説明

ジャケット吊上げ治具装置

【課題】上空に十分な作業スペースが無くとも、ジャケットを吊上げることを可能とし、また、作業性の向上や危険性の低下、作業時間の短縮、作業の確実性の向上を伴う、ジャケット吊上げ治具装置の仕組みを提供すること。
【解決手段】ジャケット吊上げ治具装置であって、起重機船の吊フックにブロック部と回転自在の回転軸からなるツイストロックピンを取付けたものと、縦横の柱、梁からなる枠体で構成したジャケットよりなる。そして、ジャケット柱の最上端に設けた受台と、受台に開口したツイストロックピンのブロック部の平面投影形状の結合穴とより構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャケットを据え付ける際のジャケットの吊上げ装置に関するものである。

【背景技術】
【0002】
従来のジャケット据付時の吊上げ方法を説明する。吊上げの対象となるジャケットとは、陸上で主に下部構造をあらかじめ製作し、それを設置現場(例えば海底)まで起重機船で搬送して据え付け、上部構造を取り付けるような柱と梁で組み立てられた枠体の事である。
ジャケット(a)は例えば左側が右側に比べ重かったりする等、重量バランスが均等で無い場合が多々ある。そこで、バランスをとるために吊天秤(i)を使用する。(図7参照)
まず、この吊天秤(i)と起重機船(n)のアーム部との結合を説明する。起重機船のアーム部には、フック(f)の付いたフックブロック(b)を取り付ける。そして、アイプレート(c)と呼ばれるフックブロック側と吊天秤側を接続するプレート上に開いている穴をピン(h)で通す。そのピンをフックに引っ掛けてやることでフックブロック(b)とアイプレート(c)を結合する。アイプレート(c)には吊天秤側にも穴が開いており、吊天秤上部から延びた吊金具(g)と、こちらもピン(j)で接続する。(図8、9参照)
また、吊天秤(i)の下部にも吊金具(k)が取り付けられており、ジャケット上面に取り付けられている吊金具(d)と、それぞれ金具に空いた穴を重なるようにし、そこに取り外し可能な重い固定ピン(e)を挿入して結合する。(図8、9参照)
これら一連の作業の中でジャケット側、起重機側の吊治具をピン(e、h、j等)によって結合する際には、主に作業員が手作業でピンを水平に結合する作業を行うことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記した従来のジャケット吊上げ装置および方法にあっては、次のような問題点がある。
<1> ジャケット上部に吊治具を取り付けた場合、ジャケット等の重量物では吊天秤を使用する事などで吊治具が大きくなり、より高い場所から吊下げる必要が生じる。このため作業する際に上空制限(13、m)がある場合は、ジャケットを十分に持ち上げられる程の高さが確保できず、作業が不可能になる事が懸念される。(図1、7参照)
<2> ジャケット側、フック側の吊治具をピンによって結合する場合、主に作業員の手作業で重量の重いピンの挿入作業を行うため作業性が非常に悪くなる。また作業時の危険性として作業員の手足が挟まれたりする事などが懸念される。
<3> 取付金具やピンが数多くあり、またピンの取付け外しが作業員の手によるものである等、作業の効率性が悪いため施工サイクルに及ぼす影響が大きくなる。作業時間に制約がある場合は、限られた時間内での施工が困難になる事が懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記のような課題を解決するために、本発明のジャケット吊上げ治具装置は、起重機船の吊フックに取り付けたブロック部と回転自在の回転軸からなるツイストロックピンと、縦横の柱、梁からなる枠体で構成したジャケットよりなり、ジャケットの柱の最上端に設けた受台と、ツイストロックピンのブロック部の平面投影形状の結合穴とより構成した事を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明のジャケット吊上げ治具装置及びジャケット吊上げ方法は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<1> ジャケット側吊治具をジャケットの縦柱(レグ)内に取付け、その中にツイストロックピンを挿入する構成である。そのためジャケット上部に吊治具が出ないため、吊治具の存在したスペース分だけの高さを縮めることができる。
<2> 請求項2記載の発明によれば油圧機構でツイストロックピンを回転させジャケット側と連結するため、連結ピン挿入作業などの人力による作業が必要なくなる。この為、作業員は確認作業を行うだけとなり、作業性が向上するとともに危険性も無くなる。
<3> 作業性の向上により作業時間の短縮を図ることができ、また人力作業を排除する事で施工サイクル上の不確定要素を排除することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0007】
<1> ツイストロック式吊上げ装置の取付け
最初に、起重機船(12)のアーム部に物を吊下げる吊フックであるフックブロック(1)を取り付ける。そして、そのフックブロック(1)に「ツイストロック式吊上げ装置」(2)を取付ける。(図1、2参照)
【0008】
<2> ツイストロック式吊上げ装置の説明
ツイストロック式吊上げ装置(2)は、ツイストロック装置(4)と、ツイストロックピン(6)から成り立っており、ツイストロック装置(4)の中には油圧機構(5)が内蔵されている。(図4参照)
【0009】
<3>ツイストロックピンの説明
ツイストロックピン(6)はハンマー(金槌)のように、先端が長方形のブロック部分(7)と、ハンマーの柄にあたる回転軸(8)から構成されている。(図4参照)長方形のブロックは長辺(b1)と短辺(b2)を備えている。(図3参照)なお先端部は長方形以外にも、楕円形の他、回転中心を中心として非対称の形状であれば同様の効果が期待できる。
【0010】
<4> 油圧機構の説明
この油圧機構(5)はシリンダー(51)の中に満たされた油の圧力を変化させることにより、油圧機構から伸びるロッド(52)を伸縮する。そして回転軸の中心から偏心した位置に向け往復動を与える事でツイストロックピン(6)を一定の角度(90度)の範囲で回動させる役目を果たす。(図4参照)
【0011】
<5> ツイストロック受台の説明(図3、5、6参照)
一方、吊上げたい、ジャケット(3)のジャケットレグ(9)内に予め、ツイストロック受台(10)を取付けておく。
ツイストロック受台(10)はジャケット(3)の重みに耐えられる様にジャケットレグ(9)にしっかりと固定する。
ツイストロック受台(10)はいわばジャケットレグ(9)内に固定されたある程度厚みを持った蓋のような状態で、その厚みを持った蓋(ツイストロック受台)の中心部には蓋部を貫通する長方形の穴であるツイストロックピン穴(11)を持っている。
この長方形の穴は、ツイストロックピン(6)が挿入できるサイズの大きさで。長方形の短い方の辺の長さ(a2)はb1より短いものとなっている。
また、ツイストロックピンのブロック部をツイストロック受台の底に引っ掛ける必要があるため、ツイストロックピン穴の長方形の辺の長い方の長さ(a1)はブロック部の長辺(b1)より長く、ブロック部の短辺(b2)はツイストロックピン穴の短辺(a2)よりも短くなる。(図3参照)なおツイストロックピンの先端部とツイストロックピン穴の平面投影図が同一であれば、穴、及びツイストロックピン先端部の形状は長方形に限る必要は無い。
【0012】
<6> ジャケットと吊フックの結合
次に、吊上装置とジャケットの結合方法について説明する。
起重機船の吊フックを予めジャケットレグ側吊点の平面位置に合わせておく。つまり、ツイストロックピン先端部の長辺とツイストロックピン穴の長辺を合わせる。
吊フックを降下させてツイストロックピン(6)をツイストロックピン穴(11)に挿入する。(図6参照)
ツイストロックピン(6)のハンマー状の先頭部(7)がツイストロックピン穴(11)を通過しツイストロック受台(10)を通り越したところで、油圧機構によりツイストロックピン(6)を90度回転させて、ツイストロックピンの先端部(7)がツイストロック受台(10)の底に引っ掛かるようにし、ジャケット(3)と吊フックを一体化させる。(図2、6参照)
このツイストロックピン(6)のツイストロック受台(10)への引っ掛かりを利用しジャケット全体(3)を巻き上げて持ち上げる。
【0013】
<7> ジャケットの据付
起重機船(12)でジャケット(3)を据え付けたい場所まで移動し、据え付けたい場所に到着したらジャケット(3)を巻き下ろして海底などに据え付ける。ジャケット(3)裾付完了後、ツイストロックピン(6)を油圧機構(5)により再び90度回転し、フックを巻き上げる事でツイストロックピン(6)をジャケットレグ(9)から抜き出して起重機船の吊フックを開放する。

【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のジャケット吊上げ治具装置を使ったジャケット吊上げ要領の実施例
【図2】本発明のジャケット吊り上げ治具装置付近詳細図
【図3】本発明のツイストロック受台付近の断面図
【図4】本発明のツイストロック式吊上げ装置の実施例
【図5】本発明のツイストロック受台を取付けたジャケットレグ最上端の実施例
【図6】本発明のツイストロック結合後の実施例
【図7】従来のジャケット吊上げ要領の実施例の説明図
【図8】従来の吊治具構造図の説明図
【図9】従来の吊治具実施例の詳細図
【符号の説明】
【0015】
1・・・フックブロック
2・・・ツイストロック式吊上げ装置
3・・・ジャケット(本発明の図)
4・・・ツイストロック装置
5・・・油圧機構
51・・・シリンダー
52・・・ロッド
6・・・ツイストロックピン
7・・・ツイストロックピン先端部
8・・・回転軸
9・・・ジャケットレグ
10・・・ツイストロック受台
11・・・ツイストロックピン穴
12・・・起重機船(本発明の図)
13・・・上空制限高さ(本発明の図)
a1・・・ツイストロックピン穴の長い方の辺の長さ
a2・・・ツイストロックピン穴の短い方の辺の長さ
b1・・・ツイストロックピンの先端部の長い方の辺の長さ
b2・・・ツイストロックピンの先端部の短い方の辺の長さ
a・・・ジャケット(従来図)
b・・・フックブロック
c・・・アイプレート
d・・・ジャケット上側にある吊金具
e・・・固定ピン
f・・・フック
g・・・吊天秤上側にある吊金具
h・・・ピン(アイプレートとフック結合用)
i・・・吊天秤
j・・・ピン(アイプレートと吊天秤結合用)
k・・・吊天秤下側にある吊金具
m・・・上空制限高さ(従来図)
n・・・起重機船(従来図)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起重機船の吊フックに取り付けた、
ブロック部と回転自在の回転軸からなるツイストロックピンと、
縦横の柱、梁からなる枠体で構成したジャケットよりなり、
ジャケットの柱の最上端に設けた受台と、
受台に開口したツイストロックピンのブロック部の平面投影形状の結合穴、
とより構成した
ジャケット吊上げ治具装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−27750(P2006−27750A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204550(P2004−204550)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(599027312)株式会社 吉田組 (5)
【Fターム(参考)】