説明

スイッチモジュール

【課題】入力操作面Aに形成された隙間から進入する静電気から内部の配線基板等を保護できるスイッチモジュール1を提供する。
【解決手段】第1の入力操作がされる絶縁性の第1操作部材21と、第1操作部材21と隙間Eを介して配置され、第2の入力操作がされる絶縁性の第2操作部材22とを有する操作部材20と、操作部材20の下側に配置され、導電回路パターン32,42を有する配線基板30,40と、を有し、操作部材20と配線基板30,40との間に配置され、基材31,41に形成された導電回路パターン32,42の接地回路パターン322,422及び/又は配線基板30,40を支持する導電性のベース部材10と短絡しており、第2の入力操作に応じて弾性変形する導電性のクリックバネ(弾性部材)70をさらに有するスイッチモジュールを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯オーディオ機器、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話、デジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラなどの電子機器に用いられるスイッチモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置に関し、回転体の操作時に人体から受ける静電気を接地させる観点から、回転体の外周縁部を覆うカバーに延長部を設け、この延長部を金属プレートの側面に圧接させたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−4209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スイッチモジュールの操作面に複数の操作部材が設けられ、両操作部材の間に隙間が形成されると、この隙間を介して操作者の人体から放電された静電気が操作面の下側、つまり、スイッチモジュールの内部に進入しやすくなる。スイッチモジュールの内部には入力操作に応じた信号を出力する導電回路が形成されているため、静電気が操作部材の隙間からスイッチモジュールの内部に入ると過大な電流が導電回路に流れ、導電回路の破損又は導通不良が発生するという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、操作面に設けられた複数の操作部材の隙間から進入する静電気を接地させることにより、導電回路の破損や導通不良による誤動作の発生を防止できるスイッチモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1の入力操作がされる絶縁性の第1操作部材と、前記第1操作部材と隙間を介して配置され、第2の入力操作がされる絶縁性の第2操作部材とを有する操作部材と、前記操作部材の下側に配置され、導電回路パターンを有する配線基板と、を有するスイッチモジュールであって、前記操作部材と前記配線基板との間に配置され、前記導電回路パターンの接地回路パターン及び/又は前記配線基板を支持する導電性のベース部材と短絡しており、前記第2の入力操作に応じて弾性変形する導電性の弾性部材をさらに有することを特徴とするスイッチモジュールを提供することにより、上記課題を解決する。
【0007】
上記発明において、前記第1操作部材は前記第2操作部材に囲まれており、前記第2操作部材には、当該第2操作部材と前記第1操作部材との接面に沿って延在する案内部材を設けるとともに、前記案内部材が形成されていない切り欠き部を設けることができる。
【0008】
上記発明において、前記弾性部材は、突起部を備えるクリックバネであり、前記突起部は前記導電回路パターンの接地回路パターン及び/又は前記ベース部材に接続されるように構成することができる。
【0009】
上記発明において、前記配線基板は、第1基材と、該第1基材の一方主面側に実装された複数のメタルドームと、前記メタルドームの頭頂部と対向するように、前記第1基材の一方主面に形成された押圧接点を含む第1導電回路パターンと、を有する第1配線基板と、第2基材と、該第2基材の、前記第1基材の一方主面とは対向しない一方主面に形成された複数のエンコーダ接点を含む第2導電回路パターンとを有し、前記第1配線基板の一方主面側に積層される第2配線基板と、を備え、さらに、前記第2導電回路パターンに接する一方主面側に摺動子を保持し、当該摺動子が前記第2導電回路パターンを摺動可能なように回転可能であるとともに、前記弾性部材と接触可能であるように配置される樹脂製の回転部材を備えるように構成することができる。
【0010】
上記発明において、前記第1基材と前記第2基材は一つの連続した基材からなり、前記第1導電回路パターンと前記第2導電回路パターンを、当該基材の異なる主面に形成することができる。
【0011】
上記発明において、前記第2導電回路パターンと前記接地回路パターンとを、同じ主面に形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、第1操作部材と第2操作部材とを有する操作部材と配線基板との間に、接地回路パターン及び/又は導電性のベース部材と短絡させた導電性の弾性部材を設けたことにより、第1操作部材と第2操作部材の隙間から進入する静電気を接地させることができるので、導電回路パターンに過大な電流が流れることを防止し、回路破損や導通不良による誤動作の発生を抑制することができる。この結果、動作安定性の高いスイッチモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るスイッチモジュールを示す斜視図である。
【図2】図1に示すスイッチモジュールの分解斜視図である。
【図3】図1のIII-III線に沿う断面図である。
【図4】第2操作部材の底面斜視図である。
【図5A】クリックバネの平面斜視図である。
【図5B】クリックバネの底面斜視図である。
【図6A】第1配線基板の一方主面側と第2配線基板の他方主面側を示す平面図である。
【図6B】第1配線基板の他方主面側と第2配線基板の一方主面側を示す平面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るスイッチモジュールの組み立て手法を説明するための分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本発明に係る本実施形態のスイッチモジュールについて説明する。
【0015】
本実施形態のスイッチモジュールは、携帯電話、携帯オーディオ装置、PDA(Personal Digital Assistant)等の電子機器の入出力操作に用いられるスイッチである。本実施形態では、多方向押圧スイッチ機能とロータリーエンコーダスイッチ機能とを備える携帯オーディオ装置のスイッチに、本発明に係るスイッチモジュールを適用した例を説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るスイッチモジュール1を示す斜視図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態のスイッチモジュール1は、入力操作面を形成する操作部材20と、この操作部材20が構成する入力操作面Aと対向するように最下層に配置されたベース部材10と、操作部材20とベース部材10とを固定するカバー部材90とを備えている。
【0018】
同図に示すように、本実施形態の操作部材20は、第1の入力操作がされる第1操作部材21と第2の入力操作がされる第2操作部材22とを有し、非操作時においては第1操作部材21の表面と第2操作部材22の表面とが共通の(同じ高さで連なる)入力操作面Aを形成する。また、第1操作部材21と第2操作部材22とは、その間に隙間Eが形成された別の部材であり、第1操作部材21と第2操作部材22とは互いに異なる入力操作を受け付け、各入力操作に応じて互いに独立に動作することができる。
【0019】
特に限定されないが、本実施形態の第1の入力操作は第1操作部材21を押圧する押圧操作を含み、第2の入力操作は第2操作部材22の所定位置を押圧する押圧操作と第2操作部材を回転する回転操作を含む。
【0020】
具体的に、第1操作部材21又は第2操作部材22を押圧すると、押圧位置に応じた位置信号及び/又は押圧位置に応じたオンオフ信号を取得することができる。また、第2操作部材22を回転すると、回転位置に応じた位置信号及び/又は回転量に応じた信号を取得することができる。各信号は、携帯オーディオ装置の所定機能の実行命令と予め対応づけられており、取得された各信号に応じて携帯オーディオ装置の所定の機能が実行される。例えば、ユーザは、第1操作部材21又は第2操作部材22を押圧し、又は第2操作部材2を回転させることにより、プログラムリストの表示、スクロール又は実行若しくは停止、ボリュームの調節などをすることができる。
【0021】
以下、本実施形態のスイッチモジュール1を構成する各部材について、それぞれ説明する。
【0022】
図2は、図1に示すスイッチモジュール1の分解斜視図であり、図3は、図1のIII-III線に沿う断面図である。
【0023】
図2及び図3に示すように、操作部材20とベース部材10とカバー部材90とに囲まれたスイッチモジュール1の内部には、第1配線基板30と、第2配線基板40と、摺動子60と、回転部材50と、弾性部材70と、リング部材80とが収容されている。
【0024】
同図に示すように、操作部材20、弾性部材70、回転部材50、第1配線基板30、第2配線基板40、及びベース部材10は、XY平面に沿う平板状の部材であり、図中に示す矢印PのP1側からP2側へ向かう方向に積層される。なお、本実施形態では第1配線基板30と第2配線基板40を別々の基板として構成し、これらを積層させる構造を採用するが、第1配線基板30と第2配線基板40とを一つの基板で構成することもできる。
【0025】
以下、本発明に係る実施形態のスイッチモジュール1の各構成を説明する。
【0026】
まず、最上層に位置する操作部材20について説明する。本実施形態の操作部材20は、第1操作部材21と、この第1操作部材21と隙間Eを介して配置された第2操作部材22とを有する。本実施形態の第1操作部材21と第2操作部材22とは、両操作部材21,22の表面がほぼ同じ高さとなるように互いに隣接して設けられている。特に限定されないが、第1操作部材21と第2操作部材22との間に形成された隙間Eの少なくとも一部は入力操作面Aの周縁部ではない領域に形成されている。
【0027】
本実施形態では、同図に示すように、第1操作部材21が入力操作面Aの略中央部に設けられ、第2操作部材22が第1操作部材21を囲うように入力操作面Aの外周側領域に形成されている。本実施形態の第1操作部材21は、押圧操作及び押圧解除操作に応じて、図2の矢印Pに沿って上下に移動することができる。また、第2操作部材22は、押圧操作及び押圧解除操作に応じて、図2の矢印Pに沿って上下に移動するとともに、回転操作に応じて、図1及び2のXY平面に沿う周回(移動)することができる。
【0028】
この第2操作部材22の裏面側の第1操作部材21と接する部分には、案内部材221と切り欠き部222が設けられている。図4に、図2に示す第2操作部材22の裏面側を示す底面斜視図である。図4に示すように、第2操作部材22の裏面側には、この第2操作部材22と第1操作部材21との接面に沿って(図2の矢印Pの方向に沿って)延在する案内部材221が設けられるとともに、この案内部材221が形成されていない切り欠き部222が形成されている。
【0029】
第2操作部材22に形成された案内部材221は、第1操作部材21と第2操作部材22との接面に沿って立設された所定高さの部材である。この案内部材221は、第1操作部材21が押圧操作されたときに、第2操作部材22に対して相対的に上下の移動(図2の矢印Pに沿う往復移動)する動作を案内する機能を有する。なお、案内部材221の態様は特に限定されず、平板状としてもよいし、柱状としてもよい。
【0030】
同じく第2操作部材22に形成された切り欠き部222は、第2操作部材22の入力操作面の裏面側の平坦面Sと連なる面を有する部分である。また、切り欠き部222の態様も特に限定されず、切り欠き部222の配置位置、数などは任意に設定することができる。なお、切り欠き部222の機能については後述する。
【0031】
特に限定されないが、第1操作部材21及び第2操作部材22は、PC(Poly Carbonate)、ABS (Acrylonitrile Butadiene Styrene)、PBT (Poly Butylene Terephtalate)、PET (Poly Ethylene Terephthalate)などの絶縁性の樹脂材料を用い、一般的な樹脂成形技術により形成することができる。
【0032】
これら第1操作部材21及び第2操作部材22は、ベース部材10に固定されるリング部材80及びカバー部材90によって係止される。これにより、ユーザの入力操作を受け付ける入力操作面Aが形成される。
【0033】
さらに、第1操作部材21及び第2操作部材22の下側には、弾性及び導電性を備えたクリックバネ70(弾性部材)が配置されている。本実施形態のクリックバネ70(弾性部材)は、SUS(Stainless steel)などの金属製の薄板である。クリックバネ70の材質は、弾性及び導電性を備えたものであれば特に限定されない。
【0034】
図5Aは、クリックバネ70の平面斜視図であり、図5Bはクリックバネ70の底面斜視図である。図5A及び図5Bに示すように、本実施形態のクリックバネ70は、突起部71と、当接部72とを備えている。図3に示すように、クリックバネ70の突起部71は、スイッチモジュール1の下方(図2のP2側)に延在し、リング部材80によりカバー部材90とベース部材10との間に固定される。また、クリックバネ70の突起部71は、後述する第2配線基板40の入力操作側の主面に形成された第2接地回路パターン422又は導電性を備えるベース部材10と接触(短絡)している。本例では、クリックバネ70の固定部としても機能する突起部71が第2接地回路パターン422又はベース部材10と接触(短絡)している例を示すが、クリックバネ70他の部分、他の機能を果たす部分を第2接地回路パターン422又はベース部材10と接触(短絡)させることも可能である。
【0035】
また、第1操作部材21及び第2操作部材22と回転部材50との間に配置されたクリックバネ70の当接部72は、後述する回転可能な回転部材50の外周面の少なくとも一部に当接することができる。回転部材50は第2操作部材22に係止されており、第2操作部材22が回転操作されると回転部材50も回転する。また、回転部材50の外周面には凹凸部(凹部と凸部)が形成されており、回転部材50が回転すると、クリックバネ70の当接部72が回転部材50の凹凸部に接して弾性変形するため、振動が発生する。この振動は第2操作部材22に伝達され、第2操作部材22に触れているユーザはクリックバネ70の振動、つまり、自らが行った回転操作に対する応答感、いわゆるクリック感を感じることができる。
【0036】
この回転部材50の下側(図2のP2側)の面には、摺動子61,62(総称する場合は符号60を付する)が取り付けられている。摺動子61,62は、SUSなどの導電性及び弾性を備えた金属により構成することができる。摺動子60の取り付け位置、取り付け方法及び数は特に限定されない。本例では、摺動子60を回転部材50に接着剤を用いて取り付けているが、溶着などによって摺動子60を回転部材50に取り付けることも可能である。
【0037】
この回転部材50は、摺動子61,62が後述する第2配線基板40の第2導電回路パターン42の表面を摺動できるように回転可能に設けられる。
【0038】
さらに、クリックバネ70、回転部材50及び摺動子60の下側(図2のP2側)には、第1配線基板30及び第2配線基板40(配線基板)が配置される。
【0039】
具体的に、摺動子60の下側(図2のP2側)には、第2配線基板40(配線基板)が配置され、この第2配線基板40の下側(図2のP2側)には、スペーサ35を介して、第1配線基板30(配線基板)が配置される。
【0040】
図6Aは、第1配線基板30の一方主面側(入力操作面A側)と第2配線基板40の他方主面側(ベース部材10側)を示す平面図、図6Bは、第1配線基板30の他方主面側(ベース部材10側)と第2配線基板40の一方主面側(入力操作面A側)を示す平面図である。
【0041】
本実施形態の第1配線基板30は、第1基材31と、第1基材31の一方主面側(入力操作面A側)に実装された複数のメタルドーム33と、これらメタルドーム33の頭頂部と対向するように、第1基材31の一方主面に形成された押圧接点321を含む第1導電回路パターン32と、を有する。また、本実施形態の第2配線基板40は、第2基材41と、第2基材41の、後述する第1基材31のメタルドーム60が形成されている一方主面とは対向しない一方主面に形成された複数のエンコーダ接点421を含む第2導電回路パターン42とを有する。
【0042】
具体的に第1配線基板30に着目して説明すると、図6Aに示すように、第1基材31の一方主面(組み立て後における入力操作面A側)には、複数のメタルドーム33と、メタルドーム33の頭頂部と対向する押圧接点321を含む第1導電回路パターン32が形成され、図6Bに示すように、第1基材31の他方主面(組み立て後におけるベース部材10側)には、第1接地回路パターン322(第1導電回路パターン32)が形成されている。
【0043】
本実施形態のメタルドーム33は、ステンレスや銅系金属などの導電性及び可撓性を持つ材料で構成されたドーム形状の部材である。このメタルドーム33は、頭頂部自体が可動接点として機能し、頭頂部が押圧されるとドーム形状が徐々に反転変形する一方で、頭頂部への押圧が解除されると自己弾性により当初のドーム形状に復元するようになっている。頭頂部が押圧されると、先述した第1導電回路パターン32の押圧接点321とメタルドーム33の頭頂部が導通し、信号が出力される。
【0044】
このメタルドーム33は、このメタルドーム33の頭頂部(内側)が第1導電回路パターン32の押圧接点321と対向するように、固定シートによって第1基材31に固定される。固定シートは、PETなどの合成樹脂材料から構成されるシート部材と、このシート部材の下面に塗布されたアクリル系粘着剤やシリコーン系粘着剤等の粘着層とを備えている。固定シートの粘着層がメタルドーム33を保持しつつ、このメタルドーム33が貼り付けられていない部分の粘着層が第1基材31に付着することにより、メタルドーム33を第1基材31に固定することができる。
【0045】
また、第2配線基板40に着目して説明すると、図6Bに示すように、本実施形態における第2配線基板40の第2基材41の一方主面(組み立て後における入力操作面A側)には、第2基材41の中心側の複数のエンコーダ接点421a〜421dと、第2基材41の周縁部の第2接地回路パターン422とを含む第2導電回路パターン42が形成され、図6Aに示すように、第2基材41の他方主面(組み立て後におけるベース部材10側)には、スルーホールで一方主面側のエンコーダ接点421a〜421d等と接続された第2導電回路パターン42´が形成されている。
【0046】
第2配線基板40のエンコーダ接点421a〜421dは、上述した回転部材50に設けられた摺動子60と接触すると導通し、回路信号が出力される。エンコーダ接点421a〜421dを含む第2導電回路パターン42の態様は特に限定されないが、ここでは、図6Bに示す例を説明する。
【0047】
図6Bに示すように、本実施形態に係る第2導電回路パターン42は複数のエンコーダ接点421a〜421dを含む。本実施形態では同心円状に形成された4本のエンコーダ接点421a〜421dが設けられている。本例では、最外側から順にエンコーダ接点421a、421b、421c、421dが形成され(図中薄墨で示す)、中央部にはグランド接点421gが形成されている。
【0048】
他方、先述した摺動子60は4つの独立した接点を有する(図3を参照)。4つの接点は、半径方向に沿って所定間隔で一列に回転部材50に取り付けられており、第2操作部材22の回転操作に応じて回転する回転部材50とともに4本のエンコーダ接点421上をそれぞれ摺動する。摺動子60が各エンコーダ接点421a〜421dに接すると、導通したエンコーダ接点421a〜421dを構成する回路からオン信号が出力される。なお、エンコーダ接点421及び摺動子60の配置や数などの態様は限定されず、適宜設計することができる。
【0049】
本実施形態では、例えば下掲の表1に示す、検出領域と得られる信号の組み合わせとを予め対応づけた判断テーブルを、スイッチモジュール1又は電子機器側に記憶させておき、得られた信号の組み合わせに基づいて回転部材50又は第2操作部材22の回転量又は移動位置を判断する。
【0050】
図6Bに示す例において、エンコーダ接点421は、直線Z1上の起点から図中時計回りに30度ごとに区分けされており、区分けされたそれぞれの領域について検出領域w1,w2…w12が定義されている。
【0051】
そして、表1に示すように、各検出領域w1,w2…w12とオン信号の組み合わせとが予め対応づけられた判断テーブルが定義されている。
【表1】

【0052】
例えば、エンコーダ接点421aを含む回路のみからオン信号を得た場合には、摺動子60がz1からz2までの検出領域w1に存在すると判断することができる。また、エンコーダ接点421aを含む回路及びエンコーダ接点421bを含む回路の2つの回路からオン信号を得た場合には、摺動子60がz2からz3までの検出領域w2に存在すると判断することができる。予め、検出領域と第2操作部材22の回転量又は位置とを対応づけておけば、入力操作に応じた操作量又は指示する位置を検出することができる。
【0053】
このように第1配線基板30からの信号と第2配線基板40から検出された信号は、本スイッチモジュール1を備える携帯オーディオ装置などに出力され、各装置は各信号に対応づけられた命令を実行する。
【0054】
さらに、図6Bに示すように、第2基材41の一方主面(組み立て後における入力操作面A側)に形成された第2接地回路パターン422と、第1基材31の他方主面(組み立て後におけるベース部材10側)に形成された第1接地回路パターン322とが接続している。この第1接地回路パターン322は、導電性のベース部材10又は図示しない接地回路で接続された導電性接地部材と接続している。ちなみに、第1基材31のベース部材10側に第1接地回路パターン322は、ベース部材10と短絡させてもよいし、図外のコネクタを介して他の導電部材と短絡させてもよい。なお、本実施形態の接地回路パターンは、第1導電回路パターン32と第2導電回路パターン42の何れか一方に設けてもよいし、両方に設けてもよい。
【0055】
これにより、第2導電回路パターン42の第2接地回路パターン422に接するクリックバネ70が帯びた静電気を、第2基材41に形成された第2接地回路パターン422及び第1基材31に形成された第1接地回路パターン322を介してベース部材10等に接地させることができる。
【0056】
そして、図6A及び図6Bに示すように、第1配線基板30の第1基材31と第2配線基板40の第2基材41は一つの連続した基材M(Ma,Mb)から構成することができる。
【0057】
第1配線基板30の第1基材31及び第2配線基板40の第2基材41は、可撓性を有する厚さが50μm〜150μm程度のポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)又はポリエチレンナフタレート(PEN)などの樹脂シートで構成することができる。また、後述する第1基材31と第2基材41との間に介在させるスペーサ35も、上述の樹脂シートで構成することができる。なお、本実施形態では、第1基材31とは別体のベース部材10を備えたスイッチモジュール1の例を示すが、第1基材31を厚く構成し、第1基材31に導電部材を形成する又は外部の導電部材と接続させて、第1基材31が本実施形態のベース部材10の機能を兼ね備えるようにしてもよい。
【0058】
先述した第1導電回路パターン32、第2導電回路パターン42は、第1基材31、第2基材41の主面に、銀、銅、カーボンなどの導電材を含む導電性ペーストを用いて印刷により形成することができる。
【0059】
第1導電回路パターン32の押圧接点321は基材Mの一方主面Maに形成され、第2導電回路パターン42のエンコーダ接点421は基材Mの他方主面Mbに形成されている。これにより、図6Aに示す基材Maの折れ線Fを谷折り(図6Bに示す基材Mbの折れ線Fを山折り)し、第2配線基板40を第1配線基板30に積層させた(図3参照)場合に、第1導電回路パターン32の押圧接点321及び第2導電回路パターン42のエンコーダ接点421を、入力操作面Aと対向する一方主面側に向けることができる。
【0060】
また、第2導電回路パターン42が形成された基材Mの主面Mbに、第2導電回路パターン42の第2接地回路パターン422及び第1導電回路パターン32の第1接地回路パターン322が連続して形成されているので、スイッチモジュール1の積層構造において異なる層を構成する第2配線基板40の第2接地回路パターン422と第1配線基板30の第1接地回路パターン322とを接続させることができる。つまり、エンコーダ接点421及び押圧接点321に影響を与えることなく、第2配線基板40の第2接地回路パターン422から下層側に配置された第1配線基板30の第1接地回路パターン322に静電気を流すことができる。
【0061】
このように、押圧接点321及び第1接地回路パターン322を含む第1導電回路パターン32と、エンコーダ接点421及び第2接地回路パターン422を含む第2導電回路パターン42とを1枚の基材Mに同時に印刷形成でき、1枚の基材Mで第1配線基板30と第2配線基板40を作製することができるので、材料コストを低減させることができる。また、それぞれの基板を別々に作製する場合よりも製造工程を簡易にすることができ、製造に係るコストも低減させることができる。さらに、第1配線基板30と第2配線基板40とが連なっていることから、積層組立時において高い精度で位置合わせを行うことができる。その結果、歩留まりを向上させることができる。
【0062】
続いて、図7に基づいて、本実施形態のスイッチモジュール1の組み立て手法を説明する。
【0063】
先に、第1操作部材21と第2操作部材22をリング部材80に第2配線基板40が収容されたユニットUを作製する。まず、連続した一枚の基材Mに、先に説明した第1導電回路パターン32及び第2導電回路パターン42を印刷し、メタルドーム33の実装を行い、型抜きして第1配線基板30及び第2配線基板40を得る。
【0064】
次に、第1操作部材21と第2操作部材22をリング部材80の上側に嵌めこむ。このリング部材80の下側にはクリックバネ70を嵌めこみ、リング部材80に形成された係止部材81をクリックバネ70の突起部71の貫通孔71a(図5A,5B参照)に挿入する。
【0065】
摺動子60は予め回転部材50のベース部材10側の面に接着しておき、第2操作部材22とともに回転部材50が回転可能となるように、この回転部材50を第2操作部材22に係止する。
【0066】
さらに、摺動子60と第2導電回路パターン42が対向するように第2配線基板40をリング部材80の内側にセットし、ユニットUを得る。
【0067】
続いて、第2配線基板40の下に図外のスペーサ35を介在させて直線Fに沿って折り畳み、第2配線基板40の下に第1配線基板30を積層する。
【0068】
最後に、ユニットUと第1配線基板30を覆うようにカバー部材90を上から被せ、このカバー部材90に設けられた係止部材91を第1配線基板30下側に配置された第1配線基板30とベース部材10に設けられた孔36,11に挿入し、ベース部材10の裏面(入力操作面A側の面とは反対側の面)側でカバー部材90の係止部材91を溶融する。これにより、カバー部材90をベース部材10に固定し、本実施形態のスイッチモジュール1を得ることができる。
【0069】
図3に戻り、本実施形態のスイッチモジュール1が奏する作用及び効果について説明する。
【0070】
図3に示すように、入力操作面Aを構成する第1操作部材21と第2操作部材22との間には、隙間Eが形成されている。ユーザが入力操作面Aに触れようと手を接近させ又はユーザが入力操作面Aに接触すると、人体に帯電していた静電気が隙間Eから進入する場合がある。
【0071】
本実施形態において、第1操作部材21と第2操作部材22、及びこれらの下側には配置された回転部材50、つまり隙間Eと接する部材が絶縁性の材料から構成されているので、隙間Eから進入した静電気が第1操作部材21及び第2操作部材22と回転部材50の間に介在する導電性のクリックバネ70(弾性部材)に流れる。
【0072】
このクリックバネ70の突起部71は、第2配線基板40とともにリング部材80とベース部材10との間に挟み込まれ、第2配線基板40の第2接地回路パターン422(図6B参照)及び/又はベース部材10と短絡しているため、クリックバネ70が帯びた静電気は第2接地回路パターン422及び/又はベース部材10に接地される。
【0073】
また、図3に示すように、クリックバネ70は、隙間Eが形成される第1操作部材21及び第2操作部材22と、導電性の摺動子60、エンコーダ接点421、押圧接点321、及びメタルドーム33との間に介在するので、クリックバネ70は、導電性の摺動子60、エンコーダ接点421、押圧接点321、及びメタルドーム33を、隙間Eから進入した静電気からシールド(防御)することができる。
【0074】
このように、本発明の実施形態に係るスイッチモジュール1では、隙間Eを有する第1操作部材21と第2操作部材22と第1及び第2配線基板30,40との間に接地回路パターン422,322及び/又は導電性のベース部材10と短絡させたクリックバネ(導電性部材)70を設けたことにより、第1操作部材21と第2操作部材22の隙間Eから進入する静電気を接地させることができるので、第1及び第2導電回路パターン321,421等に過大な電流が流れることを防止し、回路破損や導通不良による誤動作の発生を抑制することができる。この結果、動作安定性の高いスイッチモジュールを提供することができる。
【0075】
特に、本実施形態では、押圧操作によって上下に相対移動する第1操作部材21を取り囲んで配置された第2操作部材22には、この第2操作部材22と第1操作部材21との接面に沿って延在する案内部材221が設けられるとともに、案内部材221が形成されていない切り欠き部222が形成されているため(図4参照)、静電気が伝わりやすい経路を確保することによって、第1操作部材21と第2操作部材22とが別々に動作することを補助しつつも、隙間Eから進入した静電気を他の部分ではなく、クリックバネ70に導くことができる。
【0076】
つまり、図3の破線で囲んだQ部分に示すように、クリックバネ70を隙間Eと所定距離以内に位置させるようにすることができる。この場合の所定距離は予め定義することが可能であるが、隙間Eとクリックバネ70以外の導電性部材との間の距離よりも短い距離とすることができる。これにより、隙間Eから進入した静電気は優先的にクリックバネ70に伝わるので、クリックバネ70を介して静電気を第2接地回路パターン422及び/又はベース部材10に接地させ、他の部材には流れないようにすることができる。
【0077】
また、本実施形態では、静電気を接地させるためのアース部材として、第2の入力操作(例えば第2操作部材22の回転操作)に対して応答動作をするクリックバネ70を用いることができるので、静電気の接地のために新たに部材を追加する必要がないので、部品点数を相対的に減少させることができる。
【0078】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0079】
1…スイッチモジュール
10…ベース部材
20…操作部材
21…第1操作部材
22…第2操作部材
221…案内部材
222…切り欠き部
30…第1配線基板,配線基板
31…第1基材
32…第1導電回路パターン,導電回路パターン
321…押圧接点
322…第1接地回路パターン
33…メタルドーム
40…第2配線基板,配線基板
41…第2基材
42…第2導電回路パターン,導電回路パターン
421…エンコーダ接点
422…第2接地回路パターン
50…回転部材
60(61,62)…摺動子
70…クリックバネ,弾性部材
71…突起部
72…当接部
80…リング部材
81…(リング部材の)係止部材
90…カバー部材
91…(カバー部材の)係止部材
M,Ma,Mb…基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力操作がされる絶縁性の第1操作部材と、前記第1操作部材と隙間を介して配置され、第2の入力操作がされる絶縁性の第2操作部材とを有する操作部材と、
前記操作部材の下側に配置され、導電回路パターンを有する配線基板と、を有するスイッチモジュールであって、
前記操作部材と前記配線基板との間に配置され、前記導電回路パターンの接地回路パターン及び/又は前記配線基板を支持する導電性のベース部材と短絡しており、前記第2の入力操作に応じて弾性変形する導電性の弾性部材をさらに有することを特徴とするスイッチモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチモジュールであって、
前記第1操作部材は前記第2操作部材に囲まれており、前記第2操作部材には、当該第2操作部材と前記第1操作部材との接面に沿って延在する案内部材が設けられるとともに、前記案内部材が形成されていない切り欠き部が設けられていることを特徴とするスイッチモジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスイッチモジュールであって、
前記弾性部材は、突起部を備えるクリックバネであり、前記突起部は前記導電回路パターンの接地回路パターン及び/又は前記ベース部材に接続されていることを特徴とするスイッチモジュール。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載のスイッチモジュールであって、
前記配線基板は、
第1基材と、該第1基材の一方主面側に実装された複数のメタルドームと、前記メタルドームの頭頂部と対向するように、前記第1基材の一方主面に形成された押圧接点を含む第1導電回路パターンと、を有する第1配線基板と、
第2基材と、該第2基材の、前記第1基材の一方主面とは対向しない一方主面に形成された複数のエンコーダ接点を含む第2導電回路パターンとを有し、前記第1配線基板の一方主面側に積層される第2配線基板と、を備え、
さらに、前記第2導電回路パターンに接する一方主面側に摺動子を保持し、当該摺動子が前記第2導電回路パターンを摺動可能なように回転可能であるとともに、前記弾性部材と接触可能であるように配置される樹脂製の回転部材を備えることを特徴とするスイッチモジュール。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載のスイッチモジュールであって、
前記第1基材と前記第2基材は一つの連続した基材からなり、前記第1導電回路パターンと前記第2導電回路パターンは当該基材の異なる主面に形成されていることを特徴とするスイッチモジュール。
【請求項6】
請求項5に記載のスイッチモジュールであって、
前記第2導電回路パターンと前記接地回路パターンとは同じ主面に形成されていることを特徴とするスイッチモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−69327(P2012−69327A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212060(P2010−212060)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】