説明

ジャガイモ抽出物を含有する食品の呈味改善方法

【課題】 呈味が改善されたジャガイモ抽出物を含有する食品を提供すること。
【解決手段】 本発明者らは、ジャガイモ抽出物に、高甘味度甘味料、香料、植物粉砕物または抽出物、香辛料、酸味料、調味料及び糖類の中から選ばれる1以上を添加した場合に、ジャガイモ抽出物が有する特有の好ましくない味を抑制することができ、ジャガイモ抽出物を含有する食品の呈味の好ましさが大きく改善されることを見出した。すなわち、本発明の呈味改善方法により、呈味が改善されたジャガイモ抽出物を含有する食品を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャガイモ抽出物を含有する食品の呈味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナス科に属するジャガイモ(馬鈴薯)は、古来より多くの人々に食されてきた植物である。近年、ジャガイモ抽出物が健康に寄与する様々な作用を有することが明らかにされてきており、ジャガイモ抽出物の健康食品としての需要が高まりつつある。ジャガイモ抽出物の作用としては、例えばコラーゲン産生促進作用(特許文献1)や、飽満の延長作用(特許文献2)、肥満抑制作用(特許文献3)等が知られている。しかし、ジャガイモ抽出物は特有の好ましくない味を呈するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−263689号公報
【特許文献2】特開2005−336208号公報
【特許文献3】特開2008−174539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ジャガイモ抽出物が有する特有の好ましくない味を抑制し、呈味が改善されたジャガイモ抽出物を含有する食品を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次の(A)〜(G)の群の中から選ばれる少なくとも1以上を添加することを特徴とする、ジャガイモ抽出物を含有する食品の呈味改善方法であって、(A)〜(G)がそれぞれ(A)スクラロース、アスパルテーム、ステビア、甘草、ソーマチン、ネオテーム、サッカリン及びアセスルファムKの中から選ばれる1以上の高甘味度甘味料、(B)スイートポテト香料、コーン香料、ヨーグルト香料、メントール香料、ミルク香料、炭火焼風味香料、チョコレート香料、コーヒー香料、ラズベリー香料及びグレープフルーツ香料の中から選ばれる1以上の香料、(C)サツマイモ、大豆、コーン、ニンジン、コーヒー、カカオ種子及びトマトの中から選ばれる1以上の植物粉砕物または抽出物、(D)カレーパウダー及び胡椒の中から選ばれる1以上の香辛料、(E)クエン酸及びビタミンCの中から選ばれる1以上の酸味料、(F)グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム及びグアニル酸ナトリウムの中から選ばれる1以上の調味料、(G)麦芽糖、デキストリン、澱粉、乳糖、ショ糖及びブドウ糖の中から選ばれる1以上の糖類である呈味改善方法に関するものであり、この方法により呈味が改善されたジャガイモ抽出物を含有する食品に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ジャガイモ抽出物を含有する食品の呈味を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、下記実施形態の記載により限定して解釈するべきでなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0008】
本発明に用いられるジャガイモ抽出物としては、使用されるジャガイモの品種は特に限定されず、例えば男爵薯、メークイン、キタアカリ、とうや、トヨシロ、インカのめざめ、デジマ、十勝こがね等を用いることができる。
【0009】
本願発明のジャガイモ抽出物の製造方法としては、特に制限されるものではなく、通常食品の製造において使用可能な抽出方法、抽出溶媒、製造助剤等の添加を行うことができる。抽出方法としては搾汁により搾汁液を回収する方法であってもよい。また、得られた抽出液を常法により乾燥して使用することができる。乾燥方法としては賦型剤を添加しスプレードライ等により乾燥する方法であってもよい。
【0010】
本願発明に用いるジャガイモ抽出物としては、特に制限されるものではなく、エキス、エキスの乾燥粉末等であってもよい。
【0011】
本発明のジャガイモ抽出物を含有する食品としては、特に限定されるものではなく、例えばパン、チューインガム、チョコレート、シリアル等の固形食品、ジャム、アイスクリーム、ヨーグルト、クリーム状またはゲル状食品、青汁、ジュース、コーヒー、ココア、茶等の飲料、粉末飲料、錠剤、カプセル等のあらゆる食品形態にすることが可能である。また、調味料、食品添加物等に配合することもできる。
【0012】
本発明に用いられる高甘味度甘味料としては、スクラロース、アスパルテーム、ステビア、甘草、ソーマチン、ネオテーム、サッカリンまたはアセスルファムKが挙げられる。中でもスクラロースまたはアスパルテームが好ましい。
【0013】
本発明に用いられる香料としては、スイートポテト香料、コーン香料、ヨーグルト香料、メントール香料、ミルク香料、炭火焼風味香料、チョコレート香料、コーヒー香料、ラズベリー香料またはグレープフルーツ香料が挙げられる。中でもスイートポテト香料、コーン香料、ヨーグルト香料、メントール香料、ミルク香料または炭火焼風味香料が好ましい。
【0014】
本発明に用いられる植物粉砕物または抽出物としては、サツマイモ、大豆、コーン、ニンジン、コーヒー、カカオ種子またはトマトの粉砕物または抽出物が挙げられる。中でもサツマイモ、コーンまたは大豆の粉砕物または抽出物が好ましい。
【0015】
本発明に用いられる大豆の粉砕物または抽出物としては、特に制限されるものではなく、通常入手可能な大豆の粉砕物または抽出物が用いられる。中でもきな粉が好ましい。
【0016】
本発明に用いられる香辛料としては、カレーパウダーまたは胡椒が挙げられる。中でもカレーパウダーが好ましい。
【0017】
本発明に用いられる酸味料としては、クエン酸またはビタミンCが挙げられる。中でもクエン酸が好ましい。
【0018】
本発明に用いられる調味料としては、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウムまたはグアニル酸ナトリウムが挙げられる。中でもグルタミン酸ナトリウムが好ましい。
【0019】
本発明に用いられるグルタミン酸ナトリウムとしては、グルタミン酸ナトリウムの他、グルタミン酸ナトリウムを含むチキンエキス等の調味料を使用することもできる。
【0020】
本発明に用いられる糖類としては、麦芽糖、デキストリン、澱粉、乳糖、ショ糖またはブドウ糖が挙げられる。中でも麦芽糖が好ましい。
【実施例】
【0021】
(ジャガイモ抽出物の製造)
生のジャガイモを粉砕、搾汁し、ジャガイモエキスを作成した。ジャガイモエキスがpH4を示すように塩酸を用いてpH調整し、得られたエキスを80℃に加熱、中和しフィルターろ過を行った。さらに得られたエキスを分子透過膜で処理し、分子量1万以上の画分を抽出、抽出物にデキストリンを添加して乾燥しジャガイモ抽出物とした。
【0022】
(調製例1)
麦芽糖(サンマルトS、株式会社林原商事製)67.4g、スクラロース(サンスイートSU−100、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.3g、アスパルテーム(PAL SWEET DIET、味の素株式会社製)0.3g、サツマイモパウダー(焼きいもパウダーNo.16209、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)10g、スイートポテト香料(スイートポテトNo.6041DP、日本香料薬品株式会社製)2g、ジャガイモ抽出物20gを混合(合計100g)したものを調製例1とした。
【0023】
(調製例2)
麦芽糖(サンマルトS、株式会社林原商事製)65.4g、スクラロース(サンスイートSU−100、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.3g、アスパルテーム(PAL SWEET DIET、味の素株式会社製)0.3g、コーンパウダー(スーパースイートコーンパウダーUS、クノールトレーディング株式会社製)10g、コーン香料(コーンNo.6241CP、日本香料薬品株式会社製)2g、グルタミン酸ナトリウムを含むチキンエキス(チキンコンソメC−770、富士食品工業株式会社製)2g、ジャガイモ抽出物20gを混合(合計100g)したものを調製例2とした。
【0024】
(調製例3)
麦芽糖(サンマルトS、株式会社林原商事製)75g、カレーパウダー(カレースープパウダーFL−B6823、稲畑香料株式会社製)5g、ジャガイモ抽出物20gを混合(合計100g)したものを調製例3とした。
【0025】
(調製例4)
麦芽糖(サンマルトS、株式会社林原商事製)73.4g、スクラロース(サンスイートSU−100、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.3g、アスパルテーム(PAL SWEET DIET、味の素株式会社製)0.3g、クエン酸(クエン酸(無水)P、昭和化工株式会社製)4g、ヨーグルト香料(ヨーグルトパーフェクトコートンOGF01415、小川香料株式会社製)2g、ジャガイモ抽出物20gを混合(合計100g)したものを調製例4とした。
【0026】
(調製例5)
麦芽糖(サンマルトS、株式会社林原商事製)77.4g、スクラロース(サンスイートSU−100、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.3g、アスパルテーム(PAL SWEET DIET、味の素株式会社製)0.3g、メントール香料(メントールコートンCL80089、小川香料株式会社製)2g、ジャガイモ抽出物20gを混合(合計100g)したものを調製例5とした。
【0027】
(調製例6)
麦芽糖(サンマルトS、株式会社林原商事製)75g、グルタミン酸ナトリウムを含むチキンエキス(チキンコンソメC−770、富士食品工業株式会社製)5g、ジャガイモ抽出物20gを混合(合計100g)したものを調製例6とした。
【0028】
(調製例7)
麦芽糖(サンマルトS、株式会社林原商事製)77.4g、スクラロース(サンスイートSU−100、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.3g、アスパルテーム(PAL SWEET DIET、味の素株式会社製)0.3g、ミルク香料(ミルクパーフェクトコートンOGF01412、小川香料株式会社製)2g、ジャガイモ抽出物20gを混合(合計100g)したものを調製例7とした。
【0029】
(調製例8)
麦芽糖(サンマルトS、株式会社林原商事製)69.4g、スクラロース(サンスイートSU−100、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.3g、アスパルテーム(PAL SWEET DIET、味の素株式会社製)0.3g、きな粉(きな粉(星印)、株式会社向井珍味堂製)10g、ジャガイモ抽出物20gを混合(合計100g)したものを調製例8とした。
【0030】
(調製例9)
麦芽糖(サンマルトS、株式会社林原商事製)76g、グルタミン酸ナトリウムを含むチキンエキス(チキンコンソメC−770、富士食品工業株式会社製)2g、炭火焼風味香料(スミビヤキNo.7231BP、日本香料薬品株式会社製)2g、ジャガイモ抽出物20gを混合(合計100g)したものを調製例9とした。
【0031】
(比較例)
麦芽糖(サンマルトS、株式会社林原商事製)80g、ジャガイモ抽出物20gを混合(合計100g)したものを比較例とした。
【0032】
(効果の検証)
調製例1〜9及び比較例の全てのサンプルを、被験者11人に処方内容が分からない状態で、小さじ半分量ずつ摂取してもらい、呈味の好ましさについて下記の評点で評価してもらった。なお、各サンプルを摂取毎に水で口腔洗浄を行ってもらった。
【0033】
(呈味の好ましさの評点)
呈味の好ましさは以下に記載する通り、0〜2点の3段階で評価してもらった。
0点:継続して摂取することが困難と感じる程度の味
1点:我慢すれば何とか継続して摂取することが可能と感じる程度の味
2点:問題なく継続して摂取することが可能と感じる程度の味
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
表1及び表2に記載の結果から、スクラロース、アスパルテーム、スイートポテト香料、コーン香料、ヨーグルト香料、メントール香料、ミルク香料、炭火焼風味香料、サツマイモパウダー、コーンパウダー、きな粉、カレーパウダー、クエン酸、グルタミン酸ナトリウム及び麦芽糖の中から選ばれる1以上を添加することにより、ジャガイモ抽出物を含有する食品の呈味の好ましさを改善することができることが分かった。中でもスクラロース、アスパルテーム、コーン香料、きな粉、コーンパウダー、グルタミン酸ナトリウム及び麦芽糖の中から選ばれる1以上を添加した場合に、ジャガイモ抽出物を含有する食品の呈味の好ましさが大きく改善された。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のジャガイモ抽出物を含有する食品の呈味改善方法によれば、ジャガイモ抽出物の呈味が改善された食品を提供することができ、人々の快適な食生活と健康に貢献することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)〜(G)の群の中から選ばれる少なくとも1以上を添加することを特徴とする、ジャガイモ抽出物を含有する食品の呈味改善方法であって、(A)〜(G)がそれぞれ(A)スクラロース、アスパルテーム、ステビア、甘草、ソーマチン、ネオテーム、サッカリン及びアセスルファムKの中から選ばれる1以上の高甘味度甘味料、(B)スイートポテト香料、コーン香料、ヨーグルト香料、メントール香料、ミルク香料、炭火焼風味香料、チョコレート香料、コーヒー香料、ラズベリー香料及びグレープフルーツ香料の中から選ばれる1以上の香料、(C)サツマイモ、大豆、コーン、ニンジン、コーヒー、カカオ種子及びトマトの中から選ばれる1以上の植物粉砕物または抽出物、(D)カレーパウダー及び胡椒の中から選ばれる1以上の香辛料、(E)クエン酸及びビタミンCの中から選ばれる1以上の酸味料、(F)グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム及びグアニル酸ナトリウムの中から選ばれる1以上の調味料、(G)麦芽糖、デキストリン、澱粉、乳糖、ショ糖及びブドウ糖の中から選ばれる1以上の糖類である呈味改善方法。
【請求項2】
請求項1の方法により、呈味が改善された食品。

【公開番号】特開2010−172304(P2010−172304A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20518(P2009−20518)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】