説明

スイッチングレギュレータの制御回路、方法、およびそれらを用いたスイッチングレギュレータ

【課題】消費電流を低減する。
【解決手段】第1コンパレータ10は、スイッチングレギュレータ200の出力電圧Voutに応じた帰還電圧Vfbを、ヒステリシスを有するしきい値電圧Vthと比較し、帰還電圧Vfbがしきい値電圧より低いときアサートされる電圧比較信号Vcmpを出力する。第2コンパレータ12は、スイッチングトランジスタM1に流れる電流ILが基準電流Icに達するとアサートされる電流比較信号Icmpを生成する。ロジック部20は、電圧比較信号Vcmpがアサートされる期間中、電流比較信号Icmpがアサートされると、制御信号SpfmをスイッチングトランジスタM1がオフする第2レベルにセットし、所定のオフ時間Toffの経過後に、制御信号SpfmをスイッチングトランジスタM1がオンする第1レベルにセットする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチングレギュレータに関し、特にその低消費電力化に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルカメラをはじめとする電子機器には、電池の出力電圧よりも高い電圧、あるいは低い電圧を必要とするICや電子部品が搭載される。電池電圧よりも高いもしくは低い電圧を生成するために、電池電圧を昇圧もしくは降圧するスイッチングレギュレータが利用される。
【0003】
スイッチングレギュレータのスイッチング素子のオンオフを制御する制御回路がスイッチング素子を制御する方法としては、スイッチングレギュレータの出力電圧と目標値となる基準電圧を比較し、その誤差電圧が最小となるように駆動信号のパルス幅を変化させるパルス幅変調方式が広く用いられている。パルス幅変調方式によれば、スイッチング素子がオンするオン時間の時間比率、すなわちデューティ比を変化させることにより、電池電圧に応じて昇圧率を変化させ、出力電圧を一定に保つことができる。
【0004】
こうしたスイッチングレギュレータにおいて、負荷電流が減少した軽負荷状態における変換効率の改善が大きな課題となる。以下の特許文献には、軽負荷状態において、スイッチングトランジスタのスイッチング動作をある期間、停止することにより、消費電力(消費電流)を低減する方式が開示される。この方式は、スイッチング素子がオンする頻度、つまりパルスの周波数が負荷の状態に応じて変化することから、パルス周波数変調(PFM)方式とも称される。
【特許文献1】特開2003−309966号公報
【特許文献2】特開2006−295802号公報
【特許文献3】特開2008−67505号公報
【特許文献4】特開2008−148502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3に記載のPFM方式のスイッチングレギュレータは、オシレータが設けられており、オシレータからのクロックパルスを基準として、スイッチング素子のオンもしくはオフのタイミングを制御する。PFM方式は本来、軽負荷時におけるスイッチングレギュレータの消費電力を低減して高効率化を図る技術である。一方、スイッチングレギュレータの高周波化が進むと、オシレータの消費電流が増加するため、PFMモードのスイッチングレギュレータの消費電力が、オシレータの消費電力によって制限されることとなる。
【0006】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、その目的のひとつは、軽負荷時の効率をさらに改善したスイッチングレギュレータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、スイッチングトランジスタを有するスイッチングレギュレータの制御回路が提供される。この制御回路は、スイッチングレギュレータの出力電圧に応じた帰還電圧を所定の下側しきい値電圧と比較し、帰還電圧が下側しきい値電圧まで低下するとアサートされる電圧比較信号を出力する第1コンパレータと、スイッチングトランジスタに流れる電流を、所定の基準電流と比較し、電流が基準電流に達するとアサートされる電流比較信号を生成する第2コンパレータと、電圧比較信号および電流比較信号と、を受け、スイッチングトランジスタがオンすべき期間に第1レベル、オフすべき期間に第2レベルとなる制御信号を生成するロジック部と、制御信号にもとづき、スイッチングトランジスタを駆動するドライバと、を備える。ロジック部は、電圧比較信号がアサートされる期間中、電流比較信号がアサートされると、制御信号を第2レベルにセットし、所定のオフ時間の経過後に、制御信号を第1レベルにセットする動作を繰り返す。
【0008】
この態様によると、オシレータが不要となるため、軽負荷時の消費電力を低減することができる。
【0009】
第1コンパレータは、下側しきい値電圧とそれより高い上側しきい値電圧をしきい値電圧とするヒステリシスコンパレータであり、帰還電圧がしきい値電圧より低いとき、電圧比較信号をアサートしてもよい。ヒステリシスコンパレータを用いることにより、出力電圧の変動する電圧範囲を設定することができる。
【0010】
ある態様において、ロジック部は、制御信号に応じた論理レベルを有するパルス信号を受け、パルス信号が第1レベルに遷移すると、オフ時間の経過後にアサートされるゲート信号を生成するゲート信号生成部と、ゲート信号と電圧比較信号の論理積を生成する論理積ゲートと、論理積ゲートの出力信号がアサートされると第1レベルに、電流比較信号がアサートされると第2レベルに設定される制御信号を生成するフリップフロップと、を含んでもよい。
【0011】
制御回路は、1つの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。制御回路を集積化することにより、回路面積を削減することができる。
【0012】
本発明の別の態様は、スイッチングレギュレータに関する。このスイッチングレギュレータは、スイッチングトランジスタと、スイッチングトランジスタがオン、オフすることにより発生するスイッチング電圧がその一端に印加されるインダクタと、インダクタに流れる電流を整流する整流素子と、インダクタに流れる電流によって充電される出力キャパシタと、スイッチングトランジスタのオン、オフを制御する上述のいずれかの態様の制御回路と、を備える。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、スイッチングレギュレータのスイッチングトランジスタのオン、オフ状態を制御する方法に関する。この方法は、以下のステップ1〜3を備える。
1. スイッチングレギュレータの出力電圧に応じた帰還電圧を、所定の下側しきい値電圧と比較し、帰還電圧が下側しきい値電圧まで低下するとアサートされる電圧比較信号を生成する。
2. スイッチングトランジスタに流れる電流を、所定の基準電流と比較し、電流が基準電流に達するとアサートされる電流比較信号を生成する。
3. 電圧比較信号および電流比較信号にもとづき、スイッチングトランジスタがオンすべき期間に第1レベル、オフすべき期間に第2レベルとなる制御信号を生成する。
ステップ3において、電圧比較信号がアサートされる期間中、電流比較信号がアサートされると、制御信号を前記スイッチングトランジスタがオフする第2レベルにセットし、所定のオフ時間の経過後に、制御信号をスイッチングトランジスタがオンする第1レベルにセットする動作が繰り返される。
この態様によれば、自励的に制御信号を生成できるため、オシレータなどの周期的な信号を生成する回路が不要となり、消費電力を低減することができる。
【0014】
ステップ1における帰還電圧と下側しきい値電圧との比較は、下側しきい値電圧とそれより高い上側しきい値電圧をしきい値電圧とするヒステリシスコンパレータによってなされてもよい。
【0015】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るスイッチングレギュレータの制御回路によれば、軽負荷時の効率を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0018】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係るスイッチングレギュレータ200の構成を示す。本実施の形態に係るスイッチングレギュレータ200は、降圧型の同期整流スイッチングレギュレータであって、その制御回路100と、スイッチングレギュレータ出力回路(以下、単に出力回路という)110の2つのブロックを含んで構成される。このスイッチングレギュレータ200は、入力端子202に入力される入力電圧Vinを降圧し、それを安定化した出力電圧Voutを出力端子204から出力する。
【0020】
出力回路110は、スイッチングトランジスタM1、同期整流トランジスタM2、出力インダクタL1、出力キャパシタC1を含む。
スイッチングトランジスタM1はPチャンネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、一端(ソース)が入力端子202と接続され、他端(ドレイン)がスイッチング端子102と接続される。スイッチングトランジスタM1のゲートには駆動信号SDHが印加され、駆動信号SDHがローレベル(第1レベル)のときオン、ハイレベル(第2レベル)のときオフする。
【0021】
同期整流トランジスタM2は、NチャンネルMOSFETであり、スイッチング端子102と接地端子の間に設けられる。同期整流トランジスタM2のゲートには、駆動信号SDLが印加され、スイッチングトランジスタM1と相補的にオン、オフする。同期整流トランジスタM2は出力インダクタL1に流れる電流を整流する整流素子として機能する。なお、同期整流トランジスタM2に代えて整流ダイオードを用いてもよい。
【0022】
スイッチングトランジスタM1、同期整流トランジスタM2が相補的にオン、オフすることにより、スイッチング端子102には、入力電圧Vinと接地電圧(0V)の間でスイングするスイッチング電圧Vswが発生する。出力インダクタL1の一端は、スイッチング端子102と接続され、スイッチング電圧Vswが印加されており、その他端は出力端子204と接続される。出力キャパシタC1は、出力端子204と接地端子の間に設けられる。出力キャパシタC1は、出力インダクタL1に流れる電流ILによって充電される。
【0023】
なお、スイッチングレギュレータ200は、図1に示す降圧型のスイッチングレギュレータに限定されず、昇圧型、昇降圧型のいずれでもよいし、インダクタに代えてトランスを利用した絶縁型スイッチング電源であってもよいし、あるいはDC/ACコンバータ(インバータ)やキャパシタ充電回路などのその他の電源装置であってもよい。当業者には、これらの変形例に適した出力回路110の回路トポロジーが採用できることが理解される。
【0024】
制御回路100は、スイッチング端子102および帰還端子104を備える。帰還端子104には、出力端子204の出力電圧Voutが、第1帰還抵抗R10、第2帰還抵抗R11によって分圧された帰還電圧Vfbが入力される。
【0025】
制御回路100は、ドライバ14、パルス周波数変調器16と、パルス幅変調器18を備え、ひとつの半導体基板上に一体集積化された機能ICである。なお、スイッチングトランジスタM1および同期整流トランジスタM2は、制御回路100に内蔵されていてもよいし、外付けされてもよい。重負荷時においてパルス幅変調器18がアクティブとなり、軽負荷時においてパルス周波数変調器16がアクティブとなる。ドライバ14は、パルス周波数変調器16により生成される制御信号Spfm、またはパルス幅変調器18により生成される制御信号Spwmにもとづいて、スイッチングトランジスタM1、同期整流トランジスタM2を駆動する。なお、重負荷状態であるか軽負荷状態であるかの判定は、公知のさまざまな技術を用いればよいため、ここでは説明を省略する。
【0026】
はじめに、パルス幅変調器18について説明する。パルス幅変調器18は、出力電圧Vout(帰還電圧Vfb)が所定の基準電圧と一致するようにデューティ比が制御されるPWM信号Spwmを生成する。パルス幅変調器18は、公知技術を用いて構成できるため、説明を省略する。
【0027】
続いて、パルス周波数変調器16の構成を説明する。パルス周波数変調器16は、第1コンパレータ10、第2コンパレータ12、ロジック部20を含む。
【0028】
第1コンパレータ10は、スイッチングレギュレータ200の出力電圧Voutに応じた帰還電圧Vfbを、所定の下側しきい値電圧VthLと比較する。第1コンパレータ10は、比較の結果、帰還電圧Vfbがしきい値電圧VthLまで低下すると、アサート(本実施の形態においてハイレベルの状態)される電圧比較信号Vcmpを出力する。
【0029】
図1において、第1コンパレータ10は、下側しきい値電圧VthLとそれより高い上側しきい値電圧VthHをしきい値電圧とするヒステリシスコンパレータとして構成される。ヒステリシスコンパレータ(10)は、帰還電圧Vfbがしきい値電圧Vthより低いときアサート(本実施の形態においてハイレベルの状態)される電圧比較信号Vcmpを出力する。具体的には、電圧比較信号Vcmpがアサートされる期間、しきい値電圧Vthは、高い上側しきい値電圧VthHに設定され、ネゲート(本明細書においてローレベルの状態)される期間、しきい値電圧Vthは低いレベルVthLに設定される。第1コンパレータ10は、ヒステリシス付きのコンパレータであってもよいし、帰還電圧Vfbを上側しきい値電圧VthH、下側しきい値電圧VthLそれぞれと比較する2つのコンパレータおよびロジック回路の組み合わせで構成されてもよい。
【0030】
ヒステリシスコンパレータを用いることにより、後述する図2のタイムチャートに示すように、帰還電圧Vfbを下側しきい値電圧VthLと上側しきい値電圧VthHの間で遷移させることができる。
【0031】
ただし、第1コンパレータ10はヒステリシスを有していなくてもよく、単に下側しきい値電圧VthLを帰還電圧Vfbと比較するコンパレータであってもよい。この場合であっても、帰還電圧Vfbの最低電圧を、下側しきい値電圧VthLによって設定することができる。
【0032】
第2コンパレータ12は、スイッチングトランジスタM1に流れる検出電流Isを、所定の基準電流Icと比較する。第2コンパレータ12は、検出電流Isが基準電流Icに達すると、電流比較信号Icmpをアサートする(本明細書においてハイレベル)。
【0033】
図1において、第2コンパレータ12は検出電流Isに応じた検出電圧Vsを、基準電流Icに応じた基準電圧Vth3と比較する。基準電圧Vth3を生成するために、抵抗R1および電流源13が設けられる。抵抗R1の一端には、入力電圧Vinが印加される。電流源13は、抵抗R1と直列に接続されており、所定の基準電流Icを生成する。基準電圧Vth3は、
Vth3=Vin−R1×Ic
で与えられる。
【0034】
スイッチングトランジスタM1のオン抵抗をRon1、スイッチングトランジスタM1に流れる電流をILと書くとき、検出電圧Vsは、
Vs=Vin−Ron1×IL
で与えられる。
【0035】
ここで、検出電圧Vsと基準電圧Vth3を比較することは、スイッチングトランジスタM1の電圧降下(R1×IL)と抵抗R1の電圧降下(R1×Ic)を比較することと等価であり、更に言えば、電流ILと基準電流Icと比較することと等価である。なお、電流の比較方法はここで説明したものに限定されない。
【0036】
ロジック部20は、電圧比較信号Vcmpおよび電流比較信号Icmpとを受け、制御信号Spfmを生成する。制御信号Spfmは、スイッチングトランジスタM1がオンすべき期間に第1レベル(ローレベル)、オフすべき期間に第2レベル(ハイレベル)となる。
【0037】
ドライバ14は、制御信号Spfmにもとづき、スイッチングトランジスタM1および同期整流トランジスタM2を駆動する。具体的には、制御信号Spfmに応じた論理レベルをとる駆動信号SDHおよびSDLを生成し、スイッチングトランジスタM1および同期整流トランジスタM2それぞれのゲートに供給する。
【0038】
ロジック部20は、電圧比較信号Vcmpがアサートされる期間中、電流比較信号Icmpがアサートされると、制御信号Spfmを第2レベル(ハイレベル)にセットし、その後、所定のオフ時間Toffが経過後に、制御信号Spfmを第1レベル(ローレベル)にセットする動作を繰り返す。
【0039】
この機能を実現するために、図1は以下のように構成することができる。ロジック部20は、論理積ゲート22、第1ワンショット回路24、フリップフロップ26、第2ワンショット回路28、インバータ30を含む。
【0040】
ロジック部20は、制御信号Spfmに応じた論理レベルを有するパルス信号(ここでは、駆動信号SDH)を受ける。ゲート信号生成部27は、パルス信号SDHが第1レベル(ローレベル)に遷移すると、オフ時間Toffの経過後にアサート(ハイレベル)されるゲート信号S4を生成する。たとえばゲート信号生成部27は、第2ワンショット回路28およびインバータ30を含む。第2ワンショット回路28は、パルス信号SDHがハイレベルに遷移してから所定期間(オフ時間Toff)の間、ハイレベルとなるワンショットパルスS3を生成する。インバータ30は、ワンショットパルスS3を反転し、ゲート信号S4を生成する。
【0041】
論理積ゲート22は、ゲート信号S4と電圧比較信号Vcmpの論理積(AND)を生成する。第1ワンショット回路24は、論理積ゲート22の出力信号(オン信号)S1がアサート(ハイレベル)すると、所定のパルス幅を有するワンショットパルスS2を生成する。
【0042】
フリップフロップ26は、論理積ゲート22からのオン信号S1(つまりS2)がアサートされると第1レベル(ハイレベル)に、電流比較信号Icmpがアサートされると第2レベル(ハイレベル)に設定される制御信号Spfmを生成する。
【0043】
より具体的には、フリップフロップ26は、Dフリップフロップである。Dフリップフロップの入力端子Dには、ハイレベル(第1レベル)が入力され、クロック端子には、第1ワンショット回路24からのワンショットパルスが入力される。フリップフロップ26のリセット端子には、電流比較信号Icmpが入力される。Dフリップフロップの反転出力端子からは、制御信号Spfmが出力される。
【0044】
以上が制御回路100の構成である。続いてその動作を説明する。図2は、図1の制御回路100の軽負荷時の動作を示すタイムチャートである。
【0045】
軽負荷時にパルス周波数変調器16がアクティブとなる。PFMモードでは、同期整流トランジスタM2は固定的にオフされる。時刻t0以前、駆動信号SHD、SDLはローレベルであり、スイッチングトランジスタM1、同期整流トランジスタM2がいずれもオフしている。このとき、出力キャパシタC1に蓄えられた電荷が、図示しない負荷に供給されることにより、帰還電圧Vfbが時間とともに低下する。時刻t0において、電圧比較信号Vcmpはローレベル(ネゲート)であり、第1コンパレータ10のしきい値電圧Vthは、下側のレベルVthLに設定されている。この間、Vfb>Vthが成り立っている。また、駆動信号SDHがハイレベルであるから、ゲート信号S4もハイレベルに保たれている。
【0046】
時刻t0に、帰還電圧Vfbが下側のしきい値電圧VthLまで低下すると、電圧比較信号Vcmpがハイレベルとなる(アサート)。これを受けて、論理積ゲート22の出力信号(オン信号)S1および第1ワンショット回路24の出力信号(ワンショットパルス)S2がアサートされると、フリップフロップ26のクロック端子にポジティブエッジが入力され、反転出力(制御信号Spfm)がローレベルとなる。また、時刻t1以降、第1コンパレータ10のしきい値電圧Vthは高いレベルVthHに切りかわる。
【0047】
制御信号Spfmがローレベルとなると、スイッチングトランジスタM1がオン、同期整流トランジスタM2がオフとなり、出力インダクタL1の一端(スイッチング端子102)に入力電圧Vinが印加され、コイル電流ILが増加しはじめる。
【0048】
時刻t1に、スイッチングトランジスタM1に流れる電流ILが基準電流Icに達すると、電流比較信号Icmpがアサートされる。電流比較信号Icmpがアサートされると、フリップフロップ26がリセットされ、その反転出力(制御信号Spfm)および駆動信号SDHがハイレベルに遷移し、スイッチングトランジスタM1がオフする。スイッチングトランジスタM1がオフすると、コイル電流ILが減少し始める。
【0049】
時刻t1に駆動信号SDHがハイレベルに遷移すると、第2ワンショット回路28により所定のオフ時間Toffの間、ハイレベルとなるワンショットパルスS3が生成される。インバータ30によって反転されたワンショットパルスS3、つまりゲート信号S4は、時刻t1からオフ時間Toff経過後の時刻t2にハイレベルに遷移する。
【0050】
時刻t2にゲート信号S4がハイレベルに遷移すると、オン信号S1がハイレベルとなり、再びスイッチングトランジスタM1がオンする。同様のプロセスを経て、時刻t3にスイッチングトランジスタM1はオフする。
【0051】
時刻t0以降、スイッチングトランジスタM1が間欠的にオンすることにより、正のコイル電流ILが流れ、出力キャパシタC1が充電され、出力電圧Vout(帰還電圧Vfb)が増加する。
【0052】
時刻t4に、帰還電圧Vfbがしきい値電圧Vth(=VthH)を超えると、電圧比較信号Vcmpがネゲートされる。電圧比較信号Vcmpがネゲートされる期間、スイッチングトランジスタM1および同期整流トランジスタM2のスイッチングは完全に停止する。
【0053】
時刻t5に帰還電圧Vfbが下側のしきい値電圧VthLまで低下すると、再び電圧比較信号Vcmpがアサートされる。制御回路100は、軽負荷状態において、時刻t0〜t5までの一連の動作を繰り返す。
【0054】
以上が制御回路100の動作である。制御回路100によれば、軽負荷状態においてオシレータが不要となるため、回路面積を削減することができる。さらにオシレータが不要となることから、消費電力を従来に比べて各段に小さくすることができる。
【0055】
実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0056】
本実施の形態における各信号のハイレベル、ローレベルの論理値の設定は一例であって、インバータなどによって適宜反転させることにより自由に変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態に係るスイッチングレギュレータの構成を示す図である。
【図2】図1の制御回路の軽負荷時の動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0058】
C1…出力キャパシタ、L1…出力インダクタ、M1…スイッチングトランジスタ、M2…同期整流トランジスタ、R10…第1帰還抵抗、R11…第2帰還抵抗、10…第1コンパレータ、12…第2コンパレータ、14…ドライバ、16…パルス周波数変調器、18…パルス幅変調器、20…ロジック部、22…論理積ゲート、24…第1ワンショット回路、26…フリップフロップ、27…ゲート信号生成部、28…第2ワンショット回路、30…インバータ、100…制御回路、102…スイッチング端子、104…帰還端子、110…出力回路、200…スイッチングレギュレータ、202…入力端子、204…出力端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチングトランジスタを有するスイッチングレギュレータの制御回路であって、
前記スイッチングレギュレータの出力電圧に応じた帰還電圧を、所定の下側しきい値電圧と比較し、前記帰還電圧が前記下側しきい値電圧まで低下するとアサートされる電圧比較信号を出力する第1コンパレータと、
前記スイッチングトランジスタに流れる電流を、所定の基準電流と比較し、前記電流が前記基準電流に達するとアサートされる電流比較信号を生成する第2コンパレータと、
前記電圧比較信号および前記電流比較信号と、を受け、前記スイッチングトランジスタがオンすべき期間に第1レベル、オフすべき期間に第2レベルとなる制御信号を生成するロジック部と、
前記制御信号にもとづき、前記スイッチングトランジスタを駆動するドライバと、
を備え、
前記ロジック部は、前記電圧比較信号がアサートされる期間中、前記電流比較信号がアサートされると、前記制御信号を第2レベルにセットし、所定のオフ時間の経過後に、前記制御信号を第1レベルにセットする動作を繰り返すことを特徴とする制御回路。
【請求項2】
前記第1コンパレータは、前記下側しきい値電圧とそれより高い上側しきい値電圧をしきい値電圧とするヒステリシスコンパレータであり、前記帰還電圧が前記しきい値電圧より低いとき、前記電圧比較信号をアサートすることを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
前記ロジック部は、前記制御信号に応じた論理レベルを有するパルス信号を受け、かつ
前記パルス信号が第1レベルに遷移すると、前記オフ時間の経過後にアサートされるゲート信号を生成するゲート信号生成部と、
前記ゲート信号と前記電圧比較信号の論理積を生成する論理積ゲートと、
前記論理積ゲートの出力信号がアサートされると前記第1レベルに、前記電流比較信号がアサートされると前記第2レベルに設定される前記制御信号を生成するフリップフロップと、
を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の制御回路。
【請求項4】
スイッチングトランジスタと、
前記スイッチングトランジスタがオン、オフすることにより発生するスイッチング電圧が印加されるインダクタと、
前記インダクタに流れる電流を整流する整流素子と、
前記インダクタに流れる電流によって充電される出力キャパシタと、
前記スイッチングトランジスタのオン、オフを制御する請求項1から3のいずれかに記載の制御回路と、
を備えることを特徴とするスイッチングレギュレータ。
【請求項5】
スイッチングレギュレータのスイッチングトランジスタのオン、オフ状態を制御する方法であって、
前記スイッチングレギュレータの出力電圧に応じた帰還電圧を、所定の下側しきい値電圧と比較し、前記帰還電圧が前記下側しきい値電圧まで低下するとアサートされる電圧比較信号を生成するステップと、
前記スイッチングトランジスタに流れる電流を、所定の基準電流と比較し、前記電流が前記基準電流に達するとアサートされる電流比較信号を生成するステップと、
前記電圧比較信号および前記電流比較信号にもとづき、前記スイッチングトランジスタがオンすべき期間に第1レベル、オフすべき期間に第2レベルとなる制御信号を生成するステップと、
を備え、
前記制御信号を生成するステップは、
前記電圧比較信号がアサートされる期間中、前記電流比較信号がアサートされると、前記制御信号を前記スイッチングトランジスタがオフする第2レベルにセットし、所定のオフ時間の経過後に、前記制御信号を前記スイッチングトランジスタがオンする第1レベルにセットする動作を繰り返すことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記帰還電圧と前記下側しきい値電圧との比較は、前記下側しきい値電圧とそれより高い上側しきい値電圧をしきい値電圧とするヒステリシスコンパレータによってなされることを特徴とする請求項5に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−154706(P2010−154706A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332181(P2008−332181)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】