説明

ジフェニルスルフィド誘導体及びそれらを有効成分とする医薬

【課題】優れたスフィンゴシン−1−リン酸3アンタゴニスト活性を有し、かつ副作用の少ないジフェニルスルフィド誘導体を提供する。
【解決手段】下式(1)で表されるジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物。


[式中、Rはトリフルオロメチル基、ベンジルオキシ基、炭素数1〜4のアシル基又はシアノ基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、ただしRが水素原子のときは、Rはベンジルオキシ基を除く]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬として有用なジフェニルスルフィド誘導体若しくはその塩又はそれらの水和物、並びにそれらを有効成分とするスフィンゴシン−1−リン酸3(S1P3)レセプターアンタゴニスト及び医薬に関する。

【背景技術】
【0002】
スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)は、スフィンゴシン代謝における中間代謝物にすぎないとみなされていたが、細胞増殖促進作用や細胞運動機能の制御作用を有することが報告されるに至り、アポトーシス作用、細胞形態調節作用、血管収縮などの多彩な生理作用を発揮する新しい脂質メディエーターであることが明らかとなってきている(非特許文献1、非特許文献2)。
【0003】
この脂質は細胞内セカンドメッセンジャーとしての作用と、細胞間メディエーターとしての二つの作用を併せ持つが、特に細胞間メディエーターとしての作用に関する研究が活発に行なわれており、細胞膜表面上に存在する複数のG蛋白質共役型受容体(ndothelial ifferentiation ene, EDG)を介して情報伝達がなされていることが報告されている(非特許文献1、非特許文献3)。現在S1P受容体にはEdg−1、Edg−3、Edg−5、Edg−6及びEdg−8の5つのサブタイプが知られており、各々S1P1、S1P3、S1P2、S1P4、S1P5とも呼ばれている。
【0004】
これらS1P受容体に対する様々な研究から、この受容体へのアゴニスト活性あるいはアンタゴニスト活性を示す、いわゆるS1P受容体調節剤が多岐にわたる疾患に対し有効性を発揮する報告がなされるようになった。特許文献2及び非特許文献4〜7には、S1P3アンタゴニストが気道収縮、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、気管狭窄症、びまん性汎細気管支炎、感染、結合組織病もしくは移植に伴う気管支炎、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、間質性肺炎、肺癌、過敏性肺臓炎、特発性間質性肺炎、肺線維症敗血症またはインフルエンザウイルスもしくはRSウイルス感染に基づくサイトカインストームの治療または予防薬として有効であることが報告されている。
【0005】
また、特許文献3〜6は、S1P3アンタゴニストが動脈硬化症、血管内膜肥厚、固形腫瘍、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、心不全、虚血性再灌流障害、くも膜下出血後の脳血管スパズム、冠血管スパズムを原因とする狭心症もしくは心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓症、ARDSなどの肺浮腫を原因とする肺疾患、心不整脈、眼疾患、眼高血圧症、緑内障、緑内障性網膜症、視神経症または黄班変性症などにも有効であることを示している。
【0006】
また、現在敗血症治療薬として有効性が示されている医薬に活性化プロテインC製剤(rhAPC)があるが、rhAPCは副作用として出血リスクを伴うことから、これら副作用を示さない新規敗血症治療又は予防薬の開発が望まれている。非特許文献5、7は、S1P3ノックアウトマウスを用いた解析から、敗血症による多臓器不全にS1P3受容体が関与していることが報告されており、S1P3アンタゴニストが敗血症の治療又は予防薬として有効であることが示唆されている。また、S1P1アンタゴニストは血管壁透過性を亢進させ、肺水腫を起こすことが報告されており(非特許文献8)、高い安全性を得るには、S1P1アンタゴニスト作用の弱い、好ましくはS1P1アゴニスト作用を示す、更に好ましくはS1P1受容体に作用を示さないことが望まれている。
【0007】
本発明化合物と類似の構造を有するS1P受容体調節剤としては、例えば特許文献1記載の一般式(A)
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン置換しても良い炭素数1〜4の低級アルキル基、ヒドロキシ基、フェニル基、アラルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシ基、トリフルオロメチルオキシ基、置換基を有しても良いアラルキルオキシ基、置換基を有しても良いフェノキシ基、シクロヘキシルメチルオキシ基、置換基を有しても良いアラルキルオキシ基、ピリジルメチルオキシ基、シンナミルオキシ基、ナフチルメチルオキシ基、フェノキシメチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、炭素数1〜4の低級アルキルチオ基、炭素数1〜4の低級アルキルスルフィニル基、炭素数1〜4の低級アルキルスルホニル基、ベンジルチオ基、アセチル基、ニトロ基、シアノ基を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン置換しても良い炭素数1〜4の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、炭素数1〜4の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシ基、ヒドロキシ基、ベンジルオキシ基、フェニル基、炭素数1〜4の低級アルコキシメチル基、炭素数1〜4の低級アルキルチオ基を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、炭素数1〜4の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシメチル基、炭素数1〜4の低級アルキルチオメチル基、ヒドロキシメチル基、フェニル基、アラルキル基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜4の低級アルキル基を示し、XはO、S、SO、SOを示し、Yは−CHO−、−CH−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CHCH−、−CHCFH−、−CHCF−、−CH(OH)CF−を示し、nは1〜4の整数を示す]
で表される化合物が知られているが、本発明の特徴であるn=2の光学活性な化合物が優れたS1P3レセプターアンタゴニスト作用を示すことは知られていなかった。
【0010】
また、本発明化合物と類似の構造を有するS1P受容体調節剤として特許文献6には一般式(B)
【0011】
【化2】

【0012】
[式中、Rは塩素原子、炭素数1〜3の直鎖状アルキル基又はトリフルオロメチル基を、Rはフッ素原子又は塩素原子を、Rは炭素数1〜3の直鎖状アルキル基を、Xは酸素原子又は硫黄原子を、nは2又は3の整数を示す]
で表される化合物が知られており、前記一般式(B)で表される化合物のうち、一般式(Ba)
【0013】
【化3】

【0014】
[式中、R、R、X及びnは前記定義に同じ]
で表される光学活性な化合物が、S1P3アゴニスト作用が弱く、S1P1及び/又はS1P4に対して優れたアゴニスト作用を有することが報告されている。しかしながら、本発明化合物は一般式(Ba)で表される光学活性な化合物とは逆の不斉中心を有しており、このような光学活性な化合物が優れたS1P3レセプターアンタゴニスト作用を示すことは知られていなかった。
【0015】
【特許文献1】WO04074297号パンフレット
【特許文献2】WO03020313号パンフレット
【特許文献3】特開2005−247691号公報
【特許文献4】WO07043568号パンフレット
【特許文献5】WO06063033号パンフレット
【特許文献6】WO08018427号パンフレット
【非特許文献1】Y.Takumaet al., Mol. Cell. Endocrinol., 177, 3(2001).
【非特許文献2】Y.Igarashi, Ann, N.Y. Acad. Sci., 845, 19(1998).
【非特許文献3】H.Okazaki et al., Biochem. Biophs. Res. Commun., 190, 1104(1993).
【非特許文献4】Y.Gonet.al., Proc Natl Acad Sci U S A. 102(26),9270(2005).
【非特許文献5】F.Nissenet al.,Nature,452,654(2008)
【非特許文献6】D.Christinaet al.,Am.J.Pathol.,170(1),281(2007)
【非特許文献7】F.Nissenet al.,Blood,113(12),2859(2009)
【非特許文献8】M.G.Sannaet al.,Nature Chemical biology,2,434(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、優れたS1P3アンタゴニスト活性を有し、かつ副作用の少ないジフェニルスルフィド誘導体を提供することにある。

【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、S1P3アンタゴニストについて鋭意研究を重ねた結果、新規なジフェニルスルフィド誘導体が優れたS1P3アンタゴニスト作用を有することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は
1)
一般式(1)
【0018】
【化4】

【0019】
[式中、Rはトリフルオロメチル基、ベンジルオキシ基、炭素数1〜4のアシル基又はシアノ基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、ただしRが水素原子のときは、Rはベンジルオキシ基を除く]
で表されるジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物、
2)前記一般式(1)で表される化合物が、式(1a)
【0020】
【化5】

【0021】
[式中、Rは前述の通り]
で表される1)記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物、
3)前記一般式(1)で表される化合物が、式(1b)
【0022】
【化6】

【0023】
[式中、R2aは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Rは前述の通り]
で表される1)記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物、
4)前記一般式(1)で示される化合物が、
(S)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(5−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブチルリン酸モノエステル、
(S)−2−アミノ−4−[4−(5−アセチルフェニルチオ)−2−クロロフェニル]−2−メチルブチルリン酸モノエステル、又は
(2S,3S)−3−アミノ−5−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−3−メチルペンタン−2−イルリン酸モノエステルである1)記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物、
5)前記一般式(1)で示される化合物が、
(−)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(5−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブチルリン酸モノエステル、
(−)−2−アミノ−4−[4−(5−アセチルフェニルチオ)−2−クロロフェニル]−2−メチルブチルリン酸モノエステル、又は
(−)−3−アミノ−5−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−3−メチルペンタン−2−イルリン酸モノエステルである1)記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物。
6)前記一般式(1)で示される化合物が、
(S)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(5−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブチルリン酸モノエステルである1)記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物、
7)前記一般式(1)で示される化合物が、
(−)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(5−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブチルリン酸モノエステルである1)記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物。
【0024】
8)1)〜7)の何れかに記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物を有効成分とするスフィンゴシン−1−リン酸3(S1P3)レセプターアンタゴニスト作用に基づく医薬、
9)気道収縮、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、気管狭窄症、びまん性汎細気管支炎、感染、結合組織病もしくは移植に伴う気管支炎、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、間質性肺炎、肺癌、過敏性肺臓炎、特発性間質性肺炎、肺線維症、敗血症、またはインフルエンザウイルスもしくはRSウイルス感染に基づくサイトカインストームの治療あるいは予防薬である8)記載の医薬、
10)動脈硬化症、血管内膜肥厚、固形腫瘍、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、心不全、虚血性再灌流障害、くも膜下出血後の脳血管スパズム、冠血管スパズムを原因とする狭心症もしくは心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓症、肺浮腫を原因とする肺疾患、心不整脈、眼疾患、眼高血圧症、緑内障、緑内障性網膜症、視神経症または黄班変性症の治療薬である8)記載の医薬、
11)敗血症の治療又は予防薬である8)記載の医薬、
12)1)〜7)の何れかに記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物及び薬理学的に許容されうる担体を含有する医薬組成物、
を特徴とする。

【発明の効果】
【0025】
本発明により優れたS1P3アンタゴニスト作用を有するジフェニルスルフィド誘導体の提供が可能となった。本発明化合物は、敗血症、気道収縮、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、気管狭窄症、びまん性汎細気管支炎、感染、結合組織病もしくは移植を原因とする気管支炎、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、間質性肺炎、肺癌、過敏性肺臓炎、特発性間質性肺炎、肺線維症、インフルエンザウイルス・もしくはRSウイルス感染を原因とするサイトカインストーム(過剰産生)、動脈硬化症、血管内膜肥厚、固形腫瘍、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、心不全、虚血性再灌流障害、くも膜下出血後の脳血管スパズム、冠血管スパズムを原因とする狭心症または心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓症、ARDSなどの肺浮腫を原因とする肺疾患、心不整脈、眼疾患、眼高血圧症、緑内障、緑内障性網膜症、視神経症または黄班変性症の予防または治療に有用である。

【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明における「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、「炭素数1〜6のアルキル基」としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基若しくはn−ヘキシル基などの直鎖又はi−プロピル基若しくはt−ブチル基などの分岐した炭素数1〜6の炭化水素基が挙げられ、「炭素数1〜4のアシル基」としては、例えばアセチル基が挙げられる。
【0027】
また、本発明において優れたS1P3アンタゴニスト作用を得る目的から、Rはトリフルオロメチル基、アセチル基又はベンジルオキシ基が好ましく、更に好ましくはトリフルオロメチル基又はアセチル基であり、特に好ましくはトリフルオロメチル基である。また、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、特に好ましくは水素原子である。
【0028】
また、本発明における薬理学的に許容される塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩、クエン酸塩若しくは酒石酸塩のような酸付加塩又はナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩若しくはアルミニウム塩などのアルカリ付加塩が挙げられる。
【0029】
本発明によれば、一般式(1)で表せる化合物のうち、Rが水素原子である化合物、即ち一般式(1a)で表される化合物は、例えば以下に示すような合成経路Aにより製造することができる。
<合成経路A>
【0030】
【化7】

【0031】
合成経路Aで一般式(4)
【0032】
【化8】

【0033】
[式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す]
で表される光学活性な化合物は、一般式(2)
【0034】
【化9】

【0035】
[式中、Rは前述の通り]
で表される光学活性な化合物と一般式(3)
【0036】
【化10】

【0037】
[式中、Aはハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、パラトルエンスルホニルオキシ基又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基などの一般的な脱離基を示す]
で表される化合物とを塩基の存在下に作用させることによって製造することができる(工程A−1)。
反応は、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン又はジエチルエーテルなどを反応溶媒として用い、n−ブチルリチウム又はリチウムジイソプロピルアミドなどの塩基、好ましくはn−ブチルリチウムを用い、−78℃にて一般式(2)で表される化合物を処理した後、これに一般式(3)で表される化合物を−78℃にて作用させ徐々に常温まで昇温させることで行うことができる。

合成経路Aで一般式(6)
【0038】
【化11】

【0039】
[式中、Aはハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、パラトルエンスルホニルオキシ基又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基などの一般的な脱離基を示し、Rは前述の通り]
で表される光学活性な化合物は、一般式(4)で表される光学活性な化合物と一般式(5)
【0040】
【化12】

【0041】
[式中、Aはハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、パラトルエンスルホニルオキシ基又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基などの一般的な脱離基を示し、Aは前述の通り]
で表される化合物とを塩基の存在下に作用させることによって製造することができる(工程A−2)。
反応は、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン又はジエチルエーテルなどを反応溶媒として用い、n−ブチルリチウム又はリチウムジイソプロピルアミドなどの塩基、好ましくはn−ブチルリチウムを用い、−78℃にて一般式(4)で表される化合物を処理した後、これに一般式(5)で表される化合物を−78℃にて作用させ徐々に常温まで昇温させることで行うことができる。

合成経路Aで一般式(7)
【0042】
【化13】

【0043】
[式中、Rは一般的なアミノ基の保護基を示し、A及びRは前述の通り]
で表される化合物は、一般式(6)で表される化合物を酸加水分解した後に、一般的な保護試薬にてアミノ基を保護することによって製造することができる。式中のRはアミノ基を保護するものであれば特に限定されないが、例えばアセチル基などのアシル基又はt−ブトキシカルボニル基若しくはベンジルオキシカルボニル基などのカルバメート基を用いることが出来る(工程A−3)。
反応は、塩酸若しくは臭化水素酸などの無機酸又はトリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸中、あるいは無機酸又は有機酸とメタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン又は酢酸エチルなどの有機溶媒との混合溶液中、好ましくは塩酸含有1,4−ジオキサン溶液中、一般式(6)で表される化合物を常温下に反応させた後、塩基で中和しアミノエステル体を得た後に、これを、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルム、メタノール、エタノール又はアセトニトリルなどを溶媒として用い、塩化アセチル若しくは塩化ベンジルオキシカルボニルなどの酸塩化物又は無水酢酸若しくはジ−t−ブチルジカルボナートなどの酸無水物、好ましくはジ−t−ブチルジカルボナートと0℃〜常温下にて反応させることで行うことができる。

合成経路Aで一般式(8)
【0044】
【化14】

【0045】
[式中、A及びRは前述の通り]
で表される化合物は、一般式(7)で表される化合物を還元することによって製造することができる(工程A−4)。
反応は、ボラン若しくは9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9−BBN)のようなアルキルボラン誘導体又はジイソブチルアルミニウムヒドリド((iBu)AlH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、水素化ホウ素リチウム(LiBH)若しくは水素化アルミニウムリチウム(LiAlH)などの金属水素錯化合物、好ましくは水素化ホウ素リチウムを用い、反応溶媒としてはテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エタノール又はメタノールなどを用い、0℃〜加熱還流下、好ましくは常温下にて行うことができる。

合成経路Aで一般式(10)
【0046】
【化15】

【0047】
[式中、Rはトリフルオロメチル基、ベンジルオキシ基、炭素数1〜4のアシル基又はシアノ基を示し、Rは前述の通り]
で表される化合物は、一般式(8)で表される化合物と一般式(9)
【0048】
【化16】

【0049】
[式中、Rは前述の通り]
で表される化合物とを反応させることによって製造することができる。(工程A−5)。
反応は、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン又はジエチルエーテルなどを反応溶媒として用い、炭酸ナトリウム若しくはカリウムt−ブトキシドなどの無機塩基又はジイソプロピエチルアミンなどの有機塩基存在下、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)又は酢酸パラジウム(II)などのパラジウム化合物、好ましくはトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)を触媒として用い、常温〜加熱還流下にて行うことができる。
また4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテル、1,1’−ビス(ジt−ブチルホスフィノ)フェロセンなどのホスフィン化合物を反応促進剤として加えることもできる。

合成経路Aで一般式(12)
【0050】
【化17】

【0051】
[式中、R、R及びRは前述の通り]
で表される化合物は、一般式(10)で表される化合物と一般式(11)
【0052】
【化18】

【0053】
[式中、Rは前述の通り]
で表される化合物とを反応させることによって製造することができる(工程A−6)。
反応は、四臭化炭素及びピリジンの存在下、無溶媒もしくは塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン又はジエチルエーテルなどを溶媒として用い、0℃〜常温下にて行うことができる。

合成経路Aで一般式(1a)
【0054】
【化19】

【0055】
[式中、Rは前述の通り]
で表される化合物は一般式(12)で表される化合物を酸加水分解又はトリメチルシリルブロミド若しくはトリメチルシリルヨージドなどの求核試薬で処理することによって製造することができる(工程A−7)。
酸加水分解反応の場合、塩酸又は臭化水素酸などの無機酸中、あるいはメタノール又はエタノールなどの有機溶媒と無機酸との混合溶液中、加熱還流下に行うことができる。また好ましくはアセトニトリル又は塩化メチレンなどを反応溶媒として用い、0℃〜常温下にトリメチルシリルブロミド又はトリメチルシリルヨージドを作用させるか、あるいはトルメチルシリルクロリドと臭化ナトリウム又はトルメチルシリルクロリドとヨウ化ナトリウムを組み合わせて作用させることでも行うことができる。

合成経路Aで一般式(7)で表される化合物は、例えば以下に示すような合成経路Bにより製造することもできる。
<合成経路B>
【0056】
【化20】

【0057】
合成経路Bで一般式(14)
【0058】
【化21】

【0059】
[式中、A及びRは前述の通り]
で表される光学活性な化合物は、一般式(13)
【0060】
【化22】

【0061】
[式中、Rは前述の通り]
で表される光学活性な化合物と一般式(5)で表される化合物とを用いて工程A−2と同様の方法によって製造することができる(工程B−1)。

合成経路Bで一般式(15)
【0062】
【化23】

【0063】
[式中、A及びRは前述の通り]
で表される光学活性な化合物は、一般式(14)で表される光学活性な化合物と一般式(3)で表される化合物とを用いて工程A−1と同様の方法によって製造することができる(工程B−2)。

合成経路Bで一般式(7)で表される化合物は、一般式(15)で表される化合物を用いて工程A−3と同様の方法によって製造することができる(工程B−3)。

合成経路Aで一般式(10)で表される化合物は、例えば以下に示すような合成経路Cにより製造することもできる。
<合成経路C>
【0064】
【化24】

【0065】
合成経路Cで一般式(17)
【0066】
【化25】

【0067】
[式中、R及びRは前述の通り]
で表される光学活性な化合物は、一般式(4)で表される光学活性な化合物と一般式(16)
【0068】
【化26】

【0069】
[式中、R及びAは前述の通り]
で表される化合物とを用いて工程A−2と同様の方法によって製造することができる(工程C−1)。
なお、一般式(16)で表される化合物の合成法については、WO03029184号、WO03029205号、WO04026817号、WO04074297号及びWO050444780号の各パンフレットに記載された方法によって製造することができる。

合成経路Cで一般式(18)
【0070】
【化27】

【0071】
[式中、R、R及びRは前述の通り]
で表される化合物は、一般式(17)で表される化合物を用いて工程A−3と同様の方法によって製造することができる(工程C−2)。

合成経路Cで一般式(10)で表される化合物は、一般式(18)で表される化合物を用いて工程A−4と同様の方法によって製造することができる(工程C−3)。

合成経路Cで一般式(18)で表される化合物は、例えば以下に示すような合成経路Dにより製造することもできる。
<合成経路D>
【0072】
【化28】

【0073】
合成経路Dで一般式(19)
【0074】
【化29】

【0075】
[式中、R及びRは前述の通り]
で表される光学活性な化合物は、一般式(13)で表される光学活性な化合物と一般式(16)で表される化合物とを用いて工程A−2と同様の方法によって製造することができる(工程D−1)。

合成経路Dで一般式(20)
【0076】
【化30】

【0077】
[式中、R及びRは前述の通り]
で表される光学活性な化合物は、一般式(19)で表される光学活性な化合物と一般式(3)で表される化合物とを用いて工程A−1と同様の方法によって製造することができる(工程D−2)。

合成経路Dで一般式(18)で表される化合物は、一般式(20)で表される化合物を用いて工程A−3と同様の方法によって製造することができる(工程D−3)。

合成経路Aで一般式(10)で表せる化合物のうち、Rがシアノ基又はアセチル基である化合物、即ち一般式(10a)
【0078】
【化31】

【0079】
[式中、R1bはアセチル基又はシアノ基を示し、Rは前述の通り]
で表される化合物は、例えば以下に示すような合成経路Eにより製造することもできる。

<合成経路E>
【0080】
【化32】

【0081】
合成経路Eで一般式(21)
【0082】
【化33】

【0083】
[式中、Rは前述の通り]
で表される光学活性な化合物は、一般式(8)で表される光学活性な化合物と3−ヒドロキシベンゼンチオールとを用いて工程A−5と同様の方法によって製造することができる(工程E−1)。

合成経路Eで一般式(22)
【0084】
【化34】

【0085】
[式中、Rは前述の通り]
で表される化合物は、例えば一般式(21)で表される化合物にN−フェニルトリフルオロメタンスルホンイミドを作用させることによって製造することができる(工程E−2)。
反応は塩化メチレン、クロロホルム又はトルエンなどの溶媒を用い、ピリジン又はトリエチルアミンなどの有機塩基存在下、N−フェニルトリフルオロメタンスルホンイミドと0℃〜80℃にて、好ましくは常温にて行うことができる。
【0086】
合成経路Eで一般式(10a)で表される化合物は、一般式(22)で表される化合物に対して、シアン化亜鉛を用いる公知の方法(例えばSynth.
Commun., 25, 3255-3261 (1995))、又はHeck反応を用いる公知の方法(例えばJ. Org., Chem., 55, 3654-3655 (1990))などによって製造することができる(工程E−3)。
反応は、例えばR1bがシアノ基の場合、シアン化亜鉛存在下、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサン又はテトラヒドロフランなどを反応溶媒として用い、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)又はトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)などのパラジウム化合物、好ましくはテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)を触媒として用い、常温〜加熱還流下にて行うことができる。また1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン又は1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−プロパンなどのホスフィン化合物を反応促進剤として加えることもできる。
【0087】
また、例えばR1bがアセチル基の場合、反応はトリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基存在下、酢酸パラジウム(II)を触媒として用い、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−プロパンを反応促進剤として加え、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサン又はテトラヒドロフランなどの溶媒中、ブチルビニルエーテルと常温〜加熱還流下にて行うことができる。

前記一般式(1)で表される化合物のうち、式(1b)
【0088】
【化35】

【0089】
[式中、R2aは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Rは前述の通り]
で表される化合物は、例えば以下に示すような合成経路Fにより製造することができる。

<合成経路F>
【0090】
【化36】

【0091】
合成経路Fで一般式(23)
【0092】
【化37】

【0093】
[式中、R及びRは前述の通り]
で表される化合物は、一般式(10)で表される化合物を酸化することによって製造することができる(工程F−1)。
反応は、一般に用いられるアルコールのアルデヒドへの酸化手法を用いることができ、例えばクロロクロム酸ピリジニウム若しくは二クロム酸ピリジニウムなどの酸化クロム−ピリジン錯体、酸化クロム、炭酸銀若しくは二酸化マンガンなどの金属酸化剤又は塩化オキザリル、無水トリフルオロ酢酸、無水酢酸、ジシクロヘキシルカルボジイミド、三酸化硫黄−ピリジン錯体などの各種ジメチルスルホキシド活性化剤を用いたジメチルスルホキシド酸化が挙げられる。

合成経路Fで一般式(25)
【0094】
【化38】

【0095】
[式中、R、R2a及びRは前述の通り]
で表される化合物は一般式(23)で表される化合物と一般式(24)
【0096】
【化39】

【0097】
[式中、MはLi、MgCl、MgBr又はMgIを示し、R2aは前述の通り]
で表される化合物とを反応させることによって製造することができる(工程F−2)。
反応は、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン又はテトラヒドロフランなどの溶媒を用い、−78℃〜常温下に行うことができる。
この段階においてカラムクロマトグラフィーを用いた精製を行い、ジアステレオマーを分離精製することもできる。

合成経路Fで一般式(26)
【0098】
【化40】

【0099】
[式中、R、R2a、R及びRは前述の通り]
で表される化合物は、一般式(25)で表される化合物と一般式(11)で表される化合物とを用いて工程A−6と同様の方法によって製造することができる(工程F−3)。

合成経路Fで一般式(1b)で表される化合物は一般式(26)で表される化合物を用いて工程A−7と同様の方法によって製造することができる(工程F−4)。
【0100】
本発明のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物は優れたS1P3アンタゴニスト作用を示すことから、これらの少なくとも一種類以上を有効成分とする医薬は、S1P3アンタゴニストが治療または予防薬として有効であることが知られている疾患、例えば、敗血症、気道収縮、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、気管狭窄症、びまん性汎細気管支炎、感染、結合組織病もしくは移植に伴う気管支炎、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、間質性肺炎、肺癌、過敏性肺臓炎、特発性間質性肺炎、肺線維症、インフルエンザウイルス、RSウイルス感染に基づくサイトカインストームの治療または予防薬として有効である。また、本発明の医薬は、上記疾患以外にもS1P3アンタゴニスト作用が有効であることが知られている疾患、例えば、動脈硬化症、血管内膜肥厚、固形腫瘍、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、心不全、虚血性再灌流障害、くも膜下出血後の脳血管スパズム、冠血管スパズムを原因とする狭心症もしくは心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓症、ARDSなどの肺浮腫を原因とする肺疾患、心不整脈、眼疾患、眼高血圧症、緑内障、緑内障性網膜症、視神経症または黄班変性症などの治療または予防にも有効である。
【0101】
本発明の医薬は、経口又は直腸内、皮下、静脈内、筋肉内若しくは経皮等の非経口的手段にて投与することができる。
【0102】
本発明の化合物、薬理学的に許容されるその塩またはそれらの水和物を医薬として用いるためには、固体組成物、液体組成物又はその他の組成物のいずれの形態でもよく、必要に応じて最適のものが選択される。本発明の医薬は、本発明の化合物に薬理学的に許容される担体を配合して製造することもできる。具体的には、常用の賦形剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、糖衣剤、pH調整剤、溶解剤又は水性若しくは非水性溶媒などを添加し、常用の製剤技術によって、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、粉剤、散剤、液剤、乳剤、懸濁剤又は注射剤、などに調製することができる。
【0103】
次に本発明を具体例によって説明するが、これらの例によって本発明が限定されるものではない。

<参考例1>
(2S,5R)−2−(4−ブロモ−2−クロロフェニル)エチル−3,6−ジメトキシ−2−メチル−5−イソプロピル−2,5−ジヒドロピラジン
【0104】
【化41】

【0105】
アルゴン雰囲気下、−78℃にて(5R)−3,6−ジメトキシ−2−メチル−5−イソプロピル−2,5−ジヒドロピラジン (7.36 g) の テトラヒドロフラン (160 mL) 溶液にn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液(1.60 mol / L, 25.5 mL)を加え、−78℃にて30分間攪拌した。さらに4−ブロモ−2−クロロ−1−(2−ヨードエチル)ベンゼン
(15.34 g) のテトラヒドロフラン (26 mL) 溶液を加えて−78℃にて30分間、0℃にて1時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルにて抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 60 : 1)にて精製し、目的物(8.40 g)を無色油状物として得た。
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 0.71 (3H, d, J =
6.7 Hz), 1.09 (3H, d, J = 6.7 Hz), 1.35 (3H, s), 1.78 (1H, ddd, J = 12.8, 11.6,
4.9 Hz), 2.08 (1H, ddd, J = 12.8, 11.6, 4.9 Hz), 2.21-2.31 (1H, m), 2.35 (1H,
ddd, J = 13.4, 11.6, 4.9 Hz), 2.46 (1H, ddd, J = 13.4, 11.6, 4.9 Hz), 3.68 (3H,
s), 3.69 (3H, s), 4.00 (1H, d, J = 3.7 Hz), 7.02 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.27 (1H,
dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.47 (1H, d, J = 1.8 Hz).
ESIMS (+) : 415 [M+H] +.

<参考例2>
(S)−4−(4−ブロモ−2−クロロフェニル)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−2−メチル酪酸メチル
【0106】
【化42】

【0107】
参考例1の化合物 (8.40
g)のジオキサン(400 mL)溶液に0.5 mol/L 塩酸(200 mL)を加え、常温で1時間攪拌後、常温で一晩放置した。濃縮後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、酢酸エチルで抽出した。抽出液を水、及び飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。抽出液を濃縮後、残渣をアセトニトリル(16 mL)に溶解し、ジ−tert−ブトキシジカルボネート(11.0 g)を加えた。常温で1時間攪拌し、常温で一晩放置した。反応液に水を加え、酢酸エチルにて抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 4 : 1)にて精製し、目的物 (6.58 g) を無色油状物として得た。
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 1.45 (9H, s), 1.58
(3H, s), 2.09 (1H, ddd, J = 13.4, 12.2, 5.5 Hz), 2.39
(1H, br s), 2.51 (1H, td, J = 12.8, 4.9 Hz), 2.65 (1H, td, J = 12.8, 4.9 Hz),
3.75 (3H, s), 5.42 (1H, br s), 7.04 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.30 (1H, dd, J = 7.9,
1.8 Hz), 7.48 (1H, d, J = 1.8 Hz).
ESIMS (+) : 420 [M+H] +.

<参考例3>
(S)−4−(4−ブロモ−2−クロロフェニル)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−2−メチルブタン−1−オール
【0108】
【化43】

【0109】
参考例2の化合物 (1.00
g)のテトラヒドロフラン(24 mL)溶液に氷冷下にて水素化ホウ素リチウム(259 mg)を加え、次いでエタノール(2.4 mL)を滴下し、氷冷下にて2時間攪拌した。反応液に10 % クエン酸水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 2 : 1)にて精製し、目的物 (775 mg) を白色固体として得た。
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 1.24 (3H, s), 1.44
(9H, s), 1.81 (1H, ddd, J = 13.4, 12.2, 5.5 Hz), 2.05 (1H, ddd, J = 13.4, 12.2,
5.5 Hz), 2.67 (1H, ddd, J = 13.4, 12.2, 5.5 Hz), 2.74 (1H, ddd, J = 13.4, 12.2,
5.5 Hz), 3.63-3.74 (2H, m), 4.07 (1H, br s), 4.67 (1H, s), 7.11 (1H, d, J = 8.6
Hz), 7.31 (1H, dd, J = 8.6, 1.8 Hz), 7.50 (1H, d, J = 1.8 Hz).
ESIMS (+) : 392 [M+H] +.

<参考例4>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブタン−1−オール
【0110】
【化44】

【0111】
アルゴン雰囲気下、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)−クロロホルム付加体(395 mg)の1,4−ジオキサン(14 mL)溶液に4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(442 mg)を加え、15分間加熱還流した。反応液に参考例3の化合物(1.50 g)の1,4−ジオキサン(1 mL)溶液、エチルジイソプロピルアミン(1.25 mL)及び3−トリフルオロメチルベンゼンチオール(100 mg)の1,4−ジオキサン(4 mL)溶液を順に加え、4時間加熱還流した。反応液に水を加え、酢酸エチルにて抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 4 : 1)にて精製し、目的物(1.80 g)を無色油状物として得た。
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 1.25 (3H, s), 1.44
(9H, s), 1.83 (1H, ddd, J = 14,1, 12.2, 5.5 Hz), 2.08 (1H, ddd, J = 14.1, 12.2,
5.5 Hz), 2.66-2.82 (2H, m), 3.63-3.76 (2H, m), 4.03 (1H, br s), 4.68 (1H, s),
7.20-7.23 (2H, m), 7.38 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.39-7.43 (2H, m), 7.45-7.50 (1H, m),
7.55 (1H, s).
ESIMS (+) : 490 [M+H] +.

<参考例5>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−1−ジメトキシホスホリルオキシ−2−メチルブタン
【0112】
【化45】

【0113】
参考例4の化合物 (1.80
g) のピリジン(7 mL)溶液に氷冷下にて四臭化炭素(2.43
g)と亜リン酸トリメチル(866 μL)を加え、氷冷下にて2時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 1 : 2)にて精製し、目的物 (2.18 g) を無色油状物として得た。
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 1.37 (3H, s). 1.45
(9H, s), 1.80 (1H, ddd, J = 13.4, 11.6, 5.5 Hz), 2.06-2.19 (1H, m), 2.67-2.80
(2H, m), 3.78 (3H, d, J = 11.0 Hz), 3.79 (3H, d, J = 11.0 Hz), 4.03 (1H, dd, J
= 9.8, 4.9 Hz), 4.23 (1H, dd, J = 9.8, 4.9 Hz), 4.63 (1H, s), 7.20 (2H, d, J =
1.2 Hz), 7.38(1H, s), 7.40-7.43 (2H, m), 7.45-7.50 (1H, m), 7.55 (1H, s).
ESIMS (+) : 598 [M+H] +.

【実施例1】
【0114】
(S)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブチルリン酸モノエステル
【0115】
【化46】

【0116】
参考例5の化合物 (2.18
g) のアセトニトリル (36 mL) 溶液にアルゴン雰囲気下、氷冷下にてヨードトリメチルシラン(2.07 mL)を滴下し、氷冷下にて30分間攪拌した。反応液に水(300 mL)を加え、さらに氷冷下にて30分間攪拌した後、析出晶をろ取した。得られた結晶を水、アセトニトリルでよく洗浄し乾燥後、目的物(1.25 g)を白色粉末として得た。
旋光度:[α]D25 -6.95 (c
0.50, MeOH).
1H NMR (DMSO-d6-dTFA, 400 MHz) :δ 1.29 (3H, s),
1.73-1.90 (2H, m), 2.74 (2H, t, J = 8.6 Hz), 3.88 (1H, dd, J = 11.0, 4.9 Hz),
3.95 (1H, dd, J = 11.0, 4.9 Hz), 7.31-7.37 (1H, m), 7.40 (1H, d, J = 8.6 Hz),
7.48 (1H, s), 7.53-7.67 (4H, m).
HRESIMS
(+) : 470.05640 (C18H21ClF3NO4PSとして計算値 470.05695).
元素分析 : 実測値 C 46.01%, H 4.29%, N 2.98%, C18H20ClF3NO4PSとして計算値 C 45.62%, H 4.24%, N 2.97%.

<参考例6>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−[2−クロロ−4−(3−ヒドロキシフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブタン−1−オール
【0117】
【化47】

【0118】
参考例3の化合物(800 mg)と3−ヒドロキシベンゼンチオール(308 mg)とを参考例4と同様に反応させ目的物(902 mg)を無色油状物として得た。
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 1.25 (3H, s), 1.44
(9H, s), 1.84 (1H, ddd, J = 14,1, 11.6, 5.5 Hz), 2.03-2.14 (1H, m), 2.65-2.83
(2H, m), 3.63-3.72 (2H, m), 4.24 (1H, br s), 4.68 (1H, s), 5.10 (1H, s), 6.71 (2H,
dd, J = 7.9, 1.2 Hz), 6.88 (1H, dd, J = 7.9, 1.2 Hz), 7.16 (1H, d, J = 7.9 Hz),
7.19 (2H, s), 7.36 (1H, s).
ESIMS (+) : 438 [M+H] +.

<参考例7>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブタン−1−オール
【0119】
【化48】

【0120】
アルゴン雰囲気下、氷冷下にて参考例6の化合物(862 mg)の塩化メチレン(10 mL)溶液にトリエチルアミン(550 μL)及びN−フェニルトリフルオロメタンスルホンイミド(703 mg)を加え、常温にて2時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルにて抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 3 : 1)にて精製し、目的物(1.10 g)を無色油状物として得た。
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 1.26 (3H, s), 1.45 (9H,
s), 1.84 (1H, td, J = 12.8, 4.9 Hz), 2.08 (1H, td, J = 12.8, 5.5 Hz), 2.73 (1H,
td, J = 12.8, 4.9 Hz), 2.80 (1H, td, J = 12.8, 4.9 Hz), 3.68 (1H, dd, J = 11.6,
4.9 Hz), 3.72 (1H, dd, J = 11,6, 7.3 Hz), 4.08 (1H, br s), 4.69 (1H, s), 7.11 (2H,
d, J = 7.9 Hz), 7.22 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.23 (2H, s), 7.36 (1H, t, J = 7.9
Hz), 7.42 (1H, s).
ESIMS (+) : 570 [M+H] +.

<参考例8>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−[2−クロロ−4−(3−シアノフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブタン−1−オール
【0121】
【化49】

【0122】
アルゴン雰囲気下、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(101 mg)のN,N−ジメチルホルムアミド(5 mL)溶液に1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン(49 mg)を加え、常温にて10分間攪拌した。反応液にシアン化亜鉛(206 mg)及び参考例7の化合物(500 mg)を加え、80℃にて3時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルにて抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 2 : 1)にて精製し、目的物(375 mg)を無色油状物として得た。
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 1.26 (3H, s), 1.45 (9H,
s), 1.86 (1H, td, J = 12.8, 4.9 Hz), 2.10 (1H, td, J = 12.8, 4.9 Hz), 2.69-2.84
(2H, m), 3.67-3.75 (2H, m), 4.10 (1H, br s), 4.70 (1H, s), 7.22-7.28 (2H, m), 7.34-7.51
(5H, m).
ESIMS (+) : 447 [M+H] +.

<参考例9>
(S)−4−[4−(3−アセチルフェニルチオ)−2−クロロフェニル] −2−t−ブトキシカルボニルアミノ−2−メチルブタン−1−オール
【0123】
【化50】

【0124】
アルゴン雰囲気下、酢酸パラジウム(II)(9.9 mg)のN,N−ジメチルホルムアミド(2 mL)溶液に1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−プロパン(36.2 mg)を加え、常温にて30分間攪拌した。反応液にトリエチルアミン(61 μL)、ブチルビニルエーテル(283 μL)及び参考例7の化合物(250 mg)のN,N−ジメチルホルムアミド(6 mL)溶液を加え、80℃にて16時間攪拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルにて抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 2 : 1)にて精製し、目的物(93 mg)を無色油状物として得た。
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 1.25 (3H, s), 1.44 (9H,
s), 1.83 (1H, ddd, J = 13.9, 12.1, 5.4 Hz), 2.07 (1H, ddd, J = 13.9, 12.1, 5.4 Hz),
2.57 (3H, s), 2.70 (1H, td, J = 12.7, 4.8 Hz), 2.77 (1H, td, J = 12.7, 4.8 Hz),
3.67 (1H, dd, J = 11.5, 5.4 Hz), 3.71 (2H, d, J = 11.5, 7.3 Hz), 4.05 (1H, br
s), 4.68 (1H, s), 7.16-7.22 (2H, m), 7.34 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.41 (1H, t, J =
7.9 Hz), 7.47 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.87 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.92
(1H, t, J = 1.8 Hz).
ESIMS (+) : 464 [M+H] +.

<参考例10>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−[2−クロロ−4−(3−シアノフェニルチオ)フェニル]−1−ジメトキシホスホリルオキシ−2−メチルブタン
【0125】
【化51】

【0126】
参考例8の化合物(150 mg)を参考例5と同様に反応させ目的物(186 mg)を無色油状物として得た。
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 1.37 (3H, s), 1.45
(9H, s), 1.81 (1H, ddd, J = 13.4, 11.0, 5.5 Hz), 2.05-2.21 (1H, m), 2.68-2.83 (2H,
m), 3.79 (3H, d, J = 11.0 Hz), 3.80 (3H, d, J = 11.0 Hz), 4.04 (1H, dd, J =
9.8, 5.5 Hz), 4.24 (1H, dd, J = 9.8, 5.5 Hz), 4.65 (1H, s), 7.24 (2H, d, J = 1.2
Hz), 7.36-7.42 (2H, m), 7.43-7.47 (2H, m), 7.48 (1H, J = 7.3, 1.2 Hz).
ESIMS (+) : 555 [M+H] +.

<参考例11>
(S)−4−[4−(3−アセチルフェニルチオ)−2−クロロフェニル]−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−1−ジメトキシホスホリルオキシ−2−メチルブタン
【0127】
【化52】

【0128】
参考例9の化合物(93 mg)を参考例5と同様に反応させ目的物(80 mg)を無色油状物として得た。
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 1.36 (3H, s), 1.44
(9H, s), 1.78 (1H, ddd, J = 13.4, 11.6, 5.5 Hz), 2.05-2.17 (1H, m), 2.58 (3H,
s), 2.65-2.80 (2H, m), 3.78 (3H, d, J = 11.0 Hz), 3.79 (3H, d, J = 11.0 Hz), 4.03
(1H, dd, J = 9.8, 4.9 Hz), 4.23 (1H, dd, J = 9.8, 4.9 Hz), 4.64 (1H, s), 7.17 (2H,
d, J = 1.2 Hz), 7.33 (1H, t, J = 1.2 Hz), 7.41 (1H, t, J = 7.9 Hz), 7.48 (1H, dt,
J = 7.9, 1.2 Hz), 7.83 (1H, dt, J = 7.9, 1.2 Hz), 7.92 (1H, t, J = 1.2 Hz).
ESIMS (+) : 572 [M+H] +.

【実施例2】
【0129】
(S)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(3−シアノフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブチルリン酸モノエステル
【0130】
【化53】

【0131】
参考例10の化合物(100 mg)を実施例1と同様に反応させ目的物(56 mg)を白色粉末として得た。
旋光度:[α]D25 -8.96 (c
0.50, MeOH).
1H NMR (DMSO-d6-dTFA, 400 MHz) :δ 1.29 (3H, s),
1.70-1.90 (2H, m), 2.74 (2H, t, J = 8.6 Hz), 3.87 (1H, dd, J = 11.0, 4.9 Hz),
3.94 (1H, dd, J = 11.0, 4.9 Hz), 7.35 (1H, dd, J = 7.9, 1.2 Hz), 7.40 (1H, d, J
= 7.9 Hz), 7.48 (1H, s), 7.55 (1H, t, J = 7.9 Hz), 7.59 (1H, dd, J = 7.9, 1.2Hz),
7.72-7.78 (2H, m).
ESIMS (+) : 427 [M+H] +.
元素分析 : 実測値 C 50.24%, H 4.56%, N 6.19%, C18H20ClN2O4PS.
0.2H2Oとして計算値 C 50.22%, H 4.78%, N 6.51%.

【実施例3】
【0132】
(S)−4−[4−(3−アセチルフェニルチオ)−2−クロロフェニル] −2−アミノ−2−メチルブチルリン酸モノエステル
【0133】
【化54】

【0134】
参考例11の化合物(79 mg)を実施例1と同様に反応させ目的物(52 mg)を白色粉末として得た。
旋光度:[α]D26 -6.57 (c
0.50, MeOH).
1H NMR (DMSO-d6-dTFA, 400 MHz) :δ 1.27 (3H, s),
1.65-1.89 (2H, m), 2.54 (3H, s), 2.71 (2H, t, J = 8.6 Hz), 3.86 (1H, dd, J =
11.0, 4.9 Hz), 3.92 (1H, dd, J = 11.0, 4.9 Hz), 7.28 (1H, dd, J = 7.9, 1.2 Hz),
7.36 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.38 (1H, s), 7.52 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.57 (1H, d,
J = 7.9 Hz), 7.84 (1H, s), 7.89 (1H, d, J = 7.9 Hz).
HRESIMS
(+) : 444.07968 (C19H24ClNO5PSとして計算値 444.08013)
元素分析 : 実測値 C 50.39%, H 4.97%, N 2.85%, C19H23ClNO5PS.
0.5H2Oとして計算値 C 50.39%, H 5.34%, N 3.09%.

<参考例12>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブタン−1−アール
【0135】
【化55】

【0136】
アルゴン雰囲気下、-78℃にてオキザリルクロリド(125 μL)の塩化メチレン(9 mL)溶液にジメチルスルフィド(152 μL)の塩化メチレン(1 mL)溶液を加え、-78℃にて10分間攪拌した。反応液に参考例4の化合物(350 mg)の塩化メチレン(4 mL)溶液を加え、-78℃にて1.5時間攪拌した。反応液にトリエチルアミン(378 μL)を加え、氷冷下にて30分間攪拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルにて抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 3 : 1)にて精製し、目的物(348 mg)を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3,
400 MHz): δ 1.41 (3H, s), 1.46 (9H, s), 2.05 (1H,
td, J = 12.2, 4.9 Hz), 2.17-2.35 (1H, m), 2.58 (1H, td, J = 12.2, 4.9 Hz), 2.68
(1H, td, J = 12.2, 4.9 Hz), 5.23 (1H, br s), 7.16 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.19 (1H,
dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.37 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.39-7.44 (2H, m), 7.45-7.51 (1H,
m), 7.56 (1H, s), 9.40 (1H, s).
ESIMS (-) : 486 [M-H] +.

<参考例13>
(3S)−3−t−ブトキシカルボニルアミノ−5−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−3−メチルペンタン−2−オール
【0137】
【化56】

【0138】
アルゴン雰囲気下、氷冷下にて参考例12の化合物(348 mg)のジエチルエーテル (3 mL) 溶液に臭化メチルマグネシウム−ジエチルエーテル溶液(3.0 mol / L, 1.2 mL)を加え、氷冷下にて1時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルにて抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し目的物(250 mg)を無色油状物として得た。

<参考例14>
(2S,3S)−3−t−ブトキシカルボニルアミノ−5−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−3−メチルペンタン−2−オール
【0139】
【化57】

【0140】
参考例13の化合物(250 mg)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロマトレックスNH<富士シリシア化学株式会社>、ヘキサン : 酢酸エチル = 6 : 1)にて精製し、前溶出部分として目的物(189 mg)を無色油状物として得た。
旋光度:[α]D29 -1.73 (c
1.00, MeOH).
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 1.20 (3H, s), 1.21(3H,
d, J = 6.7 Hz), 1.44 (9H, s), 1.96 (1H, td, J = 12.8, 4.9 Hz), 2.20 (1H, td, J
= 12.8, 4.9 Hz), 2.70 (1H, td, J = 12.8, 4.9 Hz), 2.82 (1H, td, J = 12.8, 4.9
Hz), 3.73-3.83 (1H, m), 4.40 (1H, br s), 4.63 (1H, s), 7.21 (1H, dd, J = 7.9,
1.8 Hz), 7.24 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.38 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.40 (1H, d, J =
1.8 Hz), 7.41 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.45-7.49 (1H, m), 7.55 (1H, s).
ESIMS (+) : 504 [M+H] +.

<参考例15>
(2R,3S)−3−t−ブトキシカルボニルアミノ−5−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−3−メチルペンタン−2−オール
【0141】
【化58】

【0142】
参考例13の化合物(250 mg)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロマトレックスNH<富士シリシア化学株式会社>、ヘキサン : 酢酸エチル = 6 : 1)にて精製し、後溶出部分として目的物(52 mg)を無色油状物として得た。
旋光度:[α]D29 -13.5 (c
1.00, MeOH).
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 1.18 (3H, d, J =
6.1 Hz), 1.32 (3H, s), 1.45 (9H, s), 1.71 (1H, ddd, J = 13.4, 12.2, 4.9 Hz), 2.10
(1H, ddd, J = 13.4, 12.2, 4.9 Hz), 2.68-2.81 (2H, m), 3.88-3.97 (1H, m), 4.20
(1H, br s), 4.66 (1H, s), 7.21 (2H, s), 7.38 (1H, s), 7.41 (1H, d, J = 1.2 Hz),
7.42 (1H, d, J = 1.2 Hz), 7.45-7.50 (1H, m), 7.55 (1H, s).
ESIMS (+) : 504 [M+H] +.

<参考例16>
(2S,3S)−3−t−ブトキシカルボニルアミノ−5−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−2−ジメトキシホスホリルオキシ−3−メチルペンタン
【0143】
【化59】

【0144】
参考例14の化合物(100
mg)を参考例5と同様に反応させ目的物(71 mg)を無色油状物として得た。
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 1.32 (3H, s). 1.34
(3H, d, J = 6.1 Hz), 1.46 (9H, s), 1.79-1.95 (1H, m), 1.99-2.12 (1H, m), 2.65
(1H, td, J = 12.8, 4.9 Hz), 2.77 (1H, td, J = 12.8, 4.9 Hz), 3.77 (3H, d, J =
11.6 Hz), 3.78 (3H, d, J = 11.6 Hz), 4.72-4.82 (1H, m), 4.90 (1H, br s), 7.20 (2H,
d, J = 1.2 Hz), 7.37 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.39-7.43 (2H, m), 7.45-7.50 (1H, m),
7.55 (1H, s).
ESIMS (+) : 612 [M+H] +.

<参考例17>
(2R,3S)−3−t−ブトキシカルボニルアミノ−5−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−2−ジメトキシホスホリルオキシ−3−メチルペンタン
【0145】
【化60】

【0146】
参考例15の化合物(52 mg)を参考例5と同様に反応させ目的物(48 mg)を無色油状物として得た。
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 1.31 (3H, s). 1.39
(3H, d, J = 6.7 Hz), 1.46 (9H, s), 1.93 (1H, ddd, J = 13.4, 11.0, 6.7 Hz),
2.19-2.33 (1H, m), 2.72-2.80 (2H, m), 3.76 (3H, d, J = 11.0 Hz), 3.78 (3H, d, J
= 11.0 Hz), 4.67 (1H, br s), 4.83-4.92 (1H, m), 7.23 (2H, d, J = 1.8 Hz), 7.40
(1H, d, J = 1.8 Hz), 7.41-7.46 (2H, m), 7.47-7.51 (1H, m), 7.56 (1H, s).
ESIMS (+) : 612 [M+H] +.

【実施例4】
【0147】
(2S,3S)−3−アミノ−5−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−3−メチルペンタン−2−イルリン酸モノエステル
【0148】
【化61】

【0149】
参考例16の化合物(71 mg)を実施例1と同様に反応させ目的物(40 mg)を白色粉末として得た。
旋光度:[α]D24 -3.86 (c
0.10, MeOH).
1H NMR (DMSO-d6-dTFA, 400 MHz) :δ 1.27 (3H, s), 1.32
(3H, d, J = 6.7 Hz), 1.76 (1H, td, J = 12.8, 4.9 Hz), 1.88 (1H, td, J = 12.8,
4.9 Hz), 2.72 (1H, td, J = 12.8, 4.9 Hz), 2.83 (1H, td, J = 12.8, 4.9 Hz),
4.35-4.43 (1H, m), 7.34 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.42 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.47
(1H, d, J = 1.8 Hz), 7.53-7.66 (4H, m).
HRESIMS
(+) : 484.07250 (C19H23ClF3NO4PSとして計算値 484.07260).
元素分析 : 実測値 C 46.27%, H 4.70%, N 2.81%, C19H22ClF3NO4PSとして計算値 C 47.16%, H 4.58%, N 2.89%.

【実施例5】
【0150】
(2R,3S)−3−アミノ−5−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−3−メチルペンタン−2−イルリン酸モノエステル
【0151】
【化62】

【0152】
参考例17の化合物(48 mg)を実施例1と同様に反応させ目的物(1.8 mg)を白色粉末として得た。
1H NMR (DMSO-d6-dTFA, 400 MHz) :δ 1.22 (3H, s), 1.32
(3H, d, J = 6.7 Hz), 1.76 (1H, td, J = 12.8, 4.9 Hz), 1.88 (1H, td, J = 12.8,
4.9 Hz), 2.72 (1H, td, J = 12.8, 4.9 Hz), 2.83 (1H, td, J = 12.8, 4.9 Hz),
4.35-4.43 (1H, m), 7.34 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.42 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.47
(1H, d, J = 1.8 Hz), 7.53-7.66 (4H, m).
HRESIMS
(+) : 484.07349 (C19H23ClF3NO4PSとして計算値 484.07260).

<参考例18>
[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]メタノール
【0153】
【化63】

【0154】
WO03029205号パンフレット記載の参考例1の化合物 (2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)ベンズアルデヒド、3.16
g)のエタノール/テトラヒドロフラン(2 / 1)溶液(21 mL)に氷冷下にて水素化ホウ素ナトリウム(151 mg)を加え、常温にて1時間攪拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、目的物 (3.18 g) を白色固体として得た。
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 1.90 (1H, s), 4.79 (2H,
s), 7.29 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.38 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.40-7.53 (4H,
m), 7.58 (1H, s).
EIMS (+) : 318 [M] +.

<参考例19>
1−ブロモメチル−2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)ベンゼン
【0155】
【化64】

【0156】
アルゴン雰囲気下、参考例18の化合物(1.59 g)の塩化メチレン溶液(12.5 mL)に氷冷下にて三臭化りん(522 μL)を加えて、氷冷下にて2時間攪拌した。反応液にメタノール及び水を加え、酢酸エチルにて抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 30 : 1)にて精製し、目的物(1.22 g)を無色油状物として得た。
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 4.56 (2H, s), 7.16 (1H,
dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.32 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.38 (1H, d, J = 7.9 Hz),7.47
(1H, t, J = 7.9 Hz), 7.54 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.57 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.65
(1H, s).
EIMS (+) : 380 [M] +.

<参考例20>
(2S,5R)−2−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニルメチル]−3,6−ジメトキシ−2−メチル−5−イソプロピル−2,5−ジヒドロピラジン
【0157】
【化65】

【0158】
参考例19の化合物(769
mg)を参考例1と同様に反応させ目的物(625 mg)を無色油状物として得た。
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 0.60 (3H, d, J =
6.7 Hz), 0.98 (3H, d, J = 6.7 Hz), 1.49 (3H, s), 2.11-2.21 (1H,m), 3.15 (1H, d,
J = 12.8 Hz), 3.23 (1H, d, J = 12.8 Hz),3.37 (1H, d, J = 3.1 Hz) 3.65 (3H, s),
3.69 (3H, s), 7.06 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.12 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.32-7.42
(3H, m), 7.47 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.50 (1H, s).
ESIMS (+) : 499 [M+H] +.

<参考例21>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−2−メチルプロピオン酸メチル
【0159】
【化66】

【0160】
参考例20の化合物(625
mg)を参考例2と同様に反応させ目的物(432 mg)を無色油状物として得た。
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 1.45 (9H, s), 1.51
(3H, s), 3.43 (1H, d, J = 14.1 Hz), 3.49 (1H, d, J = 14.1 Hz), 3.74 (3H, s),
5.08 (1H, br s), 7.12-7.18 (2H, m), 7.35 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.40-7.54 (3H,
m), 7.58 (1H, s).
ESIMS (+) : 504 [M+H] +.

<参考例22>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オール
【0161】
【化67】

【0162】
参考例21の化合物(432
mg)を参考例3と同様に反応させ目的物(350 mg)を無色油状物として得た。
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 1.09 (3H, s), 1.46 (9H,
s), 3.13 (1H, d, J = 14.1 Hz), 3.33 (1H, d, J = 14.1 Hz), 3.67 (1H, dd, J =
11.6, 8.6 Hz), 3.72 (1H, dd, J = 11.6, 4.3 Hz), 4.23
(1H, br s), 4.63 (1H, s), 7.19 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.29 (1H, d, J = 7.9
Hz), 7.38 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.41-7.54 (3H, m), 7.58 (1H, s).
ESIMS (+) : 476 [M+H] +.

<参考例23>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−1−ジメトキシホスホリルオキシ−2−メチルプロパン
【0163】
【化68】

【0164】
参考例22の化合物(150
mg)を参考例5と同様に反応させ目的物(173 mg)を無色油状物として得た。
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 1.24 (3H, s). 1.45
(9H, s), 3.11 (1H, d, J = 13.4 Hz), 3.35 (1H, d, J = 13.4 Hz), 3.78 (3H, d, J =
11.6 Hz), 3.79 (3H, d, J = 11.6 Hz), 4.10 (1H, dd, J = 9.8, 5.5 Hz), 4.29 (1H,
dd, J = 9.8, 5.5 Hz), 4.62 (1H, s), 7.17 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.22(1H, d,
J = 7.9 Hz), 7.37 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.41-7.54 (3H, m), 7.59 (1H, s).
ESIMS (+) : 584 [M+H] +.

<参考例24>
(S)−2−アミノ−3−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−2−メチルプロピルリン酸モノエステル
【0165】
【化69】

【0166】
参考例23の化合物(173
mg)を実施例1と同様に反応させ目的物(73 mg)を白色粉体として得た。
旋光度:[α]D25 +11.7 (c
0.50, MeOH).
1H NMR (DMSO-d6-dTFA, 400 MHz) :δ 1.16 (3H, s), 3.10
(2H, s), 3.79 (1H, dd, J = 11.0, 4.9 Hz), 3.86 (1H, dd, J = 11.0, 4.9 Hz), 7.29
(1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.44 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.47 (1H, d, J = 1.8 Hz),
7.61-7.65 (2H, m), 7.69 (2H, s).
HRESIMS
(+) : 456.04116 (C17H19ClF3NO4PSとして計算値 456.04130).
元素分析 : 実測値 C 44.92%, H 3.96%, N 3.04%, C17H18ClF3NO4PSとして計算値 C 44.79%, H 3.98%, N 3.07%.

<参考例25>
(2S,5R)−2−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]プロピル−3,6−ジエトキシ−2−メチル−5−イソプロピル−2,5−ジヒドロピラジン
【0167】
【化70】

【0168】
2−クロロ−1−(3−ヨードプロピル)−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)ベンゼン
(1.00 g)を参考例1と同様に反応させ目的物(810 mg)を無色油状物として得た。
1H-NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 0.63 (3H, d, J = 6.7
Hz), 1.07 (3H, d, J = 6.7 Hz), 1.18-1.29 (10H, m), 1.34-1.66 (2H, m), 1.79-1.91
(1H, m), 2.25-2.33 (1H, m), 2.70 (2H, t, J = 7.6 Hz), 3.85 (1H, br s),
3.99-4.23 (4H, m), 7.16 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.20 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz),
7.36-7.42 (3H, m), 7.44-7.50 (1H, m), 7.52 (1H, br s).
ESIMS (+) : 555 [M+H] +.

<参考例26>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−5−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−2−メチルペンタン−1−オール
【0169】
【化71】

【0170】
参考例25の化合物(810 mg)を参考例2と同様に反応させ、得られた化合物を実施例3と同様に反応させ目的物(530 mg)を無色油状物として得た
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 1.14 (3H, s), 1.42
(9H, s), 1.50-1.74 (3H, m), 1.80-1.92 (1H, m), 2.73 (2H, t, J = 6.7 Hz),3.60
(1H, d, J = 12.0 Hz),3.64 (1H, d, J = 12.0 Hz), 4.57 (1H, br s), 7.20 (2H, d, J
= 1.2 Hz), 7.38-7.49 (4H, m), 7.54 (1H, s).

<参考例27>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−5−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−1−ジメトキシホスホリルオキシ−2−メチルペンタン
【0171】
【化72】

【0172】
参考例26の化合物(340 mg)を参考例5と同様に反応させ目的物(337 mg)を無色油状物として得た。
1H NMR
(CDCl3, 400 MHz): δ 1.25 (3H, s). 1.42
(9H, s), 1.55-1.68 (3H, m), 1.85-1.97 (1H, m), 2.73 (2H, t, J = 7.6 Hz), 3.77
(6H, d, J = 11.0 Hz), 3.98 (1H, dd, J = 9.8, 4.9 Hz), 4.16 (1H, dd, J = 9.8,
4.9 Hz), 4.52 (1H, s), 7.19-7.21 (2H, m), 7.38 (1H, d, J = 2.4 Hz), 7.40-7.43
(2H, m), 7.46-7.50 (1H, m), 7.55(1H, s).

<参考例28>
(S)−2−アミノ−5−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−2−メチルペンチルリン酸モノエステル
【0173】
【化73】

【0174】
参考例27の化合物(337 mg)を実施例1と同様に反応させ目的物(196 mg)を白色粉体として得た。
旋光度:[α]D25 -1.42 (c
0.50, MeOH).
1H NMR (DMSO-d6-dTFA, 400 MHz) :δ 1.16 (3H, s), 1.52-1.72
(4H, m), 2.68 (2H, br s), 3.77-3.85 (2H, m), 7.31 (1H, dd, J = 7.9, 1.2 Hz), 7.38
(1H, d, J = 7.9 Hz), 7.44 (1H, s), 7.53-7.59 (4H, m).
FABMS (+) : 484 [M+H]
+.
元素分析 : 実測値 C 46.85%, H 4.54%, N 2.86%, C19H22ClF3NO4PSとして計算値 C 47.16%, H 4.58%, N 2.89%.

【0175】
次に本発明化合物について、有用性を裏付ける成績を実験例1、実験例2、実験例3及び実験例4によって示す。
【0176】
<実験例1> S1P(スフィンゴシン-1-リン酸)によるヒトS1P3受容体発現細胞の細胞内カルシウム動員に対する被験化合物の抑制作用
10%のウシ胎児血清、および300 μg/mLのGeneticinを含むHam’s
F-12培地でヒトS1P3受容体発現CHO細胞を継代培養した。このヒトS1P3受容体発現CHO細胞を0.25
% トリプシン処理後、ディッシュより回収し、10% ウシ胎児血清および300 μg/mLのGeneticinを含むHam’s F-12培地に浮遊した後、7 x 104 /100 μL/wellとなるように96 穴黒色クリアボトムプレート(BD Falcon Biocoat)に播種し、37℃、5 % CO2下で一晩培養した。翌日、100 μL 0.1 % 脂肪酸不含ウシ血清アルブミン (BSA)含有PBSにてwellを3回洗浄した。0.1 % BSA含有Ham’s F-12培地に交換後、37℃ CO2インキュベータで6時間血清飢餓処理を行った。Fluo3-AM (Dojindo)とpluronic F-127 (20% DMSO溶液、invitrogen) を等量混合した後、Hanks-HEPES バッファー(20 mM HEPES (pH7.4), 0.1%
BSA (Fatty acid Free), 2.5 mM probenecid含有ハンクス平衡塩溶液)に加え、Fluo3-AMの終濃度を4μMとしたものを、Fluo3 loading bufferとした。
【0177】
6時間後に培地を捨て、上記のFluo3
loading bufferを50 μL/well加え、さらに1時間培養した。1時間のインキュベートの後、100 μL のHanks-HEPES バッファーで3回洗った。被験化合物 (125 nM、1.25
μM、12.5 μM)またはDMSOを溶解した同バッファーを100 μL加え、マイクロプレート蛍光分光光度計 (FLEX Station (Molecular Device社))中で37 ℃、30分インキュベートした。その後、同装置を用いて、段階希釈法にて終濃度の5倍濃度で作製したS1P (終濃度0.1
nM、1 nM、10 nM、100 nM、1 μM)を25 μL加え、カルシウム動員に基づくFluo3による蛍光を、励起波長485nm、検出波長525nmで検出、測定した。測定データより最大蛍光強度から最小蛍光強度を引いた値 (蛍光増加量)を算出した。測定した蛍光増加量を使用し、PRISM 4ソフトウェア (GraphPad)を用いて、S1Pの濃度と蛍光増加量の関係を曲線近似した。その結果より、化合物未処理時および各濃度の化合物処理時におけるEC50値を各々算出した。これら数値をもとにSchild Plot解析を行い、解離定数Kd値を求めた。
【0178】
被験化合物のS1P3アンタゴニスト活性を表1に示す。なお、表中、「S1P3アンタゴニスト活性」とあるのは上記の方法で求めたKd値を表し、Kd値≧100 nmol/Lについては−、100 nmol/L>Kd値≧10
nmol/Lについては+、10 nmol/L>Kd値≧1 nmol/Lについては++と表記した。また、「特許文献6実施例43」とあるのは、本明細書実施例1のエナンチオマーである。
【0179】
【表1】

【0180】
上記実験結果から、本発明化合物とは逆の不斉中心を有する化合物はS1P3アンタゴニスト活性を有さないことに対し、本発明化合物は良好なS1P3アンタゴニスト活性を有することがわかる。

【0181】
<実験例2> ヒトS1P1受容体発現細胞に対する被験化合物の細胞内カルシウム動員誘導試験
10%のウシ胎児血清、及び200 μg/mLのGeneticinを含むHam’s F-12培地で継代培養したヒトS1P受容体発現CHO細胞(hS1P1受容体発現CHO細胞、hS1P3受容体発現CHO細胞及びhS1P4受容体発現CHO細胞)を4×104 cells/wellで96穴黒色クリアボトム培養プレート(コースター)に播種し、37℃、5%CO2条件下で一晩培養した。さらにCa2+結合性蛍光指示薬としてCalcium Screening
Kit試薬(同仁化学)を添加し、37℃、5%CO2条件下で60分間培養した。培養後、マイクロプレート蛍光分光光度計(FLEX Station、モレキュラーデバイス)を用いて、励起波長485nm、検出波長525nmにおける蛍光強度を測定した。最終濃度の10倍の濃度になるよう培地で調製したS1P、あるいは被験化合物(最終DMSO濃度0.1%)を蛍光測定開始18秒後に添加し、1.5秒毎で添加後100秒まで蛍光強度を連続測定した。測定データより最大蛍光強度から最小蛍光強度を引いた値(蛍光増加量)を算出し、溶媒を添加したときの蛍光増加量とS1Pを10-6Mで作用させたときの蛍光増加量の差を100%として、被験化合物の蛍光増加率(%)を算出した。これを被験化合物の細胞内カルシウム動員誘導作用として、PRISMソフトウェア(GraphPad)を用いてEC50値を求めた。なお被験化合物の活性値は下記の計算式を用いて算出した。
【0182】
【数1】

【0183】
実施例1の化合物の活性値は>100であった。また実施例1のエナンチオマーである特許文献6記載の実施例43の化合物の活性値は<1であった。
【0184】
上記実験結果から、本発明化合物とは逆の不斉中心を有する化合物はS1P1アゴニスト活性が強いことに対し、本発明化合物はS1P1アゴニスト活性が弱いことがわかる。

【0185】
<実験例3> アルキル鎖の長さが異なる対照化合物とのS1P3アンタゴニスト活性の比較
本発明化合物と、アルキル鎖の長さが異なる対照化合物とのS1P3アンタゴニスト活性の比較を表2に示す。なお、表中の「S1P3アンタゴニスト活性」は実験例1と同様にして求めたKd値である。
【0186】
【化74】

【0187】
[式中、nは1〜3の整数を示す]
【0188】
【表2】

【0189】
上記実験結果から、本発明化合物とはアルキル基の長さが異なる化合物はS1P3アンタゴニスト活性を有さないことに対し、本発明化合物は良好なS1P3アンタゴニスト活性を有することがわかる。

【0190】
<実験例4>LPS誘発敗血症モデル
非特許文献5(F.Nissen et al.,Nature,452,654(2008))に記載の方法を参考にして行った。C57BL/6Jマウス(チャールスリバー 雄7-8W)に、LPS (Lipopolysaccharide)を1mg/mlとなるように生理食塩水で溶解したものを、腹腔内投与(10ml/kg)した。被検化合物は10mg/kgでLPS投与15分前と2時間後に2回静脈内投与した。LPS投与18時間後に解剖し、腸間膜リンパ節と肺を摘出した。腸間膜リンパ節は200μl、肺は1mlの溶解バッファー(30mM Tris(pH7.4), 150mM NaCl, 0.1% TritonX-100, 2mM CaCl2,
2mM MgCl2)で溶解し、不溶物を遠心分離により除去した。IL-1β ELISA Kit(THERMO社)を用いて組織溶解液中のIL-1βを測定した。結果を表3に示す。抑制率が30%以上の化合物は+++、30%>抑制率≧20%の化合物は++、20%>抑制率≧10%の化合物は+、抑制率が10%未満の化合物は−と表記し、表3に示した。また、被験化合物投与後の被験動物の死亡率を表3に示した(死亡数/全被験動物数)。なお、抑制率は下記の計算式を用いて算出した。
【0191】
【数2】

【0192】
【表3】

【0193】
上記実験結果から、本発明化合物とは逆の不斉中心を有する化合物は敗血症モデルに対し抑制効果を示さないだけではなく、被験動物への強い毒性を有することも判明した。一方、本発明化合物は敗血症モデルに対し良好な抑制効果を有するとともに、安全であることがわかる。

【0194】
以上の結果から、本発明の特徴である不斉中心及びアルキル基の長さを有する化合物が顕著なS1P3アンタゴニスト作用を示すことが明らかとなった。また、本発明化合物はS1P1アゴニスト作用が弱いため、S1P1アゴニスト作用に由来する副作用のリスクが低いものと推測される。更に、本発明化合物は安全性が高く、敗血症に対し優れた抑制効果を示すことも確認された。

【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明により優れたS1P3アンタゴニスト活性を有するジフェニルスルフィド誘導体の提供が可能となり、本発明化合物は、気道収縮、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、気管狭窄症、びまん性汎細気管支炎、感染、結合組織病もしくは移植に伴う気管支炎、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、間質性肺炎、肺癌、過敏性肺臓炎、特発性間質性肺炎、肺線維症、敗血症、インフルエンザウイルス、RSウイルス感染に基づくサイトカインストーム、動脈硬化症、血管内膜肥厚、固形腫瘍、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、心不全、虚血性再灌流障害、くも膜下出血後の脳血管スパズム、冠血管スパズムを原因とする狭心症または心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓症、ARDSなどの肺浮腫を原因とする肺疾患、心不整脈、眼疾患、眼高血圧症、緑内障、緑内障性網膜症、視神経症、黄班変性症の予防又は治療薬として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、Rはトリフルオロメチル基、ベンジルオキシ基、炭素数1〜4のアシル基又はシアノ基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、ただしRが水素原子のときは、Rはベンジルオキシ基を除く]
で表されるジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物。
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が、式(1a)
【化2】

[式中、R1aはトリフルオロメチル基、炭素数1〜4のアシル基又はシアノ基を示す]
で表される請求項1記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が、式(1b)
【化3】

[式中、R2aは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Rは前述の通り]
で表される請求項1記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物。
【請求項4】
前記一般式(1)で示される化合物が、
(S)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(5−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブチルリン酸モノエステル、
(S)−2−アミノ−4−[4−(5−アセチルフェニルチオ)−2−クロロフェニル]−2−メチルブチルリン酸モノエステル、又は
(2S,3S)−3−アミノ−5−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−3−メチルペンタン−2−イルリン酸モノエステルである請求項1記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物。
【請求項5】
前記一般式(1)で示される化合物が、
(−)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(5−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブチルリン酸モノエステル、
(−)−2−アミノ−4−[4−(5−アセチルフェニルチオ)−2−クロロフェニル]−2−メチルブチルリン酸モノエステル、又は
(−)−3−アミノ−5−[2−クロロ−4−(3−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−3−メチルペンタン−2−イルリン酸モノエステル
である請求項1記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物。
【請求項6】
前記一般式(1)で示される化合物が、
(S)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(5−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブチルリン酸モノエステルである請求項1記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物。
【請求項7】
前記一般式(1)で示される化合物が、
(−)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(5−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−2−メチルブチルリン酸モノエステルである請求項1記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物を有効成分とするスフィンゴシン−1−リン酸3(S1P3)レセプターアンタゴニスト作用に基づく医薬。
【請求項9】
気道収縮、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、気管狭窄症、びまん性汎細気管支炎、感染、結合組織病もしくは移植に伴う気管支炎、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、間質性肺炎、肺癌、過敏性肺臓炎、特発性間質性肺炎、肺線維症、敗血症、またはインフルエンザウイルスもしくはRSウイルス感染に基づくサイトカインストームの治療あるいは予防薬である請求項8記載の医薬。
【請求項10】
動脈硬化症、血管内膜肥厚、固形腫瘍、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、心不全、虚血性再灌流障害、くも膜下出血後の脳血管スパズム、冠血管スパズムを原因とする狭心症もしくは心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓症、肺浮腫を原因とする肺疾患、心不整脈、眼疾患、眼高血圧症、緑内障、緑内障性網膜症、視神経症または黄班変性症の治療薬である請求項8記載の医薬。
【請求項11】
敗血症の治療又は予防薬である請求項8記載の医薬。
【請求項12】
請求項1〜7の何れかに記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物及び薬学的に許容されうる担体を含有する医薬組成物。

【公開番号】特開2011−32226(P2011−32226A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181025(P2009−181025)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000001395)杏林製薬株式会社 (120)
【Fターム(参考)】