説明

ジメチルエーテル改質発電システム

【課題】DME改質発電システムの起動時/部分負荷運転時においても、DMEと水から水素と一酸化炭素へ改質する吸熱反応を促進し、二酸化炭素とメタンを生成する発熱反応を抑制して熱発散を生じない、DME改質発電方法およびシステムの提供。
【解決手段】DMEガスと水蒸気とを混合し得られた混合ガスを、改質器にて触媒を用いて水素リッチなDME改質ガスに転換する改質工程と、原動機をDME改質ガスおよび/またはDMEを燃焼することにより駆動させる工程と、改質器に熱供給媒体を介して原動機排熱を供給する熱供給工程とを含むDME改質方法であって、原動機の起動時および/または部分負荷運転時に、熱供給媒体の温度を定格運転時より低い温度とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジメチルエーテルから改質ガスを生成し改質ガスを燃焼させて発電する方法およびシステムに関し、特に改質ガスの生成にあたり、発電排熱を化学的に吸収して利用するジメチルエーテルを用いた化学再生発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ジメチルエーテル(以下、必要に応じて同義であるDMEを用いることもある)は、燃焼の際、硫黄酸化物やすすを発生せず、窒素酸化物の発生量も大幅に削減できるなど、環境負荷が小さいことに加え、化石燃料以外にもバイオマスなどから生産できることから、クリーンな新エネルギーとして注目されており、経済産業省もその研究開発を支援している。なかでも、DME改質ガスを用いた発電システムは、DMEをより発熱量の多いDME改質ガスに変換して利用でき、かつその改質反応(吸熱反応)を利用して排熱を回収できるシステムであり、高効率な化学再生発電システムを構築できることから、その開発が期待されている技術である(特開2004−144018号公報:特許文献1)。そして、このような化学再生発電システムの効率向上には、改質器における化学的排熱回収量の最大化が重要とされる。
【0003】
上記発電システムにおけるDME改質ガスの生成反応は、DMEに適当な触媒の存在下で水蒸気を作用させて、水素と一酸化炭素を発生させる吸熱反応である。しかしながら、この反応により発生した一酸化炭素は、さらに水や水素と反応して二酸化炭素やメタンを発生させる発熱反応を起こしてしまうことがある。この発熱反応は、化学的排熱回収を阻害し化学再生発電システムの効率を低下させるだけではなく、反応熱による温度上昇によって、さらに反応速度が高まり、過熱しながら一酸化炭素が無くなるまで急激に反応が進んでしまういわゆる熱発散が生じやすい点で、抑制する必要のある反応である。
【0004】
上述の吸熱反応を促進し、他方で上述の発熱反応を抑制する状態を保つことは、DME改質発電システムの定格運転時にはある程度は可能となっている。しかしながら、DME改質発電システムの起動時および/または部分負荷運転時、また場合によっては停止時においては、DME濃度が薄いため、DMEが早く消費されかつ多くの一酸化炭素が早く生成してしまうこととなり、発熱反応が起こりやすくなってしまう問題点があった。
【特許文献1】特開2004−144018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、DME改質発電システムの起動時および/または部分負荷運転時、また場合によっては停止時においても、DMEと水から水素と一酸化炭素へ改質する吸熱反応を促進し、二酸化炭素とメタンを生成する発熱反応を抑制して熱発散を生じない、DME改質発電方法およびシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明のジメチルエーテル改質方法は、ジメチルエーテルガスと水蒸気とを混合し得られた混合ガスを、改質器にて触媒を用いて水素リッチなジメチルエーテル改質ガスに転換する改質工程と、原動機をジメチルエーテル改質ガスおよび/またはジメチルエーテルを燃焼することにより駆動させる工程と、前記改質器に熱供給媒体を介して原動機排熱を供給する熱供給工程と、を含むジメチルエーテル改質方法であって、前記原動機の起動時および/または部分負荷運転時に、前記熱供給媒体の温度を定格運転時より低い温度とすることを特徴とする。
【0007】
本発明のジメチルエーテル改質方法の好適態様においては、ジメチルエーテルガスと水蒸気とを混合し得られた混合ガスを、触媒を用いて水素リッチなジメチルエーテル改質ガスに転換する改質器と、ジメチルエーテル改質ガスおよび/またはジメチルエーテルを燃焼することにより原動機を駆動する手段と、前記改質器に原動機排熱を供給する熱供給手段と、を含むジメチルエーテル改質システムであって、前記熱供給手段が、熱供給媒体を含み、前記ジメチルエーテル改質システムの運転状況に応じて熱供給媒体の温度を低下することのできる熱供給媒体冷却器を具備することを特徴とする。
【0008】
本発明のジメチルエーテル改質システムの好適態様においては、前記熱供給媒体冷却器が、前記原動機の起動時および/または部分負荷運転時に熱供給媒体の温度を低下させるものである。
【0009】
本発明のジメチルエーテル改質システムの別の好適態様においては、前記触媒が、370℃を超える耐熱温度を有するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、DME改質発電システムの起動時および/または部分負荷運転時、また場合によっては停止時においても、DMEと水から水素と一酸化炭素へ改質する吸熱反応を促進し、二酸化炭素とメタンを生成する発熱反応を抑制して熱発散を生じない、DME改質発電方法およびシステムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(DME改質発電システムの概要)
図1は、本発明にかかるDME改質発電システムの一例を示す概略説明図である。本発明の改質発電システムでは、DME改質ガス101、蒸気102、圧縮空気103を燃焼器104にて混合燃焼して、発電用タービン105を回転させて排気している。DME改質ガス101は、DME106をDME蒸発系107にて蒸発させた後、水蒸気102と混合して改質器108にて改質して得られたガスである。蒸気102は、水109を蒸発器110にて蒸発させ得られるものであり一部を改質器108で用い、他の一部を過熱器111でさらに過熱して燃焼器104で用いている。圧縮空気103は発電用タービンと連動するコンプレッサ112によって空気113を圧縮したものである。そして、タービン排気114は熱供給媒体として作用し、順に過熱器111、水蒸発器110、排気冷却器115、改質器108、DME蒸発系107に熱を与えながら通過し、放熱して排出されている。排気冷却器115においては、改質器の温度を調節するため、水などの冷媒116によって必要に応じて熱供給媒体たる排気の温度を低下させている。
【0012】
(DME改質反応の概要)
DME改質ガスの生成反応は、DMEに適当な触媒の存在下で水蒸気を作用させて、水素と一酸化炭素を発生させる吸熱反応である。貴金属系触媒を用いたDME改質ガス生成反応は、以下の式(1)のDME加水分解および式(2)のメタノール分解によって表されるメタノールを経由した逐次反応である(出光技報、2005年1月発行、48巻第1号、10−16頁)。
O + HO → 2CHOH − 23.6kJ/mol−DME(1)
CHOH → CO + 2H − 90.7kJ/mol−CHOH (2)
【0013】
この二つの反応は、いずれも吸熱反応であり、この吸熱反応によって化学的排熱回収が実現できる。反応速度の観点からすると、この二つの反応のうち、式(1)のDME加水分解反応が律速となっている。そして、DMEやメタノールは370〜530℃、DMEの供給モル流量に対する蒸気の供給モル流量すなわちS/DMEを3〜9と設定すれば、化学平衡的にほぼ完全に消滅することが分かっている。したがって、排熱回収量の最大化のためには、改質ガスの温度を370〜530℃にコントロールし、DMEの供給モル流量に対する蒸気の供給モル流量、すなわちS/DMEを3〜9と設定するように制御することが望まれる。
【0014】
しかしながら、改質ガスの生成反応により発生したCOは、望ましくない反応である式(3)のシフト反応あるいは式(4)のメタン化反応を起こすことがある。
CO + HO → CO + H + 41kJ/mol−CO (3)
CO + 3H → CH + HO + 206kJ/mol−CO (4)
【0015】
この二つの反応は、いずれも発熱反応であり、化学的排熱回収を阻害する。特に式(4)では、わずかなメタン生成であっても発熱量が大きい点で化学的排熱回収を阻害の程度が大きい。そして、(3)および(4)のような発熱反応は、反応熱の発生による温度上昇によって、さらに反応速度が高まり、改質器が過度に温度上昇し、かつ、反応原料となるCOがある限り、化学平衡に達するまで進行してしまう恐れがある。
【0016】
したがって、化学再生発電システムの効率向上、すなわち化学的排熱回収量の向上を実現し、かつ改質器の過度の温度上昇(いわゆる熱発散)を防止するためには、(1)および(2)の吸熱反応を促進し、他方で(3)および(4)の発熱反応を抑制する必要がある。
【0017】
(発熱反応の抑制)
まず、改質器温度が反応速度に与える影響の観点から、吸熱反応を促進し発熱反応を抑制する方法について検討する。式(1)、(2)の吸熱反応の活性化エネルギーは、触媒を用いても依然として高いため、反応を促進するためにはアレニウス則に従い一定の高い温度とする必要がある。しかしながら、式(3)、(4)の発熱反応の活性化エネルギーは、式(1)、(2)の吸熱反応の活性化エネルギーよりも低いため、吸熱反応を促進するために高温とすると、発熱反応の速度も高まってしまうことになる。したがって、単なる温度の調節だけでは、吸熱反応を促進し発熱反応を抑制することは困難である。
【0018】
次に、物質濃度が反応速度に与える影響の観点から検討すると、DMEの改質がまだ進行していない状態、つまりDMEやメタノールが多量に存在しCOが少ない状態では、吸熱反応の原料が十分な濃度で存在するため、吸熱反応が進行する。他方、発熱反応の原料であるCOの濃度が低いので、発熱反応はほとんど進行しない。しかし、DMEの改質反応が進行し、DMEやメタノールが少量しか存在せず、COが多い状態では、吸熱反応の原料濃度が低いため、吸熱反応はほとんど進行せず、逆に発熱反応の原料であるCOの濃度が高いので、発熱反応が進行してしまうことになる。したがって、DMEの改質がある程度終了したら速やかに全ての反応を止めることが吸熱反応を促進し発熱反応を抑制するために望まれる。
【0019】
さらに、熱供給が反応速度に与える影響の観点から検討すると、改質器への熱供給が減少すると改質器の温度が低下するため、吸熱反応速度が低下する(いわゆる伝熱律速)。吸熱反応は、反応速度が低下すると、反応による吸熱量も減少するので、温度低下が緩和されることになる。逆に改質器への熱供給が増加すると吸熱反応速度が上昇し、吸熱量が増加するので、温度上昇が緩和されることとなる。このように、式(1)、(2)の吸熱反応は、改質器の温度をある一定の温度範囲に収める方向に作用する。そして、このような伝熱律速の状態では、DME流入量を変化させても吸熱反応の速度はあまり変化しない。他方、発熱反応については、改質器への熱供給が減少しても発熱反応が多量に進行しているときは、反応による発熱によって温度低下が妨げられるため、必ずしも式(3)、(4)の発熱反応の速度が低下するとは限らない。逆に、改質器への熱供給が増加すると、温度上昇が生じアレニウス則により反応速度が高まり発熱量が増加するので、温度上昇が加速され、さらに反応速度も高まるという循環が、COが消費され化学平衡に達するまで進行することとなる(いわゆる熱発散)。したがって、DMEの改質がまだ進行していない状態、すなわちDMEやメタノールが多量に存在しCOが少ない状態では、吸熱反応が発熱反応に対して優位であり、改質器への熱供給を減少することによって改質器の温度を下げ、吸熱反応だけではなく発熱反応の速度も容易に低下することができる。これに対し、DMEの改質が進行した後には、改質器への熱供給の調節による反応速度の調節は、必ずしも容易とは言えない。そこで、この点からも、DMEの改質がある程度終了したら速やかに全ての反応を止めることが吸熱反応を促進し発熱反応を抑制するために望まれ、すなわち、熱発散を防止するために、DMEの改質が進行しDMEやメタノールが減少した状態で触媒充填層に長く接触することを避けることが必要となる。
【0020】
(改質器の運転方法)
上述の反応の特徴を考慮すると、発熱反応を抑制しつつ吸熱反応を進行させて化学的排熱回収を高め、かつ熱発散を防止するためには、改質器の運転に際し、改質器の温度を触媒の耐熱温度および排熱温度を上限としてなるべく高い温度、例えば370〜530℃とし、好ましくは400〜500℃として、さらに好ましくは430〜470℃として、発熱反応を抑制しつつ速やかに吸熱反応を進行させることが好ましい。そして、吸熱反応が終わる時点で反応を止め、その後の発熱反応を阻止すること、例えば、改質ガスが改質器から排出する、あるいは改質ガスの温度を下げるなどを行うことが好ましい。
【0021】
このような好適な運転状態を保つことは、DME改質発電システムの定格運転時にはある程度可能となっている。しかしながら、DME改質発電システムの起動時および/または部分負荷運転時、また場合によっては停止時においては、DME濃度が定格運転時よりも薄いため、改質器内でDMEが早く消滅しかつ多くのCOが早く生成してしまい、発熱反応による熱発散が起こりやすくなってしまう。
【0022】
そこで、本発明者らは、DME改質発電システムの起動時および/または部分負荷運転時、また場合によっては停止時のようなDME濃度が定格運転時よりも薄い状態の時に、改質器の温度を下げ、伝熱律速反応である吸熱反応の反応速度を落とし、改質器の終わり付近までDMEが残存するようにすると、発熱反応による熱発散を防止することができることを見出し、改質器の温度を低下させるために、改質器に原動機排熱を供給する熱供給媒体の温度を熱供給媒体冷却器を用いて低下させることとした。
【0023】
図2は、本発明のジメチルエーテル改質発電システムにおいて、改質工程の負荷変動と連係して排気冷却器の冷媒流量を変動させる状況を示すダイヤグラムの例である。改質システムの起動時には、通常は改質器に入るDME量が少ないため、排気冷却器に冷媒を流し、熱供給媒体たる排気温度を下げ、改質器の温度を下げる。また、改質システムの部分負荷運転時には、改質器に入るDME量が少ないため、排気冷却器に冷媒を流し、熱供給媒体たる排気温度を下げ、改質器の温度を下げる。そのようにすることで、伝熱律速反応である吸熱反応の反応速度を落とし、改質器の終わり付近までDMEが残存するようにして、発熱反応による熱発散を防止する。
【0024】
この改質器温度の低下は、典型的には、DME改質発電システムの起動時および/または部分負荷運転時、また場合によっては停止時に用いるが、何らかの事情で、改質器温度を低下させる必要があるとき、例えば、何らかの事情でDME分解速度が異常に速まってしまった場合や改質器温度が上昇してしまった場合、原動機排熱温度が高すぎる場合などにも用いることもできる。
【0025】
(改質器)
改質器は、DMEと水蒸気とを混合して得られた混合ガスを、触媒を用いて水素リッチな改質ガスに転換するための装置である。典型的には、複数の管に触媒を充填し、管内にDMEと水蒸気とを混合して得られた混合ガスを通すとともに、管の周囲に熱供給媒体たるタービン排気を流すことによって運転される。本発明で用いられる触媒には、耐熱温度が350℃程度の銅および亜鉛系の触媒と、耐熱温度が370℃を超える貴金属系触媒(白金、ルテニウム、パラジウムまたはロジウムなどを用いたもの)があり、好ましくは、貴金属系触媒を用いる。
【0026】
(熱供給手段)
本発明における熱供給手段とは、改質器に原動機排熱を熱供給媒体を介して供給する手段である。熱供給媒体は、典型的にはタービン排気であるが、流体である限りこれに限定されない。本発明の熱供給手段は、DME改質システムの運転状況に応じて熱供給媒体の温度を低下することのできる熱供給媒体冷却器を具備することを特徴とする。具体的には、 原動機の起動時および/または部分負荷運転時、また場合によっては停止時に、熱供給媒体の温度を定格運転時より低く設定することができるものとする。熱供給媒体の温度を低下する手段としては、典型的には冷媒(典型的には水)によって熱供給媒体たる排気を冷却する排気冷却器が挙げられる。冷却された排気の改質器への導入温度は、典型的には400℃以下、熱発散しやすい状況であれば、より確実に熱発散を防止できる350℃程度とすることが好ましい。
【0027】
(原動機)
本発明のDME改質発電システムにおける原動機は、典型的にはタービンやガスエンジンであり、発電機に連動し発電の動力を提供するものである。原動機は、DMEおよび/またはDME改質ガス等を燃焼器にて燃焼することにより駆動させる。起動時にはDMEそのものを燃焼させることもあるが、定格運転時には、主としてDME改質ガスを燃焼させる。
【0028】
(蒸発器)
本発明のDME改質発電システムにおける蒸発器は、好ましくは原動機排熱により水を蒸発させるものであり、蒸発器で生成した水蒸気の少なくとも一部をDME改質器に送り、また生成した水蒸気の一部を燃焼器に供給してもよい。
【0029】
(DME気化器)
本発明のDME改質発電システムにおけるDME気化器は、好ましくは原動機排熱によりDMEを蒸発させるものであり、生成したDMEガスの少なくとも一部をDME改質器に送るものである。また生成したDMEガスの少なくとも一部を燃焼器に供給してもよい。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
本発明のDME改質発電システムにおいて、起動時に排気冷却器(熱媒体冷却器)を作動させる。
【0031】
この実施例においては、図3に示すダイヤグラムに従いDME改質発電システムの起動を行う。まず、排気冷却器に予め所定量の冷媒を流しておき、DME発電システムを通常のガスタービンシステムと同様な手順で起動させる。すなわち、発電機をモータとしてガスタービンを回転させ、図1の破線に示す燃焼器に直接送るラインでDMEを送り、点火後に燃料を増量して加速、自立させる。この時点では、改質発電に至っていないので、燃料は定格よりも多めとする。蒸発器を暖機して蒸気が発生し始めてから、蒸気を改質器へ流し、蒸気パージして燃焼器へ送り込む。この時点では蒸気発生量に応じて図3のように燃料流量がやや減少する。次に、燃料の一部を改質器に通し出すと、蒸気で希釈された改質ガスとDMEの混燃状態となる。DME生ガスを減らし、最終的に100%改質ガスへと順次切り替えた状態となり定格運転に移行する。定格運転時には排気冷却器の流量をゼロする。
【0032】
以上の通り、排気冷却器を作動させて起動することにより、DME改質発電システムの状況が刻々と変化するにもかかわらず、発熱反応を抑制し、熱発散無く起動することができる。
【0033】
(実施例2)
本発明のDME改質発電システムにおいて、部分負荷運転時に排気冷却器(熱媒体冷却器)を作動させる。
【0034】
この実施例においては、定格の70%の部分負荷運転を行い、排気冷却器に冷媒として水を流し、排気温度を350℃に低下させる。なお、冷媒を流さない場合の排気温度は450℃である。
【0035】
図4に、部分負荷運転時に排気冷却器に冷媒として水を流した時の排気温度と改質器内の触媒充填層の温度分布(実線)と、定格運転時に排気冷却器を作動させない場合の排気温度と改質器内の触媒充填層の温度分布(破線)を示す。
【0036】
図5に、部分負荷運転時に排気冷却器に冷媒として水を流した時の改質器管内のDME濃度、水素濃度、CO濃度、メタン濃度が入口から出口に向かっての変化を示した線(実線)と、定格運転時に排気冷却器を作動させない場合の改質器管内のDME濃度、水素濃度、CO濃度、メタン濃度が入口から出口に向かっての変化を示した線(破線)を示す(このうちDME濃度は、水蒸気分を含まないドライ成分の濃度を示す)。
【0037】
排気冷却器に冷媒として水を流したものは、改質器の温度が低下するため、式(1)および式(2)のDMEの改質反応(吸熱反応)の速度が小さくなる。したがって、部分負荷運転時において、DMEの流量が少ないときでも、DMEが改質器出口付近まで残留し、式(3)および式(4)の発熱反応の原料が少なく発熱反応の反応速度が小さいために、発熱反応による熱発散が起こらない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のジメチルエーテル改質発電システムの構成図である。
【図2】本発明のジメチルエーテル改質発電システムにおいて、改質工程の負荷変動と連係して排気冷却器の冷媒流量を変動させる状況を示すダイヤグラムである。
【図3】起動時の状況を示すダイヤグラムである。
【図4】本発明のジメチルエーテル改質発電システムにおいて、改質器への熱供給媒体である排気温度を異ならせた場合の改質器における温度分布を示す図である。
【図5】排気温度が異なる場合のDME改質器における濃度分布を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
101 DME改質ガス
102 蒸気
103 圧縮空気
104 燃焼器
105 発電用タービン
106 DME
107 DME蒸発系
108 改質器
109 水
110 蒸発器
111 過熱器
112 コンプレッサ
113 空気
114 タービン排気
115 排気冷却器
116 冷媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチルエーテルガスと水蒸気とを混合し得られた混合ガスを、改質器にて触媒を用いて水素リッチなジメチルエーテル改質ガスに転換する改質工程と、
原動機をジメチルエーテル改質ガスおよび/またはジメチルエーテルを燃焼することにより駆動させる工程と、
前記改質器に熱供給媒体を介して原動機排熱を供給する熱供給工程と、
を含むジメチルエーテル改質方法であって、
前記原動機の起動時および/または部分負荷運転時に、前記熱供給媒体の温度を定格運転時より低い温度とする、ジメチルエーテル改質方法。
【請求項2】
前記原動機の起動時および/または部分負荷運転時に、熱供給媒体冷却器を用いて、前記熱供給媒体の温度を定格運転時より低い温度とする、請求項1に記載のジメチルエーテル改質方法。
【請求項3】
ジメチルエーテルガスと水蒸気とを混合し得られた混合ガスを、触媒を用いて水素リッチなジメチルエーテル改質ガスに転換する改質器と、
ジメチルエーテル改質ガスおよび/またはジメチルエーテルを燃焼することにより原動機を駆動する手段と、
前記改質器に原動機排熱を供給する熱供給手段と、
を含むジメチルエーテル改質システムであって、
前記熱供給手段が、熱供給媒体を含み、前記ジメチルエーテル改質システムの運転状況に応じて熱供給媒体の温度を低下することのできる熱供給媒体冷却器を具備する、ジメチルエーテル改質システム。
【請求項4】
前記熱供給媒体冷却器が、前記原動機の起動時および/または部分負荷運転時に熱供給媒体の温度を低下させるものである、請求項3に記載のジメチルエーテル改質システム。
【請求項5】
前記触媒が、370℃を超える耐熱温度を有するものである、請求項3に記載のジメチルエーテル改質システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−7355(P2008−7355A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178097(P2006−178097)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】