ジョイント部材
【課題】
薬液や滑剤を供給する流体管を掘進機の位置まで円滑に挿入することを目的とする。
【解決手段】
推進管内に挿入可能な外径を有し、掘進機から推進ジャッキまで順次接続するジョイント部材であって、軸方向に配設された送泥管、排泥管及び流体管と、半径方向に広がる垂直面を備える前部フランジ及び後部フランジと、を備えるジョイント部材。
薬液や滑剤を供給する流体管を掘進機の位置まで円滑に挿入することを目的とする。
【解決手段】
推進管内に挿入可能な外径を有し、掘進機から推進ジャッキまで順次接続するジョイント部材であって、軸方向に配設された送泥管、排泥管及び流体管と、半径方向に広がる垂直面を備える前部フランジ及び後部フランジと、を備えるジョイント部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジン管やヒューム管などを地中に圧入推進して埋設する推進工法に用いられるジョイント部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(発進立坑及び到達立坑の築造)
上記推進工法の一種である泥水式推進工法においては、まず、発進立坑及び到達立坑を築造する。そのために、旋回圧入機で下部マンホール躯体を旋回圧入し、掘削機で土砂を掘削する。次に、下部マンホール躯体の上に中間マンホール躯体を溶接で接続する。さらに、旋回圧入機でこの中間マンホール躯体を旋回圧入し、掘削機で土砂を掘削する。そして、中間マンホール躯体の上に鋼製の円筒状の連結ケーシングを着脱自在に接続する。そして、下部マンホール躯体の底部に基礎水中コンクリートを打設する。
【0003】
(測量)
管路センターをマーキングする。また、レベル測量により推進計画高及び機械据え付け高位置をマーキングする。
【0004】
(推進ジャッキ及び泥水処理機等の据え付け)
推進ジャッキを発進立坑内に計画勾配及び計画方向に対応するように調整した上、据え付ける。すなわち、発進立坑内に、計画推進管センター方向に合わせて推進ジャッキを吊り下ろす。マンホール内側壁面にマーキングしてある位置に間材などで微調整をし、推進ジャッキの仮据えを行う。管勾配については、レベル等によって計測し、推進ジャッキの管芯を計画推進管センターに合致させる。推進ジャッキの微調整を終えたら、推進ジャッキの本固定を充分に行い、マンホール壁と溶接、又はジャッキにて固定する。推進ジャッキの反力はマンホール壁から取る。
【0005】
(掘進機による推進)
次に、掘進機の後端部を推進ジャッキに接続し、泥水処理機等により送泥及び排泥を行い泥水を還流させながら掘進機により掘削をする。
掘進機は、カッターヘッドと送泥管と排泥管を有する。掘進機の送泥管に対して、発進立坑内又は地上に配置された泥水処理機に接続する送泥ラインを接続し、また、掘進機の排泥管に対して、泥水処理機に接続する排泥ラインを接続する。そして、泥水処理機から、送泥ライン及び掘進機の送泥管を介して、掘進機のチャンバに泥水を輸送する。これにより、掘進機のチャンバ内を泥水で満たし、泥水圧を加えて切羽を安定させる。カッターヘッドで掘削した土砂は、掘進機の排泥管から排泥ラインを介して泥水処理機に輸送される。泥水処理機では、排泥ラインにより輸送された土砂の混じった排泥水を、泥水と土砂に分離して比重調整を行った後、泥水を再び送泥ラインに還流し、連続的に掘削を行う。
【0006】
また、掘進機には、地盤改良、止水のための薬液や、推進管の外周抵抗を低減するための滑剤を供給する必要がある。そのため、発進立坑内又は地上に配置された薬液供給装置又は滑剤供給装置からの流体ラインを掘進機の流体管に接続し、薬液や滑剤を輸送しながら掘削を行う。なお、薬液及び滑剤は、2種類以上の液体を同時に用いることもある。
【0007】
また、掘進機の回転等を制御するために、掘進機の信号用の電線を、地上の操作盤に接続する。また、掘進機の動力線を、地上の電源に接続する。さらに、掘進機の油圧管を、地上の油圧ユニットに接続する。
【0008】
(推進管及びジョイント部材の接続及び推進)
次に、掘進機を約半分以上発進立坑の外に推進したところで、掘削を停止する。そして、掘進機の送泥管、排泥管から、送泥ライン、排泥ラインをそれぞれ取り外す。そして、推進管の中に送泥管及び排泥管が一体化されたジョイント部材を入れて、地上から発進立坑の底の推進ジャッキの上に吊り下ろす。そして、ジョイント部材の送泥管及び排泥管と掘進機の送泥管及び排泥管とがシールされた状態で接続されるように、ジョイント部材の前端部を掘進機の後端部に接続する。また、推進管の前端部を、掘進機の後端部に接続する。さらに、ジョイント部材の送泥管、排泥管の後端部を、泥水処理機に接続する送泥ライン、排泥ラインに接続する。そして、推進管及びジョイント部材の後端部を推進ジャッキに接続する。
この状態で、先程と同様に、掘進機のチャンバ内と泥水処理機の間で、泥水を還流させながら、掘進機により掘削、推進をする。
【0009】
同様に、推進管及びジョイント部材の後ろに順次推進管及びジョイント部材を継ぎ足して、掘削、推進を行っていく。
【0010】
(回収)
掘進機が到達立坑にまで到達したら、掘進機は到達立坑から吊り上げて回収し、ジョイント部材も到達立坑又は発進立坑に引き抜いて地上に吊りあげて回収する。このようにして、推進管が地中に残されることになる。
【0011】
以上は上記推進工法の一種であって、泥水を循環させる泥水式推進工法についての説明であった。また、推進工法としては、他に、高濃度泥水を圧送・排出するいわゆる泥濃式推進工法や、土砂を圧送・排出するいわゆる泥土式推進工法があり、これらの工法では掘進機に圧送・排出する物質が異なるものの、概ね泥水式推進工法と同様の方法により工事が行われる。
【0012】
なお、従来のジョイント部材としては、特許文献1に記載されるようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−247588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、従来のジョイント部材においては、薬液や滑剤を輸送する流体管ないし流体ラインがジョイント部材と一体化されていなかった。そのため、薬液や滑剤を供給する流体ラインを、油圧管、動力線、信号用の電線と共に、ジョイント部材に沿って掘進機の先端部まで挿入しなければならかった。この場合、これらの管や線どうしが絡まったり、一方が他方を圧迫したり、途中で折れ曲がったりヒビが入ったりする危険があった。特に、2種類以上の薬液・滑剤を同時に使用する際には、先端部まで2本以上の流体ラインを配置することが必要となるため、これらの危険は増大する。また、推進作業においては、このような不具合が発生しないように、掘進機から発進立坑までの長距離の配線・配管の状態に常に気を付けていなければならず、作業効率の低下を招いていた。
【0015】
また、推進管の中にジョイント部材を入れる時、及び、推進管からジョイント部材を出す時に、従来のジョイント部材は、推進管の内側を傷つけてしまう危険があった。このため、従来は、ジョイント部材の下部に摩擦防止シートなどを貼りつけるなどしていたが、継続的使用や推進管内の凹凸によってこれがはがれてしまうことがあった。また、摩擦防止シートでは、充分な摩擦の低減が実現されず、推進管の内側が傷ついてしまうこともあった。
【0016】
さらに、従来は、ジョイント部材の下部にのみ摩擦防止シートをつけていたに過ぎないため、トラブルのためにジョイント部材が回転して横に倒れてしまった場合に、ジョイント部材の側面等が推進管の内面を傷つけてしまうことがあった。
【0017】
また、従来は、ジョイント部材は推進管の大きさに合わせて設計されるため、推進管の大きさ毎に、異なるジョイント部材を用いなければならず、不便であった。
【0018】
また、ジョイント部材を発進立坑に降下させる際には、予め推進管の中にジョイント部材を入れた状態にして、推進管をワイア等で保持し、その軸方向を略水平にしたまま発進立坑の上から下に降下させ、推進ジャッキ上にセットする。しかし、この降下作業の際に、推進管が何らかの原因で傾いてしまった場合に、推進管からジョイント部材が滑り出てしまう危険があった。とりわけ、ジョイント部材の下部に摩擦防止シートなどを取り付けるなどしていた場合には、この危険は増大する。
【0019】
さらに、従来のジョイント部材は、送排泥管等を単に両端部のフランジ又は中間部の保持部材によって結合しただけであったため、強度が弱かった。特に、推進工法においては、先端の掘進機は回転しながら岩石を掘削するため、ジョイント部材には非常に強いねじれ応力が加わる。そのため、ジョイント部材がねじれてしまう、いわゆるローリングが発生してしまうことがあった。特に、例えば100メートルもの長距離にわたって推進を行う場合には、このローリング発生の危険が増大する。
【0020】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、薬液や滑剤を輸送する流体管を掘進機の位置まで円滑に挿入すること、推進管の内面の毀損を防止すること、異なる大きさの推進管に対応できるジョイント部材を提供すること、ジョイント部材を安全に発進立坑内に降下させること、及び、ジョイント部材の強度を増加してローリングを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、前部フランジと後部フランジと中心管と送泥管と排泥管と流体管とを備え、推進管内に挿入可能な外形を有し、掘進機から推進ジャッキまで順次接続するジョイント部材であって、前記ジョイント部材の軸方向に配設される前記中心管、前記送泥管、前記排泥管及び前記流体管は、前方の端部が前記前部フランジの中心開口部、送泥開口部、排泥開口部及び流体開口部の後部側に開口された状態でそれぞれ固着され、後方の端部が前記後部フランジの中心開口部、送泥開口部、排泥開口部及び流体開口部の前部側に開口された状態でそれぞれ固着され、前記前部フランジ及び前記後部フランジは、貫通孔である前記中心開口部と前記送泥開口部と前記排泥開口部と前記流体開口部とを有する半径方向に広がる垂直面と、固定具を着脱可能に取り付けることができる連結部とを備え、前記連結部によって前記掘進機、他のジョイント部材、推進ジャッキ又はヘッドキャップと接続することができる、ことを特徴とするジョイント部材としたものである。
【0022】
これにより、薬液及び滑剤は、ジョイント部材と一体化された流体管を通って掘進機まで輸送されることになる。このため、薬液及び滑剤を供給する流体ラインが、油圧管、動力線、信号用の電線と絡まったり、互いを圧迫したり、途中で折れ曲がったりヒビが入ったりする危険がなくなる。
【0023】
前記流体管を含むジョイント部材は、一般的には鉄鋼を材料とすることが望ましいが、限定されるわけではない。
前記固定具は、ボルト、ナット、ブロック、ピン、連結フック等であり得る。
前記連結部は、孔、溝等であり得る。
【0024】
上記課題を解決するために、請求項2記載の発明は、下方又は斜め下方に突出するキャスター及び滑り止めのうちいずれか又は両方を備える、ことを特徴とする請求項1に記載のジョイント部材としたものである。
【0025】
これにより、推進管の中にジョイント部材を入れる時、及び、推進管からジョイント部材を出す時に、キャスターの車輪が転がるため、ジョイント部材が推進管の内側を傷つけることを防止することができる。
【0026】
また、ジョイント部材を推進管の中に入れた状態にして発進立坑に降下させる際に、仮に推進管が傾いてしまった場合であっても、前記滑り止めと推進管内部の摩擦により、推進管からジョイント部材が滑り出てしまう危険が減少する。
【0027】
また、推進管の大きさに応じてキャスター及び滑り止めの脚の長さを調整可能にすることで、同一のジョイント部材を異なる大きさの推進管に用いることができる。
【0028】
上記課題を解決するために、請求項3記載の発明は、前記ジョイント部材の中心軸から外側に向かって突出する保護部材を備える、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のジョイント部材としたものである。
【0029】
これにより、ジョイント部材が回転して横に倒れてしまった場合にも、前記保護部材が推進管の内側に接触するため、ジョイント部材の側面等が推進管の内面を傷つけてしまうことを防止することができる。
また、推進管の大きさに応じて保護部材の突出長さを調整可能にすることで、同一のジョイント部材を異なる大きさの推進管に用いることができる。
【0030】
上記課題を解決するために、請求項4記載の発明は、前記前部フランジ及び前記後部フランジと溶接により固着している補強板であって、前記中心管、送泥管、排泥管及び流体管のうち1本以上と溶接により固着している補強板を備える、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載のジョイント部材としたものである。
【0031】
これにより、ジョイント部材の強度を増加させ、ローリングを防止することができる。
【0032】
上記課題を解決するために、請求項5記載の発明は、略直方体のブロックと嵌合する溝部を備える推進ジャッキと前記ブロックを介して接続し、前記後部フランジに係る前記固定具が前記ブロックであり、前記後部フランジに係る前記連結部が前記ブロックと嵌合する溝部である、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4に記載のジョイント部材としたものである。
【0033】
これにより、前記ジョイント部材と前記推進ジャッキを、特に軸の周りに回転する方向のねじれ応力に対して、強固に接続することができる。
【発明の効果】
【0034】
上述の本発明は、薬液や滑剤を輸送する流体管を掘進機の位置まで円滑に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態のジョイント部材1の斜視図である。
【図2】(a)はジョイント部材1の側面図であり、(b)は正面図であり、(c)は背面図である。
【図3】(a)はA−A線切断端面図であり、(b)はジョイント部材1の正面からの透視図である。
【図4】(a)は脚部171の側面図であり、(b)はその正面図であり、(c)はキャスター17の側面図である。
【図5】(a)はピン172の斜視図であり、(b)は抜け防止用留めピン173の正面図であり、(c)はその側面図である。
【図6】(a)は脚部181の側面図であり、(b)はその正面図である。
【図7】推進の過程を示す図である。
【図8】推進時の配管を示す図である。
【図9】(a)は先頭体52及び本体53の斜視図であり、(b)はバックアップ管55の側面図であり、(c)はその背面図である。
【図10】(a)はヘッドキャップ42の背面図であり、(b)はその断面図である。
【図11】(a)は送排泥管スリーブ110の正面図であり、(b)はB−B線切断端面図であり、(c)は流体管スリーブ130の正面図であり、(d)はC−C線切断端面図である
【図12】(a)は推進ジャッキ41の正面図であり、(b)はその上面図であり、(c)はその側面図である。
【図13】推進ジャッキ41とジョイント管1を示す正面図である。
【図14】ブロック165の斜視図である。
【図15】(a)は第2実施形態のジョイント部材2の側面図であり、(b)はその正面からの透視図であり、(c)はその背面からの透視図である。
【図16】ジョイント部材2と掘進機5を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面に基づいて本発明のジョイント部材の実施形態を詳細に説明する。
【0037】
(第1実施形態)
(ジョイント部材の構造)
ジョイント部材1は、図1ないし3に示すように、軸方向に配設された中心管10、送泥管11、排泥管12、流体管13、13、13、13及び補強板14、14が、それらの両端部において板状の前部フランジ15と後部フランジ16で挟まれている構造を有する。本実施形態においては、流体管13が4本、補強板14が2枚である。また、中心管10、送泥管11、排泥管12、流体管13、13、13、13、補強板14、14、前部フランジ15及び後部フランジ16は、鉄鋼である。
【0038】
第1実施形態においては、中心管10はジョイント部材1の中心軸付近に配置されている。これは以下の理由による。すなわち、発進立坑6内に設置されたレーザトランシット60からのレーザ光は、計画された推進管の推進方向に向かって発射され、中心管10内を通過して、掘進機5内に配置されたレーザターゲット54に照射される。レーザターゲット54上のレーザが照射される位置を検出することにより、掘進機5の位置ズレを検知することができる。第1実施形態では、レーザターゲット54は掘進機5の中心軸付近に配置されているため、これに合わせて、中心管10はジョイント部材1の中心軸付近に配置されている。
【0039】
流体管13は、中心管10の外面及び補強板14に対して溶接により固着される。このため、ジョイント部材1の強度が更に向上する。また、流体管13が、中心管10、送泥管11及び排泥管12と一体のユニットとなっているため、他の電線や管と絡まったり、一方が他方を圧迫したり、途中で折れ曲がったりヒビが入ったりすることを防止することができる。
【0040】
2枚の補強板14、14は、図1ないし3に示すように、ジョイント部材の軸方向に延びる細長い略長方形の板であり、長手方向の両端部は、前部フランジ15及び後部フランジ16に溶接により固着される。補強板14の長辺の一つは、中心管10の斜め上の外面に溶接により固着されている。補強板14の短辺は、中心管10の斜め上の外面から斜め上方に向かって突出している。そのため、これらの2枚の補強板14、14と中心管10の上部の外面が、軸方向に延びる凹部100を形成する。
【0041】
前部フランジ15は、図1ないし3に示すように、中心管10、送泥管11、排泥管12及び流体管13、13、13、13を嵌合することができる内径を後部側に有する中心開口部156、送泥開口部157、排泥開口部158及び流体開口部159を有する。中心管10、送泥管11、排泥管12及び流体管13、13、13、13は、これらの開口部の後部側に前部フランジ15の厚さの半分程度の深さまで挿入された状態で、溶接により固着される。
【0042】
また、送泥開口部157及び排泥開口部158の前部側の内径は、送排泥管スリーブ110を嵌合することができる大きさになっている。また、流体開口部159の前部側の内径は、流体管スリーブ130を嵌合することができる大きさになっている。
【0043】
また、前部フランジの開口部は貫通しており、中心管10、送泥管11、排泥管12及び流体管13、13、13、13も貫通しているので、これらを嵌合、溶接した後でも、これらの開口部及び管は貫通していることになる。
【0044】
また、前部フランジ15は、その面を貫通する孔151、151、151、151を有する。第1実施形態では、前部フランジ15の孔151の個数は4個である。
【0045】
また、前部フランジ15の後方には、補強のための補強板152、152が溶接により固着されている。補強板152、152は、中心管10に対しても溶接により固着されている。
【0046】
また、後部フランジ16は、前部フランジ15とほぼ同様の形態を有する。すなわち、後部フランジ16は、中心管10、送泥管11、排泥管12及び流体管13、13、13、13を嵌合することができる内径を前部側に有する中心開口部166、送泥開口部167、排泥開口部168及び流体開口部169を有する。また、中心管10、送泥管11、排泥管12及び流体管13、13、13、13は、これらの開口部の前部側に後部フランジ16の厚さの半分程度の深さまで挿入された状態で、溶接により固着される。
【0047】
もっとも、後部フランジ16においては、前部フランジ15と異なり、補強板152、152の代わりに、後部フランジ16の前方に、水平面を有する固定用板162、162、163、163が4枚、溶接により固着されている。固定用板162、162は、補強板14、14に対しても溶接により固着されている。固定用板163、163は、中心管10に対しても溶接により固着されている。また、後部フランジ16のネジ孔161、161、161、161にはメスのネジ溝が形成されている。このネジ孔161、161、161、161の有効長を確保するために、後部フランジ16は前部フランジ15よりも厚く構成されている。
【0048】
キャスター17は、第1実施形態では中心管10の側面から斜め下方に向かって配置される。
【0049】
図4(c)のように、中心管10から突出する中空の略直方体の脚受部170に、脚部171が嵌挿される。脚受部170と脚部171は、ジョイント部材1の軸方向にピン172を差し込むことにより容易に固定される。差し込まれたピン172の先端部は、脚受部170及び脚部171を貫通して外部に突出し、ピンの先端部の横の留めピン孔174に抜け防止用留めピン173を差し込むことにより、ピン172の抜けが防止される。
【0050】
脚部171には、ピン172を差し込むためのピン孔175が、長さ方向に複数個配置されているため、ピン孔175の選択により、キャスター17の脚の長さを変更できる。また、ジョイント部材1は、長さの異なる複数の脚受部170を備えているので、脚受部170の選択によっても、キャスター17の脚の長さを変更することができる。
【0051】
脚部171の先端部には、ナイロン製の車輪176が取り付けられている。推進管3の内部を傷つけないようにするという効果の面、コストの面及び耐久性の面からは、車輪176の材質はナイロンが好適である。
【0052】
キャスター17の脚の長さは、推進管3の径の大きさに応じて、適宜調整される。ジョイント部材1の前部フランジ15が掘進機5又は直前のジョイント部材1に接続され、後部フランジ16が推進ジャッキ41又は直後のジョイント部材1に接続されて、ジョイント部材1の軸と推進管3の軸が平行になるようにジョイント部材1が推進管3内に配置されたときに、キャスター17の車輪176のみが推進管3の内側と接触する。また、このときに、中心管10の中心軸の延長上に掘進機5のレーザターゲット54が配置される。
【0053】
キャスター17の強度を増すために、キャスター17の脚受部170は、中心管10に対して溶接により固着されると共に、送泥管11又は排泥管12の外側にも溶接される。また、キャスターの脚受部170の斜め上の面には、該面と垂直に鉄鋼の補強板177(図1では省略)が溶接され、該補強板177は中心管10にも溶接されているため、キャスター17の強度は更に増している。
【0054】
次に、滑り止め18、18について説明する。
図1及び2のように、中心管10から突出する中空の略直方体の脚受部180に、略直方体の脚部181が嵌挿される。脚受部180と脚部181は、ジョイント部材の軸方向にピン172を差し込むことにより容易に固定される。差し込まれたピン172の先端部は、脚受部180及び脚部181を貫通して外部に突出し、ピン172の先端部の横の留めピン孔174に抜け防止用留めピン173を差し込むことにより、ピン172の抜けが防止される。
【0055】
脚部181には、ピン172を差し込むためのピン孔185が、長さ方向に複数個配置されているため、ピン孔の選択により、滑り止め18の脚の長さを変更できる。また、ジョイント部材1は、長さの異なる複数の脚受部180を備えているので、脚受部180の選択によっても、滑り止め18の脚の長さを変更することができる。
【0056】
脚部181の先端部186の材質は、推進管の内部を傷つけず、かつ滑り止めの効果も有するため、ナイロンが好適である。
【0057】
滑り止め18の脚の長さは、推進管3の径の大きさ及びキャスター17の脚の長さに応じて、適宜調整される。キャスター17の脚の長さよりも滑り止め18の脚の長さを若干、例えば2ミリメートル程度短くしておくことで、推進管3及びジョイント部材1を掘進機5、推進ジャッキ41等に接続して、推進管3及びジョイント部材1の軸を平行にする時には、滑り止めの先端部186は宙に浮いた状態になって、推進管3と接触しなくなる。
【0058】
前部フランジ15及び後部フランジ16を他のジョイント部材1等に接続せずに、ジョイント部材1を単体で推進管3内に置いた状態にした時に、キャスター17、17の車輪176、176と滑り止め18、18の先端部186、186のみが推進管3内部に接触するように、滑り止め18、18の長さが調整される。
【0059】
滑り止め18の強度を増すために、滑り止め18の脚受部180は、中心管10に対して溶接により固着されると共に、送泥管11又は排泥管12の外側にも溶接される。また、滑り止めの脚受部180の斜め上の面には、該面と垂直に鉄鋼の補強板187(図1では省略)が溶接され、該補強板187は中心管10にも溶接されているため、滑り止め18の強度は更に増している。
【0060】
保護部材19は、略長方形の板状のもので、補強板14に対し、3本のボルトにより固定されている。保護部材19には、ボルトと螺合するネジ孔が6個あり、補強板14には、一つの保護部材19と接続するためのネジ孔が3個ある。そのため、保護部材19の6個のネジ孔の内、いずれの3つのネジ孔を利用するかを選択することにより、保護部材19が斜め上に向かって突出する長さを調整することができる。
【0061】
保護部材19の位置及び突出する長さは、仮にジョイント部材1が推進管3内で傾いたり、横転したり、更には、逆さになってしまった場合に、キャスター17の車輪176、滑り止め18の先端部186又は保護部材19の先端部のみが推進管3の内側に接触するように調整されている。これにより、補強板14や前部フランジ15や後部フランジ16などが、推進管3の内側を傷つけてしまうことを防止することができる。
【0062】
第1実施形態においては、保護部材19は、補強板14の下部側に配置されているが、流体管13等他の部材との関係でスペースがあれば、補強板14の上部側に配置してももちろんよい。
【0063】
なお、図2(a)のジョイント部材1の長さは、対応する推進管3の長さと同じく1205ミリメートルで、外径は300ミリメートルである。
もっとも、この外径のジョイント部材の長さとしては、1203ミリメートル、2433ミリメートル、2435ミリメートル、3000ミリメートル等、様々な種類があり得る。
また、外径についても、推進管の大きさに応じて、様々な種類があり得る。
【0064】
(ジョイント部材の使用方法)
次に、泥水式推進工法におけるジョイント部材1の使用方法を説明する。
【0065】
泥水式推進工法においては、まず、背景技術の項で述べたように、発進立坑6及び到達立坑7を築造する。
次に、測量の上、管路センター、推進計画高及び機械据え付け高位置をマーキングする。
さらに、推進ジャッキ41を発進立坑6内に計画勾配及び計画方向に対応するように調整した上、据え付ける。
【0066】
次に、図7(a)のように、掘進機5を推進ジャッキ41に接続し、泥水処理機80等により送泥及び排泥を行い泥水を還流させながら掘進機5により掘削をする方法について説明する。
【0067】
掘進機5は、図9のように、前方から順に、先頭体52、本体53及びバックアップ管55からなる。
【0068】
先頭体52は、先端部に、カッターヘッド50とビット51を有する。
本体53は、内部にレーザターゲット54、送泥管56、排泥管57及び流体管58を有する。
バックアップ管55は、内部に送泥管56、排泥管57及び流体管58を有し、後部に後部フランジ59を有する。
【0069】
まず、掘進機5を、発進立坑6の下方に吊り下ろし、推進ジャッキ41の上に載せる。
【0070】
そして、バックアップ管55の後部フランジ59に対して、図10のヘッドキャップ42をボルト154によって接続する。ボルトは、ヘッドキャップの孔421と後部フランジ59のネジ孔591を貫通させる。また、後部フランジ59とヘッドキャップ42を接続する際に、後部フランジ59の送泥開口部597、排泥開口部598及び流体開口部599とヘッドキャップ42の送泥開口部427、排泥開口部428及び流体開口部429の間に、送排泥管スリーブ110ないし流体管スリーブ130を嵌合する。
【0071】
送排泥管スリーブ110及び流体管スリーブ130は、略円筒型で、2本のOリング1100、1300を外周に有しているため、それぞれのOリングが、後部フランジ59の開口部とヘッドキャップ42の開口部の内側に密着することによって、接続部分をシーリングすることができる。
【0072】
なお、ヘッドキャップ42の送泥管423及び排泥管424はフランジに対して回転可能になっており、図10(b)は送泥管423及び排泥管424を垂直にした状態の断面図である。
【0073】
そして、ヘッドキャップ42の送泥管423の端部4230を、発進立坑6内又は地上に配置された泥水処理機80に接続する送泥ライン61と接続する。また、ヘッドキャップ42の排泥管424の端部4240を、発進立坑6内又は地上に配置された泥水処理機80に接続する排泥ライン62と接続する。
【0074】
そして、泥水処理機80から、送泥ライン61、ヘッドキャップ42の送泥管423及び掘進機5の送泥管56を介して、掘進機5のチャンバに泥水を輸送する。これにより、掘進機5のチャンバ内を泥水で満たし、泥水圧を加えて切羽を安定させる。カッターヘッド50で掘削した土砂は、掘進機5の排泥管57、ヘッドキャップ42の排泥管424及び排泥ライン62を介して泥水処理機80に輸送される。泥水処理機80では、排泥ライン62から輸送された土砂の混じった排泥水を、泥水と土砂に分離して比重調整を行った後、泥水を再び送泥ライン61に還流し、連続的に掘削を行う。
【0075】
また、掘進機5には、地盤改良、止水のための薬液や、推進管の外周抵抗を低減して推力を低減するための滑剤を供給する必要がある。そのため、発進立坑内又は地上に配置された薬液供給装置又は滑剤供給装置からの流体ラインをヘッドキャップ42の流体管425に接続し、掘進機5の流体管58に薬液や滑剤を輸送しながら掘削を行う。なお、薬液及び滑剤は、2種類の液体を同時に用いることもある。本実施形態においては、掘進機5及びヘッドキャップ42は、4本の流体管を有しているため、2種類以上の薬液や滑剤を使用する場合には、薬液や滑剤の種類に応じて異なる流体管を用いることができる。
【0076】
また、掘進機5の回転等を制御するために、掘進機5の信号用の電線810を、地上の操作盤81に接続する。また、掘進機5の動力線を、地上の電源に接続する。さらに、掘進機5の油圧管820を、地上の油圧ユニット82に接続する。
【0077】
推進時には、掘進機5のバックアップ管55の後部の円環部551を、推進ジャッキ41の円環部410に接触させて、推進ジャッキ41の推力により推進する。
【0078】
そして、推進ジャッキ41が掘進機5を押し切ったところで、掘削を一旦停止し、掘進機5は地中に埋めた状態にしたままで、推進ジャッキ41の推進用の腕を再度縮めて元の位置に戻す。
さらに、掘進機5の後部フランジ59から、ヘッドキャップ42を取り外す。
【0079】
そして、地上にて、推進管3の中に送泥管11、排泥管12及び流体管13が一体化されたジョイント部材1を入れる。このとき、キャスター17の車輪176を転がして入れることにより、ジョイント部材1が推進管3の内部を傷つけることを避けることができる。また、仮にジョイント部材1が傾いたり、横転したり、更には、逆さになってしまった場合でも、保護部材19があるため、推進管3の内部を傷つけることを避けることができる。
【0080】
そして、ジョイント部材1を入れた推進管3を、地上から発進立坑6の底の推進ジャッキ41の上に吊り下ろす。このとき、推進管3の軸が略水平になるような状態で降下させる。この際、推進管3内のジョイント部材1は、2つの滑り止め18、18の先端部186、186が推進管内部と接触している状態となっている。このため、仮に何らかの原因で降下中に推進管3が傾いた場合であっても、滑り止め18の先端部186の摩擦力によって、ジョイント部材1が推進管3の外に滑り出してしまうことが防止されている。
【0081】
そして、ジョイント部材1の送泥管11、排泥管12及び流体管13が、掘進機5の送泥管56、排泥管57及び流体管58とシールされた状態で接続するように、ジョイント部材1の前部フランジ15を掘進機5の後部フランジ59に接続する。このとき、送排泥管スリーブ110及び流体管スリーブ130を各開口部の接続部分に嵌合する。後部フランジ59とヘッドキャップ42との接続の場合と同様に、各スリーブのOリングにより接続部分がシーリングされる。
【0082】
この時の接続方法としては、ジョイント部材1を後ろから前方に向かって押すことによって、送排泥管スリーブ110及び流体管スリーブ130を掘進機5及びジョイント部材1のそれぞれの開口部に嵌合させる。その際に、ジョイント部材1の後部をやや持ち上げるようにして滑り止め18を浮かせて押す。このため、本実施形態では、キャスター17を前に配置し、滑り止め18を後ろに配置している。
【0083】
ジョイント部材1の前部フランジ15と掘進機5の後部フランジ59とは、ジョイント部材1の前部フランジ15の孔151の後部側からボルト154を嵌めることによって固定する。孔151にはネジ溝が切ってないが、対応する位置にある掘進機5の後部フランジ59のネジ孔591には、メスのネジ溝が切ってあるため、ナットを使わなくとも、ボルトを締めるだけで、ジョイント部材と掘進機は接続・固定される。
【0084】
本実施形態では、ジョイント部材1はキャスター17及び保護部材19を有しているため、ジョイント部材1と掘進機5の接続作業の時に、ジョイント部材1によって推進管3の内部を傷付けることが防止される。
【0085】
また、推進管3の前端部を、掘進機5のバックアップ管55の円環部551に接続する。
【0086】
さらに、ジョイント部材1の後部フランジ16を、ボルト154により、ヘッドキャップ42と接続する。この際、ヘッドキャップ42の孔421にはネジ溝が切っていないが、後部フランジ16のネジ孔161にはメスのネジ溝が切ってあるため、ボルト154をヘッドキャップ42側から嵌合することにより、ナットがなくとも結合することができる。また、送泥開口部、排泥開口部及び流体開口部の接続部分には、送排泥管スリーブ110ないし流体管スリーブ130を嵌合することによってシーリングすることは、掘進機5の後部フランジ59の接続の場合と同様である。
【0087】
このようにして、ジョイント部材1の送泥管11、排泥管12及び流体管13を、後部フランジ16及びヘッドキャップ42を介して、送泥ライン61、排泥ライン62及び流体ラインに接続する。
【0088】
このように、従来の技術と異なり、本実施形態では、薬液や滑剤を供給する流体管13が油圧管820、動力線及び信号用の電線810とは別になっており、ジョイント部材1の一部としてユニット化されているため、流体管13が、油圧管820、動力線及び信号用の電線810と絡まったり、互いを圧迫したり、途中で折れ曲がったりヒビが入ったりすることは防止されている。
【0089】
さらに、第1実施形態では、掘進機5の油圧管820、動力線及び信号用の電線810を、ジョイント部材1の上部の凹部100の上に載せる。凹部100は、中心管10と補強板14に囲まれて軸方向に延びる溝状になっているため、信号用の電線810、動力線及び油圧管820がジョイント部材1と推進管3の間に挟まれて圧迫されたり、傷付いたり、切れたりすることが防止される。
【0090】
そして、推進管3の後端部を推進ジャッキ41の円環部410に接続する。
さらに、図13のように、ジョイント部材1の固定用板162及び固定用板163の間の溝及び推進ジャッキ41の溝部411に、略直方体の鉄鋼のブロック165を挿入する。これによって、ボルトよりも大きな面積でねじれ応力を受けることができるため、ジョイント部材1と推進ジャッキ41は、ねじれ応力に対して強固に固定される。また、このブロック165は取っ手部1651を備えているため、該ブロック165を手で容易に着脱することができる。
【0091】
この状態で、先程と同様に、掘進機5のチャンバ内と泥水処理機80の間で、泥水を還流させながら、掘進機5により掘削、推進をする。
推進力は、推進ジャッキ41の円環部410と推進管3の後端部を介して伝達する。
このときに、推進ジャッキ41に配置されたレーザトランシット60から目標とする掘進方向に向けてレーザ光を発射する。レーザ光は、ジョイント部材1の中心管内11を通過して、掘進機5のレーザターゲット54にあたり、掘進機5の位置ズレを検出することができる。
【0092】
以後同様に、推進管3及びジョイント部材1の後ろに順次推進管3及びジョイント部材1を継ぎ足して、掘削、推進を行っていく(図7(c)参照)。
【0093】
掘進機5の先端部のカッターヘッド50は、回転することにより掘削を行うが、掘進機5、ジョイント部材1、及び推進ジャッキ41は、前部フランジ15、後部フランジ16、ボルト154及びブロック165等により強固に接続されていること、並びに、ジョイント部材1には、軸方向に延びる補強板14が溶接されていることから、ジョイント部材1がねじれてしまういわゆるローリングが発生することはない。
【0094】
(回収)
図7(d)のように、掘進機5が到達立坑7にまで到達したら、掘進機5は到達立坑7から吊り上げて回収する。
【0095】
次に、ジョイント部材1を、推進管3から発進立坑6又は到達立坑7に引き抜く。この引き抜く際に、キャスターの車輪176が転がるため、推進管3内部を傷つけることがない。また、仮にジョイント部材1が傾いたり、横転したり、更には、逆さになってしまった場合でも、保護部材19があるため、推進管3の内部を傷付けることを避けることができる。
【0096】
そして、ジョイント部材1を、発進立坑6又は到達立坑7から吊りあげて回収する。このようにして、推進管3が地中に残されることになる。
【0097】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態よりも、小さな径の推進管に用いるためのジョイント部材2が用いられる。図15のように、ジョイント部材2の構造は、流体管23、23、孔251、251(図15(b)では、ボルトの中心に位置する)、ネジ孔261、261(図15(c)では、ボルトの中心に位置する)及び保護部材29のネジ孔の数がジョイント部材1の半分であること、保護部材29が補強板の上部側に配置されていることを除けば、概ねジョイント部材1と同じである。
【0098】
なお、図15(a)のジョイント部材2の長さは1005ミリメートルで、外径は230ミリメートルである。
もっとも、この外径のジョイント部材の長さとしては、1003ミリメートル、2000ミリメートル、2003ミリメートル等、様々な種類があり得る。
また、外径についても、推進管の大きさに応じて、様々な種類がありうる。
【0099】
また、ジョイント部材2の使用方法も、概ねジョイント部材1と同じである。
【0100】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。各実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略し、図示しない他の構成と組み合わせることができる。
【0101】
例えば、流体管、補強板、キャスター、滑り止め、保護部材等の個数を上述の実施形態と異ならせる構成もあり得る。
【0102】
また、中心管の位置は、掘進機5内のレーザターゲット54と発進立坑6内のレーザトランシット60の位置に応じて、必ずしもジョイント部材の中心付近にない構成もあり得る。
【0103】
また、キャスターの車輪、滑り止めの先端部及び保護部材の材質は、推進管の内側を傷つけない材質であれば、例えば、テフロンやゴム等とする構成もあり得る。
【0104】
また、キャスター及び滑り止めの突出方向については、斜め下方ではなく、下方とする構成も考え得る。また、上述の実施形態では、キャスター及び滑り止めは中心管から突出しているが、送泥管、排泥管、補強板、前部フランジ、後部フランジその他の部材から突出する構造もあり得る。また、掘進機とジョイント部材の接続方法によっては、キャスターと滑り止めの前後関係を上述の実施形態と異なる配置とすることもあり得る。
【0105】
また、上述の実施形態では、保護部材は斜め上方に向かって突出しているが、これに限定されず、上方や、水平方向等とする構成もあり得る。さらに、保護部材は板状の形状でなくとも、推進管内部を傷付けない形状であれば、例えばキャスターなどでもよい。
【0106】
また、掘進機やジョイント部材の接続方法として、ボルトだけでなく、ボルトとナットを使う方法や、連結フックを使う方法もあり得る。
また、ジョイント部材等を結合するボルトの個数は、第1実施形態においては4個であったが、これに限られず、2個とするなど他の構成もあり得る。
【0107】
また、上述の実施形態では、ジョイント部材1は一つの大きな凹部100を上部に備えているのみであるが、複数の小さな凹部又は溝を軸方向に配置し、それぞれの小さな凹部又は溝毎に異なる油圧管820、動力線及び信号用の電線810を載せ、あるいは嵌め込むことにより、これらの管・電線が互いに絡まったりする危険を更に防止することができる。
【0108】
また、上述の実施形態は、泥水を循環させる泥水式推進工法についてのものであったが、泥濃式推進工法や泥土式推進工法等においても、本発明のジョイント部材を用いることができる。この場合には、送泥管及び排泥管を介して高濃度泥水ないし土砂を圧送・排出し、必要に応じて圧送・排出のために適切な圧力で加圧・吸引する。
【0109】
また、この発明は、下水道の他、ガス管や地中電線管その他の推進管の施工にも用いられ得る。
【産業上の利用可能性】
【0110】
上述の本発明は、薬液や滑剤を輸送する流体管を掘進機の位置まで円滑に挿入することができるので、レジン管やヒューム管などを地中に圧入推進して埋設する推進工法において、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0111】
1 ジョイント部材
10 中心管
11 送泥管
12 排泥管
13 流体管
14 補強板
15 前部フランジ
16 後部フランジ
17 キャスター
18 滑り止め
19 保護部材
3 推進管
41 推進ジャッキ
42 ヘッドキャップ
5 掘進機
54 レーザターゲット
6 発進立坑
60 レーザトランシット
61 送泥ライン
62 排泥ライン
7 到達立坑
80 泥水処理機
81 操作盤
810 信号用の電線
82 油圧ユニット
820 油圧管
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジン管やヒューム管などを地中に圧入推進して埋設する推進工法に用いられるジョイント部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(発進立坑及び到達立坑の築造)
上記推進工法の一種である泥水式推進工法においては、まず、発進立坑及び到達立坑を築造する。そのために、旋回圧入機で下部マンホール躯体を旋回圧入し、掘削機で土砂を掘削する。次に、下部マンホール躯体の上に中間マンホール躯体を溶接で接続する。さらに、旋回圧入機でこの中間マンホール躯体を旋回圧入し、掘削機で土砂を掘削する。そして、中間マンホール躯体の上に鋼製の円筒状の連結ケーシングを着脱自在に接続する。そして、下部マンホール躯体の底部に基礎水中コンクリートを打設する。
【0003】
(測量)
管路センターをマーキングする。また、レベル測量により推進計画高及び機械据え付け高位置をマーキングする。
【0004】
(推進ジャッキ及び泥水処理機等の据え付け)
推進ジャッキを発進立坑内に計画勾配及び計画方向に対応するように調整した上、据え付ける。すなわち、発進立坑内に、計画推進管センター方向に合わせて推進ジャッキを吊り下ろす。マンホール内側壁面にマーキングしてある位置に間材などで微調整をし、推進ジャッキの仮据えを行う。管勾配については、レベル等によって計測し、推進ジャッキの管芯を計画推進管センターに合致させる。推進ジャッキの微調整を終えたら、推進ジャッキの本固定を充分に行い、マンホール壁と溶接、又はジャッキにて固定する。推進ジャッキの反力はマンホール壁から取る。
【0005】
(掘進機による推進)
次に、掘進機の後端部を推進ジャッキに接続し、泥水処理機等により送泥及び排泥を行い泥水を還流させながら掘進機により掘削をする。
掘進機は、カッターヘッドと送泥管と排泥管を有する。掘進機の送泥管に対して、発進立坑内又は地上に配置された泥水処理機に接続する送泥ラインを接続し、また、掘進機の排泥管に対して、泥水処理機に接続する排泥ラインを接続する。そして、泥水処理機から、送泥ライン及び掘進機の送泥管を介して、掘進機のチャンバに泥水を輸送する。これにより、掘進機のチャンバ内を泥水で満たし、泥水圧を加えて切羽を安定させる。カッターヘッドで掘削した土砂は、掘進機の排泥管から排泥ラインを介して泥水処理機に輸送される。泥水処理機では、排泥ラインにより輸送された土砂の混じった排泥水を、泥水と土砂に分離して比重調整を行った後、泥水を再び送泥ラインに還流し、連続的に掘削を行う。
【0006】
また、掘進機には、地盤改良、止水のための薬液や、推進管の外周抵抗を低減するための滑剤を供給する必要がある。そのため、発進立坑内又は地上に配置された薬液供給装置又は滑剤供給装置からの流体ラインを掘進機の流体管に接続し、薬液や滑剤を輸送しながら掘削を行う。なお、薬液及び滑剤は、2種類以上の液体を同時に用いることもある。
【0007】
また、掘進機の回転等を制御するために、掘進機の信号用の電線を、地上の操作盤に接続する。また、掘進機の動力線を、地上の電源に接続する。さらに、掘進機の油圧管を、地上の油圧ユニットに接続する。
【0008】
(推進管及びジョイント部材の接続及び推進)
次に、掘進機を約半分以上発進立坑の外に推進したところで、掘削を停止する。そして、掘進機の送泥管、排泥管から、送泥ライン、排泥ラインをそれぞれ取り外す。そして、推進管の中に送泥管及び排泥管が一体化されたジョイント部材を入れて、地上から発進立坑の底の推進ジャッキの上に吊り下ろす。そして、ジョイント部材の送泥管及び排泥管と掘進機の送泥管及び排泥管とがシールされた状態で接続されるように、ジョイント部材の前端部を掘進機の後端部に接続する。また、推進管の前端部を、掘進機の後端部に接続する。さらに、ジョイント部材の送泥管、排泥管の後端部を、泥水処理機に接続する送泥ライン、排泥ラインに接続する。そして、推進管及びジョイント部材の後端部を推進ジャッキに接続する。
この状態で、先程と同様に、掘進機のチャンバ内と泥水処理機の間で、泥水を還流させながら、掘進機により掘削、推進をする。
【0009】
同様に、推進管及びジョイント部材の後ろに順次推進管及びジョイント部材を継ぎ足して、掘削、推進を行っていく。
【0010】
(回収)
掘進機が到達立坑にまで到達したら、掘進機は到達立坑から吊り上げて回収し、ジョイント部材も到達立坑又は発進立坑に引き抜いて地上に吊りあげて回収する。このようにして、推進管が地中に残されることになる。
【0011】
以上は上記推進工法の一種であって、泥水を循環させる泥水式推進工法についての説明であった。また、推進工法としては、他に、高濃度泥水を圧送・排出するいわゆる泥濃式推進工法や、土砂を圧送・排出するいわゆる泥土式推進工法があり、これらの工法では掘進機に圧送・排出する物質が異なるものの、概ね泥水式推進工法と同様の方法により工事が行われる。
【0012】
なお、従来のジョイント部材としては、特許文献1に記載されるようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−247588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、従来のジョイント部材においては、薬液や滑剤を輸送する流体管ないし流体ラインがジョイント部材と一体化されていなかった。そのため、薬液や滑剤を供給する流体ラインを、油圧管、動力線、信号用の電線と共に、ジョイント部材に沿って掘進機の先端部まで挿入しなければならかった。この場合、これらの管や線どうしが絡まったり、一方が他方を圧迫したり、途中で折れ曲がったりヒビが入ったりする危険があった。特に、2種類以上の薬液・滑剤を同時に使用する際には、先端部まで2本以上の流体ラインを配置することが必要となるため、これらの危険は増大する。また、推進作業においては、このような不具合が発生しないように、掘進機から発進立坑までの長距離の配線・配管の状態に常に気を付けていなければならず、作業効率の低下を招いていた。
【0015】
また、推進管の中にジョイント部材を入れる時、及び、推進管からジョイント部材を出す時に、従来のジョイント部材は、推進管の内側を傷つけてしまう危険があった。このため、従来は、ジョイント部材の下部に摩擦防止シートなどを貼りつけるなどしていたが、継続的使用や推進管内の凹凸によってこれがはがれてしまうことがあった。また、摩擦防止シートでは、充分な摩擦の低減が実現されず、推進管の内側が傷ついてしまうこともあった。
【0016】
さらに、従来は、ジョイント部材の下部にのみ摩擦防止シートをつけていたに過ぎないため、トラブルのためにジョイント部材が回転して横に倒れてしまった場合に、ジョイント部材の側面等が推進管の内面を傷つけてしまうことがあった。
【0017】
また、従来は、ジョイント部材は推進管の大きさに合わせて設計されるため、推進管の大きさ毎に、異なるジョイント部材を用いなければならず、不便であった。
【0018】
また、ジョイント部材を発進立坑に降下させる際には、予め推進管の中にジョイント部材を入れた状態にして、推進管をワイア等で保持し、その軸方向を略水平にしたまま発進立坑の上から下に降下させ、推進ジャッキ上にセットする。しかし、この降下作業の際に、推進管が何らかの原因で傾いてしまった場合に、推進管からジョイント部材が滑り出てしまう危険があった。とりわけ、ジョイント部材の下部に摩擦防止シートなどを取り付けるなどしていた場合には、この危険は増大する。
【0019】
さらに、従来のジョイント部材は、送排泥管等を単に両端部のフランジ又は中間部の保持部材によって結合しただけであったため、強度が弱かった。特に、推進工法においては、先端の掘進機は回転しながら岩石を掘削するため、ジョイント部材には非常に強いねじれ応力が加わる。そのため、ジョイント部材がねじれてしまう、いわゆるローリングが発生してしまうことがあった。特に、例えば100メートルもの長距離にわたって推進を行う場合には、このローリング発生の危険が増大する。
【0020】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、薬液や滑剤を輸送する流体管を掘進機の位置まで円滑に挿入すること、推進管の内面の毀損を防止すること、異なる大きさの推進管に対応できるジョイント部材を提供すること、ジョイント部材を安全に発進立坑内に降下させること、及び、ジョイント部材の強度を増加してローリングを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、前部フランジと後部フランジと中心管と送泥管と排泥管と流体管とを備え、推進管内に挿入可能な外形を有し、掘進機から推進ジャッキまで順次接続するジョイント部材であって、前記ジョイント部材の軸方向に配設される前記中心管、前記送泥管、前記排泥管及び前記流体管は、前方の端部が前記前部フランジの中心開口部、送泥開口部、排泥開口部及び流体開口部の後部側に開口された状態でそれぞれ固着され、後方の端部が前記後部フランジの中心開口部、送泥開口部、排泥開口部及び流体開口部の前部側に開口された状態でそれぞれ固着され、前記前部フランジ及び前記後部フランジは、貫通孔である前記中心開口部と前記送泥開口部と前記排泥開口部と前記流体開口部とを有する半径方向に広がる垂直面と、固定具を着脱可能に取り付けることができる連結部とを備え、前記連結部によって前記掘進機、他のジョイント部材、推進ジャッキ又はヘッドキャップと接続することができる、ことを特徴とするジョイント部材としたものである。
【0022】
これにより、薬液及び滑剤は、ジョイント部材と一体化された流体管を通って掘進機まで輸送されることになる。このため、薬液及び滑剤を供給する流体ラインが、油圧管、動力線、信号用の電線と絡まったり、互いを圧迫したり、途中で折れ曲がったりヒビが入ったりする危険がなくなる。
【0023】
前記流体管を含むジョイント部材は、一般的には鉄鋼を材料とすることが望ましいが、限定されるわけではない。
前記固定具は、ボルト、ナット、ブロック、ピン、連結フック等であり得る。
前記連結部は、孔、溝等であり得る。
【0024】
上記課題を解決するために、請求項2記載の発明は、下方又は斜め下方に突出するキャスター及び滑り止めのうちいずれか又は両方を備える、ことを特徴とする請求項1に記載のジョイント部材としたものである。
【0025】
これにより、推進管の中にジョイント部材を入れる時、及び、推進管からジョイント部材を出す時に、キャスターの車輪が転がるため、ジョイント部材が推進管の内側を傷つけることを防止することができる。
【0026】
また、ジョイント部材を推進管の中に入れた状態にして発進立坑に降下させる際に、仮に推進管が傾いてしまった場合であっても、前記滑り止めと推進管内部の摩擦により、推進管からジョイント部材が滑り出てしまう危険が減少する。
【0027】
また、推進管の大きさに応じてキャスター及び滑り止めの脚の長さを調整可能にすることで、同一のジョイント部材を異なる大きさの推進管に用いることができる。
【0028】
上記課題を解決するために、請求項3記載の発明は、前記ジョイント部材の中心軸から外側に向かって突出する保護部材を備える、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のジョイント部材としたものである。
【0029】
これにより、ジョイント部材が回転して横に倒れてしまった場合にも、前記保護部材が推進管の内側に接触するため、ジョイント部材の側面等が推進管の内面を傷つけてしまうことを防止することができる。
また、推進管の大きさに応じて保護部材の突出長さを調整可能にすることで、同一のジョイント部材を異なる大きさの推進管に用いることができる。
【0030】
上記課題を解決するために、請求項4記載の発明は、前記前部フランジ及び前記後部フランジと溶接により固着している補強板であって、前記中心管、送泥管、排泥管及び流体管のうち1本以上と溶接により固着している補強板を備える、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載のジョイント部材としたものである。
【0031】
これにより、ジョイント部材の強度を増加させ、ローリングを防止することができる。
【0032】
上記課題を解決するために、請求項5記載の発明は、略直方体のブロックと嵌合する溝部を備える推進ジャッキと前記ブロックを介して接続し、前記後部フランジに係る前記固定具が前記ブロックであり、前記後部フランジに係る前記連結部が前記ブロックと嵌合する溝部である、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4に記載のジョイント部材としたものである。
【0033】
これにより、前記ジョイント部材と前記推進ジャッキを、特に軸の周りに回転する方向のねじれ応力に対して、強固に接続することができる。
【発明の効果】
【0034】
上述の本発明は、薬液や滑剤を輸送する流体管を掘進機の位置まで円滑に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態のジョイント部材1の斜視図である。
【図2】(a)はジョイント部材1の側面図であり、(b)は正面図であり、(c)は背面図である。
【図3】(a)はA−A線切断端面図であり、(b)はジョイント部材1の正面からの透視図である。
【図4】(a)は脚部171の側面図であり、(b)はその正面図であり、(c)はキャスター17の側面図である。
【図5】(a)はピン172の斜視図であり、(b)は抜け防止用留めピン173の正面図であり、(c)はその側面図である。
【図6】(a)は脚部181の側面図であり、(b)はその正面図である。
【図7】推進の過程を示す図である。
【図8】推進時の配管を示す図である。
【図9】(a)は先頭体52及び本体53の斜視図であり、(b)はバックアップ管55の側面図であり、(c)はその背面図である。
【図10】(a)はヘッドキャップ42の背面図であり、(b)はその断面図である。
【図11】(a)は送排泥管スリーブ110の正面図であり、(b)はB−B線切断端面図であり、(c)は流体管スリーブ130の正面図であり、(d)はC−C線切断端面図である
【図12】(a)は推進ジャッキ41の正面図であり、(b)はその上面図であり、(c)はその側面図である。
【図13】推進ジャッキ41とジョイント管1を示す正面図である。
【図14】ブロック165の斜視図である。
【図15】(a)は第2実施形態のジョイント部材2の側面図であり、(b)はその正面からの透視図であり、(c)はその背面からの透視図である。
【図16】ジョイント部材2と掘進機5を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面に基づいて本発明のジョイント部材の実施形態を詳細に説明する。
【0037】
(第1実施形態)
(ジョイント部材の構造)
ジョイント部材1は、図1ないし3に示すように、軸方向に配設された中心管10、送泥管11、排泥管12、流体管13、13、13、13及び補強板14、14が、それらの両端部において板状の前部フランジ15と後部フランジ16で挟まれている構造を有する。本実施形態においては、流体管13が4本、補強板14が2枚である。また、中心管10、送泥管11、排泥管12、流体管13、13、13、13、補強板14、14、前部フランジ15及び後部フランジ16は、鉄鋼である。
【0038】
第1実施形態においては、中心管10はジョイント部材1の中心軸付近に配置されている。これは以下の理由による。すなわち、発進立坑6内に設置されたレーザトランシット60からのレーザ光は、計画された推進管の推進方向に向かって発射され、中心管10内を通過して、掘進機5内に配置されたレーザターゲット54に照射される。レーザターゲット54上のレーザが照射される位置を検出することにより、掘進機5の位置ズレを検知することができる。第1実施形態では、レーザターゲット54は掘進機5の中心軸付近に配置されているため、これに合わせて、中心管10はジョイント部材1の中心軸付近に配置されている。
【0039】
流体管13は、中心管10の外面及び補強板14に対して溶接により固着される。このため、ジョイント部材1の強度が更に向上する。また、流体管13が、中心管10、送泥管11及び排泥管12と一体のユニットとなっているため、他の電線や管と絡まったり、一方が他方を圧迫したり、途中で折れ曲がったりヒビが入ったりすることを防止することができる。
【0040】
2枚の補強板14、14は、図1ないし3に示すように、ジョイント部材の軸方向に延びる細長い略長方形の板であり、長手方向の両端部は、前部フランジ15及び後部フランジ16に溶接により固着される。補強板14の長辺の一つは、中心管10の斜め上の外面に溶接により固着されている。補強板14の短辺は、中心管10の斜め上の外面から斜め上方に向かって突出している。そのため、これらの2枚の補強板14、14と中心管10の上部の外面が、軸方向に延びる凹部100を形成する。
【0041】
前部フランジ15は、図1ないし3に示すように、中心管10、送泥管11、排泥管12及び流体管13、13、13、13を嵌合することができる内径を後部側に有する中心開口部156、送泥開口部157、排泥開口部158及び流体開口部159を有する。中心管10、送泥管11、排泥管12及び流体管13、13、13、13は、これらの開口部の後部側に前部フランジ15の厚さの半分程度の深さまで挿入された状態で、溶接により固着される。
【0042】
また、送泥開口部157及び排泥開口部158の前部側の内径は、送排泥管スリーブ110を嵌合することができる大きさになっている。また、流体開口部159の前部側の内径は、流体管スリーブ130を嵌合することができる大きさになっている。
【0043】
また、前部フランジの開口部は貫通しており、中心管10、送泥管11、排泥管12及び流体管13、13、13、13も貫通しているので、これらを嵌合、溶接した後でも、これらの開口部及び管は貫通していることになる。
【0044】
また、前部フランジ15は、その面を貫通する孔151、151、151、151を有する。第1実施形態では、前部フランジ15の孔151の個数は4個である。
【0045】
また、前部フランジ15の後方には、補強のための補強板152、152が溶接により固着されている。補強板152、152は、中心管10に対しても溶接により固着されている。
【0046】
また、後部フランジ16は、前部フランジ15とほぼ同様の形態を有する。すなわち、後部フランジ16は、中心管10、送泥管11、排泥管12及び流体管13、13、13、13を嵌合することができる内径を前部側に有する中心開口部166、送泥開口部167、排泥開口部168及び流体開口部169を有する。また、中心管10、送泥管11、排泥管12及び流体管13、13、13、13は、これらの開口部の前部側に後部フランジ16の厚さの半分程度の深さまで挿入された状態で、溶接により固着される。
【0047】
もっとも、後部フランジ16においては、前部フランジ15と異なり、補強板152、152の代わりに、後部フランジ16の前方に、水平面を有する固定用板162、162、163、163が4枚、溶接により固着されている。固定用板162、162は、補強板14、14に対しても溶接により固着されている。固定用板163、163は、中心管10に対しても溶接により固着されている。また、後部フランジ16のネジ孔161、161、161、161にはメスのネジ溝が形成されている。このネジ孔161、161、161、161の有効長を確保するために、後部フランジ16は前部フランジ15よりも厚く構成されている。
【0048】
キャスター17は、第1実施形態では中心管10の側面から斜め下方に向かって配置される。
【0049】
図4(c)のように、中心管10から突出する中空の略直方体の脚受部170に、脚部171が嵌挿される。脚受部170と脚部171は、ジョイント部材1の軸方向にピン172を差し込むことにより容易に固定される。差し込まれたピン172の先端部は、脚受部170及び脚部171を貫通して外部に突出し、ピンの先端部の横の留めピン孔174に抜け防止用留めピン173を差し込むことにより、ピン172の抜けが防止される。
【0050】
脚部171には、ピン172を差し込むためのピン孔175が、長さ方向に複数個配置されているため、ピン孔175の選択により、キャスター17の脚の長さを変更できる。また、ジョイント部材1は、長さの異なる複数の脚受部170を備えているので、脚受部170の選択によっても、キャスター17の脚の長さを変更することができる。
【0051】
脚部171の先端部には、ナイロン製の車輪176が取り付けられている。推進管3の内部を傷つけないようにするという効果の面、コストの面及び耐久性の面からは、車輪176の材質はナイロンが好適である。
【0052】
キャスター17の脚の長さは、推進管3の径の大きさに応じて、適宜調整される。ジョイント部材1の前部フランジ15が掘進機5又は直前のジョイント部材1に接続され、後部フランジ16が推進ジャッキ41又は直後のジョイント部材1に接続されて、ジョイント部材1の軸と推進管3の軸が平行になるようにジョイント部材1が推進管3内に配置されたときに、キャスター17の車輪176のみが推進管3の内側と接触する。また、このときに、中心管10の中心軸の延長上に掘進機5のレーザターゲット54が配置される。
【0053】
キャスター17の強度を増すために、キャスター17の脚受部170は、中心管10に対して溶接により固着されると共に、送泥管11又は排泥管12の外側にも溶接される。また、キャスターの脚受部170の斜め上の面には、該面と垂直に鉄鋼の補強板177(図1では省略)が溶接され、該補強板177は中心管10にも溶接されているため、キャスター17の強度は更に増している。
【0054】
次に、滑り止め18、18について説明する。
図1及び2のように、中心管10から突出する中空の略直方体の脚受部180に、略直方体の脚部181が嵌挿される。脚受部180と脚部181は、ジョイント部材の軸方向にピン172を差し込むことにより容易に固定される。差し込まれたピン172の先端部は、脚受部180及び脚部181を貫通して外部に突出し、ピン172の先端部の横の留めピン孔174に抜け防止用留めピン173を差し込むことにより、ピン172の抜けが防止される。
【0055】
脚部181には、ピン172を差し込むためのピン孔185が、長さ方向に複数個配置されているため、ピン孔の選択により、滑り止め18の脚の長さを変更できる。また、ジョイント部材1は、長さの異なる複数の脚受部180を備えているので、脚受部180の選択によっても、滑り止め18の脚の長さを変更することができる。
【0056】
脚部181の先端部186の材質は、推進管の内部を傷つけず、かつ滑り止めの効果も有するため、ナイロンが好適である。
【0057】
滑り止め18の脚の長さは、推進管3の径の大きさ及びキャスター17の脚の長さに応じて、適宜調整される。キャスター17の脚の長さよりも滑り止め18の脚の長さを若干、例えば2ミリメートル程度短くしておくことで、推進管3及びジョイント部材1を掘進機5、推進ジャッキ41等に接続して、推進管3及びジョイント部材1の軸を平行にする時には、滑り止めの先端部186は宙に浮いた状態になって、推進管3と接触しなくなる。
【0058】
前部フランジ15及び後部フランジ16を他のジョイント部材1等に接続せずに、ジョイント部材1を単体で推進管3内に置いた状態にした時に、キャスター17、17の車輪176、176と滑り止め18、18の先端部186、186のみが推進管3内部に接触するように、滑り止め18、18の長さが調整される。
【0059】
滑り止め18の強度を増すために、滑り止め18の脚受部180は、中心管10に対して溶接により固着されると共に、送泥管11又は排泥管12の外側にも溶接される。また、滑り止めの脚受部180の斜め上の面には、該面と垂直に鉄鋼の補強板187(図1では省略)が溶接され、該補強板187は中心管10にも溶接されているため、滑り止め18の強度は更に増している。
【0060】
保護部材19は、略長方形の板状のもので、補強板14に対し、3本のボルトにより固定されている。保護部材19には、ボルトと螺合するネジ孔が6個あり、補強板14には、一つの保護部材19と接続するためのネジ孔が3個ある。そのため、保護部材19の6個のネジ孔の内、いずれの3つのネジ孔を利用するかを選択することにより、保護部材19が斜め上に向かって突出する長さを調整することができる。
【0061】
保護部材19の位置及び突出する長さは、仮にジョイント部材1が推進管3内で傾いたり、横転したり、更には、逆さになってしまった場合に、キャスター17の車輪176、滑り止め18の先端部186又は保護部材19の先端部のみが推進管3の内側に接触するように調整されている。これにより、補強板14や前部フランジ15や後部フランジ16などが、推進管3の内側を傷つけてしまうことを防止することができる。
【0062】
第1実施形態においては、保護部材19は、補強板14の下部側に配置されているが、流体管13等他の部材との関係でスペースがあれば、補強板14の上部側に配置してももちろんよい。
【0063】
なお、図2(a)のジョイント部材1の長さは、対応する推進管3の長さと同じく1205ミリメートルで、外径は300ミリメートルである。
もっとも、この外径のジョイント部材の長さとしては、1203ミリメートル、2433ミリメートル、2435ミリメートル、3000ミリメートル等、様々な種類があり得る。
また、外径についても、推進管の大きさに応じて、様々な種類があり得る。
【0064】
(ジョイント部材の使用方法)
次に、泥水式推進工法におけるジョイント部材1の使用方法を説明する。
【0065】
泥水式推進工法においては、まず、背景技術の項で述べたように、発進立坑6及び到達立坑7を築造する。
次に、測量の上、管路センター、推進計画高及び機械据え付け高位置をマーキングする。
さらに、推進ジャッキ41を発進立坑6内に計画勾配及び計画方向に対応するように調整した上、据え付ける。
【0066】
次に、図7(a)のように、掘進機5を推進ジャッキ41に接続し、泥水処理機80等により送泥及び排泥を行い泥水を還流させながら掘進機5により掘削をする方法について説明する。
【0067】
掘進機5は、図9のように、前方から順に、先頭体52、本体53及びバックアップ管55からなる。
【0068】
先頭体52は、先端部に、カッターヘッド50とビット51を有する。
本体53は、内部にレーザターゲット54、送泥管56、排泥管57及び流体管58を有する。
バックアップ管55は、内部に送泥管56、排泥管57及び流体管58を有し、後部に後部フランジ59を有する。
【0069】
まず、掘進機5を、発進立坑6の下方に吊り下ろし、推進ジャッキ41の上に載せる。
【0070】
そして、バックアップ管55の後部フランジ59に対して、図10のヘッドキャップ42をボルト154によって接続する。ボルトは、ヘッドキャップの孔421と後部フランジ59のネジ孔591を貫通させる。また、後部フランジ59とヘッドキャップ42を接続する際に、後部フランジ59の送泥開口部597、排泥開口部598及び流体開口部599とヘッドキャップ42の送泥開口部427、排泥開口部428及び流体開口部429の間に、送排泥管スリーブ110ないし流体管スリーブ130を嵌合する。
【0071】
送排泥管スリーブ110及び流体管スリーブ130は、略円筒型で、2本のOリング1100、1300を外周に有しているため、それぞれのOリングが、後部フランジ59の開口部とヘッドキャップ42の開口部の内側に密着することによって、接続部分をシーリングすることができる。
【0072】
なお、ヘッドキャップ42の送泥管423及び排泥管424はフランジに対して回転可能になっており、図10(b)は送泥管423及び排泥管424を垂直にした状態の断面図である。
【0073】
そして、ヘッドキャップ42の送泥管423の端部4230を、発進立坑6内又は地上に配置された泥水処理機80に接続する送泥ライン61と接続する。また、ヘッドキャップ42の排泥管424の端部4240を、発進立坑6内又は地上に配置された泥水処理機80に接続する排泥ライン62と接続する。
【0074】
そして、泥水処理機80から、送泥ライン61、ヘッドキャップ42の送泥管423及び掘進機5の送泥管56を介して、掘進機5のチャンバに泥水を輸送する。これにより、掘進機5のチャンバ内を泥水で満たし、泥水圧を加えて切羽を安定させる。カッターヘッド50で掘削した土砂は、掘進機5の排泥管57、ヘッドキャップ42の排泥管424及び排泥ライン62を介して泥水処理機80に輸送される。泥水処理機80では、排泥ライン62から輸送された土砂の混じった排泥水を、泥水と土砂に分離して比重調整を行った後、泥水を再び送泥ライン61に還流し、連続的に掘削を行う。
【0075】
また、掘進機5には、地盤改良、止水のための薬液や、推進管の外周抵抗を低減して推力を低減するための滑剤を供給する必要がある。そのため、発進立坑内又は地上に配置された薬液供給装置又は滑剤供給装置からの流体ラインをヘッドキャップ42の流体管425に接続し、掘進機5の流体管58に薬液や滑剤を輸送しながら掘削を行う。なお、薬液及び滑剤は、2種類の液体を同時に用いることもある。本実施形態においては、掘進機5及びヘッドキャップ42は、4本の流体管を有しているため、2種類以上の薬液や滑剤を使用する場合には、薬液や滑剤の種類に応じて異なる流体管を用いることができる。
【0076】
また、掘進機5の回転等を制御するために、掘進機5の信号用の電線810を、地上の操作盤81に接続する。また、掘進機5の動力線を、地上の電源に接続する。さらに、掘進機5の油圧管820を、地上の油圧ユニット82に接続する。
【0077】
推進時には、掘進機5のバックアップ管55の後部の円環部551を、推進ジャッキ41の円環部410に接触させて、推進ジャッキ41の推力により推進する。
【0078】
そして、推進ジャッキ41が掘進機5を押し切ったところで、掘削を一旦停止し、掘進機5は地中に埋めた状態にしたままで、推進ジャッキ41の推進用の腕を再度縮めて元の位置に戻す。
さらに、掘進機5の後部フランジ59から、ヘッドキャップ42を取り外す。
【0079】
そして、地上にて、推進管3の中に送泥管11、排泥管12及び流体管13が一体化されたジョイント部材1を入れる。このとき、キャスター17の車輪176を転がして入れることにより、ジョイント部材1が推進管3の内部を傷つけることを避けることができる。また、仮にジョイント部材1が傾いたり、横転したり、更には、逆さになってしまった場合でも、保護部材19があるため、推進管3の内部を傷つけることを避けることができる。
【0080】
そして、ジョイント部材1を入れた推進管3を、地上から発進立坑6の底の推進ジャッキ41の上に吊り下ろす。このとき、推進管3の軸が略水平になるような状態で降下させる。この際、推進管3内のジョイント部材1は、2つの滑り止め18、18の先端部186、186が推進管内部と接触している状態となっている。このため、仮に何らかの原因で降下中に推進管3が傾いた場合であっても、滑り止め18の先端部186の摩擦力によって、ジョイント部材1が推進管3の外に滑り出してしまうことが防止されている。
【0081】
そして、ジョイント部材1の送泥管11、排泥管12及び流体管13が、掘進機5の送泥管56、排泥管57及び流体管58とシールされた状態で接続するように、ジョイント部材1の前部フランジ15を掘進機5の後部フランジ59に接続する。このとき、送排泥管スリーブ110及び流体管スリーブ130を各開口部の接続部分に嵌合する。後部フランジ59とヘッドキャップ42との接続の場合と同様に、各スリーブのOリングにより接続部分がシーリングされる。
【0082】
この時の接続方法としては、ジョイント部材1を後ろから前方に向かって押すことによって、送排泥管スリーブ110及び流体管スリーブ130を掘進機5及びジョイント部材1のそれぞれの開口部に嵌合させる。その際に、ジョイント部材1の後部をやや持ち上げるようにして滑り止め18を浮かせて押す。このため、本実施形態では、キャスター17を前に配置し、滑り止め18を後ろに配置している。
【0083】
ジョイント部材1の前部フランジ15と掘進機5の後部フランジ59とは、ジョイント部材1の前部フランジ15の孔151の後部側からボルト154を嵌めることによって固定する。孔151にはネジ溝が切ってないが、対応する位置にある掘進機5の後部フランジ59のネジ孔591には、メスのネジ溝が切ってあるため、ナットを使わなくとも、ボルトを締めるだけで、ジョイント部材と掘進機は接続・固定される。
【0084】
本実施形態では、ジョイント部材1はキャスター17及び保護部材19を有しているため、ジョイント部材1と掘進機5の接続作業の時に、ジョイント部材1によって推進管3の内部を傷付けることが防止される。
【0085】
また、推進管3の前端部を、掘進機5のバックアップ管55の円環部551に接続する。
【0086】
さらに、ジョイント部材1の後部フランジ16を、ボルト154により、ヘッドキャップ42と接続する。この際、ヘッドキャップ42の孔421にはネジ溝が切っていないが、後部フランジ16のネジ孔161にはメスのネジ溝が切ってあるため、ボルト154をヘッドキャップ42側から嵌合することにより、ナットがなくとも結合することができる。また、送泥開口部、排泥開口部及び流体開口部の接続部分には、送排泥管スリーブ110ないし流体管スリーブ130を嵌合することによってシーリングすることは、掘進機5の後部フランジ59の接続の場合と同様である。
【0087】
このようにして、ジョイント部材1の送泥管11、排泥管12及び流体管13を、後部フランジ16及びヘッドキャップ42を介して、送泥ライン61、排泥ライン62及び流体ラインに接続する。
【0088】
このように、従来の技術と異なり、本実施形態では、薬液や滑剤を供給する流体管13が油圧管820、動力線及び信号用の電線810とは別になっており、ジョイント部材1の一部としてユニット化されているため、流体管13が、油圧管820、動力線及び信号用の電線810と絡まったり、互いを圧迫したり、途中で折れ曲がったりヒビが入ったりすることは防止されている。
【0089】
さらに、第1実施形態では、掘進機5の油圧管820、動力線及び信号用の電線810を、ジョイント部材1の上部の凹部100の上に載せる。凹部100は、中心管10と補強板14に囲まれて軸方向に延びる溝状になっているため、信号用の電線810、動力線及び油圧管820がジョイント部材1と推進管3の間に挟まれて圧迫されたり、傷付いたり、切れたりすることが防止される。
【0090】
そして、推進管3の後端部を推進ジャッキ41の円環部410に接続する。
さらに、図13のように、ジョイント部材1の固定用板162及び固定用板163の間の溝及び推進ジャッキ41の溝部411に、略直方体の鉄鋼のブロック165を挿入する。これによって、ボルトよりも大きな面積でねじれ応力を受けることができるため、ジョイント部材1と推進ジャッキ41は、ねじれ応力に対して強固に固定される。また、このブロック165は取っ手部1651を備えているため、該ブロック165を手で容易に着脱することができる。
【0091】
この状態で、先程と同様に、掘進機5のチャンバ内と泥水処理機80の間で、泥水を還流させながら、掘進機5により掘削、推進をする。
推進力は、推進ジャッキ41の円環部410と推進管3の後端部を介して伝達する。
このときに、推進ジャッキ41に配置されたレーザトランシット60から目標とする掘進方向に向けてレーザ光を発射する。レーザ光は、ジョイント部材1の中心管内11を通過して、掘進機5のレーザターゲット54にあたり、掘進機5の位置ズレを検出することができる。
【0092】
以後同様に、推進管3及びジョイント部材1の後ろに順次推進管3及びジョイント部材1を継ぎ足して、掘削、推進を行っていく(図7(c)参照)。
【0093】
掘進機5の先端部のカッターヘッド50は、回転することにより掘削を行うが、掘進機5、ジョイント部材1、及び推進ジャッキ41は、前部フランジ15、後部フランジ16、ボルト154及びブロック165等により強固に接続されていること、並びに、ジョイント部材1には、軸方向に延びる補強板14が溶接されていることから、ジョイント部材1がねじれてしまういわゆるローリングが発生することはない。
【0094】
(回収)
図7(d)のように、掘進機5が到達立坑7にまで到達したら、掘進機5は到達立坑7から吊り上げて回収する。
【0095】
次に、ジョイント部材1を、推進管3から発進立坑6又は到達立坑7に引き抜く。この引き抜く際に、キャスターの車輪176が転がるため、推進管3内部を傷つけることがない。また、仮にジョイント部材1が傾いたり、横転したり、更には、逆さになってしまった場合でも、保護部材19があるため、推進管3の内部を傷付けることを避けることができる。
【0096】
そして、ジョイント部材1を、発進立坑6又は到達立坑7から吊りあげて回収する。このようにして、推進管3が地中に残されることになる。
【0097】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態よりも、小さな径の推進管に用いるためのジョイント部材2が用いられる。図15のように、ジョイント部材2の構造は、流体管23、23、孔251、251(図15(b)では、ボルトの中心に位置する)、ネジ孔261、261(図15(c)では、ボルトの中心に位置する)及び保護部材29のネジ孔の数がジョイント部材1の半分であること、保護部材29が補強板の上部側に配置されていることを除けば、概ねジョイント部材1と同じである。
【0098】
なお、図15(a)のジョイント部材2の長さは1005ミリメートルで、外径は230ミリメートルである。
もっとも、この外径のジョイント部材の長さとしては、1003ミリメートル、2000ミリメートル、2003ミリメートル等、様々な種類があり得る。
また、外径についても、推進管の大きさに応じて、様々な種類がありうる。
【0099】
また、ジョイント部材2の使用方法も、概ねジョイント部材1と同じである。
【0100】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。各実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略し、図示しない他の構成と組み合わせることができる。
【0101】
例えば、流体管、補強板、キャスター、滑り止め、保護部材等の個数を上述の実施形態と異ならせる構成もあり得る。
【0102】
また、中心管の位置は、掘進機5内のレーザターゲット54と発進立坑6内のレーザトランシット60の位置に応じて、必ずしもジョイント部材の中心付近にない構成もあり得る。
【0103】
また、キャスターの車輪、滑り止めの先端部及び保護部材の材質は、推進管の内側を傷つけない材質であれば、例えば、テフロンやゴム等とする構成もあり得る。
【0104】
また、キャスター及び滑り止めの突出方向については、斜め下方ではなく、下方とする構成も考え得る。また、上述の実施形態では、キャスター及び滑り止めは中心管から突出しているが、送泥管、排泥管、補強板、前部フランジ、後部フランジその他の部材から突出する構造もあり得る。また、掘進機とジョイント部材の接続方法によっては、キャスターと滑り止めの前後関係を上述の実施形態と異なる配置とすることもあり得る。
【0105】
また、上述の実施形態では、保護部材は斜め上方に向かって突出しているが、これに限定されず、上方や、水平方向等とする構成もあり得る。さらに、保護部材は板状の形状でなくとも、推進管内部を傷付けない形状であれば、例えばキャスターなどでもよい。
【0106】
また、掘進機やジョイント部材の接続方法として、ボルトだけでなく、ボルトとナットを使う方法や、連結フックを使う方法もあり得る。
また、ジョイント部材等を結合するボルトの個数は、第1実施形態においては4個であったが、これに限られず、2個とするなど他の構成もあり得る。
【0107】
また、上述の実施形態では、ジョイント部材1は一つの大きな凹部100を上部に備えているのみであるが、複数の小さな凹部又は溝を軸方向に配置し、それぞれの小さな凹部又は溝毎に異なる油圧管820、動力線及び信号用の電線810を載せ、あるいは嵌め込むことにより、これらの管・電線が互いに絡まったりする危険を更に防止することができる。
【0108】
また、上述の実施形態は、泥水を循環させる泥水式推進工法についてのものであったが、泥濃式推進工法や泥土式推進工法等においても、本発明のジョイント部材を用いることができる。この場合には、送泥管及び排泥管を介して高濃度泥水ないし土砂を圧送・排出し、必要に応じて圧送・排出のために適切な圧力で加圧・吸引する。
【0109】
また、この発明は、下水道の他、ガス管や地中電線管その他の推進管の施工にも用いられ得る。
【産業上の利用可能性】
【0110】
上述の本発明は、薬液や滑剤を輸送する流体管を掘進機の位置まで円滑に挿入することができるので、レジン管やヒューム管などを地中に圧入推進して埋設する推進工法において、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0111】
1 ジョイント部材
10 中心管
11 送泥管
12 排泥管
13 流体管
14 補強板
15 前部フランジ
16 後部フランジ
17 キャスター
18 滑り止め
19 保護部材
3 推進管
41 推進ジャッキ
42 ヘッドキャップ
5 掘進機
54 レーザターゲット
6 発進立坑
60 レーザトランシット
61 送泥ライン
62 排泥ライン
7 到達立坑
80 泥水処理機
81 操作盤
810 信号用の電線
82 油圧ユニット
820 油圧管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部フランジと後部フランジと中心管と送泥管と排泥管と流体管とを備え、推進管内に挿入可能な外形を有し、掘進機から推進ジャッキまで順次接続するジョイント部材であって、
前記ジョイント部材の軸方向に配設される前記中心管、前記送泥管、前記排泥管及び前記流体管は、
前方の端部が前記前部フランジの中心開口部、送泥開口部、排泥開口部及び流体開口部の後部側に開口された状態でそれぞれ固着され、後方の端部が前記後部フランジの中心開口部、送泥開口部、排泥開口部及び流体開口部の前部側に開口された状態でそれぞれ固着され、
前記前部フランジ及び前記後部フランジは、
貫通孔である前記中心開口部と前記送泥開口部と前記排泥開口部と前記流体開口部とを有する半径方向に広がる垂直面と、固定具を着脱可能に取り付けることができる連結部とを備え、前記連結部によって前記掘進機、他のジョイント部材、推進ジャッキ又はヘッドキャップと接続することができる、
ことを特徴とするジョイント部材。
【請求項2】
下方又は斜め下方に突出するキャスター及び滑り止めのうちいずれか又は両方を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のジョイント部材。
【請求項3】
前記ジョイント部材の中心軸から外側に向かって突出する保護部材を備える、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のジョイント部材。
【請求項4】
前記前部フランジ及び前記後部フランジと溶接により固着している補強板であって、前記中心管、送泥管、排泥管及び流体管のうち1本以上と溶接により固着している補強板を備える、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載のジョイント部材。
【請求項5】
略直方体のブロックと嵌合する溝部を備える推進ジャッキと前記ブロックを介して接続し、
前記後部フランジに係る前記固定具が前記ブロックであり、
前記後部フランジに係る前記連結部が前記ブロックと嵌合する溝部である、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4に記載のジョイント部材。
【請求項1】
前部フランジと後部フランジと中心管と送泥管と排泥管と流体管とを備え、推進管内に挿入可能な外形を有し、掘進機から推進ジャッキまで順次接続するジョイント部材であって、
前記ジョイント部材の軸方向に配設される前記中心管、前記送泥管、前記排泥管及び前記流体管は、
前方の端部が前記前部フランジの中心開口部、送泥開口部、排泥開口部及び流体開口部の後部側に開口された状態でそれぞれ固着され、後方の端部が前記後部フランジの中心開口部、送泥開口部、排泥開口部及び流体開口部の前部側に開口された状態でそれぞれ固着され、
前記前部フランジ及び前記後部フランジは、
貫通孔である前記中心開口部と前記送泥開口部と前記排泥開口部と前記流体開口部とを有する半径方向に広がる垂直面と、固定具を着脱可能に取り付けることができる連結部とを備え、前記連結部によって前記掘進機、他のジョイント部材、推進ジャッキ又はヘッドキャップと接続することができる、
ことを特徴とするジョイント部材。
【請求項2】
下方又は斜め下方に突出するキャスター及び滑り止めのうちいずれか又は両方を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のジョイント部材。
【請求項3】
前記ジョイント部材の中心軸から外側に向かって突出する保護部材を備える、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のジョイント部材。
【請求項4】
前記前部フランジ及び前記後部フランジと溶接により固着している補強板であって、前記中心管、送泥管、排泥管及び流体管のうち1本以上と溶接により固着している補強板を備える、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載のジョイント部材。
【請求項5】
略直方体のブロックと嵌合する溝部を備える推進ジャッキと前記ブロックを介して接続し、
前記後部フランジに係る前記固定具が前記ブロックであり、
前記後部フランジに係る前記連結部が前記ブロックと嵌合する溝部である、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4に記載のジョイント部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−241580(P2011−241580A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113705(P2010−113705)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(592017149)太閤テックス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(592017149)太閤テックス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
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