説明

スイッチング電源回路

【課題】小型で超寿命のスイッチング電源回路を提供する。
【解決手段】入力端子a1と出力端子b1との間に接続されたスイッチング素子SW1及びチョークコイルL1と、接続点c1と出力端子b2との間に接続されたダイオードD1と、入力端子a2と出力端子b1との間に接続されたスイッチング素子SW2及びダイオードD2と、接続点c2と出力端子b2との間に接続されたチョークコイルL2とを有する。入力端子a2と出力端子b2との間には、平滑キャパシタC3を接続している。
【効果】平滑キャパシタとして、電解型キャパシタを使わずに、長寿命のフィルムキャパシタやセラミックキャパシタが使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源を用いて直流電源を得るスイッチング電源回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、商用の交流電源を用いて直流電源を得るスイッチング電源回路が知られている。
スイッチング電源回路は、商用の交流電源を整流して脈流を得る整流回路と、この整流回路によって得られた脈流を平滑する平滑回路とを備えている。この平滑回路により、きれいな直流を得て負荷に供給することができる。
このようなスイッチング電源回路においては、交流周波数(50Hz,60Hz)での電圧変動を抑えるために、平滑回路に平滑キャパシタが設けられている。平滑キャパシタとして、大容量の電解型キャパシタ(electrolytic capacitor; 通常「電解コンデンサ」と呼ばれる)が主に使われている。整流回路に大容量の電解型キャパシタを使うと、周知のように、高調波電流が発生する、電解型キャパシタが熱を受けて耐久性が低下する、重量がある、寸法が大きい等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−169570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電解型キャパシタは、熱や過電圧に弱く、長期間使用すると等価直列抵抗(ESR)が増大して脈流を平滑する機能が弱くなってくる。こうなれば、例えば発光ダイオード(LED)、蛍光灯、冷陰極管などを負荷に採用している場合、発光照度のちらつきが発生する。またAV機器を負荷に使用すると雑音が発生して使用しづらいものになってしまう。
そこで電解型キャパシタを使用しないで、かつ周期的な電圧変動若しくは電流変動(リップルという)が無視できるようなスイッチング電源回路の開発が要望されている。
【0005】
そこで本発明は、整流回路の平滑キャパシタとして、電解型キャパシタを使わずに、長寿命のフィルムキャパシタ(Film Capacitor)や、セラミックキャパシタ(Ceramic Capacitor)が使用でき、かつ周期的なリップルを抑制できると共に、高調波電流が少なくかつ、小型で超寿命のスイッチング電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスイッチング電源回路は、交流電源に接続され、交流を脈流に変換し、第一極、第二極の間に該脈流を出力する整流回路と、整流回路の第一極、第二極にそれぞれ接続される第一、第二の入力端子と、負荷につながる第一、第二の出力端子とを有するスイッチング回路とを備えている。
スイッチング回路は、第一の入力端子と第一の出力端子との間に、互いに直列に接続された第一のスイッチング素子及び第一のチョークコイルと、第一のスイッチング素子及び第一のチョークコイルの接続点と第二の出力端子との間に接続された第一のダイオードと、第二の入力端子と第一の出力端子との間に、互いに直列に接続された第二のスイッチング素子及び第二のダイオードと、第二のスイッチング素子及び第二のダイオードの接続点と第二の出力端子との間に接続された第二のチョークコイルとを有し、第二の入力端子と第二の出力端子との間に、平滑キャパシタを接続していることを特徴とするものである。
【0007】
この構成のスイッチング電源回路によれば、整流回路により、商用の交流電源を整流して脈流に変換する。整流回路には、この脈流をパルス状の高周波交流に変換する第一のスイッチング素子及び第二のスイッチング素子が設けられている。
第二のスイッチング素子は第一のスイッチング素子のスイッチング周波数、位相とは関係のない周波数、位相により、オンオフするものである。すなわち、第一のスイッチング素子と第二のスイッチング素子のスイッチング周波数は互いに異なるものであっても良く、同一であっても良い。また仮に第一のスイッチング素子と第二のスイッチング素子のスイッチング周波数が同一であっても、そのスイッチング位相差は任意である。
【0008】
なお、第二のスイッチング素子、第一のスイッチング素子ともに、交流電源の周波数よりも高い周波数でスイッチング駆動される。
第一のスイッチング素子がオンのときは電源側から負荷に電流を供給するとともに平滑キャパシタに電荷を蓄積し、第一のスイッチング素子がオフのときは平滑キャパシタ及び第一のチョークコイルから負荷に電流を供給することができる。
【0009】
第二のスイッチング素子がオンのときは、平滑キャパシタに蓄積された電荷を第二のチョークコイルに流す。これにより、第二のチョークコイルに磁束が蓄積される。そして第二のスイッチング素子がオフのとき第二のチョークコイルに蓄えられた磁束に基づく電流が第二のダイオードを通って負荷に流れていく。
以上が、個々のスイッチング素子の動作説明であるが、スイッチング電源回路全体としての動作は次のようになる。
【0010】
平滑キャパシタは、第一のスイッチング素子のスイッチング動作、第二のスイッチング素子のスイッチング動作により充電・放電を繰り返すが、整流回路から出力される脈流の電圧が高い期間では充電量が多く、平滑キャパシタの端子電圧は上昇していく。整流回路から出力される脈流の電圧が低い期間では、平滑キャパシタの放電量が多くなり、平滑キャパシタの端子電圧は下がっていく。
【0011】
すなわち、整流回路から出力される脈流の電圧が高い期間には、本発明のスイッチング電源回路を一種の降圧回路として動作させ、整流回路から出力される脈流の電圧が低い期間には、本発明のスイッチング電源回路を一種の昇圧回路として動作させることができる。
このようにして整流回路から出力される脈流の電圧が高い期間には平滑キャパシタを充電し、脈流の電圧が低くなる期間には平滑キャパシタの電荷を放電させることにより、負荷電流の変動を抑えることができる。またこの負荷電流の変動抑制により、負荷電圧の変動抑制もできる。
【0012】
本発明では、第二のチョークコイル、第二のダイオードを通って負荷に流れる経路を作っているので、平滑キャパシタの放電量は、この経路のない通常のスイッチング回路と比べて多くなり、平滑キャパシタをほぼ完全に放電させることができる。また、平滑キャパシタがほぼ完全に放電された状態から充電していくので、平滑キャパシタの電圧の上昇量が小さい。
【0013】
整流回路の第一、第二の入力端子間に平滑キャパシタを設置した場合、脈流のピーク電圧に耐えられる耐圧を有するキャパシタが必要であるが、本発明では、前述したように平滑キャパシタがほぼ完全に放電された状態から平滑キャパシタを充電していくので、平滑キャパシタの耐圧は、脈流のピーク電圧よりも小さな値、例えば半分でよい。したがって、耐圧が低い大容量キャパシタとして、フィルムキャパシタや、セラミックキャパシタが使用できる。
【0014】
なお、平滑キャパシタに電解型キャパシタを使用することも考えられるが、本発明の平滑キャパシタは0Vに近くなるまで放電を行うので、電解型キャパシタを採用することは実際上困難なことである。実際、フィルムキャパシタや、セラミックキャパシタなどはほぼ100%充放電できるのに対して、電解型キャパシタは10%くらいしか充放電できない。
【発明の効果】
【0015】
負荷電流の変動抑制及び負荷電圧の変動抑制、つまり平滑動作を行うのは平滑キャパシタであるが、本発明では平滑キャパシタに印加される電圧が、整流回路の第一、第二の入力端子間に平滑キャパシタを設置した場合と比べて低くできる、という利点がある。
したがって本発明によれば、電解型キャパシタを使わずに、長寿命のフィルムキャパシタや、セラミックキャパシタなどが使用でき、小型で超寿命のスイッチング電源回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るスイッチング電源回路(スイッチング素子SW2:閉状態)を示す回路図である。
【図2】図1の回路図において、スイッチング素子SW2が開状態に移った場合を示す。
【図3】スイッチング素子SW1,SW2のPWM制御における、負荷電圧とオンオフ時間比との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施形態に係るスイッチング電源回路の各部の電圧波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明の実施形態に係るスイッチング電源回路を示す回路図である。
スイッチング電源回路は、交流電源Eに接続され、交流を脈流に変換する整流回路11とスイッチング回路12とを備えている。
整流回路11は、ブリッジ整流ダイオードを使用した両波整流回路であってもよく、整流ダイオードを使った半波整流回路であっても良い。整流回路11は、正極、負極の間に、変動する正電圧(又は変動する負電圧)からなる脈流を出力する。この脈流の基本周波数は、交流電源Eの周波数の2倍である。例えば交流電源Eの周波数が60Hzであれば、脈流の基本周波数は120Hzとなる。
【0018】
スイッチング回路12は、整流回路11の正極、負極にそれぞれ接続される入力端子a1と、入力端子a2と、負荷LDにつながる出力端子b1と、出力端子b2とを有する。
スイッチング回路12は、入力端子a1と出力端子b1との間に、互いに直列に接続されたスイッチング素子SW1及びチョークコイルL1と、スイッチング素子SW1及びチョークコイルL1の接続点c1と出力端子b2との間に接続されたダイオードD1と、入力端子a2と出力端子b1との間に、互いに直列に接続されたスイッチング素子SW2及びダイオードD2と、スイッチング素子SW2及びダイオードD2の接続点c2と出力端子b2との間に接続されたチョークコイルL2とを有する。入力端子a2と出力端子b2との間には、平滑キャパシタC3を接続している。
【0019】
PWM制御回路13は、出力端子b1と出力端子b2間の電圧(負荷電圧)に応じて、スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW2をPWM制御する回路である。スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW2は、このPWM制御回路13によりスイッチング制御される。
図3は、PWM制御回路13における、負荷電圧とオンオフ時間比との関係を示すグラフである。PWM制御回路13は、同グラフに示すように、負荷電圧が基準電圧より高ければオンオフ時間比のオン時間の割合を短くし、負荷電圧が基準電圧より低ければ、オンオフ時間比のオン時間の割合を長くする制御を行う。これにより、負荷電圧が基準電圧に等しくなるようPWM制御する。
【0020】
PWM制御回路13が設定するスイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW2のスイッチング周波数、位相は互いに関係がなく、それぞれの周波数、位相により、オンオフする。すなわち、スイッチング素子SW1とスイッチング素子SW2のスイッチング周波数は互いに異なるものであっても良く、同一であっても良い。また仮にスイッチング素子SW1とスイッチング素子SW2のスイッチング周波数が同一であっても、そのスイッチング位相差は任意である。
【0021】
スイッチング素子SW2、スイッチング素子SW1ともに、交流電源の周波数よりも高い周波数でスイッチング駆動される。例えば、スイッチング素子SW1のスイッチング周波数として、20〜250kHz、スイッチング素子SW2のスイッチング周波数として20〜250kHz、を例示することができる。
この構成のスイッチング電源回路によれば、整流回路11により、商用の交流電源Eを整流して脈流に変換する。整流回路11のスイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW2は、この脈流をパルス状の高周波交流に変換する。
【0022】
スイッチング素子SW1、チョークコイルL1を含む上半分の回路に注目すれば、スイッチング素子SW1がオンのときは電源側から負荷に電流を供給するとともに平滑キャパシタC3に電荷を蓄積し、スイッチング素子SW1がオフのときは平滑キャパシタC3及びチョークコイルL1から負荷に電流を供給することができる。
スイッチング素子SW2、チョークコイルL2を含む下半分の回路に注目すれば、スイッチング素子SW2がオンのときは、平滑キャパシタC3に蓄積された電荷をチョークコイルL2に流す。これにより、チョークコイルL2に磁束が蓄積される。そしてスイッチング素子SW2がオフのときチョークコイルL2に蓄えられた磁束に基づく電流が負荷に流れていく。
【0023】
以上が、個々のスイッチング素子の動作説明であるが、スイッチング電源回路全体としての動作は、図1,図2、図4を参照して、次のようになる。なお図4(a)は整流回路から出力される脈流電圧Va12の波形を示し、図4(b)は平滑キャパシタC3の端子電圧Vc3の波形を示し、図4(c)は負荷電圧VLの波形を示す。図4では電圧値を記入しているが、これらの数値は例示的なものであるにすぎない。
【0024】
整流回路11から出力される脈流の電圧Va12がしきい電圧よりも高い期間(図4の横軸に“A”で示す)では、スイッチング素子SW1がオンの期間中、負荷に大きな電流が流れるとともに平滑キャパシタC3も充電される。スイッチング素子SW1がオフの期間は、平滑キャパシタC3及びチョークコイルL1から負荷に電流を供給することができる。この期間中、平滑キャパシタC3は充電・放電を繰り返すが、脈流電圧Va12が高いので充電量のほうが大きく、平滑キャパシタC3の端子電圧Vc3は上昇していく。この状態を図4(b)に示す。
【0025】
整流回路から出力される脈流電圧Va12がしきい電圧よりも低い期間(図4の横軸に“B”で示す)では、スイッチング素子SW2のオン期間中、平滑キャパシタC3に蓄積された電荷がチョークコイルL1とチョークコイルL2に流れる。スイッチング素子SW2のオフ期間になれば、チョークコイルL1に蓄えられた電流がダイオードD1を通して負荷に流れていくとともに、チョークコイルL2に蓄えられた電流がダイオードD2を通して負荷に流れていく。
【0026】
このようにして整流回路11から出力される脈流電圧Va12が高い期間には平滑キャパシタC3を充電し、脈流電圧Va12が低くなる期間には平滑キャパシタC3の電荷を放電させて、負荷電流の変動を抑えることができる。またこの負荷電流の変動抑制により、負荷電圧の変動抑制もできる(図4(c)参照)。
また、チョークコイルL2、ダイオードD2を通って負荷に流れる経路を設けているので、平滑キャパシタC3の放電量は、この経路のない通常のスイッチング回路と比べて多くなり、平滑キャパシタC3をほぼ完全に放電させることができる。また、平滑キャパシタC3は、ほぼ完全に放電された状態から充電していくので、平滑キャパシタの電圧の上昇量が小さい。従って、平滑キャパシタC3の耐圧を低くできるので、耐圧の低く容量の大きなセラミックキャパシタ等が使用できる利点が出てくる。
【0027】
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、前述の形態に限定されるものではない。例えば、商用の交流電源の入力ラインから侵入するノイズ及び電源内部で発生する帰還ノイズの抑制ためのキャパシタを入力端子a1と入力端子a2との間に挿入しても良い。その他、本発明の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0028】
11 整流回路
12 スイッチング回路
13 PWM制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に接続され、交流を脈流に変換し、第一極、第二極の間に該脈流を出力する整流回路と、
前記整流回路の第一極、第二極にそれぞれ接続される第一、第二の入力端子と、負荷につながる第一、第二の出力端子とを有するスイッチング回路とを備え、
前記スイッチング回路は、前記第一の入力端子と前記第一の出力端子との間に、互いに直列に接続された第一のスイッチング素子及び第一のチョークコイルと、前記第一のスイッチング素子及び前記第一のチョークコイルの接続点と前記第二の出力端子との間に接続された第一のダイオードと、前記第二の入力端子と前記第一の出力端子との間に、互いに直列に接続された第二のスイッチング素子及び第二のダイオードと、前記第二のスイッチング素子及び前記第二のダイオードの接続点と前記第二の出力端子との間に接続された第二のチョークコイルとを有し、
前記第二の入力端子と前記第二の出力端子との間に、平滑キャパシタを接続していることを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項2】
前記平滑キャパシタが、フィルムキャパシタ又はセラミックキャパシタである請求項1記載のスイッチング電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−182493(P2011−182493A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41773(P2010−41773)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】