説明

スイッチングマトリクスおよびその半導体素子の特性試験システム

【課題】スイッチングマトリクスのオン・オフ操作を制御するためにセンサおよびコントローラを備えたスイッチングマトリクスを提供する。
【解決手段】スイッチングマトリクスは、スイッチアレイ30を備えており、スイッチアレイ30は、一つ以上の入力ポートと、一つ以上の出力ポートと、前記入力ポートと前記出力ポートとの間の電気的な通路を開閉するように配置されている一つ以上のスイッチ素子36と、前記電気的な通路の所定の電気的特性を測定するとともに、これに基づいて信号を生成するように配置されている電気的なセンサ38または電気的なセンサアセンブリと、を備えている。電気的なセンサアセンブリが、電圧センサ、電流センサ、または電力センサであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチングマトリクスおよびその半導体素子の特性試験システムに関し、特に、前記スイッチングマトリクスのオン・オフ操作を制御するためにセンサおよびコントローラを備えたスイッチングマトリクスおよびその半導体素子の特性試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の測定ユニットを備えた電子測定装置は、半導体または何らかの電子素子の電気的特性の測定および分析にすでに広く応用されている。測定ユニットから引出されている複数本の試験配線を測定ユニットと被試験素子上の素子との電気的な選択点に接続することで、所望の試験を実行するようにしている。集積回路素子の電気的特性の試験時には、慣例によれば、カスタマイズされた、または汎用型のマトリクス装置(またはマルチプレクサ)が、試験装置と複数(または一つ)の被試験素子との間の接続の切換えを容易にするのに用いられている。マトリクス装置は、使用者のコマンドに基づいて、入力ポートから出力ポートまでの任意の組合せを接続するように構成されている。
【0003】
集積回路素子の電気的特性の試験について言えば、一台以上の試験装置(測定する電気的特性による)をマトリクス装置の入力ポートに接続し、被試験素子をマトリクス装置の出力ポートに接続する。マトリクス装置の入力ポートと出力ポートは前記マトリクス装置またはマルチプレクサの接続チャネルを構成するリレースイッチ(relay switch)に接続されており、そしてマトリクス装置の入力ポートと出力ポートとの間における電気的な接続はリレースイッチにより断接される。上記した技術は、単一素子または組合せ済みの電子モジュールの試験に応用するか、またはプリント回路板上のソケットで試験装置(またはマトリクス装置もしくはマルチプレクサを介して)に直接連結されている回路の試験に応用しても良い。特許文献1、2、3、4および5などの文献にはマトリクス装置を集積回路素子の試験に応用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,069,484号明細書
【特許文献2】米国特許第5,124,638号明細書
【特許文献3】米国特許第5,559,482号明細書
【特許文献4】米国特許第6,791,344号明細書
【特許文献5】米国特許第6,100,815号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、スイッチングマトリクスのオン・オフ操作を制御するためにセンサおよびコントローラを備えたスイッチングマトリクスおよびその半導体素子の特性試験システムを提供する。
【0006】
本発明のスイッチングマトリクスの実施例は、スイッチアレイを備えており、前記スイッチアレイは、一つ以上の入力ポートと、一つ以上の出力ポートと、前記入力ポートと前記出力ポートとの間の電気的な通路を開閉するように配置されている一つ以上のスイッチ素子と、前記電気的な通路の所定の電気的特性を測定するとともに、これに基づいて信号を生成するように配置されている電気的なセンサまたは電気的なセンサアセンブリと、を備えている。
【0007】
本発明の半導体素子の特性試験システムの実施例は、スイッチアレイと、コントローラとを備えている。前記スイッチアレイは、一つ以上の入力ポートと、一つ以上の出力ポートと、前記入力ポートと前記出力ポートとの間の電気的な通路を開閉するように配置されている一つ以上のスイッチ素子と、前記電気的な通路の所定の電気的特性を測定するとともに、これに基づいて信号を生成するように配置されている電気的なセンサまたは電気的なセンサアセンブリと、を備えている。前記コントローラは前記信号に基づいて前記スイッチ素子の動作を制御するように配置されている。
【0008】
下記説明および図面を参照することで、本発明の技術的特徴および長所が完全に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例における半導体素子の試験システムの機能ブロック図。
【図2】図1のスイッチングマトリクスの一実施例を例示する図。
【図3】本発明の一実施例の人工知能型スイッチングマトリクスを例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記では本発明の技術的特徴および長所を広く概略的に説明したが、下記における本発明の詳細な説明により更に明確な理解が得られるであろう。本発明の特許請求の範囲の目的を構成するその他技術的特徴および長所は下記に記載する。本発明が属する技術的分野における当業者であれば、下記に開示する概念および特定の実施例を用いて、その他構造または製造工程を改変または設計して、本発明と同じ目的を容易に達成することができることが理解できるはずである。本発明が属する技術分野における当業者であればまた、このような同等効果の構造は別紙の特許請求の範囲で規定する本発明の技術的思想および範囲から乖離しないということも理解できるはずである。
【0011】
図1は本発明の一実施例における試験システム10の機能ブロック図である。前記試験システム10は測定ユニット12と、スイッチングマトリクス40と、被試験素子(例えば集積回路素子)16と、オペレーティングシステム20とを備えている。前記スイッチングマトリクス40はスイッチアレイ30と、コントローラ18とを備えている。前記測定ユニット12は、例えば、被試験素子にバイアス電圧を付与するための電流装置、電圧装置、オシロスコープまたはデジタイザなどの電流源、電圧源またはデジタル信号源といった電源供給手段と、前記被試験素子16の電気的特性を測定するためのセンサ(図示しない)とを備えてもよい。前記スイッチングマトリクス40の素子試験用接点は前記被試験素子16のコンタクトパッドに電気的に接続される。前記オペレーティングシステム20はディスプレイ22と、入力装置24と、メモリ26と、プロセッサ28とを備えており、前記オペレーティングシステム20は前記メモリ26、前記入力装置24、前記ディスプレイ22および前記コントローラ18の動作を制御するように構成されている。
【0012】
図2は図1のスイッチアレイ30の一実施例を例示する図である。前記スイッチアレイ30はM個の行端子(行ポート)とN個の列端子(列ポート)とを備えており、このうちMおよびNは1以上の整数である。前記行端子1ないしMは対応する行配線32に接続され、そして前記列端子1ないしNは対応する列配線34に接続されている。行配線32と列配線34との間に接続されている二つのノードは、アレイ方式で配列されているスイッチ素子36(SW)を備えており、この下付き符号のうちの前者は各々の行配線32に対応する位置を表し、一方後者は各々の列配線34に対応する位置を表している。スイッチ素子SWがオフ(導通)されたときには、行端子1と列端子1との間の電気的な通路が電気的に接続された状態となり、一方、スイッチ素子SWがオン(切断)されたときには、行端子1と列端子1との間の電気的な通路が電気的に切断された状態となることを表している。前記スイッチ素子36(SW)は単一のリレースイッチまたはマルチイン−マルチアウト構成(A×B)としてもよく、このうちA、Bは1以上の任意の整数値とすることができる。
【0013】
前記コントローラ18は、前記プロセッサ28の変更命令に応じて、前記スイッチ素子36のオン・オフ状態を制御するように構成されている。本発明の一実施例において、前記スイッチアレイ30は、前記電気的な通路の所定の電気的特性を測定するとともに、これに基づいて信号を生成するように配置されている電気的なセンサ38(または電気的なセンサアセンブリ)をさらに備えている。本発明の一実施例において、前記電気的なセンサ38は電圧センサ、電流センサまたは電力センサであり、前記電気的なセンサアセンブリは電圧センサ、電流センサ、および/または電力センサの組合せである。本発明の一実施例において、前記電気的なセンサ38は前記行配線32および/または前記列配線34に接続されている。本発明の一実施例において、前記コントローラ18は前記スイッチアレイ30の内部に統合されるとともに、前記電気的なセンサ38が前記スイッチアレイ30により検出した信号を根拠として、前記プロセッサ28の指示とは無関係となるようにしてもよい。
【0014】
本発明の一実施例において、前記行端子(行ポート)および前記列端子(列ポート)は入力ポート(前記測定ユニット12に結合されている)とするか、または出力ポート(前記被試験素子16に結合されている)とすることができる。前記試験システム10において、試験信号は前記測定ユニット12の一つにより生成され、さらに前記スイッチアレイ30を介して前記被試験素子16に伝送される。また一方では、前記被試験素子16の電気信号は前記スイッチアレイ30を介して前記測定ユニット12のセンサに伝送される。つまり、前記スイッチアレイ30の行端子および列端子は双方向の信号伝送機能を備えている。
【0015】
手動式または自動化された試験システムにおいては、もし高電圧、高電流、および/または高電力を前記スイッチ素子36に印加する段階において、前記スイッチ素子36のオンまたはオフ状態を変更すると、前記スイッチアレイ30が損傷してしまうことがある。高電圧、高電流、および/または高電力が前記スイッチ素子36の定格数値を超えたときには、前記スイッチ素子36が損傷してしまいかねない。
【0016】
図3は本発明の一実施例の人工知能型スイッチングマトリクス40を例示する図であり、これはM×Nのスイッチアレイ30とコントローラ18とを備えている。本発明の一実施例において、前記電気的なセンサ38は前記スイッチ素子36の入力配線または出力配線から印加される電圧、電流、および/または電力を測定するとともに、これに基づいて検出信号を生成する。前記プロセッサ28の切換え命令を受け取った後、前記コントローラ18は前記電気的なセンサ38の検出信号を考慮して、さらにこれにより前記スイッチ素子36の導通動作を制御する。前記入力ポートと前記出力ポートとの間の電気的な通路の開閉は前記コントローラ18に依存しており、コントローラ18は前記スイッチ素子36の状態を変更する前に、前記スイッチ素子36を無効(disable)および有効(enable)とする切換え動作を予め行う。このようにして、前記スイッチ素子36に印加される電圧、電流、および/または電力にて前記スイッチアレイ30が損傷するのを回避することができる。
【0017】
本発明の技術内容および技術的特長は上記したとおりであるが、本発明の属する技術分野の当業者であれば、別紙の特許請求の範囲にて規定する本発明の技術的思想および範囲に違わず、本発明の教示および開示で各種の置換および付加を行うことができることが理解できるはずである。例えば、上記にて開示した数多くの製造工程は、別の方法で実施したり、またはその他製造工程で置換したり、または上記した二種類の方式を組み合わせて用いることもできる。
【0018】
またこれ以外にも、本願の権利範囲は上記にて開示した特定の実施例の製造工程、機器、製造、物質の成分、装置、方法またはステップに限定されるものではない。本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明が教示および開示する製造工程、機器、製造、物質の成分、装置、方法またはステップに基づいて、現在または未来の開発者のいずれを問わず、本願の実施例に開示するものと実質的に同じ方式で実質的に同じ効果を実行して、実質的に同じ結果に到達するものも本発明に使用できることが理解できるはずである。したがって、別紙の特許請求の範囲は、この種の製造工程、機器、製造、物質の成分、装置、方法またはステップに用いるものを包括するのに用いることもできる。
【符号の説明】
【0019】
10 試験システム
12 測定ユニット
16 被試験素子
18 コントローラ
20 オペレーティングシステム
22 ディスプレイ
24 入力装置
26 メモリ
28 プロセッサ
30 スイッチアレイ
32 行配線
34 列配線
36 スイッチ素子
38 電気的なセンサ
40 スイッチングマトリクス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチアレイを備えたスイッチングマトリクスであって、前記スイッチアレイは、
一つ以上の入力ポートと、
一つ以上の出力ポートと、
前記入力ポートと前記出力ポートとの間の電気的な通路を開閉するように配置されている一つ以上のスイッチ素子と、
前記電気的な通路の所定の電気的特性を測定するとともに、これに基づいて信号を生成するように配置されている電気的なセンサまたは電気的なセンサアセンブリと、
を備えていることを特徴とするスイッチングマトリクス。
【請求項2】
前記電気的なセンサが電圧センサであることを特徴とする請求項1に記載のスイッチングマトリクス。
【請求項3】
前記電気的なセンサが電流センサであることを特徴とする請求項1に記載のスイッチングマトリクス。
【請求項4】
前記電気的なセンサが電力センサであることを特徴とする請求項1に記載のスイッチングマトリクス。
【請求項5】
前記電気的なセンサアセンブリが電圧センサ、電流センサ、および/または電力センサの組合せであることを特徴とする請求項1に記載のスイッチングマトリクス。
【請求項6】
前記電気的な通路が、前記入力ポートを前記スイッチ素子に接続する入力配線を備えていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチングマトリクス。
【請求項7】
前記電気的なセンサが前記入力配線に接続されていることを特徴とする請求項6に記載のスイッチングマトリクス。
【請求項8】
前記電気的な通路が、前記出力ポートを前記スイッチ素子に接続する出力配線を備えていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチングマトリクス。
【請求項9】
前記電気的なセンサが前記出力配線に接続されていることを特徴とする請求項8に記載のスイッチングマトリクス。
【請求項10】
前記電気的なセンサは前記スイッチアレイ内部に設けられていないことを特徴とする請求項1に記載のスイッチングマトリクス。
【請求項11】
前記信号に基づいて前記スイッチ素子の動作を制御するように配置されているコントローラをさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチングマトリクス。
【請求項12】
前記スイッチ素子がアレイ方式で設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチングマトリクス。
【請求項13】
スイッチアレイと、コントローラとを備えた半導体素子の特性試験システムであって、前記スイッチアレイは、
一つ以上の入力ポートと、
一つ以上の出力ポートと、
前記入力ポートと前記出力ポートとの間の電気的な通路を開閉するように配置されている一つ以上のスイッチ素子と、
前記電気的な通路の所定の電気的特性を測定するとともに、これに基づいて信号を生成するように配置されている電気的なセンサまたは電気的なセンサアセンブリと、
を備えており、
前記コントローラが前記信号に基づいて前記スイッチ素子の動作を制御するように配置されていることを特徴とする半導体素子の特性試験システム。
【請求項14】
前記電気的なセンサが電圧センサであることを特徴とする請求項13に記載の試験システム。
【請求項15】
前記電気的なセンサが電流センサであることを特徴とする請求項13に記載の試験システム。
【請求項16】
前記電気的なセンサが電力センサであることを特徴とする請求項13に記載の試験システム。
【請求項17】
前記電気的な通路が、前記入力ポートを前記スイッチ素子に接続する入力配線を備えていることを特徴とする請求項13に記載の試験システム。
【請求項18】
前記電気的なセンサが前記入力配線に接続されていることを特徴とする請求項17に記載の試験システム。
【請求項19】
前記電気的な通路が前記出力ポートを前記スイッチ素子に接続する出力配線を備えていることを特徴とする請求項13に記載の試験システム。
【請求項20】
前記電気的なセンサが前記出力配線に接続されていることを特徴とする請求項19に記載の試験システム。
【請求項21】
前記スイッチ素子がアレイ方式で設けられていることを特徴とする請求項13に記載の試験システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−79934(P2013−79934A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−73004(P2012−73004)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(509101767)スター テクノロジーズ インコーポレイテッド (11)
【氏名又は名称原語表記】STAR TECHNOLOGIES INC.
【Fターム(参考)】