説明

スイッチとその製造方法

【課題】他の実装用パッケージを必要としない安価なスイッチを提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも一方に外部電極を設けた二枚の基板9、10を貼り合わせて内部に空隙部を形成し、この空隙部に、下部電極層20、圧電体層21、上部電極層22を順に積層して形成した駆動部16と、これら上部電極層22、下部電極層20および圧電体層21の少なくとも一部からなる弾性体部17を介して、前記空隙部内に両持ちで支持、懸架された第一の電極部19と、この第一の電極部19と一定の間隔で対向配置された第二の電極部24を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチに関するものであり、特に数十GHzの信号周波数まで機能するマイクロスイッチとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や無線LANなどの無線通信機器では、送信と受信信号の切替えや内蔵アンテナと外部アンテナなどの切替える用途の一部に高周波で切替え可能なスイッチが用いられている。携帯電話では、利用されている周波数帯域やその種類から広い周波数帯域に対応できるスイッチが求められている。
【0003】
最近では、MEMS(Micro Electoro Mechanical Systems:以下「MEMS」と呼ぶ)を利用して微小構造のスイッチを形成することにより、数GHzの周波数帯域に対応した例が提案されている。
【0004】
図18は、MEMSにより形成したマイクロスイッチの一例を説明するための外観斜視図である。駆動部は片持ち構造のアクチュエータであり、基板1上に設けた固定部2を固定端として、この固定部2上にアクチュエータ3を他端に向けて延伸させている。このアクチュエータ3の自由端3a側の底面には第一の電極4が設けられており、この第一の電極4に対向して基板1上には第二の電極5が設けられている。アクチュエータ3は、その下方より、下部電極6、圧電体7、上部電極8で構成されており、この上、下部電極8、6に電圧を印加させることで圧電体7を反らし、先端に設けた第一の電極4と第二の電極5との間隔を変化させることによりスイッチ動作を行うものである。
【0005】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2006−346830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のアクチュエータ3を用いて微小構造のスイッチを構成する場合、信頼性や取扱いを考慮して、セラミックパッケージなどの実装用凹部を設けた筐体を別に準備し、この筐体へアクチュエータ3を実装した後、内部を真空あるいは不活性ガス雰囲気に置換し気密封止する必要がある。そのため、実装やパッケージなどによりコストが高くなるという課題があった。
【0007】
そこで本発明は、パッケージ一体型の安価なスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして上記目的を達成するために、本発明は、表面に設けた有底の第一の溝部上に、下部電極層と、圧電体層と、上部電極層を順に積層してなる駆動部と、これら上部、下部電極層および圧電体層の少なくとも一部からなる弾性体部を介して二辺を保持、懸架された第一の電極部を備えた第一の基板と、裏面に第一、第二の外部電極を有し、表面に設けた第二の溝部の底部に、その一部が第一の貫通電極を介して前記第一の外部電極へ接続された第二の電極部と、前記第二の外部電極へ接続された第二の貫通電極を備えた第二の基板とからなり、これら第一、第二の基板を貼り合わせることで、前記第一、第二の電極部を一定の間隔で対向させるとともに、前記上部、下部電極層と第二の外部電極とを接続させたものであって、この第二の外部電極を介して内部の上部、下部電極層に電圧を印加し圧電体層を反らせ、前記第一、第二の電極部間の間隔を変化させることで、第一の外部電極の切替え動作を行うスイッチとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスイッチは、少なくとも一方に外部電極を設けた二枚の基板を貼り合わせて内部に空隙部を形成し、この空隙部に、下部電極層、圧電体層、上部電極層を順に積層して形成した駆動部と、これら上部、下部電極層および圧電体層の少なくとも一部からなる弾性体部を介して、前記空隙部内に両持ちで支持、懸架された第一の電極部と、この第一の電極部と一定の間隔で対向配置された第二の電極部を設けたものである。前記外部電極は、貫通電極を介して第二の電極部に接続された第一の外部電極と、駆動部の上部、下部電極に接続された第二の外部電極とからなり、この第二の外部電極を介して電圧を印加し、圧電体層を反らせて第一、第二の電極部間の間隔を変化させることで、第一の外部電極の切替え動作を行うものである。このように、第一、第二の基板を用いてウエハプロセスで一括してスイッチの動作部を形成するとともに気密封止することができるので、実装が不要で新たなパッケージ等を必要としない安価なスイッチを提供できる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図を用いて詳細を説明する。
【0011】
図1は、本発明のスイッチの一例を説明するための外観斜視図である。
【0012】
本実施の形態におけるスイッチは、シリコンやガラスなどからなる絶縁性の第一の基板9と、第二の基板10とを貼り合わせ、その内部にスイッチの動作部を内包するものである。スイッチの天面、すなわち第二の基板10の裏面側には、内部に導通した複数の外部電極11、12、13、14が形成されている。例えば、第一の外部電極11、12は、内部の伝送線路に、第二の外部電極13、14はスイッチ動作を行う動作部に接続されており、この第二の外部電極13、14に通電して電圧を印加することで、第一の外部電極11、12のオン、オフや切り替えなどのスイッチ動作を行うものである。
【0013】
次に内部構造の詳細を、断面図を用いて説明する。図2はスイッチの内部構造であり、図1のA−AA断面図である。
【0014】
下方より第一の基板9であるが、その表面には有底の第一の溝部15が設けてあり、さらに、この第一の溝部15の周縁部から駆動部16と弾性体部17を第一の溝部15上に延伸させ、その弾性体部17の先端にスイッチの短絡片となる導電体部18を形成した第一の電極部19が支持されている。本実施の形態は、第一の電極部19の対向する二辺を、これら弾性体部17と駆動部16を介して両持ちで支持することで、第一の電極部19は第一の溝部15上に懸架された状態にある。
【0015】
第一の電極部19とそれを支持する弾性体部17は、その下方より、白金からなる下部電極層20と、この下部電極層20上にチタン酸ジルコン酸鉛(以降「PZT」と記す)からなる圧電体層21を積層して形成している。また、第一の電極部19に設けた導電体部18は、圧電体層21上に金からなる電極層を形成した後、さらにその最表層にTa25を形成している。この最表層のTa25は、伝送線路など他の電極に当接した時に両者が固着する、いわゆるスティッキング現象を防止するためのものである。
【0016】
駆動部16は、上述した白金、PZTからなる下部電極層20、圧電体層21上に、さらにクロムからなる上部電極層22を数ミクロンの厚みで形成している。また、下部電極層20を露出させた第一の取出し電極22aと、上部電極層22につながっている第二の取出し電極22bを、駆動部16が支持されている第一の溝部15の周縁部に対向して設けている。
【0017】
次に上方の第二の基板10であるが、第一の基板9に対向する底面(表面)には、第一の基板9と同様に有底の第二の溝部23が設けられている。さらにこの第二の溝部23の底部には、伝送線路となる第二の電極部24と、導電性材料で充填された貫通孔25が複数設けられている。この貫通孔25を介して第二の電極部24は、天面(裏面)に設けられた第一の外部電極11、12(図1)に接続されている。
【0018】
第一、第二の有底の溝部15、23を対向させて、これら第一、第二の基板9、10を貼り合わせることで、内部に空隙部を形成するとともに、第一の電極部19と第二の電極部24は一定の間隔で対向させる。また、第一、第二の取り出し電極22a、22bは、金属や導電性ペーストからなるバンプなどを介して第二の外部電極13、14へ接続されている。これら第二の外部電極13、14に通電することにより上部、下部電極層20、22に電圧を印加して圧電体層21を反らせ、懸架されている第一の電極部19を上下に駆動させる。そして、第一の電極部19と第二の電極部24を当接と離脱、あるいは両電極部間の容量を変化させることで第一の外部電極11、12間をオン、オフまたは切り替えるスイッチ動作を行うものである。
【0019】
尚、第一、第二の基板9、10の接続には接着剤を用いても良いが、内部を不活性ガスや真空に置換する場合は出ガスを考慮して陽極接合や直接接合、金属接合などを選択する。
【0020】
次に、第一、第二の基板9、10それぞれの構造について、斜視図を用いてその詳細を説明する。
【0021】
図3は、貼り合わせ前の第一の基板9を説明するための斜視図である。
【0022】
シリコンやガラスなどからなる絶縁性の第一の基板9と、この基板の一部に設けた有底の第一の溝部15と、この第一の溝部15の上方に配置されて、スイッチの短絡片となる導電体部18を形成した第一の電極部19と、弾性体部17と駆動部16とからなり、弾性体部17側の一端で第一の電極部19を、駆動部16側の一端で第一の溝部15の周縁部に支持することで、第一の電極部19を第一の溝部15の上に両持ちで懸架している。
【0023】
本実施の形態では、第一の電極部19の外形を矩形とし、弾性体部17と駆動部16を第一の溝部15の短辺側周縁部より、それぞれ二本略平行となるように配置している。そして、これら二本の弾性体部17と駆動部16で、第一の電極部19の対向する二辺の両端部をそれぞれ支持することで、第一の電極部19を両持ち構造で第一の溝部15の上に懸架しているものである。このように略平行に二本の弾性体部17および駆動部16で第一の電極部19を支持、懸架することにより、振動などが加わった場合であっても第一の電極部19が捩れることがないので、確実に切替え動作を行うことができる。
【0024】
また、第一の電極部19は、略中央にスイッチの短絡片となる導電体部18と、それを囲むように貫通部26が設けられている。この貫通部26により、第一の電極部19は一定の空隙が設けられた桟形状となっており、この貫通部26の非形成領域である桟の幅は、少なくとも駆動部16の幅より狭くしている。
【0025】
弾性体部17は、駆動部16を形成している下部電極層20と圧電体層21とからなり、上面から見たとき、その外形は略S字の折り返し形状となっている。この弾性体部17がバネとして作用することで、駆動部16を反らせたときに生じる第一の電極部19への応力を、伸縮することで緩和し、破損することなく繰り返し上下に駆動させることができる。このとき重要なのが、弾性体部17の形状である。弾性体部17の共振周波数は、少なくともスイッチの応答速度(振動周波数)より大きくなるように略S字の折り返し形状を設計する。こうすることで、第一の電極部19を共振させることなく、所望の応答速度で動作させることができる。また、この弾性体部17の幅と折り返しの間隔は、少なくとも幅に対して空隙が大きくなるように設計する。
【0026】
本実施の形態では、上述したように第一の電極部19を、弾性体部17を介して駆動部16により両持ちでかつ、端部の四箇所をそれぞれ支持する。こうすることにより製造工程に起因する駆動部16の反り量(変位量)のバラツキを緩和し、第一の電極部19を傾斜させることなく第二の電極部24に対して略水平に上下動させることができる。さらに、図4に示す図3のB−BB断面図のように、第一の電極部19に形成した導電体部18の断面形状を、曲面を有する凸形状とすることで、第一の電極部19が傾斜した場合であっても、対向する第二の電極部24に確実に当接させることができる。
【0027】
次に第二の基板10について説明する。図5は貼り合わせる前の第二の基板10であり、第一の基板9と貼り合わせる面(表面)を上にした外観斜視図である。
【0028】
第二の基板10は、第一の基板9と同様にシリコンやガラスなどからなる絶縁性の基板からなり、その表面の一部に、エッチング等で形成された有底の第二の溝部23が設けてある。この第二の溝部23の底部には、略中央部で分割された伝送線路である第二の電極部24がさらに設けられている。この第二の電極部24は、それぞれ第一、第二の貫通孔25a、25bを介して裏面の第一の外部電極11、12へ接続されている。また、第二の溝部23の底部には、第三、第四の貫通孔25c、25dが形成されており、裏面の第二の外部電極13、14とそれぞれ接続されている。尚、これら第一、第二、第三、第四の貫通孔25a、25b、25c、25dは、はんだなどの金属や導電性ペーストなどの導電性材料で充填されている。
【0029】
次に製造方法について説明する。
【0030】
まず初めに第一の基板9について順に説明する。
【0031】
図6は、第一の基板9の製造方法を説明するための図であり、図3のC−CC断面図である。以下、このC−CC断面図を用いて各工程を追って説明する。
【0032】
本実施の形態では、第一の基板9としてシリコンを選択した。まず初めに、図6に示すごとく、第一の基板9上の一面に白金からなる下部電極層20と、PZTからなる圧電体層21をスパッタ等により順に積層する。
【0033】
次に図7に示すごとく、感光性のレジスト等で覆ってパターニングした後、CF4やArガスによるICPドライエッチングで下部電極層20と圧電体層21の一部を除去し、第一の電極部19(図1)や弾性体部17、駆動部16などを形成する。
【0034】
次に図8に示すごとく、フッ酸や硝酸などを用いて、下部電極層20をストッパーとして上層の圧電体層21をウエットエッチングし、第一の基板9上の一部から下部電極層20を露出させる。この露出した下部電極層20が、第一の取出し電極22aとなる。
【0035】
次に図9に示すごとく、このパターニングした表面全面に、クロムからなる上部電極層22を、蒸着などを用いて形成する。
【0036】
次に図10に示すごとく、このクロムからなる上部電極層22上を再び感光性のレジストで覆いパターニングした後、図7と同様にICPドライエッチングを用いて上部電極層22の一部を、駆動部16を除いて除去する。上記工程により、下部電極層20と圧電体層21、さらに上部電極層22とからなる弾性体部17、駆動部16、第一の電極部19を形成するものである。
【0037】
次に、図11に示すごとく、第一の電極部19の一部に金の電極層、さらに最表層にTa25を形成して、短絡片となる導電体部18を形成する。導電体部18を形成する際、上記工程と同様に感光性のレジストでパターニングした後、ICPドライエッチングを用いて行うものである。
【0038】
最後に、図12に示すごとく、再び感光性のレジストを塗布してパターニングした後、ドライエッチングを用いて上記で第一の基板9上に形成した駆動部16、弾性体部17、第一の電極部19の直下および周囲の第一の基板9をドライエッチングで除去し、有底の第一の溝部15を形成する。このドライエッチングにより、駆動部16、弾性体部17、第一の電極部19直下に第一の基板9は除去されるとともに、第一の電極部19は、弾性体部17、駆動部16を介して第一の溝部15の周縁部に支持されるとともに、この第一の溝部15上に懸架されるものである。
【0039】
このとき重要なのが、ドライエッチングに用いるガスの選択と、第一の電極部19、弾性体部17、駆動部16を剥離させる順番である。この工程では、第一の電極部19や弾性体部17などの側面から下面へえぐるように回り込ませて、下部電極層20の直下の第一の基板9をエッチングで除去する必要がある。そのため、シリコンに対して等方性エッチングが可能なXeF2をエッチング用のガスとして用いた。そして、第一の基板9を除去して懸架させる順番を、初めに第一の電極部19および弾性体部17とし、最後に駆動部16を懸架させるように、それぞれの幅を設計している。これは、先に駆動部16から第一の基板9を除去して懸架させた後、弾性体部17と第一の電極部19を懸架させた場合、駆動部16の懸架時に生じる応力が弾性体部17に集中して断裂することを防止するためである。断裂を防止し、第一の基板9を除去して懸架させる順番を制御するため、第一の電極部19は、導電体部18の周囲に貫通部26(図3)を設けて桟のような形状とし、さらに、この桟および弾性体部17の幅を駆動部16の幅より充分に狭くすることで、第一の電極部19と弾性体部17の直下から順に第一の基板9をエッチングで除去するものである。このように、それぞれの幅の制御のみで、ドライエッチングの条件などを変更する必要がなく、断裂など損傷を与えずに確実に第一の電極部19と弾性体部17直下の第一の基板9を除去して懸架させるものである。
【0040】
上記の工程をウエハで行うことにより、図13に示すごとくシリコンウエハ27に第一の基板9を複数個一括して形成するものである。
【0041】
次に第二の基板10について説明する。
【0042】
図14は、第二の基板10の製造方法を説明する図であり、図5のD−DD断面図である。本実施の形態では、第二の基板10としてガラスを用いた。
【0043】
まず初めに、鏡面加工を施したガラスの一面にフィルムレジストなどの感光性のレジストを塗布しパターニングを行う。このとき、貫通孔25を形成する箇所はフィルムレジストが除去されてガラスを露出させている。次にサンドブラストなどを用いて露出させたガラス部分を加工し、一定の深さの有底溝を形成する。次にこの一面に対向する裏面にも同様に感光性のレジストを塗布した後、サンドブラストやドライまたはウエットエッチング等を用いて第二の溝部23を形成する。このときに、先に形成された有底の溝部は、第二の溝部23を貫通することとなる。次に、第二の溝部23の底部を貫通したこれら貫通孔25に、めっき法や印刷法などを用いて銅、ニッケル、金、はんだなどの金属や、導電性ペーストなどを充填した後、これら貫通孔25の一部に接続するように、第二の溝部23の略中央を横切る第二の電極部24を形成する。この第二の電極部24は、上記の貫通孔25、第二の溝部23と同様に感光性のレジストを用いて形成してもよいし、メタルマスクなどを用いて形成してもよい。重要なのは、少なくともその一部が貫通孔25に重畳させることで電気的に接続させることである。尚、第二の溝部23の深さは、第一の基板9に形成された第一の電極部19の反りや上下動する変位量などを考慮して設計するものである。
【0044】
上記の工程を第一の基板9と同様にウエハで行うことにより、図15に示すごとくガラスウエハ28に第二の基板10を複数個一括して形成するものである。
【0045】
上記のようにそれぞれのウエハ27、28に第一の基板9と第二の基板10を形成した後、図16に示すごとく、第一の基板9と第二の基板10を、それぞれの一面に形成した第一、第二の溝部15、23を対向させ、第一、第二の電極部19、24が重なるように位置合わせして貼り合わせる。こうすることにより、第一、第二の電極部19、24は一定の間隔で対向し、スイッチを構成するこれら第一、第二の電極部19、24、弾性体部17、駆動部16等を内包させる。この貼り合わせを行う際、第一の基板9の第一、第二の取り出し電極22a、22b上にはんだなどの金属や導電性ペーストからなる突起などを予め形成しておく。これらの突起を設けることで、貼り合わせと同時に第二の基板10の裏面に設けた第二の外部電極13、14は、突起を介して第一の基板9の下部電極層20と上部電極層22に接続される。これら第二の外部電極13、14に通電して一定の電圧を印加することにより、駆動部16、弾性体部17を介して第一の電極部19は、第一、第二の溝部15、23で形成された空洞内で上下動し、第二の電極部24に当接と離脱、あるいはこれら電極部間の容量を変化させることでスイッチとして動作するものである。尚、第二の基板10に設けた貫通孔25は、上述したように導電性部材で充填されているため、貼り合わせとともに内部の空洞は封止される。そのため、用途に応じて貼り合わせの工程は真空雰囲気あるいは不活性雰囲気中で行うものである。また、第二の基板10として透明なガラスとすることで、第一、第二の電極部19、24を外部から容易に認識して位置合わせの精度を高めることができる。また、第一、第二の基板9、10の貼り合わせは、接着剤等を用いても良いが、内部を真空雰囲気に置換する場合は、未硬化の接着剤から放出されるガスなどを考慮し、陽極接合や直接接合または金などを用いた金属接合などを選択するものである。尚、第一、第二の基板9、10の貼り合わせに陽極接合や直接接合を選択する場合、貫通孔25に充填する金属は、陽極接合や直接接合時の温度で軟化あるいは溶融しない材料を選択する。また、特に陽極接合の場合、第一、第二の基板9、10間に電圧を印加するわけであるが、このとき、予め第二の外部電極13、14を短絡させておく。こうすることにより、陽極接合時に過大な電圧が圧電体層21にかかることがないので、分極反転を生じさせることなく、良好な圧電特性を維持することができる。
【0046】
上記の貼り合わせは、図17に示すごとくウエハで一括して行われるものであり、貼り合わせた後にダイシングやスクライブ等を用いて個々のスイッチに分割するものである。
【0047】
上述した実施の形態は、第一の基板9と第二の基板10とをシリコンとガラスの異なる材料としたが、両基板ともにシリコンで形成しても良い。第二の基板10をシリコン基板とした場合、貼り合わせ時は赤外線カメラなどを用いることで、第一、第二の電極部19、24を認識して位置合わせを行うようにする。
【0048】
このように二枚の基板を貼り合わせて内部にスイッチの駆動部16を内包するとともに気密封止することで、実装用に新たなパッケージを必要としない安価なスイッチを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のスイッチは、少なくとも一方に外部電極を設けた二枚の基板を貼り合わせて内部に空隙部を形成し、この空隙部に、下部電極層、圧電体層、上部電極層を順に積層して形成した駆動部と、これら上部、下部電極層および圧電体層の少なくとも一部からなる弾性体部を介して、前記空隙部内に両持ちで支持、懸架された第一の電極部と、この第一の電極部と一定の間隔で対向配置された第二の電極部を設けたものである。前記外部電極は、貫通電極を介して第二の電極部に接続された第一の外部電極と、駆動部の上部、下部電極に接続された第二の外部電極とからなり、この第二の外部電極を介して電圧を印加し、圧電体層を反らせて第一、第二の電極部間の間隔を変化させることで、第一の外部電極の切替え動作を行うものである。このように、第一、第二の基板を用いてウエハプロセスで一括してスイッチの動作部を形成するとともに気密封止することができるので、実装が不要で新たなパッケージ等を必要としない安価なスイッチを提供できる効果を奏するので、特に数十GHzの信号周波数まで機能するマイクロスイッチとその製造方法に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施の形態におけるスイッチを説明する斜視図
【図2】図1のA−AA断面図
【図3】本発明の一実施の形態におけるスイッチを構成する第一の基板を説明する斜視図
【図4】図3のB−BB断面図
【図5】本発明の一実施の形態におけるスイッチを構成する第二の基板を説明する斜視図
【図6】図3のC−CC断面図
【図7】本発明の一実施の形態におけるスイッチの製造方法を説明する断面図
【図8】本発明の一実施の形態におけるスイッチの製造方法を説明する断面図
【図9】本発明の一実施の形態におけるスイッチの製造方法を説明する断面図
【図10】本発明の一実施の形態におけるスイッチの製造方法を説明する断面図
【図11】本発明の一実施の形態におけるスイッチの製造方法を説明する断面図
【図12】本発明の一実施の形態におけるスイッチの製造方法を説明する断面図
【図13】本発明の一実施の形態におけるスイッチを構成する第一の基板を形成したウエハの斜視図
【図14】本発明の一実施の形態におけるスイッチの製造方法を説明する断面図
【図15】本発明の一実施の形態におけるスイッチを構成する第二の基板を形成したウエハの斜視図
【図16】本発明の一実施の形態におけるスイッチの製造方法を説明する断面図
【図17】同スイッチを形成したウエハの斜視図
【図18】従来のスイッチを説明する斜視図
【符号の説明】
【0051】
9 第一の基板
10 第二の基板
15 第一の溝部
16 駆動部
17 弾性体部
18 導電体部
19 第一の電極部
20 下部電極層
21 圧電体層
22 上部電極層
23 第二の溝部
24 第二の電極部
25 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に設けた有底の第一の溝部上に、下部電極層と、圧電体層と、上部電極層を順に積層してなる駆動部と、これら上部、下部電極層および圧電体層の少なくとも一部からなる弾性体部を介して二辺を保持、懸架された第一の電極部を備えた第一の基板と、裏面に第一、第二の外部電極を有し、表面に設けた第二の溝部の底部に、その一部が第一の貫通電極を介して前記第一の外部電極へ接続された第二の電極部と、前記第二の外部電極へ接続された第二の貫通電極を備えた第二の基板とからなり、これら第一、第二の基板を貼り合わせることで、前記第一、第二の電極部を一定の間隔で対向させるとともに、前記上部、下部電極層と第二の外部電極とを接続させたものであって、この第二の外部電極を介して内部の上部、下部電極層に電圧を印加し圧電体層を反らせ、前記第一、第二の電極部間の間隔を変化させることで、第一の外部電極の切替え動作を行うスイッチ。
【請求項2】
第一の電極部は、略平行に設けられた二本の弾性体部および駆動部で対向する二辺の両端を保持するとともに懸架した請求項1に記載のスイッチ。
【請求項3】
第一の電極部の周囲に貫通部を設けた請求項1または請求項2に記載のスイッチ。
【請求項4】
弾性体部は、略S字の折り返し形状である請求項1〜3のいずれかに記載のスイッチ。
【請求項5】
弾性体部の幅は、駆動部の幅より狭くした請求項4に記載のスイッチ。
【請求項6】
第一の基板の表面に、下部電極層と、圧電体層と、上部電極層を順に積層しながらパターニングすることで弾性体部と駆動部および第一の電極部を形成する第一の工程と、前記弾性体部を構成する下部電極層または上部電極層とそれぞれ接続された第一、第二の取り出し電極を形成する第二の工程と、これら弾性体部と駆動部ならびに第一の電極部の直下とその周囲をエッチングすることにより前記第一の基板を除去し、有底の第一の溝部を形成するとともに、この第一の溝部上に弾性体部と駆動部を介して前記第一の電極部を保持し懸架する第三の工程と、第二の基板の表面に有底の第二の溝部を形成する第四の工程と、この第二の溝部の底面に、第一の貫通電極を介して裏面の第一の外部電極に接続された第二の電極部と、裏面の第二の外部電極と接続された第二の貫通電極を形成する第五の工程と、前記第一、第二の基板を貼り合わせて第一、第二の電極部を一定間隔で対向させるとともに、第二の貫通電極を第一、第二の取り出し電極に接続する第六の工程とからなるスイッチの製造方法。
【請求項7】
第一の工程は、初めに第一の電極部と弾性体部の直下をエッチングして懸架し、その後に駆動部直下をエッチングして懸架する請求項6に記載のスイッチの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−140799(P2009−140799A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316901(P2007−316901)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】