る量が残存したように、この違いはなお一層はっきりした。これは驚くべき結果である。何故なら、半固体ゲル製剤に比較して、液体製剤の方がより速く重量を失い、より短い乾燥時間を有することが期待されたであろうからである。従って、この実施例は、比較可能な液体製剤に比較して本発明のゲル組成物がすぐれた乾燥特性を示すことを実証する。
【0115】
従って、特定の実施態様においては、本発明は、乾燥時間24時間後に出発量の多くとも50%重量が残渣として残存し、好ましくは、乾燥時間24後に出発量の30〜40%以下の重量が残渣として残存するような乾燥時間を有する製剤を提供するものである。
【0116】
本発明のゲル製剤の改良された乾燥時間により、改良された使いやすさが提供され、より良好な患者の薬剤服用遵守をもたらすことが期待される。従って、本発明は、上記の実施例に示される有利な経皮フラックスデータにより明らかなように、改良された薬物送達をも提供しながら、改良された乾燥特性を有するゲル製剤を提供するものである。
【表12】
【0117】
実施例6:比較液体製剤 対 ジクロフェナクナトリウムゲル製剤の安定性特性の比較
この実施例は、6カ月期間にわたり室温で、対照製剤と対照して試験した本発明の組成物の安定性の比較を提供する。本発明の組成物がより高い濃度の活性薬剤を含有するのに、対照と比較して、それらが実際は結果的により低い濃度の分解不純物をもたらすことが、思いがけなく見出された。ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)をゲル化剤として用いる組成物が、カルボマーゲル化剤を用いて作られる組成物と比較して、この不純物を著しくより低い量で有していたことも、思いがけなく見出された。
【0118】
この研究においては、試験組成物のサンプルを、プラスチック製ネジ蓋付瓶中に入れて、これを密封して、25℃、湿度60%で6カ月間保持した。6カ月貯蔵期間の後、サンプルを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により不純物について試験した。活性薬剤ジクロフェナクナトリウムは、HPLCにより約11分の溶離時間で溶離することが見出された。貯蔵6カ月直後に、「不純物A」と称する不純物が、下の表13に示される様々な組成物について様々な量で、約6.6分で溶離するのが見られたことが見出された。
【表13】
【0119】
従って、表13のデータにより示されるように、より高い活性薬剤ジクロフェナクナトリウム濃度を有しながらも、3.5%HPCを含有する本発明のゲル製剤は、比較可能な液体形成物と比較して、より低いパーセンテージの「不純物A」の出現に反映されるように、より高度の安定性を示す。表13に示されるデータはまた、HPCゲル形成物が不純物Aのレベルにおいて少なくとも4倍の減少を示すように、HPCゲル形成物は、0.9%カルボポールを含有する比較可能なゲル形成物より安定であることも示している。従って、本発明のゲル形成物は、対照製剤について観察されたように、6カ月にわたり、0.034%又は0.09%未満だけ分解する製剤において明らかなように、対照製剤と比較して改良された活性薬剤安定性を提供する。更に、6カ月貯蔵期間後に本発明のゲル製剤において見出された「不純物A」の量は、結果的に不純物についての追加の非臨床試験を必要とする限度より十分低い暴露レベルをもたらすであろう。
【0120】
実施例7:液体製剤 対 ゲル製剤のインビボ経皮的(epicutaneous)吸収の比較
比較例溶液の局所適用後の全身性吸収(経皮的吸収ともいう)を本発明のゲルと比較するために、研究を行なった。1群(arm)当たり6匹のランドレース(Landrace)ブタを用いる並列計画を採用した。薬物を7日間適用し、8日目に追加投与をした。ベースラインを測定するために、1日目に血液をサンプリングし;定常状態を確認するために、6日目、7日目及び8日目のサンプルを採取し、及び24時間定常状態プロファイルを測定するために、追加サンプルを、7日目の0時間、2時間、5時間、7時間、12時間、15時間、及び24時間に採取し;消失プロファイル(eliminating profile)を測定するために、8〜13日目から採取したサンプルを使用した。
【0121】
この研究に使用した投与量は次の通りであった:比較例溶液群は、1投与1動物当たり3.85mgのジクロフェナクナトリウムを1日4回受け(received);ゲル群は、1投与1動物当たり8.08mgのジクロフェナクナトリウムを1日2回受け;投与面積は、5cmx10cm/動物であった。これらの量は、縮小された(scaled)ヒトの臨床用量を表す。
【0122】
サンプリング時間当たりそれぞれの動物から十分な血液を採集して、少なくとも2mLのリチウムヘパリン血漿/サンプルのために処理し、これをそれぞれ1mLの2つの部分サンプルに分割した。血液は、全動物から表14に示すように取り出した。
【表14】
【0123】
血漿データの薬物動態学的評価は、TopFit 2.11を用いて行なった。消失半減期及び濃度曲線下面積(AUC)の計算のために、非分画モデルを用いた。消失速度定数(Kel)及び血漿消失半減期(t1/2)は、個々の血漿濃度−時間曲線(c=濃度、t=時間)の対数/直線部の直線回帰分析により計算した。
半減期は、式:
【数1】
を用いて決定した。
【0124】
濃度曲線下面積(AUC)値は、一次台形法(linear trapezoidal method)を用いて計算し、そして最終測定可能血漿濃度を最終消失速度定数で割ることにより無限時間まで外挿した。ゼロ時間における血漿濃度は、試験8日目の投与前血液サンプリング時間における濃度であると見なした。濃度曲線下面積(AUC)は、式:
【数2】
を用いて計算した。
【0125】
ジクロフェナクナトリウムについて以下の薬物動態学的パラメーターを計算した:
AUC0〜24(試験7日目)
AUC0〜t(試験8日目)
AUC0〜inf(試験8日目)
Tmax(試験7、8日目)(Cmaxに到達する時間)
Cmax(試験7、8日目)(最大観測血漿濃度)
Cmin(試験7、8日目)(最小観測血漿濃度)
C(trough)(試験6、7、及び8日目)(トラフ血漿濃度)
Kel(消失半減期)
T1/2(血漿消失半減期)
【0126】
定常状態到達は、試験6、7、及び8日目の対数変換トラフ濃度を従属変数として、時間を独立変数として、対象者を変量効果として、並びに日を固定効果として用いる、反復測定ANOVA(分散分析)を用いることにより評価した。
【0127】
データを、図12並びに表16及び17に示す。本発明の組成物は、平均AUCにより測定されるように、ジクロフェナクナトリウムの著しくより多い吸収を示す。この結果は、投与量に対して調整する場合でさえ成り立つ。
【表15】
【表16】
【表17】
【0128】
実施例8:変形性関節症の治療におけるジクロフェナクゲルの臨床試験
膝の一次性変形性関節症(OA)の症状を有する対象者において、本発明のゲル製剤の安全性及び効能を評価するために臨床試験が行なわれるであろう。具体的には、ジクロフェナクゲル製剤、プラセボゲル(ジクロフェナクを含有しないゲル担体)のいずれかを受けるように無作為化された300人の対象者において、2対象者集団(arm)、二重盲検式、プラセボ比較、無作為化、12週の第III相臨床試験が行なわれるであろう。対象者は、1適用当たり彼(女)らのOA膝に対して2mLの研究ゲルを適用するであろう。
【0129】
効能評価のための主要変数は、WOMAC LK3.1(ウェスタンオンタリオ・マクマスター大学変形性関節症指数LK3.1版)痛み及び身体機能並びに患者総合健康評価(Patient Overall Health Assessment)であろう。副次的変数は、WOMAC硬直及び患者全般評価であろう。主要効能分析は、ジクロフェナクナトリウムゲル対象者集団 対 プラセボゲル対象者集団において、対象者に対するベースラインから主要効能変数の最終評価までの変化の比較であろう。
【0130】
より具体的には、膝OA症状に対するジクロフェナクゲルの効能は、WOMAC LK3.1 OA指数(痛み、身体機能、及び硬直の次元)、患者総合健康評価、及び患者全般評価を含む効能変数質問票により判断される対象者の主観的応答により測定されるであろう。(Bellamy,N.,WOMAC Osteoarthritis Index User’s Guide IV,Queensland,Australia(2003)を参照のこと)。
【0131】
WOMAC LK3.1、患者総合健康評価、及び患者全般評価の質問票は、5点リカート(Likert)スケールに基づくであろう。数値は、下記のとおり、WOMACLK 3.1スコア、患者全般評価スコア及び患者総合健康評価スコアに割り当てられるであろう:
患者総合健康評価及び
WOMAC LK3.1患者全般評価
なし=0 非常に良い=0
軽度=1 良い=1
中度=2 普通=2
重度=3 悪い=3
最重度=4 非常に悪い=4。
【0132】
WOMAC LK3.1 OA指数は、3つの独立した次元、すなわち痛み、硬直及び身体機能を有する、隔離された、多次元の、自己管理された指数であり、この研究において効能変数として使用されるであろう。
【0133】
本発明の好ましい実施態様においては、本発明のゲル製剤の適用は、局所的に適用する場合、結果的に12週の期間にわたり、少なくとも1リカートスケール単位のWOMACスケールに関する痛み又は身体機能の減少をもたらすであろう。更により好ましくは、2、3、又は4リカートスケール単位の減少が生じるであろう。最も好ましくは、本発明のゲル製剤の適用は、結果的に完全な痛みの除去及び完全な又はほぼ完全な身体機能の回復をもたらすであろう。
【0134】
安全性を評価するために、副作用の頻度が表にされるであろうし、最悪の皮膚刺激スコアが記録されるであろうし、そして生命徴候及び検査値の変化が評価されるであろう。
【0135】
本発明の前述の議論は、説明と記載の目的のために提出したものである。前述のことは、本明細書に開示される形態又は諸形態に本発明を限定することを意図しない。本発明の記載は、1以上の実施態様並びに特定の変形形態及び修正形態の記載を含んでいたけれども、他の変形形態及び修正形態が、本発明の範囲以内にある。例えば、本発明の開示を理解した後には、それらの形態が当業者の技術と知識の範囲内にあることができる通りである。請求の範囲に記載されているものに対して、代わりの、交換可能な、及び/又は等価な構造、機能、範囲、又は工程を含めて、許可される範囲で代替の実施態様を含む権利を取得することを意図している。この場合、そのような代わりの、交換可能な、及び/又は等価な構造、機能、範囲、又は工程が本明細書に開示されているかどうかを問わず、しかも任意の特許可能な主題を公に捧げることを意図しない。
【0136】
本明細書に引用されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、同じ範囲でその全体において参照することにより組み込まれる。それはあたかもそれぞれ個々の刊行物、特許又は特許出願が、具体的にそして個々に、その全体において参照することにより組み込まれるように指示されたかのようにである。
【関連出願に対する相互参照】
【0001】
本出願は、米国仮出願第60/829,756号(2006年10月17日出願)の優先権を主張する。前記出願の教示はすべての目的についてその全体において参照することにより本明細書に組み込まれる。
【発明の分野】
【0002】
本発明は、一般に、変形性関節症を治療する組成物及び方法に関するものである。
【発明の背景】
【0003】
1.変形性関節症
変形性関節症(OA)は、関節軟骨の進行性変性を特徴とする慢性関節疾患である。症状は、関節痛及び運動障害を含む。OAは、世界的に身体障害の主要原因の一つであり、健康管理システムに対する主要な財政負担である。それは、米国だけで1500万人を超える成人を苦しめていると見積もられている。Boh L.E.Osteoarthritis.In:DiPiro J.T.,Talbert R.L.,Yee G.C.,et al.,editors.Pharmacotherapy:a pathophysiological approach.4th ed.Norwalk(CT):Appleton & Lange,pp.1441−59(1999)を参照のこと。
【0004】
経口非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、OAマネージメントの柱である。それらは、鎮痛、抗炎症及び解熱作用を有し、痛み及び炎症の減少に有用である。しかしながら、NSAIDSは、悪心、嘔吐、消化性潰瘍疾患、GI(胃腸)出血、及び心臓血管イベントを含む重篤な潜在的副作用を伴う。
【0005】
局所NSAIDsは、全身性副作用のリスクを減少又は排除しながら、局部の治療的有用性を達成する可能性を提供する。OA治療へのこのアプローチに広範囲な興味が存在していたが、しかしOA治療において局所NSAIDsの効能を支持するデータは、限られている。例えば、特にOA治療の使用のために試験された様々な局所NSAIDsの13の無作為化プラセボ対照試験(RCT’s)の研究では、それらがOAの慢性的使用には一般に効果的ではなかったことが結論された。(Lin et al.,Efficacy of topical non−steroidal anti−inflammatory drugs in the treatment of osteoarthritis:meta−analysis of randomized controlled trials,BMJ,doi:10.1136/bmj.38159.639028.7C(2004))。
【0006】
一般にOA治療の効能を評価するのに使用される3つの結果(outcomes)が存在する。すなわち痛み、身体機能、及び患者全般評価(patient global assessment)である。Bellamy N.,Kirwan J.,Boers M.,Brooks P.,Strand V.,Tugwell P.,et al.Recommendations for a core set of outcome measures for future phase III clinical trials in knee,hip and hand osteoarthritis.Consensus development at OMERACT III.,J Rheumatol,24:799−802(1997)を参照のこと。慢性的使用に適するためには、療法は、一般に持続した時間期間にわたりこれら3つの可変要素に効能を示さなければならない。例えば米国においては、食品医薬品局(FDA)は、OA療法が12週の期間にわたりプラセボを超える優位性を示すことを要求する。OA治療における局所NSAIDsに対する大きな潜在的可能性にもかかわらず、本出願を提出する時点において、米国でそのような治療は承認されていない。
【0007】
米国特許第4,575,515号及び第4,652,557号明細書には、局所NSAID組成物が開示されており、その一つが、1.5%ジクロフェナクナトリウム、45.5%ジメチルスルホキシド、11.79%エタノール、11.2%プロピレングリコール、11.2%グリセリン、及び水からなり、慢性OA治療に有効であることが示されている。Towheed,Journal of Rheumatology 33:3 567−573(2006)及び更にOregon Evidence Based Practice Center entitled“Comparative Safety and Effectiveness of Analgesics for Osteoarthritis”,AHRQ Pub.No.06−EHC009−EFを参照のこと。この特定の組成物は、本明細書の実施例の項において、「比較液体製剤」又は「比較例」と呼ばれる。しかしながら、これらの先行発明の組成物は、なかなか乾燥せず流れやすいという欠点を有する。それらはまた、OAにおける効能を達成するために、1日当たり3〜4回の頻回投与を必要とし、それが、潜在的な皮膚刺激物への暴露を増して皮膚刺激のリスクを増す。
【0008】
一般に、局所NSAIDsがOAにおいてそれらの期待を満たすことができないのは、一つには、治療効果を及ぼすのに十分な量でしかも治療自体が耐えられるような仕方で、皮膚を通して分子を送達することに伴う困難性のためであり得る。一般に、OAの臨床効能では、関節の滑膜及び滑液を含む下層の炎症性組織中へ、十分な量で、有効成分の吸収及びその浸透が必要であると信じられている。Rosenstein,Topical agents in the treatment of rheumatic disorders,Rheum.Dis.Clin North Am.,25:899−918(1999)を参照のこと。
【0009】
しかしながら、皮膚は、薬物浸透への大きなバリアであり、40年近くの広範な研究にもかかわらず、経皮的な薬物送達の成功は、一般に依然としてかなり限られたままであり、少数の経皮薬物製品だけが市販されている。
【0010】
皮膚に適用される局所投薬形態と関連して、賦形剤−皮膚、賦形剤−薬物、及び薬物−皮膚を含めて、多数の相互作用が、起こる可能性がある。それぞれが、局所投薬形態からの活性薬剤放出に影響を及ぼし得る(Roberts,M.S.:Structure−permeability considerations in percutaneous absorption.In Prediction of Percutaneous Penetration,ed.by R.C.Scott et al.,vol.2,pp.210−228,IBC Technical Services,London,1991)。従って、有効成分、賦形剤、pH、及び活性物の賦形剤対皮膚中への比溶解度を含めて、様々な要因が、吸収速度及び浸透深さに影響を及ぼし得る(Ostrenga J.et al.,Significance of vehicle composition I:relationship between topical vehicle composition,skin penetrability,and clinical efficacy,Journal of Pharmaceutical Sciences,60:1175−1179(1971))。より具体的には、薬物の溶出速度、展延性、粘着性、及び膜透過性を変える能力などの賦形剤属性だけでなく、溶解度、サイズ及び電荷などの薬物属性も、透過性への著しい影響を有し得る。
【0011】
製剤においては、一見ささいな変化の程度から観察される重要な可変性が存在する。例えば、Naitoは、組成物に使用されるゲル化剤をただ変えることによる、局所NSAID製剤の間での浸透の重要な可変性を明らかにしている(Naito et al.,Percutaneous absorption of diclofenac sodium ointment,Int.Jour.of Pharmaceutics,24:115−124(1985))。同様に、Hoは、アルコール、プロピレングリコール、及び水の割合を変えることによる、浸透の重要な可変性に注目している(Ho et al.,The influence of cosolvents on the in−vitro percutaneous penetration of diclofenac sodium from a gel system,J.Pharm.Pharmacol.,46:636−642(1994))。そのような変化が、はっきり異なる3つの可変要素、すなわち(i)賦形剤中への薬物の溶解度、(ii)分配係数、及び(iii)皮膚構造の変化に対する効果に影響を及ぼすことが注目された。
【0012】
Ho et al.(1994)はまた、(i)賦形剤のpH、(ii)薬物の溶解度、及び(iii)ゲルマトリックスの粘度が、ゲル投薬形態からの浸透に影響し得ることに注目した。pH値は、異なる浸透特性を有する薬物のイオン化形態と非イオン化形態の間の平衡に影響を及ぼす(Obata,International Journal of Pharmaceutics,89:191−198(1993))。粘度は、ゲルマトリックスを通りぬける薬物の拡散及び賦形剤から皮膚中への薬物の放出に影響を及ぼし得る。賦形剤中への薬物の溶解度は、製剤と受容者(recipient)の膜/組織との間の薬物の分配係数に影響を及ぼすであろう(Ho et al.1994)。
【0013】
化学的浸透促進剤は、皮膚バリアを可逆的に低くする一つの手段である。他の方法としては、イオン導入法、超音波、電気穿孔法、加熱、及び顕微針が挙げられる。少なくとも250の化学薬品が、皮膚透過性を増加し得る促進剤として確認されている。一般的カテゴリーとしては、ピロリドン、脂肪酸、エステル及びアルコール、スルホキシド、精油、テルペン、オキサゾリジン、界面活性剤、ポリオール、エイゾン及び誘導体、並びに表皮酵素が挙げられる。
【0014】
浸透促進剤が皮膚バリア機能を低下させるメカニズムは、よく分かっていない(Williams and Barry“Penetration Enhancers”Advanced Drug Delivery Reviews 56:603−618(2004)を参照のこと)。もっともメカニズムを3つの広いカテゴリー、すなわち脂質崩壊、角質細胞透過性の増加、及び薬物の組織中への分配促進、に分類することができることが提案されてはいるが。
【0015】
化学的浸透促進剤の使用についての難問は、耐えられるレベルで薬物輸送の著しい又は治療的な促進を誘発することがほとんどないように見えるということである。これは、皮膚バリアを崩壊する作用が、皮膚刺激を引き起こす潜在能力を有するからである。崩壊の増加とともに、皮膚刺激がより大きい問題となるであろう。このことは、局所OA治療については特に問題である。その場合は、目標が、関節組織中へ活性物を浸透させることであり、薬物が疾患の本質により長期基準で使用されなければならないからである。本発明者らは、これまでの既知の組成物よりも、単位用量当たり、より多くの有効成分を送達する方法及び組成物を開発した。そしてこれにより、皮膚刺激の発生率がより低くなることが期待されるであろう。
【0016】
本発明の組成物は、一般的に使用されるNSAIDであるジクロフェナクナトリウムを使用する。ジクロフェナクは、4種の異なる塩を有し、それらは異なる溶媒を使用する溶液中の透過度において著しい可変性を示す。例えば、Minghettiは、有機塩基とのジクロフェナク塩が局所適用に対して最もよいということを教示している(Minghetti et al.,Ex vivo study of trandermal permeation of four diclofenac salts from different vehicles,Jour.of Pharm.Sci,DOI 10.1002/jps.20770(2007))。
【0017】
他の研究では、ジクロフェナクナトリウムの送達手段としてマイクロエマルション製剤が提示されている(Kantarci et al.,In vitro permeation of diclofenac sodium from novel microemulsion formulations through rabbit skin,Drug Development Research,65:17−25(2005);及びSarigullu I.et al.,Transdermal delivery of diclofenac sodium through rat skin from various formulations,APS PharmSciTech,7(4)Article 88,E1−E7(2006))。
【0018】
他の局所ジクロフェナク組成物は、米国特許第4,543,251号明細書、米国特許第4,670,254号明細書、米国特許第5,374,661号明細書、米国特許第5,738,869号明細書、米国特許第6,399,093号明細書及び米国特許第6,004,566号明細書を含めて、多数の特許に開示されている。米国特許出願第20050158348号では、ゲル製剤用に様々な溶媒が広く使用されることを指摘するが、しかしそれらは皮膚刺激のために将来性が制限されることに注目している。この引用文献ではまた、皮膚上層部において溶液から活性物が沈殿するので、ゲル組成物は迅速な作用停止を伴い、より深部の組織中での抗炎症作用が制限されることにも注目している。本発明のゲルは、その反対のこと、すなわち長期の作用及びより深部の組織中で抗炎症作用を達成するように設計される。
【0019】
2.ジクロフェナクのゲル製剤
これまでの引用文献のどれにも、本発明の組成物又はOA治療におけるそれらの使用が開示されていない。むしろ、これらの引用文献では、慢性的使用のための局所OA治療、及び一般的な経皮輸送の複雑さ(そこでは、組成物要素又はそれらの相対的割合を変えることによって透過性の著しい可変性が観察される)に関して、未だ満たされていない顕著な必要性が強調されている。
【0020】
前述のことに照らして、OA治療に長期間使用するのに適した局所NSAIDの開発において考慮すべき改良の必要性が存在する。課題は、長期基準でOAを治療するのに十分な濃度で活性薬剤を下層の組織へ送達し、一方では皮膚バリアを崩壊することによって引き起こされる耐えられない皮膚刺激の発生を低減又は最小化して、患者の薬剤服用遵守につながりそれを促進するような製剤及び用量を提供する、至適製剤を開発することであった。本発明は、これらの及びその他の必要性を満たすものである。
【発明の要約】
【0021】
本発明は、以前に記載された組成物に比較するとき、よりよい乾燥時間、より高い粘度、増加した経皮フラックス(transdermal flux)、及びインビボでのより大きい薬物動態学的吸収(pharmacokinetic absorption)を表す、変形性関節症治療のためのジクロフェナクナトリウムゲル製剤を提供することにより先行技術の不利な点を克服するものである。更に、本発明の好ましいジクロフェナクナトリウムゲル製剤は、粘度における任意の実質的変化の欠如、低温での相分離及び結晶化の不在、並びに低レベルの不純物に反映されるように、六(6)カ月での好ましい安定性を含む他の利点を提供する。その上、本ゲル製剤は、以前に記載された組成物と比較して、皮膚によく粘着し、容易に展延し、より速く乾燥し、より大きいインビボでの吸収を示す。従って、本発明のゲル製剤は、以前に記載された製剤と比較して、変形性関節症治療のために皮膚を通してのジクロフェナクナトリウム送達の優れた手段を提供する。
【0022】
そのようなものとして、或る実施態様においては、本発明は:
(i)ジクロフェナクナトリウム;
(ii)DMSO;
(ii)エタノール;
(iii)プロピレングリコール;
(v)増粘剤;
(vi)場合によりグリセロール;及び
(vii)水
を含むか、から本質的になるか、又はからなるゲル製剤を提供する。
【0023】
別の実施態様においては、本発明は、関節の痛みに苦しむ対象者(subject)の変形性関節症を治療する方法であって、前記方法が:
(i)ジクロフェナクナトリウム;
(ii)DMSO;
(ii)エタノール;
(iii)プロピレングリコール;
(v)増粘剤;
(vi)場合によりグリセロール;及び
(vi)水
を含むか、から本質的になるか、又はからなる治療的有効量のゲル製剤を、対象者の苦痛関節域に局所投与し、それにより変形性関節症を治療することを含む、前記方法を提供する。
【0024】
更なる実施態様は、痛み治療のための医薬の製造におけるジクロフェナクナトリウムの使用であって、前記医薬が:
(i)ジクロフェナクナトリウム;
(ii)DMSO;
(ii)エタノール;
(iii)プロピレングリコール;
(v)増粘剤;
(vi)場合によりグリセロール;及び
(vii)水
を含むか、から本質的になるか、又はからなるゲル製剤を含む、前記使用を提供する。
【0025】
更に更なる実施態様においては、本発明は、ジクロフェナクナトリウム溶液、並びにセルロースポリマー、カルボマーポリマー、カルボマー誘導体、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、多糖類、及びその混合物から選択することができる少なくとも1の増粘剤、を含むか、から本質的になるか、又はからなるゲル製剤を提供する。
【0026】
この実施態様の観点においては、ジクロフェナクナトリウム溶液は:
(i)ジクロフェナクナトリウム;
(ii)DMSO;
(ii)エタノール;
(iii)プロピレングリコール;
(iv)場合によりグリセロール;及び
(v)水
を含むか、から本質的になるか、又はからなる。
【0027】
上記の実施態様の観点においては、増粘剤は、セルロースポリマー、カルボマーポリマー、カルボマー誘導体、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、多糖類、及びその混合物から選択することができる。
【0028】
上記のゲル実施態様の観点においては、ジクロフェナクナトリウムは、1〜5%w/w、例えば1、2、3、4、又は5%w/wで存在し;DMSOは、30〜60%w/wで存在し;エタノールは、1〜50%w/wで存在し;プロピレングリコールは、1〜15%w/wで存在し;グリセロールは、0〜15%w/wで存在し、増粘剤は、ゲルの最終粘度が10と50000センチポアズの間にあるように存在し;及び水は添加されて、100%w/wになる。他の観点においては、グリセロールは、0〜4%w/wで存在する。更なる観点においては、グリセロールは、存在しない。
【0029】
上記の実施態様の別の観点においては、ジクロフェナクナトリウムは、2%w/wで存在し;DMSOは、45.5%w/wで存在し;エタノールは、23〜29%w/wで存在し;プロピレングリコールは、10〜12%w/wで存在し;ヒドロキシプロピルセルロース(HY119)は、0〜6%w/wで存在し;グリセロールは、0〜4%で存在し、及び水は、100%w/wになるように添加される。他の観点においては、ゲル製剤中にグリセロールは存在しない。更なる観点においては、ゲルの最終粘度は、500〜5000センチポアズである。
【0030】
上記のゲル製剤の特徴は、そのような製剤が皮膚に適用されるとき、以前に記載された組成物、例えば米国特許第4,575,515号及び第4,652,557号明細書のものよりも、乾燥速度がより速く、経皮フラックスがより高いことである。好ましい製剤の更なる特徴は、6カ月の間に0.04%未満だけ分解するジクロフェナクナトリウムの分解の減少、及びpH6.0〜10.0、例えば約pH9.0を含む。
【0031】
特定の実施態様においては、本発明のゲル製剤は、1〜5%のグリセロールを含み、その場合、ゲル製剤は、皮膚に適用されるとき、比較液体製剤より大きい乾燥速度と経皮フラックスを有する。ある観点においては、乾燥速度は、結果的に24時間後に出発量の多くとも50%の残渣をもたらし、経皮フラックスは、有限投与若しくは無限投与又は両方でフランツセル(Franz cell)法により測定するとき、比較液体製剤より1.5以上大きい。
【0032】
他の実施態様においては、ゲル製剤及びその使用方法は、製剤を局所に適用するとき、12週にわたり痛みの減少を与える。様々な観点においては、ゲル製剤は、1日2回適用され、痛みは、変形性関節症に起因し得る。
【0033】
これらの及びその他の目的、実施態様、並びに利点は、あとに続く図及び詳細な記載とともに読んだときに、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】HEC及びPVPゲルのフラックス速度の棒グラフを示す。フランツ拡散セルは、フランツセル当たり15mgで投与された。
【0035】
【図2】カルボポール(Carbopol)981及びウルトレツ(Ultrez)10で作られるゲルのフラックス速度の棒グラフを示す。フランツ拡散ゲルは、フランツセル当たり200μLで投与された。
【0036】
【図3】カルボポール971及びカルボポール981ゲルのフラックス速度の棒グラフを示す。フランツ拡散セルは、セル当たり50μLで投与された。
【0037】
【図4】様々なゲル及び比較液体製剤のフラックス速度の棒グラフを示す。フランツセルは、フランツセル当たり10mgで投与された。
【0038】
【図5】様々なゲル及び比較液体製剤のpHのフラックス速度に対する影響を説明する棒グラフを示す。フランツ拡散セルは、セル当たり7mgで投与された。
【0039】
【図6】様々なゲルのフラックス速度の棒グラフを示す。フランツセルは、フランツセル当たり7mgで投与された。
【0040】
【図7】様々なジクロフェナク製剤のフラックス速度の棒グラフを示す。比較液体製剤(1.5%ジクロフェナクナトリウム)は、フランツセル当たり20mgで投与され、Solaraze(商標)(市販の3%ジクロフェナクナトリウムゲル)は、フランツセル当たり10mgで投与され、及び本発明の製剤F14/2は、フランツ拡散セル当たり15mgで投与された。この投与量で、すべてのセルが、ジクロフェナクナトリウムの当量で投与されたことになる。
【0041】
【図8】多回投与実験におけるフラックス速度の棒グラフを示す。比較液体製剤は、0、4、8、及び12時間に、フランツセル当たり0.9mgで投与された。本発明の製剤F14/2は、0及び6時間にフランツセル当たり1.5mgで投与された。
【0042】
【図9】様々なジクロフェナク製剤のフラックス速度の棒グラフを示す。フランツセルは、セル当たり20mgで投与された。
【0043】
【図10】Baboota et al.において開示されたゲル及び本発明のゲルからのジクロフェナクフラックス速度に関するデータの棒グラフを示す。フランツセルは、セル当たり4mgで投与された。
【0044】
【図11】ジクロフェナクナトリウムの3つのゲル製剤及び1つの液体製剤の時間的乾燥プロファイルを示す。
【0045】
【図12】液体又はゲル製剤のいずれかを投与した後のジクロフェナクナトリウムのインビボ定常状態の血漿濃度を示す。
【発明の詳細な説明】
【0046】
I.定義
用語「経皮(transdermal)」は、本明細書においては、一般に皮膚を通して起こるプロセスを包含するために使用される。用語「経皮(transdermal)」及び「皮膚を通しての(percutaneous)」は、本明細書全体を通じて交換可能に使用される。
【0047】
用語「局所製剤」は、本明細書においては、一般に皮膚又は粘膜に適用することができる製剤を包含するために使用される。局所製剤は、例えば、患者には治療的有用性を、又は消費者には化粧品的利益を与えるために使用することができる。局所製剤は、物質の局所投与にも経皮投与にも使用することができる。
【0048】
用語「局所投与」は、本明細書においては、一般に治療的に活性な薬剤などの物質の皮膚又は身体の局所部位への送達を包含するために使用される。
【0049】
用語「経皮投与」は、本明細書においては、一般に皮膚を通しての投与を包含するために使用される。経皮投与は、しばしば活性物の全身性送達が望ましい場合に適用される。もっとも経皮投与はまた、最小の全身性吸収の状態で皮膚の下層の組織へ活性物を送達するためにも有用であり得るのだが。
【0050】
用語「浸透促進剤」は、本明細書においては、一般に活性薬剤(例えば医薬)などの分子の皮膚中への又は皮膚を通しての輸送を向上させる剤(agent)を包含するために使用される。化合物の目標への送達の必要性を生み出す様々な状態が、皮膚中又は皮膚下のいずれかの身体の異なる部位で起こり得る。例えば、変形性関節症の治療においては、治療的有用性を達成するため、比較的深部に横たわる関節組織中への活性薬剤の送達が必要であり得る。従って、「浸透促進剤」は、皮膚若しくは下層の組織へ直接に、又は全身性分配を通して疾患部位へ間接に、活性薬剤の送達を助けるために使用することができる。浸透促進剤は、純粋物質であることができ又は様々な化学物質の混合物を含むことができる。
【0051】
用語「有限投与」は、本明細書においては、一般に活性薬剤の制限されたリザーバー(reservoir)の適用を包含するために使用される。活性薬剤のリザーバーは、時間とともに使い果たされ、最大吸収速度が達成された後に能動的吸収速度の先細りをもたらす。
【0052】
用語「無限投与」は、本明細書においては、一般に活性薬剤の大きいリザーバーの適用を包含するために使用される。リザーバーは、時間とともに著しく使い果たされるわけではなく、それにより能動的吸収の長期連続的定常状態を提供する。
【0053】
本明細書において使用される用語「比較液体形成物」又は「比較例」は、1.5%ジクロフェナクナトリウム、45.5%ジメチルスルホキシド、11.79%エタノール、11.2%プロピレングリコール、11.2%グリセリン、及び水からなる、米国特許第4,575,515号及び第4,652,557号明細書に記載される製剤のような製剤を指す。
【0054】
II.ゲル製剤
1.ゲル製剤の成分
時間的安定性を維持しながら、乾燥時間、経皮フラックスの増加、及びインビボでのより大きい薬物動態学的吸収、より高い粘度、皮膚への良好な粘着性、及び易展延性という改良された特性を有するジクロフェナクナトリウムゲル製剤を提供するために、本発明者らは、以下の成分の驚くほど有利な組み合わせを、本発明のゲル組成物の製剤において使用することができることを見出した。
【0055】
本発明は、活性薬剤、好ましくは非ステロイド性抗炎症薬又は薬学的に許容可能なその塩を含むゲル製剤を提供する。より好ましくは、非ステロイド性抗炎症は、ナトリウム、カリウム、及びジエチルアミン形態を含む様々な塩形態で存在することができる、ジクロフェナクである。好ましい実施態様においては、ジクロフェナクのナトリウム塩が使用される。ジクロフェナクナトリウムは、約0.1%〜10%の範囲で、例えば1、2、3、4、又は5%w/wで存在することができる。ナトリウム塩の使用は、より高い塩濃度では、特定の増粘剤との相互作用によりゲルマトリックスの崩壊が引き起こされ得るという点で、水性ゲルの安定性に関して難問を生じることが知られている。
【0056】
別の実施態様においては、本発明は、浸透促進剤を含む。浸透促進剤は、ジメチルスルホキシド(「DMSO」)又はその誘導体であることができる。DMSOは、重量で1%〜70%、より好ましくは25%と60%の間、例えば25、30、40、45、50、55、又は60%w/wの量で存在することができる。好ましくは、DMSOは、本発明においては、約40〜約50%w/w、例えば41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50%、並びに間にある全部分、例えば44、44.5、45、45.5、46、及び46.5%などの濃度で使用される。
【0057】
特定の実施態様においては、本発明は、低級アルカノール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール又はその混合物を含む。特定の実施態様においては、アルカノールは、約1〜約50%w/wで存在する。好ましくは、エタノールは、約1〜50%w/w、例えば1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50%w/w、及び間にある全部分で使用される。
【0058】
特定の実施態様においては、本発明は、多価アルコール、例えばグリコールを含む。適したグリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキサントリオール及びその組み合わせが挙げられる。好ましくは、プロピレングリコールは、約1〜15%w/w、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15%w/w、及び間にある全部分で使用される。
【0059】
特定の実施態様においては、本発明は、グリセロール(本明細書においては、グリセリンともいう)を0〜12%w/wの濃度で含む。好ましくは、グリセロールは、0〜4%w/wで、例えば0、1、2、3、又は4%w/w、及び間にある全部分で使用される。ある実施態様においては、製剤中に、グリセロールは使用されない。
【0060】
好ましい実施態様においては、本発明は、ジクロフェナク溶液及び少なくとも1のゲルを作る増粘剤を含む製剤を提供する。本発明の少なくとも1の増粘剤は、アクリルポリマー(例えば、Noveon Inc.of Cleveland,Ohioから市販されているカルボポール(Carbopol)ポリマー、ノベオン(Noveon)ポリカルボフィル及びペムレン(Pemulen)ポリマー乳化剤)、アクリルポリマー誘導体、セルロースポリマー、セルロースポリマー誘導体、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、多糖類又はその混合物であることができる。好ましくは、少なくとも1の増粘剤は、最終粘度が10と50000センチポアズ(cps)の間にあるように使用されるヒドロキシプロピルセルロース(HPC)である。より好ましくは、最終粘度は、500と20000cpsの間にある。
【0061】
本ゲル製剤は、場合により少なくとも1の酸化防止剤及び/又は1のキレート化剤を含むことができる。
【0062】
本発明で使用する好ましい酸化防止剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、リノール酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、アスコルビルトコフェロールマレエート、アスコルビン酸カルシウム、カロテノイド、コウジ酸、チオグリコール酸、トコフェロール、トコフェロールアセテート、トコフェレス(tocophereth)−5、トコフェレス−12、トコフェレス−18、トコフェレス−80、及びその混合物からなる群から選択することができる。
【0063】
好ましいキレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTA二アンモニウム、EDTA二カリウム、EDTAカルシウム二ナトリウム、HEDTA、TEA−EDTA、EDTA四ナトリウム、EDTA三カリウム、リン酸三ナトリウム、クエン酸二アンモニウム、ガラクタル酸、ガラクツロン酸、グルコン酸、グルクロン酸、フミン酸(humic acid)、シクロデキストリン、クエン酸カリウム、EDTMPカリウム、クエン酸ナトリウム、EDTMPナトリウム、及びその混合物からなる群から選択することができる。
【0064】
加えて、本発明の局所製剤はまた、pH調整剤を含むこともできる。或る特定の実施態様においては、pH調整剤は、塩基である。適したpH調整塩基としては、重炭酸塩、炭酸塩、並びに水酸化物、例えば水酸化アルカリ又はアルカリ土類金属及び水酸化遷移金属が挙げられる。あるいは、pH調整剤はまた、酸、酸の塩、又はその混合物であることもできる。更に、pH調整剤はまた、緩衝液であることもできる。適した緩衝液としては、クエン酸塩/クエン酸緩衝液、酢酸塩/酢酸緩衝液、リン酸塩/リン酸緩衝液、ギ酸塩/ギ酸緩衝液、プロピオン酸塩/プロピオン酸緩衝液、乳酸塩/乳酸緩衝液、炭酸塩/炭酸緩衝液、及びアンモニウム/アンモニア緩衝液などが挙げられる。pH調整剤は、組成物のpHを、約pH4.0〜約10.0の間まで、より好ましくは約pH7.0〜約9.5の間まで調整するのに十分な量で存在する。特定の実施態様においては、混合した成分の未調整pHが、8と10の間、例えば9であり、任意のpH調整剤の添加を必要としない。
【0065】
2.ゲル製剤の特性
a)経皮フラックス
下の実施例に示すように、本発明は、以前に記載された製剤と比較する場合、驚くほど有効な経皮フラックスの速度を示すジクロフェナクナトリウムゲル製剤を提供する。
【0066】
従って、或る実施態様においては、本ゲル製剤は、非ステロイド性抗炎症及び少なくとも1の増粘剤を含み、有限投与フランツセル法で測定されるフラックスが比較液体製剤のフラックスより大きいか等しいフラックスを有する。好ましくは、フラックスは、比較液体製剤のフラックスよりも少なくとも1.5倍大きい。換言すれば、(i)非ステロイド性抗炎症及び少なくとも1の増粘剤を含むゲル製剤のフラックス、対(ii)比較液体製剤のフラックス、の比率は、好ましくは、1.0よりも大きく、より好ましくは、少なくとも約1.5である。
【0067】
更なる実施態様においては、本発明は更に、ジクロフェナク溶液及び少なくとも1の増粘剤を含み、有限フランツセル法で測定されるフラックスがジクロフェナク溶液単独のフラックスと少なくとも同等のフラックスを有するジクロフェナクナトリウムゲル製剤を提供する。好ましくは、ジクロフェナクナトリウムゲル製剤は、ジクロフェナクナトリウム溶液単独のフラックスに比べて少なくとも2.0倍大きいフラックスを有する。より好ましくは、本発明は、ジクロフェナクナトリウム溶液単独のフラックスに比べて少なくとも4.0倍大きいフラックスを有するジクロフェナクナトリウムゲル製剤を提供する。換言すれば、(i)ジクロフェナクナトリウムゲル製剤のフラックス、対(ii)ジクロフェナクナトリウム溶液のフラックス、の比率は、少なくとも約1.0、好ましくは少なくとも約2.0、より好ましくは少なくとも約4.0である。
【0068】
更に更なる実施態様においては、本発明は、ジクロフェナクナトリウム及び少なくとも1の増粘剤を含み、複数回有限投与フランツセル法(0及び6時間に2.5mg/cm2で投与する)で測定されるフラックスが24時間で少なくとも0.1μg/hr/cm2、好ましくは、24時間で少なくとも0.2μg/hr/cm2を有するジクロフェナクナトリウムゲル製剤を提供する。
【0069】
b)粘度
別の実施態様においては、本発明は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)及び少なくとも1の増粘剤を含むゲル製剤であって、前記ゲル製剤が少なくとも100cPの粘度を有する、前記ゲル製剤を提供する。好ましくは、ゲル製剤は、少なくとも500cPの粘度を有する。より好ましくは、ゲル製剤は、少なくとも1000cPの粘度を有する。他の実施態様においては、粘度は、5000〜10,000、10,000〜15,000、又は15,000〜20,000cPである。
【0070】
更なる実施態様においては、本発明は、ジクロフェナク溶液及び少なくとも1の増粘剤を含むジクロフェナクゲル製剤であって、前記ゲル製剤が約1000cPの粘度及び多数回有限投与フランツセル法(0及び6時間に2.5mg/cm2)により24時間で測定されるフラックスが少なくとも0.2μg/cm2/hrのフラックスを有する、前記ゲル製剤を提供する。
【0071】
c)安定性
薬物製品組成物の安定性は、薬物開発の期間及び費用、官公庁への提出書類を裏付けるのに必要な研究の性質、並びに最終的な安全性及び承認可能性に著しい影響を有し得る。
【0072】
例えば、組成物中の様々な成分間の相互作用によりゆっくり時間をかけて生じる不純物又は分解産物の量を最小限に抑えることは重要である。このことは、皮膚透過性を増すように設計される組成物においては、特に重要であり得る。
【0073】
従って、ある実施態様においては、本発明は、室温で6カ月の間に1%未満だけ分解するジクロフェナクナトリウムゲル製剤を提供する。より好ましくは、分解速度は、室温で6カ月の間に、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2未満、又は0.1%未満、及び間にある全部分である。
【0074】
d)乾燥時間
米国特許第4,575,515号及び第4,652,557号明細書の組成物などの既に開示された組成物(本明細書においては「比較液体製剤」又は「比較例」と称する)と比較して、本発明の組成物は、薬物のより高い経皮フラックスを達成しながら、より速く乾燥する。皮膚の水分補給が経皮フラックス又は浸透を増すことが知られているので、より高いフラックス速度及びより速い乾燥を、合わせて達成することができることは、驚くべきことである。迅速な蒸発により引き起こされる皮膚の乾燥は、皮膚上に残存する薬物の経皮輸送を減らす傾向があるであろう。等しい量の2つの製品を、反対側の手足で試験する場合、乾燥時間の差は明らかである。三十(30)分以内に、本発明の組成物は、ほとんど完全に乾燥するのに対して、以前に記載された液体製剤は、著しい量が残存する。
【0075】
より定量的に乾燥時間を比較するために、並列比較を行なった。これを達成するために、発明者らは、先行技術の製剤及び本発明の組成物の等しい量(100mg)を、10cm2面積を覆う秤量皿に入れて、時間的に残存量を秤量することにより、製剤の残渣重量を測定した。この方法論を用いて、違いは、直ちに目に見え、4時間では劇的に違ってくる(表11及び図10)。
【0076】
e)薬物動態
本発明の組成物及び米国特許第4,575,515号及び第4,652,557号明細書からの比較組成物についてジクロフェナクナトリウム吸収の比較を、動物で行なった。本発明のゲルは、これらの特許の比較液体組成物よりも、投与量基準当たりで吸収を改良したことが示された。絶対量では、本発明のゲルの臨床用量は、定常状態での最大観測血漿濃度(Cmax)81ng/mL及び濃度曲線下面積(AUC)584ng/mLを送達した。これは、比較組成物に対する12ng/mL及び106ng/mLに匹敵する。
【0077】
これらの結果は、活性薬剤の送達において、賦形剤の特性を支持する。ゲルについての1日当たり二(2)回(全量4.0mL)に比べて、溶液組成物を1日当たり四(4)回投与(全量5.2mL)したにもかかわらず、ゲルについてのより高い数値が見られた。
【0078】
III.ゲル製剤の製造
別の実施態様においては、本発明は、ジクロフェナクナトリウムのゲル製剤を作る方法を提供する。本発明のゲル製剤は、好ましくは次の工程を実施することにより作られる:(i)増粘剤、その誘導体及び/又はその混合物をジメチルスルホキシド中に分散して、1時間撹拌する工程;(ii)ジクロフェナクナトリウムを水性アルコール混合物(例えばエタノール/水混合物)中に溶解する工程;(iii)プロピレングリコール及びグリセロールを(ii)からのNSAID溶液中に分散する工程;並びに(iv)得られたNSAID溶液を増粘剤/ジメチルスルホキシドブレンド中に混合して、周囲温度で1時間撹拌する工程。代替方法としては、本発明のゲル製剤は、次の工程を実施することにより作ることができる:(i)NSAID(例えばジクロフェナクナトリウム)をDMSOのアルコール溶液(例えばエタノール/ジメチルスルホキシド混合物)中に分散する工程;(ii)増粘剤、その誘導体及び/又はその混合物を水/プロピレングリコール/グリセロール溶液中に分散して、1時間撹拌する工程;(iii)(i)からのNSAID溶液を(ii)からの増粘剤ブレンド中に混合して、周囲温度で1時間撹拌する工程。ゲル形成を促進するのを助けるために、これらの混合プロセスの間に、加熱を使用することもできる。
【0079】
ジクロフェナクナトリウムは、約0.1%〜10%w/w、例えば0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、及び9.0%w/wの範囲に存在することができる。
【0080】
IV.使用の方法
本発明の組成物は、慢性的に変形性関節症(OA)の治療に使用するのに特に適している。それらはまた、関節痛、関節軟骨の変性、運動障害、及び硬直(stiffness)を特徴とする他の慢性関節疾患の治療に有用でもあり得る。適した関節としては、膝、肘、手、手首及び股関節が挙げられる。
【0081】
より高いフラックス及びより大きいインビボの吸収という特性によって、本発明の製剤は、以前に記載された製剤より低い投与量で投与することができると考えられる。具体的には、本発明の組成物は、OAの治療において1日2回投与又は1日1回投与で使用することができることが期待される。これは、有意義な改良を表わすであろう。何故ならより低い投与量が、慢性病態を治療することにおいて重要な因子である、患者のよりよい薬剤服用遵守を伴うからである。
【0082】
1投与当たりに適した量は、一般には、個人ごとに及び関節ごとに変わる関節のサイズに依存するであろうが、しかしながら、適した量は、0.5μL/cm2〜4.0μL/cm2の範囲にあり得る。好ましくは、その量は、2.0〜3.0μL/cm2の範囲にある。
【0083】
本発明の組成物は、必要なら、有効成分を含有する1以上の単位投薬形態を含有する、FDAにより承認される、ボトル若しくはジャー又はその他の容器中に存在することができる。包装又はディスペンサーはまた、医薬の製造、使用又は販売を規制する政府機関により処方される形態で容器に付けた注意書を添えることもできる。その注意書は、ヒト又は獣医用投与のための組成物形態の当局による承認を表示するものである。そのような注意書は、例えば、処方医薬品のために米国食品医薬品局により承認されたラベル付けであるか又は承認を得た製品の添付文書であることができる。適合性の医薬担体中に製剤化される本発明の製剤を含む組成物はまた、調製し、適当な容器に入れて、指示された病態の治療用にラベルを貼ることもできる。
【0084】
以下の実施例は、請求の範囲に記載されている発明を説明するために提供されるが、これに限定されるものではない。
【0085】
V.実施例
実施例1:材料及び方法
表1は、下に与えられる実施例に使用される材料のリストを与える:
【表1】
【0086】
与えられるそれぞれの実施例の製剤に対する一般的方法論は、別に指示しない限り、下記のとおりである。
【0087】
それぞれの製剤のための最終重量は、50mLガラスバイアル中に調製した25gであった。ゲルを混合するために、ボルテキシング又は電磁撹拌棒を使用した。
【0088】
粘度は、LV Spindle #31を備えたプログラム制御可能なレオメーター Brookfield DV−III Ultraを用いて、10rpm、22℃で測定した。安定性試験のためには、ゲルを、周囲温度又はインキュベーター中50℃で貯蔵した。変色又は時間的相分離を含む外観の変化を評価した。
【0089】
DMSOの濃度は、全実験において終始変わらないようにした(45.5%w/w)。プロピレングリコールは、11又は11.2%w/wのいずれかであった。エタノール濃度は、11%から30%w/wまで変動した。グリセロール濃度は、0から11.2%w/wまで変動した。ジクロフェナクナトリウム濃度は、1.5%(w/w)又は2%(w/w)のいずれかであった。水は、溶液中に存在する不活性物、増粘剤、及びジクロフェナクナトリウムの量を補うように調整した。
【0090】
様々なゲル製剤の基質膜を横切るジクロフェナクナトリウムフラックス速度を解析するために、フランツ拡散セル実験を用いた。フランツ拡散セルは、経皮フラックス速度を測定するために通常よく知られている方法である。一般的なフランツセル法は、Franz,T.J.,Percutaneous absorption:on the relevance of in vitro data.J Invest Derm,64:190−195(1975)に記載されている。以下は、本実施例において使用した方法論であった。
【0091】
3mLのレセプターウェル容積を有するフランツセルを、分層死体皮膚(split thickness cadaver skin)(0.015”〜0.018”,AlloSource)と併せて用いた。ドナーウェルは、〜0.5cm2の面積を有した。レセプターウェルを、0.01%アジ化ナトリウムをドーピングした等張リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で満たした。完全密封を確保するためにフランツセルのフランジに、真空グリースを塗布して、ピンチクランプ(SS#18VWR80073−350)を用いて一様な圧力で締め付けた。フランツセルを組み立てた後、皮膚を、PBSで45分間、予め水和させた。次いで、PBSを除去した後、適当量の製剤を皮膚に添加する。投与レベルは、2mg/cm2(有限投与を考慮)から200mg/cm2(無限投与を考慮)まで変動した。次いで、ドナーウェルに蓋をして蒸発を防止した。フランツセルのレセプターウェルは、撹拌棒による断続的撹拌を備えた撹拌ドライブロック中、37℃(皮膚表面の温度は、〜31℃である)に維持した。様々な時点でレセプターウェルからサンプルを取り出した。6回反復で測定を行なった。サンプル中のジクロフェナク濃度は、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析した。本発明の製剤は、無限投与とは対照的に、インビボ状況での製剤性能のはるかに良好な予知因子である有限投与−有限投与の限界において、比較例よりも良好に機能した。
【0092】
A)比較液体ベース溶液から得るゲル製剤
実施例2:比較液体製剤ベース溶液中に様々な増粘剤を用いるゲル製剤
最初に、カルボマー、ポリビニルピロリドン、ローカストガム、セルロースポリマー及びポリビニルアルコールを含むいくつかの増粘剤を、ベース溶液として比較液体製剤を用いるジクロフェナクナトリウムゲル形成におけるその有効性について試験した。本実施例のゲル製剤においては、比較液体製剤溶液を製造し、次いでこのベースに直接に増粘剤を添加した。増粘剤の混和を促進するために、激しいボルテキシング/ホモジナイズ処理と一緒に超音波及び加熱(60℃で)を行なった。
【0093】
いくつかの増粘剤、特にグアールガム、ローカストビーンガム、メトセル(HPMC)、ポリビニルアルコール、及びポロキサマー407は、安定なゲルを形成できなかった。具体的には、即時の分離、非効率的な濃厚化、及び増粘剤の不溶性が注目された。ヒドロキシエチルセルロース(ナトロゾールHHX)及びヒドロキシプロピルセルロース(HY119)を含むいくつかのセルロースポリマーについては、初期安定性を示したゲルが形成された。初期に安定なゲルを示したその他の増粘剤は、PVP、及びアクリルポリマー増粘剤であった。
【0094】
それぞれの増粘剤に対するゲル製剤の明細を下に与える:
HEC増粘剤:
低重量分子量のヒドロキシエチルセルロース(特にヒドロキシエチルセルロース(HEC)Type 250 M Pharm(Natrosol(商標)))を、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコール、グリセリン及び水の混合物中に分散して、約1時間膨潤させて置いた。ジクロフェナクナトリウムを、エタノールに溶解し、HEC/溶媒ブレンドに添加して、最終製剤を得た。HECゲルは、比較的容易に形成し、良好なフラックスプロファイルを示すけれども、ゲルは、黄色味がかった色をして、長期間にわたる貯蔵により相分離しやすい。表2は、これらの製剤の組成物を示し、これらの組成物について得られたフラックス値を、比較液体製剤と比較して、図1に示す。
【0095】
PVP増粘剤:
比較液体ベース製剤のすべての他の成分を混合した後に、PVPを8%w/vまで添加した。PVPゲルは、本質的に透明であるが、乾燥時に望ましくない粘着性の感触を欠点として持つ。表2及び図1は、このゲルに対する組成物及びフラックスデータを示す。この実施例においては、フランツ拡散セルは、フランツセル当たり15mgで投与された。図1に見ることができるように、PVPゲルは、かなり良好に機能したが、しかしその望ましくない美的性質により、市販用の実施態様に対して理想的なものとはならない。
【表2】
【0096】
カルボポール増粘剤:
カルボポールゲルを次の工程により形成した:(1)アクリルポリマーを、水、グリセロール、及びプロピレングリコールの混合物中に分散し、そのあと1時間撹拌する工程;(2)エタノール及びDMSO中に溶解した1.5%ジクロフェナクナトリウムの第2の溶液を調製する工程;(3)ジクロフェナク溶液を、カルボポール相中に混合する工程。カルボポールゲルを形成する代替方法は、次のとおりである:(1)カルボポールを、ジメチルスルホキシド中に分散して、1時間撹拌する工程;(2)ジクロフェナクナトリウムを、エタノール/水/プロピレングリコール混合物中に溶解する工程;(3)グリセロールを、ジクロフェナク溶液中に分散する工程;及び(4)ジクロフェナク溶液を、ポリマー/ジメチルスルホキシドブレンド中に混合して、周囲温度で1時間撹拌する工程。これらの混合方法は、室温で、又は必要なら高い温度で実施することができる。カルボポール1342、941、971、981、974及びウルトレツ10(Noveon,Inc.)を含むゲルを作るために、様々なカルボポールを使用した。すべてのカルボポールゲルは、透明であり、凍結−解凍サイクルに対しても1カ月間高い温度(50℃)でのインキュベーションに対しても安定であることがわかり、良好な流動特性を有していた。表2、3、及び4は、これらのゲルの組成物を示し、図1、2、及び3は、それらの相対的フラックスを示す。安定なそして透明なゲルは、1.5%w/wジクロフェナクナトリウムでゲルを作るとき、〜>0.3%w/wのカルボポール濃度で形成され得るであろう。2%w/wジクロフェナクナトリウムを有するゲルに対しては、〜>0.9%w/wカルボポールが、安定なゲルをつくるのに必要であった。ゲルを形成するのに必要なカルボポールの正確な量は、用いるカルボポールの型に依存する。
【0097】
表3の製剤に対しては、フランツ拡散ゲルは、フランツセル当たり200μLで投与された。カルボポールゲルは、一様に、比較例製剤を超えるフラックス速度の増加を示した(図2を参照のこと)。より高粘度のゲル(すなわち、より高い重量パーセントのカルボポールを含むゲル)は、より低い重量パーセントの同じカルボポールを含む組成物よりも少ないフラックスを有する傾向があった。
【表3】
【0098】
酸化防止剤及びキレート化剤はまた、カルボポール、HEC、又はPVPゲルに添加することもできる。EDTAのカルボポールゲルへの添加はそれだけで、わずかに曇ったゲルをもたらす。BHAゲルは、より高い温度でのインキュベーションで色が変わった。BHT及びEDTAのカルボポールゲルへの混合は、任意の変色を示さず、透明のままであった。表4の製剤については、フランツ拡散セルは、セル当たり50μLで投与された。図3は、これらのゲルからのフラックス速度を示す。キレート化剤及び保存剤の添加では、フラックス速度に対して影響がなかった。
【表4】
【0099】
B.比較実施例
実施例3:比較液体製剤に対する様々なDMSOゲル製剤の経皮フラックスの比較
ベース溶液を比較ベース製剤から変えて、一連のジクロフェナクゲル製剤を作成した。具体的には、プロピレングリコール、エタノール、グリセリン、水、及びジクロフェナクの重量パーセントを変えた。これらの新しい製剤においては、構成化学薬品の重量パーセントは、次の通りであった:45.5%DMSO、20〜30%エタノール、10〜12%プロピレングリコール、0〜4%グリセリン、2%ジクロフェナクナトリウム、増粘剤、そして水を100%w/wまで添加した。
【0100】
この新しいベース溶液中で、いくつかの増粘剤を試験した。多数のこれらの増粘剤が、安定なゲルを形成できなかった;特に、カルボポールゲルは、安定なままでは存在しなかった。しかしながら、セルロースゲルは、ゲル形成において一様に有効であった。これらのゲルのうち最も美的に満足を与えるものは、ヒドロキシプロピルセルロース(HY117、HY119、HY121)で形成された。これらのゲルは、容易に展延し、本質的に一様であり、速く乾燥し、及び良好な流動特性を示した。
【0101】
ヒドロキシプロピルセルロースゲルは、すべての構成成分を混合し、次いで最後に増粘剤を添加し、そのあと撹拌することにより形成した。ゲルはまた、ヒドロキシプロピルセルロースを、溶媒添加前に、水相中に分散することにより形成することもできる。ゲル形成を促進するために加熱を用いることができる。ヒドロキシプロピルセルロースゲルは、透明であり、容易に流動した。それらは、少なくとも6カ月間安定なままであり、相分離がなく、pHの変化は無視し得るほどであり、分解生成物量は低い(<0.04%)ことを示している。図4〜9のデータは、表5〜10の製剤から得られるが、本発明のジクロフェナクナトリウムのヒドロキシプロピルセルロースゲル製剤がまた、比較液体製剤より4倍もの高い経皮フラックス速度をも与えることを示している。
【0102】
米国特許第4,575,515号及び第4,652,557号明細書の比較液体製剤(表5〜10の「比較例」)と比較して、本発明の様々なジクロフェナクゲル製剤の相対的経皮フラックスを測定するために研究を行なった。それに応じて、様々なジクロフェナクゲル製剤のジクロフェナクフラックス速度を比較液体製剤と比較するために、上記のフランツセル法を用いた。
【0103】
表5の製剤に対しては、フランツセルは、フランツセル当たり10mgで投与された。新しいゲル(F14/2)は、比較液体製剤を超える変更されたベース溶液を有し、より速い乾燥時間とより良好なフラックス動力学との両方を示す(図4を参照のこと)。これらのゲルに対するフラックス速度は、カルボポールゲル(F971)ほど高くはないが、乾燥速度は、実質的により速い。
【表5】
【0104】
表6の製剤に対しては、フランツ拡散セルは、セル当たり7mgで投与された。pHを下げることにより、フラックス速度の顕著な増加が示される(図5を参照のこと)。
【表6】
【0105】
表7の製剤に対しては、フランツセルは、フランツセル当たり7mgで投与された。これらの製剤のそれぞれに対して得られたフラックス速度を、図6に示す。
【表7】
【0106】
表8の製剤に対しては、比較液体製剤(1.5%ジクロフェナクナトリウム)は、フランツセル当たり20mgで投与された。Solaraze(商標)(市販の3%ジクロフェナクナトリウムゲル)は、フランツセル当たり10mgで投与され、F14/2は、フランツ拡散セル当たり15mgで投与された。この投与においては、すべてのセルが、当量のジクロフェナクナトリウムで投与されたことになる。F14/2は、引き続きその他の製剤を超える性能の増加を示した(図7を参照のこと)。
【表8】
【0107】
表9の製剤に対しては、比較液体製剤は、フランツセル当たり0.9mgで、0、4、8、及び12時間に投与された。F14/2は、フランツセル当たり1.5mgで、0及び6時間に投与された。ゲルからの累積投与量は、比較例溶液と比較してかなり高く、〜1.5倍のフラックスの増加を与えた(図8を参照のこと)。
【表9】
【0108】
表10の製剤に対しては、フランツセルは、セル当たり20mgで投与された。これらの製剤に対して得られたフラックス速度を図9に示す。
【表10】
【0109】
実施例4:様々なジクロフェナクゲルの経皮フラックスについての比較例データ
Baboota(Baboota et al.,Methods Find.Exp.Clin.Pharmacol.,28:109−114(2006))により記載されたジクロフェナクジエチルアミンゲル製剤などの既に開示された製剤と比較して、本発明のジクロフェナクゲル製剤の相対的経皮フラックスを測定するために研究を行なった。従って、Babootaにより記載されたジクロフェナク製剤のうちの3つのフラックス速度を本発明のゲル賦形剤と比較するために、上記のフランツセル法を用いた。Babootaが用いた形態と同様に、ジクロフェナクのジエチルアミン形態を、活性薬剤として用いた。この研究に使用される製剤の正確な組成を、下の表11に示す。Babootaの製剤は、FY1、FY2、及びFY3とラベルされ、一方、活性物としてジクロフェナクジエチルアミンを含む本発明の賦形剤を用いるゲル製剤は、G14/2_mとラベルされる。比較液体製剤もこの研究に含まれた(「比較例」)。Babootaの製剤の組成物と本発明に開示されるものとの間の主要な違いの中には、本製剤のより高いDMSO濃度が在る(45.5%w/w対10%w/w)。
【0110】
図10に示すデータから明らかなように、もっともBabootaの製剤もゲルではあるが、本発明の賦形剤は、著しくより大きいフラックス速度を与える。12時間後に、本発明のゲルは、累積投与量が、Babootaの最高性能ゲルの8.9μg/cm2に対して26.8μg/cm2を与える。従って、本発明のゲルは、Babootaにより記載される類似のゲルよりも3倍近く大きいジクロフェナクのフラックスと累積の速度を有する。ここで留意すべきは、これらの実験が、定期的に適用される非閉塞組成物の臨床投与のより代表的なものであるが、しかし皮膚との連続的な接触にあることを意味しない、有限投与で行なわれたことである。更に、Babootaのゲルはまた、本発明の賦形剤を用いる組成物の2%w/wと比較して3.4%w/wという、より高いパーセンテージの活性薬剤を含有していた。
【0111】
Babootaのゲルと比較する場合、本発明のゲルの粘稠度と安定性を含めて、その他の利点も観察された。本ゲルの滑らかな一様な粘稠度と対照的に、Babootaのゲル製剤は、曇った塊だらけの、従って、ゲル様粘稠度を維持することができないものであった。こういう理由で、Babootaの組成物は、何らかの安定性の問題及び短い貯蔵寿命を有することが予想されるであろう。
【0112】
従って、有限投与プロトコルを用いて、直接比較を行なう場合、両方ともゲル製剤であるにもかかわらず、Baboota et al.により記載されたもう一つのゲル製剤と比較した場合、本発明の製剤は、ジクロフェナク活性薬剤の経皮送達においてかなり有効である。更に、図7に示すように、本発明の製剤はまた、市場で現在売られている製品であるジクロフェナクゲルSolaraze(商標)と比較する場合、著しく良好に機能した。従って、本発明は、Babootaにより記載された既に開示されたジクロフェナクジエチルアミンゲル製剤又はSolaraze(商標)ゲルにより具体化されたジクロフェナクナトリウム製剤と比較する場合、思いがけなく優れた特性(例えば、経皮フラックス速度、好ましい組成物粘稠度、及びより大きい安定性と自己寿命などのパラメーターについて)を有するジクロフェナクナトリウムゲル製剤を提供するものである。
【表11】
【0113】
実施例5:比較液体製剤溶液 対 対応するゲルの乾燥時間/残渣重量の比較
比較液体製剤溶液の乾燥時間を対応するゲルと比較して評価するために、この実施例に記載される研究を行なった。比較液体製剤溶液又はジクロフェナクナトリウムゲル製剤のいずれかの等重量の量(100mg)を、プラスチック秤量皿上に計り取り、10cm2の面積に展延し、次いで周囲温度にさらして放置した。選択した時点(複数)で、プラスチック秤量皿を再び秤量して、秤量皿上に残存する組成物の質量を測定した。下の表12及び図11のデータにより示されるように、驚くべきことには、24時間の乾燥期間の後でさえ、最初に適用した比較液体製剤組成物重量のほとんどすべて(90%近く)が、秤量皿上に残存したことが見出された。従って、比較液体製剤の重量は、測定した時点にわたりほんの少ししか変化しなかった。これは、液体製剤の乾燥が非常にゆっくり起こったことを示している。
【0114】
対照的に、最初の5分以内でさえ、3つのゲル製剤は、液体製剤よりも迅速な乾燥を示した。乾燥時間4時間後に、残存した液体製剤が90%を超えるのに比較して、2%又は4%HPCを含有した2つのゲルの重量の70%が残存した。24時間までには、残存した液体製剤がほとんど90%であるのに比較して、それぞれ2%及び4%HPCを含有する2つのゲル製剤の重量の20%及び30%をわずかに超える量が残存し、F971ゲルの重量の60%をわずかに下回る量が残存したように、この違いはなお一層はっきりした。これは驚くべき結果である。何故なら、半固体ゲル製剤に比較して、液体製剤の方がより速く重量を失い、より短い乾燥時間を有することが期待されたであろうからである。従って、この実施例は、比較可能な液体製剤に比較して本発明のゲル組成物がすぐれた乾燥特性を示すことを実証する。
【0115】
従って、特定の実施態様においては、本発明は、乾燥時間24時間後に出発量の多くとも50%重量が残渣として残存し、好ましくは、乾燥時間24後に出発量の30〜40%以下の重量が残渣として残存するような乾燥時間を有する製剤を提供するものである。
【0116】
本発明のゲル製剤の改良された乾燥時間により、改良された使いやすさが提供され、より良好な患者の薬剤服用遵守をもたらすことが期待される。従って、本発明は、上記の実施例に示される有利な経皮フラックスデータにより明らかなように、改良された薬物送達をも提供しながら、改良された乾燥特性を有するゲル製剤を提供するものである。
【表12】
【0117】
実施例6:比較液体製剤 対 ジクロフェナクナトリウムゲル製剤の安定性特性の比較
この実施例は、6カ月期間にわたり室温で、対照製剤と対照して試験した本発明の組成物の安定性の比較を提供する。本発明の組成物がより高い濃度の活性薬剤を含有するのに、対照と比較して、それらが実際は結果的により低い濃度の分解不純物をもたらすことが、思いがけなく見出された。ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)をゲル化剤として用いる組成物が、カルボマーゲル化剤を用いて作られる組成物と比較して、この不純物を著しくより低い量で有していたことも、思いがけなく見出された。
【0118】
この研究においては、試験組成物のサンプルを、プラスチック製ネジ蓋付瓶中に入れて、これを密封して、25℃、湿度60%で6カ月間保持した。6カ月貯蔵期間の後、サンプルを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により不純物について試験した。活性薬剤ジクロフェナクナトリウムは、HPLCにより約11分の溶離時間で溶離することが見出された。貯蔵6カ月直後に、「不純物A」と称する不純物が、下の表13に示される様々な組成物について様々な量で、約6.6分で溶離するのが見られたことが見出された。
【表13】
【0119】
従って、表13のデータにより示されるように、より高い活性薬剤ジクロフェナクナトリウム濃度を有しながらも、3.5%HPCを含有する本発明のゲル製剤は、比較可能な液体形成物と比較して、より低いパーセンテージの「不純物A」の出現に反映されるように、より高度の安定性を示す。表13に示されるデータはまた、HPCゲル形成物が不純物Aのレベルにおいて少なくとも4倍の減少を示すように、HPCゲル形成物は、0.9%カルボポールを含有する比較可能なゲル形成物より安定であることも示している。従って、本発明のゲル形成物は、対照製剤について観察されたように、6カ月にわたり、0.034%又は0.09%未満だけ分解する製剤において明らかなように、対照製剤と比較して改良された活性薬剤安定性を提供する。更に、6カ月貯蔵期間後に本発明のゲル製剤において見出された「不純物A」の量は、結果的に不純物についての追加の非臨床試験を必要とする限度より十分低い暴露レベルをもたらすであろう。
【0120】
実施例7:液体製剤 対 ゲル製剤のインビボ経皮的(epicutaneous)吸収の比較
比較例溶液の局所適用後の全身性吸収(経皮的吸収ともいう)を本発明のゲルと比較するために、研究を行なった。1群(arm)当たり6匹のランドレース(Landrace)ブタを用いる並列計画を採用した。薬物を7日間適用し、8日目に追加投与をした。ベースラインを測定するために、1日目に血液をサンプリングし;定常状態を確認するために、6日目、7日目及び8日目のサンプルを採取し、及び24時間定常状態プロファイルを測定するために、追加サンプルを、7日目の0時間、2時間、5時間、7時間、12時間、15時間、及び24時間に採取し;消失プロファイル(eliminating profile)を測定するために、8〜13日目から採取したサンプルを使用した。
【0121】
この研究に使用した投与量は次の通りであった:比較例溶液群は、1投与1動物当たり3.85mgのジクロフェナクナトリウムを1日4回受け(received);ゲル群は、1投与1動物当たり8.08mgのジクロフェナクナトリウムを1日2回受け;投与面積は、5cmx10cm/動物であった。これらの量は、縮小された(scaled)ヒトの臨床用量を表す。
【0122】
サンプリング時間当たりそれぞれの動物から十分な血液を採集して、少なくとも2mLのリチウムヘパリン血漿/サンプルのために処理し、これをそれぞれ1mLの2つの部分サンプルに分割した。血液は、全動物から表14に示すように取り出した。
【表14】
【0123】
血漿データの薬物動態学的評価は、TopFit 2.11を用いて行なった。消失半減期及び濃度曲線下面積(AUC)の計算のために、非分画モデルを用いた。消失速度定数(Kel)及び血漿消失半減期(t1/2)は、個々の血漿濃度−時間曲線(c=濃度、t=時間)の対数/直線部の直線回帰分析により計算した。
半減期は、式:
【数1】
を用いて決定した。
【0124】
濃度曲線下面積(AUC)値は、一次台形法(linear trapezoidal method)を用いて計算し、そして最終測定可能血漿濃度を最終消失速度定数で割ることにより無限時間まで外挿した。ゼロ時間における血漿濃度は、試験8日目の投与前血液サンプリング時間における濃度であると見なした。濃度曲線下面積(AUC)は、式:
【数2】
を用いて計算した。
【0125】
ジクロフェナクナトリウムについて以下の薬物動態学的パラメーターを計算した:
AUC0〜24(試験7日目)
AUC0〜t(試験8日目)
AUC0〜inf(試験8日目)
Tmax(試験7、8日目)(Cmaxに到達する時間)
Cmax(試験7、8日目)(最大観測血漿濃度)
Cmin(試験7、8日目)(最小観測血漿濃度)
C(trough)(試験6、7、及び8日目)(トラフ血漿濃度)
Kel(消失半減期)
T1/2(血漿消失半減期)
【0126】
定常状態到達は、試験6、7、及び8日目の対数変換トラフ濃度を従属変数として、時間を独立変数として、対象者を変量効果として、並びに日を固定効果として用いる、反復測定ANOVA(分散分析)を用いることにより評価した。
【0127】
データを、図12並びに表16及び17に示す。本発明の組成物は、平均AUCにより測定されるように、ジクロフェナクナトリウムの著しくより多い吸収を示す。この結果は、投与量に対して調整する場合でさえ成り立つ。
【表15】
【表16】
【表17】
【0128】
実施例8:変形性関節症の治療におけるジクロフェナクゲルの臨床試験
膝の一次性変形性関節症(OA)の症状を有する対象者において、本発明のゲル製剤の安全性及び効能を評価するために臨床試験が行なわれるであろう。具体的には、ジクロフェナクゲル製剤、プラセボゲル(ジクロフェナクを含有しないゲル担体)のいずれかを受けるように無作為化された300人の対象者において、2対象者集団(arm)、二重盲検式、プラセボ比較、無作為化、12週の第III相臨床試験が行なわれるであろう。対象者は、1適用当たり彼(女)らのOA膝に対して2mLの研究ゲルを適用するであろう。
【0129】
効能評価のための主要変数は、WOMAC LK3.1(ウェスタンオンタリオ・マクマスター大学変形性関節症指数LK3.1版)痛み及び身体機能並びに患者総合健康評価(Patient Overall Health Assessment)であろう。副次的変数は、WOMAC硬直及び患者全般評価であろう。主要効能分析は、ジクロフェナクナトリウムゲル対象者集団 対 プラセボゲル対象者集団において、対象者に対するベースラインから主要効能変数の最終評価までの変化の比較であろう。
【0130】
より具体的には、膝OA症状に対するジクロフェナクゲルの効能は、WOMAC LK3.1 OA指数(痛み、身体機能、及び硬直の次元)、患者総合健康評価、及び患者全般評価を含む効能変数質問票により判断される対象者の主観的応答により測定されるであろう。(Bellamy,N.,WOMAC Osteoarthritis Index User’s Guide IV,Queensland,Australia(2003)を参照のこと)。
【0131】
WOMAC LK3.1、患者総合健康評価、及び患者全般評価の質問票は、5点リカート(Likert)スケールに基づくであろう。数値は、下記のとおり、WOMACLK 3.1スコア、患者全般評価スコア及び患者総合健康評価スコアに割り当てられるであろう:
患者総合健康評価及び
WOMAC LK3.1患者全般評価
なし=0 非常に良い=0
軽度=1 良い=1
中度=2 普通=2
重度=3 悪い=3
最重度=4 非常に悪い=4。
【0132】
WOMAC LK3.1 OA指数は、3つの独立した次元、すなわち痛み、硬直及び身体機能を有する、隔離された、多次元の、自己管理された指数であり、この研究において効能変数として使用されるであろう。
【0133】
本発明の好ましい実施態様においては、本発明のゲル製剤の適用は、局所的に適用する場合、結果的に12週の期間にわたり、少なくとも1リカートスケール単位のWOMACスケールに関する痛み又は身体機能の減少をもたらすであろう。更により好ましくは、2、3、又は4リカートスケール単位の減少が生じるであろう。最も好ましくは、本発明のゲル製剤の適用は、結果的に完全な痛みの除去及び完全な又はほぼ完全な身体機能の回復をもたらすであろう。
【0134】
安全性を評価するために、副作用の頻度が表にされるであろうし、最悪の皮膚刺激スコアが記録されるであろうし、そして生命徴候及び検査値の変化が評価されるであろう。
【0135】
本発明の前述の議論は、説明と記載の目的のために提出したものである。前述のことは、本明細書に開示される形態又は諸形態に本発明を限定することを意図しない。本発明の記載は、1以上の実施態様並びに特定の変形形態及び修正形態の記載を含んでいたけれども、他の変形形態及び修正形態が、本発明の範囲以内にある。例えば、本発明の開示を理解した後には、それらの形態が当業者の技術と知識の範囲内にあることができる通りである。請求の範囲に記載されているものに対して、代わりの、交換可能な、及び/又は等価な構造、機能、範囲、又は工程を含めて、許可される範囲で代替の実施態様を含む権利を取得することを意図している。この場合、そのような代わりの、交換可能な、及び/又は等価な構造、機能、範囲、又は工程が本明細書に開示されているかどうかを問わず、しかも任意の特許可能な主題を公に捧げることを意図しない。
【0136】
本明細書に引用されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、同じ範囲でその全体において参照することにより組み込まれる。それはあたかもそれぞれ個々の刊行物、特許又は特許出願が、具体的にそして個々に、その全体において参照することにより組み込まれるように指示されたかのようにである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ジクロフェナクナトリウム;
(ii)DMSO;
(ii)エタノール;
(iii)プロピレングリコール;
(iv)場合によりグリセロール;
(v)セルロースポリマー、カルボマーポリマー、カルボマー誘導体、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、多糖類、及びその混合物からなる群から選択される、増粘剤;並びに
(vi)水
を含む、ゲル製剤。
【請求項2】
ジクロフェナクナトリウムが1〜5%w/wで存在し;DMSOが30〜60%w/wで存在し;エタノールが1〜50%w/wで存在し;プロピレングリコールが1〜15%w/wで存在し;増粘剤が存在し;及び水が添加され100%w/wとなり、前記ゲル製剤が10〜50,000センチポアズの粘度を有する、請求項1に記載のゲル製剤。
【請求項3】
ジクロフェナクナトリウムが2%w/wで存在し;DMSOが45.5%w/wで存在し;エタノールが23〜29%w/wで存在し;プロピレングリコールが11%w/wで存在し;増粘剤がヒドロキシプロピルセルロース(HY119)であり、そして0〜6%w/wで存在し、並びに水が添加され100%w/wとなり、前記ゲル製剤が約500〜5000センチポアズの粘度を有する、請求項2に記載のゲル製剤。
【請求項4】
前記ゲル製剤が、皮膚に適用される場合、比較液体製剤よりも大きい乾燥速度と経皮フラックスの両方を有し、1〜5%グリセロールを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のゲル製剤。
【請求項5】
前記乾燥速度が、結果的に24時間後に出発量の多くとも50%の残渣をもたらし、前記経皮フラックスが、フランツセル法により測定される場合、比較液体製剤より1.5以上大きい、請求項4に記載のゲル製剤。
【請求項6】
前記フランツセル法が有限投与で行なわれる、請求項5に記載のゲル製剤。
【請求項7】
前記フランツセル法が無限投与で行なわれる、請求項5に記載のゲル製剤。
【請求項8】
前記ジクロフェナクナトリウムが、6カ月の間に0.04%未満だけ分解する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のゲル製剤。
【請求項9】
前記ゲル製剤がpH6.0〜10.0を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のゲル製剤。
【請求項10】
前記ゲル製剤が、局所的に適用される場合、12週にわたり痛みの減少を与える、請求項1〜3のいずれか一項に記載のゲル製剤。
【請求項11】
前記ゲル製剤が1日2回適用される、請求項10に記載のゲル製剤。
【請求項12】
前記痛みが変形性関節症によるものである、請求項10に記載のゲル製剤。
【請求項13】
関節の痛みに苦しむ対象者における変形性関節症を治療する方法であって、前記方法が:
(i)ジクロフェナクナトリウム;
(ii)DMSO;
(ii)エタノール;
(iii)プロピレングリコール;
(iv)場合によりグリセロール;
(v)セルロースポリマー、カルボマーポリマー、カルボマー誘導体、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、多糖類、及びその混合物からなる群から選択される、増粘剤;並びに
(vi)水
を含む治療的有効量のゲル製剤を前記対象者の苦痛関節域へ局所投与することを含み、それにより変形性関節症を治療する、前記方法。
【請求項14】
ジクロフェナクナトリウムが1〜5%w/wで存在し;DMSOが30〜60%w/wで存在し;エタノールが1〜50%w/wで存在し;プロピレングリコールが1〜15%w/wで存在し;増粘剤が存在し;及び水が添加され100%w/wとなり、前記ゲル製剤が10〜50,000センチポアズの粘度を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ジクロフェナクナトリウムが2%w/wで存在し;DMSOが45.5%w/wで存在し;エタノールが23〜29%w/wで存在し;プロピレングリコールが11%w/wで存在し;増粘剤がヒドロキシプロピルセルロース(HY119)であり、及び0〜6%で存在し;並びに水が100%w/wまで添加され、前記ゲル製剤が約500〜5000センチポアズの粘度を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ゲル製剤が、1〜5%グリセロールを含み、皮膚に適用される場合、比較液体製剤より大きい乾燥速度と経皮フラックスの両方を有する、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記乾燥速度が、結果的に24時間後に出発量の多くとも50%の残渣をもたらし、前記経皮フラックスが、フランツセル法により測定される場合、比較液体製剤より1.5以上大きい、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記フランツセル法が有限投与で行なわれる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記フランツセル法が無限投与で行なわれる、請求項17に記載のゲル製剤。
【請求項20】
前記ジクロフェナクナトリウムが、6カ月の間に0.04%未満だけ分解する、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ゲル製剤がpH6.0〜10.0を有する、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記局所投与が、12週にわたり痛みの減少を与える、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ゲル製剤が1日2回適用される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
痛みの治療のための医薬の製造におけるジクロフェナクナトリウムの使用であって、前記医薬が:
(i)ジクロフェナクナトリウム;
(ii)DMSO;
(ii)エタノール;
(iii)プロピレングリコール;
(iv)場合によりグリセロール;
(v)セルロースポリマー、カルボマーポリマー、カルボマー誘導体、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、多糖類、及びその混合物からなる群から選択される、増粘剤;並びに
(vi)水
を含むゲル製剤を含む、前記使用。
【請求項25】
ジクロフェナクナトリウムが1〜5%w/wで存在し;DMSOが1〜50%w/wで存在し;エタノールが30〜60%w/wで存在し;プロピレングリコールが1〜15%w/wで存在し;増粘剤が存在し;及び水が添加され100%w/wとなり、前記ゲル製剤が10〜50,000センチポアズの粘度を有する、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
ジクロフェナクナトリウムが2%w/wで存在し;DMSOが45.5%w/wで存在し;エタノールが23〜29%w/wで存在し;プロピレングリコールが11%w/wで存在し;増粘剤がヒドロキシプロピルセルロース(HY119)であり、及び0〜6%w/wで存在し;並びに水が100%w/wまで添加され、前記ゲル製剤が約500〜5000センチポアズの粘度を有する、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記ゲル製剤が、1〜5%グリセロールを含み、皮膚に適用される場合、比較液体製剤より大きい乾燥速度と経皮フラックスの両方を有する、請求項24〜26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
前記乾燥速度が、結果的に24時間後に出発量の多くとも50%の残渣をもたらし、前記経皮フラックスが、フランツセル法により測定される場合、比較液体製剤より1.5以上大きい、請求項24〜26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項29】
前記フランツセル法が有限投与で行なわれる、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記フランツセル法が無限投与で行なわれる、請求項28に記載のゲル製剤。
【請求項31】
前記ジクロフェナクナトリウムが、6カ月の間に0.04%未満だけ分解する、請求項24〜26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
32 前記ゲル製剤がpH6.0〜10.0を有する、請求項24〜26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
前記ゲル製剤が、局所的に適用される場合、12週にわたり痛みの減少を与える、請求項24〜26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
前記ゲル製剤が1日2回適用される、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
前記痛みが変形性関節症によるものである、請求項33に記載の使用。
【請求項36】
ジクロフェナク溶液並びにセルロースポリマー、カルボマーポリマー、カルボマー誘導体、セルロース誘導体、及びその混合物からなる群から選択される少なくとも1の増粘剤を含むゲル製剤。
【請求項37】
前記ジクロフェナク溶液が:
(i)ジクロフェナクナトリウム;
(ii)DMSO;
(ii)エタノール;
(iii)プロピレングリコール;
(iv)場合によりグリセロール;及び
(v)水
を含む、請求項36に記載のゲル製剤。
【請求項38】
前記少なくとも1の増粘剤がヒドロキシプロピルセルロースである、請求項37に記載のゲル製剤。
【請求項39】
ジクロフェナクナトリウムが1〜5%w/wで存在し;DMSOが30〜60%w/wで存在し;エタノールが1〜50%w/wで存在し;プロピレングリコールが1〜15%w/wで存在し;増粘剤が存在し;及び水が添加され100%w/wとなり、前記ゲル製剤が10〜50,000センチポアズの粘度を有する、請求項38に記載のゲル製剤。
【請求項40】
ジクロフェナクナトリウムが2%w/wで存在し;DMSOが45.5%w/wで存在し;エタノールが23〜29%w/wで存在し;プロピレングリコールが11%w/wで存在し;増粘剤がヒドロキシプロピルセルロース(HY119)であり、及び0〜6%w/wで存在し;並びに水が100%w/wまで添加され、前記ゲル製剤が約500〜5000センチポアズの粘度を有する、請求項39に記載のゲル製剤。
【請求項41】
前記ゲル製剤が、皮膚に適用される場合、比較液体製剤より大きい乾燥速度と経皮フラックスの両方を有し、1〜5%グリセロールを含む、請求項38〜40のいずれか一項に記載のゲル製剤。
【請求項42】
前記乾燥速度が、結果的に24時間後に出発量の多くとも50%の残渣をもたらし、前記経皮フラックスが、フランツセルにより測定される場合、比較液体製剤より1.5以上大きい、請求項38〜40のいずれか一項に記載のゲル製剤。
【請求項43】
前記フランツセル法が有限投与で行なわれる、請求項42に記載のゲル製剤。
【請求項44】
前記フランツセル法が無限投与で行なわれる、請求項42に記載のゲル製剤。
【請求項45】
前記ジクロフェナクナトリウムが、6カ月の間に0.04%未満だけ分解する、請求項38〜40のいずれか一項に記載のゲル製剤。
【請求項46】
前記ゲル製剤がpH6.0〜10.0を有する、請求項38〜40のいずれか一項に記載のゲル製剤。
【請求項47】
前記ゲル製剤が、局所的に適用される場合、12週にわたり痛みの減少を与える、請求項38〜40のいずれか一項に記載のゲル製剤。
【請求項48】
前記ゲル製剤が1日2回適用される、請求項47に記載のゲル製剤。
【請求項49】
前記痛みが変形性関節症によるものである、請求項47に記載のゲル製剤。
【請求項1】
(i)ジクロフェナクナトリウム;
(ii)DMSO;
(ii)エタノール;
(iii)プロピレングリコール;
(iv)場合によりグリセロール;
(v)セルロースポリマー、カルボマーポリマー、カルボマー誘導体、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、多糖類、及びその混合物からなる群から選択される、増粘剤;並びに
(vi)水
を含む、ゲル製剤。
【請求項2】
ジクロフェナクナトリウムが1〜5%w/wで存在し;DMSOが30〜60%w/wで存在し;エタノールが1〜50%w/wで存在し;プロピレングリコールが1〜15%w/wで存在し;増粘剤が存在し;及び水が添加され100%w/wとなり、前記ゲル製剤が10〜50,000センチポアズの粘度を有する、請求項1に記載のゲル製剤。
【請求項3】
ジクロフェナクナトリウムが2%w/wで存在し;DMSOが45.5%w/wで存在し;エタノールが23〜29%w/wで存在し;プロピレングリコールが11%w/wで存在し;増粘剤がヒドロキシプロピルセルロース(HY119)であり、そして0〜6%w/wで存在し、並びに水が添加され100%w/wとなり、前記ゲル製剤が約500〜5000センチポアズの粘度を有する、請求項2に記載のゲル製剤。
【請求項4】
前記ゲル製剤が、皮膚に適用される場合、比較液体製剤よりも大きい乾燥速度と経皮フラックスの両方を有し、1〜5%グリセロールを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のゲル製剤。
【請求項5】
前記乾燥速度が、結果的に24時間後に出発量の多くとも50%の残渣をもたらし、前記経皮フラックスが、フランツセル法により測定される場合、比較液体製剤より1.5以上大きい、請求項4に記載のゲル製剤。
【請求項6】
前記フランツセル法が有限投与で行なわれる、請求項5に記載のゲル製剤。
【請求項7】
前記フランツセル法が無限投与で行なわれる、請求項5に記載のゲル製剤。
【請求項8】
前記ジクロフェナクナトリウムが、6カ月の間に0.04%未満だけ分解する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のゲル製剤。
【請求項9】
前記ゲル製剤がpH6.0〜10.0を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のゲル製剤。
【請求項10】
前記ゲル製剤が、局所的に適用される場合、12週にわたり痛みの減少を与える、請求項1〜3のいずれか一項に記載のゲル製剤。
【請求項11】
前記ゲル製剤が1日2回適用される、請求項10に記載のゲル製剤。
【請求項12】
前記痛みが変形性関節症によるものである、請求項10に記載のゲル製剤。
【請求項13】
関節の痛みに苦しむ対象者における変形性関節症を治療する方法であって、前記方法が:
(i)ジクロフェナクナトリウム;
(ii)DMSO;
(ii)エタノール;
(iii)プロピレングリコール;
(iv)場合によりグリセロール;
(v)セルロースポリマー、カルボマーポリマー、カルボマー誘導体、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、多糖類、及びその混合物からなる群から選択される、増粘剤;並びに
(vi)水
を含む治療的有効量のゲル製剤を前記対象者の苦痛関節域へ局所投与することを含み、それにより変形性関節症を治療する、前記方法。
【請求項14】
ジクロフェナクナトリウムが1〜5%w/wで存在し;DMSOが30〜60%w/wで存在し;エタノールが1〜50%w/wで存在し;プロピレングリコールが1〜15%w/wで存在し;増粘剤が存在し;及び水が添加され100%w/wとなり、前記ゲル製剤が10〜50,000センチポアズの粘度を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ジクロフェナクナトリウムが2%w/wで存在し;DMSOが45.5%w/wで存在し;エタノールが23〜29%w/wで存在し;プロピレングリコールが11%w/wで存在し;増粘剤がヒドロキシプロピルセルロース(HY119)であり、及び0〜6%で存在し;並びに水が100%w/wまで添加され、前記ゲル製剤が約500〜5000センチポアズの粘度を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ゲル製剤が、1〜5%グリセロールを含み、皮膚に適用される場合、比較液体製剤より大きい乾燥速度と経皮フラックスの両方を有する、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記乾燥速度が、結果的に24時間後に出発量の多くとも50%の残渣をもたらし、前記経皮フラックスが、フランツセル法により測定される場合、比較液体製剤より1.5以上大きい、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記フランツセル法が有限投与で行なわれる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記フランツセル法が無限投与で行なわれる、請求項17に記載のゲル製剤。
【請求項20】
前記ジクロフェナクナトリウムが、6カ月の間に0.04%未満だけ分解する、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ゲル製剤がpH6.0〜10.0を有する、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記局所投与が、12週にわたり痛みの減少を与える、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ゲル製剤が1日2回適用される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
痛みの治療のための医薬の製造におけるジクロフェナクナトリウムの使用であって、前記医薬が:
(i)ジクロフェナクナトリウム;
(ii)DMSO;
(ii)エタノール;
(iii)プロピレングリコール;
(iv)場合によりグリセロール;
(v)セルロースポリマー、カルボマーポリマー、カルボマー誘導体、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、多糖類、及びその混合物からなる群から選択される、増粘剤;並びに
(vi)水
を含むゲル製剤を含む、前記使用。
【請求項25】
ジクロフェナクナトリウムが1〜5%w/wで存在し;DMSOが1〜50%w/wで存在し;エタノールが30〜60%w/wで存在し;プロピレングリコールが1〜15%w/wで存在し;増粘剤が存在し;及び水が添加され100%w/wとなり、前記ゲル製剤が10〜50,000センチポアズの粘度を有する、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
ジクロフェナクナトリウムが2%w/wで存在し;DMSOが45.5%w/wで存在し;エタノールが23〜29%w/wで存在し;プロピレングリコールが11%w/wで存在し;増粘剤がヒドロキシプロピルセルロース(HY119)であり、及び0〜6%w/wで存在し;並びに水が100%w/wまで添加され、前記ゲル製剤が約500〜5000センチポアズの粘度を有する、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記ゲル製剤が、1〜5%グリセロールを含み、皮膚に適用される場合、比較液体製剤より大きい乾燥速度と経皮フラックスの両方を有する、請求項24〜26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
前記乾燥速度が、結果的に24時間後に出発量の多くとも50%の残渣をもたらし、前記経皮フラックスが、フランツセル法により測定される場合、比較液体製剤より1.5以上大きい、請求項24〜26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項29】
前記フランツセル法が有限投与で行なわれる、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記フランツセル法が無限投与で行なわれる、請求項28に記載のゲル製剤。
【請求項31】
前記ジクロフェナクナトリウムが、6カ月の間に0.04%未満だけ分解する、請求項24〜26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
32 前記ゲル製剤がpH6.0〜10.0を有する、請求項24〜26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
前記ゲル製剤が、局所的に適用される場合、12週にわたり痛みの減少を与える、請求項24〜26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
前記ゲル製剤が1日2回適用される、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
前記痛みが変形性関節症によるものである、請求項33に記載の使用。
【請求項36】
ジクロフェナク溶液並びにセルロースポリマー、カルボマーポリマー、カルボマー誘導体、セルロース誘導体、及びその混合物からなる群から選択される少なくとも1の増粘剤を含むゲル製剤。
【請求項37】
前記ジクロフェナク溶液が:
(i)ジクロフェナクナトリウム;
(ii)DMSO;
(ii)エタノール;
(iii)プロピレングリコール;
(iv)場合によりグリセロール;及び
(v)水
を含む、請求項36に記載のゲル製剤。
【請求項38】
前記少なくとも1の増粘剤がヒドロキシプロピルセルロースである、請求項37に記載のゲル製剤。
【請求項39】
ジクロフェナクナトリウムが1〜5%w/wで存在し;DMSOが30〜60%w/wで存在し;エタノールが1〜50%w/wで存在し;プロピレングリコールが1〜15%w/wで存在し;増粘剤が存在し;及び水が添加され100%w/wとなり、前記ゲル製剤が10〜50,000センチポアズの粘度を有する、請求項38に記載のゲル製剤。
【請求項40】
ジクロフェナクナトリウムが2%w/wで存在し;DMSOが45.5%w/wで存在し;エタノールが23〜29%w/wで存在し;プロピレングリコールが11%w/wで存在し;増粘剤がヒドロキシプロピルセルロース(HY119)であり、及び0〜6%w/wで存在し;並びに水が100%w/wまで添加され、前記ゲル製剤が約500〜5000センチポアズの粘度を有する、請求項39に記載のゲル製剤。
【請求項41】
前記ゲル製剤が、皮膚に適用される場合、比較液体製剤より大きい乾燥速度と経皮フラックスの両方を有し、1〜5%グリセロールを含む、請求項38〜40のいずれか一項に記載のゲル製剤。
【請求項42】
前記乾燥速度が、結果的に24時間後に出発量の多くとも50%の残渣をもたらし、前記経皮フラックスが、フランツセルにより測定される場合、比較液体製剤より1.5以上大きい、請求項38〜40のいずれか一項に記載のゲル製剤。
【請求項43】
前記フランツセル法が有限投与で行なわれる、請求項42に記載のゲル製剤。
【請求項44】
前記フランツセル法が無限投与で行なわれる、請求項42に記載のゲル製剤。
【請求項45】
前記ジクロフェナクナトリウムが、6カ月の間に0.04%未満だけ分解する、請求項38〜40のいずれか一項に記載のゲル製剤。
【請求項46】
前記ゲル製剤がpH6.0〜10.0を有する、請求項38〜40のいずれか一項に記載のゲル製剤。
【請求項47】
前記ゲル製剤が、局所的に適用される場合、12週にわたり痛みの減少を与える、請求項38〜40のいずれか一項に記載のゲル製剤。
【請求項48】
前記ゲル製剤が1日2回適用される、請求項47に記載のゲル製剤。
【請求項49】
前記痛みが変形性関節症によるものである、請求項47に記載のゲル製剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2010−506952(P2010−506952A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533509(P2009−533509)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/081674
【国際公開番号】WO2008/049020
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(509111205)ヌーボ リサーチ インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Nuvo Research Inc.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/081674
【国際公開番号】WO2008/049020
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(509111205)ヌーボ リサーチ インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Nuvo Research Inc.
【Fターム(参考)】
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