説明

スイッチ装置

【課題】シール部材の早期劣化を抑え、防水性に優れたスイッチ装置を提供する。
【解決手段】貫通穴1を設けたケース2と、このケース2の後面側に配置されるスイッチ本体8と貫通穴1からケース2の前面側に突出する操作軸3とを有するスイッチ4と、スイッチ本体8とケース2との間に配置されたシール部材6とを備え、シール部材6は、操作軸3が挿通される穴部17とスイッチ本体8の上面14を露出する切り欠き穴19とを有し、ケース2に切り欠き穴19に挿入され上面14箇所に当接するリブ15を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両に搭載され、ケース内に配置されたスイッチをケースの外部から操作するスイッチ装置に係り、特にシール部材を備えたスイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防水性を考慮した状態でスイッチをケースに取り付けたものとして、例えば下記特許文献1に記載のものがある。特許文献1に記載のスイッチは、スイッチケース21(スイッチ)を容器13(ケース)の内部から外部に突出させ、固定用ナット3を用いてスイッチケース21を容器13に取り付ける際、スイッチケース21のフランジ部と容器13との間にゴムワッシャ2(シール部材)を挟み込むことによって、水が容器13の内部に浸入するのを防ぐというものである。
【特許文献1】特開平8−287801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1記載のスイッチは固定用ナット3の締め付けがいくらでも可能であり、それによりゴムワッシャ2がどこまでも圧縮されてしまう。高い圧縮力を受けた状態であるとゴムワッシャ2が早期に劣化しやすく、防水性が低下してしまう虞がある。
【0004】
本発明は、この様な点に鑑みなされたもので、シール部材の早期劣化を抑え、防水性に優れたスイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記課題を解決するため、貫通穴を設けたケースと、このケースの後面側に配置されるスイッチ本体と前記貫通穴から前記ケースの前面側に突出する操作軸とを有するスイッチと、前記スイッチ本体と前記ケースとの間に配置されたシール部材とを備え、前記シール部材は、前記操作軸が挿通される穴部と前記スイッチ本体の上面を露出する切り欠き穴とを有し、前記ケースに前記切り欠き穴に挿入され前記上面箇所に当接するリブを設けたものである。
【0006】
また、本発明は前記穴部の周囲に環状突起を設けたものである。
【0007】
また、本発明は前記切り欠き穴は前記シール部材の周方向に沿って等間隔に複数設けられているものである。
【0008】
また、本発明は前記シール部材に前記スイッチ本体を囲む垂れ下がり部を設けたものである。
【0009】
また、本発明は前記垂れ下がり部の内径が前記スイッチ本体の外径より径小であるものである。
【発明の効果】
【0010】
シール部材の早期劣化を抑え、防水性に優れたスイッチ装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明を適用したスイッチ装置の実施形態を説明する。図1はスイッチ装置の断面図であり、図2はスイッチ装置に用いられるシール部材の正面図である。図3はシール部材の断面図(図2のA−A断面)であり、図4はシール部材の断面図(図2のB−B断面)である。
【0012】
スイッチ装置は、貫通穴1を設けたケース2と、このケース2に取り付けられ操作軸3を有する例えば回転式のスイッチ4と、スイッチ4の操作軸3を回動操作する操作ツマミ5と、ケース2内への水の浸入を抑えるシール部材6と、ケース2の前面側(スイッチ操作者側)に配置され操作軸3の回動操作に対応した表示(図示せず)が施されたシート状の表示パネル7などを備えている。
【0013】
スイッチ4は、スイッチ本体8と、このスイッチ本体8と一体形成され周囲にネジ部(図示せず)が形成してある取付部9と、回動可能に構成された操作軸3とからなり、スイッチ本体8がケース2の後面側に配置され、ケース2の貫通穴1から操作軸3と取付部9がケース2の前面側に突出している。そして、取付部9のネジ部に締結部材としての金属製のナット10をネジ締めすることによってスイッチ4がケース2に取り付けられるようになっている。11は、ケース2とナット10との間に介在された歯付座金である。
【0014】
取付部9は円柱の両側をそいだ形状、つまり断面が略小判形となっている。操作軸3も円柱状であるが、先端側は断面がDの字状(Dの字部12)としてある。この操作軸3の先端側に操作ツマミ5が装着されるが、操作ツマミ5を回した際に操作ツマミ5が空転しない様に操作軸3の先端側はDの字部12としてあるものである。
【0015】
操作ツマミ5は、例えば黒色の合成樹脂からなり、操作軸3の先端側が挿入される差し込み孔13が設けられている。この差し込み孔13の断面は上述した様に、操作軸3の先端側の断面形状とほぼ一致している。
【0016】
ケース2は、例えば黒色の合成樹脂からなり、スイッチ4の操作軸3および取付部9が挿通される貫通穴1と、スイッチ本体8の上面14箇所に当接するリブ15が2個設けてある。貫通穴1は、スイッチ4の取付部9の断面とほぼ一致した形状としてある。即ち、略小判形(非円形)となっており、これによってケース2に対するスイッチ4の回り止めがなされている。
【0017】
シール部材6は、柔軟性を有する例えば黒色の合成ゴムからなり、スイッチ本体8とケース2との間に配置される前部16と、この前部16に設けられスイッチ4の操作軸3および取付部9が挿通される穴部17と、この穴部17の周縁に設けられ断面が略半円形の環状突起18と、前部16の周方向に沿って等間隔(穴部の中心を原点とした等角度位置)に設けられている2個の切り欠き穴19と、スイッチ本体8の周囲を囲みスイッチ本体8の外径より径小の垂れ下がり部20とを有している。
【0018】
穴部17は、スイッチ4の取付部9の断面とほぼ一致した形状としてある。即ち、略小判形となっている。切り欠き穴19は、前部16を切り欠くことによって設けられるもので、図2に示す様に溝状となっており、この切り欠き穴19にケース2に設けられたリブ15が挿入される。図示しないが、切り欠き穴19とリブ15の断面形状はほぼ同じくなっている。なお、切り欠き穴19は2個に限定するものではなく、前部16の周方向に沿って等間隔に複数個設けられていれば、3個でも4個でも良い。また、リブ15の高さはシール部材6の環状突起18を含めた前部16の厚さより少し低く(短く)設定してある。
【0019】
スイッチ4のケース2への取り付けについて説明する。先ずスイッチ本体8の上面14側にシール部材6を装着する。この際、スイッチ本体8の取付部9とシール部材6の穴部17とが合うようにする。次に、表示パネル7が前もって貼られたケース2の貫通穴1にシール部材6が装着されたスイッチ4の操作軸3および取付部9をケース2の後面側から挿通させ、ケース2に設けたリブ15がシール部材6の切り欠き穴19に挿入された状態で、前述した様に歯付座金11を介してナット10をスイッチ本体8の取付部9にネジ締めする。
【0020】
ナット10をネジ締めするにつれて、ケース2とスイッチ本体8の上面14との間でシール部材6の環状突起18が圧縮され、ケース2のリブ15がスイッチ本体8の上面14に当接することによってネジ締めが完了する。その後、操作ツマミ5の差し込み孔13に操作軸3のDの字部12を挿入してスイッチ4の組み付けが完了する。
【0021】
この様に、シール部材6にスイッチ本体8の上面14を露出する切り欠き穴19を設け、ケース2に切り欠き穴19に挿入されるリブ15を設け、このリブ15がシール部材6の環状突起18が圧縮された状態でスイッチ本体8の上面14箇所に当接するように構成したことにより、環状突起18(シール部材6)が圧縮されることで防水性が保たれると共に、ナット10でネジ締めする際にシール部材6がどこまでも圧縮されるのを防ぐことができる。これによって締め付けすぎによるシール部材6の早期劣化を抑え、防水性に優れたスイッチ装置を得ることができる。
【0022】
また、シール部材6の穴部17周囲に環状突起18を設けることによって、ナット10をネジ締めする際、圧縮される箇所がシール部材6の前部16全体ではなく部分的であるため、ケース2のリブ15がスイッチ本体8の上面14に当接するまでの圧縮力が少なくて済み、ナット10締めする際の作業が容易である。
【0023】
また、シール部材6の切り欠き穴19はシール部材6の周方向に沿って等間隔に複数設けられていることによって、ナット10をネジ締めした際にシール部材6の前部16がほぼ均等に圧縮され、防水性に優れたスイッチ装置を得ることができる。
【0024】
また、シール部材6にスイッチ本体8を囲む垂れ下がり部20を設けたことによって、ネジ締め(圧縮)時の前部16の変形が抑えられ、防水性に優れたスイッチ装置を得ることができる。
【0025】
また、シール部材6の垂れ下がり部20の内径がスイッチ本体8の外径より径小であることによって、圧入設定となるため、スイッチ4に対するシール部材6の回り止め効果が得られる。更に、ケース2にスイッチ4を組み付ける際、逆さにしてもシール部材6がスイッチ4から外れることがなく、組み付け作業性の向上に繋がる。
【0026】
なお、本実施形態に於いてはシール部材6の前部16に環状突起18を設けたが環状突起18は設けなくとも良く、その場合、シール部材6が圧縮された状態でスイッチ本体8の上面14箇所に当接するように、ケース2のリブ15の高さはシール部材6の前部16の厚さより少し低く設定しておけば良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態を示すスイッチ装置の断面図。
【図2】同スイッチ装置に用いられるシール部材の正面図。
【図3】同シール部材の断面図(図2のA−A断面)。
【図4】同シール部材の断面図(図2のB−B断面)。
【符号の説明】
【0028】
1 貫通穴
2 ケース
3 操作軸
4 スイッチ
6 シール部材
8 スイッチ本体
9 取付部
14 上面
15 リブ
16 前部
17 穴部
18 環状突起
19 切り欠き穴
20 垂れ下がり部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通穴を設けたケースと、このケースの後面側に配置されるスイッチ本体と前記貫通穴から前記ケースの前面側に突出する操作軸とを有するスイッチと、前記スイッチ本体と前記ケースとの間に配置されたシール部材とを備え、前記シール部材は、前記操作軸が挿通される穴部と前記スイッチ本体の上面を露出する切り欠き穴とを有し、前記ケースに前記切り欠き穴に挿入され前記上面箇所に当接するリブを設けたことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
前記穴部の周囲に環状突起を設けたことを特徴とする請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記切り欠き穴は前記シール部材の周方向に沿って等間隔に複数設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記シール部材に前記スイッチ本体を囲む垂れ下がり部を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のスイッチ装置。
【請求項5】
前記垂れ下がり部の内径が前記スイッチ本体の外径より径小であることを特徴とする請求項4に記載のスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−70645(P2009−70645A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236348(P2007−236348)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】