説明

スイッチケース装置

【課題】スイッチ収容筐体や蓋体における成形誤差を吸収するために、ナット部材をスイッチ収容筐体のナット部材収容凹部内において移動可能に収容するとともに、従来の技術における別体の覆い蓋を廃止することによって、部品点数の軽減延いては部品コストの低減を図った。
【解決手段】スイッチ収容筐体1の側面部1Cにスイッチ収容筐体1側の取付け孔1eに連通するナット部材収容凹部1Dを形成し、ナット部材収容凹部1Dを臨むように記スイッチ収容筐体1の側面部1Cに当該側面部より外方に延在する突起1Eを突設しており、突起1Eの先端部を熱変形等により圧潰片部1Fに形成して、圧潰片部1Fによりナット部材5がナット部材収容部1D内において位置修正可能に係合して落下防止されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部スイッチ構成体を収容するスイッチケース装置に関し、特に、例えば産業機械が設置される部屋の出入口などに取付けられて、当該出入口の扉が開かれる時には当該産業機械への電源の供給を停止するようになしたドア用スイッチを構成するスイッチケース装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のスイッチケース装置は、内部スイッチ構成体を収納するために開口部を有するボックス状のスイッチ収容筐体と該スイッチ収容筐体の前記開口部を閉塞するように該スイッチ収容筐体に装着する蓋体とを有して構成しており、前記蓋体および前記スイッチ収容筐体に互いに連通する取付け孔をそれぞれ形成すると共に、前記蓋体側の取付け孔に挿入したタッピングねじがスイッチ収容筐体側の取付け孔にねじ山を形成しながら螺合して、前記スイッチ収容筐体に前記蓋体を装着固定するものが知られている。
【0003】
これによれば、スイッチ収容筐体に対して蓋体をねじ締め取付けを行う際に、規定以上のねじ締めトルクでねじ締めを行うと、スイッチ収容筐体側の取付け孔がタッピングねじにより形成されたねじ山が作成されてしまい、蓋体がスイッチ収容筐体に装着固定できなくなってしまうことがあり、このときのねじ締めトルク強度は、スイッチ収容筐体の材質に依存することになる。
【0004】
そこで、従来において、スイッチ収容筐体側の取付け孔に、ねじ孔部が対向するようにナット部材を前記スイッチ収容筐体に熱加締め或いはスイッチ収容筐体の成形時にインサート成形により固設しておくものが知られている。
【0005】
かかる構成を有する従来の技術では、ナット部材を使用していることから、タッピングねじによる場合と比較して、ねじ締めトルク強度を上げることができ、このときのねじ締めトルク強度がスイッチ収容筐体の材質に依存することがなくなり、常時蓋体をスイッチ収容筐体に確実に装着することができることになる。
【0006】
しかしながら、前記ナット部材は、熱加締めあるいはインサート成形によりスイッチ収容筐体に完全固着状態で設置或いはスイッチ収容鏡体側の取付け孔とスイッチ収容筐体側のナット部材との間で芯ぶれが生じる場合があり、このような場合、蓋体をスイッチ収容筐体に正規位置で取付けることができない場合や延いては取り付け不可能となってしまうことにもなりかねないことになる。
【0007】
そこで、改良された従来技術として、ナット部材をスイッチ収容筐体に完全固着することをやめ、スイッチ収容筐体側にその取付け孔に連通するようなナット部材収容凹部を形成し、このナット部材収容凹部内にナット部材を移動可能に収容するようにして、ナット部材収容凹部の開口を別体の覆い蓋にて閉塞するように構成するものが知られている。
【0008】
かかる従来の技術においては、ナット部材はナット部材収容凹部内において移動可能に構成されているために、もし、スイッチ収容筐体あるいは蓋体の成形誤差などにより、蓋体側の取付け孔とスイッチ収容筐体側のナット部材との間で芯ぶれが生じたとしても、ナット部材が適宜移動して、当該芯ぶれを解消して、常時蓋体をスイッチ収容筐体に確実に装着することができることになる(非特許文献1を参照)。
【非特許文献1】IDEC株式会社発行のHS5B形小形安全スイッチの商品型録 (2007年(平成19年)6月1日発行) (http://WWW.idec.com/japan/参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、改良された従来技術によれば、ナット部材収容凹部の開口部を別体の覆い蓋により閉塞する必要があり、このために、部品点数が増加する上、覆い蓋の取付け工数も加算されることになって、部品コストを上昇させてしまうことになる。
【0010】
そこで、本発明は、スイッチ収容筐体や蓋体における成形誤差を吸収するために、ナット部材をスイッチ収容筐体のナット部材収容凹部内において移動可能に収容するとともに、従来の技術における別体の覆い蓋を廃止することによって、部品点数の軽減延いては部品コストの低減が達し得るスイッチケース装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るスイッチケース装置は、スイッチケースを、内部スイッチ構成体を収納するために開口部を有するボックス状のスイッチ収容筐体と、該スイッチ収容筐体の前記開口部を閉塞するように前記スイッチ収容筐体に装着する蓋体とを有して構成しており、前記蓋体および前記スイッチ収容筐体に互いに連通する取付け孔をそれぞれ形成すると共に、前記スイッチ収容筐体側の取付け孔にナット部材のねじ孔部が対向するように該ナット部材を前記スイッチ収容筐体に設けて、前記蓋体側およびスイッチ収容筐体側の前記取付け孔から取付けビスを挿入して、該取付けビスを前記ナット部材に螺合することにより前記蓋体を前記スイッチ収容筐体に装着して構成するスイッチケース装置であって、前記スイッチ収容筐体に、当該スイッチ収容筐体側の前記取付け孔が連通すると共に前記ナット部材を回り止めした状態で収容するナット部材収容凹部を形成し、該ナット収容凹部を臨むように前記スイッチ収容筐体に突起を突設しており、該突起の先端部を熱変形等により圧潰片部に形成して、該圧潰片部により前記ナット部材を、当該ねじ孔部が前記スイッチ収容筐体側の前記取付け孔に対向するように位置調整可能に係合して落下防止されるように構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成する本発明によれば、ナット部材は、スイッチ収容筐体に一体に形成した突起の先端部を熱変形等により圧潰することによって形成された圧潰片部により、ナット部材収容凹部内において位置調整可能に係合されることから、従来の技術における別体の覆い蓋を廃止することができ、部品点数や取付け工数を軽減することが期待でき、しかも、ナット部材収容凹部内においてナット部材が適宜位置調整可能に係合設置されていることから、スイッチ収容筐体或いは蓋体の成形時に成形誤差等により、スイッチ収容筐体側の取付け孔とナット部材収容凹部内におけるナット部材のねじ孔部との間で芯ぶれが生じたとしても、ナット部材がナット部材収容凹部内を適宜位置修正されて、当該芯ぶれを解消し、常時蓋体をスイッチ収容筐体に確実に装着することができることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明に係る実施例について、図1乃至図6を用いて説明する。
【0014】
図1は本発明に係る実施例を採用したスイッチケース装置を正面側から描画した分解斜視図、図2は図1における要部拡大斜視図、図3は図1におけるナット部材をスイッチ収容筐体に装着する前の縦断面図、図4は同じく、ナット部材をスイッチ収容筐体に装着すべく突起に圧潰片部を形成する過程を説明するための縦断面図、図5はナット部材をスイッチ収容筐体に装着した状態の要部拡大斜視図、図6は図5の縦断面図である。
【0015】
図1において、本発明に係る実施例を採用したスイッチケース装置は、ドアスイッチとして構成するものであり、不図示のスイッチ構成体を収容すべくボックス状のスイッチ収容筐体1と、スイッチ収容筐体1の前面部を開口して形成された開口部1aを閉塞する蓋体2とから構成されており、上部側にスイッチ収容筐体として不図示の内部スイッチ構造体を収容すべく、その前面が開口されたボックス形状のスイッチ収容筐体1とスイッチ収容筐体1の前面部1Bにおける開口部1aを開閉する蓋体3とを有して構成している。
【0016】
スイッチ収容筐体1の上部側の側面部1Aには、産業機械等が配置される部屋の出入口ドアの開閉によって前記内部スイッチ構造体を開閉操作するキー操作体を収容するヘッドブロック筐体3が配設されている。
【0017】
蓋体2は、上端側に一対の係合突起2aが形成されており、係合突起2aをスイッチ収容筐体1の上部側の側面部1Aの内壁に形成した係合孔1cにそれぞれ係合することにより、スイッチ収容筐体1の前面部1Bに形成した蓋体設置部1bに配設されるように構成している。
【0018】
蓋体2の下部側には、互いに離間する状態で筐体2の前面部2Aに面するように一対の取付け片部2bが形成されている。取付け片部2bには、それぞれ、蓋体2側の取付け孔2cが貫通形成されている。
【0019】
蓋体2側の取付け孔2cに連通対向するように、スイッチ収容筐体1の蓋体設置部1bの下部側には、スイッチ収容筐体1側の取付け孔1eが一対形成されている。
【0020】
そして、スイッチ収容筐体1側の取付け孔1eには、それぞれ、スイッチ収容筐体1の左右側の両側面部1Cに形成したナット部材収容凹部1Dが連通している(図2および図2参照)。
【0021】
ナット部材収容凹部1Dは、ナット部材5が上下方向縦向きとなって移動可能な状態で収容されるような容積を有しているも、ナット部材収容凹部1Dの奥壁をナット部材5の外周部が多角面形状に形成されていることに対応して凹状の多角形状面1D−1に形成しておき、ナット部材5を収容した際に回り止めが施されるようになっている。
【0022】
ナット部材収容凹部1Dの上部側におけるスイッチ収容筐体1の左右側の側面部1Cにおいて、図4に示す熱変形用の臼4を挿入できるように、臼挿入用孔部1fが形成されている。
【0023】
臼挿入用孔部1fは、ナット集部材収容凹部1Dに連通するように形成されているとともに、臼挿入用孔部1f内に配設されるように、スイッチ収容筐体1の左右側の側面部1C側には、突起1Eがそれぞれ外方に延在するように一体突設されており、突起1Eは、各ナット部材収容凹部1Dを臨むように構成されている。
【0024】
かかる構成により、ナット部材5をナット部材収容凹部1D内に位置修正可能に収容するには、まず、図2および図3に示すように、ナット部材5を上下方向縦向きにした状態でナット部材収容凹部1D内に挿入しておき、この状態を保持した状態で、図4に示すように加熱された熱変形用の臼4を突起1Eの先端部に宛がって、突起1Eの先端部に押圧力をかけることによって熱変形させて圧潰し、圧潰片部1Fを形成する。
【0025】
この結果、圧潰片部1Fは、図6に示すように、ナット部材収容凹部1D側に張り出して、ナット部材5の外方表出面側を係合することになり、ナット部材5は、ナット部材収容凹部1D内において、遊嵌状態となって位置調整可能で且つ落下防止状態で構成されていることになる。
【0026】
従って、蓋体2の上端側における一対の係合突起2aを、スイッチ収容筐体1の上部側の側面部1Aの内壁に形成した係合孔1cにそれぞれ係合することにより、スイッチ収容筐体1の前面部1Bに形成した蓋体設置部1bに配設した状態で、蓋体2側の取付け孔2cからビス6を挿入して、ビス6をナット部材1Dに到達させて螺合することにより、蓋体2をスイッチ収容筐体1に装着することができる。
【0027】
この際、もしもスイッチ収容筐体1側の取付け孔1eに対して、ナット部材5に芯ブレが生じている場合には、ナット部材5をナット部材収容凹部1D内において適宜左右或いは前後方向に位置調整することによって、ナット部材5のねじ孔部5aがスイッチ収容筐体1側の取付け孔1eに連通して、ビス6を取付け孔eが案内して正規位置においてナット部材5に螺合することができることになる。
【0028】
なお、図1において、スイッチ収容筐体1の下部側の棚部1Gの略中央部には、上下方向に貫通する貫通孔1fが形成され、外部の接続機器に接続された接続ケーブル(いずれも不図示)を挿通させて、内部スイッチ構成体に接続可能に構成されている。
【0029】
以上のように構成する本発明の実施例においては、ナット部材5は、スイッチ収容筐体1に一体に形成した突起1Fの先端部を熱変形により圧潰することによって形成された圧潰片部1Fにより、ナット部材収容凹部1D内において位置調整可能に係合されることから、従来の技術における別体の覆い蓋を廃止することができ、部品点数や取付け工数を軽減することが期待でき、しかも、ナット部材収容凹部1D内においてナット部材5が適宜位置調整可能に係合設置されていることから、スイッチ収容筐体1或いは蓋体2の成形時に成形誤差等により、スイッチ収容筐体1側の取付け孔1eとナット部材収容凹部1D内のナット部材5との間で芯ぶれが生じたとしても、ナット部材5がナット部材収容凹部1D内を適宜位置修正されて、当該芯ぶれを解消し、常時蓋体2をスイッチ収容筐体1に確実に装着することができることになる。
【0030】
なお、上記実施例においては、圧潰片部1Fは突起1Eを熱変形により形成するように下が、これに限定されるものではなく、例えば、プレス成形等により形成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上説明したように、本発明は、ナット部材は、スイッチ収容筐体に一体に形成した突起の先端部を熱変形等により圧潰することによって形成された圧潰片部により、ナット部材収容凹部内において位置調整可能に係合されることから、従来の技術における別体の覆い蓋を廃止することができ、部品点数や取付け工数を軽減することが期待でき、しかも、ナット部材収容凹部内においてナット部材が適宜位置調整可能に係合設置されていることから、スイッチ収容筐体或いは蓋体の成形時に成形誤差等により、スイッチ収容筐体側の取付け孔とナット部材収容凹部内におけるナット部材のねじ孔部との間で芯ぶれが生じたとしても、ナット部材がナット部材収容凹部内を適宜位置修正されて、当該芯ぶれを解消し、常時蓋体をスイッチ収容筐体に確実に装着することができることになるために、内部スイッチ構成体を収容するスイッチケース装置、特に、例えば産業機械が設置される部屋の出入口などに取付けられて、当該出入口の扉が開かれる時には当該産業機械への電源の供給を停止するようになしたドア用スイッチを構成するスイッチケース装置等に好適であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る実施例を採用したスイッチケース装置の正面側から描画した分解斜視図である。
【図2】図1における要部拡大斜視図である。
【図3】図1におけるナット部材をスイッチ収容筐体に装着する前の縦断面図である。
【図4】同じく、ナット部材をスイッチ収容筐体に装着すべく突起に圧潰片部を形成する過程を説明するための縦断面図である。
【図5】同じく、ナット部材をスイッチ収容筐体に装着した状態の要部拡大斜視図である。
【図6】図5の縦断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 スイッチ収容筐体
1B 前面部
1C 側面部
1D ナット部材収容凹部
1E 突起
1F 圧潰片部
1a 開口部
1e 取付け孔
2 蓋体
2A 前面部
2c 取付け孔
5 ナット部材
5a ねじ孔部
6 ビス



【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチケースを、内部スイッチ構成体を収納するために開口部を有するボックス状のスイッチ収容筐体と、該スイッチ収容筐体の前記開口部を閉塞するように前記スイッチ収容筐体に装着する蓋体とを有して構成しており、前記蓋体および前記スイッチ収容筐体に互いに連通する取付け孔をそれぞれ形成すると共に、前記スイッチ収容筐体側の取付け孔にナット部材のねじ孔部が対向するように該ナット部材を前記スイッチ収容筐体に設けて、前記蓋体側およびスイッチ収容筐体側の前記取付け孔から取付けビスを挿入して、該取付けビスを前記ナット部材に螺合することにより前記蓋体を前記スイッチ収容筐体に装着して構成するスイッチケース装置であって、前記スイッチ収容筐体に、当該スイッチ収容筐体側の前記取付け孔が連通すると共に前記ナット部材を回り止めした状態で収容するナット部材収容凹部を形成し、該ナット収容凹部を臨むように前記スイッチ収容筐体に突起を突設しており、該突起の先端部を熱変形等により圧潰片部に形成して、該圧潰片部により前記ナット部材を、当該ねじ孔部が前記スイッチ収容筐体側の前記取付け孔に対向するように位置調整可能に係合して落下防止されるように構成したことを特徴とするスイッチケース装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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