説明

スイッチ機構並びに入力装置

【課題】センサ式およびボタン式入力手段からなる二段スイッチにおいて、センサ式入力手段の検出範囲を拡大するとともに感度を向上させる。
【解決手段】導電性の弾性部材からなり、キャップ部12の背面に配設される導電部31およびこの導電部31と電極接点とを接続する導電延出部を備えたアンテナ部材33、並びに、弾性部材からなり、タクトスイッチ20を覆うように配設されており、その上面中央にアンテナ部材33の導電部31が配設され、この導電部31を介してキャップ部12が固定されており、それ自体の可撓弾性力によって、常時はキートップ10のフランジ11を筐体1内の開口部周辺に押し当てるとともに、筐体1に形成された開口部1aへキャップ部12を臨ませ、キートップ10の押下操作時には撓縮してタクトスイッチ20の入力操作を可能に前記キートップ10を支持する支承部34を有するキートップ支承部材30を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キートップの押下操作(ボタン操作)による入力を検出するボタン式入力手段と、前記キートップへの手指等の操作体の近接または接触(タッチ操作)による入力を検出するセンサ式入力手段とを共に備える単体のスイッチ機構、並びに、この単体のスイッチ機構を複数配列させた入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータのキーボード、電卓、携帯電話機、ゲーム機、コントローラなどのスイッチ機構として、入力キーへの手指等の操作体の近接または接触を検出する静電容量変化型近接センサを用いて形成されたスイッチ機構が、他のセンサを用いて形成されたスイッチ機構と比較して薄型化および低廉化をより効率的に図ることができるものであるため、多用されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
さらに、入力キーと反転ドーム状の導電部材とを組合せて配設し、入力キーの押下操作による入力を検出するメカニカルなボタン式入力手段と、前記入力キーへの手指等の近接または接触による入力を検出するセンサ式入力手段とを共に備えたスイッチ機構も、二段スイッチ等として多く開発されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
図8に示す従来のスイッチ機構は、基板102に形成された円環状の電極105に金属製の球帽状の反転板122を上向きに凸状となるように固着させ、筐体101との間には、反転板122の上部と対向するように配設され、入力キーとして機能する押下自在のキートップ110が配設されている。また、接地している内側電極接点106が、電極105と絶縁状態を保ちながらその電極106の中心部に形成されている。
【0005】
そのため、操作体としての人体Hがキートップ110に近接あるいは接触した際には、8(a)に示すように、電極105と接触している反転板122の静電容量Cの変化を制御部が検出することにより、センサ式入力手段を利用したキー入力を行なうことが可能となっている。
【0006】
また、キートップ110に接触した人体Hがそのキートップ110を押下操作した際には、図8(b)に示すように、反転板122の形状が凹入して反転する方向に変化することによって、中心にある電極接点106と接触し、反転板122を介して電極接点106と接触した電極105の接地状態になるとその電荷が0となる静電状態を検出することにより、キートップ110の押下操作によるボタン式入力手段(タクトスイッチ)を利用したキー入力を行なうことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−201175号公報
【特許文献2】特開2006−253000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来のスイッチ機構においては、センサ式入力手段を利用したキー入力時には、キートップはそれ自体が厚みを有しているため、基板に形成された電極とタッチ操作する人体Hとの対向距離dが自ずと大きくなってしまい、タッチ操作の検出範囲が狭くなっていた。また、複数のスイッチ機構が隣接して配設された入力装置においては、所望の入力キーのキートップに操作体としての人体を近接させたときに、その近隣に配置された入力キーにおいても静電容量の変化が検出されてしまい、所望のキー入力が正確になされないという不具合が散見されていた。
【0009】
また、前述のスイッチ機構のように、タクトスイッチを構成するキートップは、非操作の状態においてスイッチ機構が配設される入力装置の筐体との間に寸法的な遊びが形成されているとガタが生じ、キートップの押下操作が確実に行われず、ボタン式入力手段の誤入力、誤検出が生じる虞があった。
【0010】
そこで、本発明は、センサ式入力手段の入力キーおよびボタン式入力手段の入力キーとして機能する共通のキートップを備え、センサ式入力手段においては、キートップへの人体の近接、接触によるタッチ操作の検出範囲を拡大するとともに、感度を向上させることが可能であり、ボタン式入力手段においては、キートップの押下による確実な入力操作を可能とするとともにクリック感を得ることができるスイッチ機構と、このスイッチ機構を複数配設した入力装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のスイッチ機構は、筐体内の絶縁性基板上に配設されたタクトスイッチのキートップの押下操作による入力を検出するボタン式入力手段と、前記キートップへの操作体の近接または接触による入力を検出するセンサ式入力手段とを共に備えるスイッチ機構であって、前記絶縁性基板上に形成された電極接点と、下端部周辺部にフランジが一体に形成されてなる誘電体製のキャップ部を備え、前記タクトスイッチの上方に配設されるキートップと、導電性の弾性部材からなり、前記キャップ部の背面に配設される導電部およびこの導電部と前記電極接点とを接続する導電延出部を備えたアンテナ部材、並びに、弾性部材からなり、前記絶縁性基板上に前記タクトスイッチを覆うように配設されており、その上面中央に前記アンテナ部材の導電部が配設され、この導電部を介して前記キャップ部が固定されており、それ自体の可撓弾性力によって、常時は前記キートップのフランジを前記筐体内の開口部周辺に押し当てるとともに、前記筐体に形成された開口部へ前記キャップ部を臨ませ、キートップの押下操作時には撓縮してタクトスイッチの入力操作を可能に前記キートップを支持する支承部を有するキートップ支承部材と、前記電極接点の静電容量の変化を検出する静電容量検出手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の別のスイッチ機構は、筐体内の絶縁性基板上に配設されたタクトスイッチのキートップの押下操作による入力を検出するボタン式入力手段と、前記キートップへの操作体の近接または接触による入力を検出するセンサ式入力手段とを共に備えるスイッチ機構であって、前記絶縁性基板上に形成された内側電極接点と、前記絶縁性基板上に形成され、前記内側電極接点を囲み、且つ、前記内側電極接点と絶縁させて形成された外側電極接点と、下端部周辺部にフランジが一体に形成され、背面側には押圧凸部が一体に突出形成されてなる誘電体製のキャップ部を備えたキートップと、前記キートップの押下方向に対して反転力を生じるように形成され、前記内側電極接点を内面中央部に対向させ、かつ、前記外側電極接点と接触させて配設された導電性の反転板と、導電性の弾性部材からなり、前記反転板上に配設され、それ自体の可撓弾性力により、常にはキートップを押上方向に付勢して前記キートップのフランジを前記筐体内の開口部周辺に押し当てるとともに、前記筐体に形成された開口部へ前記キャップ部を臨ませ、キートップの押下操作時には撓縮して前記キートップの押圧凸部を前記反転板の上面中央部に当接させて前記反転板を反転させて前記反転板の内面中央部を前記内側電極接点と接触可能に支持するキートップ支承部材と、前記外側電極接点の静電容量の変化を検出する静電容量検出手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の入力装置は、請求項1または請求項2のスイッチ機構が複数配列形成されており、前記静電容量検出手段は、各スイッチ機構から得られた静電容量の変化を検出することによって、複数のスイッチ機構の中から入力操作を受けた特定のスイッチ機構を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のスイッチ機構によれば、センサ式入力手段においては、キートップへの操作体としての人体の近接、接触によるタッチ操作の検出範囲を拡大するとともに、感度を向上させることが可能となり、ボタン式入力手段においては、筐体への組み込みの際のキートップのガタを防止して、キートップの押下による確実な入力操作を可能とするとともに良好なクリック感を得ることができる。
【0015】
また、このスイッチ機構を複数配設した入力装置においては、複数のスイッチ機構の中から入力操作を受けた特定のスイッチ機構を確実に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態のスイッチ機構の要部構成を示す上方視野の分解斜視図
【図2】図1のスイッチ機構の要部構成を示す下方視野の分解斜視図
【図3】図1のスイッチ機構の要部構成を示すIII−III方向断面図
【図4】図1のスイッチ機構の要部構成を示すIV−IV方向断面図
【図5】図1のスイッチ機構の要部構成を示す上方視野のV−V方向分解断面斜視図
【図6】図1のスイッチ機構のキートップ支承部材の要部構成を示す上方視野の分解斜視図
【図7】本発明の第1実施形態のスイッチ機構の要部構成を示す断面図
【図8】従来のスイッチ機構の要部構成を示す断面図であって、(a)はキートップへの手指等の操作体の近接または接触(タッチ操作)による入力を検出するセンサ式入力手段として機能する場合、(b)は、キーートップの押下操作(ボタン操作)による入力を検出するボタン式入力手段して機能する場合の状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のスイッチ機構は、ボタン式入力手段とセンサ式入力手段とを備えており、例えば、デジタルカメラのシャッタースイッチやゲーム機のコントローラのスイッチのような2段階のスイッチ機構として用いられる。以下、図1から図7を参照し、本発明のスイッチ機構および入力装置の実施形態を説明する。
【0018】
(1)第1実施形態
図1乃至図6は本発明の第1実施形態の入力装置に用いられるスイッチ機構を示す。
【0019】
本実施形態のスイッチ機構は、図3に示すように、筐体1(図には、その一部のみを示す)内に配設された絶縁性基板2上に、センサ式入力手段を構成する電極接点3およびこの電極接点3から導出される引き廻しパターン(図示せず)が印刷形成されている。
【0020】
また、前記絶縁性基板2上には、キートップ10の押下操作による入力を検出するボタン式入力手段としてのタクトスイッチ20が配設されている。このタクトスイッチ20としては、例えば反転ドーム状の導電部材(以下、反転板という)を有し、その内部に内側電極接点が設けられたダイヤフラム型のものであって、反転板の内面中央部を前記内側電極接点に対向させるとともに基端部を前記基板に形成された円環状の外側電極接点に接続されており、キートップの押下操作により押圧力が反転板に加えられると、反転板が反転し、反転板の内面が前記内側電極接点に接触することによって、前記内側電極接点と円環状の外側電極接点とが導通することにより入力操作されるスイッチ構造のタクトスイッチを例示することができる。なお、この構成のタクトスイッチについては、第2実施形態において詳述する。
【0021】
そして、タクトスイッチ20の上方には、下端部周辺部にフランジ11が一体に形成されてなる誘電体製のキャップ部12を備えたキートップ10が配設されている。本実施形態において、前記キャップ部12の背面には、後述する導電部31を嵌着させる凹部13が形成されており、これによりキャップ部12の上面を形成する誘電体の厚さ寸法が小さく形成されている。なお、本実施形態においては、フランジ11には、後述する第1延出部配置溝35aを係合させる切り欠き部11aが形成されている。
【0022】
前記キートップ10は、キートップ支承部材30が有する可撓弾性力により、常にはキャップ部12を押上方向に付勢して前記キャップ部12に形成されたフランジ11を前記筐体1内の開口部1aの周辺に押し当てるとともに、前記筐体1に形成された開口部1aへ前記キャップ部12を臨ませ、キートップ10の押下操作時には、キートップ支承部材30が撓縮することにより、前記タクトスイッチ20の入力操作を可能となるように支持されている。
【0023】
詳しくは、本実施形態のキートップ支承部材30は、導電性の弾性部材としての導電ゴムからなり、前記キャップ部12の凹部13に嵌着させて配設される柱状の導電部31とこの導電部31と前記電極接点3とを接続する導電延出部32を備えたアンテナ部材33を備えている。また、このキートップ支承部材30は、非導電性の弾性部材である非導電ゴムからなり、タクトスイッチ20を覆うようにして絶縁性基板2上に配設されており、その上面中央に、アンテナ部材33の導電部31が配設され、この導電部31を介して前記キャップ部12を固定する支承部34を備えている。
【0024】
ここで、アンテナ部材33の導電延出部32は、平面視柱状とされた導電部31の一側方下端部に、前記ステージ35の表面に沿って延出する第1延出部32aが連接し、その第1延出部32aの先端部には、後述する下壁部36の表面に沿って延出し、その先端を前記絶縁性基板2に形成された電極接点3に接続させる第2延出部32bが連接して、第1延出部32aと第2延出部32bとが一体に形成されている。なお、本実施形態においては、柱状とされた導電部31の底面部には、ステージ35に形成された後述の嵌合凸部35bを嵌合させる凹部31aが形成されている。
【0025】
また、支承部34は、薄い平板状のステージ35(本実施形態においては八角形に形成されている)と、ステージ35の周囲に垂設され、その先端部を前記絶縁性基板2上においてタクトスイッチ20を覆うように配置させる下壁部36、および、ステージ35の周囲に立設され先端部を筐体1の背面側に当接あるいは近接させて配置させる上壁部37とから構成されている。本実施形態においては、ステージ35の中央部には嵌合凸部35bが一体に形成されている。
【0026】
なお、下壁部36の高さ寸法は、常にはキートップ10を押上方向に付勢して前記キャップ部12のフランジ11を前記筐体1内の開口部1aの周辺に押し当てるとともに、前記筐体1に形成された開口部1aへキャップ部12を臨ませ、キートップ10の押下操作時には撓縮して前記押圧凸部を前記タクトスイッチ20の上面中央に当接させて前記タクトスイッチ20の入力操作を可能に支持することができる高さ寸法とされている。また、上壁部37の高さ寸法は、ステージ35上に配設されるキャップ部12に形成されたフランジ11が筐体1と緩衝しないように、フランジ11の厚さ寸法以上であって、後述する第1延出部配置溝35aのステージ35上面への突出寸法と同寸法とされている。
【0027】
また、ステージ35の背面には導電延出部32の第1延出部32aをステージ35の背面に沿って延出させて配置させるための第1延出部配置溝35aが形成されており、ステージ35の上面にはその第1延出部配置溝35aが突出して凸状部として形成されている。前記第1延出部配置溝35aのステージ35の中央側に位置する端部と、その近傍のステージ35には、導電延出部32を位置させるために開口部35cが形成されている。そして、下壁部36の内表面には前記第1延出部配置溝35aの他端部に連続させて、前記第2延出部32bを下壁部36の内表面に沿って延出させて配置させるための第2延出部配置溝36aが凹溝形成されている。
【0028】
そして、前記アンテナ部材33は、導電部31をステージ35上の嵌合凸部35bに前記凹部31aを嵌合させて前記ステージ34の上面中央部に固定するとともに、導電延出部32を前記開口部35cを通して第1延出部配置溝35aおよび第2延出部配置溝36aに配置することで、支承部34とともにキートップ支承部材30を構成し、キートップ10の押上操作により可撓性を有するように構成されている。
【0029】
前記第1延出部配置溝35aのステージ35の上面への突出寸法は、該第1延出部配置溝35aに配置される第1延出部32aの厚さ寸法とする。また、前記第2延出部配置溝36aの深さ寸法は、該第2延出部配置溝36aに配置される第2延出部32bの厚さ寸法とする。このように形成された第1延出部配置溝35aおよび第2延出部配置溝36aにそれぞれ第1延出部32aおよび第2延出部32bを配置することでキートップ支承部材30がコンパクトな設計となり、しかもアンテナ部材33が静電気等の外部の影響を受けにくくなる。
【0030】
なお、前記支承部34も、アンテナ部材33と同様に、導電性の材料によって形成することも可能ではあるが、キートップ支承部材30の全体を導電部材で形成すると静電気が発生して周囲に影響を及ぼすことが懸念される。よって、キートップ支承部材30は非導電部材で形成しておき、キャップ部12と接触する部分の一部を導電ゴムのような導電部材で形成することが望ましい。
【0031】
また、前記ステージ35の背面中央には、前記タクトスイッチ20と対向させて、押圧凸部38がステージ35と一体に突出形成されている。
【0032】
そして、絶縁性基板2上の電極接点3と接続している引き回しパターンの一端には、当該電極接点3の静電容量の変化を検出するための公知の静電容量検出手段(図示せず)が接続されている。この静電容量検出手段については、例えば、出願人所有の特許第3963830号(特開2004−201175号公報)に開示した静電容量検出手段を用いることができ、要は、電極接点に対応する検出チャンネルが接続された制御部において静電容量Cの変化を検出することによって、キートップ10に対する操作体としての人体Hの接触もしくは近接を検出するように形成されている(センサ式入力手段の機能)。
【0033】
つまり、電極接点3から検出される人体Hとの間の静電容量C(以下、単に「静電容量C」という。)は、アンテナとして機能する前記キートップ支承部材30のアンテナ部材33の導電部31と人体Hとの対向面積Sおよび対向距離dによって変化するものであり、一般的に以下の数1式によって求められる。なお、誘電率εは、キャップ部12の素材の誘電率を用いる。
【数1】

【0034】
キャップ部12に人体Hを接近または接触させると、電極接点のアンテナとして機能する前記導電部31と人体Hとの対向距離dが小さくなり、対向面積Sが大きくなるため、数1式より、静電容量Cの値が大きくなる。これを制御部が検出することによって、キートップ10に操作体としての人体Hが近接あるいは接触したことを検出することができる。
【0035】
ここで、本実施形態のスイッチ機構においては、前述のように、キャップ部12の背面に嵌着させて導電部31が配設されているため、導電部31と人体Hとの対向距離dが小さいため、電極接点3の静電容量Cを確実に変化させることが可能となり、操作体としての人体Hの動作距離を従来よりも長く確保することができる。すなわち、本実施形態のスイッチ機構によれば、センサ式入力手段における操作体としての人体Hの近接、接触によるタッチ操作の検出範囲を拡大するとともに、感度を向上させることが可能となる。
【0036】
一方、本実施形態のスイッチ機構は、キートップ102の押下操作の際に、キートップ10の背面位置に形成された押圧凸部38をタクトスイッチ20に当接させ、その押圧力でタクトスイッチ20をオン状態とし、これを制御部が検出するようになっている(ボタン式入力手段の機能)。
【0037】
例えば、前記タクトスイッチ20が、前述したようなスイッチ構造を有するものである場合には、操作者がキートップ10をキートップ支承部材30が備える弾性力に抗して所定ストローク押下操作し、キートップ支承部材30の支承部34を撓縮させて押圧凸部38を反転板に当接させ、そのまま押圧力を加えて反転板を反転させる。すると反転板22の内面が内側固定接点18に接触するので、内側固定接点18と外側固定接点19は反転板2を介して導通し、電荷を0とする。これを制御部が検出することで確実にキートップ10の入力操作を判断することができるとともに、反転板を反転させることによるクリック感を得ることが可能となる。
【0038】
また、本実施形態のスイッチ機構においては、キートップ10は、その押下操作がなされないときには、キートップ支承部材30の弾性力によってそのフランジ11をキートップ10を支持する筐体127の内壁面に押し付けた状態で配設されるので、非操作の状態においてもスイッチ機構が配設される筐体1との間に遊びが形成されてガタつくことがない。
【0039】
そして、このような構成を備えたスイッチ機構を複数配列させて入力手段を形成した場合には、各スイッチ機構の電極接点3から得られた静電容量Cの変化を静電容量検出手段が検出することによって、複数のキートップ10の中から入力操作を受けた特定のキートップ10を確実に検出することが可能となる。
【0040】
(2)第2実施形態
図7は本発明の入力装置に用いられるスイッチ機構の第2実施形態の断面図を示したものである。なお、前述の第1実施形態と同じ部材(作用が同じ場合を含む)には、同一の符号を付している。
【0041】
このスイッチ機構は、筐体1(図中、破線で示す)内に配設された絶縁性基板2上に、接地される内側電極接点5と、この内側電極接点5の周囲に位置する環状の外側電極接点6と、各接点5、6が導出された引き廻しパターン(図示せず)とが印刷形成されている。なお、内側電極接点5は、外側接点3と絶縁状態を保って形成されている。
【0042】
また、絶縁性基板2上には、キートップ10の押下操作による入力を検出するボタン式入力手段としてのタクトスイッチ20として機能する、反転ドーム状の導電部材(以下、反転板という)22が前記内側電極接点5を内面中央部に対向させ、かつ、外側電極接点6と常時接触させるようにして載置されており、反転板22を金属接点(可動接点)として機能させ、反転板22の中央部が反転すると内側電極接点5に接触するように構成されている。
【0043】
また、反転板22の上方には、下端部周辺部にフランジ11が一体に形成されてなる誘電体製のキャップ部12を備えたキートップ10が配設されている。キャップ部12の背面側中央には凹部13が形成され、キャップ部12の上面を形成する誘電体の厚さ寸法が小さく形成され、誘電率が調整されている。前記凹部13の奥底部中央には押圧凸部14が一体に形成され、キャップ部12の背面側へ突出させて形成されている。
【0044】
そして、本実施形態において、キートップ10は、その押下方向に伸縮する可撓弾性を備えた金属、カーボン、導電性ゴムなどの導電材料からなるキートップ支承部材30を介して、前記筐体1に形成された開口部1aへキャップ部12を臨ませて配置されている。
【0045】
具体的には、キートップ支承部材30としてコイルばね30が採用され、反転板22上にキートップ10の押下操作方向へ伸縮可能に載置されており、そして、コイルばね30の中心孔(内側円柱空間)には、キートップ10の押圧凸部14が遊挿されている。つまり、コイルばね30は、前記キャップ部12に形成された凹部13の奥底部と反転板22との間に介在するように配設されている。これにより、キートップ10は、その押下操作がなされないときには、コイルばね30の弾性回復力によってそのフランジ11をキートップ10を支持する筐体127の内壁面に押し付けることにより、前記筐体1に形成された開口部1aへ前記キャップ部12を臨ませるとともに、押圧凸部14の先端と反転板22の表面との間に間隙を形成し、キートップ10の押下操作時には、コイルばね30が収縮することにより、押圧凸部14の先端が反転板22の上面に当接するとともにその押圧力によって反転板22を押圧し、反転板22の中央部を反転させるように、筐体1と反転板22との間に配設されている。
【0046】
そして、絶縁性基板2の外側電極接点6と接続している引き回しパターンの一端には、当該電極接点3の静電容量Cの変化を検出するための公知の静電容量検出手段(図示せず)が接続されている。
【0047】
この静電容量検出手段については、例えば、出願人所有の前述した特許第3963830号に開示した静電容量検出手段を用いることができ、要は、外側電極接点6に対応する検出チャンネルが接続された制御部において外側電極接点6の静電容量Cの変化を検出することによって、キートップ2に対する操作体としての人体Hの接触もしくは近接を検出するように形成されている(センサ式入力手段の機能)。
【0048】
外側電極接点6から検出される人体Hとの間の静電容量Cは、前述の第1実施形態で説明したように、外側電極接点6のアンテナとして機能する反転板22とこれに接触して導通しているコイルばね30と、操作体としての人体Hとの対向面積Sおよび対向距離dによって変化する。
【0049】
そして、キートップ10に人体Hを接近または接触させると、外側電極接点6のアンテナとして機能し、最もキートップ10に近く位置するコイルばね30と人体Hとの対向距離dが小さくなり、対向面積Sが大きくなるため、前述の数1式より、静電容量Cの値が大きくなる。これを制御部が検出することによって、キートップ10に操作体としての人体Hが近接あるいは接触したことを判断することができる。
【0050】
ここで、本実施形態のスイッチ機構においては、前述のように、外側接点3が反転板22およびコイルばね30と導通しているため、反転板22およびコイルばね30を介して外側電極接点6の静電容量Cを確実に変化させることが可能となり、また、操作体の動作距離を従来よりも長く確保することができる。すなわち、本実施形態のスイッチ機構によれば、センサ式入力手段における操作体としての人体Hの近接あるいは接触によるタッチ操作の検出範囲を拡大するとともに、感度を向上させることが可能となる。
【0051】
一方、本実施形態のスイッチ機構は、キートップ10の押下操作の際に、反転した反転板22を接地状体の内側電極接点5と接触させ、外側電極接点6の電荷を0とし、これを制御部が検出する(ボタン式入力手段の機能)。
【0052】
つまり、キートップ10をコイルばね30が備える弾性力に抗して所定ストローク押下操作し、キートップ10の押圧凸部14の先端を反転板24の中央部に当接させてその押圧力を反転板22に加え、反転板22を反転させる。すると反転板22の内面が、接地されている内側固定接点18に接触するので、内側固定接点18と外側固定接点19は反転板2を介して導通し、電荷を0とする。これを制御部が検出することで確実なキー入力を可能とするとともに、反転板を反転させることによるクリック感を得ることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態のスイッチ機構においては、キートップ10は、その押下操作がなされないときには、コイルばね30の弾性回復力によってそのフランジ11をキートップ10を支持する筐体127の内壁面に押し付けられた状態で筐体1と反転板との間に配設されるので、非操作の状態においてもスイッチ機構が配設される入力装置の筐体1との間に寸法的な遊びが形成されてガタつくことがない。
【0054】
そして、このような構成を備えたスイッチ機構を複数配列させて入力手段を形成した場合には、各スイッチ機構の外側電極接点6から得られた静電容量Cの変化を静電容量検出手段が検出することによって、複数のキートップ10の中から入力操作を受けた特定のキートップ10を確実に検出することが可能となる。
【0055】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0056】
例えば、第1実施形態においては、キートップ支承部材の背面に、押圧凸部が一体に形成されているものとして説明したが、押圧凸部を別体に形成してもよい。
【0057】
具体的には、前記導電部31の背面に凹部を形成するとともに、前記凹部の外周形状に合わせるようにして前記ステージに開口穴を形成する。一方、前記導電部の凹部内に嵌合させる嵌合部と、この嵌合部を前記導電部の凹部内に嵌合させた状態において前記ステージの背面側へ突出する押圧凸部とを有する凸状部材を用意することで、キートップ10の押圧操作により、押圧凸部38をタクトスイッチ20に当接させて入力操作可能なスイッチ構造を実現することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 筐体
1a 開口部
2 絶縁性基板
3 電極接点
5 内側電極接点
6 外側電極接点
10 キートップ
11 フランジ
11a 切り欠き部
12 キャップ部
13 凹部
14 押圧凸部
20 タクトスイッチ
22 反転板
30 キートップ支承部材
31 導電部
31a 凹部
32 導電延出部
32a 第1延出部
32b 第2延出部
33 アンテナ部材
34 支承部
35 ステージ
35a 第1延出部配置溝
35b 嵌合凸部
35c 開口部
36 下壁部
36a 第2延出部配置溝
37 上壁部
38 押圧凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内の絶縁性基板上に配設されたタクトスイッチのキートップの押下操作による入力を検出するボタン式入力手段と、前記キートップへの操作体の近接または接触による入力を検出するセンサ式入力手段とを共に備えるスイッチ機構であって、
前記絶縁性基板上に形成された電極接点と、
下端部周辺部にフランジが一体に形成されてなる誘電体製のキャップ部を備え、前記タクトスイッチの上方に配設されるキートップと、
導電性の弾性部材からなり、前記キャップ部の背面に配設される導電部およびこの導電部と前記電極接点とを接続する導電延出部を備えたアンテナ部材、並びに、弾性部材からなり、前記絶縁性基板上に前記タクトスイッチを覆うように配設されており、その上面中央に前記アンテナ部材の導電部が配設され、この導電部を介して前記キャップ部が固定されており、それ自体の可撓弾性力によって、常時は前記キートップのフランジを前記筐体内の開口部周辺に押し当てるとともに、前記筐体に形成された開口部へ前記キャップ部を臨ませ、キートップの押下操作時には撓縮してタクトスイッチの入力操作を可能に前記キートップを支持する支承部を有するキートップ支承部材と、
前記電極接点の静電容量の変化を検出する静電容量検出手段とを備えたことを特徴とするスイッチ機構。
【請求項2】
筐体内の絶縁性基板上に配設されたタクトスイッチのキートップの押下操作による入力を検出するボタン式入力手段と、前記キートップへの操作体の近接または接触による入力を検出するセンサ式入力手段とを共に備えるスイッチ機構であって、
前記絶縁性基板上に形成された内側電極接点と、
前記絶縁性基板上に形成され、前記内側電極接点を囲み、且つ、前記内側電極接点と絶縁させて形成された外側電極接点と、
下端部周辺部にフランジが一体に形成され、背面側には押圧凸部が一体に突出形成されてなる誘電体製のキャップ部を備えたキートップと、
前記キートップの押下方向に対して反転力を生じるように形成され、前記内側電極接点を内面中央部に対向させ、かつ、前記外側電極接点と接触させて配設された導電性の反転板と、
導電性の弾性部材からなり、前記反転板上に配設され、それ自体の可撓弾性力により、常にはキートップを押上方向に付勢して前記キートップのフランジを前記筐体1内の開口部周辺に押し当てるとともに、前記筐体に形成された開口部へ前記キャップ部を臨ませ、キートップの押下操作時には撓縮して前記キートップの押圧凸部を前記反転板の上面中央部に当接させて前記反転板を反転させて前記反転板の内面中央部を前記内側電極接点と接触可能に支持するキートップ支承部材と、
前記外側電極接点の静電容量の変化を検出する静電容量検出手段とを備えたことを特徴とするスイッチ機構。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のスイッチ機構が複数配列形成されており、前記静電容量検出手段は、各スイッチ機構から得られた静電容量の変化を検出することによって、複数のスイッチ機構の中から入力操作を受けた特定のスイッチ機構を検出することを特徴とする入力装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−146297(P2011−146297A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7140(P2010−7140)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】