説明

スイッチを利用した網下気室型湿式比重選別機用回収制御装置

【課題】 被回収物質の種類にかかわらず、良好な精度で選別することができる網下気室型湿式比重選別機における回収制御技術を提供することである。
【解決手段】 選別室内の所定箇所に配置された1基の近接スイッチ、或いは、選別室内の垂直方向及び/又は水平方向に間隔を隔てた箇所に配置された複数基の近接スイッチと、近接スイッチに接続された演算制御器とを備え、演算制御器に、予め設定したチャタリング判断時間の間に近接スイッチからオン信号が2回送られれば、モータを作動させるための制御信号が出されるように構成されたチャタリング判断回路が設けられていることを特徴とする回収制御装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、網下気室型湿式比重選別機における回収制御技術に関する。より詳細には、本発明は、スイッチを利用した網下気室型湿式比重選別機に用いられる回収制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは自動車や家電、種々の機器類、容器等の多種多様な分野で使用されており、現代社会においてはプラスチックなしでは成り立たなくなっている。プラスチックの使用量は、年々増え続けており、これに伴い発生する混合プラスチック粒子量も膨大なものになっている。このような状況下において、循環型社会を形成していくうえで、混合プラスチック粒子の活用が重要な課題となっている。混合プラスチック粒子の資源化を進めるためには、素材別に選別して資源として再利用する技術を確立しなければならず、素材が異なる混合プラスチック粒子を選別する必要性が増大している。プラスチックの材質は多岐にわたっており、低比重で相互の比重差が小さいという特性を有している。
【0003】
また、近年、異なる素材の混合したシュレッダーダストを選別して有用物を回収する必要が増大している。例えば、自動車、家電、種々の機器類、容器等は、製品の廃棄後、最終処分場に埋め立てられているが、その処理量は年々増えつづけており、それに伴う有用物の廃棄埋立も膨大なものとなり、循環型社会を形成していく上において、このような有用物の活用が重要な課題となっている。有用物粒子の再資源化を進めるには素材別に選別して資源として再利用する技術を確立する必要があるが、シュレッダーダストを構成するマテリアルは多岐にわたっており、かつ、マテリアルの重量も広範囲にわたっており、既存の回収制御技術では限界がある。
【0004】
一方、主として原炭から良質の石炭を選択的に回収する機械として、網下気室型湿式比重選別機が知られている。図14を参照して、網下気室型湿式比重選別機の動作原理について簡単に説明する。網下気室型湿式比重選別機は、選別しようとする物質が入れられる選別室が上方に、水が充填される脈動室が下方に位置し、選別室と脈動室との間に網目が配置されている。脈動室内には、空気を入/出させる空気室が配置されており、空気室内の水位を空気の入/出によって昇降させることにより、選別室内の水位を昇降させることができるようになっている。そして、選別室に入れた物質に適切な水の脈動を与えることによって、選別室内に比重別の物質の層が形成されることとなる。
【0005】
網下気室型湿式比重選別機を使用して、所望の物質を回収する種々の技術が提案されている(特許文献1〜特許文献5)。例えば、回収物質の比重と近似したフロートを作成し、該フロートの上方にシャフトを取り付け、上下に揺動するシャフトの高さを測定することによって、回収物質の層厚を検知し制御する手法(シャフト揺動型フロートセンサ)や、回収物質を観察することによって、回収装置に人的に制御を加える手法などが知られている。
【0006】
【特許文献1】特開昭64−43355号公報
【特許文献2】特開2000−185241号公報
【特許文献3】特開2001−220192号公報
【特許文献4】特開2004−034674号公報
【特許文献5】特開2004−143575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のシャフト揺動型フロートセンサによる手法では、以下のような課題を有している。
(1)シャフト重量を含めた浮力が必要であり、プラスチック等の比重の軽い物質の選別に使用しようとする場合には、フロート形状が大きくなりすぎ、フロートを選別室内に収容することができない事態が生じ得る。
(2)フロートの重量が重くなり、慣性力が大きくなるため、その反作用として、感度が鈍くなりがちである。
(3)フロートの形状が大きくなるため、小さな脈動を捉えることが極めて困難である。
(4)フロートの形状が大きくなり、投影面積も大きくなるため、フロートの周囲に大きな乱流域が発生し、被回収物質の種類によっては、選別精度に悪影響を及ぼすおそれがある。
また、上述の回収物質の観察に依存する手法では、制御の精度が保証されないという課題がある。
このように、従来の網下気室型湿式比重選別機における回収制御技術に満足すべきものが見当たらないというのが実情である。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みて案出されたものであって、被回収物質の種類にかかわらず、良好な精度で選別することができる網下気室型湿式比重選別機における回収制御技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願請求項1に記載の網下気室型湿式比重選別機用回収制御装置は、選別室内の所定箇所に配置された1基の近接スイッチ、或いは、選別室内の垂直方向及び/又は水平方向に間隔を隔てた箇所に配置された複数基の近接スイッチと、近接スイッチに接続された演算制御器とを備え、前記演算制御器に、予め設定したチャタリング判断時間の間に前記近接スイッチからオン信号が2回送られれば、前記モータを作動させるための制御信号が出されるように構成されたチャタリング判断回路が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
本願請求項2に記載の網下気室型湿式比重選別機用回収制御装置は、前記請求項1の装置において、近接スイッチが、選別室に設けられた被回収物質が排出される排出口の近傍に配置されていることを特徴とするものである。
【0011】
本願請求項3に記載の網下気室型湿式比重選別機用回収制御装置は、選別室内に実質的に垂直方向に延びるように配置されたガイド式フロートレベルスイッチと、ガイド式フロートレベルスイッチに接続された演算制御器とを備え、ガイド式フロートレベルスイッチが、ロッドに沿って摺動し、所望の比重をもつように形成されたフロートを有しており、前記演算制御器に、予め設定したチャタリング判断時間の間に前記ガイド式フロートレベルスイッチからオン信号が2回送られれば、前記モータを作動させるための制御信号が出されるように構成されたチャタリング判断回路が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
本願請求項4に記載の網下気室型湿式比重選別機用回収制御装置は、前記請求項3の装置において、ロッドとフロートとの間の隙間に被選別物質が挟まるのを防止するため、ロッドの横断面形状が三角形となるように形作られていることを特徴とするものである。
【0013】
本願請求項5に記載の網下気室型湿式比重選別機用回収制御装置は、前記請求項3の装置において、ロッドとフロートとの間の隙間への被選別物質の進入を防止するため、フロートの上部及び/又は下部に、ロッドを包囲するように円筒管が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0014】
本願請求項6に記載の網下気室型湿式比重選別機用回収制御装置は、前記請求項3から請求項5までのいずれか1項の装置において、ガイド式フロートレベルスイッチが、選別室に設けられた被回収物質が排出される排出口の近傍に配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の回収制御装置によれば、良好な精度で被選別物質から選択的に所望の被回収物質(特に、第1の実施の形態の装置では金属物質)を回収することができる。より詳細には、本発明の回収制御装置では、60Hz程度の速い脈動や10cm程度の小さな脈動にも良好に追従して、オン/オフ信号を演算制御器に出力することができる。本発明の回収制御装置は、オン/オフ信号を出すスイッチを利用しているので、センサを用いる制御装置と比較して、演算制御器の構成を簡単にすることができる。ガイド式フロートレベルスイッチは、他の型式のフロートセンサと比較して安価であるため、本発明のガイド式フロートレベルスイッチを備えた装置については、低コストで回収制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る網下気室型湿式比重選別機用回収制御装置について詳細に説明する。図1は、網下気室型湿式比重選別機10に用いられる、本発明の第1の実施の形態に係る回収制御装置を模式的に示した斜視図である。図1において、12は選別しようとする物質(以下「被選別物質」という)が投入される選別室、12aは被選別物質の投入口、14は水が充填される脈動室、16は選別室12と脈動室14との間に配置される網目、18は回収しようとする物質(以下「被回収物質」という)を排出させるためのエジェクタ、20はエジェクタを駆動させるためのモータをそれぞれ示している。なお、第1の実施の形態に係る回収制御装置は、専ら金属物質の回収に用いられる。
【0017】
網下気室型湿式比重選別機10の断面を示した図2(a)に示されるように、選別室12の下端に隣接した箇所には、被回収物質が排出される排出口12bが設けられており、排出口12bに隣接して、エジェクタ18が配置されている。エジェクタ18は、図2(b)に示されるように、シャフト18aに複数枚(図1および図2では4枚)のブレード18bが取り付けられた形態を有しており、シャフト18aに連結されたモータ20を回転駆動させることによってブレード18bを回転させ、これにより排出口12b付近に位置する被回収物質を排出させるようになっている。なお、エジェクタ18自体は公知の装置である。
【0018】
回収制御装置は、選別室12内の高さの異なる箇所にそれぞれ配置された近接スイッチ22a、22bを備えている。ここで、近接スイッチとは、物体の接近、及び近傍の物体の有無を非接触で検出する器具のことをいう。なお、JIS規格(JIS C 8201−5−2)では、近接スイッチとして、金属の存在を検出する誘導形近接スイッチ、金属及び非金属物体の存在を検出する静電容量形近接スイッチ、音響反射物体を検出する超音波近接スイッチ、及び物体の存在を検出する光電形近接スイッチの4種類が規定されているが、本願発明においては、近接スイッチとは、誘導形近接スイッチ及び静電容量形近接スイッチを指すものとする。
【0019】
回収制御装置は又、演算制御器24を備えている。演算制御器24は、ケーブル26を介して近接スイッチ22a、22bに接続され、ケーブル28を介してモータ20に接続されている。なお、演算制御器24自体は、一般に用いられているものを使用してよい。
【0020】
演算制御器24では、近接スイッチ22a、22bから送られるオン/オフ信号がモータ20の制御信号に変換されるが、これらのオン/オフ信号が脈動によってチャタリングを引き起こすので、演算制御器24には、チャタリング判断回路が設けられている。チャタリング判断回路は、予め設定したチャタリング判断時間t(秒)の間にオン信号が2回送られればモータ制御信号をオンとしてモータ20を回転駆動させ(図3(b)参照)、チャタリング判断時間t(秒)の間に送られるオン信号が1回であればモータ制御信号をオフとしてモータ20の回転駆動を停止させる(図3(a)参照)ように構成されている。図3(c)を参照してチャタリング判断回路の作動をより詳細に説明すると、t(1)、t(2)、t(3)、t(4)については、それぞれオン信号が2回含まれているので、モータ制御信号がオンとなるが、t(4)とt(5)との間についてはオン信号がないので、モータ制御信号が一旦オフとなり、t(5)、t(6)については、それぞれオン信号が2回含まれるので、モータ制御信号が再びオンとなる。なお、チャタリング判断回路におけるオン信号の回数の計測は、或るオン信号についてチャタリング判断時間の間に2回目のオン信号が送られれば当該2回目のオン信号から新たなチャタリング判断時間が開始されるものとする(例えば、図3(c)において最初の(最も左側の)オン信号に着目すると、そのオン信号が送られた時点からチャタリング判断時間t(1)が経過するが、2番目のオン信号が送られた時点でチャタリング判断時間t(1)がリセットされ、新たなチャタリング判断時間t(2)が開始するものとする)。
【0021】
被回収物質の存在を的確に把握するため、近接スイッチ22a、22bは、例えば図2(a)に示されるように、エジェクタ18の近傍に設置するのが好ましいが、これに限定されるものではない。また、選別室12が大きく排出口12bの幅が広い場合には、幅方向に複数個の近接スイッチを配置するのがよい。選別室12が小さい場合には、近接スイッチの配置基数を1基にしてもよい。
【0022】
次に、以上のように構成された網下気室型湿式比重選別機回収制御装置による回収制御について説明する。金属物質A(図4で「○」で図示)と非金属物質B(図4で「△」で図示)とから構成される物質Xから金属物質Aを選択的に回収する場合を例にとる。本例では、近接スイッチ22aから一定時間オン信号が送られるとモータ20が第1速度で回転駆動され、近接スイッチ22bから一定時間オン信号が送られるとモータ20が第2速度(>第1速度)で回転駆動されるように構成されているものとする。
【0023】
まず、投入口12aを介して選別室12内に物質Xを投入する(図4(a)参照)。次いで、空気室内の水位を空気の入/出によって昇降させて選別室内の物質Xに水の脈動を与えることによって、選別室12内に金属物質Aの層と非金属物質Bの層が徐々に形成される(図4(b)参照)。金属物質Aが近接スイッチ22aに接近し始めると(図4(c)参照)、ケーブル26を介してオン信号が演算制御器24に送られる。この状態では、脈動により、金属物質Aが近接スイッチ22aに接近したり離れたりするので、予め定められたチャタリング判断時間の間に2回オン信号が送られなければ、モータ20を回転駆動させるための制御信号が送られない。次いで、金属物質Aが近接スイッチ22aの設置レベルに完全に到達すると(図4(d)参照)、脈動があっても金属物質Aが近接スイッチ22aから離れることはないので、チャタリング判断時間の間に2回オン信号が送られることとなり、モータ20を回転駆動させるための制御信号がケーブル28を介してモータ20に送られる。これにより、モータ20が第1速度で作動してエジェクタ18を回転させ(破線矢印で図示)、排出口22bから金属物質Aが排出される。次いで、金属物質Aが近接スイッチ22bに接近し始めるが(図4(e)参照)、この段階では、脈動により、金属物質Aが近接スイッチ22bに接近したり離れたりする状態である。次いで、金属物質Aが近接スイッチ22bの設置レベルに完全に到達すると(図4(f)参照)、脈動があっても金属物質Aが近接スイッチ22bから離れることはないので、チャタリング判断時間の間に2回オン信号が演算制御器24に送られることとなり、これにより、モータ20が第2速度で作動してエジェクタ18を回転させ(実線矢印で図示)、排出口22bから金属物質Aが排出される。
【0024】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る回収制御装置について説明する。図6は、網下気室型湿式比重選別機30に用いられる、本発明の第2の実施の形態に係る回収制御装置を模式的に示した斜視図である。本発明の第2の実施の形態に係る回収制御装置は、近接スイッチの代わりに、ガイド式フロートレベルスイッチが配置されている点を除いて、本発明の第1の実施の形態に係る回収制御装置と実質的に同一の構成を有している。
【0025】
より詳細に説明すると、本発明の第2の実施の形態に係る回収制御装置が設置される網下室型湿式比重選別機30は、被選別物質が投入される選別室32と、水が充填される脈動室34と、選別室32と脈動室34との間に配置される網目36と、被回収物質を排出させるためのエジェクタ38と、エジェクタ38を駆動させるためのモータ40とを備えており、選別室32には、被選別物質の投入口32a及び被回収物質が排出される排出口32bが設けられている。そして、本発明の第2の実施の形態に係る回収制御装置は、選別室32内に実質的に垂直方向に延びるように配置されたガイド式フロートレベルスイッチ42を備えている。ガイド式フロートレベルスイッチ42は、図7に示されるように、ロッド42aと、ロッド42aに沿って摺動するように配置されたフロート42bと、ロッド42aの上端に配置されたヘッド部42cとを有し、ロッド42aの下端が選別室32の底部に堅固に固定されている。
【0026】
ガイド式フロートレベルスイッチ42のフロート42bは、所望の比重を有するように形成されている。また、フロート42bの比重は、選別媒体である液体(例えば、水)の比重よりも大きくなるように選定されており、これにより選別作業時にフロート42bが該液体の液面上に浮いてしまうことを回避している。なお、ガイド式フロートレベルスイッチ42は、一般に用いられているものを使用してよい。
【0027】
選別作業に際して、被選別物質がロッド42aとフロート42bとの間の隙間に挟まってフロート42bの円滑な摺動が損なわれる事態が生じ得る。そこで、このような事態が発生するのを防止するため、横断面形状が三角形のロッド42′aを配置し、ロッド42′aとフロート42bとの間の隙間を大きくするのが好ましい(図8(a)参照)。或いは、フロート42bの上部及び/又は下部に、ロッド42aを包囲するように円筒管42b1を取り付けて、ロッド42aとフロート42bとの間の隙間に被選別物質が入りにくいようにしてもよい。この円筒管として、図8(b)に示されるように、外周に複数の小孔を設けたものを使用してもよい。
【0028】
被回収物質の境界面を的確に把握するため、ガイド式フロートレベルスイッチ42は、例えば図7に示されるように、エジェクタ38の近傍に設置するのが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0029】
回収制御装置は又、演算制御器44を備えている。演算制御器44は、ケーブル46を介してガイド式フロートレベルスイッチ42に接続され、ケーブル48を介してモータ40に接続されている。なお、演算制御器44自体は、一般に用いられているものを使用してよい。
【0030】
演算制御器44には、第1の実施の形態に係る回収制御装置に配置される演算制御器24と同様なチャタリング判断回路が設けられている。
【0031】
次に、以上のように構成された網下気室型湿式比重選別機回収制御装置による回収制御について説明する。物質A(比重γA 、図9で「○」で図示)と物質B(比重γB
<γA、図9で「△」で図示)とから構成される物質Xから物質Aを選択的に回収する場合を例にとる。
【0032】
本例では、選別後の物質Aと物質Bの境界面を検知するため、ガイド式フロートレベルスイッチ42のフロート42bの比重が(γA +γB
)/2となるように、フロート42bが形成されているものとする。
【0033】
まず、投入口32aを介して選別室32内に物質Xを投入する(図9(a)参照)。次いで、空気室内の水位を空気の入/出によって昇降させて選別室内の物質Xに水の脈動を与えることによって、選別室32内に物質Aの層と物質Bの層が徐々に形成される(図9(b)参照)。物質Aの層と物質Bの層が形成されると、フロート32bがロッド32a内を摺動して物質Aと物質Bの境界面に位置することとなる(図9(c)参照)。すると、ガイド式フロートレベルスイッチ42からケーブル46を介して演算制御器44にオン信号が送られ、次いで、演算制御器44からケーブル48を介してモータ40に作動信号が送られる。これにより、モータ40が作動してエジェクタ38を回転させ、排出口32bから物質Aが排出される(図9(d)参照)。
【0034】
物質Xは、当初は(選別室32内に投入された直後は)物質Aと物質Bが混在している状態であるが、水の脈動を与えられ、排出口32bに接近するにつれて、物質Aと物質Bが比重差により徐々に分離し成層化されてくる。上述の例では、ガイド式フロートレベルスイッチ42がエジェクタ38の近傍に設置されているため、フロート42bの比重を物質A、Bの平均比重である(γA
+γB )/2とすることにより、排出口12b付近での物質Aと物質Bの境界面を的確に検知することができる。しかし、物理的な理由等によりガイド式フロートレベルスイッチ42をエジェクタ38の近傍に設置することができない場合には、フロート42bの比重を〔(γA
+γB )/2〕+αとすることにより、物質Aと物質Bの境界面を的確に検知することが可能である。
【実施例1】
【0035】
上述の第1の実施の形態に係る回収制御装置の効果を検証するための実験を行った。図10は、この実験における実験装置の概要を示した図である。図10に示されるように、3対の近接スイッチを選別室の排出口の直上に配置した。近接スイッチとしては、いずれもキーエンス社製のED−130Mを使用した。また、脈動室と選別室との間に位置する網目としては、パンチングメタル(φ8mm)を使用した。実験に際しては、チャタリング判断時間を20秒にし、3対の近接スイッチが独立して作動するように設定した(したがって、3対の近接スイッチとも20秒以内にONした場合に、網目上に被回収物質が170mm以上あると判断し、エジェクタが回転し始めるように構成した。換言すると、3対の近接スイッチのうち1つでも20秒以上OFFの場合には、エジェクタの回転は停止する)。実験においては、脈動の波高を10cmとし、周波数を40Hzとした。
【0036】
実験の結果、近接スイッチを使用した場合には、或る時間に排出口から回収されたサンプル136個のうち所望の被回収物質(本実験では、金属物質)が97個であったのに対して、近接スイッチを使用しなかった場合には、サンプル159個のうち所望の被回収物質が41個であった。すなわち、後者の場合には、回収率が25パーセント程度であるのに対して、近接スイッチを使用した前者の場合には、回収率が71パーセントにも達した。また、後者の場合では、被回収物質以外のサンプルに普通のプラスチック等の混入が多く見られたのに対して、前者の場合では、被回収物質以外のサンプルには、プリント基板やプラグ等のようにプラスチックと金属の複合材(つまり、部分的には被回収物質を含有している)が数多く見られた。これにより、近接スイッチを使用した回収制御装置の有用性が実証された。なお、図11は、近接スイッチを使用した場合のサンプルの写真、図12は、近接スイッチを使用しなかった場合のサンプルの写真を示す。
【実施例2】
【0037】
粗選別部と精選別部で構成された廃蛍光管分離精製用網下気室型比重選別機に、上述の第2の実施の形態に係る回収制御装置を適用した。粗選別部と精選別部の各々の排出口に近接して、フロートの比重を2〜4に調整したガイド式フロートレベルスイッチをそれぞれ配置した。回収作業を行った結果、鉛ガラス、ソーダガラス、石英・硬質ガラスの分離精製が有効に行われることが検証された。
【実施例3】
【0038】
シュレッダーダスト中のプラスチックの分離精製に、上述の回収制御装置を適用した。予め粒径80mm以下にそろえたシュレッダーダストを、粗選別用の網下気室型比重選別機で金属、土砂、浮上物等を取り除き、プラスチックのみを破砕機に投入して10mm程度に整粒した。そして、整粒したプラスチックを、本発明の回収制御装置が設置された網下気室型比重選別機に投入し、脈動10〜40Hz、波高30〜100mm程度の静かな選別条件の下で回収作業を実施したところ、比重の重い(1.3程度以上)プラスチックの完全回収を確認することができた。
【0039】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0040】
例えば、前記第1及び第2の実施の形態では、単一の選別室をもつ比重選別機に適用される回収制御装置について説明されているが、図5及び図13に示されるように、複数(図5及び図13では3基)の選別室が直列に連結された比重制御機に適用してもよい。このような比重制御機では、複数種の被回収物質を連続的に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】網下気室型湿式比重選別機に用いられる、本発明の第1の実施の形態に係る回収制御装置を模式的に示した斜視図である。
【図2】図2(a)は図1の網下気室型湿式比重選別機の断面図、図2(b)はエジェクタの斜視図である。
【図3】チャタリング判断回路を説明するための図である。
【図4】図1の回収制御装置を用いて行われる回収作業の一連の工程を説明するための図である。
【図5】複数の選別室が直列に連結された比重選別機に適用される例を示した図である。
【図6】網下気室型湿式比重選別機に用いられる、本発明の第2の実施の形態に係る回収制御装置を模式的に示した斜視図である。
【図7】図6の網下気室型湿式比重選別機の断面図である。
【図8】図8(a)はガイド式フロートレベルスイッチの変形形態を示した図、図8(b)はガイド式フロートレベルスイッチの別の変形形態を示した図である。
【図9】図5の回収制御装置を用いて行われる回収作業の一連の工程を説明するための図である。
【図10】実施例1において説明した実験における実験装置の概要を示した図である。
【図11】実施例1における実験結果を示した写真である。
【図12】実施例1における実験結果を示した別の写真である。
【図13】複数の選別室が直列に連結された比重選別機に適用される例を示した図である。
【図14】網下気室型湿式比重選別機の動作原理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0042】
10、30 網下気室型湿式比重選別機
12、32 選別室
14、34 脈動室
16、36 網目
18、38 エジェクタ
20、40 モータ
22 近接スイッチ
24、44 演算制御器
26、28、46、48 ケーブル
42 ガイド式フロートレベルスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被選別物質が投入される選別室と、前記選別室の下方に位置する脈動室と、前記選別室と前記脈動室との間に位置する網目と、前記選別室内の被回収物質を排出させるエジェクタと、前記エジェクタを駆動させるためのモータとを備えた網下気室型湿式比重選別機に配置される回収制御装置であって、
前記選別室内の所定箇所に配置された1基の近接スイッチ、或いは、前記選別室内の垂直方向及び/又は水平方向に間隔を隔てた箇所に配置された複数基の近接スイッチと、前記近接スイッチに接続された演算制御器とを備え、
前記演算制御器に、予め設定したチャタリング判断時間の間に前記近接スイッチからオン信号が2回送られれば、前記モータを作動させるための制御信号が出されるように構成されたチャタリング判断回路が設けられていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記近接スイッチが、前記選別室に設けられた被回収物質が排出される排出口の近傍に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
被選別物質が投入される選別室と、前記選別室の下方に位置する脈動室と、前記選別室と前記脈動室との間に位置する網目と、前記選別室内の被回収物質を排出させるエジェクタと、前記エジェクタを駆動させるためのモータとを備えた網下気室型湿式比重選別機に配置される回収制御装置であって、
前記選別室内に実質的に垂直方向に延びるように配置されたガイド式フロートレベルスイッチと、前記ガイド式フロートレベルスイッチに接続された演算制御器とを備え、前記ガイド式フロートレベルスイッチが、ロッドに沿って摺動し、所望の比重をもつように形成されたフロートを有しており、
前記演算制御器に、予め設定したチャタリング判断時間の間に前記ガイド式フロートレベルスイッチからオン信号が2回送られれば、前記モータを作動させるための制御信号が出されるように構成されたチャタリング判断回路が設けられていることを特徴とする装置。
【請求項4】
前記ロッドと前記フロートとの間の隙間に被選別物質が挟まるのを防止するため、前記ロッドの横断面形状が三角形となるように形作られていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ロッドと前記フロートとの間の隙間への被選別物質の進入を防止するため、前記フロートの上部及び/又は下部に、前記ロッドを包囲するように円筒管が取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記ガイド式フロートレベルスイッチが、前記選別室に設けられた被回収物質が排出される排出口の近傍に配置されていることを特徴とする請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−168287(P2008−168287A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310039(P2007−310039)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(306031010)ジグ・エンジニアリング株式会社 (14)
【出願人】(505406464)株式会社アールアンドイー (11)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】