説明

ジメトキシナフタレン骨格を有する化合物及びその製造方法

【課題】非対称型(2つのベンゾイルに異なる置換基を有するもの)の2,7−ジメトキシナフタレン化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で示されるジメトキシナフタレン骨格を有する化合物。
【化1】


(式中、R1及びR2は、OH、ハロゲン、NO2、NH2、COOR3、OCOCH3及びCH24から選ばれる基であり、R1とR2が同一であることはない。また、R3はHまたはCH3であり、R4はハロゲンまたはOHである。また、Meはメチル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なジメトキシナフタレン骨格を有する化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、ジメトキシナフタレン骨格を有する化合物についての研究を進めており、既に非特許文献1にて下記一般式(A)で示される1,8−ビス(4−クロロベンゾイル)−2,7−ジメトキシナフタレンを、非特許文献2にて下記一般式(B)で示される1,8−ジベンゾイル−2,7−ジメトキシナフタレンを提案した。
【0003】
【化1】

【0004】
【化2】

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Acta Cryst.(2007).E63,o4120
【非特許文献2】Acta Cryst.(2008).E64,o807
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記化合物は何れも対称型のものであって、反応性に欠ける等の問題がある。本発明者らは、更に研究を進め、非対称型(2つのベンゾイルに異なる置換基を有するもの)の2,7−ジメトキシナフタレン化合物の合成を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、新たに非対称型(2つのベンゾイルに異なる置換基を有するもの)の2,7−ジメトキシナフタレン化合物を効率良く製造する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、下記一般式(I)で示されるジメトキシナフタレン骨格を有する化合物である。
【0009】
【化1−2】

【0010】
(式中、R1及びR2は、OH、ハロゲン、NO2、NH2、COOR3、OCOCH3及びCH24から選ばれる基であり、R1とR2が同一であることはない。また、R3はHまたはCH3であり、R4はハロゲンまたはOHである。また、Meはメチル基を示す。ハロゲンとしてはフッ素、臭素等が挙げられる。)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0012】
【化3】

【0013】
【化4】

【0014】
以下、本発明の化合物の合成例を示す。
【0015】
本発明の化合物の製造方法において、出発原料は、下記一般式(II)
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、Meはメチル基を示す。)
で示される2,7−ジメトキシナフタレンである。
【0018】
本発明では、第一段階目のアロイル化として、上記2,7−ジメトキシナフタレンと下記一般式(III)
【0019】
【化6】

【0020】
(式中、R1は、OH、ハロゲン、NO2、NH2、COOR3、OCOCH3及びCH24から選ばれる基であり、R3はHまたはCH3であり、R4はハロゲンまたはOHである。)
で示される化合物とをAlCl3、SbCl5、FeCl3、TeCl2、SnCl4、TiCl4、TeCl4、BiCl3及びZnCl2より選ばれる強ルイス酸(a)の存在下に反応させる。
【0021】
第一段階目のアロイル化反応において、強ルイス酸(a)の存在下に反応させることにより下記一般式(IV)
【0022】
【化7】

【0023】
で示される化合物(1−モノ置換体)が得られる。
【0024】
次いで、上記一般式(IV)で示される化合物(1−モノ置換体)と下記一般式(V)
【0025】
【化8】

【0026】
(式中、R2は、OH、ハロゲン、NO2、NH2、COOR3、OCOCH3及びCH24から選ばれる基であり、R3はHまたはCH3であり、R4はハロゲンまたはOHである。)
で示される化合物とを上記強ルイス酸(a)より相対的に弱いルイス酸(b)の存在下に反応(第二段階目のアロイル化反応)させることにより、選択的に目的とする一般式(I)で示されるジメトキシナフタレン骨格を有する化合物(1,8−ジ置換体)が得られる。
【0027】
この第二段階目のアロイル化反応では、第一段階目のアロイル化反応で用いた上記強ルイス酸(a)より相対的に弱いルイス酸(b)が使用される。
【0028】
このようなルイス酸(b)としては、TiCl4や強ルイス酸(a)として例示したものの中から選択して使用することもできるが、TiCl4が好ましい。
【0029】
尚、第二段階目のアロイル化反応では、下記一般式(VI)
【0030】
【化9】

【0031】
(式中、R2は、OH、ハロゲン、NO2、NH2、COOR3、OCOCH3及びCH24から選ばれる基であり、R3はHまたはCH3であり、R4はハロゲンまたはOHである。)
で示される化合物とを五酸化二リン−メタンスルホン酸等のリン酸系の酸性縮合剤の存在下で直接縮合反応させることもできる。
【0032】
本発明の製造方法では、後記実施例で示すように、適当な化合物を反応させることにより、所望とする置換基を有する化合物に変換可能である。
【実施例】
【0033】
実施例1
1-(4-ブロモメチルベンゾイル)-8-(4-フルオロベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレンの合成(経路1)
【0034】
【化10】

【0035】
減圧加熱乾燥および窒素置換した10 mLナスフラスコに, 4-ブロモメチル安息香酸クロリド(0.22 mmol, 51,4 mg), CH2Cl2 (1.0 mL) を加え, 氷浴でかき混ぜた。そこへAlCl3 (0.44 mmol, 53.3 mg) を加え数分かき混ぜた。さらに, 2,7-ジメトキシナフタレン (0.20 mmol, 37.6 mg)を加え, 6時間かき混ぜた。反応終了後, 反応溶液を氷水にあけクロロホルムで抽出し(10 mL×3), 2M水酸化ナトリウム水溶液(10 mL×3),飽和食塩水 (10 mL×3) で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ, エバポレーターで溶媒留去した。得られた粗生成物は,クロロホルム/ヘキサン混合溶媒より再結晶(白色, 針状)して精製した(収率 86%)。その後, 1H-NMRスペクトルにより構造確認およびX線結晶構造解析を行い、目的化合物が得られたことを確認した。
【0036】
【化11】

【0037】
次いで、三方コックを付した10 mL一口ナスフラスコを減圧加熱乾燥後窒素置換し, 4-フルオロ安息香酸クロリド(0.44 mmol, 69.8 mg), CH2Cl2 (0.25 mL) を加え室温でかき混ぜた。そこへTiCl4 (1.8 mmol, 0.3414 g) を入れ, 数分かき混ぜた。さらに, 1-(4-ブロモメチルベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレン(0.20 mmol, 77.1 mg)のCH2Cl2 (0.5 mL) 溶液を加え, 3時間かき混ぜた。反応終了後, 反応溶液を氷水にあけてクロロホルムで抽出(10 mL×3), 有機層を2M水酸化ナトリウム水溶液 (10 mL×3),飽和食塩水 (10 mL×3) で洗浄後, 無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。エバポレーターで溶媒を留去した後, 得られた粗生成物はEtOHより再結晶(収率 65%, 黄色, 針状)またはEt2O/ヘキサン混合溶媒を用いて精製した(収率 83%)。その後, 1H-NMRスペクトル, 13C-NMRスペクトル, IR, 元素分析により構造確認を行った。さらに融点測定およびX線結晶構造解析を行った。結果を以下に示す。
【0038】
【化12】

【0039】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) : 3.70 (6H, s), 4.50 (2H, s), 7.00 (2H, t, J= 8.4, 8.4 Hz), 7.21 (2H, d, J= 9.0 Hz), 7.34 (2H, d, J= 7.2 Hz), 7.61〜7.72 (4H, m), 7.96 (2H, d, J=9.0 Hz) ppm
13C-NMR (300 MHz, CDCl3) : 32.676, 56.355, 56.388, 111.104, 111.162, 115.002, 115.291, 120.887, 120.977, 125.453, 128.758, 129.483, 129.755, 131.584, 131.700, 132.268, 138.433, 141.994, 156.243, 156.383, 167.196, 195.465, 196.256 ppm
IR (KBr) : 1664 (C=O), 1608, 1510 (Ar), 1268 (Ar-O), 1044 (O-Me) cm-1
C27H20BrFO4 ; Anal. Calcd for C, 63.92; H, 3.97
Found C, 63.72; H, 4.16
m.p.=151.9〜152.4℃
実施例2
1-(4-ブロモメチルベンゾイル)-8-(4-フルオロベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレンの合成(経路2)
【0040】
【化13】

【0041】
三方コックを付した10 mL一口ナスフラスコを減圧加熱乾燥後窒素置換し, 4-フルオロ安息香酸クロリド(0.44 mmol, 69.8 mg), CH2Cl2 (1.0 mL) を加え, 氷浴でかき混ぜた。そこへAlCl3 (0.48 mmol, 64.0 mg) を入れ, 数分かき混ぜた。さらに, 2,7-ジメトキシナフタレン(0.40 mmol, 75.3 mg)を加え, 3時間かき混ぜた。反応溶液を氷水にあけてクロロホルムで抽出(20 mL×3), 有機層を2M 水酸化ナトリウム水溶液(20 mL×3),飽和食塩水 (20 mL×3) で洗浄後, 無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。エバポレーターで溶媒を留去した後, Et2Oより再結晶(無色, 針状)またはエタノール/ヘキサンを用いて精製した(収率 79%)。得られた生成物は, 1H-NMRスペクトルで構造確認およびX線結晶構造解析を行い、目的化合物が得られたことを確認した。
【0042】
【化14】

【0043】
次いで、三方コックを付した10 mL一口ナスフラスコを減圧加熱乾燥後窒素置換し, 4-ブロモメチル安息香酸(0.22 mmol, 47.3 mg),五酸化二リン−メタンスルホン酸 (0.44 mL) を入れ, 60oCで完全に溶解するまでかき混ぜた。その後, 1-(4-フルオロベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレン(0.20 mmol, 62.1 mg)を入れ1時間かき混ぜた。反応溶液を氷水にあけてクロロホルムで抽出(10 mL×3), 有機層を2M水酸化ナトリウム水溶液(10 mL×3),飽和食塩水 (10 mL×3)で洗浄後, 無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。エバポレーターで溶媒を留去し, 粗生成物を得た(収率 89%)。その後, シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)より精製し(収率 26%), 1H-NMRスペクトル, 13C-NMRスペクトル, IR, 元素分析により構造確認を行った。さらに融点測定およびX線結晶構造解析を行った。結果は実施例1と同様であった。
【0044】
実施例3
1-(4-フルオロベンゾイル)-8-(4-ヒドロキシメチルベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレンの合成
【0045】
【化15】

【0046】
ジムロー冷却管を付した30 mL一口ナスフラスコに,実施例1で得た1-(4-ブロモメチルベンゾイル)-8-(4-フルオロベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレン(0.20 mmol, 0.1015 g), 1,4-ジオキサン(4.0 mL)を加えて溶液にした。さらに1.3M炭酸カルシウム水溶液(3.2 mL) を加え, 12時間加熱還流させた。反応終了後, 反応溶液に2M塩酸水溶液をかき混ぜながら徐々に加えて均一な溶液としてから, 水(15.0 mL)を加えた。析出した固体を吸引ろ集した(収率 91%)。得られた生成物は, 1H-NMRスペクトル, 13C-NMRスペクトル, IR, 元素分析により構造確認を行った。さらに融点測定を行った。結果を以下に示す。
【0047】
【化16】

【0048】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) : 3.68 (3H, s), 3.69 (3H, s), 4.74 (2H, s), 7.00 (2H, t, J= 8.7, 8.7 Hz), 7.20 (1H, d, J= 9.0 Hz), 7.21 (1H, d, J= 9.0 Hz), 7.34 (2H, d, J= 8.4 Hz), 7.67〜7.73 (4H, m), 7.95 (2H, d, J=9.0 Hz) ppm
13C-NMR (300 MHz, CDCl3) : 56.339, 56.367, 64.853, 111.058, 111.077, 111.191, 114.995, 120.888, 121.202, 125.483, 126.189, 129.364, 129.783, 131.595, 131.690, 132.138, 132.253, 132.291, 137.869, 145.706, 156.185, 156.309, 195.458, 196.640 ppm
IR (KBr) : 3442 (OH), 1660 (C=O), 1608, 1596, 1509 (Ar), 1267, 1236 (Ar-O), 1044 (O-Me) cm-1
MS (FAB) : C27H22FO5 ; Exact Mass, 444.1373
[m/z + H+], 445.1484, +3.2 mmu
m.p.= 156.9〜158.8℃
実施例4
1-(4-カルボキシベンゾイル)-8-(4-フルオロベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレンの合成
【0049】
【化17】

【0050】
ジムロー冷却管を付した30 mL二口ナスフラスコに10 mL滴下ロートを付し,実施例3で得た 1-(4-フルオロベンゾイル)-8-(4-ヒドロキシメチルベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレン(0.078 mmol, 34.7 mg), アセトン(3.0 mL)を加え加熱還流させた。さらに,過マンガン酸カリウム水溶液 (0.470 mmol, 74.0 mg/1.60 mL) を徐々に滴下し, さらに6時間加熱還流した。反応終了後, 反応溶液をろ過し, ろ液に2M硫酸水溶液を酸性になるまで加え, さらに水(20.0 mL)を加えた。析出した固体を吸引ろ集した(収率 89%)。得られた生成物は, 1H-NMRスペクトル, 13C-NMRスペクトル, IR, 元素分析により構造確認を行った。さらに融点測定を行った。結果を以下に示す。
【0051】
【化18】

【0052】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) : 3.67 (3H, s), 3.71 (3H, s), 4.74 (2H, s), 7.04 (2H, t, J= 8.7, 8.7 Hz), 7.21 (1H, d, J= 9.0 Hz), 7.22 (1H, d, J= 9.0 Hz), 7.74 (2H, q, J= 5.7, 3.0, 5.7 Hz), 7.80 (2H, d, J= 8.7 Hz), 8.01 (2H, d, J= 9.0 Hz), 8.10 (2H, d, J=8.7 Hz) ppm
13C-NMR (300 MHz, CDCl3) : 56.291, 56.329, 77.200, 111.058, 111.134, 115.129, 115.348, 120.497, 120.688, 125.521, 128.868, 130.012, 131.690, 131.786, 132.367, 132.453, 132.634, 142.569, 156.404, 156.604, 170.649, 1969.058, 196.930 ppm
IR (KBr) : 3443 (OH), 1689, 1662 (C=O), 1611, 1595, 1509 (Ar), 1267 (Ar-O), 1233 (O-Me) cm-1
MS (FAB) : C27H19FO6 ; Exact Mass, 458.1166
[m/z + H+], 459.1255, +1.1 mmu
m.p.= 247.9〜249.7≡C
実施例5
1-(4-フルオロベンゾイル)-8-(4-メトキシカルボニルベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレンの合成
【0053】
【化19】

【0054】
ジムロー冷却管を付した10 mL一口ナスフラスコに,実施例4で得た 1-(4-カルボキシベンゾイル)-8-(4-フルオロベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレン(0.20 mmol, 91.7 mg), MeOH (2.0 mL) 加えた。加熱還流後, 濃硫酸を一滴加えてさらに6時間加熱還流した。反応終了後, 反応溶液に水(5.0 mL)を加えクロロホルムで抽出し(10 mL×3),飽和食塩水 (10 mL×3) で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ, エバポレーターで溶媒留去して生成物を得た(収率 84%)。得られた生成物は, 1H-NMRスペクトル, 13C-NMRスペクトル, IR, 元素分析により構造確認を行った。さらに融点測定を行った。結果を以下に示す。
【0055】
【化20】

【0056】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) : 3.66 (3H, s), 3.70 (3H, s), 3.93 (3H, s), 7.02 (2H, t, J= 8.7 Hz, 8.7 Hz), 7.20 (1H, d, J= 9.0 Hz), 7.21 (1H, d, J= 9.0 Hz), 7.70 (2H, q, J= 2.7, 6.0, 2.7 Hz), 7.76 (2H, d, J= 8.7 Hz), 8.01 (1H, d, J= 9.0 Hz), 8.02 (1H, d, J= 9.0 Hz), 8.03 (2H, d, J=8.7 Hz) ppm
13C-NMR (300 MHz, CDCl3) : 52.315, 56.281, 56.329, 77.210, 111.067, 111.124, 115.081, 115.300, 120.525, 120.620, 120.745, 125.521, 128.820, 128.859, 129.364, 132.396, 132.548, 133.302, 141.930, 156.366, 156.547, 166.596, 195.801, 196.630 ppm
IR (KBr) : 1723 (C=O), 1668 (C=O), 1606, 1596, 1510 (Ar), 1269 (Ar-O), 1231 (O-Me) cm-1
MS (FAB) : C28H21FO6 ; Exact Mass, 472.1322
[m/z + H+], 473.1365, -3.6 mmu
m.p.= 89.4〜92.1℃
実施例6
1-(4-カルボキシベンゾイル)-8-(4-ヒドロキシベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレンの合成
【0057】
【化21】

【0058】
ジムロー冷却管を付した10 mL一口ナスフラスコに実施例4で得た1-(4-カルボキシベンゾイル)-8-(4-フルオロベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレン(0.30 mmol, 0.1375 g)を入れ, DMSO (0.50 mL) に溶かした。18M水酸化ナトリウム水溶液 (3.0 mmol, 0.1200 g/0.60 mL)を加え, 120oCで12時間かき混ぜた。反応溶液に水(5.0 mL)を入れ反応溶液を均一にしてから, 2M塩酸水溶液 (20.0 mL) に滴下し, 析出した固体を吸引ろ集した(収率 97%)。得られた生成物はクロロホルムで洗浄し(収率 88%), 1H-NMRスペクトル, 13C-NMRスペクトル, IR, 元素分析により構造確認を行った。さらに融点測定を行った。結果を以下に示す。
【0059】
【化22】

【0060】
1H-NMR (300 MHz, (CD3)2SO2) : 3.52 (3H, s), 3.57 (3H, s), 6.62 (2H, br s), 7.27 (2H, br s), 7.38 (2H, d, J= 9.0 Hz), 7.50 (2H, d, J= 7.5 Hz) 7.86 (2H, d, J= 7.5 Hz), 8.09 (1H, d, J=9.0 Hz), 8.10 (1H, d, J=9.0 Hz), 10. (1H, s) ppm
13C-NMR δ (300 MHz, (CD3)2SO2) : 56.346, 56.370, 79.175, 111.631, 111.829, 114.787, 119.922, 120.664, 124.908, 128.526, 128.757, 129.062, 130.117, 131.345, 132.029, 132.515, 133.834, 141.268, 155.682, 155.954, 161.905, 166.850, 195.036 ppm
IR (KBr) : 3347 (OH), 1666 (C=O), 1606, 1574, 1510 (Ar), 1269 (Ar-O), 1233 (O-Me) cm-1
MS (FAB) : C27H21O7 ; Exact Mass, 456.1209
[m/z + H+], 457.1297, +1.0 mmu
m.p.= 256.6〜262.9℃
実施例7
1-(4-カルボキシベンゾイル)-8-(4-ヒドロキシベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレンの合成
【0061】
【化23】

【0062】
ジムロー冷却管を付した10 mL一口ナスフラスコに実施例5で得た1-(4-フルオロベンゾイル)-8-(4-メトキシカルボニルベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレン(0.30 mmol, 0.1417 g)を入れ, DMSO (0.50 mL) に溶かした。18M水酸化ナトリウム水溶液(3.0 mmol, 0.1200 g/0.60 mL)を加え, 120℃で12時間かき混ぜた。反応溶液に水(5.0 mL)を入れ反応溶液を均一にしてから, 2M塩酸水溶液 (20.0 mL) に滴下し, 析出した固体を吸引ろ集した(収率 92%)。得られた生成物はクロロホルムで洗浄し(収率 78%), 1H-NMRスペクトル, 13C-NMRスペクトル, IR, 元素分析により構造確認を行った。さらに融点測定を行った。結果は実施例6と同様であった。
実施例8
1-(4-ヒドロキシベンゾイル)-8-(4-メトキシカルボニルベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレンの合成
【0063】
【化24】

【0064】
ジムロー冷却管を付した10 mL一口ナスフラスコに,実施例7で得た 1-(4-カルボキシベンゾイル)-8-(4-ヒドロキシベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレン(0.20 mmol, 91.7 mg), MeOH (2.0 mL) 加えた。加熱還流後, 濃硫酸を一滴加えてさらに6時間加熱還流した。反応終了後, 反応溶液に水(5.0 mL)を加え, 析出した固体を吸引ろ集した(収率 90%)。得られた生成物はクロロホルムで洗浄し, 1H-NMRスペクトル, 13C-NMRスペクトル, IR, 元素分析により構造確認を行った。さらに融点測定およびMeOHによる結晶化を行った。結果を以下に示す。
【0065】
【化25】

【0066】
1H-NMR (300 MHz, (CD3)2SO2) : 3.52 (3H, s), 3.70 (3H,s), 3.87 (3H,s), 6.80 (2H, d, J= 7.8 Hz), 7.32 (2H, d, J= 7.8 Hz), 7.44 (2H, d, J= 9.0 Hz), 7.58 (2H, d, J= 8.4 Hz), 7.93 (2H, d, J= 8.4 Hz), 8.15 (1H, d, J=9.0 Hz), 8.16 (1H, d, J=9.0 Hz) ppm
13C-NMR (300 MHz, (CD3)2SO2) : 39.723, 52.390, 56.206, 111.466, 111.655, 114.738, 119.469, 120.276, 122.790, 124.694, 128.576, 128.897, 129.054, 129.837, 132.111, 132.532, 141.325, 155.600, 155.897, 156.770, 161.789, 165.894, 195.143 ppm
IR (KBr): 3229 (OH), 1719, 1649 (C=O), 1607, 1583, 1510 (Ar), 1272 (O-Me) cm-1
MS (FAB) : C28H23O7 ; Exact Mass, 470.1366
[m/z + H+], 471.1488, +4.4 mmu
m.p.= 152.5〜153.5℃
実施例9
1-(4-アセトキシベンゾイル)-8-(4-カルボキシベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレンの合成
【0067】
【化26】

【0068】
(ここでAcはアセチル基を表す)
三方コックを付した10 mL一口ナスフラスコを減圧加熱乾燥後窒素置換し, 実施例7で得た1-(4-カルボキシベンゾイル)-8-(4-ヒドロキシベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレン(0.20 mmol, 91.7 mg),無水酢酸(0.50 mL) を入れて, 室温で数分かき混ぜた。そこへ濃硫酸を一滴加え, さらに30分間かき混ぜた。反応溶液に2M水酸化ナトリウム水溶液で中和し, さらに水(5.0 mL)を加え, 析出した固体を吸引ろ集した(収率 96%)。得られた生成物は1H-NMRスペクトル, 13C-NMRスペクトル, IR, 元素分析により構造確認を行った。結果を以下に示す。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) : 2.30 (3H, s), 3.68 (3H, s), 3.71 (3H, s), 7.10 (2H, t, J= 8.4 Hz), 7.21 (1H, d, J= 9.0 Hz), 7.23 (1H, d, J= 9.0 Hz), 7.72 (2H, d, J= 8.4 Hz), 7.79 (2H, d, J= 8.1 Hz), 7.97 (1H, d, J= 9.0 Hz), 7.98 (1H, d, J= 9.0 Hz) 8.09 (2H, d, J=8.1 Hz) ppm
【0069】
【化27】

【0070】
(ここでAcはアセチル基を表す)
13C-NMR (300 MHz, CDCl3) : 21.295, 56.297, 56.346, 77.165, 110.956, 111.162, 120.508, 120.714, 121.117, 125.461, 128.856, 129.977, 130.068, 130.735, 132.540, 136.125, 142.521, 154.133, 156.507, 156.548, 168.779, 170.889, 181.628, 196.512 ppm
IR (KBr) : 3527 (OH), 1696, 1673 (C=O), 1611, 1596 , 1511 (Ar), 1267, 1231 (Ar-O), 1198, 1159 (O-Me) cm-1
MS (FAB) : C28H23O8 ; Exact Mass, 498.1315
[m/z + H+], 499.1427, +3.4 mmu
m.p.= 243.7〜244.4℃
実施例10
1-(4-ブロモメチルベンゾイル)-8-(4-ニトロベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレンの合成
【0071】
【化28】

【0072】
三方コックを付した30 mL一口ナスフラスコを減圧加熱乾燥後窒素置換し, 4-ニトロ安息香酸 (8.8 mmol, 1.4706 g),五酸化二リン−メタンスルホン酸(17.6 mL)を入れ, 40oCで30分かき混ぜた。そこへ, 2,7-ジメトキシナフタレン(4.0 mmol, 0.7529 g)を加え, さらに30分かき混ぜた。反応溶液を氷水にあけてクロロホルムで抽出(10 mL×3), 有機層を2M水酸化ナトリウム水溶液(10 mL×3),飽和食塩水 (10 mL×3)で洗浄後, 無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。エバポレーターで溶媒を留去し, 粗生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン), 再結晶(Et2O)により精製した(収率 34%, 黄色, 針状)。その後, 1H-NMRスペクトルにより構造確認を行い、目的化合物が得られたことを確認した。
【0073】
【化29】

【0074】
次いで、三方コック, 窒素風船を付した10 mL一口ナスフラスコを減圧乾燥後, 1-(4-ニトロベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレン(0.2 mmol, 67 mg), 4-ブロモメチル安息香酸(0.22 mol, 47 mg), 五酸化二リン−メタンスルホン酸(0.44 mL)を入れ, 60≡Cで1.5時間かき混ぜた。反応溶液を氷にあけ, クロロホルム(5.0 mL×3)で抽出し, 2.0 M水酸化ナトリウム水溶液(10 mL×3), 飽和食塩水(10 mL×3)で順次洗浄した後に, 無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒をエバポレーターにより留去し, 粗生成物を得た。粗生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフ(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)により精製した(単離収率82%)。
【0075】
得られた生成物は1H-NMRスペクトル, 13C-NMRスペクトル, IR, 元素分析により構造確認を行った。結果を以下に示す。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 3.68 (3H, s), 3.71 (3H, s), 4.50 (2H, s) 7.20-7.23 (2H, m), 7.38 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.66 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.86 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.98-8.02 (2H, m), 8.21 (2H, d, J = 8.4 Hz);
13C NMR (75 MHz, CDCl3)δ≡197.0 195.7 156.7 150.0 143.2 142.3 141.9 138.4 133.0 132.6 130.0 129.8 129.5 128.8 125.5 123.4 120.7 119.9 111.3 110.9 56.4 56.3 32.5;
IR (KBr): 1668, 1608, 1512, 1345, 1270, 1229. Elemental anal. calcd (%) for C27H20BrNO6: C, 60.69; H, 3.77. Found: C, 60.63; H, 3.78.
実施例11
1-(4-ヒドロキシメチルベンゾイル)-8-(4-ニトロベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレンの合成
【0076】
【化30】

【0077】
アリーン冷却管, 塩化カルシウム管を付した10 mL一口ナスフラスコを減圧乾燥後,実施例10で得た1-(4-ブロモメチルベンゾイル)-8-(4-ニトロベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレン(0.10 mmol, 54 mg), 1,4-ジオキサン(2.0 mL)を入れ, そこへ0.50 M炭酸カルシウム水溶液(2.0 mL)を加え, 加熱還流下16時間かき混ぜた。反応溶液に塩酸を加え酸性とし, クロロホルム(5.0 mL×3)で抽出し, 飽和食塩水(10 mL×3)で洗浄した後に, 無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒をエバポレーターにより留去し, 生成物を得た(単離収率95%)。
得られた生成物は1H-NMRスペクトル, 13C-NMRスペクトル, IR, 元素分析により構造確認を行った。結果を以下に示す。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ≡3.65 (3H, s), 3.67 (3H, s), 4.54 (2H, d, J = 5.7 Hz), 5.34 (1H, t, J = 5.7 Hz), 7.31 (2H, d, J = 9.0 Hz), 7.46 (4H, m), 7.74 (2H, d, J = 9.0 Hz), 8.19≡8.24 (4H, m);
13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) ≡≡56.3, 56.4, 62.6, 66.3, 111.6, 111.9, 118.9, 119.9, 123.5, 124.9, 125.9, 128.7, 129.7, 132.6, 133.1, 136.7, 142.6, 148.0, 149.6, 156.2, 156.3, 194.9, 196.3;
IR (KBr): 1667, 1608, 1513, 1346, 1269, 1232.
実施例12
1-(4-カルボキシベンゾイル)-8-(4-ニトロベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレンの合成
【0078】
【化31】

【0079】
ジムロー冷却管, 塩化カルシウム管, 滴下漏斗を付した30 mL二口ナスフラスコを減圧乾燥後,実施例11で得た 1-(4-ヒドロキシメチルベンゾイル)-8-(4-ニトロベンゾイル)-2,7-ジメトキシナフタレン(0.30 mmol, 0.14 g), アセトン(3.6 mL)を入れ, 加熱還流下かき混ぜた。次いで, 過マンガン酸カリウム(0.93 mmol, 0.15 g)の水(2.4 mL)溶液を30分かけて滴下し, 加熱還流下8時間かき混ぜた。反応溶液から固体をろ去し, 得られたろ液に塩酸を加え, 析出した固体を吸引ろ集し, 生成物を得た(単離収率85%)。
得られた生成物は1H-NMRスペクトル, 13C-NMRスペクトル, IR, 元素分析により構造確認を行った。結果を以下に示す。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ≡3.66 (6H, s), 7.51 (2H, d, J = 9.0 Hz), 7.62 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.76 (2H, d, J = 8.7 Hz), 7.93 (2H, d, J = 8.4 Hz), 8.22≡8.27 (4H, m);
13C NMR (75 MHz, DMSO-d6)δ≡56.4, 56.5, 111.8, 112.0, 118.8, 119.4, 123.6, 125.0, 128.2, 128.7, 128.9, 129.0, 129.3, 129.8, 133.1, 133.3, 140.9, 142.6, 149.7, 156.6, 156.6, 195.4, 196.6;
IR (KBr) 1717, 1670, 1609, 1513, 1346, 1270. Elemental anal. calcd (%) for C27H19NO8: C, 66.80; H, 3.95. Found: C, 66.60; H, 3.91.
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の非対称型の2,7−ジメトキシナフタレン化合物は反応性に富み、各種芳香族ポリマーへの応用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示されるジメトキシナフタレン骨格を有する化合物。
【化32】

(式中、R1及びR2は、OH、ハロゲン、NO2、NH2、COOR3、OCOCH3及びCH24から選ばれる基であり、R1とR2が同一であることはない。また、R3はHまたはCH3であり、R4はハロゲンまたはOHである。また、Meはメチル基を示す。)
【請求項2】
下記一般式(II)
【化33】

(式中、Meはメチル基を示す。)
で示される2,7−ジメトキシナフタレンと下記一般式(III)
【化34】

(式中、R1は、OH、ハロゲン、NO2、NH2、COOR3、OCOCH3及びCH24から選ばれる基であり、R3はHまたはCH3であり、R4はハロゲンまたはOHである。)
で示される化合物とをAlCl3、SbCl5、FeCl3、TeCl2、SnCl4、TiCl4、TeCl4、BiCl3及びZnCl2より選ばれる強ルイス酸(a)の存在下に反応させることにより下記一般式(IV)
【化35】

で示される化合物を得て、次いで下記一般式(V)
【化36】

(式中、R2は、OH、ハロゲン、NO2、NH2、COOR3、OCOCH3及びCH24から選ばれる基であり、R3はHまたはCH3であり、R4はハロゲンまたはOHである。)
で示される化合物とを上記強ルイス酸(a)より相対的に弱いルイス酸(b)の存在下に反応させるか、下記一般式(VI)
【化37】

(式中、R2は、OH、ハロゲン、NO2、NH2、COOR3、OCOCH3及びCH24から選ばれる基であり、R3はHまたはCH3であり、R4はハロゲンまたはOHである。)
で示される化合物とをリン酸系の酸性縮合剤の存在下で直接縮合反応させることを特徴とする下記一般式(I)で示されるジメトキシナフタレン骨格を有する化合物の製造方法。
【化38】

(式中、R1及びR2は、上記の通りであり、R1とR2が同一であることはない。また、Meはメチル基を示す。)

【公開番号】特開2010−180173(P2010−180173A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26413(P2009−26413)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】