説明

スイッチ保持構造

【課題】手持ち式のスイッチの保持形態を多様化して汎用性を高める。
【解決手段】片手で把持可能な形状を有するイネーブルグリップスイッチAにおける縦長のグリップ部3の上下に上部係止部5と下部係止部6をそれぞれ形成し、構造物に取り付け固定したホルダBには、イネーブルグリップスイッチAの上部係止部5を引っ掛けて該スイッチAを吊り下げ保持する第1保持部9と、イネーブルグリップスイッチAの下部係止部6を上方から係入して該スイッチAを起立保持する第2保持部10を備えてある。好ましくは、ホルダBにおける第2保持部10の近傍に、イネーブルグリップスイッチAの下部に下向きに突設された操作キー14を挿通させるキー挿通孔11を形成し、イネーブルグリップスイッチAを第2保持部10を介して起立保持することで、該スイッチAの操作キ−14がキー挿通孔11を通してホルダ下方に突出されて、ホルダBに連結されたキースイッチ本体13に挿入されるよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イネーブルグリップスイッチなどの片手で把持可能な形状を有するスイッチを、ホルダを介して構造物の壁面などに保持しておくスイッチ保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
手持ち式のスイッチの一例であるイネーブルグリップスイッチは、ロボットのティーチング段取り替え、保守、メンテナンス、など、ガード内の危険区域での作業が必要な場合に使用されるものであり、片手でスイッチ把持した状態で押しボタンを操作することで内装されたスイッチング機構を操作するよう構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−244853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、このような手持ち式のスイッチは、使用されない場合に、構造物の壁面などに取り付けた金具に単にぶら下げ保持するようになっており、使用条件やスイッチ保持場所によっては使い勝手が悪くなることがあった。
【0004】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、手持ち式のスイッチの保持形態を多様化して汎用性を高めることを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明のスイッチ保持構造は、片手で把持可能な形状を有するスイッチにおけるグリップ部の上下に上部係止部と下部係止部をそれぞれ形成し、構造物に取り付け固定したホルダには、スイッチの上部係止部を引っ掛けてスイッチを吊り下げ保持する第1保持部と、スイッチの下部係止部を上方から係入してスイッチを起立保持する第2保持部を備えている。
【0006】
本発明によると、スイッチをホルダに吊り下げ保持する形態と、スイッチをホルダに起立保持する形態とを選択利用することができる。
【0007】
(2)本発明のスイッチ保持構造の一つの実施形態では、前記スイッチが、イネーブルグリップスイッチであり、該イネーブルグリップスイッチの下部には、キースイッチの操作キーを、下向きに突出するように取付ける一方、前記ホルダには、前記キースイッチの本体を連結し、前記ホルダにおける前記第2保持部の近傍に、前記イネーブルグリップスイッチに取り付けられた前記操作キーを挿通させるキー挿通孔を形成し、前記イネーブルグリップスイッチを、第2保持部を介して起立保持することで、前記操作キーが、前記キー挿通孔を通してホルダ下方に突出されて、前記キースイッチ本体に挿入される。
【0008】
この実施形態によると、イネーブルグリップスイッチをホルダに吊り下げ保持する形態と、イネーブルグリップスイッチをホルダに起立保持する形態とを選択利用できるのみならず、ホルダへのイネーブルグリップスイッチの脱着に伴ってキースイッチを入り切り操作する形態をも選択利用することができる。
【0009】
(3)本発明のスイッチ構造の他の実施形態では、前記上部係止部を前記グリップ部より大径に形成してある。
【0010】
この実施形態によると、大径の上部係止部を用いることで第1保持部への引っ掛かりが確実になり、スイッチ脱落させることなく安定した姿勢で確実に吊り下げ保持することができる。
【0011】
(4)本発明のスイッチ構造の更に他の実施形態では、前記下部係止部を前記グリップ部より大径に形成してある。
【0012】
この実施形態によると、大径の下部係止部を用いることで第2保持部への係止が確実になり、スイッチを所定の起立姿勢に安定保持することができる。
【0013】
(5)上記(4)の実施形態において、前記操作キーを前記下部係止部の前端近傍に下向きに取り付け、前記キー挿通孔を前記第2保持部の内奥に形成してもよい。
【0014】
この実施形態によると、大径の下部係止部が大径であるので下部係止部への操作キーの連結が容易になる。第2保持部の内奥は強度が高い箇所であるので、キー挿通孔の形成に伴うホルダの強度低下を少なくすることができる。
【0015】
(6)本発明のスイッチ保持構造の他の実施形態では、前記上部係止部を第1保持部に前記ホルダの前方から係入するものである。
【0016】
この実施形態によると、吊り下げ保持する形態を利用する場合、スイッチをホルダに押し込んで下げるような操作は不要で、ホルダに向けてスイッチを押し込むだけのほとんどワンアクションで保持を行うことができ、取扱い性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、片手で把持可能な形状を有するスイッチの保持形態を多様化して汎用性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に、代表的な手持ち式のスイッチの一例であるイネーブルグリップスイッチAが、また、図2〜図4に、使用しないイネーブルグリップスイッチAを保持しておくためのホルダBがそれぞれ示されている。
【0020】
イネーブルグリップスイッチAのボディ1は縦長形状に樹脂成型されており、前後2分割構造のボディ1に図示されないスイッチング機構が内装されるとともに、このスイッチング機構に接続されたコード2がボディ下端から導出されている。
【0021】
ボディ1の大部分は片手で握り込むことができる太さのグリップ部3に構成されており、このグリップ部3の前面に2段押し込み操作型の押しボタン4が装備されている。この押しボタン4が復帰状態にあると内装スイッチング機構がオフとなり、1段目の軽い押し込みでオンとなり、2段目まで強く押し込むことでオフとなるよう構成されている。
【0022】
グリップ部3の上端部にグリップ部3より大径の上部係止部5が形成されるとともに、グリップ部3の下端部にもグリップ部3より大径の下部係止部6が形成されており、使用しない時のイネーブルグリップスイッチAを、前記上部係止部5および下部係止部6を介して前記ホルダBに保持しておくことができるようになっている。また、この上部係止部5および下部係止部6は、グリップ部3を握った手に対してイネーブルグリップスイッチAが上下へズレ動くのを阻止する滑り止めとしても機能している。
【0023】
ホルダBは樹脂成型されたものであり、その前面に前記グリップ部3を上下に挿通するに足る幅および奥行きをもって開口7が前向きに形成されるとともに、その内奥には左右一対の取付け孔8が形成されており、ホルダBを構造物の壁面などにネジ止め固定できるようになっている。
【0024】
前記開口7の前半部左右には、前記上部係止部5の左右部位を前後左右に位置決め係止する第1保持部9が凹入形成されるとともに、開口7の前部から内奥に亘って、前記下部係止部6を前後左右に位置決め係入して下方から受け止め保持する第2保持部10が前記第1保持部9より一段低く段差状に形成されている。さらに、前記第2保持部10の内奥底部には横長のキー挿通孔11が上下に貫通形成されている。
【0025】
上記構成のホルダBを用いることで、3種の保持形態を選択してイネーブルグリップスイッチAを保持することができ、以下に各保持形態について説明する。
【0026】
〔第1保持形態〕
図5〜図9に、第1保持形態が示されている。この保持形態では、ホルダBは、図7および図8に示すように、構造物の壁面Wにネジ止め固定されており、このホルダBに対して、図5に示すように、ホルダBの第1保持部9と略同じ高さに上部係止部5を位置させてイネーブルグリップスイッチAをホルダBに押し込む。これによって、図6〜図9に示すように、上部係止部5が第1保持部9に係入支持され、イネーブルグリップスイッチAは上部係止部5を介してホルダBに吊り下げ保持される。
【0027】
〔第2保持形態〕
図10〜図14に、第2保持形態が示されている。この保持形態では、図10に示すように、固定されたホルダBの第2保持部10より高い位置に下部係止部6を位置させてイネーブルグリップスイッチAをホルダBに大きく挿入した後、下方に落とし込む。これによって、図11〜図14に示すように、下部係止部6が第2持部10に係入支持され、イネーブルグリップスイッチAは下部係止部6を介してホルダBに起立姿勢で保持される。
【0028】
〔第3保持形態〕
図15〜図20に、第3保持形態が示されている。この保持形態では、図16に示すように、ホルダBの後端に連結金具12を介して安全スイッチとしてキースイッチ本体13が連結されるとともに、イネーブルグリップスイッチAにおける下部係止部6の前端部に、前記キースイッチ本体13に上方から挿抜される操作キー14が下向きに連結される。
【0029】
この場合、ホルダBへのスイッチ保持操作手順は上記第2保持形態と同様であり、ホルダBの第2保持部10より高い位置に下部係止部6を位置させてイネーブルグリップスイッチAをホルダBに大きく挿入した後、下方に落とし込む。これによって、下部係止部6が第2保持部10に係入支持され、イネーブルグリップスイッチAは下部係止部6を介してホルダBに起立姿勢で保持される。
【0030】
この時、イネーブルグリップスイッチAの操作キー14は、上記した落とし込み操作に伴ってキー挿通孔11を通ってホルダBの下方に突出し、キースイッチ本体13に差し込まれて電源が入れられる。また、イネーブルグリップスイッチAをホルダBから取外すと、操作キー14がキースイッチ本体13から抜かれて電源が切られることになる。
【0031】
なお、キースイッチ本体13に差し込まれた操作キー14は、キースイッチ本体13に内装された操作機構に係止されて適度の抜き出し抵抗が付与されることになり、ホルダBに保持されたイネーブルグリップスイッチAが地震などで勝手に浮き上がって外れてしまうことが回避される。
【0032】
(他の実施形態)
(1)グリップ部3の上方に設ける上部係止部5として、前後方向に向かう左右一対、あるいは、環状の溝を形成し、ホルダBに設ける第1保持部9として、前記溝に係入する突条を形成し、突条に溝を前後方向から差込み係止することでスイッチAを吊り下げ保持することもできる。
【0033】
(2)前記キー通過孔11のないホルダBを使用して、前記第1保持形態と第2保持形態を選択実施することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、イネーブルグリップスイッチなどの保持に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】手持ち式のスイッチの一例としてのイネーブルグリップスイッチAの斜視図である。
【図2】ホルダの斜視図である。
【図3】ホルダの平面図である。
【図4】ホルダの縦断側面図である。
【図5】第1保持形態での分解斜視図である。
【図6】第1保持形態での斜視図である。
【図7】第1保持形態での側面図である。
【図8】第1保持形態での平面図である。
【図9】第1保持形態での正面図である。
【図10】第2保持形態での分解斜視図である。
【図11】第2保持形態での斜視図である。
【図12】第2保持形態での側面図である。
【図13】第2保持形態での平面図である。
【図14】第2保持形態での正面図である。
【図15】第3保持形態での分解斜視図である。
【図16】第3保持形態での分解斜視図である。
【図17】第3保持形態での斜視図である。
【図18】第3保持形態での側面図である。
【図19】第3保持形態での平面図である。
【図20】第3保持形態での正面図である。
【符号の説明】
【0036】
3 グリップ部
5 上部係止部
6 下部係止部
9 第1保持部
10 第2保持部
11 キー挿通孔
13 キー操作スイッチ
14 操作キー
A イネーブルグリップスイッチ
B ホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片手で把持可能な形状を有するスイッチにおけるグリップ部の上下に上部係止部と下部係止部をそれぞれ形成し、構造物に取り付け固定したホルダには、スイッチの上部係止部を引っ掛けてスイッチを吊り下げ保持する第1保持部と、スイッチの下部係止部を上方から係入してスイッチを起立保持する第2保持部を備えてあることを特徴とするスイッチ保持構造。
【請求項2】
前記スイッチが、イネーブルグリップスイッチであり、該イネーブルグリップスイッチの下部には、キースイッチの操作キーを、下向きに突出するように取付ける一方、前記ホルダには、前記キースイッチの本体を連結し、
前記ホルダにおける前記第2保持部の近傍に、前記イネーブルグリップスイッチに取り付けられた前記操作キーを挿通させるキー挿通孔を形成し、前記イネーブルグリップスイッチを、第2保持部を介して起立保持することで、前記操作キーが、前記キー挿通孔を通してホルダ下方に突出されて、前記キースイッチ本体に挿入される請求項1記載のスイッチ保持構造。
【請求項3】
前記上部係止部を前記グリップ部より大径に形成してある請求項1または2記載のスイッチ保持構造。
【請求項4】
前記下部係止部を前記グリップ部より大径に形成してある請求項1ないし3のいずれかに記載のスイッチ保持構造。
【請求項5】
前記操作キーを前記下部係止部の前端近傍に下向きに取り付け、前記キー挿通孔を前記第2保持部の内奥に形成してある請求項4記載のスイッチ保持構造。
【請求項6】
前記上部係止部を第1保持部に前記ホルダの前方から係入する請求項1ないし5のいずれかに記載のスイッチ保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−54442(P2009−54442A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220726(P2007−220726)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】