ジヒドロアルテミシニンを含む舌下スプレー用製剤
本発明は、腫瘍性疾患、ジストマ病、及びライム病の治療の医薬組成物であり、ジヒドロアルテミシニンを提供することができる化合物及び中鎖トリグリセリドを含み、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻送達、特に、スプレーにより処方した、医薬組成物を提供する。また、前記組成物を含む送達器具を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物、送達方法、送達器具及び癌の治療方法に関する。また、本発明は、医薬組成物、送達方法、送達器具、並びにジストマ病及びライム病(ボレリオ症)の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物クソニンジン(Artemesia annua)から分離することができるアルテミシニンは、マラリアの治療ためのものとして知られ、広範囲な癌、即ち、腫瘍、特に悪性腫瘍の治療にも効果的であることが示されている。報告されている成功症例は以下の通りである:
【0003】
Sing及びPanwar (Integrative Cancer Therapies, 5(4): 2006, 391-394)は、アルテムエーテルでの下垂体腺腫の治療を報告する。
【0004】
Singh及びVerma (Archive of Oncology, 10(4): 2002, 279-280)は、アルテスネートでの喉頭扁平上皮細胞癌の治療を報告する。
【0005】
Singh及びLai (Life Sciences, 70(2001) 49-56)は、ヒト乳癌細胞に対するジヒドロアルテミシニン及びホロトランスフェリンの選択毒性を報告する。
【0006】
Rowen (Townsend Letter for Doctors and Patients, 2002年12月)は、乳癌、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌及び多発性皮膚癌を含む様々な癌の治療のためのアルテミシニンの使用の概要を提供する。
【0007】
Efferthら("Anti-malaria drug is also active against cancer", Int. J. Oncology, 18; 767-773, 2001) は、55の癌株に対するアルテミシニンの活性を報告する。
【0008】
アルテミシニンは、第一鉄と反応して遊離基を形成するそれらの性能のため:また、ほとんどの癌細胞は、高い鉄摂取率を有するため、広範囲な癌細胞に幅広い効果を有すると考えられている。
【0009】
さらに、アルテミシニンは、肝吸虫、特に住血吸虫症の治療への有効性を示す。Keiser及びMorson (Exp. Parasitol., 118(2), 2008: 228-37) は、肝吸虫症(肝蛭症)に対するアルテスネート及びアルテムエーテルの活性を報告する。
【0010】
また、Keiserら(J. Antimicrobial Chemotherapy, 2006, 57, 1139-1145) は、アルテスネート及びアルテムエーテルが、有効な肝蛭症の薬剤(fasciolicides)であることを報告する。
【0011】
Utzingerら(Curr Opin Investig Drugs, 2007 Feb 8(2), 105-16)は、マラリア原虫及びビルハルツ住血吸虫に寄生されたヒトへの治療のために有望な活性を有するアルテミシニンの使用、又は、腸内吸虫及び肝吸虫並びに癌細胞に対するアルテミシニンの使用を報告する。
【0012】
最近の観測では、アルテミシニンがボレリア属の細菌であるライム病の病原体に対して活性を有することも見出した。ボレリア・ブルグドルフェリは、米国においてライム病の主な原因であり、ボリレア・アフゼリ及びボレリア・ガリニは、大半のヨーロッパでの症例において、より一般的な薬剤である。
【0013】
したがって、これら疾患の治療に使用される有効な医薬品には、アルテミシニン(artemesenin)由来の多数の化合物、元来クソニンジンから単離されるセスキテルペン・ラクトン・エンドペルオキシドがある(Woodrowら、 Postgrad. Med.J. 2005; 81:71-78)。これらの化合物としては、半合成誘導体のアルテニモール、アルテスネート、アルテムエーテル及びアルテエーテル(アルテモチル)を挙げられる。国際薬局方(Ph. Int., World Health Organisation)は、マラリアの治療用のもの(マラリアに対して活性)を多数挙げており:即ち、カプセル、錠剤、又は注射用製剤の形態のアルテムエーテル;カプセル又は錠剤の形態のアルテメセニン;注射用製剤としてのアルテエーテル;並びに錠剤の形態のアルテニモール及びアルテスネートの双方である。一旦、体に取り入れられると、アルテミシニンは、ジヒドロアルテミシニンに変換されるため、これらの活性化合物は、ジヒドロアルテミシニンを生体内に供給する全てのものを含む。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Sing及びPanwar (Integrative Cancer Therapies, 5(4): 2006, 391-394)
【非特許文献2】Singh及びVerma (Archive of Oncology, 10(4): 2002, 279-280)
【非特許文献3】Singh及びLai (Life Sciences, 70(2001) 49-56)
【非特許文献4】Rowen (Townsend Letter for Doctors and Patients, 2002年12月)
【非特許文献5】Efferthら("Anti-malaria drug is also active against cancer", Int. J. Oncology, 18; 767-773, 2001)
【非特許文献6】Keiser及びMorson (Exp. Parasitol., 118(2), 2008: 228-37)
【非特許文献7】Keiserら(J. Antimicrobial Chemotherapy, 2006, 57, 1139-1145)
【非特許文献8】Utzingerら(Curr Opin Investig Drugs, 2007 Feb 8(2), 105-16)
【非特許文献9】Woodrowら、 Postgrad. Med.J. 2005; 81:71-78
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
アルテミシニンの投与における1つの特定の課題は、以下に記載するような経口経路によって服用した場合、それらの低い生物学的利用能及び初回通過効果の存在である。さらに、長期の癌治療のため、特に家庭環境で、自己投与又は無資格のヘルパーのいずれかによって、患者に薬物を投与可能であることが、特に好ましい。このことは、患者が家庭に留まることを可能として、健康管理システムへのプレッシャーを低減する。また、癌患者は、しばしば、免疫が低下している。したがって、病因環境等の感染症にかかる率が高い場所に入らないことが、特に有利である。少なくともこれらの理由のため、アルテミシニンの経口投与は、特に、癌治療に必要とされている長期の治療、ジストマ病の治療又はライム病の治療に対して、有効でなく、;注射治療は、感染の危険が生じる傾向にあり、医療資格者を必要とし、保管安定性がなく、;また、坐薬投与は、多くの文化で受け入れられず、患者が下痢を患っている場合、繰り返して吸収されない。
【0016】
これらの製剤の全てに、上述の投与について問題があることが分かる。したがって、これらの問題及び他の問題に対処することが、本発明の課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、第1の態様において、本発明は、ジヒドロアルテミシニン:並びに、中鎖長トリグリセリド類、短鎖トリグリセリド類;オメガ−3−マリントリグリセリド類;オメガ−3−酸類に富んだ魚油からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤を付与することができる化合物を含む医薬組成物であって、前記組成物が経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻投与として処方される、腫瘍の治療のための医薬組成物を提供する。
【0018】
第2の態様において、本発明は、ジヒドロアルテミシニン;並びに、中鎖長トリグリセリド類、短鎖トリグリセリド類;オメガ−3−マリントリグリセリド類;及びオメガ−3−酸類に富んだ魚油からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤を付与することができる化合物を含む医薬組成物であって、前記組成物が、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻投与として処方される、ジストマ病の治療のための医薬組成物を提供する。
【0019】
第3の態様において、本発明は、ジヒドロアルテミシニン(ihydroartemesinin);並びに、中鎖長トリグリセリド類;短鎖トリグリセリド類;オメガ−3−マリントリグリセリド類;及びオメガ−3−酸類に富んだ魚油からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤を付与することができる化合物を含む医薬組成物であって、前記組成物が、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻投与として処方される、ライム病(ボレリオ症)の治療のための医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】15mgアルテムエーテルの舌下スプレー用の3mg/作動(T1)の単一の舌下投与、及び、30mgアルテムエーテル錠剤10mg/錠剤(T4)の単一経口投与後の、血漿アルテムエーテルの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T4、白四角=試験、T1)
【図2】30mgアルテムエーテルの舌下スプレー用の3mg/作動(T2)の単一の舌下投与、及び、30mgアルテムエーテル錠剤10mg/錠剤(T4)の単一経口投与後の、血漿アルテムエーテルの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T4、白四角=試験、T2)
【図3】30mgアルテムエーテルの舌下スプレーの6mg/作動(T3)の単一の舌下投与後の血漿のアルテムエーテルの平均濃度及び標準偏差に対する、30mgアルテムエーテル錠剤10mg/錠剤(T4)の単一経口投与後の血漿アルテムエーテルの平均濃度及び標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T4、白四角=試験、T3)
【図4】15mgアルテムエーテルの舌下スプレーの3mg/作動(T1)の単一の舌下投与後の血漿アルテムエーテルの平均濃度及びその標準偏差に対する、30mgアルテムエーテルの舌下スプレー3mg/作動(T2)の単一舌下投与後の血漿アルテムエーテルの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T2、白四角=試験、T1)
【図5】30mgアルテムエーテルの舌下スプレーの3mg/作動(T2)の単一の舌下投与後の血漿アルテムエーテルの平均濃度及びその標準偏差に対する、30mgアルテムエーテルの舌下スプレー6mg/作動(T3)の単一舌下投与後の血漿アルテムエーテルの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T3、白四角=試験、T2)
【図6】15mgアルテムエーテルの舌下スプレーの3mg/作動(T1)の単一の舌下投与後の血漿アルテムエーテルの平均濃度及びその標準偏差に対する、30mgアルテムエーテルの舌下スプレー6mg/作動(T3)の単一舌下投与後の血漿アルテムエーテルの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T3、白四角=試験、T1)
【図7】15mgアルテムエーテルの舌下スプレーの3mg/作動(T1)の単一の舌下投与、及び、30mgアルテムエーテル錠剤10mg/錠剤(T4)の単一経口投与後の、血漿ジヒドロアルテミシニンの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T4、白四角=試験、T1)
【図8】30mgアルテムエーテルの舌下スプレー用の3mg/作動(T2)の単一の舌下投与、及び、30mgアルテムエーテル錠剤10mg/錠剤(T4)の単一経口投与後の、血漿ジヒドロアルテミシニンの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T4、白四角=試験、T2)
【図9】30mgアルテムエーテルの舌下スプレーの6mg/作動(T3)の単一の舌下投与後の血漿ジヒドロアルテミシニンの平均濃度及びその標準偏差に対する、30mgアルテムエーテル錠剤10mg/錠剤(T4)の単一経口投与後の血漿ジヒドロアルテミシニンの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T4、白四角=試験、T3)
【図10】15mgアルテムエーテルの舌下スプレーの3mg/作動(T1)の単一の舌下投与後の血漿ジヒドロアルテミシニンの平均濃度及びその標準偏差に対する、30mgアルテムエーテルの舌下スプレー3mg/作動(T2)の単一舌下投与後の血漿ジヒドロアルテミシニンの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T2、白四角=試験、T1)
【図11】30mgアルテムエーテルの舌下スプレーの3mg/作動(T2)の単一の舌下投与後の血漿ジヒドロアルテミシニンの平均濃度及びその標準偏差に対する、30mgアルテムエーテルの舌下スプレー6mg/作動(T3)の単一舌下投与後の血漿ジヒドロアルテミシニンの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T3、白四角=試験、T2)
【図12】15mgアルテムエーテルの舌下スプレーの3mg/作動(T1)の単一の舌下投与後の血漿ジヒドロアルテミシニンの平均濃度及びその標準偏差に対する、30mgアルテムエーテルの舌下スプレー6mg/作動(T3)の単一舌下投与後の血漿ジヒドロアルテミシニンの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T3、白四角=試験、T1)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者らは、アルテムエーテル又はアルテエーテルの投与のための、経粘膜舌下経路、経口腔内粘膜経路及び経鼻経路が、体循環への薬物送達、例えば、癌及びジストマ病の治療に効果的であることを見出した。さらに、初めて、それは、治療を必要とする患者にとって許容可能であり、且つ、非医療資格者によっても投与可能な投与経路を提供する。したがって、このような状態の治療において、これは特に有利である。前記組成物は、例えば、液体急速投与として、又は、より好ましくは、スプレーとして、舌下送達することができる。
【0022】
中鎖長トリグリセリド類は、European Pharmacopoeia Monograph 0868に以下の様に規定されている:
【0023】
飽和脂肪酸のトリグリセリド類の混合物、主にカプリル酸(オクタン酸、C8H16O2)及びカプリン酸(デカン酸、C10H20O2)。中鎖トリグリセリド類は、Cocos nucifera L.の内胚乳の硬い、乾燥した部分から、又は、Elaeis guineensis Jacqの乾燥した内胚乳から抽出した油から得られた。中鎖トリグリセリド類が、Cocos nucifera L.の内胚乳から調製される場合、名称「精留ヤシ油」が使用される。中鎖長トリグリセリド類は、8から10の炭素原子を有する飽和脂肪酸の最低95.0%を含む。さらに化学的及び物理的性質が、European Pharmacopoeia Monograph 0868及び同様の文書に記載されている。
【0024】
短鎖トリグリセリド類は、6炭素原子未満の鎖長を有するトリグリセリド類である。
【0025】
オメガ−3−マリントリグリセリド類は、European Pharmacopoeia Monograph 0868に主にトリエステルを含むグリセロールを有するオメガ−3酸類のモノ、ジ及びトリエステルの混合物として規定されていて、グリセロールと、濃縮され且つ精製されたオメガ−3−酸類のエステル化によって、又は、グリセロールとオメガ−3酸類エチルエステルのトランスエステル化のいずれかによって得られる。オメガ−3酸類の由来は、カタクチイワシ科、アジ科、ニシン科、キュウリウオ科、サケ科及びサバ科族からの脂肪性の魚の種の由来の体油である。オメガ−3酸類は、α−リノレン酸(C18:3 n−3)、モロクチン酸(C18:4 n−3)、エイコサテトラエン酸(C20:4 n−3)、ティムノドン酸(エイコサペンタエン酸)(C20:5 n−3; EPA)、ヘネイコサペンタエン酸(C21:5 n−3)、クルパノドン酸(C22:5 n−3)、及びセルボン酸である(ドコサヘキサエン酸)(C22:6 n−3; DHA)の酸類として同定される。トリグリセリド類として示すオメガ−3酸類のEPA及びDHAの総容量は、最低45.0%であり、トリグリセリド類として示す総オメガ−3酸類の総量は、最低60.0%である。トコフェロールは、酸化防止剤として添加することができる。
【0026】
オメガ−3酸類に富んだ魚油は、またEuropean Pharmacopoeiaにカタクチイワシ科、アジ科、ニシン科、キュウリウオ科、サバ科及びイカナゴ科族の種の魚から得られた精製され、冬に備えられ、脱臭された脂肪酸としても規定されている。オメガ−3酸類は、α−リノレン酸(C 18:3、n−3)、モロクチン酸(C 18:4、n−3)、エイコサテトラエン酸(C20:4 n−3)、ティムノドン酸(エイコサペンタエン酸)(C20:5 n−3; EPA)、ヘネイコサペンタエン酸(C21:5 n−3)、クルパノドン酸(C22:5 n−3)及びセルボン酸(ドコサヘキサエン酸)(C22:6 n−3; DHA)の酸類として規定されている。
【0027】
オメガ−3酸類に富んだ魚油の含有量は、
トリグリセリド類として示すEPA:最低13.0%、
トリグリセリド類として示すDHA:最低9.0%、
トリグリセリド類として示す総オメガ−3酸:最低28.0%である。
【0028】
所轄官庁によって特定されているレベルを上回らない濃度で認可された酸化防止剤を添加することができる。
【0029】
これらの定義が、列挙した賦形剤の特に好ましい組成物を規定するのに役立つ一方、当業者は、適切な代替賦形剤の組成物が、また、これらの組成物の厳密な制限から逸脱することがあり得ることを理解する。選択する賦形剤は、アルテムエーテル若しくはアルテエーテル、又はジヒドロアルテミシニンを必要な濃度で付与する他の化合物の溶解性、薬学的活性成分を分解せず、毒性のない等の類似する化学性質を示す。賦形剤は、少なくとも体温で液体であり、好ましくは、賦形剤を前記好ましいスプレー用製剤に使用するのに適切な粘度を有する等の類似した物理的性質を有する。これらの用途のための粘度は、ポンプスプレーに使用したときに前記のように霧化することができるように、十分に低い。
【0030】
例えば、組成物は、実質的に、アルテムエーテル又はアルテエーテル、並びに実質的に37℃で液体のトリグリセリド及び中鎖トリグリセリド類(本明細書中に規定する)からなる薬学的に許容可能な賦形剤からなる。
【0031】
本発明の特に好ましい組成物は、実質的に:アルテムエーテル又はアルテエーテル;並びに中鎖長トリグリセリド類;短鎖トリグリセリド類及びオメガ−3マリントリグリセリド類からなる群から選択される1以上の薬学的に許容可能な賦形剤からなり、前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔又は経鼻投与として処方される。有意な量の他の材料(例えば、より高い分子量脂質)の除去は、組成物を、経鼻経粘膜、口腔及び特に舌下送達に理想的に適した状態にする。
【0032】
より好ましい組成物は:アルテムエーテル;並びに中鎖長トリグリセリド類;短鎖トリグリセリド類;及びオメガ−3−マリントリグリセリド類からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤を含み、前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻投与のために処方され、特に、実質的に、アルテムエーテル、並びに中鎖長トリグリセリド類;短鎖トリグリセリド類及びオメガ−3−マリントリグリセリド類からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤からなる組成物であり、前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻投与のために処方される。
【0033】
あらゆるこれら組成物において、本発明者は、一般的に認められた意見に反して、特に、周囲温度に保存した場合、水が前記組成物の貯蔵寿命をかなり減らし得ることを見出したことから、組成物は実質的に水を含まないことが特に好ましい。好ましい組成物は、1%(w/w)未満の水、より好ましくは、0.5%(w/w)未満の水、最も好ましくは、0.1%(w/w)未満の水を有する。
【0034】
また、あらゆるこれら組成物において、組成物が、実質的にエタノールを含まないことが特に好ましい。また、本発明者は、エタノールが薬学的に活性のある成分の分解を導くことを見出した。特に、組成物は、好ましくは1%(w/w)未満のエタノールを有し、より好ましくは0.5%(w/w)未満のエタノールを有し、最も好ましくは、0.1%(w/w)未満のエタノールを有する。
【0035】
なお、あらゆるこれら組成物において、アルテムエーテル又はアルテエーテルが、2から250mg/賦形剤gの濃度で存在することが好ましい。この濃度は、記載した経粘膜送達に使用される予想体積に適したレベルで提供する。より好ましくは、組成物が、賦形剤中に2から200mg/賦形剤gの濃度で溶解したアルテムエーテル又はアルテエーテルを含む。他の好ましい濃度は、2から100mg/g;2から50mg/gである。より低い濃度は、小児への使用に特に適した組成物を提供する。また、薬学的に活性のある組成物は、例えば、懸濁液としての部分をいくらか有するよりも、広範囲に亘る温度範囲で、溶液中に残ることを確実にすることがより好ましい。これは、列記された経粘膜経路により薬剤を送達することを確実にするために特に重要である。有意な量の活性成分が溶液中に存在しない場合、嚥下される可能性が上昇することから、後述する経粘膜送達の有利な効果が低減する。
【0036】
特に好ましい組成物において、前記賦形剤は、中鎖トリグリセリドを含み、該トリグリセリドは、6から12炭素原子を有する飽和脂肪酸を最低95%含む。より好ましくは、前記賦形剤は、中鎖トリグリセリドを含み、該トリグリセリドは、8から10炭素原子を有する飽和脂肪酸を最低95%含む。
【0037】
また、あらゆる組成物中において、前記組成物が、メントール、バニラもしくはオレンジオイル、レモンオイル、丁子油、ペパーミント油、スペアミントオイル等のエッセンシャルオイルをさらに含むことが好ましい。エッセンシャルオイル、特に、可溶剤として作用するメントールについての特定の技術的利点をさらに以下に記載する。該エッセンシャルオイルは、香味剤として作用し、可溶効果に加えて、数々の利点を有する:香味料が薬物の不快な味を隠し、これによって、患者のコンプライアンスの上昇を導く。これは、それらの性質により、カプセル化又は「糖衣化」できない実質的に液体の製剤にとって、特に重要である。また、前記香味料は、薬物使用者又は薬物を投与した人にフィードバックし、薬物は、効率よく送達され(患者はそれを味わえる)、さらに、それが正しい場所に送達される。
【0038】
第2の態様において、本発明は、本明細書中に記載の組成物を含む薬物の送達器具を提供し、前記器具は、個々の又は連続した投与量の組成物を送達するのに適し、前記それぞれ個々の又は連続した投与量は、1000μL未満の体積である。投与量体積を小さくすることにより、前記組成物を患者が嚥下する可能性、又は、前記組成物を患者が吐き出す可能性を低減する。この可能性は、小さい体積の使用(特に、小児科の事情において、又は、鼻腔送達のため)によって、さらに低減され、さらなる好ましい実施形態において、それぞれの連続投与量は、600μL未満;400μL未満;200μL未満;又は100μL未満を有する。より小さい体積であることは、小児への使用又は鼻腔送達にとって、特に好ましい。
【0039】
第3の態様において、本発明は、ここに記載の組成物を含む薬物送達のための器具、前記組成物の個々の又は連続した投与の送達に適した前記器具及び組成物、アルテムエーテル又はアルテエーテル等のジヒドロアルテミシニンを付与することができる組成物100mg未満、好ましくは80mg未満を含むそれぞれ個々の又は連続した投与量を提供する。該器具は、特に、非医療資格者(non-medically trained personnel)による、舌下送達を促進するように適合することが好ましい。それぞれの投与量で送達する活性製剤の量を制限することは、当業者でないものによる治療の背景(例えば、長期の抗癌治療にあり得る、家庭環境における患者による自己投与)で、前記組成物の過量投与を回避することを確実にするため、特に重要である。好ましくは、前記器具及び組成物は、個々の又は連続した投与量の組成物の送達に適合し、前記それぞれ個々の又は連続した投与量は、アルテムエーテル又はアルテエーテル等のジヒドロアルテミシニンを付与可能な化合物10mg未満である。これは、小児への使用に適した器具を提供する。
【0040】
好ましくは、これらの態様による送達器具は、スプレー、特に、ポンプスプレーを備える。ポンプスプレーの使用は、前記組成物が適用される粘膜面積を広げて、このことにより、吸収率を上昇し、薬物が嚥下される可能性を最小にすることができる。より好ましくは、前記器具が、20ミクロンを超えるか、50ミクロンさえも超えるか、又は、好ましくは75ミクロンを超える平均液滴直径を有するスプレー組成物を生成するのに適している。このように、薬物の肺への故意でない送達は、回避されるか、減少される。
【0041】
第4の態様において、本発明は、また、本明細書中に記載の医薬組成物を含有する容器を有する製剤投与量を付与するための器具、及び、容器の外側に前記医薬組成物の投与量を移すように配置された弁手段を備える。該器具は、例えば、スプレー等の別々の経口腔内粘膜送達器具、経鼻送達器具、又は舌下送達器具に取り付けてもよい。
【0042】
第5の態様において、本発明は、本明細書中に記載の組成物、及び、必要のある患者に経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻経路によって前記組成物を投与するための説明書を有する、腫瘍、ジストマ病、又はライム病の治療のためのキットを提供する。好ましくは、前記キットは、必要がある患者に、舌下経路によって前記組成物を投与するための説明書を有する。
【0043】
第6の態様において、本発明は、ジヒドロアルテミシニン(dihydroartesinin)(例えば、アルテミシニン、及び、特に、アルテムエーテル又はアルテエーテル)を付与する化合物の治療に有効な量を、経粘膜的舌下、口腔又は経鼻経路によって必要のある患者に投与することを含む、腫瘍性疾患、ジストマ病、又はライム病の治療方法を提供する。より好ましくは、前記投与は舌下経路によるものである。
【0044】
また、本発明の範囲には、あらゆる態様又は好ましい態様に従って、前記腫瘍性疾患、ジストマ病又はライム病の治療のための医薬組成物の調製において、ジヒドロアルテミシニンを提供する化合物の使用も含まれる。
【0045】
好ましくは、本発明により提供されるあらゆる医薬組成物又は器具は、腫瘍、ジストマ病又はライム病の治療のためのものである。
【0046】
本発明のあらゆる組成物において、前記組成物が、また、このジヒドロアルテミシニンの作用を向上するようなトランスフェリン、例えばホロトランスフェリンを含むことが特に好ましい。
【0047】
本発明のあらゆる治療方法において、ジヒドロアルテミシニンの作用を向上するようなトランスフェリン、例えば、ホロトランスフェリンを併用することも特に好ましい。
【0048】
また、本発明の治療のあらゆる方法において、ジヒドロアルテミシニンを提供する前記化合物が上述の組成物中に処方されることも特に好ましい。
【0049】
また、本発明の範囲内に含むものとしては、添付の図面のあらゆる適切な組み合わせによって例示されるような医薬組成物、薬物送達器具、本明細書中に実質的に記載されるようなキット及び方法である。
【0050】
放棄する実施形態
本発明の好ましい実施形態において、同時係属中の国際特許出願PCT/GB2008/050999に開示された以下の数々の態様を、特に放棄する:
【0051】
態様1.
アルテムエーテル又はアルテエーテル;並びに
中鎖長トリグリセリド類;
短鎖トリグリセリド類;
オメガ−3−マリントリグリセリド類;及び
オメガ−3−酸類に富んだ魚油
からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物であって、
前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔又は経鼻投与のために処方した、
医薬組成物。
態様2.
実質的に、
アルテムエーテル又はアルテエーテル;並びに
中鎖長トリグリセリド類;
短鎖トリグリセリド類;
オメガ−3−マリントリグリセリド類;及び
オメガ−3−酸類に富んだ魚油
からなる群から選択される1以上の薬学的に許容可能な賦形剤からなる組成物であって、
前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔又は経鼻投与のために処方した、
態様1に記載の組成物。
態様3.
アルテムエーテル;並びに
中鎖長トリグリセリド類;
短鎖トリグリセリド類;
オメガ−3−マリントリグリセリド類;及び
オメガ−3−酸類に富んだ魚油
からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物であって、
前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔又は経鼻投与のために処方した、
態様1に記載の組成物。
態様4.
実質的に、
アルテムエーテル;並びに
中鎖長トリグリセリド類;
短鎖トリグリセリド類;
オメガ−3−マリントリグリセリド類;及び
オメガ−3−酸類に富んだ魚油
からなる群から選択される1以上の薬学的に許容可能な賦形剤からなる組成物であって、
前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔又は経鼻投与のために処方した、
態様1に記載の組成物。
態様5.
実質的に、
アルテムエーテル又はアルテエーテル;並びに
実質的に、
37℃で液状のトリグリセリド;及び
中鎖長トリグリセリド類
からなる薬学的に許容可能な賦形剤からなる組成物であって、、
前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔又は経鼻投与のために処方した、
態様1に記載の組成物。
態様6.
実質的に水を含まない、前記態様のいずれかに記載の組成物。
態様7.
実質的にエタノールを含まない、前記態様のいずれかに記載の組成物。
態様8.
アルテムエーテル又はアルテエーテルは、2mg〜250mg/賦形剤(g)の濃度で存在する、前記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
態様9.
前記賦形剤は、中鎖トリグリセリドを含み、
最小95%の6〜12炭素原子を有する飽和脂肪酸を含む前記トリグリセリドである、前記態様のいずれかに記載の組成物。
態様10.
前記賦形剤は、中鎖トリグリセリドを含み、
最小95%の8〜10炭素原子を有する飽和脂肪酸を含む前記トリグリセリドである、態様8に記載の組成物。
態様11.
メントール、バニラもしくはオレンジオイル、レモンオイル、丁子油、ペパーミント油、スペアミントオイル等のエッセンシャルオイルをさらに含む、前記態様のいずれかに記載の組成物。
態様12.
マラリアの治療又は予防のための前記態様のいずれかに記載の組成物。
態様13.
舌下投与のために処方した、前記態様のいずれかに記載の組成物。
態様14.
前記組成物の個々の又は連続した投与量を送達するのに適した薬物の送達器具であって、
それぞれ個々の又は連続した投与量が、1000μL未満の体積を含む、
前記態様のいずれかに記載の組成物を含む薬物の送達器具。
態様15.
前記器具及び組成物が、前記組成物の個々の又は連続した投与量の送達に適し;
それぞれ個々の又は連続した投与量が、アルテムエーテル又はアルテエーテル80mg未満を含む、
前記態様のいずれかに記載の組成物を含む薬物の送達器具。
態様16.
前記器具及び組成物が、前記組成物の個々の又は連続した投与量の送達に適し;
それぞれ個々の又は連続した投与量が、アルテムエーテル又はアルテエーテル10mg未満を含む、
前記態様のいずれかに記載の組成物を含む薬物の送達器具。
態様17.
前記器具は、ポンプスプレーを含む、態様14〜16のいずれかに記載の送達器具。
態様18.
前記器具は、20ミクロンを超える平均液滴直径を有するスプレー組成物を生成するのに適した、態様17に記載の送達器具。
態様19.
態様1〜13のいずれかに記載の医薬組成物を含有する容器、及び、容器の外側に前記医薬組成物の投与量を移すように配置された弁手段を含む製剤投与量を提供する器具。
態様20.
態様1〜13のいずれかに記載の組成物、及び、必要のある患者に前記組成物を経粘膜的舌下、口腔又は経鼻経路によって投与するための説明書を備える、マラリアの治療又は予防のためのキット。
態様21.
態様1〜13のいずれかに記載の組成物、及び、必要のある患者に前記組成物を舌下経路によって投与するための説明書を備える、マラリアの治療又は予防のためのキット。
態様22.
必要のある患者に治療に有効な量のアルテムエーテル又はアルテエーテルを、経粘膜的舌下、口腔又は経鼻経路によって投与することを含む、アルテムエーテル又はアルテエーテルに反応する疾患の治療方法。
態様23.
必要のある患者に治療に有効な量のアルテムエーテルを、経粘膜的舌下、口腔又は経鼻経路によって投与することを含む、アルテムエーテルに反応する疾患の治療方法。
態様24.
前記投与は、舌下経路による、態様22又は23に記載の方法。
態様25.
前記疾患は、マラリアである、態様22〜24のいずれかに記載の方法。
態様26.
態様1〜13のいずれかに記載の組成物、及び、必要のある患者に前記組成物を経粘膜的舌下、口腔又は経鼻経路によって投与するための説明書を備える、マラリアの治療のためのキット。
態様27.
態様1〜13のいずれかに記載の組成物、及び、必要のある患者に前記組成物を経粘膜的舌下によって投与するための説明書を備える、マラリアの治療のためのキット。
【0052】
ジヒドロアルテミシニン(アルテミシニン、例えば、アルテムエーテル、アルテエーテル、及びアルテスネートの代謝によって生体内に生じる)に反応する臨床的に実用的な疾患、感染症、又は体内侵入の治療を提供する最も重要な態様の1つは、疾患が特に重大な問題である場合、これらの地域の課題に耐えることができる活性成分のために製剤及び投与経路を提供することである。例えば、住血吸虫症が地方病である国で直面したように、あらゆる製剤は、例えば、一定の長期間、比較的高い温度で安定であることが必要とされる。弱っており、おそらく栄養失調で、嘔吐及び下痢を患っている可能性がある個人に、薬物を頻繁に(遅延なく)投与する必要がある。多くの場合、薬物は、非医療資格者により投与される必要が生じることもあり得る。あらゆる活性成分が、優れた(一定の)生物学的利用能を有し、薬剤が、副作用なしに、作用部位に確実に達することも重要である。
【0053】
これらの問題に対処するため、発明者は、アルテムエーテルの経粘膜舌下、口腔、又は経鼻経路投与が、経口(即ち嚥下)又は筋肉内経路と比較して、より高い可能性及びより高く、より多くの生物学的利用能の再現性のレベルの優れた可能性を提供することを見出した。Navaratnamら(Clin Pharmacokinet, 2000, Oct; 39(4): 255-270)は、動物におけるアルテムエーテルの生物学的利用能が、経口投与で19−35%と低く、筋肉注射によって投与したときでもわずか54%である、と報告する。ヒトにおいて、アルテムエーテルの生物学的利用能は、吸収において相当に変動し、筋肉内(25%)及び直腸内(35%)経路の双方で低い。著者は、「脳マラリアを有する小児における予備研究は、筋肉内アルテムエーテルの生物学的利用能が高度に可変的であり、最も重症の患者において治療の結果に潜在的に影響を与えることができる」ことを報告した。
【0054】
経粘膜舌下、口腔又は経鼻経路の投与の使用は、経口及び直腸投与で生じる初回通過効果を回避する。成人は、短い一定期間の間、低い薬剤の生物学的利用能を克服するために必要とされるアルテムエーテルのより高い経口投与量に耐えることができるが、このことは、小児の場合異なる。よって、本明細書中に開示の組成物は、薬物の遅延期間を必要とする癌等の疾患の治療に特に適しており、すなわち、このことが小児への使用のためとなる。
【0055】
初期且つ秘密の投与変動の研究の予備結果を、以下に示し、舌下スプレーによって投与したとき、錠剤による経口投与と比較して、驚くべきことに、上昇した薬剤の生物学的利用能を示す。
【0056】
発明者は、一般的に認められた見解に反して、アルテムエーテルが、水、エタノール又はエアロゾル用製剤に使用することがあり得る噴射剤と接触したとき、安定していないことを見出した。
【0057】
表1及び2は、アルテムエーテルAPI、3つの溶媒系(20%エタノール+80%噴射剤;50%エタノール+50%噴射剤;100%エタノール)中のアルテムエーテル;及び、中鎖トリグリセリドに存在する不純物を示し、ここで、前記トリグリセリドは、ミグリオール(登録商標)810の登録商標として販売されている。ミグリオール(登録商標)は、C8〜C10の飽和脂肪酸(一般的には、カプリル酸(C8:0)65−80%及びカプリン酸(C10:0)20−35%)を含む中鎖トリグリセリドである。
【0058】
これらの試験に使用した噴射剤は、登録商標Zephex(登録商標)134aとして販売される1,1,1,2テトラフルオロエタンである。同様の結果が、噴射剤ブタンであるZephex(登録商標)227(1,1,1,2,3,3,3ヘプタフルオロプロパン)に対して、並びに、ブタン及びプロパンの混合物に対しても得られた。
【0059】
表1は、30℃で8週間保管した後の組成物の不純物を(アルテムエーテルのHPLCクロマトグラムのピーク面積の割合として)示す。表2は、8週間、40℃で保管した後の相当不純物を示す。
【0060】
表1:30℃での保管
【表1】
【0061】
表2:40℃での保管
【表2】
【0062】
典型的なクロマトグラムを図13に示す。ミグリオール(登録商標)810製剤中の不純物のレベルは、初期のアルテムエーテルAPIに観測されるものと比較して、より有意に高くないことを示す。全ての他の症例において、不純物は、IHC Harmonised Tripartite Guidelines for Impurities in New Drug Productsの下、特定の同定又はさらなる毒物検査なしに、許可されたものを超えるレベルである。
【0063】
中鎖トリグリセリド、特に飽和トリグリセリド、例えばミグリオール(登録商標)810中の溶液は、従って、活性成分に関して安定した製剤を構成する。飽和トリグリセリドであることから、これはアルテムエーテルに安定性を与えると考えられる。一定の化学構造において、アルテムエーテルの分解の主な経路は、還元機構を経ていることが好ましく、これは該飽和脂肪酸を含むトリグリセリドによって提供される保護を説明することができる。
【0064】
スプレー送達系に使用する場合、例えば、手動作用ポンプスプレーにおいて、トリグリセリドは、また、ポンプ及び弁の潤滑剤として作用することから、付加的な潤滑剤を製剤に添加する必要性を取り除く。このような中鎖トリグリセリド類の使用は、またポンプスプレー送達系に使用に適した粘度及び表面張力の製剤を生成する。
【0065】
さらなる利点は、また中鎖トリグリセリドの使用から生じる:疎水性のため、トリグリセリドは口の粘膜に付着することから、アルテムエーテルが経粘膜吸収される時間を与える。組成物の疎水性の性質は、唾液の働きによって口から洗い流されて、活性成分を嚥下することを防ぐ。
【0066】
本発明の特に好ましい実施形態において、アルテムエーテルトリグリセリド溶液には、メントール、または、オレンジオイルもしくはバニラが添加された。本発明者は、これが数々の利点を有することを見出した:
【0067】
(1)味マスキング剤としてのその機能は、小児、又は、長期に亘る一定期間、薬物投与の必要がある患者への薬剤の投与の事情において特に重要である;患者が感じる薬剤のあらゆる嫌な味には、ほとんど患者のコンプライアンスが得られない。
【0068】
(2)また、エッセンシャルオイルは、製剤成分の口腔による取り込みを改善する浸透促進剤としても作用する。
【0069】
(3)香味料の添加は、また、第1に、薬剤を投与した人に薬剤が投薬されたか(患者がそれを味わうか、においを嗅ぐ)を確認し、第2に、正しい部位に投薬されたかを確認することを可能とする−薬剤が、例えば、偶然に直接喉に投薬された場合、味覚がない。
【0070】
(4)驚くべき特徴は、エッセンシャルオイル(特に、レボメントール)が、またアルテムエーテルの可溶化を促進することである。溶解度試験において、ミグリオール中のアルテムエーテルの溶解は、アルテムエーテルがメントールの前に添加された場合、5分55秒後に生じるのと比較して、メントールがアルテムエーテルの前に添加された場合、4分30秒後に生じる。
【0071】
例として、好ましい製剤(舌下又は口腔の小児への使用)を、表3及び4に示す。成人の使用のため、又は、いくつかの適応症(inditation)の治療のため、例示されたものと比較して、より高い又はより低い濃度が想定される。2つの異なる投与濃度が、スプレー送達系の使用に適切に与えられる。スプレー(個々のスプレー作動で100μL)の回数は、治療される小児の体重に依存して付与される:
【0072】
表3: 作動当り3mgのアルテムエーテル
【表3】
【0073】
表4: 作動当り6mgのアルテムエーテル
【表4】
【0074】
表5は、小児への使用に好ましい投与計画の例を概説する。代わりの計画は、例えば投与量3mg/体重kgと想定される。
【0075】
表5: 小児への投与計画
【表5】
【0076】
成人への使用のための製剤は、高い濃度のアルテムエーテル、例えば150−200mg/mLで調製してもよい。成人への使用のため、個々のスプレー体積は、例えばここに記載の小児への使用である100μLを超えてもよい。
【0077】
アルテムエーテルの生物学的利用能
本出願人は、本発明のアルテムエーテル含有組成物の摂取を舌下経路によって投与した場合において評価するため、錠剤による経口投与との比較により、秘密試験を実施した。
【0078】
試験は、健常男子成人志願者(コホートにつき16人の対象)に実施され、通常の薬事承認を受けた。本発明による3つの単回投与計画が研究され、経口投与のための錠剤を用いた投与計画と、以下の様に比較された:
【0079】
舌下スプレー用の投与計画
アルテムエーテルのスプレー用製剤は、前記のように調製され、一回で志願者の群に舌下経路で投与された。スプレーの数々の連続した作動は、以下の図6に示すように施行された。
【0080】
表6−単回投与の研究のための投与計画
舌下スプレー用製剤
【表6】
【0081】
経口投与量の参照
参考として、第4群の志願者は、以下の図7に示すようにアルテムエーテルを含む錠剤を一回で投与された。
【0082】
表7−単回投与の研究のための投与計画
経口錠剤用製剤
【表7】
【0083】
以下のそれぞれの投与計画の投与に続いて、血液サンプルが対象から得られて、アルテムエーテルの血漿濃度及びその即効性の代謝物質ジヒドロアルテミシニンが、2つの経路による生物学的利用能を比較するために、測定された。
【0084】
図1−6は、2つの比較投与計画の後のアルテムエーテルの平均血漿濃度を示す。図7−12は、対応するジヒドロアルテミシニンの平均血漿濃度を示す。
【0085】
図1及び7は、投与計画T1(白四角)及びT4(黒丸)を比較する:5回の舌下スプレーの投与による15mgアルテムエーテルに対する錠剤による30mgアルテムエーテル。
【0086】
図2及び8は、投与計画T2(白四角)及びT4(黒丸)を比較する:10回の舌下スプレーの投与による30mgアルテムエーテルに対する錠剤による30mgアルテムエーテル。
【0087】
図3及び9は、投与計画T3(白四角)及びT4(黒丸)を比較する:5回の舌下スプレーの投与による30mgアルテムエーテルに対する錠剤による30mgアルテムエーテル。
【0088】
図4及び10は、投与計画T1(白四角)及びT2(黒丸)を比較する:5回の舌下スプレーの投与による15mgアルテムエーテルに対する10回の舌下スプレー投与による30mgアルテムエーテル。
【0089】
図5及び11は、投与計画T2(白四角)及びT4(黒丸)を比較する:10回の舌下スプレーの投与による30mgアルテムエーテルに対する5回の舌下スプレーの投与による30mgアルテムエーテル。
【0090】
図6及び12は、投与計画T1(白四角)及びT3(黒丸)を比較する:5回の舌下スプレーの投与による15mgアルテムエーテルに対する5回の舌下スプレーの投与による30mgアルテムエーテル。
【0091】
それぞれ4つの投与計画に関する薬物動態学データを、以下の表8−11に与える:
【0092】
表8:試験群T1
15mgアルテムエーテルの舌下スプレーの単回舌下投与:作動当り3mg
【表8】
【0093】
注(Key)
AUC0−12(ng.h/mL) 0−12時間の間の濃度曲線の下の面積
Cmax(ng/mL) 最大観測血漿濃度
Tmax(h) 最大観測血漿濃度の時間
t1/2(h) 排出半減期
λz(h−1) 排出率定数
CL/F(ng/h) 明白なクリアランス率
V/F(L) 明白な体積分布
【0094】
表9:試験群T2
30mgアルテムエーテルの舌下スプレーの単回舌下投与:作動当り3mg
【表9】
表8の注と同じ
【0095】
表10:試験群T3
30mgアルテムエーテルの舌下スプレーの単回舌下投与:作動当り6mg
【表10】
表8の注と同じ
【0096】
表11:試験群T4
30mgアルテムエーテルの舌下スプレーの単回舌下投与:錠剤当り10mg
【表11】
表8の注と同じ
【0097】
これらの予備結果から、一般に受け入れられている吸収率の測定である投与(AUC0−12)後の12時間の血漿濃度曲線下の面積の比較は、ここに開示するようなスプレー用製剤として舌下用として投与したとき、経口錠剤投与と比較して、アルテムエーテルの著しく、驚くべき程高い吸収率を示すことが分かる。
【0098】
経口錠剤による投与とここに記載の舌下スプレー経路によるアルテムエーテルの生物学的利用能の比較のため、2つの投与計画、概してA及びBを比較するために一般的に使用されるF−値をアルテムエーテルのデータのため、以下の様に算出した:
【0099】
【数1】
【0100】
結果は以下の通りである:
【0101】
【数2】
【0102】
上記結果は、本明細書に記載した舌下スプレーによる投与が、錠剤による経口投与と比較して、経口投与量が初回において2倍であるにも関わらず、約1.7倍から2.2倍のアルテムエーテルが吸収されたことを示す。舌下経路による示された生物学的利用能は、したがって、等量の投与量に関して、経口経路によるものの少なくとも2倍である。
【0103】
また、表8−11のデータ及び図1−12の検討は、アルテムエーテル(ジヒドロアルテミシニン)の1次活性代謝物質に関する一般的な結果を確認する。
【0104】
自己誘導機構の回避
アルテミシニンの経口及び直腸投与の双方が、ヒトの薬剤代謝の自己誘導に関連していると知られている(例えば、Ashton M, Hai TN, Sy ND, Huong DX, Van Huong N, Nieu NT, Cong LD.「Artemisinin pharmacokinetics is time-dependent during repeated oral administration in healthy male adults.」Drug Metab Dispos. 1998; 26:25-7及び「Retrospective analysis of artemisinin pharmacokinetics: application of a semiphysiological autoinduction model.」Asimus and Gordi, Br. J Clin Pharmacol. 2007 June; 63(6): 758-762を参照とする)。その結果、体を循環するアルテミシニンは、それぞれの連続投与で減少することから、薬剤投与計画の効果を低減する。
【0105】
秘密試験において、発明者は、経粘膜的舌下経路によるアルテミシニンの投与が、一貫性のある摂取を導き、活性薬剤代謝物質及びジヒドロアルテミシニンの体内の濃度を蓄積することから、舌下経路による投与に有意な利点を提供する前記自己誘導を回避することを見出した。同様の自己誘導回避が、経口腔内粘膜又は経鼻経路による送達で予期されている。
【0106】
秘密試験において、志願者は以下の処置を適用された:一晩の断食後、30mgアルテムエーテル舌下スプレーを6mg/作動で、1日目及び5日目に、単回投与する;朝食又は夕食後、30mgアルテムエーテル舌下スプレーを3mg/作動で、2日目、3日目及び4日目に、1日当たり2回投与する。血液サンプルは、薬物動態学分析のために以下の時点で採取した:
【0107】
1日目:前投与:投与後0.25時間,0.5時間,0.75時間,1時間,1.5時間,2時間,2.5時間,3時間,4時間,6時間,8時間及び12時間。
2日目,3日目及び4日目:朝投与前、朝投与後0.5時間,1時間,2時間及び4時間、及び夜投与前、夜投与後1時間。
【0108】
5日目:前投与:投与後0.25時間,0.5時間,0.75時間,1時間,1.5時間,2時間,2.5時間,3時間,4時間,6時間,8時間,12時間,及び24時間。
血漿ジヒドロアルテミシニンの1日目及び5日目の薬物動態学分析は、効果的に同様の反応を示し、自己誘導の欠如を示した。血漿濃度曲線を図14に示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物、送達方法、送達器具及び癌の治療方法に関する。また、本発明は、医薬組成物、送達方法、送達器具、並びにジストマ病及びライム病(ボレリオ症)の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物クソニンジン(Artemesia annua)から分離することができるアルテミシニンは、マラリアの治療ためのものとして知られ、広範囲な癌、即ち、腫瘍、特に悪性腫瘍の治療にも効果的であることが示されている。報告されている成功症例は以下の通りである:
【0003】
Sing及びPanwar (Integrative Cancer Therapies, 5(4): 2006, 391-394)は、アルテムエーテルでの下垂体腺腫の治療を報告する。
【0004】
Singh及びVerma (Archive of Oncology, 10(4): 2002, 279-280)は、アルテスネートでの喉頭扁平上皮細胞癌の治療を報告する。
【0005】
Singh及びLai (Life Sciences, 70(2001) 49-56)は、ヒト乳癌細胞に対するジヒドロアルテミシニン及びホロトランスフェリンの選択毒性を報告する。
【0006】
Rowen (Townsend Letter for Doctors and Patients, 2002年12月)は、乳癌、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌及び多発性皮膚癌を含む様々な癌の治療のためのアルテミシニンの使用の概要を提供する。
【0007】
Efferthら("Anti-malaria drug is also active against cancer", Int. J. Oncology, 18; 767-773, 2001) は、55の癌株に対するアルテミシニンの活性を報告する。
【0008】
アルテミシニンは、第一鉄と反応して遊離基を形成するそれらの性能のため:また、ほとんどの癌細胞は、高い鉄摂取率を有するため、広範囲な癌細胞に幅広い効果を有すると考えられている。
【0009】
さらに、アルテミシニンは、肝吸虫、特に住血吸虫症の治療への有効性を示す。Keiser及びMorson (Exp. Parasitol., 118(2), 2008: 228-37) は、肝吸虫症(肝蛭症)に対するアルテスネート及びアルテムエーテルの活性を報告する。
【0010】
また、Keiserら(J. Antimicrobial Chemotherapy, 2006, 57, 1139-1145) は、アルテスネート及びアルテムエーテルが、有効な肝蛭症の薬剤(fasciolicides)であることを報告する。
【0011】
Utzingerら(Curr Opin Investig Drugs, 2007 Feb 8(2), 105-16)は、マラリア原虫及びビルハルツ住血吸虫に寄生されたヒトへの治療のために有望な活性を有するアルテミシニンの使用、又は、腸内吸虫及び肝吸虫並びに癌細胞に対するアルテミシニンの使用を報告する。
【0012】
最近の観測では、アルテミシニンがボレリア属の細菌であるライム病の病原体に対して活性を有することも見出した。ボレリア・ブルグドルフェリは、米国においてライム病の主な原因であり、ボリレア・アフゼリ及びボレリア・ガリニは、大半のヨーロッパでの症例において、より一般的な薬剤である。
【0013】
したがって、これら疾患の治療に使用される有効な医薬品には、アルテミシニン(artemesenin)由来の多数の化合物、元来クソニンジンから単離されるセスキテルペン・ラクトン・エンドペルオキシドがある(Woodrowら、 Postgrad. Med.J. 2005; 81:71-78)。これらの化合物としては、半合成誘導体のアルテニモール、アルテスネート、アルテムエーテル及びアルテエーテル(アルテモチル)を挙げられる。国際薬局方(Ph. Int., World Health Organisation)は、マラリアの治療用のもの(マラリアに対して活性)を多数挙げており:即ち、カプセル、錠剤、又は注射用製剤の形態のアルテムエーテル;カプセル又は錠剤の形態のアルテメセニン;注射用製剤としてのアルテエーテル;並びに錠剤の形態のアルテニモール及びアルテスネートの双方である。一旦、体に取り入れられると、アルテミシニンは、ジヒドロアルテミシニンに変換されるため、これらの活性化合物は、ジヒドロアルテミシニンを生体内に供給する全てのものを含む。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Sing及びPanwar (Integrative Cancer Therapies, 5(4): 2006, 391-394)
【非特許文献2】Singh及びVerma (Archive of Oncology, 10(4): 2002, 279-280)
【非特許文献3】Singh及びLai (Life Sciences, 70(2001) 49-56)
【非特許文献4】Rowen (Townsend Letter for Doctors and Patients, 2002年12月)
【非特許文献5】Efferthら("Anti-malaria drug is also active against cancer", Int. J. Oncology, 18; 767-773, 2001)
【非特許文献6】Keiser及びMorson (Exp. Parasitol., 118(2), 2008: 228-37)
【非特許文献7】Keiserら(J. Antimicrobial Chemotherapy, 2006, 57, 1139-1145)
【非特許文献8】Utzingerら(Curr Opin Investig Drugs, 2007 Feb 8(2), 105-16)
【非特許文献9】Woodrowら、 Postgrad. Med.J. 2005; 81:71-78
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
アルテミシニンの投与における1つの特定の課題は、以下に記載するような経口経路によって服用した場合、それらの低い生物学的利用能及び初回通過効果の存在である。さらに、長期の癌治療のため、特に家庭環境で、自己投与又は無資格のヘルパーのいずれかによって、患者に薬物を投与可能であることが、特に好ましい。このことは、患者が家庭に留まることを可能として、健康管理システムへのプレッシャーを低減する。また、癌患者は、しばしば、免疫が低下している。したがって、病因環境等の感染症にかかる率が高い場所に入らないことが、特に有利である。少なくともこれらの理由のため、アルテミシニンの経口投与は、特に、癌治療に必要とされている長期の治療、ジストマ病の治療又はライム病の治療に対して、有効でなく、;注射治療は、感染の危険が生じる傾向にあり、医療資格者を必要とし、保管安定性がなく、;また、坐薬投与は、多くの文化で受け入れられず、患者が下痢を患っている場合、繰り返して吸収されない。
【0016】
これらの製剤の全てに、上述の投与について問題があることが分かる。したがって、これらの問題及び他の問題に対処することが、本発明の課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、第1の態様において、本発明は、ジヒドロアルテミシニン:並びに、中鎖長トリグリセリド類、短鎖トリグリセリド類;オメガ−3−マリントリグリセリド類;オメガ−3−酸類に富んだ魚油からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤を付与することができる化合物を含む医薬組成物であって、前記組成物が経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻投与として処方される、腫瘍の治療のための医薬組成物を提供する。
【0018】
第2の態様において、本発明は、ジヒドロアルテミシニン;並びに、中鎖長トリグリセリド類、短鎖トリグリセリド類;オメガ−3−マリントリグリセリド類;及びオメガ−3−酸類に富んだ魚油からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤を付与することができる化合物を含む医薬組成物であって、前記組成物が、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻投与として処方される、ジストマ病の治療のための医薬組成物を提供する。
【0019】
第3の態様において、本発明は、ジヒドロアルテミシニン(ihydroartemesinin);並びに、中鎖長トリグリセリド類;短鎖トリグリセリド類;オメガ−3−マリントリグリセリド類;及びオメガ−3−酸類に富んだ魚油からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤を付与することができる化合物を含む医薬組成物であって、前記組成物が、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻投与として処方される、ライム病(ボレリオ症)の治療のための医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】15mgアルテムエーテルの舌下スプレー用の3mg/作動(T1)の単一の舌下投与、及び、30mgアルテムエーテル錠剤10mg/錠剤(T4)の単一経口投与後の、血漿アルテムエーテルの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T4、白四角=試験、T1)
【図2】30mgアルテムエーテルの舌下スプレー用の3mg/作動(T2)の単一の舌下投与、及び、30mgアルテムエーテル錠剤10mg/錠剤(T4)の単一経口投与後の、血漿アルテムエーテルの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T4、白四角=試験、T2)
【図3】30mgアルテムエーテルの舌下スプレーの6mg/作動(T3)の単一の舌下投与後の血漿のアルテムエーテルの平均濃度及び標準偏差に対する、30mgアルテムエーテル錠剤10mg/錠剤(T4)の単一経口投与後の血漿アルテムエーテルの平均濃度及び標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T4、白四角=試験、T3)
【図4】15mgアルテムエーテルの舌下スプレーの3mg/作動(T1)の単一の舌下投与後の血漿アルテムエーテルの平均濃度及びその標準偏差に対する、30mgアルテムエーテルの舌下スプレー3mg/作動(T2)の単一舌下投与後の血漿アルテムエーテルの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T2、白四角=試験、T1)
【図5】30mgアルテムエーテルの舌下スプレーの3mg/作動(T2)の単一の舌下投与後の血漿アルテムエーテルの平均濃度及びその標準偏差に対する、30mgアルテムエーテルの舌下スプレー6mg/作動(T3)の単一舌下投与後の血漿アルテムエーテルの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T3、白四角=試験、T2)
【図6】15mgアルテムエーテルの舌下スプレーの3mg/作動(T1)の単一の舌下投与後の血漿アルテムエーテルの平均濃度及びその標準偏差に対する、30mgアルテムエーテルの舌下スプレー6mg/作動(T3)の単一舌下投与後の血漿アルテムエーテルの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T3、白四角=試験、T1)
【図7】15mgアルテムエーテルの舌下スプレーの3mg/作動(T1)の単一の舌下投与、及び、30mgアルテムエーテル錠剤10mg/錠剤(T4)の単一経口投与後の、血漿ジヒドロアルテミシニンの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T4、白四角=試験、T1)
【図8】30mgアルテムエーテルの舌下スプレー用の3mg/作動(T2)の単一の舌下投与、及び、30mgアルテムエーテル錠剤10mg/錠剤(T4)の単一経口投与後の、血漿ジヒドロアルテミシニンの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T4、白四角=試験、T2)
【図9】30mgアルテムエーテルの舌下スプレーの6mg/作動(T3)の単一の舌下投与後の血漿ジヒドロアルテミシニンの平均濃度及びその標準偏差に対する、30mgアルテムエーテル錠剤10mg/錠剤(T4)の単一経口投与後の血漿ジヒドロアルテミシニンの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T4、白四角=試験、T3)
【図10】15mgアルテムエーテルの舌下スプレーの3mg/作動(T1)の単一の舌下投与後の血漿ジヒドロアルテミシニンの平均濃度及びその標準偏差に対する、30mgアルテムエーテルの舌下スプレー3mg/作動(T2)の単一舌下投与後の血漿ジヒドロアルテミシニンの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T2、白四角=試験、T1)
【図11】30mgアルテムエーテルの舌下スプレーの3mg/作動(T2)の単一の舌下投与後の血漿ジヒドロアルテミシニンの平均濃度及びその標準偏差に対する、30mgアルテムエーテルの舌下スプレー6mg/作動(T3)の単一舌下投与後の血漿ジヒドロアルテミシニンの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T3、白四角=試験、T2)
【図12】15mgアルテムエーテルの舌下スプレーの3mg/作動(T1)の単一の舌下投与後の血漿ジヒドロアルテミシニンの平均濃度及びその標準偏差に対する、30mgアルテムエーテルの舌下スプレー6mg/作動(T3)の単一舌下投与後の血漿ジヒドロアルテミシニンの平均濃度及びその標準偏差の、時間に対するグラフを示す。平均±SD(黒丸=参照、T3、白四角=試験、T1)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者らは、アルテムエーテル又はアルテエーテルの投与のための、経粘膜舌下経路、経口腔内粘膜経路及び経鼻経路が、体循環への薬物送達、例えば、癌及びジストマ病の治療に効果的であることを見出した。さらに、初めて、それは、治療を必要とする患者にとって許容可能であり、且つ、非医療資格者によっても投与可能な投与経路を提供する。したがって、このような状態の治療において、これは特に有利である。前記組成物は、例えば、液体急速投与として、又は、より好ましくは、スプレーとして、舌下送達することができる。
【0022】
中鎖長トリグリセリド類は、European Pharmacopoeia Monograph 0868に以下の様に規定されている:
【0023】
飽和脂肪酸のトリグリセリド類の混合物、主にカプリル酸(オクタン酸、C8H16O2)及びカプリン酸(デカン酸、C10H20O2)。中鎖トリグリセリド類は、Cocos nucifera L.の内胚乳の硬い、乾燥した部分から、又は、Elaeis guineensis Jacqの乾燥した内胚乳から抽出した油から得られた。中鎖トリグリセリド類が、Cocos nucifera L.の内胚乳から調製される場合、名称「精留ヤシ油」が使用される。中鎖長トリグリセリド類は、8から10の炭素原子を有する飽和脂肪酸の最低95.0%を含む。さらに化学的及び物理的性質が、European Pharmacopoeia Monograph 0868及び同様の文書に記載されている。
【0024】
短鎖トリグリセリド類は、6炭素原子未満の鎖長を有するトリグリセリド類である。
【0025】
オメガ−3−マリントリグリセリド類は、European Pharmacopoeia Monograph 0868に主にトリエステルを含むグリセロールを有するオメガ−3酸類のモノ、ジ及びトリエステルの混合物として規定されていて、グリセロールと、濃縮され且つ精製されたオメガ−3−酸類のエステル化によって、又は、グリセロールとオメガ−3酸類エチルエステルのトランスエステル化のいずれかによって得られる。オメガ−3酸類の由来は、カタクチイワシ科、アジ科、ニシン科、キュウリウオ科、サケ科及びサバ科族からの脂肪性の魚の種の由来の体油である。オメガ−3酸類は、α−リノレン酸(C18:3 n−3)、モロクチン酸(C18:4 n−3)、エイコサテトラエン酸(C20:4 n−3)、ティムノドン酸(エイコサペンタエン酸)(C20:5 n−3; EPA)、ヘネイコサペンタエン酸(C21:5 n−3)、クルパノドン酸(C22:5 n−3)、及びセルボン酸である(ドコサヘキサエン酸)(C22:6 n−3; DHA)の酸類として同定される。トリグリセリド類として示すオメガ−3酸類のEPA及びDHAの総容量は、最低45.0%であり、トリグリセリド類として示す総オメガ−3酸類の総量は、最低60.0%である。トコフェロールは、酸化防止剤として添加することができる。
【0026】
オメガ−3酸類に富んだ魚油は、またEuropean Pharmacopoeiaにカタクチイワシ科、アジ科、ニシン科、キュウリウオ科、サバ科及びイカナゴ科族の種の魚から得られた精製され、冬に備えられ、脱臭された脂肪酸としても規定されている。オメガ−3酸類は、α−リノレン酸(C 18:3、n−3)、モロクチン酸(C 18:4、n−3)、エイコサテトラエン酸(C20:4 n−3)、ティムノドン酸(エイコサペンタエン酸)(C20:5 n−3; EPA)、ヘネイコサペンタエン酸(C21:5 n−3)、クルパノドン酸(C22:5 n−3)及びセルボン酸(ドコサヘキサエン酸)(C22:6 n−3; DHA)の酸類として規定されている。
【0027】
オメガ−3酸類に富んだ魚油の含有量は、
トリグリセリド類として示すEPA:最低13.0%、
トリグリセリド類として示すDHA:最低9.0%、
トリグリセリド類として示す総オメガ−3酸:最低28.0%である。
【0028】
所轄官庁によって特定されているレベルを上回らない濃度で認可された酸化防止剤を添加することができる。
【0029】
これらの定義が、列挙した賦形剤の特に好ましい組成物を規定するのに役立つ一方、当業者は、適切な代替賦形剤の組成物が、また、これらの組成物の厳密な制限から逸脱することがあり得ることを理解する。選択する賦形剤は、アルテムエーテル若しくはアルテエーテル、又はジヒドロアルテミシニンを必要な濃度で付与する他の化合物の溶解性、薬学的活性成分を分解せず、毒性のない等の類似する化学性質を示す。賦形剤は、少なくとも体温で液体であり、好ましくは、賦形剤を前記好ましいスプレー用製剤に使用するのに適切な粘度を有する等の類似した物理的性質を有する。これらの用途のための粘度は、ポンプスプレーに使用したときに前記のように霧化することができるように、十分に低い。
【0030】
例えば、組成物は、実質的に、アルテムエーテル又はアルテエーテル、並びに実質的に37℃で液体のトリグリセリド及び中鎖トリグリセリド類(本明細書中に規定する)からなる薬学的に許容可能な賦形剤からなる。
【0031】
本発明の特に好ましい組成物は、実質的に:アルテムエーテル又はアルテエーテル;並びに中鎖長トリグリセリド類;短鎖トリグリセリド類及びオメガ−3マリントリグリセリド類からなる群から選択される1以上の薬学的に許容可能な賦形剤からなり、前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔又は経鼻投与として処方される。有意な量の他の材料(例えば、より高い分子量脂質)の除去は、組成物を、経鼻経粘膜、口腔及び特に舌下送達に理想的に適した状態にする。
【0032】
より好ましい組成物は:アルテムエーテル;並びに中鎖長トリグリセリド類;短鎖トリグリセリド類;及びオメガ−3−マリントリグリセリド類からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤を含み、前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻投与のために処方され、特に、実質的に、アルテムエーテル、並びに中鎖長トリグリセリド類;短鎖トリグリセリド類及びオメガ−3−マリントリグリセリド類からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤からなる組成物であり、前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻投与のために処方される。
【0033】
あらゆるこれら組成物において、本発明者は、一般的に認められた意見に反して、特に、周囲温度に保存した場合、水が前記組成物の貯蔵寿命をかなり減らし得ることを見出したことから、組成物は実質的に水を含まないことが特に好ましい。好ましい組成物は、1%(w/w)未満の水、より好ましくは、0.5%(w/w)未満の水、最も好ましくは、0.1%(w/w)未満の水を有する。
【0034】
また、あらゆるこれら組成物において、組成物が、実質的にエタノールを含まないことが特に好ましい。また、本発明者は、エタノールが薬学的に活性のある成分の分解を導くことを見出した。特に、組成物は、好ましくは1%(w/w)未満のエタノールを有し、より好ましくは0.5%(w/w)未満のエタノールを有し、最も好ましくは、0.1%(w/w)未満のエタノールを有する。
【0035】
なお、あらゆるこれら組成物において、アルテムエーテル又はアルテエーテルが、2から250mg/賦形剤gの濃度で存在することが好ましい。この濃度は、記載した経粘膜送達に使用される予想体積に適したレベルで提供する。より好ましくは、組成物が、賦形剤中に2から200mg/賦形剤gの濃度で溶解したアルテムエーテル又はアルテエーテルを含む。他の好ましい濃度は、2から100mg/g;2から50mg/gである。より低い濃度は、小児への使用に特に適した組成物を提供する。また、薬学的に活性のある組成物は、例えば、懸濁液としての部分をいくらか有するよりも、広範囲に亘る温度範囲で、溶液中に残ることを確実にすることがより好ましい。これは、列記された経粘膜経路により薬剤を送達することを確実にするために特に重要である。有意な量の活性成分が溶液中に存在しない場合、嚥下される可能性が上昇することから、後述する経粘膜送達の有利な効果が低減する。
【0036】
特に好ましい組成物において、前記賦形剤は、中鎖トリグリセリドを含み、該トリグリセリドは、6から12炭素原子を有する飽和脂肪酸を最低95%含む。より好ましくは、前記賦形剤は、中鎖トリグリセリドを含み、該トリグリセリドは、8から10炭素原子を有する飽和脂肪酸を最低95%含む。
【0037】
また、あらゆる組成物中において、前記組成物が、メントール、バニラもしくはオレンジオイル、レモンオイル、丁子油、ペパーミント油、スペアミントオイル等のエッセンシャルオイルをさらに含むことが好ましい。エッセンシャルオイル、特に、可溶剤として作用するメントールについての特定の技術的利点をさらに以下に記載する。該エッセンシャルオイルは、香味剤として作用し、可溶効果に加えて、数々の利点を有する:香味料が薬物の不快な味を隠し、これによって、患者のコンプライアンスの上昇を導く。これは、それらの性質により、カプセル化又は「糖衣化」できない実質的に液体の製剤にとって、特に重要である。また、前記香味料は、薬物使用者又は薬物を投与した人にフィードバックし、薬物は、効率よく送達され(患者はそれを味わえる)、さらに、それが正しい場所に送達される。
【0038】
第2の態様において、本発明は、本明細書中に記載の組成物を含む薬物の送達器具を提供し、前記器具は、個々の又は連続した投与量の組成物を送達するのに適し、前記それぞれ個々の又は連続した投与量は、1000μL未満の体積である。投与量体積を小さくすることにより、前記組成物を患者が嚥下する可能性、又は、前記組成物を患者が吐き出す可能性を低減する。この可能性は、小さい体積の使用(特に、小児科の事情において、又は、鼻腔送達のため)によって、さらに低減され、さらなる好ましい実施形態において、それぞれの連続投与量は、600μL未満;400μL未満;200μL未満;又は100μL未満を有する。より小さい体積であることは、小児への使用又は鼻腔送達にとって、特に好ましい。
【0039】
第3の態様において、本発明は、ここに記載の組成物を含む薬物送達のための器具、前記組成物の個々の又は連続した投与の送達に適した前記器具及び組成物、アルテムエーテル又はアルテエーテル等のジヒドロアルテミシニンを付与することができる組成物100mg未満、好ましくは80mg未満を含むそれぞれ個々の又は連続した投与量を提供する。該器具は、特に、非医療資格者(non-medically trained personnel)による、舌下送達を促進するように適合することが好ましい。それぞれの投与量で送達する活性製剤の量を制限することは、当業者でないものによる治療の背景(例えば、長期の抗癌治療にあり得る、家庭環境における患者による自己投与)で、前記組成物の過量投与を回避することを確実にするため、特に重要である。好ましくは、前記器具及び組成物は、個々の又は連続した投与量の組成物の送達に適合し、前記それぞれ個々の又は連続した投与量は、アルテムエーテル又はアルテエーテル等のジヒドロアルテミシニンを付与可能な化合物10mg未満である。これは、小児への使用に適した器具を提供する。
【0040】
好ましくは、これらの態様による送達器具は、スプレー、特に、ポンプスプレーを備える。ポンプスプレーの使用は、前記組成物が適用される粘膜面積を広げて、このことにより、吸収率を上昇し、薬物が嚥下される可能性を最小にすることができる。より好ましくは、前記器具が、20ミクロンを超えるか、50ミクロンさえも超えるか、又は、好ましくは75ミクロンを超える平均液滴直径を有するスプレー組成物を生成するのに適している。このように、薬物の肺への故意でない送達は、回避されるか、減少される。
【0041】
第4の態様において、本発明は、また、本明細書中に記載の医薬組成物を含有する容器を有する製剤投与量を付与するための器具、及び、容器の外側に前記医薬組成物の投与量を移すように配置された弁手段を備える。該器具は、例えば、スプレー等の別々の経口腔内粘膜送達器具、経鼻送達器具、又は舌下送達器具に取り付けてもよい。
【0042】
第5の態様において、本発明は、本明細書中に記載の組成物、及び、必要のある患者に経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻経路によって前記組成物を投与するための説明書を有する、腫瘍、ジストマ病、又はライム病の治療のためのキットを提供する。好ましくは、前記キットは、必要がある患者に、舌下経路によって前記組成物を投与するための説明書を有する。
【0043】
第6の態様において、本発明は、ジヒドロアルテミシニン(dihydroartesinin)(例えば、アルテミシニン、及び、特に、アルテムエーテル又はアルテエーテル)を付与する化合物の治療に有効な量を、経粘膜的舌下、口腔又は経鼻経路によって必要のある患者に投与することを含む、腫瘍性疾患、ジストマ病、又はライム病の治療方法を提供する。より好ましくは、前記投与は舌下経路によるものである。
【0044】
また、本発明の範囲には、あらゆる態様又は好ましい態様に従って、前記腫瘍性疾患、ジストマ病又はライム病の治療のための医薬組成物の調製において、ジヒドロアルテミシニンを提供する化合物の使用も含まれる。
【0045】
好ましくは、本発明により提供されるあらゆる医薬組成物又は器具は、腫瘍、ジストマ病又はライム病の治療のためのものである。
【0046】
本発明のあらゆる組成物において、前記組成物が、また、このジヒドロアルテミシニンの作用を向上するようなトランスフェリン、例えばホロトランスフェリンを含むことが特に好ましい。
【0047】
本発明のあらゆる治療方法において、ジヒドロアルテミシニンの作用を向上するようなトランスフェリン、例えば、ホロトランスフェリンを併用することも特に好ましい。
【0048】
また、本発明の治療のあらゆる方法において、ジヒドロアルテミシニンを提供する前記化合物が上述の組成物中に処方されることも特に好ましい。
【0049】
また、本発明の範囲内に含むものとしては、添付の図面のあらゆる適切な組み合わせによって例示されるような医薬組成物、薬物送達器具、本明細書中に実質的に記載されるようなキット及び方法である。
【0050】
放棄する実施形態
本発明の好ましい実施形態において、同時係属中の国際特許出願PCT/GB2008/050999に開示された以下の数々の態様を、特に放棄する:
【0051】
態様1.
アルテムエーテル又はアルテエーテル;並びに
中鎖長トリグリセリド類;
短鎖トリグリセリド類;
オメガ−3−マリントリグリセリド類;及び
オメガ−3−酸類に富んだ魚油
からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物であって、
前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔又は経鼻投与のために処方した、
医薬組成物。
態様2.
実質的に、
アルテムエーテル又はアルテエーテル;並びに
中鎖長トリグリセリド類;
短鎖トリグリセリド類;
オメガ−3−マリントリグリセリド類;及び
オメガ−3−酸類に富んだ魚油
からなる群から選択される1以上の薬学的に許容可能な賦形剤からなる組成物であって、
前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔又は経鼻投与のために処方した、
態様1に記載の組成物。
態様3.
アルテムエーテル;並びに
中鎖長トリグリセリド類;
短鎖トリグリセリド類;
オメガ−3−マリントリグリセリド類;及び
オメガ−3−酸類に富んだ魚油
からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物であって、
前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔又は経鼻投与のために処方した、
態様1に記載の組成物。
態様4.
実質的に、
アルテムエーテル;並びに
中鎖長トリグリセリド類;
短鎖トリグリセリド類;
オメガ−3−マリントリグリセリド類;及び
オメガ−3−酸類に富んだ魚油
からなる群から選択される1以上の薬学的に許容可能な賦形剤からなる組成物であって、
前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔又は経鼻投与のために処方した、
態様1に記載の組成物。
態様5.
実質的に、
アルテムエーテル又はアルテエーテル;並びに
実質的に、
37℃で液状のトリグリセリド;及び
中鎖長トリグリセリド類
からなる薬学的に許容可能な賦形剤からなる組成物であって、、
前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔又は経鼻投与のために処方した、
態様1に記載の組成物。
態様6.
実質的に水を含まない、前記態様のいずれかに記載の組成物。
態様7.
実質的にエタノールを含まない、前記態様のいずれかに記載の組成物。
態様8.
アルテムエーテル又はアルテエーテルは、2mg〜250mg/賦形剤(g)の濃度で存在する、前記態様のいずれかに記載の医薬組成物。
態様9.
前記賦形剤は、中鎖トリグリセリドを含み、
最小95%の6〜12炭素原子を有する飽和脂肪酸を含む前記トリグリセリドである、前記態様のいずれかに記載の組成物。
態様10.
前記賦形剤は、中鎖トリグリセリドを含み、
最小95%の8〜10炭素原子を有する飽和脂肪酸を含む前記トリグリセリドである、態様8に記載の組成物。
態様11.
メントール、バニラもしくはオレンジオイル、レモンオイル、丁子油、ペパーミント油、スペアミントオイル等のエッセンシャルオイルをさらに含む、前記態様のいずれかに記載の組成物。
態様12.
マラリアの治療又は予防のための前記態様のいずれかに記載の組成物。
態様13.
舌下投与のために処方した、前記態様のいずれかに記載の組成物。
態様14.
前記組成物の個々の又は連続した投与量を送達するのに適した薬物の送達器具であって、
それぞれ個々の又は連続した投与量が、1000μL未満の体積を含む、
前記態様のいずれかに記載の組成物を含む薬物の送達器具。
態様15.
前記器具及び組成物が、前記組成物の個々の又は連続した投与量の送達に適し;
それぞれ個々の又は連続した投与量が、アルテムエーテル又はアルテエーテル80mg未満を含む、
前記態様のいずれかに記載の組成物を含む薬物の送達器具。
態様16.
前記器具及び組成物が、前記組成物の個々の又は連続した投与量の送達に適し;
それぞれ個々の又は連続した投与量が、アルテムエーテル又はアルテエーテル10mg未満を含む、
前記態様のいずれかに記載の組成物を含む薬物の送達器具。
態様17.
前記器具は、ポンプスプレーを含む、態様14〜16のいずれかに記載の送達器具。
態様18.
前記器具は、20ミクロンを超える平均液滴直径を有するスプレー組成物を生成するのに適した、態様17に記載の送達器具。
態様19.
態様1〜13のいずれかに記載の医薬組成物を含有する容器、及び、容器の外側に前記医薬組成物の投与量を移すように配置された弁手段を含む製剤投与量を提供する器具。
態様20.
態様1〜13のいずれかに記載の組成物、及び、必要のある患者に前記組成物を経粘膜的舌下、口腔又は経鼻経路によって投与するための説明書を備える、マラリアの治療又は予防のためのキット。
態様21.
態様1〜13のいずれかに記載の組成物、及び、必要のある患者に前記組成物を舌下経路によって投与するための説明書を備える、マラリアの治療又は予防のためのキット。
態様22.
必要のある患者に治療に有効な量のアルテムエーテル又はアルテエーテルを、経粘膜的舌下、口腔又は経鼻経路によって投与することを含む、アルテムエーテル又はアルテエーテルに反応する疾患の治療方法。
態様23.
必要のある患者に治療に有効な量のアルテムエーテルを、経粘膜的舌下、口腔又は経鼻経路によって投与することを含む、アルテムエーテルに反応する疾患の治療方法。
態様24.
前記投与は、舌下経路による、態様22又は23に記載の方法。
態様25.
前記疾患は、マラリアである、態様22〜24のいずれかに記載の方法。
態様26.
態様1〜13のいずれかに記載の組成物、及び、必要のある患者に前記組成物を経粘膜的舌下、口腔又は経鼻経路によって投与するための説明書を備える、マラリアの治療のためのキット。
態様27.
態様1〜13のいずれかに記載の組成物、及び、必要のある患者に前記組成物を経粘膜的舌下によって投与するための説明書を備える、マラリアの治療のためのキット。
【0052】
ジヒドロアルテミシニン(アルテミシニン、例えば、アルテムエーテル、アルテエーテル、及びアルテスネートの代謝によって生体内に生じる)に反応する臨床的に実用的な疾患、感染症、又は体内侵入の治療を提供する最も重要な態様の1つは、疾患が特に重大な問題である場合、これらの地域の課題に耐えることができる活性成分のために製剤及び投与経路を提供することである。例えば、住血吸虫症が地方病である国で直面したように、あらゆる製剤は、例えば、一定の長期間、比較的高い温度で安定であることが必要とされる。弱っており、おそらく栄養失調で、嘔吐及び下痢を患っている可能性がある個人に、薬物を頻繁に(遅延なく)投与する必要がある。多くの場合、薬物は、非医療資格者により投与される必要が生じることもあり得る。あらゆる活性成分が、優れた(一定の)生物学的利用能を有し、薬剤が、副作用なしに、作用部位に確実に達することも重要である。
【0053】
これらの問題に対処するため、発明者は、アルテムエーテルの経粘膜舌下、口腔、又は経鼻経路投与が、経口(即ち嚥下)又は筋肉内経路と比較して、より高い可能性及びより高く、より多くの生物学的利用能の再現性のレベルの優れた可能性を提供することを見出した。Navaratnamら(Clin Pharmacokinet, 2000, Oct; 39(4): 255-270)は、動物におけるアルテムエーテルの生物学的利用能が、経口投与で19−35%と低く、筋肉注射によって投与したときでもわずか54%である、と報告する。ヒトにおいて、アルテムエーテルの生物学的利用能は、吸収において相当に変動し、筋肉内(25%)及び直腸内(35%)経路の双方で低い。著者は、「脳マラリアを有する小児における予備研究は、筋肉内アルテムエーテルの生物学的利用能が高度に可変的であり、最も重症の患者において治療の結果に潜在的に影響を与えることができる」ことを報告した。
【0054】
経粘膜舌下、口腔又は経鼻経路の投与の使用は、経口及び直腸投与で生じる初回通過効果を回避する。成人は、短い一定期間の間、低い薬剤の生物学的利用能を克服するために必要とされるアルテムエーテルのより高い経口投与量に耐えることができるが、このことは、小児の場合異なる。よって、本明細書中に開示の組成物は、薬物の遅延期間を必要とする癌等の疾患の治療に特に適しており、すなわち、このことが小児への使用のためとなる。
【0055】
初期且つ秘密の投与変動の研究の予備結果を、以下に示し、舌下スプレーによって投与したとき、錠剤による経口投与と比較して、驚くべきことに、上昇した薬剤の生物学的利用能を示す。
【0056】
発明者は、一般的に認められた見解に反して、アルテムエーテルが、水、エタノール又はエアロゾル用製剤に使用することがあり得る噴射剤と接触したとき、安定していないことを見出した。
【0057】
表1及び2は、アルテムエーテルAPI、3つの溶媒系(20%エタノール+80%噴射剤;50%エタノール+50%噴射剤;100%エタノール)中のアルテムエーテル;及び、中鎖トリグリセリドに存在する不純物を示し、ここで、前記トリグリセリドは、ミグリオール(登録商標)810の登録商標として販売されている。ミグリオール(登録商標)は、C8〜C10の飽和脂肪酸(一般的には、カプリル酸(C8:0)65−80%及びカプリン酸(C10:0)20−35%)を含む中鎖トリグリセリドである。
【0058】
これらの試験に使用した噴射剤は、登録商標Zephex(登録商標)134aとして販売される1,1,1,2テトラフルオロエタンである。同様の結果が、噴射剤ブタンであるZephex(登録商標)227(1,1,1,2,3,3,3ヘプタフルオロプロパン)に対して、並びに、ブタン及びプロパンの混合物に対しても得られた。
【0059】
表1は、30℃で8週間保管した後の組成物の不純物を(アルテムエーテルのHPLCクロマトグラムのピーク面積の割合として)示す。表2は、8週間、40℃で保管した後の相当不純物を示す。
【0060】
表1:30℃での保管
【表1】
【0061】
表2:40℃での保管
【表2】
【0062】
典型的なクロマトグラムを図13に示す。ミグリオール(登録商標)810製剤中の不純物のレベルは、初期のアルテムエーテルAPIに観測されるものと比較して、より有意に高くないことを示す。全ての他の症例において、不純物は、IHC Harmonised Tripartite Guidelines for Impurities in New Drug Productsの下、特定の同定又はさらなる毒物検査なしに、許可されたものを超えるレベルである。
【0063】
中鎖トリグリセリド、特に飽和トリグリセリド、例えばミグリオール(登録商標)810中の溶液は、従って、活性成分に関して安定した製剤を構成する。飽和トリグリセリドであることから、これはアルテムエーテルに安定性を与えると考えられる。一定の化学構造において、アルテムエーテルの分解の主な経路は、還元機構を経ていることが好ましく、これは該飽和脂肪酸を含むトリグリセリドによって提供される保護を説明することができる。
【0064】
スプレー送達系に使用する場合、例えば、手動作用ポンプスプレーにおいて、トリグリセリドは、また、ポンプ及び弁の潤滑剤として作用することから、付加的な潤滑剤を製剤に添加する必要性を取り除く。このような中鎖トリグリセリド類の使用は、またポンプスプレー送達系に使用に適した粘度及び表面張力の製剤を生成する。
【0065】
さらなる利点は、また中鎖トリグリセリドの使用から生じる:疎水性のため、トリグリセリドは口の粘膜に付着することから、アルテムエーテルが経粘膜吸収される時間を与える。組成物の疎水性の性質は、唾液の働きによって口から洗い流されて、活性成分を嚥下することを防ぐ。
【0066】
本発明の特に好ましい実施形態において、アルテムエーテルトリグリセリド溶液には、メントール、または、オレンジオイルもしくはバニラが添加された。本発明者は、これが数々の利点を有することを見出した:
【0067】
(1)味マスキング剤としてのその機能は、小児、又は、長期に亘る一定期間、薬物投与の必要がある患者への薬剤の投与の事情において特に重要である;患者が感じる薬剤のあらゆる嫌な味には、ほとんど患者のコンプライアンスが得られない。
【0068】
(2)また、エッセンシャルオイルは、製剤成分の口腔による取り込みを改善する浸透促進剤としても作用する。
【0069】
(3)香味料の添加は、また、第1に、薬剤を投与した人に薬剤が投薬されたか(患者がそれを味わうか、においを嗅ぐ)を確認し、第2に、正しい部位に投薬されたかを確認することを可能とする−薬剤が、例えば、偶然に直接喉に投薬された場合、味覚がない。
【0070】
(4)驚くべき特徴は、エッセンシャルオイル(特に、レボメントール)が、またアルテムエーテルの可溶化を促進することである。溶解度試験において、ミグリオール中のアルテムエーテルの溶解は、アルテムエーテルがメントールの前に添加された場合、5分55秒後に生じるのと比較して、メントールがアルテムエーテルの前に添加された場合、4分30秒後に生じる。
【0071】
例として、好ましい製剤(舌下又は口腔の小児への使用)を、表3及び4に示す。成人の使用のため、又は、いくつかの適応症(inditation)の治療のため、例示されたものと比較して、より高い又はより低い濃度が想定される。2つの異なる投与濃度が、スプレー送達系の使用に適切に与えられる。スプレー(個々のスプレー作動で100μL)の回数は、治療される小児の体重に依存して付与される:
【0072】
表3: 作動当り3mgのアルテムエーテル
【表3】
【0073】
表4: 作動当り6mgのアルテムエーテル
【表4】
【0074】
表5は、小児への使用に好ましい投与計画の例を概説する。代わりの計画は、例えば投与量3mg/体重kgと想定される。
【0075】
表5: 小児への投与計画
【表5】
【0076】
成人への使用のための製剤は、高い濃度のアルテムエーテル、例えば150−200mg/mLで調製してもよい。成人への使用のため、個々のスプレー体積は、例えばここに記載の小児への使用である100μLを超えてもよい。
【0077】
アルテムエーテルの生物学的利用能
本出願人は、本発明のアルテムエーテル含有組成物の摂取を舌下経路によって投与した場合において評価するため、錠剤による経口投与との比較により、秘密試験を実施した。
【0078】
試験は、健常男子成人志願者(コホートにつき16人の対象)に実施され、通常の薬事承認を受けた。本発明による3つの単回投与計画が研究され、経口投与のための錠剤を用いた投与計画と、以下の様に比較された:
【0079】
舌下スプレー用の投与計画
アルテムエーテルのスプレー用製剤は、前記のように調製され、一回で志願者の群に舌下経路で投与された。スプレーの数々の連続した作動は、以下の図6に示すように施行された。
【0080】
表6−単回投与の研究のための投与計画
舌下スプレー用製剤
【表6】
【0081】
経口投与量の参照
参考として、第4群の志願者は、以下の図7に示すようにアルテムエーテルを含む錠剤を一回で投与された。
【0082】
表7−単回投与の研究のための投与計画
経口錠剤用製剤
【表7】
【0083】
以下のそれぞれの投与計画の投与に続いて、血液サンプルが対象から得られて、アルテムエーテルの血漿濃度及びその即効性の代謝物質ジヒドロアルテミシニンが、2つの経路による生物学的利用能を比較するために、測定された。
【0084】
図1−6は、2つの比較投与計画の後のアルテムエーテルの平均血漿濃度を示す。図7−12は、対応するジヒドロアルテミシニンの平均血漿濃度を示す。
【0085】
図1及び7は、投与計画T1(白四角)及びT4(黒丸)を比較する:5回の舌下スプレーの投与による15mgアルテムエーテルに対する錠剤による30mgアルテムエーテル。
【0086】
図2及び8は、投与計画T2(白四角)及びT4(黒丸)を比較する:10回の舌下スプレーの投与による30mgアルテムエーテルに対する錠剤による30mgアルテムエーテル。
【0087】
図3及び9は、投与計画T3(白四角)及びT4(黒丸)を比較する:5回の舌下スプレーの投与による30mgアルテムエーテルに対する錠剤による30mgアルテムエーテル。
【0088】
図4及び10は、投与計画T1(白四角)及びT2(黒丸)を比較する:5回の舌下スプレーの投与による15mgアルテムエーテルに対する10回の舌下スプレー投与による30mgアルテムエーテル。
【0089】
図5及び11は、投与計画T2(白四角)及びT4(黒丸)を比較する:10回の舌下スプレーの投与による30mgアルテムエーテルに対する5回の舌下スプレーの投与による30mgアルテムエーテル。
【0090】
図6及び12は、投与計画T1(白四角)及びT3(黒丸)を比較する:5回の舌下スプレーの投与による15mgアルテムエーテルに対する5回の舌下スプレーの投与による30mgアルテムエーテル。
【0091】
それぞれ4つの投与計画に関する薬物動態学データを、以下の表8−11に与える:
【0092】
表8:試験群T1
15mgアルテムエーテルの舌下スプレーの単回舌下投与:作動当り3mg
【表8】
【0093】
注(Key)
AUC0−12(ng.h/mL) 0−12時間の間の濃度曲線の下の面積
Cmax(ng/mL) 最大観測血漿濃度
Tmax(h) 最大観測血漿濃度の時間
t1/2(h) 排出半減期
λz(h−1) 排出率定数
CL/F(ng/h) 明白なクリアランス率
V/F(L) 明白な体積分布
【0094】
表9:試験群T2
30mgアルテムエーテルの舌下スプレーの単回舌下投与:作動当り3mg
【表9】
表8の注と同じ
【0095】
表10:試験群T3
30mgアルテムエーテルの舌下スプレーの単回舌下投与:作動当り6mg
【表10】
表8の注と同じ
【0096】
表11:試験群T4
30mgアルテムエーテルの舌下スプレーの単回舌下投与:錠剤当り10mg
【表11】
表8の注と同じ
【0097】
これらの予備結果から、一般に受け入れられている吸収率の測定である投与(AUC0−12)後の12時間の血漿濃度曲線下の面積の比較は、ここに開示するようなスプレー用製剤として舌下用として投与したとき、経口錠剤投与と比較して、アルテムエーテルの著しく、驚くべき程高い吸収率を示すことが分かる。
【0098】
経口錠剤による投与とここに記載の舌下スプレー経路によるアルテムエーテルの生物学的利用能の比較のため、2つの投与計画、概してA及びBを比較するために一般的に使用されるF−値をアルテムエーテルのデータのため、以下の様に算出した:
【0099】
【数1】
【0100】
結果は以下の通りである:
【0101】
【数2】
【0102】
上記結果は、本明細書に記載した舌下スプレーによる投与が、錠剤による経口投与と比較して、経口投与量が初回において2倍であるにも関わらず、約1.7倍から2.2倍のアルテムエーテルが吸収されたことを示す。舌下経路による示された生物学的利用能は、したがって、等量の投与量に関して、経口経路によるものの少なくとも2倍である。
【0103】
また、表8−11のデータ及び図1−12の検討は、アルテムエーテル(ジヒドロアルテミシニン)の1次活性代謝物質に関する一般的な結果を確認する。
【0104】
自己誘導機構の回避
アルテミシニンの経口及び直腸投与の双方が、ヒトの薬剤代謝の自己誘導に関連していると知られている(例えば、Ashton M, Hai TN, Sy ND, Huong DX, Van Huong N, Nieu NT, Cong LD.「Artemisinin pharmacokinetics is time-dependent during repeated oral administration in healthy male adults.」Drug Metab Dispos. 1998; 26:25-7及び「Retrospective analysis of artemisinin pharmacokinetics: application of a semiphysiological autoinduction model.」Asimus and Gordi, Br. J Clin Pharmacol. 2007 June; 63(6): 758-762を参照とする)。その結果、体を循環するアルテミシニンは、それぞれの連続投与で減少することから、薬剤投与計画の効果を低減する。
【0105】
秘密試験において、発明者は、経粘膜的舌下経路によるアルテミシニンの投与が、一貫性のある摂取を導き、活性薬剤代謝物質及びジヒドロアルテミシニンの体内の濃度を蓄積することから、舌下経路による投与に有意な利点を提供する前記自己誘導を回避することを見出した。同様の自己誘導回避が、経口腔内粘膜又は経鼻経路による送達で予期されている。
【0106】
秘密試験において、志願者は以下の処置を適用された:一晩の断食後、30mgアルテムエーテル舌下スプレーを6mg/作動で、1日目及び5日目に、単回投与する;朝食又は夕食後、30mgアルテムエーテル舌下スプレーを3mg/作動で、2日目、3日目及び4日目に、1日当たり2回投与する。血液サンプルは、薬物動態学分析のために以下の時点で採取した:
【0107】
1日目:前投与:投与後0.25時間,0.5時間,0.75時間,1時間,1.5時間,2時間,2.5時間,3時間,4時間,6時間,8時間及び12時間。
2日目,3日目及び4日目:朝投与前、朝投与後0.5時間,1時間,2時間及び4時間、及び夜投与前、夜投与後1時間。
【0108】
5日目:前投与:投与後0.25時間,0.5時間,0.75時間,1時間,1.5時間,2時間,2.5時間,3時間,4時間,6時間,8時間,12時間,及び24時間。
血漿ジヒドロアルテミシニンの1日目及び5日目の薬物動態学分析は、効果的に同様の反応を示し、自己誘導の欠如を示した。血漿濃度曲線を図14に示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジヒドロアルテミシニンを提供することができる化合物;並びに
中鎖長トリグリセリド類;
短鎖トリグリセリド類;
オメガ-3-マリントリグリセリド類;及び
オメガ-3-酸類に富んだ魚油
からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物であって、
前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻投与のために処方した、
腫瘍の治療のための医薬組成物。
【請求項2】
ジヒドロアルテミシニンを提供することができる化合物;並びに
中鎖長トリグリセリド類;
短鎖トリグリセリド類;
オメガ-3-マリントリグリセリド類;及び
オメガ-3-酸類に富んだ魚油
からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物であって、
前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻投与のために処方した、
ジストマ病の治療のための医薬組成物。
【請求項3】
ジヒドロアルテミシニンを提供することができる化合物;並びに
中鎖長トリグリセリド類;
短鎖トリグリセリド類;
オメガ-3-マリントリグリセリド類;及び
オメガ-3-酸類に富んだ魚油
からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物であって、
前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻投与のために処方した、
ライム病(ボレリオ症)の治療のための医薬組成物。
【請求項4】
実質的に、
ジヒドロアルテミシニンを提供することができる化合物;並びに
中鎖長トリグリセリド類;
短鎖トリグリセリド類;
オメガ-3-マリントリグリセリド類;及び
オメガ-3-酸類に富んだ魚油
からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤からなり、
前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻投与のために処方した、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
実質的に、
ジヒドロアルテミシニンを提供することができる化合物;並びに
実質的に
37℃で液体であるトリグリセリド;及び
中鎖長トリグリセリド類;
からなる薬学的に許容可能な賦形剤からなり、
前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻投与のために処方した、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記化合物は、アルテミシニンを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記化合物は、アルテムエーテル又はアルテエーテルを含む、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
実質的に水を含まない、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
実質的にエタノールを含まない、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
メントール、バニラもしくはオレンジオイル、レモンオイル、丁子油、ペパーミント油、スペアミントオイル等のエッセンシャルオイルをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
舌下送達のために処方した、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
器具は、前記組成物の個々の又は連続した投与量を送達するのに適していて、それぞれ個々の又は連続した投与量が体積1000μL未満である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物を含む薬物送達器具。
【請求項13】
前記器具は、ポンプスプレーを備える、請求項12に記載の送達器具。
【請求項14】
前記器具は、20ミクロンを超える平均液滴直径を有する組成物のスプレーを生成するのに適した、請求項13に記載の送達器具。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の医薬組成物を含む容器、及び、該容器の外側に前記医薬組成物の投与量を移すように配置された弁手段を備える、製剤投与量を提供するための器具。
【請求項16】
必要のある患者に、治療に有効な量のジヒドロアルテミシニンを提供する化合物を、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻経路によって投与することを含む、腫瘍性疾患を治療する方法。
【請求項17】
前記疾患は、悪性腫瘍を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記疾患は、
下垂体腺腫;
扁平上皮細胞癌;
乳癌;
非ホジキンリンパ腫;
皮膚癌;
肺癌;及び
非小細胞肺癌
を含む群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
必要のある患者に治療に有効な量のジヒドロアルテミシニンを提供する化合物を、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻経路によって投与することを含む、ジストマ病の治療方法。
【請求項20】
必要のある患者に、治療に有効な量のジヒドロアルテミシニンを提供する化合物を、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻経路によって投与することを含む、ライム病(ボレリオ症)の治療方法。
【請求項21】
前記化合物は、アルテミシニンを含む、請求項16〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記化合物は、アルテムエーテル又はアルテエーテルを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記投与は、舌下経路による、請求項16〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
ジヒドロアルテミシニンを提供する前記化合物は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物中に処方される、請求項16〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物、及び、必要のある患者に前記組成物を経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻経路によって投与するための説明書を備える、腫瘍の治療のためのキット。
【請求項26】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物、及び、必要のある患者に前記組成物を経粘膜的舌下経路によって投与するための説明書を備える、腫瘍の治療のためのキット。
【請求項27】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物、及び、必要のある患者に前記組成物を経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻経路によって投与するための説明書を備える、ジストマ病の治療のためのキット。
【請求項28】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物、及び、必要のある患者に前記組成物を経粘膜的舌下経路によって投与するための説明書を備える、ジストマ病の治療のためのキット。
【請求項29】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物、及び、必要のある患者に前記組成物を経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻経路によって投与するための説明書を備える、ライム病(ボレリオ症)の治療のためのキット。
【請求項30】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物、及び、必要のある患者に前記組成物を経粘膜的舌下経路によって投与するための説明書を備える、ライム病(ボレリオ症)の治療のためのキット。
【請求項1】
ジヒドロアルテミシニンを提供することができる化合物;並びに
中鎖長トリグリセリド類;
短鎖トリグリセリド類;
オメガ-3-マリントリグリセリド類;及び
オメガ-3-酸類に富んだ魚油
からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物であって、
前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻投与のために処方した、
腫瘍の治療のための医薬組成物。
【請求項2】
ジヒドロアルテミシニンを提供することができる化合物;並びに
中鎖長トリグリセリド類;
短鎖トリグリセリド類;
オメガ-3-マリントリグリセリド類;及び
オメガ-3-酸類に富んだ魚油
からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物であって、
前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻投与のために処方した、
ジストマ病の治療のための医薬組成物。
【請求項3】
ジヒドロアルテミシニンを提供することができる化合物;並びに
中鎖長トリグリセリド類;
短鎖トリグリセリド類;
オメガ-3-マリントリグリセリド類;及び
オメガ-3-酸類に富んだ魚油
からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物であって、
前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻投与のために処方した、
ライム病(ボレリオ症)の治療のための医薬組成物。
【請求項4】
実質的に、
ジヒドロアルテミシニンを提供することができる化合物;並びに
中鎖長トリグリセリド類;
短鎖トリグリセリド類;
オメガ-3-マリントリグリセリド類;及び
オメガ-3-酸類に富んだ魚油
からなる群から選択される薬学的に許容可能な賦形剤からなり、
前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻投与のために処方した、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
実質的に、
ジヒドロアルテミシニンを提供することができる化合物;並びに
実質的に
37℃で液体であるトリグリセリド;及び
中鎖長トリグリセリド類;
からなる薬学的に許容可能な賦形剤からなり、
前記組成物は、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻投与のために処方した、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記化合物は、アルテミシニンを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記化合物は、アルテムエーテル又はアルテエーテルを含む、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
実質的に水を含まない、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
実質的にエタノールを含まない、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
メントール、バニラもしくはオレンジオイル、レモンオイル、丁子油、ペパーミント油、スペアミントオイル等のエッセンシャルオイルをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
舌下送達のために処方した、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
器具は、前記組成物の個々の又は連続した投与量を送達するのに適していて、それぞれ個々の又は連続した投与量が体積1000μL未満である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物を含む薬物送達器具。
【請求項13】
前記器具は、ポンプスプレーを備える、請求項12に記載の送達器具。
【請求項14】
前記器具は、20ミクロンを超える平均液滴直径を有する組成物のスプレーを生成するのに適した、請求項13に記載の送達器具。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の医薬組成物を含む容器、及び、該容器の外側に前記医薬組成物の投与量を移すように配置された弁手段を備える、製剤投与量を提供するための器具。
【請求項16】
必要のある患者に、治療に有効な量のジヒドロアルテミシニンを提供する化合物を、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻経路によって投与することを含む、腫瘍性疾患を治療する方法。
【請求項17】
前記疾患は、悪性腫瘍を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記疾患は、
下垂体腺腫;
扁平上皮細胞癌;
乳癌;
非ホジキンリンパ腫;
皮膚癌;
肺癌;及び
非小細胞肺癌
を含む群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
必要のある患者に治療に有効な量のジヒドロアルテミシニンを提供する化合物を、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻経路によって投与することを含む、ジストマ病の治療方法。
【請求項20】
必要のある患者に、治療に有効な量のジヒドロアルテミシニンを提供する化合物を、経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻経路によって投与することを含む、ライム病(ボレリオ症)の治療方法。
【請求項21】
前記化合物は、アルテミシニンを含む、請求項16〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記化合物は、アルテムエーテル又はアルテエーテルを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記投与は、舌下経路による、請求項16〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
ジヒドロアルテミシニンを提供する前記化合物は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物中に処方される、請求項16〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物、及び、必要のある患者に前記組成物を経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻経路によって投与するための説明書を備える、腫瘍の治療のためのキット。
【請求項26】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物、及び、必要のある患者に前記組成物を経粘膜的舌下経路によって投与するための説明書を備える、腫瘍の治療のためのキット。
【請求項27】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物、及び、必要のある患者に前記組成物を経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻経路によって投与するための説明書を備える、ジストマ病の治療のためのキット。
【請求項28】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物、及び、必要のある患者に前記組成物を経粘膜的舌下経路によって投与するための説明書を備える、ジストマ病の治療のためのキット。
【請求項29】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物、及び、必要のある患者に前記組成物を経粘膜的舌下、口腔、又は経鼻経路によって投与するための説明書を備える、ライム病(ボレリオ症)の治療のためのキット。
【請求項30】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物、及び、必要のある患者に前記組成物を経粘膜的舌下経路によって投与するための説明書を備える、ライム病(ボレリオ症)の治療のためのキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2012−524772(P2012−524772A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506584(P2012−506584)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050672
【国際公開番号】WO2010/122356
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511256152)ロンドンファーマ リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】LONDONPHARMA LTD.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050672
【国際公開番号】WO2010/122356
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511256152)ロンドンファーマ リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】LONDONPHARMA LTD.
【Fターム(参考)】
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