説明

スイッチ装置

【課題】 筒状の操作部を軸線周りに回転して回転位置を設定する際に、弾性節度部材によって節度感を付与することができるとともに、操作部を軸線方向に変位した場合でも、操作部による回転位置設定操作が可能なスイッチ装置を提供する。
【解決手段】 ダイアルノブ10の外周面には、全周にわたって連続的に凹凸を繰り返す凹凸部11が軸線O方向に所定の幅W1で形成されている。弾性力によってダイアルノブ10の凹凸部11との係合状態を押圧保持する板ばね状のクリックばね30が、本体ケーシング100に固定保持されている。クリックばね30の軸線O方向の幅W2が凹凸部11の軸線O方向の幅W1よりも大に設定されている。クリックばね30の軸線O方向の形成幅W2は、ダイアルノブ10の凹凸部11の軸線O方向の変位量Lと凹凸部11の軸線O方向の形成幅W1との合計より大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸線周りの回転操作(ダイアル操作)機能と軸線方向への移動操作(プッシュ操作)機能とを備えたスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車に搭載されるエアコン(空気調和装置)に関して、ダイアルノブを回転操作してエアコンの設定温度を調節(選択)するダイアルスイッチ(スイッチ装置)が用いられる。そして、このようなダイアルスイッチにおいて、ダイアルノブに節度機構として配置したばね材を摺接させてクリック感を付与する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−250453号公報(図5)
【0004】
特許文献1に開示された技術によれば、ダイアルノブを回転操作した際に各ポジション(回転設定位置)に対するクリック感(節度感)が付与される。ところが、このようなダイアルスイッチに、軸線方向への移動操作(プッシュ操作)機能として、例えばエアコンによる車内空調制御のON・OFF操作(AUTO操作)機能を付加しようとすると、ばね材による摺接機能が失われてしまうおそれがある。すなわち、ダイアルノブが軸線方向へ移動すると、ばね材とダイアルノブとが軸線方向に相対移動してずれを生じることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、筒状の操作部を軸線周りに回転して回転位置を設定する際に、弾性節度部材によって節度感を付与することができるとともに、操作部を軸線方向に変位した場合でも、操作部による回転位置設定操作が可能なスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のスイッチ装置は、
軸線周りに回転して人為的に回転位置が設定されるとともに、同じく人為操作により軸線方向に移動可能な筒状の操作部と、
その操作部の軸線方向への変位を検出することにより電気的にON・OFFされる移動検出スイッチ部と、
前記操作部の回転位置を複数の回転設定位置のうちのいずれかに保持するために前記操作部の外周面側に対向配置される回転保持機構と、
その回転保持機構により所定の回転位置に保持された操作部の回転設定位置を検出する回転検出スイッチ部とを備え、
前記操作部の外周面には、周方向に沿って連続的に又は断続的に凹凸を繰り返す凹凸部が軸線方向に所定の幅で形成されるとともに、
前記回転保持機構には、自身の弾性力によって前記凹凸部との係合状態を押圧保持する弾性節度部材が設けられ、
その弾性節度部材の軸線方向の幅が前記凹凸部の軸線方向の幅よりも大であることを特徴とする。
【0007】
このように、弾性節度部材(例えば板ばね)を凹凸部よりも幅広に構成することによって、移動検出スイッチ部のON・OFF操作のために操作部が軸線方向へ変位した場合でも、操作部による回転位置設定操作が可能であり、あるいは操作部により予め設定されていた回転位置がずれることも防止できる。
【0008】
なお、自動車に搭載されるエアコン(空気調和装置)に適用する場合、操作部は、例えばエアコンの設定温度を回転調節(選択)するダイアルノブである。軸線方向への移動操作は、エアコンによる車内空調制御のON・OFF操作(AUTO操作)である。弾性節度部材として、例えば本体ケーシングに取り付けられて凹凸部へ押圧される板ばねやコイルばねが用いられる。また、高分子材料(合成樹脂等)の弾性を利用してもよい。
【0009】
そして、弾性節度部材の軸線方向の形成幅は、操作部の軸線方向の変位量と凹凸部の軸線方向の形成幅との和に等しいか又はそれ以上であることが望ましい。上記したように移動検出スイッチ部のON・OFF操作のために操作部が軸線方向へ変位した場合に、操作部による回転設定位置操作が円滑に行え、あるいは操作部により予め設定されていた回転位置がずれることもなくなる。
【0010】
また、移動検出スイッチ部は、操作部の軸線上に配置されてその操作部の軸線方向の変位を検出する一方、
回転検出スイッチ部は、操作部に周方向に沿って所定間隔で形成された複数の係合片との接触によってその操作部の回転変位量を検出し、
軸線を含む断面において、操作部の凹凸部と弾性節度部材との接触位置に関する旋回半径が、操作部の係合片と回転検出スイッチ部との接触位置に関する旋回半径と実質的に等しくなるように設定することができる。
【0011】
移動検出スイッチ部の軸線が操作部の軸線と一致して配置されるので、操作部の軸線方向の変位を安定して検出できる。しかも、操作部の凹凸部と弾性節度部材との接触位置に関する旋回半径の大きさが、操作部の係合片と回転検出スイッチ部との接触位置に関する旋回半径の大きさと近接するように設定されているので、操作部のこじれ等による誤差の混入が少ない状態で素早く操作部の回転変位量を検出することができる。したがって、例えば、移動検出スイッチ部による操作部の変位検出により、エアコン(空気調和装置)による車内空調制御をスタート(ON)する際に、回転検出スイッチ部による操作部の回転変位検出によりエアコンの車内設定温度を正確にかつ迅速に調節(選択)することができる。
【0012】
操作部は、
外周面に凹凸部を有し、軸線周りでの回転変位により弾性節度部材との間で回転位置が設定され、軸線方向への変位により移動検出スイッチ部と接触して作動させる筒状の操作部本体と、
作部本体の内側に挿入保持され、その操作部本体の軸線方向への変位には追従移動せず、その操作部本体の軸線周りでの回転変位には追従して一体回転することにより回転検出スイッチ部と接触して回転設定位置を検出する追従回転体とを有することができる。
【0013】
操作部本体の軸線方向への変位を移動検出スイッチ部で検出し、追従回転体の軸線周りでの回転変位を回転検出スイッチ部で検出するようにしたので、軸線方向への変位と軸線周りでの回転変位との干渉を容易に回避することができる。その結果、2つの検出対象(軸線方向への変位と軸線周りでの回転変位)の変位量を大きく設定することができる。
【0014】
操作部が軸線方向に沿って人為的に移動されるとき移動方向下手側となる位置に、操作部を軸線方向一端側から覆う形で配線基板が配置され、その配線基板の操作部に対向する表面に移動検出スイッチ部と回転検出スイッチ部とを実装することができる。これによって、配線基板の操作部に対向する表面のほぼ全体を、移動検出スイッチ部や回転検出スイッチ部の実装領域として広く利用することができる。
【0015】
配線基板には、移動検出スイッチ部による操作部の軸線方向の変位の検出に伴って点灯する光源が実装されるとともに、操作部の内部には、その光源からの光を透過させ操作部の軸線方向他端側から外部に放出するための導光部を配置することができる。例えば、操作部の軸線方向の変位を移動検出スイッチ部で検出したとき、エアコンによる車内空調制御をスタートするとともに、LED等の光源を点灯させることができるので、夜間運転時のスイッチ装置の内部照明等に用いることができる。なお、導光部は導光レンズ、導光板、導光プリズム等によって構成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施例)
以下、本発明の実施の形態につき図面に示す実施例を参照して説明する。図1は本発明に係るスイッチ装置の一例を示す正面断面図、図2はそのA−A断面図である。車載用エアコンユニットでは、複数(例えば3個)のスイッチ装置が取り付けられたエアコンスイッチパネル(図示せず)が、自動車の車体(本体)側に搭載されている。通常これらのスイッチ装置は、エアコンユニット(図示せず)の温度を設定するための温度設定スイッチ装置と、風量(吹出し量)を設定するための風量設定スイッチ装置と、吹出し口(吐出位置)を設定するための吹出し口設定スイッチ装置とを含む。ただし、内部構造としては同様であるため、ここでは温度設定スイッチ装置を代表例として説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、温度設定スイッチ装置(以下、単にスイッチ装置ともいう)1は、主要構造として、軸線O周りに回転して人為的に回転位置が設定されるとともに、人為操作により軸線O方向に移動可能な筒状の操作部2と、操作部2の軸線O方向への変位を検出することにより電気的にON・OFFされるタクトスイッチ51(移動検出スイッチ部)と、操作部2の回転位置を複数の回転設定位置のうちのいずれかに保持するために操作部2の外周面側に対向配置される回転保持機構30と、回転保持機構30により所定の回転位置に保持された操作部2の回転設定位置を検出するディテクタスイッチ52(回転検出スイッチ部)とを備えている。
【0018】
操作部2は、有蓋筒状のダイアルノブ10(操作部本体)と、ダイアルノブ10の内側に挿入保持される筒状のロータノブ20(追従回転体)とを有する。ダイアルノブ10は、軸線O周りでの回転変位を回転保持機構30で保持しながら本体ケーシング100の基端部104との間で回転位置が設定され、中心軸12の軸線O方向への変位によりプッシュロッド13を介してタクトスイッチ51と接触して作動させる。ロータノブ20は、ダイアルノブ10の軸線O方向への変位には追従移動せず(図3参照)、ダイアルノブ10の軸線O周りでの回転変位には追従して一体回転することによりディテクタスイッチ52と接触して回転設定位置を検出する。
【0019】
具体的には、本体ケーシング100の内部には周方向に所定間隔(例えば90°間隔)で複数(例えば4本)のレール101が立設されている。ロータノブ20は、このレール101をガイドとして、ダイアルノブ10とレール101との間に挿入され、レール101の先端部に形成されたストッパ102で上端部を保持されている。ロータノブ20の下部にはダイアルノブ10を収容する外壁部22が一体形成され、外壁部22に形成された軸線O方向の複数(例えば2個)の長孔23にダイアルノブ10の下端部に突出形成された突出部14がそれぞれスライド移動可能に挿通されている。
【0020】
さらに、ロータノブ20の下部には半球状の支持部24が突出形成され、本体ケーシング100の台座103上を摺動しながら軸線O周りで回転する。このとき、ロータノブ20の下部先端には、周方向に沿って所定間隔(例えば10°間隔)で形成された複数(例えば36枚)の係合片21が突出形成され、ディテクタスイッチ52との接触によって回転変位量を検出している。
【0021】
図3において、ダイアルノブ10の外周面には、全周にわたって連続的に凹凸を繰り返す凹凸部11が軸線O方向に所定の幅W1で形成されている。回転保持機構として、弾性力によってダイアルノブ10の凹凸部11との係合状態を押圧保持する板ばね状のクリックばね30(弾性節度部材)が、本体ケーシング100に固定保持されている。
【0022】
さらに、クリックばね30の軸線O方向の幅W2が凹凸部11の軸線O方向の幅W1よりも大に設定されている。具体的には、クリックばね30の軸線O方向の形成幅W2は、ダイアルノブ10の凹凸部11の軸線O方向の変位量Lと凹凸部11の軸線O方向の形成幅W1との合計より大、すなわち
W2>L+W1
【0023】
図2に戻り、ダイアルノブ10の凹凸部11とクリックばね30との接触位置に関する旋回半径R1の大きさが、ロータノブ20の係合片21とディテクタスイッチ52との接触位置に関する旋回半径R2の大きさと近接するように設定されている。ただし、図2ではR1がR2よりも若干大に表わされている。
【0024】
操作部2が軸線O方向に沿って人為的に移動されるとき移動方向下手側となる位置に、操作部2を軸線O方向一端側(下面側)から覆う形で配線基板50が配置されている。配線基板50の操作部2に対向する表面にタクトスイッチ51とディテクタスイッチ52とが実装されている。
【0025】
配線基板50にはLED53(発光部;光源)が実装されており、ダイアルノブ10が軸線O方向に変位したことをタクトスイッチ51が検出すると点灯する。そして、操作部2(ロータノブ20)の内部には、LED53からの光を透過させ操作部2の軸線O方向他端側(上面側)から外部に放出するための導光レンズ40(導光プリズム;導光部)が配置されている。なお、導光レンズ40は透光性の材料(例えば透明又は半透明の高分子材料)で構成されている。
【0026】
このように、クリックばね30を凹凸部11よりも幅広に構成している。さらに、クリックばね30の軸線O方向の形成幅W2は、ダイアルノブ10の凹凸部11の軸線O方向の変位量Lと凹凸部11の軸線O方向の形成幅W1との合計より大、すなわち
W2>L+W1
に設定されている。これによって、タクトスイッチ51のON・OFF操作(AUTO操作)のためにダイアルノブ10が軸線O方向へ変位した場合でも、ロータノブ20による温度設定操作が可能であり、あるいはロータノブ20により予め設定されていた温度位置がずれることも防止できる。
【0027】
(変形例1)
図4に弾性節度部材の変形例を示す。図4の弾性節度部材(回転保持機構)は、圧縮コイルばね31の弾性力によってダイアルノブ10の凹凸部11との係合状態を押圧保持する円柱体32で構成され、本体ケーシング100に固定保持されている。
【0028】
(変形例2)
図5に弾性節度部材の他の変形例を示す。図5の弾性節度部材(回転保持機構)は、本体ケーシング100とともに一体成形され、ダイアルノブ10の凹凸部11との係合状態を押圧保持する高分子材料製でねじり弾性を有する弾性部材33で構成されている。
【0029】
なお、実施例のクリックばね30等の弾性節度部材は1個のみ設けたが、周方向に複数設けてもよい。また、ダイアルノブ10の突出部14はロータノブ20の長孔23の内周面に摩擦力によって保持されているが、ばね力等の弾性力で上方に持ち上げ保持してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るスイッチ装置の一例を示す正面断面図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】ダイアルノブの作動状態を示す断面図。
【図4】弾性節度部材の変形例を示す説明図。
【図5】弾性節度部材の他の変形例を示す説明図。
【符号の説明】
【0031】
1 スイッチ装置
2 操作部
10 ダイアルノブ(操作部本体)
11 凹凸部
20 ロータノブ(追従回転体)
30 クリックばね(弾性節度部材;回転保持機構)
40 導光レンズ(導光プリズム;導光部)
50 配線基板
51 タクトスイッチ(移動検出スイッチ部)
52 ディテクタスイッチ(回転検出スイッチ部)
53 LED(発光部;光源)
100 本体ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線周りに回転して人為的に回転位置が設定されるとともに、同じく人為操作により軸線方向に移動可能な筒状の操作部と、
その操作部の軸線方向への変位を検出することにより電気的にON・OFFされる移動検出スイッチ部と、
前記操作部の回転位置を複数の回転設定位置のうちのいずれかに保持するために前記操作部の外周面側に対向配置される回転保持機構と、
その回転保持機構により所定の回転位置に保持された操作部の回転設定位置を検出する回転検出スイッチ部とを備え、
前記操作部の外周面には、周方向に沿って連続的に又は断続的に凹凸を繰り返す凹凸部が軸線方向に所定の幅で形成されるとともに、
前記回転保持機構には、自身の弾性力によって前記凹凸部との係合状態を押圧保持する弾性節度部材が設けられ、
その弾性節度部材の軸線方向の幅が前記凹凸部の軸線方向の幅よりも大であることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
前記弾性節度部材の軸線方向の形成幅は、前記操作部の軸線方向の変位量と前記凹凸部の軸線方向の形成幅との和に等しいか又はそれ以上である請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記移動検出スイッチ部は、前記操作部の軸線上に配置されてその操作部の軸線方向の変位を検出する一方、
前記回転検出スイッチ部は、前記操作部に周方向に沿って所定間隔で形成された複数の係合片との接触によってその操作部の回転変位量を検出し、
軸線を含む断面において、前記操作部の凹凸部と前記弾性節度部材との接触位置に関する旋回半径の大きさが、前記操作部の係合片と前記回転検出スイッチ部との接触位置に関する旋回半径の大きさと近接するように設定されている請求項1又は2に記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記操作部は、
外周面に前記凹凸部を有し、軸線周りでの回転変位により前記弾性節度部材との間で回転位置が設定され、軸線方向への変位により前記移動検出スイッチ部と接触して作動させる筒状の操作部本体と、
前記操作部本体の内側に挿入保持され、その操作部本体の軸線方向への変位には追従移動せず、その操作部本体の軸線周りでの回転変位には追従して一体回転することにより前記回転検出スイッチ部と接触して前記回転設定位置を検出する追従回転体とを有する請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項5】
前記操作部が軸線方向に沿って人為的に移動されるとき移動方向下手側となる位置に、前記操作部を軸線方向一端側から覆う形で配線基板が配置され、その配線基板の前記操作部に対向する表面に前記移動検出スイッチ部と前記回転検出スイッチ部とが実装されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項6】
前記配線基板には、前記移動検出スイッチ部による前記操作部の軸線方向の変位の検出に伴って点灯する光源が実装されるとともに、
前記操作部の内部には、その光源からの光を透過させ前記操作部の軸線方向他端側から外部に放出するための導光部が配置されている請求項5に記載のスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−251414(P2008−251414A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93176(P2007−93176)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】