説明

スイッチ構造体並びにこれを用いたクロノグラフ機構及び電子時計

【課題】厚さ方向のボタン位置が変わっても押圧力の付与及び接点の動作が適切に行われ得るスイッチ構造体並びにこれを用いたクロノグラフ機構及び電子時計。
【解決手段】電子時計1のクロノグラフ機構7のスイッチ構造体100,200は、板状本体部60a及び弾性スイッチレバー部110,210を具備する端子板60であって、スイッチレバー部が基端部の一側に122,222おいて板状本体部の外周縁部に対して折曲げられ板状本体部の外周縁部に沿う方向に延び先端側に押圧力受部を備えた腕部120,220及び該押圧力受部から更に延在されてなる弾性接点部130,230を具備するもの60と、押圧力受部に押圧力がかかった際、該押圧力受部の背後において該押圧力を受けると共に該押圧力受部の変位を案内すべく押圧力受部の背後に可動に設けられた弾性スイッチレバー支持用の剛性支持レバー150,250とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ構造体並びにこれを用いたクロノグラフ機構及び電子時計に係る。
【背景技術】
【0002】
板状本体部及びスイッチレバー部を具備する端子板であって、スイッチレバー部が基端部の一側において板状本体部の外周縁部につながると共に基端部の該一側において板状本体部の外周縁部に対して折曲げられ該基端部から該本体部の延在面に交差する面に沿って該板状本体部の外周縁部に沿う方向に延び先端側に押圧力受部を備えた腕部及び該腕部の押圧力受部から更に延在されてなる弾性接点部を具備するもの(端子板)を有するスイッチ構造体は知られている(特許文献1)。また、スタート/ストップ(発停)ボタン及びリセットボタン(帰零)が対応するスイッチ構造体の先端側端部に押圧力を及ぼすべく構成されており、スタート/ストップボタンの押圧に伴い回動される発停レバーによってクロノグラフ指針の計時動作が開始又は停止され、リセットボタンの押圧に伴い回動される帰零指示持レバーによってクロノグラフ指針が帰零されるように構成されたクロノグラフ機構も知られている。更に、このようなスイッチ構造体を備えた電子時計も知られている。
【0003】
この種の電子時計のクロノグラフ機構のスイッチ構造体においては、腕部の先端側に位置する押圧力受部に加えられる押圧力によりスイッチレバー部の腕部が撓むことから、該腕部の先端側の押圧力受部が電子時計の主面に概ね平行な面内で揺動されるだけでなく、多少なりとも電子時計の主面に垂直な方向(電子時計の厚さ方向)の位置に応じて異なる変位を受けるのを避け難く、スタート/ストップボタンやリセットボタンが該スイッチ構造体の先端側端部に加える変位と腕部の延在端部の先端部分に形成された接点部の変位との間に想定外のズレが生じる虞れがあるだけでなく、時計の厚さ方向の構造の変更に伴い該ズレが接点の動作に無視し難い不具合を生じさせる虞れがある。
【0004】
すなわち、スタート/ストップボタンやリセットボタンの押圧に伴ってクロノグラフ機構のうち機械的な部分を構成する機械的なレバーに生じる各種の回動動作と該スタート/ストップボタンやリセットボタンの押圧に伴う接点の電気的なオン/オフ動作とにズレが生じる虞れがある。
【0005】
このようなズレは上記のような三次元構造を有するスイッチ構造体においては多少なりとも不可避であり、このようなズレを考慮した構造等の設計は複雑であるだけでなく、多少なりともボタン位置が変わるだけで設計変更を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−83991号公報(第11図等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記した点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、厚さ方向のボタン位置が変わっても押圧力の付与及び接点の動作が適切に行われ得るスイッチ構造体並びにこれを用いたクロノグラフ機構及び電子時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスイッチ構造体は、前記目的を達成すべく、板状本体部及び複数の弾性スイッチレバー部を具備する端子板であって、各スイッチレバー部が基端部の一側において板状本体部の外周縁部につながると共に基端部の該一側において板状本体部の外周縁部に対して折曲げられ該基端部から該本体部の延在面に交差する面に沿って該板状本体部の外周縁部に沿う方向に延び先端側に押圧力受部を備えた腕部及び該腕部の押圧力受部から更に延在されてなる弾性接点部を具備するものと、各弾性スイッチレバー部の腕部の前記押圧力受部に押圧力がかかった際、各弾性スイッチレバー部の該押圧力受部の背後において該押圧力を受けると共に該押圧力受部の変位を案内すべく前記各弾性スイッチレバー部の前記押圧力受部の背後において可動に設けられた弾性スイッチレバー支持用の剛性支持レバーとを有する。
【0009】
本発明のスイッチ構造体では、「各弾性スイッチレバー部の腕部の押圧力受部に押圧力がかかった際、各弾性スイッチレバー部の該押圧力受部の背後において該押圧力を受けると共に該押圧力受部の変位を案内すべく各弾性スイッチレバー部の前記押圧力受部の背後において可動に設けられた弾性スイッチレバー支持用の剛性支持レバー」を備えるが故に、スイッチ構造体の腕部の押圧力受部が剛性支持レバーによって規定された変位をし得るから、押圧力の付与される押圧力受部の変位と該押圧力受部から更に延在されてなる弾性接点部の変位との間の想定外のズレが最低限に抑えられ得、厚さ方向のボタン位置が変わっても押圧力の付与による変位動作と接点の動作とのタイミングが所定に保たれ得る。その結果、例えば、時計の厚さ方向における押しボタンスイッチの位置を容易に変更し得るから、時計のデザインを変更することが容易になる等、時計の設計の自由度が増す。
【0010】
本発明のスイッチ構造体では、典型的には、前記剛性支持レバーが回動可能に支持されている。
【0011】
その場合、比較的簡単な構造で、弾性スイッチレバー部の腕部が剛性支持レバーによって支持され得る。この場合、剛性支持レバーのうち、弾性スイッチレバー部の腕部の押圧力受部の背後に位置する支持壁部が該腕部の押圧力腕部を背後で支えつつ回動されることになる。回動の場合、腕部の撓みを回動で近似することから、回動中心は、典型的には、弾性スイッチレバー部の腕部根元から、概ね1/3程度の部位である。但し、「腕部の前記押圧力受部に押圧力がかかった際、各弾性スイッチレバー部の該押圧力受部の背後において該押圧力を受けると共に該押圧力受部の変位を案内し得る」限り、回動可能である代わりに、一つの回動中心がなくてもよく例えば揺動可能であってもよい。
【0012】
本発明のスイッチ構造体では、典型的には、前記剛性支持レバーは、各弾性スイッチレバー部の腕部とは逆向きに折り曲げられている(例えば、弾性スイッチレバーの腕部が上から下に折り曲げられているとすると、下から上に折り曲げられている)。
【0013】
その場合、占有スペースを最低限に抑えつつ、腕部の側方への撓みを確実に抑し易い。例えば、端子板が時計の文字板側に位置する電池プラス端子の如き基準電位付与部材からなる場合、剛性支持レバーの基部を端子板とは逆側に位置する地板で支持することが可能になるので、安定な支持が容易に行われ易い。この場合、剛性支持レバーから一体的に突設したピン状回動軸を地板で回動自在に支えても、地板から突設したピン状軸によって剛性支持レバーを回動自在に支持してもよい。
【0014】
なお、剛性支持レバー自体が腕部の押圧力受部を背後で支える十分な剛性を支持壁部が有する限り、該支持壁部が腕部と逆向きに折り曲げられる代わりに、同じ向きに折り曲げられていても、場合によっては、回動軸に平行な折曲線に沿って(回動方向に又はその逆に)折曲げられていてもよい。
【0015】
本発明のスイッチ構造体では、典型的には、各弾性スイッチレバー部の弾性接点部がU字状に湾曲した弾力性湾曲アーム部分を備える。
【0016】
その場合、接点部に過度な押圧力がかかるのを抑制し易い。
【0017】
本発明のクロノグラフ機構は、前記目的を達成すべく、スタート/ストップボタン及びリセットボタンのうちの少なくとも一方のボタンが上述のようなスイッチ構造体の先端側端部に押圧力を及ぼすべく構成されており、スタート/ストップボタンの押圧に伴い回動される発停レバーによってクロノグラフ指針の計時動作が開始又は停止され、リセットボタンの押圧に伴い回動される帰零指示レバーによってクロノグラフ指針が帰零されるように構成されている。
【0018】
その場合、レバーによる機械的なクロノグラフ動作のタイミングと接点による電子的(電気的)なクロノグラフ動作のタイミングとが確実に合わされ得る。
【0019】
本発明のクロノグラフ機構では、典型的には、帰零指示レバーの回動に伴いクロノグラフ指針を強制的に機械的に帰零させる復針レバーを備える。
【0020】
その場合、電子的な帰零指示等のタイミングと機械的な帰零指示等のタイミングとが確実に合わされ得る。なお、この場合、スイッチレバー支持レバーは、典型的には、スイッチレバー部の背後において、押しボタンの押圧に応じて、クロノグラフ機構の機械的な帰零に係るレバーを変位させるように構成される。
【0021】
本発明の電子時計は、前記目的を達成すべく、上述のようなスイッチ構造体又は上述のようなクロノグラフ機構を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の好ましい一実施例のスイッチ構造体を備えた本発明の好ましい一実施例のクロノグラフ機構を有する本発明の好ましい一実施例の電子時計としての電子駆動機械帰零式クロノグラフ時計の本体部(ムーブメント)を裏蓋側且つ巻真側から見た斜視説明図。
【図2】図1の電子時計の本体部を裏蓋側から見た平面説明図。
【図3】図1の電子時計の本体部を文字板側から見た平面説明図。
【図4】図1の電子時計について、巻真側から矢印IV方向に見た側面説明図。
【図5】図1の電子時計の本体部について、電池プラス端子を取除いた状態において、図2と同様に、裏蓋側から見た平面説明図。
【図6】図1の電子時計の本体部について、地板の文字板側にある部品を取除いた状態において、図3と同様に、文字板側から見た平面説明図。
【図7】図1の電子時計の本体部のスイッチ構造体の部分を拡大して示した斜視説明図。
【図8】図1の電子時計の本体部のうち、主として、地板によるスイッチレバー部支持レバーの回動支持に係る部分を拡大して示した一部破断断面説明図。
【図9】図1の電子時計の本体部について、クロノグラフ下板及び輪列受を取除いて、主として輪列を含む部分を示した斜視説明図。
【図10】図1の電子時計の本体部の中心を含む一部の部分についての縦断面説明図。
【図11】図1の電子時計の外観を文字板側から見た平面説明図。
【図12】図1の電子時計の本体部のうち、地板によるスイッチレバー部支持レバーの回動支持に係る部分について、図8の例の一変形例を図8と同様に拡大して示した一部破断断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好ましい一実施の形態を添付図面に示した好ましい一実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0024】
本発明の好ましい一実施例の電子時計としてのクロノグラフ時計1は、クロノグラフ機能を備え、より詳しくは、電気機械的に駆動されて機械的に帰零される電子(ないし電気)駆動機械帰零式のクロノグラフ時計1である。このクロノグラフ時計1において、クロノグラフ機構7は、電気機械的クロノグラフ機構7Aと機械的なクロノグラフ機構7Bとを含む。例えば、クロノグラフ時計1は、図1及び図9〜図11からわかるように、電池11を電源として通常運針用モータ12及びクロノグラフ運針用モータ13を備え、該モータ12及び13によって夫々の関連輪列すなわち通常運針用輪列14及びクロノグラフ輪列15を介して電気的・電子的に駆動される。電気機械的なクロノグラフ機構7Aは、クロノグラフ運針用モータ13及びクロノグラフ輪列15並びに後で詳述するクロノグラフ動作の発停用スイッチ接点135,67及び帰零用スイッチ接点235,68を含む。19はりゅうず、18は巻真である。
【0025】
クロノグラフ時計1の本体ないしムーブメント8は、図9〜図11からわかるように、通常運針用モータ12のロータ12aから、五番車91を介して回転される秒車92、該秒車92から三番車93を介して回転される分車94、該分車94から日の裏車95を介して回転される時車96を有する。秒車92、分車94及び時車96には、秒針97、分針98及び時針99が取付けられている。図10の断面説明図及び図11の外観図からわかるように、分針98及び時針99は時計1の中心軸線Cのまわりで回転され、秒針97は、該中心軸線Cから離れたところで回転される小秒針の形態である。通常運針用輪列14のうち大半の車92,93,94等は、地板2と輪列受3との間で支持され、時車96等は地板2の文字板4側で、日車押え9aにより支持されている。
【0026】
クロノグラフ時計1は、また、図10の断面説明図、図11の外観図及び図9の斜視説明図等からわかるように、中心軸線Cのまわりで回転される秒クロノグラフ真81dに取付けられたクロノグラフ秒針81a、12時の位置にある回転中心C1のまわりで回転される分クロノグラフ真82dに取付けられたクロノグラフ分針82a、及び9時の位置にある回転中心C2のまわりで回転される時クロノグラフ真83dに取付けられたクロノグラフ時針83aを有する。また、図9及び後で詳述する図5からわかるように、各クロノグラフ真81d,82d,83dには、夫々のハートカム81b,82b,83bが嵌着されている。
【0027】
図10からわかるように、秒クロノグラフ真81dには、秒クロノグラフ歯車81cが押えばね81eを介してすべり回転可能に嵌合されている。同様に、図9に示したように、分クロノグラフ真82dには、分クロノグラフ歯車82cが押えばね(図示せず)を介してすべり回転可能に嵌合され、時クロノグラフ真83dには、時クロノグラフ歯車83cが押えばね(図示せず)を介してすべり回転可能に嵌合されている。ここで、秒クロノグラフ真81d、秒ハートカム81b及び秒クロノグラフ歯車81c等によって秒クロノグラフ車81が構成され、分クロノグラフ真82d、分ハートカム82b及び分クロノグラフ歯車82c等によって分クロノグラフ車82が構成され、時クロノグラフ真83d、時ハートカム83b及び時クロノグラフ歯車83c等によって時クロノグラフ車83が構成される。
【0028】
クロノグラフ輪列15は、概ね、輪列受3やクロノグラフ下板5のレベルに配置されており、ハートカム81b,82b,83bやこの後で詳述するクロノグラフ関連レバーは、クロノグラフ時計1の厚さ方向Tにみて、主として、クロノグラフ下板5とクロノグラフ受6との間に、配置されている。なお、クロノグラフ受6の裏蓋側には、基準電位を与えるばね性金属薄板からなる端子板としての電池プラス端子60が配置されている。
【0029】
クロノグラフ下板5の文字板側には、フレキシブル回路基板66や該基板66を支える座65aを含む回路ブロック65が配置されている。フレキシブル回路基板66は、基板本体66aと該本体66aの文字板側に形成された導電性配線パターン66bとを含み、該導電性配線パターン66bの文字板側には通常運針用時計回路およびクロノグラフ用時計回路を構成する時計用ICの如き各種回路部品66c(図8)が実装されている。導電性配線パターン66bは、発停ボタン16に対面する部位と帰零ボタン17に対面する部位において、基板本体66aの文字板側表面から該本体66aの端縁までL字状に延びた発停用接点67及び帰零用接点68を形成している。
【0030】
クロノグラフ輪列15は、クロノグラフ運針用モータ13のロータ13aから秒クロノグラフ中間車84(この例では秒クロノグラフ第一及び第二中間車84a,84bからなる)を介して秒クロノグラフ歯車81cで回転される秒クロノグラフ車81、秒クロノグラフ第二中間車84bら分クロノグラフ中間車85(この例では分クロノグラフ第一及び第二中間車85a,85bからなる)を介して分クロノグラフ歯車82cで回転される分クロノグラフ車82、及び分クロノグラフ第一中間車85aから時クロノグラフ中間車86(この例では、時クロノグラフ第一、第二及び第三中間車86a,86b,86cからなる)を介して時クロノグラフ歯車83cで回転される時クロノグラフ車83を含む。
【0031】
機械的なクロノグラフ機構7Bは、図11の外観図に加えて例えば図5からわかるように、スタート/ストップ(発停)ボタン16及びリセット(帰零)ボタン17に加えて、帰零指示レバー20、発停レバー30、復針伝えレバー40、復針レバー50及び停止レバー70を有する。
【0032】
電池プラス端子60は、図1や図2に示したように、ムーブメント8の電気的な回路ブロック等に対して基準電位を与える導電体であって且つ機械的なばね性のあるもの、即ち、ばね性のある金属薄板からなり、発停スイッチレバー部110及び帰零スイッチレバー部210や発停スイッチばね部63及び復針伝えレバー用スイッチばね部64を含む。
【0033】
図1や図2に加えて図6からわかるように、発停スイッチ構造体100は、発停用弾性スイッチレバー部110に加えて、中心軸線CS(図6)のまわりで回動可能な発停用剛性支持レバー150を有する。
【0034】
同様に、図1や図2に加えて図6からわかるように、帰零スイッチ構造体200は、帰零用スイッチレバー部210に加えて、中心軸線CR(図6)のまわりで回動可能な帰零用剛性支持レバー250を有する。
【0035】
図5や図11からわかるように、発停ボタン16は、A1,A2方向に進退可能であり、A1方向に押込まれた際、図1及び図5に示したように、発停スイッチ構造体100の発停用弾性スイッチレバー部110をP1方向に揺動させて、(後述する接点部を介して)電気的な発停信号S1を発生させると共に、該発停用弾性スイッチレバー部110を介して該発停用弾性スイッチレバー部110を背後で支持している発停用剛性支持レバー150を機械的なクロノグラフ機構7Bの発停レバー30に押付けて、該発停レバー30をF2方向に回動させる。
【0036】
同様に、帰零ボタン17は、D1,D2方向に進退可能であり、D1方向に押込まれた際、図1及び図5に示したように、帰零スイッチ構造体200の帰零用弾性スイッチレバー部210をFr1方向に揺動させて、(後述する接点部を介して)電気的な帰零信号S2を発生させると共に、該帰零用弾性スイッチレバー部210を介して該帰零用弾性スイッチレバー部210を背後で支持している帰零用剛性支持レバー250を機械的なクロノグラフ機構7Bの帰零指示レバー20に押付けて、該帰零指示レバー20をF1方向に回動させる。
【0037】
帰零指示レバー20は、主として図5からわかるように、回動中心軸線C4のまわりでF1,F2方向に回動可能にクロノグラフ下板5によって支持され、初期位置と作動位置との間で回動可能である。帰零指示レバー20は、中心軸線C4の一端側にある入力側腕部22と、中心軸線C4の他端側にある出力側腕部23とを有する。帰零指示レバー20は、入力側腕部22の端部に、U字状に湾曲したばね部24を有し、ばね部24の先端部25で帰零指示レバーばね受ピン5eに係合されている。帰零指示レバー20は、更に、入力側腕部22の外側部に指示受突出部26を備える。帰零指示レバー20は、また、出力側腕部23の内側縁に停止レバー係止突起部27を備え、先端部近傍の内側縁に係止縁部28を備えると共に先端部に、係合縁部29を備える。
【0038】
従って、帰零指示レバー20は、外力がかかっていない状態では、ばね部24によってF2方向に回動偏倚力を受け、係止縁部28が帰零指示レバー係止ピン5fで係止された係止位置を初期位置として採る。一方、帰零ボタン17がD1方向に押込まれると、該帰零ボタン17のD1方向押圧力が帰零スイッチ機構200を介して帰零指示レバー20の入力側腕部22の突出部26に加えられて、該帰零指示レバー20が回動中心軸線C4のまわりでF1方向に回動され、(既にリセットがかかって復針伝えレバー40が帰零作動制御位置としての作動位置(帰零動作位置)に達しているような状態でない限り)出力側腕部23の先端の係合縁部29で復針伝えレバー40に係合される。
【0039】
発停レバー30は、主として図5からわかるように、中心軸線C4の近傍に位置し基端部となる一端部31と、該中心軸線C4から一方向に延在した腕部33とを有すると共に、該腕部33の延在端部34の一側に復針伝えレバー押圧用突出部35を有する。発停レバー30は、共通の回動中心軸線C4のまわりでF1,F2方向に回動可能にクロノグラフ下板5によって支持され、初期位置と作動位置との間でF2,F1方向に回動可能である。共通の回転中心軸線C4があるので、二つのレバー20,30の回動領域が実際上共用できるから、占有面積が最低限に抑えられ得る。発停レバー30は、また、腕部33の外縁部に突出部36を備えると共に、腕部33のうち中心軸線C4のところと突出部36との間の部位で電池プラス端子60に対面する主面(裏蓋側主面)37に電池プラス端子60の発停スイッチばね部63に係合されるピン状突起部38を備える。発停レバー30は、更に、先端外縁部に、地板2の係止突起部2gに係止される係合縁部39を備える。図1及び図2等からわかるように、スイッチばね部63は、細長いばね本体部63aと該ばね本体部63aの先端部近傍に形成された先端係合部63bとを有する。先端係合部63bは、段部の形態の肩部63eを備える。発停レバー部30の突起部38は、肩部63eに当接する位置とばね本体部63aをG1方向に湾曲させた状態で肩部63eを乗り越えた位置との間で変位可能である。
【0040】
従って、発停レバー30は、外力がかかっていない状態では、発停スイッチばね部63の肩部63dによってF1方向に回動偏倚力を受け,係合縁部39が係止突起部2gに係止される初期位置を採る。一方、発停ボタン16がA1方向に押込まれると、該発停ボタン16のA1方向押圧力が発停スイッチ機構100を介して発停レバー30の突出部36に加えられて、発停レバー30が回動中心軸線C4のまわりでF2方向に回動され、(復針伝えレバー40が発停制御位置としての初期位置(非帰零位置)に戻っていない場合には)腕部33の延在端部34の一側にある復針伝えレバー押圧用突出部35で復針伝えレバー40に係合される。発停レバー30のF2方向回動に伴い発停レバー30のピン状突起部38が、発停スイッチばね部63をG1方向に湾曲させる。ピン状突起部38が肩部63eを越えて基端側長側面に沿って変位するようになると、発停ボタン16のA1方向押込みに対する抵抗が急激に落ち、操作者にクリック感を与える。発停ボタン16のA1方向押圧力が解除されると、スイッチばね部63の本体部63aのG2方向復帰力の作用下で、発停レバー30の突起部38がスイッチばね部63の先端係合部63bの基端側長側面に係合する位置から肩部63eに係合する位置に戻され、発停レバー30がF1方向に戻され、発停スイッチ機構100を介して発停ボタン16もA2方向に戻される。
【0041】
復針伝えレバー40は、図5からわかるように、中心軸線C5のまわりでH1,H2方向に回動可能にクロノグラフ下板5によって支持され、該中心軸線C5の一端側にある入力側腕部42と、該中心軸線C5の他端側にある出力側腕部43とを有する。入力側腕部42は、先端の一側縁部に発停レバー係合部44を備え、且つクロノグラフ下板5に対面する側の主面から突出した帰零指示レバー係合用ピン状突起部45を備える。前述のように、発停レバー30と帰零指示レバー20とが復針伝えレバー40を逆方向に回動させるべく該レバー40に逆側から係合される。すなわち、復針伝えレバー40は、発停制御位置たる初期位置(非帰零動作位置)と帰零作動制御位置たる作動位置(帰零動作位置)との間で、H1,H2方向に回動可能である。図5のように復針伝えレバー40が作動位置(帰零動作位置)にある際に、発停レバー30が初期位置から作動位置へとF2方向に回動されると、発停レバー30の復針伝えレバー押圧用突出部35が復針伝えレバー40の入力側腕部42の発停レバー係合部44に当って復針伝えレバー40を非帰零動作位置に向かってH2方向に回動させる。一方、復針伝えレバー40がH2方向に回動した初期位置(非帰零動作位置)にある際に、帰零指示レバー20が初期位置から作動位置へとF1方向に回動されると、帰零指示レバー20の係合縁部29が復針伝えレバー40の入力側腕部42の帰零指示レバー係合用ピン状突起部45に当って復針伝えレバー40を帰零動作位置に向かってH1方向に回動させる。
【0042】
復針伝えレバー40は、更に、出力側腕部43のうち電池プラス端子60に対面する側の主面(裏蓋側主面)46に復針伝えレバー用スイッチばね部64と係合するピン状突起部47を備えると共に、先端部に復針レバー50の復針レバー作動ピン51が遊嵌係合されたU字状凹部の形態の係合溝部48を具備した復針レバー作動部49を備える。ピン状突起部47が係合するスイッチばね部64は、図1や図2からわかるように、細長いばね形態の本体部64aと、先端の係合部64bとを備える。先端係合部64bは、傾斜部64c,64dを備えた凸部64eと、先端側傾斜部64dと協働して凹部64fを形成する傾斜部64gを与える突起部64hとを備える。基端側傾斜部64cは本体部64aの側縁に連続的につながっている。
【0043】
従って、復針伝えレバー40のピン状突起部47は、凸部64eの先端側傾斜部64d側で凹部64f内に位置する状態(復針伝えレバー40の初期位置(非帰零動作位置)に対応する)と、凸部64eの基端側傾斜部64c側に位置する状態(復針伝えレバー40の作動位置(帰零動作位置)に対応する)との間で可動である。復針伝えレバー40の作動位置(帰零動作位置)は、厳密には、復針レバー50が後述する作動位置(帰零動作位置)を採るような復針伝えレバー40の位置である。なお、復針伝えレバー40のピン状突起部47が凸部64eの頂点に位置する場合、復針レバー50による帰零動作が未だ行われていない(少なくとも完了しない)状態にある。
【0044】
すなわち、復針伝えレバー40が、発停レバー30によってH2方向に回動されて、ピン状突起部47がスイッチばね部64の凸部64eの頂点を越えるとスイッチばね部64のばね力の作用下で先端側傾斜部64dに沿って変位されるので、復針伝えレバー40が更にH2方向に回動されて、最終的に、初期位置(非帰零動作位置)を採り、U字状係合溝部48に遊嵌係合した復針レバー作動ピン51を介して復針レバー50を非帰零位置(開放位置)に変位させる。ピン状突起部47がスイッチバネ64の凹部64f内に位置し復針伝えレバー40が初期位置(非帰零動作位置)にある場合、復針伝えレバー40がH2方向に最大限回動され、復針伝えレバー40の発停レバー係合部44が最大限H2方向に回動した位置を採るので、この状態においてスタート/ストップボタン(発停ボタン)16がA1方向に最大限押し込まれ発停レバー30がF2方向に最大限回動されても、発停レバー30の復針伝えレバー押圧用突出部35は復針伝えレバー40の発停レバー係合部44に当たらず、発停レバー30の復針伝えレバー押圧用突出部35と復針伝えレバー40の発停レバー係合部44との間に、間隙が残る。一方、ピン状突起部47がスイッチバネ64の凸部64eを越えて基端側傾斜部64cの側に位置し復針伝えレバー40が作動位置(帰零動作位置)にある場合、復針伝えレバー40がH1方向に最大限回動され、復針伝えレバー40の帰零指示レバー係合用ピン状突起部45が最大限H1方向に回動した位置を採るので、この状態においてリセットボタン(帰零ボタン)17がD1方向に最大限押し込まれ帰零指示レバー20がF1方向に最大限回動されても、帰零指示レバー20の係合縁部29が復針伝えレバー40の帰零指示レバー係合用ピン状突起部45に当たらず、帰零指示レバー20の係合縁部29と復針伝えレバー40の帰零指示レバー係合用ピン状突起部45との間に、間隙が残る。一方、復針伝えレバー40が、帰零指示レバー20によってH1方向に回動されて、ピン状突起部47がスイッチばね部64の凸部64eの頂点を越えるとスイッチばね部64のばね力の作用下で基端側傾斜部64cに沿って変位されるので、復針伝えレバー40が更にH1方向に回動されて、最終的に、作動位置(帰零動作位置)を採り、U字状凹部の形態の係合溝部48に係合した復針レバー作動ピン51を介して復針レバー50を帰零位置に変位させる。
【0045】
停止レバー70は、図5からわかるように、回動中心軸線C6のまわりでM1,M2方向に回動可能にクロノグラフ下板5によって支持され、初期位置(非停止位置)と作動位置(停止位置)との間で回動可能である。停止レバー70は、回動中心軸線C6の一端側にある第一腕部72と、該回動中心軸線C6の他端側にある第二腕部73とを有し、第二腕部73の端部には、U字状に湾曲したばね部74が形成され、該ばね部74の先端部75で停止レバーばね受ピン5hに係合されている。停止レバー70は、また、第一腕部72の外側部に被係止部76を備える。停止レバー70は、更に、第二腕部73の分岐腕部77に時計1の厚さ方向Tに折曲げられ該厚さ方向Tに延在すると共に横向きに突出したクロノグラフ中間車規正縁部78を備える。
【0046】
停止レバー70は、図5に示したように、第一腕部72の被係止部76が非作動位置にある帰零指示レバー20の停止レバー係止突起部27によって係止されている状態では、ばね部74のばね力に抗してM2方向に回動された非停止位置を採る。停止レバー70がこの非停止位置にある場合、停止レバー70の分岐腕部77のクロノグラフ中間車規正縁部78は、秒クロノグラフ第二中間車84bから離れた位置を採り、秒クロノグラフ第二中間車84bの回転を許容する。一方、帰零指示レバー20がF1方向に回動されると帰零指示レバー20の停止レバー係止突起部27による第一腕部72の被係止部76の係止が解除される。従って、停止レバー70は、ばね部74の力によってM1方向に回動され、停止レバー70の分岐腕部77のクロノグラフ中間車規正縁部78が秒クロノグラフ第二中間車84bに係合される作動位置(停止位置)を採り、秒クロノグラフ第二中間車84bを規正し、秒クロノグラフ第二中間車84bに噛合した秒クロノグラフ歯車81c(図9)の回転を禁止する。停止レバー70が停止位置を採るタイミングは、後述のように、ハンマー56,57,58によるハートカム81b,82b,83bの機械的帰零が行われるタイミングよりも僅かに早い。
【0047】
復針レバー50は、全体として鳥が飛んでいるような形状で、頭部側腕部50a,胴尾部側腕部50b,両羽根側腕部50c,50dを有する。復針レバー50の頭部側腕部50aには、細長い開口の形態の復針レバー案内部を構成する案内溝部52が形成され、復針レバーの胴尾部腕部50bには案内溝部52と協働して細長い開口の形態の復針レバー案内部を構成する案内穴部ないし案内用長穴部53が形成されている。この案内溝部52及び案内穴部53は、クロノグラフ下板5のうちクロノグラフ受6に対面する表面に突設された第一及び第二の復針レバーガイドピン5d,5cに嵌合している。ここで、第一及び第二の復針レバーガイドピン5d,5cの外周と案内溝部52及び案内穴部53の内面との間には僅かながら隙間がある。従って、復針レバー50は、概ね、案内溝部52及び案内穴部53の延在方向に沿って、J1,J2方向に移動可能である。なお、案内溝部52及び案内穴部53の夫々の一端には、該溝部52及び穴部53の他の部分よりも若干大きい溝部分54及び穴部分55が形成されている。従って、第一及び第二の復針レバーガイドピン5d,5cが、溝部分54及び穴部分55内に位置する場合には、復針レバー50の向きも多少変動可能である。復針レバー50の右羽根側腕部50dには、復針レバー作動ピン51が突設され、該復針レバー作動ピン51は、復針伝えレバー40の出力側腕部43の復針レバー作動部49のU字状溝部48に嵌合され、復針伝えレバー40のH1方向回動に応じて、作動力Kを受けて、J1方向に変位される。復針レバー50は、また、胴尾側腕部50bの先端部に秒ハンマーとしての秒ハートカム接触部56を備えると共に、左羽根側腕部50cの先端部に分ハンマーとしての分ハートカム接触部57を備え、更に、右羽根側腕部50dの先端部に時ハンマーとしての時ハートカム接触部58を備える。
【0048】
従って、クロノグラフ機構7Bにおいて、リセットピン17のD1方向の押圧に応じて、復針伝えレバー40がH1方向に回動されると、復針レバー50は、復針レバー作動ピン51で復針伝えレバー40の出力側腕部43の復針レバー作動部49による力Kを受けて、案内溝52及び案内穴53でガイドピン5d及び5cに案内されてJ1方向に変位され、秒ハートカム接触部56で秒ハートカム81bに当接ないし圧接すると共に分ハートカム接触部57で秒ハートカム82bに当接ないし圧接し、時ハートカム接触部83bで時ハートカム83bに丁度当接ないし圧接する。ここで、ハートカム接触部56,57,58が秒、分及び時ハートカム81b,82b,83bに接触する領域に達すると、作動力Kは、その作用線が、実際上、中心軸線Cを通る向きに向く。当接状態ないし圧接状態が達成される際には、ガイドピン5d及び5cが、丁度、案内溝52及び案内穴53の大きめの溝部分54及び穴部分55内に位置するので、復針レバー50の接触部(ハンマー)56,57,58が対応するハートカム81b,82b,83bの最小径部に丁度当接ないし圧接する状態が実現される。このとき、復針伝えレバー40の出力側腕部43の復針レバー作動部49が復針レバー作動ピン51を介して復針レバー50を押す力Kは、丁度、秒ハートカム81bが秒ハートカム接触部(秒ハンマー)56で復針レバー50を押す力K1と、分ハートカム82bが分ハートカム接触部(分ハンマー)57で復針レバー50を押す力K2と、時ハートカム83bが時ハートカム接触部(時ハンマー)58で復針レバー50を押す力K3との合力と丁度釣り合い、且つ四つの力K,K1,K2,K3が復針レバー50に与えるトルクも、実際上釣合い、溝部分54及び穴部分55の周壁がガイドピン5d及び5cを支える力が実際上働かなくても、復針レバー50はが静止状態に保たれ得る。この状態では、復針レバー50は、秒ハートカム接触部56、分ハートカム接触部57及び時ハートカム接触部83bで秒ハートカム81b、分ハートカム82b及び時ハートカム83bに圧接されて、秒クロノグラフ車81、分クロノグラフ車82及び時クロノグラフ車83を帰零させる。これにより、セルフアラインメントが達成される。
【0049】
次に、クロノグラフ時計1のうち、スタート/ストップ(発停)ボタン16によって動作せしめられるスタート/ストップ(発停)スイッチ構造体100及びリセット(帰零)ボタン17によって動作せしめられるリセットスイッチ(帰零)構造体200について、より詳しく説明する。以下においては、説明の便宜上、X方向が3時の方向でY方向が12時の方向になってXY平面が時計1の主面に平行な面(例えば文字板等に平行な面)になり、Z方向が時計1の厚さ方向に沿って裏蓋側から文字板側に向いたような三次元直交座標系X,Y,Zを時計1の本体8に固定した形態で採る。
【0050】
発停スイッチ構造体100は、端子板としての電池プラス端子60の板状本体部60aの外周縁部のうち概ね1時〜2時の領域に対面する部分61に形成された発停用弾性スイッチレバー部110と、発停用剛性支持レバー150とからなる。
【0051】
同様に、帰零スイッチ構造体200は、端子板としての電池プラス端子60の板状本体部60aの外周縁部のうち概ね4時〜5時の領域に対面する部分62に形成された帰零用弾性スイッチレバー部210と、帰零用剛性支持レバー250とからなる。
【0052】
発停用弾性スイッチレバー部110は、発停用腕部120と、発停用弾性接点部130とを有する。
【0053】
発停用腕部120は、その基端部121の一側122において板状本体部60aの外周縁部のうち概ね1時の部分61aにつながると共に基端部121の該一側122において板状本体部60aの該部分61aに対してNs方向に折曲げられ該基端部121から該本体部60aの延在面(XY平面と平行な面)に交差する面(Z方向に延びた面)に沿って且つ該板状本体部60aの外周縁部に沿う方向Lsに延び先端側に押圧力受部125を備える。発停用腕部120の押圧力受部125には、発停ボタン16がA1方向に押込まれた際に、該発停ボタン16の先端部16aが当接して該先端部16aによってA1方向押込力を受ける。
【0054】
発停用弾性接点部130は、発停用腕部120の押圧力受部125から更に延在されてなり、U字状に湾曲した弾力性湾曲アーム部分131と、該アーム部分131の先端部132に形成された発停用接点本体135とを備える。発停用接点本体135は、時計本体8の厚さ方向T(即ちZ方向)にみて、フレキシブル基板66の端縁に対面する高さ位置において発停用接点67に対面している(例えば、図1参照)。
【0055】
同様に、帰零用弾性スイッチレバー部210は、帰零用腕部220と、帰零用弾性接点部230とを有する。
【0056】
帰零用腕部220は、その基端部221の一側222において板状本体部60aの外周縁部のうち概ね5時の部分62aにつながると共に基端部221の該一側222において板状本体部60aの該部分62aに対してNr方向に折曲げられ該基端部221から該本体部60aの延在面(XY平面と平行な面)に交差する面(Z方向に延びた面)に沿って且つ該板状本体部60aの外周縁部に沿う方向Lrに延び先端側に押圧力受部225を備える。帰零用腕部220の押圧力受部225には、帰零ボタン17がD1方向に押込まれた際に、該帰零ボタン17の先端部17aが当接して該先端部17aによってD1方向押込力を受ける。
【0057】
帰零用弾性接点部230は、帰零用腕部220の押圧力受部225から更に延在されてなり、U字状に湾曲した弾力性湾曲アーム部分231と、該アーム部分231の先端部232に形成された帰零用接点本体235とを備える。帰零用接点本体235は、時計本体8の厚さ方向T(即ちZ方向)にみて、フレキシブル基板66の端縁に対面する高さ位置において帰零用接点68に対面している(図7や図1参照)。
【0058】
発停用剛性支持レバー150は、図1に加えて図2、図6及び図8からわかるように、XY平面に平行に延在した剛性基板部160と、発停用弾性スイッチレバー110の発停用腕部120の押圧力受部125の背後において該押圧力受部125を支える剛性支持壁部170とを有する。図6及び図8からわかるように、剛性基板部160は、概ね「レ」の字状の平面形状を有し、「レ」の一方の脚部をなす基端側脚部161の基端部163の孔部162においてピンの如き回動中心軸180で回動自在に支持されている。剛性基板部160の「レ」の他方の脚部をなす先端側脚部164は、概ね径方向外向きに延び、先端部165において時計本体8の厚さ方向Zに折曲がって剛性支持壁部170に連続的につながっている。
【0059】
発停用剛性支持レバー150の回動中心軸180の回動中心CSは、図3及び図6並びに図2からわかるように、Z方向に見て、発停用弾性スイッチレバー部110の発停用腕部120と重なり且つ発停用腕部120の1/3の位置である。但し、厳密に1/3でなくて多少先端側又は基端側にずれていてもよい。
【0060】
帰零用剛性支持レバー250は、図1に加えて図2、図6、図7及び図8からわかるように、XY平面に平行に延在した剛性基板部260と、帰零用弾性スイッチレバー210の帰零用腕部220の押圧力受部225の背後において該押圧力受部225を支える剛性支持壁部270とを有する。図6及び図8からわかるように、剛性基板部260も、概ね「レ」の字状の平面形状を有し、「レ」の一方の脚部をなす基端側脚部261の基端部263の孔部262においてピンの如き回動中心軸280で回動自在に支持されている。剛性基板部260の「レ」の他方の脚部をなす先端側脚部264は、概ね径方向外向きに延び、先端部265において時計本体8の厚さ方向Zに折曲がって剛性支持壁部270に連続的につながっている。
【0061】
同様に、帰零用剛性支持レバー250の回動中心軸180の回動中心CRも、図3及び図6並びに図2からわかるように、Z方向に見て、帰零用弾性スイッチレバー部210の帰零用腕部220と重なり且つ帰零用腕部220の1/3の位置である。但し、厳密に1/3でなくて多少先端側又は基端側にずれていてもよい。
【0062】
なお、図3及び図8において106は支持レバー押え、図3において9は日車、9aは日車押えである。
【0063】
次に、以上のごとく構成された発停スイッチ構造体100及び帰零スイッチ構造体200の動作について、斜視図等で示した図1や図4及び図7に加えて平面図(又は底面図)で示した図2〜図3及び図5〜図6を参照しつつ、説明する。
【0064】
クロノグラフ時計1の使用者によって、発停ボタン16がA1方向に押込まれると、発停ボタン16は先端部16aにおいて発停スイッチ構造体100の発停用弾性スイッチレバー部110の発停用腕部120の押圧力受部125に当接して該押圧力受部125をA1方向に押込む。従って、基端部121に対してLs方向に伸びた発停用腕部120の先端側部分が基端部121に対してP1方向(図2等)に揺動される。その結果、発停用腕部120の先端側に位置する発停用弾性接点部130のU字状弾力性湾曲アーム部分131の先端部132にある発停用接点本体135も概ねP1方向に揺動されて、フレキシブル基板66の発停用接点67に押付けられ、所定の電気的な発停信号S1が発生せしめられる。なお、接点本体135は、U字状弾力性湾曲アーム部分131の先端部132に位置するので、フレキシブル基板66の発停用接点67に比較的安定的に適切な強さで押付けられ、該押付の力が過度に小さくなったり過度に大きくなる虞れが少ない。
【0065】
なお、このクロノグラフ時計1では、発停用腕部120が基端部121の一側部122において折り曲げられて板状本体部60aの外周縁部61aに繋がっており、押圧力受部125が該一側部122よりも+Z方向にずれ時計1の裏蓋により近接するところに位置しているので、仮に、発停用剛性支持レバー150がないと仮定すると、発停ボタン16による押圧力受部125のA1方向押込みに伴って発停用腕部120が多少なりともU1方向(XY面に平行な面内で延在する回転軸のまわりにおける回転方向)に湾曲する。しかも、発停用弾性接点部130の発停用接点本体部135は、発停用腕部120の押圧力受部125とは異なるZ方向位置(時計1ないし時計本体8の厚さ方向Tの異なる位置)に位置するので、発停用腕部120にU1方向の撓みが生じると、押圧力受部125のA1方向の押込み量(長)と発停用接点本体部135が回路ブロック65の発停用接点67に向かって押込まれる押込み量(長)とにズレが生じる(Ls方向の腕の長さの比に相当する変位からのズレが大きくなる)。従って、発停用接点本体部135と発停用接点67との適切な電気的接触が行われ難くなって、所定の発停信号S1が的確には発生しない虞れがある。
【0066】
ところが、この発停スイッチ構造体100では、発停用弾性スイッチレバー部110の弾性腕部120の背後(径方向内側)に、発停用剛性支持レバー150の剛性支持壁部170が位置するので、弾性腕部120のU1方向の湾曲が最低限に抑えられ得るから、Z方向位置の相違の多少にかかわらず、発停ボタン16のA1方向押込みに伴う押圧力受部125に対するA1方向押込み量に応じて、発停用弾性接点部130の接点本体135が対応する発停用接点67に向かって変位されて所定の押付け力で押付けられ得る。
【0067】
なお、発停用剛性支持レバー150は、概ね、腕部120の長さの1/3のところに位置する回動中心CS(図3、図2及び図8等)を中心に回動自在に地板2等に支持されているから、弾性腕部120の湾曲と概ね一致するように発停用剛性支持レバー150の支持壁部170が中心軸線CSのまわりで回動され得る。その結果、腕部120の湾曲状態にかかわらず、実際上、常に、腕部120が発停用剛性支持レバー150の支持壁部170で支持され得る。
【0068】
同様に、帰零ボタン17がD1方向に押込まれると、帰零ボタン17は先端部17aにおいて帰零スイッチ構造体200の帰零用弾性スイッチレバー部210の帰零用腕部220の押圧力受部225に当接して該押圧力受部225をD1方向に押込む。従って、基端部221に対してLr方向に伸びた帰零用腕部220の先端側部分が基端部221に対してFr1方向に揺動される。その結果、帰零用腕部220の先端側に位置する帰零用弾性接点部230のU字状弾力性湾曲アーム部分231の先端部232にある帰零用接点本体235も概ねFr1方向に揺動されて、フレキシブル基板66の帰零用接点68に押付けられ、所定の電気的な帰零信号S2が発生せしめられる。なお、接点本体235は、U字状弾力性湾曲アーム部分231の先端部232に位置するので、フレキシブル基板66の帰零用接点68に適切な強さで押付けられ、該押付の力が過度に小さくなったり過度に大きくなる虞れが少ない。
【0069】
なお、このクロノグラフ時計1では、帰零用腕部220が基端部221の一側部222において折り曲げられて板状本体部60aの外周縁部61bに繋がっていて、押圧力受部225が該一側部222よりも+Z方向にずれ時計1の裏蓋により近接するところに位置しているので、仮に、帰零用剛性支持レバー250がないと仮定すると、帰零ボタン17による押圧力受部225のD1方向押込みに伴って帰零用腕部220が多少なりともFr2方向(XY面に平行な面内で延在する回転軸のまわりにおける回転方向)に湾曲する。しかも、帰零用弾性接点部230の帰零用接点本体部235は、帰零用腕部220の押圧力受部225とは異なるZ方向位置(時計1ないし時計本体8の厚さ方向Tの異なる位置)に位置するので、帰零用腕部220にFr2方向の撓みが生じると、押圧力受部225のD1方向の押込み量(長)と帰零用接点本体部235が回路ブロック65の帰零用接点68に向かって押込まれる押込み量(長)とにズレが生じる(Lr方向の腕の長さの比に相当する変位からのズレが大きくなる)。従って、帰零用接点本体部235と帰零用接点68との適切な電気的接触が行われ難くなって、所定の帰零信号S2が的確には発生しない虞れがある。
【0070】
ところが、この帰零スイッチ構造体200では、帰零用弾性スイッチレバー部210の弾性腕部220の背後(径方向内側)に、帰零用剛性支持レバー250の剛性支持壁部270が位置するので、弾性腕部220のFr2方向の湾曲が最低限に抑えられ得るから、Z方向位置の相違の多少にかかわらず、帰零ボタン17のD1方向押込みに伴う押圧力受部225に対するD1方向押込み量に応じて、帰零用弾性接点部230の接点本体235が対応する帰零用接点68に向かって変位されて所定の押付け力で押付けられ得る。
【0071】
なお、帰零用剛性支持レバー250は、概ね、腕部220の長さの1/3のところに位置する回動中心CR(図3、図2及び図8等)を中心に回動自在に地板2等に支持されているから、弾性腕部220の湾曲と概ね一致するように帰零用剛性支持レバー250の支持壁部270が中心軸線CRのまわりで回動され得る。その結果、腕部220の湾曲状態にかかわらず、実際上、常に、腕部220が帰零用剛性支持レバー250の支持壁部270で支持され得る。
【0072】
次に、以上の如く構成されたクロノグラフ時計1の操作及び動作について、簡単に説明する。
【0073】
クロノグラフ時計1の本体(ムーブメント)8のクロノグラフ機構7Bの初期状態では、図5に示したように、帰零指示レバー20が、ばね24の作用下でF2方向に回動偏倚され係止縁部28で係止ピン5fに係止された初期位置を採る。この初期位置では、帰零指示レバー20の停止レバー係止突起部27が停止レバー70の被係止部76を押して停止レバー70をばね74のばね力に抗してM2方向に回動した位置に設定する。また、クロノグラフ機構7の初期状態では、発停レバー30は、ピン状突起部38が発停スイッチばね部63の肩部63eでF1方向に偏倚されて端部34の外縁の被係止部39で地板2の係止突起部2gに係止された初期位置を採る。更に、クロノグラフ機構7Bの初期状態では、復針伝えレバー40は、H1方向に最大限回動した作動位置を採る。この作動位置では、復針伝えレバー用スイッチばね部64の凸部64eの基端側傾斜部にピン状突起部47が係合して、復針レバー作動部49が復針レバー50を最大限J1方向に変位した帰零位置に設定している。すなわち、復針レバー50は、帰零位置にあって、そのハンマー56、57,58が対応するハートカム81b,82b,83bに圧接されて該ハートカム81b,82b,83bを帰零位置に設定している。
【0074】
この初期状態において、発停(スタート/ストップ)ボタン16がA1方向に押し下げられると、該発停ボタン16の先端部16aによって発停スイッチ構造体100の発停用弾性スイッチレバー部110の腕部120の押圧力受部125がA1方向に押込まれ、発停用弾性スイッチレバー部110の腕部120が、背後にある発停用剛性支持レバー150の支持壁部170を介して発停レバー30の突出部36を押すと共に、先端の発停用弾性接点部130の接点本体部135で回路ブロック65の発停用接点67に適度の押付力で押付けられて接点135,67間が電気的に接触して当該接点がONになり、クロノグラフ計測開始信号S1が出されて、クロノグラフ運針用モータ13の駆動が開始され、カウンタ(図示せず)がある場合には該カウンタによる計測が開始される。
【0075】
一方、発停ボタン16のA1方向押下げ力を突出部36で受けた発停レバー30がF2方向に回動され、このF2方向回動に伴い発停レバー30のピン状突起部38がスイッチばね部63の肩部63eから外れて基端側長側面に沿って変位される際に、操作者には、発停ボタン16のA1方向押下げ力に対するクリック感が得られる。発停レバー30のF2方向回動に伴い発停レバー30が作動位置に達する。この作動位置は、(ハートカムの係止が解除されるように)発停ボタン16が所定範囲を越えてA1方向に押込まれた場合の位置であって例えば最大押込み位置又はその近傍の位置であり得る。なお、発停レバー30のF2方向回動に伴い、初期位置にあった復針伝えレバー40は、発停レバー係合部44で発停レバー30の突出部35によるF2方向の押圧を受けて、H2方向に回動され、復針伝えレバー40のピン状突起部47がスイッチばね部64の凸部64eの頂点を越えて基端側傾斜面から先端側傾斜面に移動する。(ピン状突起部47が頂点を越えた際、操作者には、第二のクリック感が与えられる。)その後は、復針伝えレバー40はばね部64によってH2方向回動力を受ける。その結果、復針伝えレバー40の発停レバー係合部44が発停レバー30の突出部35から離れても、ピン状突起部47は更にH2方向に回動され、ピン状突起部47が凹部64fの底に達した際に、復針伝えレバー40のH2方向回動が終了して、復針伝えレバー40が初期位置を採る。また、復針伝えレバー40が作動位置から初期位置にH2方向に回動されるのに伴い、復針伝えレバー40の復針レバー作動部49に作動ピン51で係合した復針レバー50も、作動位置(帰零位置)から初期位置(開放位置)に戻り、ハンマー56,57,48がハートカム81b,82b,83bの規正を完全に解除する。従って、クロノグラフ計測に伴うクロノグラフ指針81a,82a,83aの運針が開始される。
【0076】
なお、この状態では、復針伝えレバー40の発停レバー係合部44と発停レバー30の突出部35との間に間隙があるので、例えば、発停ボタン16にA1方向の衝撃が加わっても、該衝撃が他のレバー等に伝わる虞れがなく、クロノグラフ機構7Bが損傷を受ける虞れが少ない。
【0077】
次に、発停ボタン16のA1方向押下げが解除されると、クロノグラフ計測状態に入る。このクロノグラフ計測状態では、発停スイッチ構造体100の発停用弾性スイッチレバー部110の復元力によって発停用弾性スイッチレバー部110がP2方向に戻り、発停ボタン16もA2方向の突出位置に戻される。スイッチばね部63のG2方向復元力の故に、発停レバー30も押戻されて、F1方向に回動され、被係止部39で係止突起部2gに係止される初期位置に戻る。
【0078】
クロノグラフ計測中に発停ボタン16が押されると、発停ボタン16のA1方向押下げに伴って発停スイッチ構造体100の発停用弾性スイッチレバー部110がP1方向に揺動されてスイッチ接点がONになって発停信号として停止信号S1が出され、クロノグラフ運針用モータ13が停止される。一方、発停ボタン16のA1方向押下げに伴なう発停スイッチ構造体100の発停用剛性支持レバー150の回動に従った発停レバー30のF2方向回動に応じて、スイッチばね部63をG1方向に揺動させて肩部63eを越える際にクリック感が付与され、スイッチばね部63がG2方向に戻る際に、発停レバー30がF1方向に戻される。
【0079】
クロノグラフ計測の停止中に発停ボタン16が再度押されると、該発停ボタン16のA1方向押下げに伴って発停スイッチ構造体100の発停用弾性スイッチレバー部110がB1方向に揺動されてスイッチ接点がONになって発停信号として再開信号S1が出され、クロノグラフ運針用モータ13の駆動が(再度)開始される。一方、発停ボタン16のA1方向押下げに伴なう発停スイッチ構造体100の発停用剛性支持レバー150の回動に従った発停レバー30のF2方向回動に応じて、スイッチばね部63をG1方向に揺動させて肩部63eを越える際にクリック感が付与され、スイッチばね部63がG2方向に戻る際に、発停レバー30がF1方向に戻される。
【0080】
以上のようなクロノグラフ機構7の停止や再開は、発停ボタン16の押下げ及びその解除に応じて繰返される。
【0081】
クロノグラフ計測停止状態又はクロノグラフ計測状態において、リセット(帰零)ボタン17がD1方向に押されてクロノグラフ帰零指示が出される場合、リセットボタン17のD1方向押圧に伴い、該帰零ボタン16の先端部17aによって帰零スイッチ構造体200の帰零用弾性スイッチレバー部210の腕部220の押圧力受部225がD1方向に押込まれ、帰零用弾性スイッチレバー部210の腕部220が、背後にある帰零用剛性支持レバー250の支持壁部270を介して帰零指示レバー20の突出部26を押すと共に、先端の帰零用弾性接点部230の接点本体部235で回路ブロック65の帰零用接点68に適度の押付力で押付けられて接点235,68間が電気的に接触して当該接点がONになり、クロノグラフ帰零指示信号S2が出される(タイマーカウンタ等でもクロノグラフ計測をしていた場合には該タイマーカウンタがリセットされる)。
【0082】
一方、帰零ボタン17のD1方向押圧に伴って帰零用剛性支持レバー250の支持壁部270を介して指示受突出部26で押圧力を受ける帰零指示レバー20がF1方向に回動される。帰零指示レバー20のF1方向回動が始まると、該帰零指示レバー20の係止突起部27が停止レバー70の被係止部76から速やかに離れて停止レバー70の係止が解除されるので、停止レバー70がばね74の作用下でM1方向に回動されて作動位置P7aに達し、規正縁部78が秒クロノグラフ第二中間車84bに押付けられて該秒クロノグラフ第二中間車84bを規正し、秒クロノグラフ車81の回転を停止させる。帰零指示レバー20が更に、F1方向に回動されると、帰零指示レバー20の係合縁部29が復針伝えレバー40のピン状突起部45に係合して、初期位置にあった復針伝えレバー40を該ピン状突起部45を介してH1方向に回動させる。復針伝えレバー40のH1方向回動に伴いピン状突起部47がスイッチばね部64の凹部64fから凸部64eの頂点を越えて基端側傾斜部に移る。ピン状突起部47が凸部64eを越えると、復針伝えレバー40のピン状突起部45が帰零指示レバー20の係合縁部29から離れても、復針伝えレバー40が、スイッチばね部64のばね力によって、H1方向に回動される。従って、帰零ボタン17の押圧に対する抵抗が急激に落ち、操作者がクリック感を感じ得る。復針伝えレバー40のH1方向回動に伴い、該復針伝えレバー40の復針レバー作動部49が作動ピン51を介して復針レバー50をK方向に押す。復針レバー50のJ1方向移動は、ガイドピン5d,5cが係合した溝部52及び穴部53で案内され、特に、拡径部54,55で向きや位置の調整が行われて(セルフアラインメントが行われて)、ハンマー56,57,58によるハートカム81b,82b,83bの強制的帰零が行われる。その結果、復針伝えレバー40は作動位置に達し、復針レバー50も作動位置に達する。
【0083】
この状態では、帰零ボタン17を最大限D1方向に押込み、帰零指示レバー20を最大限F1方向に回動させても、帰零指示レバー20の係合縁部29と復針伝えレバー40のピン状突起部45との間には間隙が残るので、帰零ボタン17にD1方向の不測の衝撃が加わっても、該衝撃が他の輪列その他に直接伝わる虞れが少ない。
【0084】
次に、リセットボタン17の押圧を解除すると、帰零スイッチ構造体200の帰零用弾性スイッチレバー部210の復元力によって帰零用弾性スイッチレバー部210がFr3方向に戻り、帰零ボタン16もD2方向の突出位置に戻される。帰零用弾性スイッチレバー部210がFr3方向に戻ると共に、ばね24の作用下で帰零指示レバー20は係止縁部28が係止ピン5fに係止される初期位置に戻る。その結果、帰零指示レバー20の係止突起部27が再び停止レバー70の被係止部76に当って停止レバー70を初期位置に戻し、秒クロノグラフ第二中間車84bの規正を解除する。但し、ハートカム81b,82b,83bはハンマー56,57,58で矯正帰零されたままの状態であり、クロノグラフ運針用モータ13は停止されたままの状態である。
【0085】
以上においては、剛性支持レバー150,250に嵌着され該剛性支持レバー150,250と一体的なピン180,280を地板2に回動可能に嵌合させる例について説明したけれども、剛性支持レバー150,250が、地板2の如き時計本体8の静置支持基板に対して中心軸線CS,CRのまわりで回動可能に支持される限り、例えば、図12に示したように、地板2に一体的な突起部180M,280Mを突設すると共に該突起部180M,280Mを、支持レバー150,250の貫通孔162,262に回動自在に嵌合させてもよい。
【0086】
また、以上においては、剛性支持レバー150,250が中心軸線CS,CRのまわりで単に回動可能であるかの如く説明したけれども、剛性支持レバー150,250は、一方向に偏倚した位置を採るように、バネ負荷されてもよい。その場合、ばねは、渦巻きばねでも他のばねでもよい。また、剛性支持レバー150,250は、典型的には、両方向の回動範囲が規定され、一方の端の回動位置の他方の端の回動位置との間で回動可能である。但し、所望ならば、回動可能範囲が規制されていなくてもよい。
【0087】
更に、以上においては、クロノグラフ機構7のうち機械式のクロノグラフ機構7Bが特定構造を備える一例について説明したけれども、クロノグラフ機構7の電気的(電子的)クロノグラフ機構7Aを構成するスイッチ構造体100,200が適用される機械的クロノグラフ機構7Bとしては、図示した構造のものに限られず、他の構造のものであってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 クロノグラフ時計
2 地板
2g 係止突起部
3 輪列受
4 文字板
5 クロノグラフ下板
5c,5d 復針レバーガイドピン(セルフアラインメント案内ピン)
5e 帰零指示レバーばね受ピン
5f 帰零指示レバー係止ピン
5h 停止レバーばね受ピン
6 クロノグラフ受
7 クロノグラフ機構
7A 電気的クロノグラフ駆動機構(電気駆動式クロノグラフ機構)
7B 機械的クロノグラフ帰零機構(機械帰零式クロノグラフ機構)
8 クロノグラフ時計本体(ムーブメント)
9a日車押え
11 電池
12 通常運針用モータ
12a ロータ
13 クロノグラフ運針用モータ
13a ロータ
14 通常運針用輪列
15 クロノグラフ輪列
16 スタート/ストップ(発停)ボタン
17 リセット(帰零)ボタン
18 巻真
19 りゅうず
20 帰零指示レバー
21 孔部
22 入力側腕部
23 出力側腕部
24 ばね部
25 先端部
26 指示受突出部
27 停止レバー係止突起部
28 係止縁部
29 係合縁部
30 発停レバー
31 一端部(基端部)
32 孔部
33 腕部
34 延在端部
35 復針伝えレバー押圧用突出部
36 突出部
37 主面(裏蓋側主面)
38 ピン状突起部
39 被係止部
40 復針伝えレバー
41 孔部
42 入力側腕部
43 出力側腕部
44 発停レバー係合部
45 帰零指示レバー係合用ピン状突起部
46 主面(裏蓋側主面)
47 ピン状突起部
48 (U字状)係合溝部
49 復針レバー作動部
50 復針レバー
50a 頭部側腕部
50b 胴尾部側腕部
50c 左羽根側腕部
50d 右羽根側腕部
51 復針レバー作動ピン
52 案内溝部
53 案内穴部(案内用長穴部)
54 (大径の)溝部分
55 (大径の)穴部分
56 秒ハンマー(秒ハートカム接触部)
57 分ハンマー(分ハートカム接触部)
58 時ハンマー(時ハートカム接触部)
60 電池プラス端子
60a 電池プラス端子の板状本体部
61 1〜2時の領域に対面する(外周縁)部分
61a 1時の(外周縁)部分
62 4〜5時の領域に対面する(外周縁)部分
62a 5時の(外周縁)部分
63 発停スイッチばね部
63a ばね本体部
63b 先端係合部
63e 肩部
64 復針伝えレバー用スイッチばね部
64a 本体部
64b 先端係合部
64c 基端側傾斜部
64d 先端側傾斜部
64e 凸部
64f 凹部
64g 傾斜部
64h 突起部
65 回路ブロック
65a 座
66 フレキシブル回路基板
66a 基板本体
66b 導電性配線パターン
66c 回路部品
67 発停用接点
68 帰零用接点
70 停止レバー
71 孔部
72 第一腕部
73 第二腕部
74 ばね部
75 先端部
76 被係止部
77 分岐腕部
78 クロノグラフ中間車規正縁部
81 秒クロノグラフ車
81a クロノグラフ秒針
81b 秒ハートカム
81c 秒クロノグラフ歯車
81d 秒クロノグラフ真
82 分クロノグラフ車
82a クロノグラフ分針
82b 分ハートカム
82c 分クロノグラフ歯車
82d 分クロノグラフ真
83 時クロノグラフ車
83a クロノグラフ時針
83b 時ハートカム
83c 時クロノグラフ歯車
83d 時クロノグラフ真
84 秒クロノグラフ中間車
84a 秒クロノグラフ第一中間車
84b 秒クロノグラフ第二中間車
85 分クロノグラフ中間車
85a 分クロノグラフ第一中間車
85b 分クロノグラフ第二中間車
86 時クロノグラフ中間車
86a 時クロノグラフ第一中間車
86b 時クロノグラフ第二中間車
86c 時クロノグラフ第三中間車
91 五番車
92 秒車
93 三番車
94 分車
95 日の裏車
96 時車
97 秒針
98 分針
99 時針
100 スタート/ストップ(発停)スイッチ構造体
110 発停用弾性スイッチレバー部
120 発停用腕部
121 基端部
122 一側
125 押圧力受部
130 発停用弾性接点部
131 弾力性湾曲アーム部分
132 先端部
135 発停用接点本体
150 発停用剛性支持レバー
160,260 剛性基板部
161,261 基端側脚部
162,262 孔部
163,263 基端部
164,264 先端側脚部
165,265 先端部
170,270 剛性支持壁部
180,280 ピン
180M,280M 突起部
200 リセット(帰零)スイッチ構造体
210 帰零用弾性スイッチレバー部
220 帰零用腕部
221 基端部
222 一側
225 押圧力受部
230 帰零用弾性接点部
231 弾力性湾曲アーム部分
232 先端部
235 帰零用接点本体
250 帰零用剛性支持レバー
A1,A2 進退方向
C 中心軸線
C1,C2 回転中心
C4,C5 中心軸線
CS,CR 中心軸線
D1,D2 進退方向
F1,F2 回動方向
Fr1,Fr3 揺動方向
Fr2 撓み方向
G1 湾曲方向
G2 戻り方向
H1,H2 回転方向
J1,J2 復針レバーの概略の変位方向
Lr,Ls 外周縁に沿う方向
M1,M2 回転方向
Nr,Ns 折曲方向
P1 揺動方向
P2 戻り方向
Q1 揺動方向
Q2 戻り方向
S1 電気的発停信号
S2 電気的帰零信号
T 時計の厚さ方向
U1 撓み方向
V1 撓み方向
X,Y,Z 方向(三次元直交座標系)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状本体部及び複数の弾性スイッチレバー部を具備する端子板であって、各スイッチレバー部が基端部の一側において板状本体部の外周縁部につながると共に基端部の該一側において板状本体部の外周縁部に対して折曲げられ該基端部から該本体部の延在面に交差する面に沿って該板状本体部の外周縁部に沿う方向に延び先端側に押圧力受部を備えた腕部及び該腕部の押圧力受部から更に延在されてなる弾性接点部を具備するものと、
各弾性スイッチレバー部の腕部の前記押圧力受部に押圧力がかかった際、各弾性スイッチレバー部の該押圧力受部の背後において該押圧力を受けると共に該押圧力受部の変位を案内すべく前記各弾性スイッチレバー部の前記押圧力受部の背後において可動に設けられた弾性スイッチレバー支持用の剛性支持レバーと
を有するスイッチ構造体。
【請求項2】
前記剛性支持レバーが回動可能に支持されている請求項1に記載のスイッチ構造体。
【請求項3】
前記剛性支持レバーは、各弾性スイッチレバー部の腕部とは逆向きに折り曲げられている請求項1又は2に記載のスイッチ構造体。
【請求項4】
各弾性スイッチレバー部の弾性接点部がU字状に湾曲した弾力性湾曲アーム部分を備える請求項1から3までの何れか一つの項に記載のスイッチ構造体。
【請求項5】
スタート/ストップボタン及びリセットボタンのうちの少なくとも一方のボタンが請求項1から4までの何れか一つの項に記載のスイッチ構造体の腕部の押圧力受部に押圧力を及ぼすべく構成されており、スタート/ストップボタンの押圧に伴い回動される発停レバーによってクロノグラフ指針の計時動作が開始又は停止され、リセットボタンの押圧に伴い回動される帰零指示持レバーによってクロノグラフ指針が帰零されるように構成されたクロノグラフ機構。
【請求項6】
帰零指示レバーの回動に伴いクロノグラフ指針を強制的に機械的に帰零させる復針レバーを備える請求項5に記載のクロノグラフ機構。
【請求項7】
請求項1から4までのいずれか一つの項に記載のスイッチ構造体又は請求項5若しくは6に記載のクロノグラフ機構を有する電子時計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−203135(P2011−203135A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71068(P2010−71068)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】