説明

ジトリメチロールプロパンを単離する方法

本発明は、トリメチロールプロパン製造二次ストリームからジトリメチロールプロパンを単離する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリメチロールプロパン製造由来の二次ストリーム(secondary stream)からジトリメチロールプロパンを単離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジトリメチロールプロパン(di−TMP)は、アルキド樹脂、高品質の塗料およびコーティング、可塑剤ならびに潤滑剤の調製のための出発物質である。
【0003】
di−TMPは、トリメチロールプロパン(TMP)の製造における副生成物として得られ、二次ストリームからのTMPの後処理(work-up)において単離され得ることは、原理上は知られている。
【0004】
トリメチロールプロパンは、塩基の存在下で水性媒体中ホルムアルデヒドとn−ブチルアルデヒドの反応により工業的に調製される。中間体は、モノメチロールブチルアルデヒドおよびジメチロールブチルアルデヒドである。最終工程は、ジメチロールブチルアルデヒドのTMPへの変換であり、これは、「水素化プロセス」における水素化によって、またはジメチロールブチルアルデヒドをホルムアルデヒドおよび化学量論的量の塩基とカニッツァロ反応させ、TMPおよびその対応するギ酸塩を形成することによって行われる。
【0005】
水素化プロセスは、超大気圧下で接触水素化などの複雑な技術を必要とするが、一方カニッツァロプロセスは、単純であり、例えば、塩基として水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは水酸化カルシウムを用いて行う。特定の利点は、塩基として水酸化カルシウムが用いられる場合、副産物としてギ酸カルシウムが形成され、このプロセスによって生成される貴重な追加の物質に相当することである。
【0006】
この関連において、特定の条件を制御することによってTMP中のdi−TMPの比率を増加させ得るプロセスも知られている。したがって、例えば、(特許文献1)および(特許文献2)には、これは、水およびホルムアルデヒドの総量に基づいて20%未満のホルムアルデヒドの比率によって達成され得ることが述べられている。(特許文献3)には、2相反応系におけるTMPおよびdi−TMPの調製が記載されている。
【0007】
さらに、(特許文献4)から、di−TMPは塩基性触媒の存在下で2−エチルアクロレインとTMPおよびホルムアルデヒドとの反応によって調製され得ることが知られている。
【0008】
カニッツァロプロセス由来の粗TMP反応溶液の後処理は、多くの変形で記載されている。それには一般に、反応混合物中に残存する塩基の中和後、粗水溶液を濃縮する、例えば、低沸点物(low boilers)および水を蒸留して除去する工程、続いて特にギ酸塩などの無機副産物を分離する工程、および反応生成物TMPを精製する工程が含まれる。
【0009】
無機ギ酸塩は一般に、濃縮後に、沈殿ギ酸塩の濾過によって、またはTMPおよび有機副生成物がギ酸塩水溶液から分離される抽出工程によって分離される。無機ギ酸塩からTMPおよびdi−TMPを分離する抽出工程は、TMP生成物の総量に合わせた追加のストリームが循環、蒸発および濃縮されなければならないという不利点があり、これはエネルギー消費の点で好ましくない。
【0010】
ギ酸塩が分離された後に、目的の生成物TMPは一般に、それをさらに精製するために1回以上蒸留される。これらの蒸留において、di−TMPは通常、TMP蒸留から底部生成物(bottom)中に残る。その高沸点のために、di−TMPそれ自体は、分解を伴わない蒸留によって得ることができるが、それには高い技術的費用がかかる。
【0011】
(特許文献5)には、減圧下で水蒸気蒸留により残存する底部生成物からdi−TMPを分離する方法が記載されている。この方法では、大量の水蒸気が必要とされ、有機溶媒から複数の結晶化によってさらに精製しなければならない非常に不純な生成物が単に得られるだけであるという不利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭57−011934号公報(JP 61021538)
【特許文献2】特開昭61−021538号公報(JP 0815740)
【特許文献3】特開平08−15740号公報
【特許文献4】欧州特許出願公開第0799815A号明細書
【特許文献5】独国特許第2058518号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
di−TMPは、TMP蒸留から底部生成物中に蓄積する。したがって、これらの底部生成物はdi−TMP回収のための適切な出発点となる。
【0014】
したがって、本発明の目的は、TMP製造由来の二次ストリームから高純度でdi−TMPを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、TMP蒸留由来の蒸留底部生成物からdi−TMPを単離する方法による本発明によって達成され、これは、
a)蒸留底部生成物を、適切な溶媒に溶解させ、混合エネルギーの導入とともに、少なくとも1つの有機溶媒相および1つの粘性残渣相からなる多相系、好ましくは2相系が形成される量で、水および場合によって酸と混合する工程と、
b)粘性残渣相を、相分離によって有機溶媒相から分離する工程と、
c)工程b)により得られた有機溶媒相を水で抽出する工程と、
d)工程c)により得られた水相に存在する有機溶媒を除去する工程と、
e)工程d)により得られた水相からdi−TMPを単離する工程と
を特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0016】
TMP蒸留由来の好適な蒸留底部生成物は、特に、98重量%未満、好ましくは95重量%未満のTMP含有量を有するTMP含有粗生成物の蒸留によって得られたものであり、ここで、TMP含有粗生成物は、少なくとも以下の工程:
i)水性媒体中無機塩基の存在下でのホルムアルデヒドとn−ブチルアルデヒドの反応、
ii)TMPの沸点より高い沸点を有する物質、特に水およびホルムアルデヒドの少なくとも部分的な除去、
iii)無機ギ酸塩の少なくとも部分的な除去
を含む方法によって生成される。
【0017】
上述のTMP含有粗生成物は通常、TMP製造プロセスで得られる。
【0018】
TMP含有粗生成物は場合によって、工程i)、ii)およびiii)に加えて、以下の工程:
iv)工程i)後の無機塩基の中和
を含む方法によって生成される。
【0019】
工程iii)、すなわち、無機ギ酸塩の少なくとも部分的な除去は、例えば、抽出、濾過、沈殿または遠心分離、好ましくは、濾過、沈殿または遠心分離によって行われ得る。
【0020】
上述の種類の好ましい蒸留底部生成物は、工程i)における無機塩基が、水酸化ナトリウムまたは水酸化カルシウム、好ましくは、水酸化カルシウムであるものである。
【0021】
用いられる蒸留底部生成物は通常、di−TMPだけでなく、多量のトリメチロールプロパンおよびトリメチロールプロパンの環状および線状ホルマール量を含む。di−TMP含有量は通常、蒸留底部生成物の質量に基づいて5重量%から60重量%の範囲である。TMP含有量は通常、蒸留底部生成物の質量に基づいて、1重量%から50重量%の範囲である。
【0022】
さらに、蒸留底部生成物は、無機塩をさらに含み得る。これらの塩は通常、ギ酸塩である。
【0023】
水中10%スラリー(10% strength slurry in water, 原文:10%ige Aufschlammung in Wasser)として測定して、底部生成物のpHは、TMP含有粗生成物が得られた方法に依存する。典型的な値は、標準条件下でpH6からpH10の範囲であり得る。
【0024】
工程a)において、蒸留底部生成物は、適切な溶媒に溶解させる。
【0025】
好ましい実施形態において、蒸留底部生成物は、適切な溶媒に50から100℃、好ましくは70から95℃、好ましくは75℃から85℃の温度で溶解させる。
【0026】
抽出のための適切な溶媒は、水と不完全に混和性であり、蒸留底部生成物の軟化点と底部生成物の有意な分解が始まる温度との間の沸点を有する溶媒、または溶媒の混合物である。40から200℃、特に好ましくは70から160℃、特に好ましくは80℃から150℃の範囲の沸点を有する溶媒が好ましい。適切な溶媒の例は、芳香族および脂肪族炭化水素、エステル、エーテル、アルコールまたはケトンである。エーテル、エステルまたはケトンが好ましい。シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチルおよび酢酸ブチル、またはこのような溶媒の混合物が特に好ましい。
【0027】
溶媒の適切な量は、蒸留底部生成物の粘度および軟化点に依存し、特定の蒸留底部生成物に対する予備的実験によって当業者により容易に決定することができる。底部生成物の量からこの量の10倍までの範囲に及ぶ溶媒の量が好ましい。蒸留底部生成物の量の1から8倍の量が好ましく、底部生成物の量の2から5倍の範囲の量が特に好ましい。
【0028】
さらに、底部生成物は、少なくとも1つの有機溶媒相および1つの粘性残渣相からなる多相系が形成されるような量で、水、および場合によって、しかし好ましくは、酸と混合される。
【0029】
水および酸の適切な量は、その底部生成物の組成およびpHに依存し、特定の蒸留底部生成物に対する予備的実験によって当業者により容易に決定することができる。ここで、最初に、水が、蒸留底部生成物に基づいて約5から10重量%の量で穏やかに撹拌しながら添加され、次いで、酸が、存在するすべての細かい固体が溶解して第2の相が沈殿するまで、少しずつ添加される。
【0030】
分離した水相がまったく形成されない水の量だけ添加することが好ましい。添加される水の量は通常、用いられる蒸留底部生成物の質量に基づいて、1から100重量%、好ましくは5から30重量%の範囲である。
【0031】
場合によって用いられる酸の量は通常、用いられる蒸留底部生成物に基づいて、0.5から10重量%の範囲、好ましくは0.5から5重量%の範囲である。用いられる酸の量は通常、用いられる蒸留底部生成物のアルカリ性が強いほど、高くなる。
【0032】
適切な酸は、原理的にはすべての酸であり、有機酸、および蒸留底部生成物に存在する任意のカチオンと溶けにくい(sparingly soluble)塩を形成しない無機酸が好ましい。本発明の目的のために、溶けにくい塩は、20℃で水中5g/l未満の最大溶解度を有するものである。有機酸が特に好ましく、ギ酸および酢酸が、極めて特に好ましい。
【0033】
酸および水は、一緒にまたは酸の希釈水溶液として導入することもできる。
【0034】
好ましい実施形態において、例えば、それ自体知られている混合装置、例えば、撹拌機によって生じさせ得る混合エネルギーの導入を止め、その後に混合物を、5分間から24時間、好ましくは5分間から8時間、特に好ましくは10分間から4時間沈殿させる。
【0035】
同様に好ましい実施形態において、蒸留底部生成物に基づいて、約0.05から5重量%、好ましくは0.1から1.0重量%の活性炭が、多相系にさらに添加される。
【0036】
工程b)において、粘性残渣相は、それ自体知られている方法における相分離、例えば、沈殿によって、有機溶媒相から分離される。
【0037】
本発明のさらなる実施形態において、粘性残渣相は、好ましくは加熱して、50から200重量%の有機溶媒と再度混合され、再度沈殿させる。この方法において、当初の粘性残渣相よりもかなり流動性である油が下部相として得られる。この方法で得られる上清有機相は好ましくは、次のバッチで同じ目的のために再使用される。
【0038】
工程c)において、工程b)により得られた有機溶媒相は、水で抽出される。抽出は好ましくは、有機溶媒相の濾過後に行われる。
【0039】
抽出のために用いられる水の量は、例えば、2から100重量%、好ましくは最大40重量%であるが、少なくとも、分離した水相が形成し得る程の多さである。
【0040】
水相は分離され、有機層は、場合によって、しかし好ましくは水で少なくとももう1回抽出される。
【0041】
好ましい変形において、水抽出後の有機相は、工程a)で再使用される。
【0042】
工程d)において、工程c)により得られた水相中に存在する有機溶媒、または場合によって合わせた水相は除去される。
【0043】
除去は、それ自体知られた方法、例えば、好ましくは蒸留によって行われ得る。
【0044】
蒸留は、例えば、950から10ミリバールの範囲の圧力で行われ得る。蒸留は好ましくは、底部生成物由来の有機溶媒が、水相から少なくとも90%、好ましくは少なくとも98%の程度まで除去されるまで継続される。
【0045】
工程e)において、di−TMPは、好ましくは結晶化によって、水相から単離される。
【0046】
好ましい実施形態において、工程d)由来の蒸留残渣は、di−TMP含有量が10から25重量%、好ましくは10から20重量%の範囲であるように水で希釈される。
【0047】
次いで、混合物は好ましくは、透明な溶液が存在するまで加熱され、次いで、結晶化が始まるまで1時間当たり0.5℃から6℃の範囲の冷却速度で、撹拌しながらゆっくりと冷却される。
【0048】
結晶化を完了させるために、混合物は、好ましくは10℃未満の温度で0.5時間から8時間維持される。沈殿した結晶は、例えば、濾過、遠心分離または同様の方法で分離され、場合によって洗浄および乾燥される。
【0049】
好ましい実施形態において、結晶化混合物は、適当な温度、例えば、25から15℃の範囲で結晶種を入れる。種結晶は、例えば、前のバッチから取り出して、水中で粉砕することができるか、またはごく一部の結晶化混合物の急冷によって得ることができる。
【0050】
別の好ましい変形において、0℃に近い温度でのdi−TMPの水懸濁液が容器に入れられ、温かい結晶化溶液が、当初入れた混合物が当初設定された温度のままであるような速度で、0.25から24時間、好ましくは0.5から12時間かけて導入される。添加が終了後に、混合物は、結晶化を完了させるために0.5時間から8時間撹拌される。
【0051】
別の好ましい方法の変形において、湿った洗浄生成物が溶融され、残存溶媒が蒸留によって除去され、溶融物は、例えば、フレークローラまたは錠剤製造装置(pastille−producing apparatus)で成形される。
【0052】
好ましい変形において、本発明の方法またはその個々の工程は、半連続的または連続的に行われる。
【実施例】
【0053】
一般
含有量決定は、内部標準を用いるGCによって行い、カルシウム含有量は、チトリプレックス(Titriplex)溶液を用いて滴定法で決定した。
【0054】
実施例1(比較用):独国特許第2358297号明細書に記載されたとおりの水による底部生成物の抽出
6.5重量%のトリメチロールプロパン、34重量%のdi−TMP、24.3重量%の線状TMPホルマールおよび2.5重量%のカルシウムを含み、20℃で水中10%水性懸濁液(10% strength aqueous suspension in water, 原文:10%ige wassrige Suspension in Wasser)としてpH9を有する蒸留底部生成物200gを、水400gと40℃で撹拌しながら混合した。暗色粘着性塊の水懸濁液を得て、濾過することができなかった。さらに水400mlを添加し、80℃に加熱した後でも、タール状の塊は水に溶解しないままであった。
【0055】
実施例2(比較用):欧州特許第1491521号明細書に記載されたとおりの有機溶媒による底部生成物の抽出
6.5重量%のトリメチロールプロパン、34重量%のdi−TMP、24.3重量%の線状TMPホルマールおよび2.5重量%のカルシウムを含み、20℃で水中10%水性懸濁液としてpH9を有する蒸留底部生成物200gを、酢酸エチル800gと80℃で撹拌しながら混合した。これにより、淡色の懸濁液が得られ、これは、数時間加熱後でさえも透明な溶液を形成しなかった。この淡色懸濁液は、濾過が非常に困難であった。
【0056】
実施例3:蒸留底部生成物の本発明による抽出
6.5重量%のトリメチロールプロパン、34重量%のdi−TMP、24.3重量%の線状TMPホルマールおよび2.5重量%のカルシウムを含み、20℃で水中10%水性懸濁液としてpH9を有する蒸留底部生成物200gを、酢酸ブチル800gと80から90℃の浴温度で撹拌しながら混合した。70〜80℃で、水20gを添加し、この混合物をしばらく沈殿させた。80℃で、ギ酸(99.5重量%(99.5% strength by weight, 原文:99.5 Grew.-%))6gおよび活性炭1gを注意深く撹拌しながら添加した。短時間撹拌後、撹拌機を止めて、混合物を80℃で30分間維持した。この時間の間に、暗色の粘性相が沈殿した。上清有機溶液をデカンテーションして分離し、溝付きフィルター(fluted filter)を通して濾過した。
【0057】
底部生成物の第1の抽出由来の粘性相を、同じ質量の酢酸ブチルと再度混合して、125℃に加熱した。この混合物を再度沈殿させ、流動油を下部相として得た。
【0058】
第1の抽出由来のなお高温の有機相を水60gと混合し、25℃に冷却した。相を分離し、有機相を25℃で水20gによって再度抽出した。
【0059】
水相を合わせて、95℃以下の温度で蒸留した。ここで、酢酸ブチルと水の2相混合物92gを100ミリバールの圧力においてロータリエバポレータで蒸留して取り除いた。これにより、液体残渣180gが残り、これは、結晶化のために水で480gまで入れ足し、di−TMP(14.1重量%)67.8gを含んだ。
【0060】
実施例4:バッチ結晶化
実施例3と同様の方法で作製し、13.9重量%のdi−TMPを含む溶液147gに、di−TMPの水中懸濁液によって22℃において結晶種を入れ、24時間かけて−2℃に冷却し、−2℃でさらに3時間撹拌し、濾過した。濾過ケーキを氷水50mlで2回洗浄し、吸引乾燥させ(sucked dry)、結晶を真空乾燥オーブン中60℃以下で乾燥させた。これにより、98.3%の純度を有するdi−TMP16.2gを得、結晶化に対して投入原料78%に相当する。
【0061】
実施例5:バッチ結晶化
冷却を8時間かけて行った以外は、実施例4に記載されたとおりの手順を繰り返した。これにより、98.9%の純度を有する乾燥di−TMP16.4gが得られ、結晶化に対して投入原料80%に相当した。
【0062】
実施例6:酢酸ブチル相の再循環による蒸留底部生成物の抽出
di−TMP11.8gをさらに含む、実施例3由来の共沸脱水酢酸エチル相を未使用の酢酸エチルの代わりに再使用したことを除いて、実施例4に記載されたとおりの手順を繰り返した。これにより、di−TMP78,3gを含む水溶液480gを得た。
【0063】
実施例7:洗浄水の再循環による半バッチ結晶化
di−TMP9.9gを含む、先の結晶化由来の洗浄水200mlを10℃にして、di−TMPの水懸濁液によって結晶種を入れた。実施例6由来の温かい水溶液を3時間かけて滴下した。滴下の間、当初投入量の温度を10℃で維持した。混合物を5℃で2時間撹拌し、固体を吸引濾過により濾別し、濾過ケーキを氷水それぞれ100mlで2回洗浄し、吸引乾燥させ、真空乾燥オーブン中60℃で乾燥させた。これにより、99.4%の純度を有するdi−TMP54.0gが得られ、使用した蒸留残渣の含有量の77%に相当した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TMP蒸留由来の蒸留底部生成物からdi−TMPを単離する方法であって、
a)前記蒸留底部生成物を適当な溶媒に溶解させ、混合エネルギーの導入とともに、少なくとも1つの有機溶媒相および1つの粘性残渣相からなる多相系、好ましくは2相系が形成される量で、水および場合によって酸と混合する工程と、
b)前記粘性残渣相を相分離によって前記有機溶媒相から分離する工程と、
c)前記工程b)により得られた有機溶媒相を水で抽出する工程と、
d)前記工程c)により得られた水相中に存在する有機溶媒を除去する工程と、
e)前記工程d)により得られた水相からdi−TMPを単離する工程と
を特徴とする、方法。
【請求項2】
酸が、工程a)においてさらに添加されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2相系が、工程a)において形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
98重量%未満のTMP含有量を有する、TMP含有粗生成物の蒸留により得られた蒸留底部生成物がTMP蒸留由来の蒸留底部生成物として用いられ、ここで、前記TMP含有粗生成物が少なくとも以下の工程:
i)無機塩基の存在下での水性媒体中のホルムアルデヒドとn−ブチルアルデヒドの反応、
ii)TMPの沸点より高い沸点を有する物質の少なくとも部分的な除去、
iii)無機ギ酸塩の少なくとも部分的な除去
を含む方法により生成されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
水酸化ナトリウムまたは水酸化カルシウムが、工程i)において無機塩基として用いられることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記用いた蒸留底部生成物が、前記蒸留底部生成物の質量に基づいて、5重量%から60重量%の範囲のdi−TMP含有量を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
水と不完全に混和性であり、40から200℃の範囲の沸点を有する溶媒が、溶媒として用いられることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記蒸留底部生成物に基づいて、0.05から5重量%の活性炭が、前記工程a)における多相系にさらに添加されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
di−TMPが、工程e)における結晶化によって前記水相から単離されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法または工程a)からe)までの個々の工程が、半連続的または連続的に行われることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
98%を超える純度を有するdi−TMPを調製するための、TMP蒸留由来の蒸留底部生成物の使用。

【公表番号】特表2011−530567(P2011−530567A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522498(P2011−522498)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060363
【国際公開番号】WO2010/020561
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】