説明

スイッチング電源装置

【課題】有機半導体コンデンサを用いても出力電圧が目標電圧を超えて振幅するオーバーシュートの発生を防止することができると共に、出力電圧が目標電圧に至る前段での高周波ノイズの発生を防止することを可能にする。
【解決手段】スイッチング電源装置20は、入力電圧Vinを有機半導体コンデンサC2を介して出力電圧Voutとする際に、出力電圧Voutを分圧抵抗器R3,R2を介してスイッチング電源制御部13へフィードバックし、このフィードバック電圧のレベルに応じてコンデンサC2への入力電圧の周波数を上下するスイッチング制御を行う。コンデンサC2の入力側にパワーインダクタL2を、当該パワーインダクタL2とコンデンサC2とでLCフィルタが形成される状態に接続し、パワーインダクタL2の入力側に制御部13でのスイッチング制御後の電圧をフィードバックする抵抗器R4及びコンデンサC5によるRC回路を備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力電圧のノイズ除去のために有機半導体コンデンサを用いる、スイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスイッチング電源装置として図4に示す回路構成のものがある。この図4に示すスイッチング電源装置10は、電源11と、スイッチング電源制御部13と、抵抗器R1及び電解コンデンサ(単にコンデンサともいう)C1を直列接続して成る位相補正部15と、電解コンデンサC3,C4と、インダクタL1と、ツェナーダイオード(単にダイオードともいう)D1と、出力電圧Voutのノイズ除去のための有機半導体コンデンサC2と、抵抗器R2,R3,R5とを備えて構成されている。
【0003】
スイッチング電源制御部13は、制御部13aと、パワートランジスタを用いたパワー部13bとを備え、制御部13aは、電源11からの入力電圧Vinの位相を位相補正部15を用いて適正に補正する制御と、後述のフィードバック電圧Vfbのレベルに応じてスイッチング周波数を上下させる制御を行う。パワー部13bは、制御部13aによるスイッチング周波数の上下制御に応じて、電源11に接続されたインダクタL1の通過電圧出力側をGND(アース)とショート/オープンさせるスイッチング動作を所定間隔で繰り返すことにより、その通過電圧の周波数を可変する。
【0004】
電源11と、スイッチング電源制御部13の入力電圧Vinが入力される入力端子inとの間の経路には電解コンデンサC3がGNDとの間に接続され、その入力端子in及びコンデンサC3の接続端にはインダクタL1の一端が接続され、インダクタL1の他端がパワー部13bのスイッチング周波数制御端SWに接続されると共に、ダイオードD1のアノードに接続されている。
【0005】
ダイオードD1のカソードにはスイッチング電源装置10の出力部となる抵抗器R5がGNDとの間に接続され、この抵抗器R5とダイオードD1のカソードとの間には、カソード側から順に電解コンデンサC4と有機半導体コンデンサC2とがGNDとの間に接続され、更に分圧抵抗器としての抵抗器R3とR4とがGNDとの間に接続され、これら抵抗器R3とR4との間にスイッチング電源制御部13のフィードバック端子FBが接続されている。つまり、抵抗器R5の両端から出力される出力電圧Voutが、その分圧抵抗器R3,R4で分圧されてフィードバック電圧Vfbとしてスイッチング電源制御部13へフィードバックされるようになっている。
【0006】
このような構成のスイッチング電源装置10においては、スイッチング電源制御部13に入力されるフィードバック電圧Vfbのレベルが高ければ、制御部13aによりスイッチング周波数が低くなるように制御され、この制御に応じてパワー部13bでインダクタL1の通過電圧の周波数が低くなるように制御され、これに応じて出力電圧Voutのレベルが下がる。一方、フィードバック電圧Vfbのレベルが低ければ、制御部13aによりスイッチング周波数が高くなるように制御され、この制御に応じてパワー部13bでインダクタL1の通過電圧の周波数が高くなるように制御され、これに応じて出力電圧Voutのレベルが上がる。これによって出力電圧Voutが所定の一定電圧値に制御される。
【0007】
このようなスイッチング電源装置10においては出力電圧Voutのノイズ除去のための有機半導体コンデンサC2が用いられているが、この種の有機半導体コンデンサを用いた装置として特許文献1に記載の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−263276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した従来のスイッチング電源装置10によれば、有機半導体コンデンサC2をノイズ除去のため電圧出力側に使用しているが、これは、有機半導体コンデンサC2が電解コンデンサに比べノイズ除去能力が桁違いに大きく、ESR(等価直列抵抗値)で比較すると電解コンデンサが100mΩであるのに対して有機半導体コンデンサ(例えば2.5V820μF製品)は5mΩと格段に小さいことによる。このノイズ除去能力の大きい理由により電源装置の出力側に採用されるようになった。
【0010】
しかし、その有機半導体コンデンサC2のESRが小さくなって高周波成分が除去され、フィードバック電圧Vfbによる安定的なフィードバック制御が掛けられなくなる。この解決策として、位相補正部15の遅れ補償量を多くして高い周波数でのループゲインを小さくすることで安定性を確保していたが、このため、電圧出力側において高い周波数での変動が多くなっていた。つまり、図5に示すように、出力電圧Voutが目標電圧V0(=12V)を超えるオーバーシュートが発生し、目標電圧V0よりも高い電圧V1と低い電圧V2との間を出力電圧Voutが振幅(最悪の場合は発振状態となる)し、一定の目標電圧V0の出力電圧Voutが出力できなくなるという問題が生じていた。
【0011】
更に、図5に出力電圧Voutを約6V〜約13V間の立ち上がり曲線を太線で表すように、出力電圧Voutがオーバーシュートに至る前段で高調波ノイズが大きくなるという問題が発生する。
【0012】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、有機半導体コンデンサを用いても出力電圧が目標電圧を超えて振幅するオーバーシュートの発生を防止することができると共に、出力電圧が目標電圧に至る前段での高周波ノイズの発生を防止することができる、スイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した課題を解決するために本発明は、有機半導体コンデンサを利用したスイッチング電源装置において、前記有機半導体コンデンサに入力される電圧の周波数を上下するスイッチング制御を行うスイッチング電源制御部と、前記有機半導体コンデンサの入力側にパワーインダクタと、を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明において、前記スイッチング電源制御部は、前記有機半導体コンデンサの出力側電圧に基づいて前記スイッチング制御を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明において、前記スイッチング電源制御部は、前記パワーインダクタの入力側電圧に基づいて前記スイッチング制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、有機半導体コンデンサを用いても出力電圧が目標電圧を超えて振幅するオーバーシュートの発生を防止することができると共に、出力電圧が目標電圧に至る前段での高周波ノイズの発生を防止することができるスイッチング電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係るスイッチング電源装置の回路構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係るスイッチング電源装置における電源投入時の出力電圧のレベル変化を表す図である。
【図3】本実施形態の変形例に係るスイッチング電源装置の回路構成を示す図である。
【図4】従来のスイッチング電源装置の回路構成を示す図である。
【図5】従来のスイッチング電源装置における電源投入時の出力電圧のレベル変化を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための実施の形態(以下、単に本実施形態という)について詳細に説明する。但し、全図において同一部分には同一符号を付し、その説明を適時省略する。
(実施形態の構成)
図1は、本実施形態に係るスイッチング電源装置20の回路構成を示す図である。本実施形態に係るスイッチング電源装置20の特徴は、前述で説明済みの図4に示したスイッチング電源装置10において有機半導体コンデンサC2の電源11側(以降、前段側又は入力側ともいう)にパワーインダクタL2を、L2とC2とが直列状態となってLCフィルタ(LC回路)となるように接続し、そのパワーインダクタL2の前段側とスイッチング電源制御部13のフィードバック端子FBとの間に、抵抗器R4と電解コンデンサC5とを直列接続して構成した点にある。
【0019】
パワーインダクタL2は、当該パワーインダクタL2に入力される電圧信号の周波数が上がれば上がるほど抵抗値が大きくなって高周波を遮断するものであり、この作用によって有機半導体コンデンサC2のESRが小さくならないようにする。更に、パワーインダクタL2は、有機半導体コンデンサC2とでLCフィルタを構成しているので、高周波ノイズを除去する作用がある。
【0020】
直列接続された抵抗器R4及びコンデンサC5は、パワーインダクタL2の前段側とフィードバック端子FBとの間に接続されているので、パワーインダクタL2の前段から抵抗器R4及びコンデンサC5を介してスイッチング電源制御部13にフィードバックが掛かるようになっている。
【0021】
この際、抵抗器R4とコンデンサC5によるRC回路で定まる時定数に応じて、電圧信号の一部を抵抗器R4で抽出し、この抽出された中から更にコンデンサC5で高周波成分を抽出し、これをフィードバック電圧Vfb1としてフィードバック端子FBへフィードバックする。これによって高周波成分がフィードバックするようになっている。但し、出力側の抵抗器R5における出力電圧Vout1は、分圧抵抗器R3,R2で分圧信号(フィードバック電圧)Vfbとしてフィードバック端子FBへフィードバックされる。
(実施形態の動作)
以下、図1に示す本実施形態に係るスイッチング電源装置20の動作を説明する。電源11からの入力電圧Vinが、スイッチング電源制御部13の制御部13aに入力されると共に、インダクタL1及びダイオードD1を介してパワーインダクタL2へ入力され、更に抵抗器R5から出力電圧Vout1として出力される。この際、出力電圧Vout1は、抵抗器R5の前段の分圧抵抗器R3,R4で分圧され、フィードバック電圧Vfbとしてスイッチング電源制御部13のフィードバック端子FBへフィードバックされる。
【0022】
スイッチング電源制御部13では、制御部13aにおいて、入力電圧Vinの位相が位相補正部15により適正に補正される制御が行われると共に、フィードバック電圧Vfbのレベルに応じてスイッチング周波数が上下される制御が行われる。この制御に応じて、パワー部13bでインダクタL1の通過電圧がGNDとの間でショート又はオープンとなるスイッチング動作が所定間隔で繰り返され、その通過電圧の周波数が可変される。
【0023】
ここで、スイッチング電源制御部13に入力されるフィードバック電圧Vfbのレベルが高ければ、制御部13aによりスイッチング周波数が低くなるように制御され、この制御に応じてパワー部13bでインダクタL1の通過電圧の周波数が低くなるように制御され、これに応じて出力電圧Vout1のレベルが下がる。一方、フィードバック電圧Vfbのレベルが低ければ、制御部13aによりスイッチング周波数が高くなるように制御され、この制御に応じてパワー部13bでインダクタL1の通過電圧の周波数が高くなるように制御され、これに応じて出力電圧Vout1のレベルが上がる。これによって出力電圧Vout1が所定の一定電圧値に制御される。
【0024】
更に、インダクタL1の通過電圧は、ダイオードD1を介してパワーインダクタL2に入力されるが、パワーインダクタL2に入力される電圧信号の周波数が高ければ高いほど抵抗値が大きくなって高周波が遮断され、この作用によって有機半導体コンデンサC2のESRが減少しない状態となる。この際、パワーインダクタL2の前段では、抵抗器R4とコンデンサC5のR×Cで定まる時定数に応じて、電圧信号の一部が抵抗器R4で抽出され、この抽出された中から更にコンデンサC5で高周波成分が抽出され、これがフィードバック電圧Vfb1としてフィードバック端子FBへフィードバックされる。つまり、高周波成分がフィードバックされる。
【0025】
このように高周波成分がフィードバックされると、制御部13aによりスイッチング周波数が低くなるように制御され、この制御に応じてパワー部13bでインダクタL1の通過電圧の周波数が低くなるように制御されるので、出力電圧Vout1のレベルが下がる。この制御によって、図2に示すように、出力電圧Vout1が目標電圧V0(=12V)を超えないようになる。つまり、オーバーシュートは発生ぜず、出力電圧Vout1は、一定の目標電圧V0に収束する。
【0026】
また、上記のようにパワーインダクタL2の前段で抵抗器R4とコンデンサC5を介して高周波成分をフィードバックするので、図2に示す約5.6V〜約11.5V間の立ち上がり曲線を細線で表すように、目標電圧V0の前段で出力電圧Vout1に高調波ノイズが略発生しない。
(実施形態の効果)
以上説明のように本実施形態に係るスイッチング電源装置20は、入力電圧Vinを有機半導体コンデンサC2を介して出力電圧Voutとして出力する際に、この出力電圧Voutを分圧抵抗回路としての分圧抵抗器R3,R2を介してスイッチング電源制御部13へフィードバックし、このフィードバック電圧のレベルに応じて有機半導体コンデンサC2に入力される電圧の周波数を上下するスイッチング制御を行うものである。
【0027】
有機半導体コンデンサC2に入力される電圧の周波数を上下するスイッチング制御を行うスイッチング電源制御部13と、有機半導体コンデンサC2の入力側にパワーインダクタL2とでLCフィルタが形成される。
【0028】
この構成によれば、スイッチング制御後の電圧は、パワーインダクタL2に入力されるが、この際、その電圧の周波数が高ければ高いほどパワーインダクタL2の抵抗値が大きくなって高周波がLCフィルタで遮断され、この作用によって有機半導体コンデンサC2のESRが減少しない状態となる。この際、パワーインダクタL2の入力側では、パワーインダクタL2で遮断された高周波成分がフィードバックされるので、スイッチング制御では電圧の周波数が低くなるように制御される。この制御時に出力電圧Vout1が目標電圧V0を超えないように制御されるので、オーバーシュートは発生ぜず、出力電圧Vout1が一定の目標電圧V0に収束する。従って、スイッチング電源装置20から一定の目標電圧V0を出力することができる。
【0029】
また、フィードバックは、スイッチング制御後の電圧の一部を抽出し、この抽出された中から更に高周波成分を抽出する抵抗器R4及びコンデンサC5によるRC回路を介するのが好ましい。
【0030】
この構成によれば、適正に高周波成分をフィードバックすることができるので、出力電圧Vout1が目標電圧V0を超えないようにスイッチング制御することができ、これによって、出力電圧Vout1を一定の目標電圧V0に収束させることが出来る。更に、抵抗器R4とコンデンサC5を介して高周波成分をフィードバックするので、出力電圧Voutが目標電圧V0に収束する前段で、出力電圧Vout1に高調波ノイズが略発生しないようにすることができる。
(実施形態の変形例)
図3は、本実施形態の変形例に係るスイッチング電源装置30の回路構成を示す図である。このスイッチング電源装置30の特徴は、図4に示したスイッチング電源装置10において有機半導体コンデンサC2の前段側にパワーインダクタL2を、L2とC2でLCフィルタとなるように接続し、そのパワーインダクタL2の前段側とスイッチング電源制御部13のフィードバック端子FBとの間に、出力側の分圧抵抗器R3,R2を移動させて接続し、パワーインダクタL2への入力電圧が、その分圧抵抗器R3,R4で分圧されてフィードバック電圧Vfb2としてフィードバックされるように構成した点にある。
【0031】
この構成によれば、スイッチング電源制御部13でのスイッチング制御後の電圧は、パワーインダクタL2に入力されるが、この際、その電圧の周波数が高いほどにパワーインダクタL2で高周波が遮断され、この高周波成分が分圧抵抗器R3,R2で分圧されてフィードバックされる。従って、スイッチング制御においては、出力電圧Vout2が目標電圧V0を超えないように制御することができ、出力電圧Voutの安定度を保持することが出来る。
【0032】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明の技術的範囲予測は上記実施形態に記載の範囲予測には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲予測に含まれ得ることが、特許請求の範囲予測の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0033】
11・・電源、13・・スイッチング電源制御部、13a・・制御部、13b・・パワー部、15・・位相補正部、20,30・・スイッチング電源装置、R1,R2,R3,R4,R5・・抵抗器、C1,C3,C4,C5・・電解コンデンサ、C2・・有機半導体コンデンサ、L1・・インダクタ、L2・・パワーインダクタ、D1・・ツェナーダイオード、Vin・・入力電圧、Vout1,Vout2・・出力電圧、Vfb,Vfb1,Vfb2・・フィードバック電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機半導体コンデンサを利用したスイッチング電源装置において、
前記有機半導体コンデンサに入力される電圧の周波数を上下するスイッチング制御を行うスイッチング電源制御部と、
前記有機半導体コンデンサの入力側にパワーインダクタと、
を備えたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記スイッチング電源制御部は、前記有機半導体コンデンサの出力側電圧に基づいて前記スイッチング制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記スイッチング電源制御部は、前記パワーインダクタの入力側電圧に基づいて前記スイッチング制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−42571(P2013−42571A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176215(P2011−176215)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】