説明

ジルコニア架橋フッ素雲母、ガス吸着性、制菌性多孔粉体及びその製造法

【課題】 従来のアルミナ架橋フッ素雲母の製造に比し、製造作業が容易であり短時間に得られると共に、ガス吸着性、制菌性の優れた多孔粉体を提供する。
【解決手段】 膨潤性フッ素雲母と酢酸ジルコニなどのジルコニウム化合物水溶液とのインターカレーションにより、ジルコニウム化合物を侵入させて層間複合体を調製し、これを固液分離、固相洗浄を行った後、その乾燥物を加熱処理してジルコニア架橋フッ素雲母を製造すること、更には、これに銀イオン交換処理により銀イオン担持ジルコニア架橋フッ素雲母から成るガス吸着性、制菌性の多孔粉体を得ること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害ガスの吸着及び有害菌の生育阻止に用いられる多孔粉体の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
本願の出願人は、先に、青果物の呼吸作用によって発生する該青果物にとり有害なエチレンガスやその他の硫化水素、アンモニアなどの公害性ガスを吸着除去する吸着剤や制菌剤として用いられるアルミナ架橋フッ素雲母に係る発明を下記特許文献1及び特許文献2に開示した。
即ち、特許文献1では、OH/Al比が1.5以上の多核ヒドロキソアルミニウムを含む水溶液に、X0.51.0Mg2.03.0Li01.0(Si4O10)F2[X=Na又はLi]で示性される膨潤性フッ素雲母の懸濁液を添加し撹拌してインターカレーションにより層間複合体を形成し、該複合体を200〜750℃に加熱して膨潤性フッ素雲母の層間に活性アルミナとイオン交換性プロトンを配位して成るアルミナ架橋フッ素雲母を製造すること、更に、このアルミナ架橋フッ素雲母の懸濁液と、金属イオンを含む水溶液とを混合撹拌して銀イオンなどの金属イオンを配位して成る金属イオン担持アルミナ架橋フッ素雲母を製造し、これを有害ガスの吸着材や触媒として用いる発明を開示した。
特許文献2では、特許文献1の発明に係る金属イオン担持のアルミナ架橋フッ素雲母のガス吸着能に比し、青果物から発生するエチレン、その他の有害ガスの吸着能を向上せしめたガス吸着剤や制菌剤として用いる発明を開示したもので、その発明は、ホストに膨潤性フッ素雲母を用い、ゲストに多核ヒドロキソアルミニウムを用いて、インターカレーション反応により、膨潤性フッ素雲母の層間に多核ヒドロキソアルミニウムイオンが収容された複合体を生成せしめた後、該複合体を加熱処理し、層間に活性アルミナとイオン交換性プロトンが配位されたイオン交換能を有するアルミナ架橋フッ素雲母を生成せしめ、次いで、これをナトリウムイオン含有液で処理した後乾燥し、得られた多孔性のアルミナ架橋フッ素雲母にイオン交換により銀イオンなどの金属イオンを担持せしめたガス吸着除去剤の製造法を開示したものである。
【特許文献1】特開平11-246211公報
【特許文献2】特開2006-130358公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし乍ら、上記の特許文献1及び2に記載の発明は、ホストである膨潤性フッ素雲母に対し、製造原料であるゲストとして重合度の高い多核ヒドロキソアルミニウムを用いる必要がある。このものは、特に加温下で粒状金属アルミニウムを溶解させる金属アルミニウム法により調製されるが、その調製法は、適正な濃度としたAl2O3に適量の蒸留水を添加した後、90℃の加温下で試薬粒状金属アルミニウムを溶解させてOH/Al比を1.5以上に、例えば、2.495でAl2O3濃度が23.6wt.%の高濃度の多核ヒドロキソアルミニウム水溶液を調製するが、特定の濃度のAl2O3液に対する粒状金属アルミニウムの添加量の決定、反応後の反応成分の量、OH/Al比などに相当の注意を払わねばならない。
次に、このように調製した多核ヒドロキソアルミニウム水溶液と蒸留水に所定量を懸濁させた膨潤性フッ素雲母とを所定時間撹拌し、インターカレーションを行うが、層間に多核ヒドロキソアルミニウムの浸入に相当の時間がかかる。また、遠心分離機で固相を分離取得した後、蒸留水で洗浄するが、余分の成分を完全に除去する作業が困難であるなど、ゲストとして多核ヒドロキソアルミニウムを用いることに問題がある。
本発明は、かかる課題を解消し、膨潤性フッ素雲母をホストとし、新しいゲスト材を用いて簡易に製造できる新たな層間複合体と銀担持該層間複合体から成る吸着性、制菌性多孔体とその製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、請求項1に記載の通り、膨潤性フッ素雲母の層間に多核ヒドロキソジルコニウムとイオン交換性プロトンが配位して成るジルコニア架橋フッ素雲母に存する。
更に本発明は、請求項2に記載の通り、該ジルコニア架橋フッ素雲母の該プロトンを銀イオンで交換したことを特徴とするガス吸着性、制菌性多孔粉体に存する。
更に本発明は、請求項3に記載の通り、膨潤性フッ素雲母とジルコニル化合物のインターカレーションにより、膨潤性フッ素雲母の層間に多核ヒドロキソジルコニウムが収容された複合体を生成せしめた後、該複合体を加熱処理したことを特徴とする請求項1に記載のジルコニア架橋フッ素雲母の製造法。
更に本発明は、請求項4に記載の通り、該ジルコニア架橋フッ素雲母を直ちに、或いはナトリウムイオン液で処理し、乾燥した後、銀イオン液で処理し、次いで乾燥、粉砕することを特徴とするガス吸着性、制菌性多孔粉体の製造法に存する。
更に本発明は、請求項5に記載の通り、請求項4に記載の製造法により得た銀イオン担持多孔性粉体に結着剤を添加したものを加圧成形し、これを加熱焼結したことを特徴とするガス吸着性、制菌性多孔成形体の製造法に存する。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の発明に係るジルコニア架橋フッ素雲母は、銀イオンなどの金属イオンと交換可能であるため、請求項2に記載のガス吸着性、制菌性の多孔粉体を製造することができる。
請求項3に係る発明によれば、ホストとして用いる膨潤性フッ素雲母のゲストとしてジルコニウム化合物を用いたので、簡易にジルコニア架橋フッ素雲母を製造できる。
従って、また、請求項4に記載の発明によれば、銀イオン担持ジルコニア架橋フッ素雲母から成るガス吸着性、制菌性多孔粉体が簡易に製造できる。特に、ナトリウムイオン液で処理するときは、銀イオン交換量が増大し、該吸着性能の向上をもたらす。
更に、請求項5に記載の発明によれば、適用場所に応じた所望の形状の製品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施の形態例を以下に詳述する。
ホストとして用いられる膨潤性フッ素雲母としては、前記の特許文献1及び2に使用したと同じものが用いられる。
全般的には、化学式がX0.51.0Mg2.03.0Li01.0(Si4O10)F2(茲でXはNa又はLi)で表される膨潤性フッ素雲母が用いられ、好ましくは、2種類の膨潤性四ケイ素雲母、即ち、Na-テトラシリシックマイカNa1.0Mg2.5(Si4O10)F2及びNa-テニオライトNaMg2.0(Si4O10)F2、又はLi-テニオライトLiMg2.0(Si4O10)F2が用いられる。
これにゲストとして、例えば、酢酸ジルコニル、オキシ塩化物ZrOCl2などの水溶性ジルコニウム化合物と水中でインターカレーションを行う。ジルコニウム水溶液から生成するジルコニア微粒子のサイズが溶液濃度0.2mol/リットルまでに生長して行くまでに膨潤性フッ素雲母の層間に導入せしめる。特に、ジルコニアの形態として、酢酸ジルコニルを用いることにより、従来の多核ヒドロキソアルミニウムを用いるに比し、インターカレーション反応が極めて簡易であり、また、インターカレーション後の後処理も容易であり、膨潤性フッ素雲母との反応が定量的に行うことができる。
【0007】
次に、このインターカレーション終了後の反応液を遠心分離機や吸引濾過器により固液相に分離し、その固相体を洗浄するときは、前記の層間複合体の1〜2分の短時間で完璧な洗浄を行うことができた。次いで、該層間複合体を100℃以下の温度、例えば60℃程度の温度で乾燥する。この乾燥物は軽く粉砕することにより、ジルコニア架橋フッ素雲母の粉体が得られる。次いで、これを200〜750℃の高温で加熱処理することにより多孔焼結粉体が得られる。
上記の得られた本発明の層間複合体、即ち、ジルコニア架橋フッ素雲母を電子顕微鏡で観察したところ、層間をジルコニアゾル、即ち、多核ヒドロキソジルコニウムで架橋していることが確認された。その架橋体の生成の理由は、現在明らかでない。
【0008】
このようにして得られた層間複合体は、その層間に多核ヒドロキソジルコニウムとイオン交換性プロトン(H+)が配位しているので、次いで、該プロトンを銀イオンでイオン交換処理することにより、銀イオン担持ジルコニア架橋フッ素雲母から成るガス吸着性・制菌性多孔粉体が製造できる。
この場合、ジルコニア架橋フッ素雲母を水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの水溶液から成るナトリウムイオン含有液に浸漬処理した後、一旦乾燥し、その層間にNa+を配位せしめたNa+賦活の層間複合体とした後、これを硝酸銀水溶液などの銀イオン含有液で処理するときは、イオン交換容量の増大した、従って、ガス吸着能の向上した銀イオン担持ジルコニア架橋フッ素雲母から成る吸着性、制菌性多孔粉体が得られる。
【0009】
次に本発明の銀イオン担持ジルコニア架橋の製造法の実施例を詳述する。
実施例1
膨潤性フッ素雲母として、Na-四ケイ素雲母、NaMg2.5(SiO4O10)Fe2(TMS)1gを、15℃の蒸留水200mlに添加したものに酢酸ジルコニル水溶液40mlを添加した水溶液を注入した混合液を30分放置後、3時間撹拌し、インターカレーションを行った。次いで、この反応液を吸引濾過器(ヌッチェ)を用いて固液分離、洗浄を行った。この間、1〜2分の短時間で完全な固液分離と固相の洗浄を行うことができた。次いで、得られた固相、即ち、層間複合体を60℃の温度で乾燥し、軽い粉末2.34gが得られた。次いで、この粉末を400℃で加熱し、ジルコニア架橋フッ素雲母の焼結体を得た。次いで、これを粉砕し、その多孔粉体とした。このジルコニア架橋フッ素雲母の諸特性を、上記の実施条件と共に下記表1に示す。
【0010】
【表1】

【0011】
次いで、この粉状の該ジルコニア架橋フッ素雲母を銀イオン液として、2.54g/100mlの濃度の硝酸銀水溶液から成る銀イオン液でAg+イオン交換処理を行った後乾燥した。その結果、Ag+交換量約2mass%、比表面積(BET)191m2/gを有する銀イオン担持ジルコニア架橋フッ素雲母が得られた。
このように、膨潤性フッ素雲母の膨潤性を気遣うことなく、層間複合体反応も容易に行われ、分離洗浄も簡単に短時間で行うことができ、而も、多核ヒドロキソジルコニウムを生成した銀イオン担持ジルコニア架橋フッ素雲母が簡易に得られた。
【0012】
上記に得られた銀イオン担持ジルコニア架橋フッ素雲母から成る多孔粉体のエチレン吸着能を調べるべく密閉ガラス容器内に同多孔粉体を5g入れた状態で、エチレン500ppmを投入し、4℃に保持し乍らそのガス吸着能を調べた。その結果、14時間経過した時点でエチレン残留量は0になった。
【0013】
また、同多孔粉体につき、制菌性試験を下記のように行い、抗菌性を有することを確認した。
a)感受性測定用培地の調製:
各L字管に感受性培地、マラーヒントンブロス(Muller Hinton Broth)を10ml入れ、180℃で120時間乾燥滅菌した後、その各培地に上記の多孔粉体を試薬として、32,16,8,4,2,1及び0.5mgを夫々添加し、7種類の感受性測定用培地を調製した。
b)試験用菌液(接種用菌液)の調製:
大腸菌、エシエリキア コリ IFO 3972(Escherichia coli IFO 3972)を試験菌とし、これを栄研株式会社製普通寒天培地で36℃±1℃、24時間培養した後、その増殖した菌体を前記の増菌用倍地に接種し、36℃±1℃、16〜24時間培養した後、菌数が1.0〜5.0×104/mlとなるように前記の増菌用培地で希釈し接種用菌液を調製した。
c)前記の調整した7種類の感受性測定用培地に、前記の接種用菌液0.1mlを添加、混合した後、36℃±1℃、24時間振とう培養した。
d)判定:
前記の培養後、発育が阻止された最低濃度をもって、試験菌に対する該試料の最小発育濃度(MIC)とした。
e)判定結果:
大腸菌に対する該試料の最小発育濃度は500μg/mlであった。かくして、本発明の上記銀イオン担持ジルコニア架橋フッ素雲母から成る多孔粉体は制菌性を有することを確認した。
【0014】
実施例2
実施例1に記載の実施条件のうち、ホストとして用いた膨潤性Na-四ケイ素雲母(TMS)を3gとしたこと、放置時間を10分としたこと以外は、実施例1と同じ条件で実施してジルコニア架橋フッ素雲母粉体3.36gを得た。次いで、これを400℃で加熱処理してジルコニア架橋フッ素雲母の焼結体を得た。次いで、これを粉砕し、その多孔粉体とした。次いで、該多孔粉体を、実施例1と同じ条件でAg+イオン交換処理を行った後乾燥し、銀イオン担持ジルコニア架橋フッ素雲母から成る多孔粉体を得た。
上記実施例2の実施条件と該多孔粉体の諸特性を表1に示す。
表1には、実施例2及び3の製造条件と実施例2及び3により製造された実施品2及び3の物理的特性を示す。
【0015】
実施例3
実施例1に記載の実施条件のうち、ホストとして用いた膨潤性Na-四ケイ素雲母を8g、蒸留水を800mlゲストとして用いたこと、これに酢酸ジルコニル水溶液を160ml添加したこと以外は、実施例1と同じ条件で実施してジルコニア架橋フッ素雲母粉体9.91gを得た。次いで、これを500℃で加熱処理してジルコニア架橋フッ素雲母の焼結体を得た。次いで、これを粉砕し、その多孔粉体とした。次いで、該多孔粉体を、実施例1と同じ条件でAg+イオン交換処理を行った後乾燥し、銀イオン担持ジルコニア架橋フッ素雲母から成る多孔粉体を得たこの実施例3の実施条件と該多孔粉体の諸特性を表1に示す。
【0016】
実施例4
実施例1でホストとして用いたNa-テニオライトに代え、Li-テニオライト、LiMg2Li(Si4O10)F2を2g用いたこと以外は実施例1と同じ条件で実施し、ジルコニア架橋フッ素雲母粉体2.41gを得た。次いで、実施例1と同じ条件で実施し、ジルコニア架橋フッ素雲母の焼結体を得た後、銀イオン担持ジルコニア架橋フッ素雲母から成る多孔粉体を得た。この実施例4の実施条件と該多孔粉体の諸特性を下記表2に示す。
【0017】
【表2】

【0018】
実施例5
実施例4に記載した実施条件のうち、Li-テニオライトの使用量を3gとし、放置時間を20分、インターカレーションの反応時間を4時間とした以外は、実施例4と同じ実施条件で実施し、ジルコニア架橋フッ素雲母の粉体2.46gを得た。次いで、この粉体を500℃で加熱処理した以外は、実施例4と同じ条件で実施し、最終的に、銀イオン担持ジルコニア架橋フッ素雲母から成る多孔粉体を得た。実施例5の実施条件と該多孔粉体の諸特性を下記表2に示す。
【0019】
実施例6
ホストとしてNa-四ケイ素雲母を用い、ゲストとして、酢酸ジルコニウムに代え、塩化ジルコニウム(ZrOCl2)を用いた。
即ち、ホストとして、実施例1で使用したと同じNa-TSMを用い、これに蒸留水を加え、14g/1リットルのNa-TSM懸濁液を調製した後、これを4等分した。次いで、この各懸濁液にゲストとして塩化ジルコニウム(ZrOCl2)溶液(32.3g/l)を200ml、500ml、1000ml、1500mlを夫々添加し、夫々40℃、60℃、80℃、100℃でインターカレーション反応を2時間夫々行い、夫々層間複合体を得た。次いで、その各層間複合体について、ヌッチェにより吸引濾過して、その固相を1リットルの蒸留水で5回洗浄し、PVAを除去した。次いで、これを60℃で乾燥した後、4つの層間複合体について、夫々、400℃、500℃、600℃及び800℃で昇温1.5℃/minで夫々3時間加熱処理し、夫々のジルコニア架橋フッ素雲母を得た。次いで、各焼結体を粉砕し、多孔粉体とした。その各多孔粉体につき、実施例1と同じ条件で銀イオン交換処理を行った後、乾燥して各銀イオン担持ジルコニア架橋フッ素雲母から成る多孔粉体を得た。4種類の多孔粉体の高温処理温度と比表面積との関係は、800℃処理品の比表面積は200m2/g以上、600℃処理品のそれは250m2/g、400℃処理品は220m2/gであった。
【0020】
実施例7
実施例1で得られた銀イオン担持ジルコニア架橋フッ素雲母の多孔粉体に、非晶質アルミナゾルを10重量%以下の範囲で添加混合した後、任意の方法で型にいれ、軽度の押圧を加えて成形した。次いで、この成形体を100℃で5時間乾燥して直方体の多孔成形体を得た。このものは、2〜5g/cm3の軽量な多孔成形体であり、各種ガスを吸着した。
例えば、該多孔成形体の5gを収容し、エチレンガスを1000ppm閉じ込めた密閉容器を30分放置したところ、残留エチレンガスは10ppmと減少していた。
【0021】
実施例8
実施例1に従って得られた層間複合体の粉末を、350℃,500℃,600℃,700℃で夫々加熱処理して得られた4種類のジルコニア架橋フッ素雲母A,B,C,Dの焼結体を粉砕して成る4種類の多孔粉体につき、各粉体25gを採取し、これを0.1mmol/リットルのNaCO3 100mlと0.02mmol/リットルのNaOH 100mlの混合水溶液に投入し、12時間スターラーで撹拌してNa+賦活処理を行った後、その反応液を吸引濾過器又は遠心分離機で固液分離して得られた固相体を100℃で1時間加熱し、脱水した。かくして得られたこのように処理した試料を容器に入れ、10mol/リットルの硝酸銀水溶液を4リットル添加し、25度の恒温槽に入れ、撹拌し乍ら5時間イオン交換反応を行った。次いでこれを固液分離し、固相について洗浄、乾燥を行い、Na+賦活のAg+担持ジルコニア架橋フッ素雲母の多孔粉体を得た。この4種類の多孔粉体A,B,C,Dにつき、イオン交換量を測定した。その結果を下記表3に示す。
【0022】
【表3】

【0023】
上記の4種類の本発明の多孔粉体につき、夫々エチレン吸収率試験を次のように行った。内容積920mlのガラス容器を4個用意し、その容器内に各該多孔粉体を5g入れ密封し、エチレンガスを1000ppm注入し、温度を6℃,30℃,60℃に夫々変えて保ち、反応時間とエチレンガス吸収率時間を測った。その結果を下記表4に示す。
【0024】
【表4】

【0025】
このように、本発明のジルコニア架橋フッ素雲母は優れたガス吸着能を有することが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨潤性フッ素雲母の層間に多核ヒドロキソジルコニウムとイオン交換性プロトンが配位して成るジルコニア架橋フッ素雲母。
【請求項2】
該ジルコニア架橋フッ素雲母の該プロトンを銀イオンで交換したことを特徴とするガス吸着性、制菌性多孔粉体。
【請求項3】
膨潤性フッ素雲母とジルコニル化合物のインターカレーションにより、膨潤性フッ素雲母の層間に多核ヒドロキソジルコニウムが収容された複合体を生成せしめた後、該複合体を加熱処理したことを特徴とする請求項1に記載のジルコニア架橋フッ素雲母の製造法。
【請求項4】
該ジルコニア架橋フッ素雲母を直ちに、或いはナトリウムイオン液で処理し、乾燥した後、銀イオン液で処理し、次いで乾燥、粉砕することを特徴とするガス吸着性、制菌性多孔粉体の製造法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造法により得た銀イオン担持多孔性粉体に結着剤を添加したものを加圧成形し、これを加熱焼結したことを特徴とするガス吸着性、制菌性多孔成形体の製造法。

【公開番号】特開2009−249255(P2009−249255A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101244(P2008−101244)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(504408443)
【出願人】(594022286)
【Fターム(参考)】