説明

ジケトピロロピロール骨格を有するポリマーおよび白色発光材料

【課題】発光材料用ポリマーを提供する。
【解決手段】このポリマーは、下記式(1)で表されるユニットを有している。


(式中、環Zは芳香族炭化水素環又は縮合多環式芳香族複素環を示し、環Zは縮合多環式芳香族炭化水素環)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色発光材料などとして好適に使用できるジケトピロロピロール骨格を有する新規なポリマー、その製造方法および前記ポリマーで形成された被膜に関する。
【背景技術】
【0002】
表示素子や照明などの機器に供される白色発光は、光の3原色である、赤、緑、青のそれぞれの発光色を有する化合物を同時発光させる方法や、補色関係にある2色の材料(青色発光材料と橙色発光材料との組み合わせや青緑色発光材料と赤色発光材料との組み合わせなど)を同時発光させる方法などにより得ることができる。例えば、特開2002−237386号公報(特許文献1)には、ホスト材料としての特定のピレン誘導体(青色発光材料)と、ゲスト材料としての特定のカルコン型化合物(橙色発光材料)とを組み合わせることにより、白色発光層を形成することが開示されている。また、特開2004−200162号公報(特許文献2)には、特定のピロメテン化合物又はその金属錯体を含む白色発光層が開示されている。この文献には、このようなピロメテン化合物又はその金属錯体をドーパント材料とし、このドーパント材料と組み合わせるホスト材料として特定のピロロピロール誘導体などを選択することにより、白色発光層を形成できることが記載されている。
【0003】
しかし、これらの文献の技術では、低分子化合物同士を組み合わせて白色発光材料を形成するので、白色発光層の形態安定性に乏しく、また、このような白色発光材料を用いた表示素子や照明の耐久性を実用的なレベルで担保することが困難である。
【0004】
一方、補色関係にある化合物を共重合させてポリマー化する技術も知られている。例えば、非特許文献1(「月刊ディスプレイ ’08 9月号」、第43頁〜47頁)には、ジオクチルフルオレン骨格と、ナフタレンジカルボン酸などに由来する特定の芳香族骨格とがオキサジアゾール環を介して結合した構造を有する二元共重合体や、長鎖アルキルフルオレン骨格とフェノチアジン骨格とフルオレノン骨格とを結合した三元共重合体を合成したこと、これらの共重合体は共役系ポリマーであり、白色発光体として利用できることが記載されている。しかし、このような共役系ポリマーでは、単なる色素化合物をポリマー化しているため、耐久性の点で十分でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−237386号公報(特許請求の範囲、段落番号[0024]および[0025])
【特許文献2】特開2004−200162号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「月刊ディスプレイ 2008年 9月号」、第43頁〜47頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、発光材料(特に白色発光材料)などとして好適な新規なポリマー、およびこのポリマーで形成された被膜(塗膜又は膜)を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、発光材料としての耐久性に優れたポリマーおよびこのポリマーで形成された膜を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、上記のようなポリマーを効率よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定のカップリング反応によりジケトピロロピロール骨格と縮合多環式芳香族骨格(例えば、フルオレン骨格など)とを有し、耐久性に優れた白色発光可能なポリマーを効率よく製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明のポリマーは、ジケトピロロピロール骨格と、縮合多環式芳香族骨格とが結合している。このようなポリマーは、これらの骨格の結合により共役系を形成していてもよい。このようなポリマーは、例えば、下記式(1)で表されるユニットを有していてもよい。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、環Zは縮合多環式芳香族炭化水素環又は縮合多環式芳香族複素環を示し、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、RおよびRは同一又は異なってアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、mおよびnはそれぞれ0以上の整数を示す。)
上記式(1)において、特に、環Zはベンゼン環であってもよく、mは0〜3であってもよく、Rは炭素数4以上のアルキル基(例えば、C4−12アルキル基)であってもよい。
【0014】
特に、前記式(1)で表されるユニットは、環Zがフルオレン環であるユニット、例えば、少なくとも下記式(1A)で表されるユニットを含んでいてもよい。
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、n1は0〜3の整数を示し、Z、R、R、Rおよびmは前記と同じ。)
上記式(1A)において、Rは炭素数4以上のアルキル基(例えば、C4−12アルキル基)であってもよい。
【0017】
本発明のポリマーは、前記式(1)で表されるユニットに加えて、さらに、下記式(2)で表されるユニットを有していてもよい。
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Z、Rおよびnは前記と同じ。)
特に、上記式(2)で表されるユニットは、環Zがフルオレン環であるユニット、例えば、少なくとも下記式(2A)で表されるユニットを含んでいてもよい。
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、R、Rおよびn1は前記と同じ。)
上記式(2A)(および(1A))において、Rは炭素数4以上のアルキル基(例えば、C4−12アルキル基)であってもよい。
【0022】
前記式(2)で表されるユニットをさらに含む前記ポリマーにおいて、下記式(1b)で表されるユニット(例えば、下記式(1b)において環Zがフルオレン環であるユニット(後述のユニット(1c))など)の割合は、下記式(1a)で表されるユニット1モルに対して、例えば、20〜5000モル程度であってもよい。
【0023】
【化5】

【0024】
(式中、Z、Z、R、R、R、m、nは前記と同じ。)
本発明のポリマーは、前記のような骨格を有しているにもかかわらず、比較的高分子量であり、例えば、重量平均分子量は12000以上であってもよい。また、本発明のポリマーは、CIE色度図においてx=0.2〜0.4およびy=0.2〜0.4の発光色を示すポリマーであってもよい。
【0025】
本発明には、ジケトピロロピロール骨格を有する化合物と、縮合多環式芳香族骨格を有する化合物とをカップリング反応により重合させて前記ポリマーを製造する方法も含まれる。このような方法は、例えば、下記式(3)で表される化合物と下記式(4)で表される化合物とをカップリング反応により重合させる方法であってもよい。なお、この方法により、前記式(1)で表されるユニットを有するポリマーを効率よく得ることができる。
【0026】
【化6】

【0027】
(式中、XおよびYのうち、一方はハロゲン原子、他方はエチニル基であり、Z、Z、R、R、R、m、およびnは前記と同じ。)
上記式において、特に、Xがハロゲン原子であり、Yがエチニル基であってもよい。
【0028】
本発明には、前記ポリマーで形成された被膜も含まれる。このような被膜は、特に、厚みが100μm以下である膜(薄膜)であってもよい。
【0029】
また、本発明には、前記ポリマーを発光材料として用いた発光素子も含まれる。このような発光素子は、具体的には、発光層が、前記ポリマーで形成された発光素子であってもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明では、白色発光材料などとして好適な新規なポリマーを得ることができる。特に、このようなポリマーは、顔料として知られているジケトピロロピロール骨格を含んでいるとともに、高分子量化されており、発光材料としての耐久性に優れている。また、本発明のポリマーは、製膜性に優れ、簡便に発光膜(発光層)を形成することができる。特に、本発明では、ジケトピロロピロール骨格と縮合多環式芳香族骨格とを組み合わせることにより、容易に色純度を制御でき、そのため、容易に発光度(特に白色度)を高くできる。さらに、本発明の方法では、特定のカップリング反応を利用することにより、上記のようなポリマーを効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、実施例2で作製したポリマー薄膜の蛍光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[ポリマー]
本発明のポリマーは、ジケトピロロピロール骨格(詳細には、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオン骨格)と縮合多環式芳香族骨格とを有している。そして、このようなポリマーは、通常、これらの骨格が結合して共役系を形成していてもよい。
【0033】
ジケトピロロピロール骨格は、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオン骨格(構造)を有していればよいが、通常、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオンの3および6位に芳香族炭化水素基が置換した骨格であってもよい。
【0034】
また、縮合多環式芳香族骨格は、縮合多環式芳香族炭化水素骨格であってもよく、縮合多環式芳香族複素環[少なくとも1つの環が複素環(芳香族複素環)である縮合多環式芳香族骨格]であってもよい。特に、縮合多環式芳香族骨格は、縮合多環式芳香族炭化水素骨格であってもよい。なお、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオン骨格および縮合多環式芳香族骨格は、後述するように置換基を有していてもよい。
【0035】
ジケトピロロピロール骨格と縮合多環式芳香族骨格との結合は、直接結合であってもよく、連結基を介して結合していてもよい。連結基としては、代表的には共役系を形成可能な連結基、例えば、芳香環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族炭化水素環;オキサジアゾール環などの芳香族複素環)、ビニレン基(−CH=CH−)、エチニレン基(−C≡C−)、これらの基がさらに連結した基(例えば、ビフェニル環などの芳香環が直接結合で連結した環集合炭化水素環など)などが挙げられる。直接結合および連結基は、単独で又は2種以上組み合わせて、ジケトピロロピロール骨格と縮合多環式芳香族骨格とを結合していてもよい。これらのうち、ビニレン基又はエチニレン基で結合しているのが好ましく、特にエチニレン基で結合しているのが好ましい。前記骨格がエチニレン基で結合したポリマーは、後述するカップリング反応を利用することにより高分子量化したポリマーとして簡便に得ることができる。
【0036】
本発明のポリマーは、代表的には、下記式(1)で表されるユニット(骨格又はセグメント又は繰り返し単位)を有していてもよい。
【0037】
【化7】

【0038】
(式中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、環Zは縮合多環式芳香族炭化水素環又は縮合多環式芳香族複素環を示し、Rは水素原子又は炭化水素基を示し、RおよびRは同一又は異なって炭化水素基を示し、mおよびnはそれぞれ0以上の整数を示す。)
上記式(1)において、芳香族炭化水素環Zとしては、例えば、ベンゼン環、縮合多環式炭化水素環(ナフタレン環、アントラセン環などの縮合2乃至6環式炭化水素環)などが挙げられる。好ましい環Zは、ベンゼン環であってもよい。式(1)のユニットにおいて、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオンの3および6位に結合した2つの環Zは、同一又は異なる芳香族炭化水素環であってもよく、通常、同一であってもよい。なお、環Zは隣接するユニットとピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオン骨格とを連結する二価基であり、このような連結基としての環Zの形態は、特に限定されず、環Zの種類に応じて適宜選択できる。例えば、環Zがベンゼン環である場合、二価基は、1,4−フェニレン基(骨格)などのフェニレン基であってもよい。
【0039】
また、前記式(1)において、縮合多環式芳香族炭化水素環Zとしては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、ピレン環、フルオランテン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ペリレン環、ペンタセン環などの縮合2乃至6環式炭化水素環などが挙げられる。また、縮合多環式芳香族複素環Zとしては、例えば、窒素含有縮合多環式芳香族環(例えば、キノリン環、カルバゾール環、フェナトリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環など)、酸素含有縮合多環式芳香族環(例えば、キサンテン環など)、硫黄含有縮合多環式芳香族環(例えば、チアントレン環など)、複数のヘテロ原子を含む縮合多環式芳香族環(例えば、フェノチアジン環、フェノキサジン環など)などが挙げられる。好ましい環Zには、フルオレン環、ピレン環などの縮合多環式芳香族炭化水素環が含まれる。特に、本発明のポリマーは、環Zがフルオレン環である式(1)で表されるユニットを少なくとも有しているのが好ましい。なお、環Zは隣接するユニットとエチニレン基とを連結する二価基である。このような環Zは、通常、縮合環を構成する環のうち異なる環を介して連結している場合が多い。例えば、環Zがフルオレン環である場合にはフルオレン環の1〜4位のいずれかと5〜8位のいずれかを介して連結(例えば、フルオレン−2,7−ジイル基として連結)している場合が多く、環Zがピレン環である場合にはピレン環の1〜3位のいずれかと4〜10位のいずれか、又は4〜5位のいずれかと1〜3および6〜10位のいずれかを介して連結(例えば、ピレン−4,9−ジイル基として連結)している場合が多い。
【0040】
前記式(1)のR、RおよびRにおいて、炭化水素基としては、例えば、飽和脂肪族炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基などのC1−16アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5−10シクロアルキル基)]、不飽和脂肪族炭化水素基[例えば、アルケニル基(例えば、アリル基などのC2−20アルケニル基)、シクロアルケニル基(例えば、シクロヘキセニル基などのC5−10シクロアルケニル基)など]、芳香族炭化水素基[例えば、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基などのC6−10アリール基)など]、芳香脂肪族炭化水素基[例えば、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリールC1−4アルキル基)など]などが挙げられる。これらの炭化水素基は、さらに置換基[ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ基などのC1−4アルコキシ基など)、シアノ基、置換アミノ基(例えば、ジアルキルアミノ基など)、複素環基(例えば、カルバゾリル基などの窒素含有複素環基)など]を有していてもよく、有していなくてもよい。
【0041】
代表的なRは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。特に、Rは、溶媒溶解性や製膜性の観点から、長鎖アルキル基[例えば、炭素数4以上のアルキル基(例えば、ヘキシル基、オクチル基などのC4−16アルキル基、好ましくはC4−14アルキル基、さらに好ましくはC4−12アルキル基、特にC6−12アルキル基)など]などの炭素数が比較的大きな基(疎水性基)であってもよい。なお、式(1)のユニットにおいて、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオンの窒素原子に結合した2つの基Rは、同一又は異なる基であってもよく、通常、同一であってもよい。
【0042】
また、代表的な炭化水素基Rには、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基が含まれる。Rの置換数mは、環Zの種類によるが、例えば、0〜10、好ましくは0〜6、さらに好ましくは0〜4(例えば、0〜2)であってもよい。特に、環Zがベンゼン環である場合、mは0〜3、好ましくは0〜2、さらに好ましくは0〜1であってもよい。なお、異なる環Zに置換するRは同一又は異なる基であってもよく、同一の環Zに置換するRもまたmの数が複数の場合同一又は異なる基であってもよい。また、異なる環ZにおけるRの置換数mは同一又は異なる数であってもよい。
【0043】
また、代表的な炭化水素基Rには、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基が含まれる。特に、Rは、溶媒溶解性や製膜性の観点から、長鎖アルキル基[例えば、炭素数4以上のアルキル基(例えば、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのC4−16アルキル基、好ましくはC4−14アルキル基、さらに好ましくはC4−12アルキル基、特にC6−12アルキル基)など]などの炭素数が比較的大きな基(特に疎水性基)であるRが少なくとも環Zに置換していてもよい。Rの置換数nは、環Zの種類によるが、例えば、0〜10、好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜6、特に2〜4程度であってもよい。特に、Rがフルオレン環又はピレン環である場合、nは1〜6、好ましくは1〜4、さらに好ましくは2〜4(例えば、2)であってもよい。なお、環ZにおいてRはnの数が複数の場合同一又は異なっていてもよい。
【0044】
前記式(1)で表されるユニットは、代表的には、少なくとも下記式(1A)で表されるユニットを含んでいてもよい。このようなユニット(式(1)において環Zがフルオレン環であるユニット)を含むポリマーは、キャリヤ輸送能が高い。また、発光に寄与するエネルギー準位の点で、有機EL用などの発光材料において好適である場合が多い。
【0045】
【化8】

【0046】
(式中、Rは水素原子又は炭化水素基を示し、n1は0〜3の整数を示し、Z、R、R、Rおよびmは前記と同じ。)
上記式(1A)のRにおいて、炭化水素基としては、前記と同様の基が挙げられ、代表的には、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基が含まれる。特に、Rは、前記と同様に、長鎖アルキル基[例えば、炭素数4以上のアルキル基(例えば、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのC4−16アルキル基、好ましくはC4−14アルキル基、さらに好ましくはC4−12アルキル基、特にC6−12アルキル基)など]などであるのが好ましい。なお、2つのRは同一又は異なる基であってもよい。
【0047】
また、前記式(1A)においてRは、前記と同様であるが、代表的にはアルキル基(例えば、メチル基などのC1−4アルキル基)などであってもよい。なお、Rの置換数n1は、0〜1が好ましく、特に0であってもよい。また、式(1A)で表されるユニットにおいて、2つのn1は同一又は異なっていてもよい。
【0048】
本発明のポリマーは、通常、前記式(1)で表されるユニット(前記ユニット(1A)を含む、他に同じ)を複数有しているが、このような複数のユニットは、同一のユニットであってもよく、異なるユニット(例えば、Z、Z、R、R、R、m、およびnの少なくとも1つが異なるユニット)の組み合わせであってもよい。
【0049】
なお、前記式(1A)で表されるユニットを含む場合、前記式(1)で表されるユニット全体に対する前記式(1A)で表されるユニットの割合は、例えば、20〜100モル%、好ましくは40〜100モル%、さらに好ましくは60〜100モル%(例えば、80〜100モル%)程度であってもよい。
【0050】
本発明のポリマーは、前記式(1)で表されるユニットを有していれば、さらに他のユニットを有していてもよい。このような他のユニットは、特に、下記式(2)で表されるユニットであってもよい。
【0051】
【化9】

【0052】
(式中、Z、Rおよびnは前記と同じ。)
上記式(2)において、2つの環Zは同一又は異なる環(例えば、2つの環Zのいずれもフルオレン環、一方の環Zがフルオレン環であり他方の環Zがピレン環である場合など)であってもよい。また、2つの環Zに置換する基Rは同一又は異なっていてもよく、nの値も同一又は異なっていてもよい。さらに、2つの環Zに置換するRの数nは同一又は異なっていてもよい。
【0053】
前記式(2)で表されるユニットは、代表的には、少なくとも下記式(2A)で表されるユニットを含んでいてもよい。
【0054】
【化10】

【0055】
(式中、R、Rおよびn1は前記と同じ。)
上記式(2)において、4つのベンゼン環に置換する基Rは同一又は異なっていてもよく、n1の値も同一又は異なっていてもよい。さらに、フルオレン環の9位に置換する4つのRは同一又は異なっていてもよい。
【0056】
前記ポリマーは、前記式(2)で表されるユニット(前記ユニット(2A)を含む、他に同じ)を有する場合、通常、このようなユニット(2)を複数有しているが、このような複数のユニットは、同一のユニットであってもよく、異なるユニット(例えば、R、R、およびn1の少なくとも1つが異なるユニット)の組み合わせであってもよい。
【0057】
なお、前記式(2A)で表されるユニットを含む場合、前記式(2)で表されるユニット全体に対する前記式(2A)で表されるユニットの割合は、例えば、20〜100モル%、好ましくは40〜100モル%、さらに好ましくは60〜100モル%(例えば、80〜100モル%)程度であってもよい。また、前記式(2A)で表されるユニットと前記式(2)で表される他のユニット(例えば、環Zがピレン環であるユニットなど)とを有している場合、これらのユニットの割合(モル比)は、前者/後者=95/5〜5/95、好ましくは90/10〜10/90(例えば、90/10〜20/80)、さらに好ましくは85/15〜40/60(例えば、80/20〜50/50)程度であってもよい。
【0058】
なお、本発明のポリマーは、前記式(1)で表されるユニットを有しているが、通常、ユニット(1)と隣接するユニット(ユニット(1)、ユニット(2)などの他のユニット)とは、エチニレン基(−C≡C−)を介して連結されて(結合して)いる。
【0059】
例えば、前記式(1)で表されるユニットと、前記式(2)で表されるユニットを有するポリマーは、通常、下記式(i)で表されるユニット(又は繰り返し単位、すなわち、前記式(1)で表されるユニット同士がエチニレン基を介して結合したユニット)、下記式(ii)で表されるユニット(又は繰り返し単位、すなわち、前記式(1)で表されるユニットと前記式(2)で表されるユニットとがエチニレン基を介して結合したユニット)、下記式(iii)で表されるユニット(又は繰り返し単位、すなわち、前記式(2)で表されるユニット同士がエチニレン基を介して結合したユニット)を有している。そして、前記式(1)で表されるユニットおよび前記式(2)で表されるユニットを有するポリマーは、さらに、これらのユニット(i)〜(iii)がさらにエチニレン基を介して結合したポリマーである。
【0060】
【化11】

【0061】
(式中、Z、Z、R、R、R、m、nは前記と同じ。)
このような前記式(1)で表されるユニットおよび前記式(2)で表されるユニットを有するポリマーにおいて、縮合多環式芳香族骨格(すなわち、下記式(1b)で表されるユニット又は骨格)の割合は、ジケトピロロピロール骨格(すなわち、下記式(1a)で表されるユニット又は骨格)1モルに対して、例えば、1〜10000モル、好ましくは20〜5000モル、さらに好ましくは30〜3000モル(例えば、70〜2000モル)程度であってもよく、通常50〜2000モル(例えば、60〜1500モル、好ましくは70〜1200モル、さらに好ましは80〜700モル)程度であってもよい。
【0062】
【化12】

【0063】
(式中、Z、Z、R、R、R、m、nは前記と同じ。)
なお、上記式(1a)で表されるユニットはジケトピロロピロール骨格、上記式(1b)で表されるユニットは縮合多環式芳香族骨格にそれぞれ対応する。このような式(1b)で表されるユニットには、例えば、下記式(1c)で表されるユニット(前記式(1A)又は(2A)に対応するユニット)が含まれる。
【0064】
【化13】

【0065】
(式中、R、Rおよびn1は前記と同じ。)
前記式(1c)で表されるユニットを含む場合、前記式(1b)で表されるユニット全体に対する前記式(1c)で表されるユニットの割合は、例えば、20〜100モル%、好ましくは40〜100モル%、さらに好ましくは60〜100モル%(例えば、80〜100モル%)程度であってもよい。また、前記式(1b)で表されるユニットが、上記式(1c)で表されるユニットと他の前記式(1b)で表されるユニット(例えば、前記式(1c)において環Zがピレン環であるユニット)とを含む場合、これらのユニットの割合は、前者/後者(モル比)=95/5〜5/95、好ましくは90/10〜10/90(例えば、90/10〜20/80)、さらに好ましくは85/15〜40/60(例えば、80/20〜50/50)程度であってもよい。
【0066】
本発明のポリマーは、ジケトピロロピロール骨格や縮合多環式芳香族骨格のような剛直な骨格を有しているにもかかわらず、比較的高分子量である。このような本発明のポリマーの重量平均分子量は、例えば、8000以上(例えば、10000〜100000程度)、好ましくは12000以上(例えば、14000〜80000程度)、さらに好ましくは15000以上(例えば、17000〜60000程度)であってもよく、通常18000〜50000(例えば、20000〜40000)程度であってもよい。
【0067】
なお、本発明のポリマーの多分散度(分子量分布Mw/Mn)は、例えば、1.2〜10、好ましくは1.5〜7、さらに好ましくは1.8〜6(例えば、2〜5)程度であってもよい。
【0068】
[製造方法]
本発明のポリマーの製造方法は、特に限定されないが、通常、ジケトピロロピロール骨格を有する化合物(二官能性化合物など)と、縮合多環式芳香族骨格を有する化合物(二官能性化合物など)とを重合させることにより製造できる。例えば、本発明のポリマーは、ジケトピロロピロール骨格を有する二官能性化合物(例えば、ジカルボン酸など)と、この化合物の官能基と反応して結合を形成可能な官能基(反応性基)および縮合多環式芳香族骨格を有する二官能性化合物(例えば、ジオール、ジアミンなど)とを反応させて製造してもよく、ジケトピロロピロール骨格を有する二官能性化合物と、縮合多環式芳香族骨格を有する二官能性化合物と、これらの化合物と相互に反応して結合可能な化合物とを反応させて製造してもよい。
【0069】
特に、ジケトピロロピロール骨格を有する化合物と、縮合多環式芳香族骨格を有する化合物とをカップリング反応により重合させてもよい。カップリング反応としては、有機合成において種々の反応[例えば、ホウ素化合物とハロゲン化物とのカップリング反応(いわゆる鈴木カップリング反応)など]が知られているが、このようなカップリング反応の中でも、特に、2つのハロゲン原子が置換した化合物と、エチニル基が2つ置換した化合物とを組み合わせてカップリング反応(いわゆる薗頭カップリング反応)により重合させると、上記のような骨格を有する化合物であるにもかかわらず、比較的高分子量のポリマーを効率よく得ることができる。
【0070】
例えば、前記式(1)で表されるユニットを有するポリマーは、下記式(3)で表される化合物と下記式(4)で表される化合物とを少なくともカップリング反応により重合させることにより製造できる。
【0071】
【化14】

【0072】
(式中、XおよびYのうち、一方はハロゲン原子、他方はエチニル基(CH≡C−)であり、Z、Z、R、R、R、m、およびnは前記と同じ。)
上記式(3)および(4)において、X又はYで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。式(3)および(4)において、特に、Xがハロゲン原子であり、Yがエチニル基であってもよい。
【0073】
なお、前記式(3)において、環Zなどは前記と同じである。代表的な前記式(3)で表される化合物には、2,5−ジヒドロ−2,5−ジアルキル−3,6−ビス(ハロアリール)−ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオン{例えば、2,5−ジヒドロ−2,5−ジ−n−ヘキシル−3,6−ビス(4−ブロモフェニル)−ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオンなどの2,5−ジヒドロ−2,5−ジC4−20アルキル−3,6−ビス(ハロC6−10アリール)−ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオンなど}などが含まれる。
【0074】
なお、前記のように、前記式(1)で表されるユニットが前記式(1A)で表されるユニットを有する場合には、前記式(4)で表される化合物として、下記式(4A)で表される化合物を少なくとも使用すればよい。
【0075】
【化15】

【0076】
(式中、Y、R、Rおよびn1は前記と同じ。)
なお、前記式(4)で表される化合物全体に対する前記式(4A)で表される化合物の割合は、例えば、20〜100モル%、好ましくは40〜100モル%、さらに好ましくは60〜100モル%(例えば、80〜100モル%)程度であってもよい。
【0077】
なお、前記式(4)又は(4A)において、環Zなどは前記と同じである。代表的な前記式(4)で表される化合物には、ジハロ−9,9−ジアルキルフルオレン(例えば、2,7−ジブロモ−9,9−ジ−n−オクチルフルオレンなどのジハロ−9,9−ジC4−20アルキルフルオレン、好ましくは2,7−ジハロ−9,9−ジC6−12アルキルフルオレン)、ジハロジアルキルピレン(例えば、4,9−ジブロモ−2,7−ジブチルピレンなどのジハロジC4−20アルキルピレン)などが含まれる。
【0078】
また、本発明のポリマーは、前記のように、前記式(1)で表されるユニットに加えて、他のユニット(例えば、前記式(2)で表されるユニット)を有していてもよい。このような前記式(2)で表されるユニットをさらに有するポリマーは、例えば、前記式(3)で表される化合物および下記式(5)で表される化合物と、前記式(4)で表される化合物とをカップリング反応させることにより製造できる。
【0079】
【化16】

【0080】
(式中、X、Z、R、およびnは前記と同じ。)
なお、前記式(2)で表されるユニットが前記式(2A)で表されるユニットを有する場合には、前記式(5)で表される化合物として、下記式(5A)で表される化合物を少なくとも使用すればよい。
【0081】
【化17】

【0082】
(式中、X、R、Rおよびn1は前記と同じ。)
なお、前記式(5)で表される化合物全体に対する前記式(5A)で表される化合物の割合は、例えば、20〜100モル%、好ましくは40〜100モル%、さらに好ましくは60〜100モル%(例えば、80〜100モル%)程度であってもよい。
【0083】
なお、前記式(5)又は(5A)において、環Zなどは前記と同じである。代表的な前記式(5)で表される化合物には、ジエチニル−9,9−ジアルキルフルオレン(例えば、2,7−ジエチニル−9,9−ジ−n−オクチルフルオレンなどのジエチニル−9,9−ジC4−20アルキルフルオレン、好ましくは2,7−ジエチニル−9,9−ジC6−12アルキルフルオレン)などが含まれる。
【0084】
また、前記式(5)で表される化合物(前記式(5A)で表される化合物を含む)の割合は、前記式(3)で表される化合物1モルに対して、例えば、1〜500モル(例えば、3〜400モル)、好ましくは5〜300モル(例えば、10〜200モル)、さらに好ましくは20〜150モル(例えば、30〜100モル)程度であってもよく、通常20〜200モル程度であってもよい。
【0085】
なお、前記式(3)、(4)および(5)で表される化合物は、市販品を用いてもよく、慣用の方法で合成したものを使用してもよい。
【0086】
反応において、前記式(4)で表される化合物(前記式(4A)で表される化合物を含む)の使用割合は、前記式(3)で表される化合物[又は前記式(3)で表される化合物および前記式(5)で表される化合物(前記式(5A)で表される化合物を含む)の総量]1モルに対して、例えば、0.7〜1.3モル、好ましくは0.8〜1.2モル、さらに好ましくは0.9〜1.1モル程度であってもよい。本発明の方法では、比較的定量的に重合反応が進行するため、上記のような使用割合であっても、効率よく前記ポリマーを製造できる。
【0087】
反応は、通常、触媒の存在下で行うことができる。触媒としては、カップリング反応(薗頭カップリング反応など)において汎用されている触媒を好適に使用できる。代表的には、パラジウム化合物[例えば、パラジウム(II)錯体(例えば、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウムなどのホスフィンパラジウム錯体)、パラジウム(0)錯体(例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィンパラジウムなど)などのパラジウム錯体]と、銅化合物[例えば、銅ハロゲン化物(例えば、ヨウ化銅(I)などのハロゲン化銅(I))など]とを組み合わせて使用する場合が多い。
【0088】
また、反応は、塩基の存在下で行ってもよい。塩基としては、例えば、アミン[例えば、ジ又はトリアルキルアミン(例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミンなど)などの脂肪族アミン]などの有機塩基を好適に利用できる。塩基の中でも、アミンは溶媒としても有用であり、好適に使用できる。塩基は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0089】
反応は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、前記アミンの他、エーテル系溶媒(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテルなど)などの反応において不活性な溶媒を使用できる。溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0090】
反応温度は、例えば、0〜200℃(例えば、20〜180℃)、好ましくは30〜150℃(例えば、40〜120℃)、さらに好ましくは50〜100℃程度であってもよい。また、反応は、還流させながら行ってもよい。
【0091】
反応時間は、特に限定されず、反応温度などに応じて適宜選択できるが、通常、1〜72時間、好ましくは2〜48時間、さらに好ましくは5〜36時間程度であってもよい。また、反応は、攪拌しながら行ってもよく、不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよく、減圧下、常圧下又は加圧下で行ってもよい。
【0092】
なお、生成した化合物は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製してもよい。
【0093】
[ポリマーの特性および用途]
本発明のポリマーは、ジケトピロロピロール骨格および縮合多環式芳香族骨格がそれぞれ発光可能であるため、発光材料として好適に用いることができる。特に、これらの骨格の組み合わせにより、互いに補色関係にある発光を生じさせることができ、白色発光を示す場合が多い。そのため、本発明のポリマーは、白色発光材料として好適である。なお、置換基の種類にもよるが、ジケトピロロピロール骨格は黄色系(又は橙色系)の発光に寄与し、縮合多環式芳香族骨格(例えば、前記式(1)又は(2)における環Z)は青色系の発光に寄与する場合が多く、これらの組合せにより白色発光を呈する。
【0094】
このような白色材料としての本発明のポリマーは、CIE(国際照明委員会)色度図(xy色度図)において、x=0.2〜0.45(例えば、0.25〜0.42、好ましくは0.3〜0.4、通常0.2〜0.4)およびy=0.2〜0.45(例えば、0.25〜0.42、好ましくは0.3〜0.4、通常0.2〜0.4)の発光色を示す。なお、CIE色度図において、このようなx値およびy値を示す材料は、白色発光を示す。発光は、本発明のポリマーを励起(例えば、電気又は光エネルギーなどにより励起)して放出される蛍光として得ることができる。
【0095】
このような本発明のポリマーは、発光材料(特に白色発光材料)などとして種々の用途に用いることができる。特に、本発明のポリマーは、高分子量化されたポリマーであり、バインダーを用いなくても、そのまま膜(発光膜)を形成できる。そのため、本発明には、前記ポリマーで形成された膜(塗膜又は被膜)も含まれる。このような膜(薄膜)の厚みは、用途に応じて適宜選択できるが、例えば、1〜200μm、好ましくは3〜150μm、さらに好ましくは5〜100μm程度であってもよく、通常100μm以下(例えば、1〜80μm、好ましくは3〜60μm、さらに好ましくは5〜50μm程度)であってもよい。本発明では、このような薄い厚みであっても、耐久性に優れ、かつ十分な発光特性を有する発光膜を得ることができる。なお、前記のように、このような膜(発光膜)は、通常、白色発光膜であってもよい。
【0096】
なお、このような膜は、例えば、前記ポリマー(又はその溶液)を、慣用の方法(スピンコーティング法、スプレーコーティング法、キャスト法、バーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディッピング法などのコーティング法、インクジェット法など)により、基板に塗布することにより形成できる。なお、塗膜は、リソグラフィー技術などを利用して微細加工してもよい。
【0097】
このような塗膜は、発光膜、例えば、発光素子(ディスプレイなど)の発光膜(又は発光層、特に白色発光層)を形成してもよい。なお、発光素子は、通常、基板(ガラス、プラスチックなど)、発光膜、電極(陽極および陰極)、電子輸送層、正孔輸送層、電子注入層、正孔輸送層などで構成できる。このような発光素子(発光膜)は、ディスプレイ用、照明用などの他、バックライト用などとしても、好適である。発光素子において、これらの積層順序は、特に限定されないが、例えば、基板/陽極/発光膜/電子輸送層/陰極の順序であってもよく、基板/陽極/正孔輸送層/発光膜/陰極の順序であってもよい。このようなサンドイッチ型の構造(ヘテロ構造)により、効率よく反応を生じさせることができる。なお、これらの各層の厚みは、1〜50nm、好ましくは3〜300nm程度であってもよい。また、用途にもよるが、発光素子全体(有機EL用発光素子など)の厚みは、例えば、300nm〜5μm、好ましくは500nm〜3μm程度であってもよい。なお、本発明の発光膜(発光素子)の発光の量子効率は、例えば、0.1〜1、好ましくは0.2〜0.95、さらに好ましくは0.3〜0.9程度であってもよい。
【実施例】
【0098】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0099】
(実施例1)
2,7−ジブロモ−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、下記式(a)で表される化合物)0.33g(0.602mmol)、2,5−ジヒドロ−2,5−ジ−n−ヘキシル−3,6−ビス(4−ブロモフェニル)−ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオン(下記式(b)で表される化合物)7.9mg(0.013mmol)、ヨウ化銅4.1mg(0.022mmol)、2塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)13mg(0.019mmol)をフラスコに入れて窒素置換した。ここに、25分間窒素ガスを吹き込んだ2,7−ジエチニル−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン(下記式(c)で表される化合物)0.27g(0.615mmol)を含むテトラヒドロフラン(THF)/ジイソプロピルアミン(前者/後者=4/1(体積比))混合溶液を添加し、60℃で18時間攪拌した。冷却後、不溶物を濾別し、濾液を濃縮して粗生物を得た。粗生物をTHF6mLに溶解した後、400mLのメタノールに滴下して沈殿を得た。沈殿を濾過、乾燥して0.40gの褐色固体を得た。
【0100】
得られた褐色固体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(Shodex KF−804L)により分析したところ、重量平均分子量が23100、数平均分子量が5300、多分散度が4.36のポリマーであった。なお、NMR測定により上記の材料が仕込み比を反映して重合したポリマーであることがわかった。
【0101】
【化18】

【0102】
(実施例2)
実施例1で作製したポリマーを1重量%の濃度で含むテトラヒドロフラン溶液を調製した。調製したポリマー溶液を25mm角の石英基板に1000回転/20秒で回転塗布した。塗布後、70℃/5分乾燥させて淡黄色のポリマー薄膜(厚み1.5μm)を得た。
【0103】
得られたポリマー薄膜を390nmで励起したときの蛍光スペクトルを分光蛍光光度計(島津製作所製)により測定したところ、400nmから650nmまでの可視領域の広い範囲に発光をもった白色の蛍光であった。この蛍光のCIE色度はx=0.37、y=0.39であった。図1に蛍光スペクトルを示す。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明のポリマーは、種々の用途、特に、ディスプレイ、照明、発光塗料(例えば、インジケータ用、センサー用など)などに用いる発光材料(特に白色発光材料)として好適に使用できる。このような本発明のポリマー(又はこのポリマーで形成された膜)は、具体的には、発光素子(ディスプレイなど)の発光膜(又は発光層、特に白色発光層)を形成してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジケトピロロピロール骨格と縮合多環式芳香族骨格とが結合しているポリマー。
【請求項2】
下記式(1)で表されるユニットを有する請求項1記載のポリマー。
【化1】

(式中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、環Zは縮合多環式芳香族炭化水素環又は縮合多環式芳香族複素環を示し、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、RおよびRはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、mおよびnはそれぞれ0以上の整数を示す。)
【請求項3】
環Zがベンゼン環であり、mが0〜3であり、RがC4−12アルキル基である請求項2記載のポリマー。
【請求項4】
式(1)で表されるユニットが、少なくとも下記式(1A)で表されるユニットを含む請求項2又は3に記載のポリマー。
【化2】

(式中、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、n1は0〜3の整数を示し、Z、R、R、Rおよびmは前記と同じ。)
【請求項5】
下記式(2)で表されるユニットをさらに有する請求項2〜4のいずれかに記載のポリマー。
【化3】

(式中、Z、Rおよびnは前記と同じ。)
【請求項6】
式(2)で表されるユニットが、少なくとも下記式(2A)で表されるユニットを含む請求項5記載のポリマー。
【化4】

(式中、R、Rおよびn1は前記と同じ。)
【請求項7】
がC4−12アルキル基である請求項4〜6のいずれかに記載のポリマー。
【請求項8】
下記式(1b)で表されるユニットの割合が、下記式(1a)で表されるユニット1モルに対して、20〜5000モルである請求項5〜7のいずれかに記載のポリマー。
【化5】

(式中、Z、Z、R、R、R、m、nは前記と同じ。)
【請求項9】
重量平均分子量が12000以上であり、かつCIE色度図においてx=0.2〜0.4およびy=0.2〜0.4の発光色を示す請求項1〜8のいずれかに記載のポリマー。
【請求項10】
ジケトピロロピロール骨格を有する化合物と、縮合多環式芳香族骨格を有する化合物とをカップリング反応により重合させて請求項1〜9のいずれかに記載のポリマーを製造する方法。
【請求項11】
下記式(3)で表される化合物と下記式(4)で表される化合物とをカップリング反応により重合させる請求項10記載の製造方法。
【化6】

(式中、XおよびYのうち、一方はハロゲン原子、他方はエチニル基であり、Z、Z、R、R、R、m、およびnは前記と同じ。)
【請求項12】
Xがハロゲン原子であり、Yがエチニル基である請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載のポリマーで形成され、厚みが100μm以下である被膜。
【請求項14】
発光素子の発光膜である請求項13記載の被膜。


【図1】
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【公開番号】特開2010−235869(P2010−235869A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87571(P2009−87571)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】