説明

スイッチ装置

【課題】固定及び可動の両接点を収容したケース内に潤滑油など異物が侵入することのないようにし、その両接点の接離がより速やかにでき、加えて、操作時に発生する音の低減化を図るようにする。
【解決手段】密閉ケース1内に位置した可動接点16を、密閉ケース1外で移動する磁気短絡体23の移動によって、アーマチュア7を設けた可動接触子8を介して動かす。その磁気短絡体23の移動による可動接点16の動き(可動接触子8の動き)は、一対のヨーク4,5を介して可動接触子8に及ぶ磁石6の磁力の変化によるものとする。密閉ケース1の外側に、ヨーク4,5の端部より磁気短絡体23側へ突出するように緩衝材32,33を設け、磁気短絡体23がヨーク4,5に接触する方向へ移動した際に、磁気短絡体23は、緩衝材32,33に当たるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接点の操作構造を改良したスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スイッチ装置としては、固定接点と可動接点、並びにその可動接点を常時は固定接点に接触または離間させるスプリングを収容したケースに、ロッド状の移動子を挿通して設け、その移動子が移動操作されることにより、上記可動接点を固定接点に対して動かして離間または接触させるようにしたものが供されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−235632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記構成のスイッチ装置は、例えば車両用のストップランプスイッチとして使用されるものであり、その車両用のストップランプスイッチの近辺には、様々な機構部に塗布された潤滑油や、製品に含まれた無機物、有機物が存在する。これに対して、上記従来のスイッチ装置においては、その潤滑油や無機物、有機物の異物が、ケースの、移動子を挿通した部分からケース内に侵入し、可動接点と固定接点との間に付着して、特にはシリコーン成分により接点間の導通不良の問題を惹起するおそれを有していた。
【0004】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、固定接点及び可動接点を収容したケース内に潤滑油など異物が侵入することがないようにして、それら固定接点及び可動接点の接離を良好に行わせることができ、しかも、その両接点の接離がより速やかにできて、スイッチ性能を向上させることができ、加えて、操作時に発生する音の低減化を図ることができるスイッチ装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するために、本発明のスイッチ装置は、固定接点と、この固定接点に対して接離する可動接点を有するとともに、磁性を有する可動接触子と、これら固定接点及び可動接触子を収納した密閉ケースと、この密閉ケースの内外を貫通するように設けられた磁性を有するヨークと、このヨークに磁力を及ぼして当該ヨークを介して前記可動接触子を吸引する磁石と、前記密閉ケースの外部に位置して移動操作される移動子と、前記密閉ケースの外部に位置して前記移動子により移動される磁気短絡体とを具備し、前記磁気短絡体の移動に伴い当該磁気短絡体と前記ヨークとの間の距離を変化させて、前記ヨークを介しての前記磁石による前記可動接触子の吸引力を変化させ、前記可動接触子を介して前記可動接点を前記固定接点に対して動かすようにしたものであって、前記密閉ケースの外側に、前記密閉ケースから前記磁気短絡体側へ突出した前記ヨークの端部より前記磁気短絡体側へ突出し、かつ前記ヨーク及び前記密閉ケースよりも軟質の部材により形成された緩衝材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
上記した手段によれば、密閉ケース内に位置した可動接点を、密閉ケース外で移動する磁気短絡体の移動によって、可動接触子を介して固定接点に対し動かすことができる。よって、密閉ケース内には近辺に存在する潤滑油や無機物、有機物の異物が侵入することもなく、該密閉ケースに収納した可動接点及び固定接点の接離を行わせることができる。これにより、従来あった、侵入物による接点間の導通不良の問題を惹起するおそれをなくすことができる。
【0007】
また、上記磁気短絡体の移動による可動接点の動き(固定接点に対する接離)は、ヨークを介して可動接触子に及ぶ磁石の磁力の変化によるものであり、その変化は急峻で、それにより、可動接点及び固定接点の接離がより速やかにでき、スイッチ性能を向上させることができる。
【0008】
加えて、密閉ケースの外側に、当該密閉ケースから磁気短絡体側へ突出したヨークの端部より前記磁気短絡体側へ突出するように緩衝材を設けているので、磁気短絡体がヨークに接触する方向へ移動した際に、磁気短絡体は、まずはヨークよりも軟質の緩衝材に当たることになる。このため、磁気短絡体が比較的硬質のヨークに最初に当たることを避けることができるから、磁気短絡体がヨークに接触しようとするときの衝突音の低減化を図ることが可能になる。しかも、衝突の際にヨークに発生する振動も抑えることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を車両用ストップランプスイッチに適用した一実施形態につき、図面を参照して説明する。
まず、図1には、非操作状態における車両用ストップランプスイッチの全体構成が示されている。この図1において、密閉ケース1は、ケース主体部1aと、ケース基体部1bとから構成されている。このうちのケース主体部1aは、上面部が中央部に隆起部2を有して閉塞され、底部が開放したキャップ状を成している。ケース基体部1bは、図1で右側の部分の上面に凸部3を有する以外、平板状を成していて、ケース主体部1aの底部にこれを閉塞するように組み付けられている。
【0010】
上記ケース主体部1aの隆起部2には、一対のヨーク4,5が当該隆起部2の内外を貫通する状態で設けられている。このヨーク4,5は、ともに鉄等の磁性材から成るもので、要するに磁性を有している。このヨーク4,5は、これらを例えばケース主体部1aの成形時にインサートして設けることにより、該ケース主体部1aと一体化している。その一体化した形態は、ヨーク4,5の各中間部がケース主体部1aの隆起部2に密着されて保持され、それによって、ケース主体部1aで隔てられた上下2つの空間に浸透性を有しないようにしているものである。ヨーク4,5の各上部は、ケース主体部1aの隆起部2より上方の空間であるケース主体部1a外に突出している。ヨーク4,5の各下部は、ケース主体部1aの隆起部2より下方の空間であるケース主体部1a内に突出している。
【0011】
ケース主体部1aの隆起部2内には、一対のヨーク4,5の間に位置させて磁石(永久磁石)6が設けられている。この磁石6も、例えばケース主体部1aの成形時にインサートして設けることにより、該ケース主体部1aと一体化している。その一体化した形態は、磁石6の上部がケース主体部1aの隆起部2内に位置して、両側面がヨーク4,5に接触し、下面がケース主体部1a内に露出するものである。
【0012】
ヨーク4,5は図1で左右に並んでおり、これらヨーク4,5の直下位置に、アーマチュア7を有する可動接触子8が配置されている。アーマチュア7は鉄等の磁性材から成るもので、平板状を成し、磁性を有している。これに対して、可動接触子8は、非磁性材であるりん青銅等の導電性板ばね材から成るもので、これの上面にアーマチュア7を固着している。
【0013】
可動接触子8は、図1で右側の一端部8aをリベット9により接続端子10の上端部10aを介して前記ケース基体部1bの凸部3に固着している。接続端子10は、もうひとつの接続端子11と共にケース基体部1bに貫通させた状態で設けている。詳細には、それら接続端子10,11も、ケース基体部1bの成形時にインサートして設けることにより、該ケース基体部1bと一体化している。その一体化した形態は、接続端子10,11の各中間部がケース基体部1bに密着されて保持され、それによって、ケース基体部1bで隔てられた上下2つの空間に浸透性を有しないようにしているものである。接続端子10,11の各上部はケース基体部1b上に突出し、接続端子10,11の各下部はケース基体部1b下に突出している。
【0014】
なお、上記ケース基体部1bに接続端子10,11を一体化するについては、ケース基体部1bに孔をあけ、その孔に接続端子10,11を通して、それらと孔との間の隙間を封止剤により埋めて密閉する構造を採用しても良い。また、その構造は、前記ケース主体部1aにヨーク4,5を一体化する部分にも採用することが可能である。すなわち、ケース主体部1aに孔をあけ、その孔にヨーク4,5を通して、それらと孔との間の隙間を封止剤により埋めて密閉する構造を採用しても良い。
【0015】
前記可動接触子8の一端部8aを固着した接続端子10の上端部10aは、L字状に折曲されていて、ケース基体部1bの前記凸部3の上面に位置しており、従って、可動接触子8の一端部8aも、その凸部3の上面に接続端子10の上端部10aを介して位置している。
【0016】
そして、可動接触子8は、上記一端部8aから凸部3の内側の側面に沿うようにほぼL字状に折曲されており(第1の折曲部12)、次いで、ケース基体部1bの近傍でヨーク4,5間(特にはそのほぼ中央部)に向かうようにほぼV字状に折曲され(第2の折曲部13)、更に、常態では、図2に示すように、第2の折曲部13とは反対でケース基体部1b方向へほぼへ字状となるように折曲されている(第3の折曲部14)。その第3の折曲部14から他端部8b側の中間部8cに、前記アーマチュア7の左半分を固着している。
従って、可動接触子8は、第1の折曲部12からアーマチュア7を設けた部分までの間に、アーマチュア7から離間して屈曲された、この場合、ほぼV字状の屈曲部15を有した構成なっている。可動接触子8の他端部8bの上面には、可動接点16を設けている。
【0017】
ケース基体部1bは、ケース主体部1aの底部に結合されて、該底部の開放部を密に閉塞している。この状態で、可動接触子8は、アーマチュア7の図1で右側の端部を右側のヨーク5の下端部に当接させ、図1で左側の端部を、常態(図2)では、左側のヨーク4の下方に離間させている。これに対して、前記磁石6の磁力がヨーク4,5を通じてアーマチュア7にのみ及ぶ図1に示す状況では、アーマチュア7がヨーク4,5を介して磁石6に吸引され、可動接触子8は、前記中間部8cがほぼ水平となる状態に弾性変形される。
【0018】
前記可動接点16の上方には、固定接点17を配置している。この固定接点17は、詳細には、前記接続端子11のL字状に折曲された上端部11aの下面に設けられていて、前記可動接点16と対向している。上述したようにアーマチュア7が磁石6に吸引されて可動接触子8がほぼ水平状態となるように弾性変形された図1の状態では、当該固定接点17に可動接点16が接触している。
【0019】
ここで、ケース基体部1bは、既述のようにケース主体部1aの底部に結合されており、これによって前記密閉ケース1を構成している。そして、その密閉ケース1の内部に、固定接点17と、可動接点16、アーマチュア7、可動接触子8、磁石6、ヨーク4,5の下部、及び接続端子10,11の各上端部10a,11aを収納した構造となっている。
なお、ケース基体部1bから下方へ突出した接続端子10,11の各下部は、密閉ケース1を囲繞したスリーブ18に囲繞されていて、その内部に挿入される図示しないコネクタを介して図示しない導電線が接続されるようになっている。
【0020】
そして、スリーブ18の外部には、カバー19が装着されている。このカバー19はキャップ状のもので、上部の中央部に上方へ延びるガイド筒19aを有し、このガイド筒19aに、ロッド状の移動子20が図1で上下方向に移動可能に挿通されている。移動子20は、下部寄りの中間部に径大部20aを有しており、この径大部20aを、ガイド筒19aの下部に形成された径大穴部21に挿入している。
【0021】
移動子20の径大部20aより下方の部分には、第1のスプリング22が巻装されている。この第1のスプリング22は、移動子20の径大部20aを囲繞する圧縮コイルスプリングであって、これも上記ガイド筒19aの径大穴部21に収納している。そして、移動子20の下端部には、磁気短絡体23を組み付けている。この磁気短絡体23は、鉄等の磁性材から成るもので、この場合、移動子20を囲繞するリング状を成しており、その外径はガイド筒19aの下端部よりも大きい形状となっている。
【0022】
磁気短絡体23の直下には、ホルダ24が配置されている。このホルダ24は、外径が磁気短絡体23よりも更に大きく、その外周部には上下の両方に突出するリム24aを有している。このホルダ24には、前記ヨーク4,5に対応してそれらヨーク4,5よりも大きな形状の孔25,26が形成されている。
【0023】
ホルダ24の下面と前記密閉ケース1のケース主体部1aとの間には、第2のスプリング27を介在させている。この第2のスプリング27は、ケース主体部1aの隆起部2を囲繞する圧縮コイルスプリングであり、前記第1のスプリング22よりも強い付勢力でホルダ24から移動子20及び磁気短絡体23を押し上げ、すなわち、それらを前記ヨーク4,5側とは反対の上方側に付勢している。その結果、ホルダ24は、磁気短絡体23をヨーク4,5の上端部より上方に離間させて移動子20の下端に押し付けると共に、前記リム24aのうちの上方に突出した部分により磁気短絡体23を囲っている。更に、移動子20は、径大部20aが前記ガイド筒19aの径大穴部21の奥端に制止されるまで上方に押し上げられて、上部がガイド筒19aより上方に突出し、図示しない車両のブレーキペダルに対応している。
【0024】
前記第1のスプリング22は、磁気短絡体23をホルダ24上に押し付け、すなわち、磁気短絡体23を前記ヨーク4,5側への移動方向に付勢している。これにより、磁気短絡体23が図1に示す位置に留められて保持されている。
前記密閉ケース1におけるケース主体部1aの隆起部2の外側には、緩衝材ユニット30を配設している。この緩衝材ユニット30は、図3に示すように、支持体31と、2個の緩衝材32,33を有している。このうち支持体31は、合成樹脂製で、隆起部2の上面に配置されるカバー部31aと、このカバー部31aから下方へ延びるように設けられた4本の脚部31bと、前記ヨーク4,5の側面に沿って上方へ突出するように設けられた2個の立上がり部31c、31dとを一体に有していて、ケース主体部1aに固定状態に取り付けられている。このうちのカバー部31aには、ヨーク4,5に対応して矩形状の孔34,35が形成されていて、この孔34,35にヨーク4,5の上部が挿入されている。従って、ヨーク4,5の上部は、カバー部31aよりも上方へ突出している。
【0025】
前記2個の立上がり部31c、31dの上面に、前記緩衝材32,33が接着等により固着されている。これら緩衝材32,33は、エラストマーなどの軟質部材により形成されたもので、それぞれの上端が、カバー部31aから上方へ突出したヨーク4,5の上端部より若干上方(磁気短絡体23側)へ突出している。従って、これら緩衝材32,33は、密閉ケース1の隆起部2から磁気短絡体23側へ突出したヨーク4,5の上端部より磁気短絡体23側へ突出し、かつヨーク4,5及び密閉ケース1よりも軟質の部材により形成されている。
【0026】
なお、緩衝材32,33を支持体31に設ける手段としては、接着等によって固着することに代えて、いわゆる2色成形により設けることも可能である。
前記ホルダ24において、左側のヨーク4及び緩衝材32の上方に位置する孔25は、それらヨーク4及び緩衝材32、並びに左側の立上がり部31cを挿入し得る大きさに形成され、また、右側のヨーク5及び緩衝材33の上方に位置する孔26も、それらヨーク5及び緩衝材33、並びに右側の立上がり部31dを挿入し得る大きさに形成されている。
【0027】
次に、上記構成の作用を説明する。
車両のブレーキペダルを踏み込み操作する前、車両用ストップランプスイッチは図1に示した状態にあり、すなわち、前述のように、ホルダ24から移動子20及び磁気短絡体23が第2のスプリング27により押し上げられて、磁気短絡体23はヨーク4,5の上端部より上方に離間する位置に保持されており、移動子20は上部がガイド筒19aより上方に突出している。
【0028】
この状態では、磁石6の磁力がヨーク4,5を通じてアーマチュア7にのみ及ぶことにより、アーマチュア7がヨーク4,5を介して磁石6に吸引され、これに伴い、可動接触子8は、中間部8cがほぼ水平となる状態に弾性変形され、可動接点16を固定接点17に下方から接触させている。従って、このとき、可動接点16及び固定接点17は、接続端子10,11間を、可動接触子8を介する電路で導通させている。
【0029】
この状態から、車両のブレーキペダルが図2に矢印Aで示すように踏み込み操作されると、それに応じて移動子20がホルダ24を介し第2のスプリング27を圧縮して密閉ケース1側に移動する。これに伴い、ホルダ24及び磁気短絡体23も密閉ケース1側(ヨーク4,5側)に移動し、ホルダ24の左側の孔25に、左側のヨーク4、緩衝材32、及び立上がり部31cが相対的に挿入されるとともに、ホルダ24の右側の孔26に、右側のヨーク5、緩衝材33、及び立上がり部31dが相対的に挿入されるようになる。この結果、図2に示すように、磁気短絡体23が、緩衝材32,33に当たるとともに、ヨーク4,5の上端部に近接若しくは接触する状態となる。なお、図2では、磁気短絡体23がヨーク4,5の上端部に近接した状態が示されているが、接触してもよい。
このとき、金属製の磁気短絡体23は、最初に緩衝材32,33に当たることになり、金属製のヨーク4,5に最初に当たることを避けることができるから、磁気短絡体23がヨーク4,5に接触しようとするときの衝突音を低減することが可能になる。
【0030】
このように磁気短絡体23が、ヨーク4,5の上端部に近接若しくは接触するする状態になれば、磁石6の磁力はヨーク4,5を介して前記アーマチュア7に及ぶのみならず、ヨーク4,5を介して磁気短絡体23にも及ぶようになるから、その分、アーマチュア7に及ぶ磁力が変化し(この場合、弱まり)、アーマチュア7に対する吸引力が変化する(この場合、弱まる)。よって、アーマチュア7に対する磁石6の吸引力よりも、可動接触子8の前記弾性変形状態からの復元力が勝るようになって、可動接触子8は復元し、可動接点16を固定接点17から離間させるようになるので、前記接続端子10,11間の電路が遮断される。このようにして、車両用ストップランプスイッチが車両のブレーキペダルの踏み込み操作に応動するものであり、これにより、図示しない車両のストップランプが点灯されるようになる。
【0031】
この後、車両のブレーキペダルの踏み込み操作が解除されれば、すべては原状態に復帰し、アーマチュア7が磁石6に吸引されて可動接触子8がほぼ水平状態に弾性変形され、可動接点16を固定接点17に接触させることにより、車両のストップランプが再び消灯されるようになる。
【0032】
このように可動接点16が固定接点17に接離するとき、アーマチュア7は図で右側の一端部がヨーク5に摺接する。この摺接の度合が強いようであると、アーマチュア7の動きが円滑さを欠いて、可動接点16が固定接点17に接離する動作が安定しなくなると共に、摺接による摩耗粉が多く出て、固定接点17及び可動接点16の接蝕に害を及ぼすなど、動作障害の問題を発生する。
【0033】
この点、本構成のものでは、可動接触子8は、第1の折曲部12を支点部として動くもので、その支点部分(第1の折曲部12)からアーマチュア7を設けた部分までの間に、アーマチュア7から離間して屈曲された屈曲部15を有している。この屈曲部15は、図2に示すように、可動接触子8の上記支点部分からの動き(矢印B)に対して、それと交差する方向(矢印C)に柔軟性を有する。この柔軟性により、ヨーク5に対するアーマチュア7の図で右側の一端部の摺接の度合が弱められ、アーマチュア7の動きが円滑になる。このように、本構成のものでは、可動接点16が固定接点17に接離する動作が安定し、摺接による摩耗粉も多く出ずして、固定接点17及び可動接点16の接蝕に害を及ぼすような動作障害の問題を発生しないようにできる。
【0034】
上記したように本構成のものでは、密閉ケース1内の可動接触子8が有するアーマチュア7にヨーク4,5を介して及ぶ磁石6の磁気吸引力が、密閉ケース1外の移動子20の移動による磁気短絡体23の移動で変化することにより、密閉ケース1内に進入することなく、可動接点16を可動接触子8を介して固定接点17に対して動かすことができる。よって、密閉ケース1内には近辺に存在する潤滑油や無機物、有機物の異物が侵入することもなく、該密閉ケース1に収納した可動接点16及び固定接点17の接離を行わせることができる。これにより、従来あった、侵入物による接点16,17間の導通不良の問題を惹起するおそれをなくすことができる。
【0035】
また、上記密閉ケース1内のアーマチュア7、ひいては可動接点16に、ヨーク4,5を介して及ぶ磁石6の磁気吸引力の、磁気短絡体23の移動による変化は、磁石6自体を動かす場合に比べて急峻にできるものであり、それによって、可動接点16及び固定接点17の接離がより速やかにでき、スイッチ性能を向上させることができる。
【0036】
加えて、密閉ケース1の外側に、当該密閉ケース1から磁気短絡体23側へ突出したヨーク4,5の端部より前記磁気短絡体23側へ突出するように緩衝材32,33を設けているので、磁気短絡体23がヨーク4,5に接触する方向へ移動した際に、磁気短絡体23は、ヨーク4,5よりも軟質の緩衝材32,33に最初に当たることになる。このため、磁気短絡体23が比較的硬質のヨーク4,5に最初に当たることを避けることができるから、磁気短絡体23がヨーク4,5に接触しようとするときの衝突音を低減することが可能になる。しかも、衝突の際にヨーク4,5に発生する振動も抑えることができるようになる。
【0037】
この場合、緩衝材32,33を、ヨーク4,5の横に配置しているので、緩衝材32,33がヨーク4,5から上方(磁気短絡体23側)へ突出する寸法の調整を容易に行うことができる。
ちなみ、磁気短絡体23とヨーク4,5との間に発生する衝突音を緩和するためには、磁気短絡体23の下面に緩衝材を接着等により設けることも考えられる。しかしながら、このような構成とした場合には、緩衝材が磁気短絡体23とヨーク4,5との間に挟み込まれるようになるため、緩衝材の厚さが厚すぎると、磁気短絡体23とヨーク4,5との間の磁気ギャップが大きくなり、可動接触子8(可動接点16)の動作が良好にできず、逆に薄すぎると、緩衝材の耐久性が低下してしまうことになる。このため、緩衝材の厚さの設計や管理が難しいという問題がある。
【0038】
この点、本実施形態によれば、上記したように、緩衝材32,33を、ヨーク4,5の横に配置しているので、緩衝材32,33がヨーク4,5から上方(磁気短絡体23側)へ突出する寸法の調整を容易に行うことができ、また、緩衝材32,33の耐久性も確保することができる。よって、緩衝材32,33の厚さ方向の自由度を上げることが可能となり、設計がしやすくなる。
【0039】
さらに、上記した実施形態によれば、緩衝材32,33を支持体31に設けてユニット化しているので、ユニット化した緩衝材ユニット30を密閉ケース1に取り付けることで、組立性の向上も図ることができる。
【0040】
本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張できる。
固定接点と可動接点については、可動接点が車両のブレーキペダルの踏み込み操作前は固定接点から離間し、車両のブレーキペダルの踏み込み操作に応じて可動接点が固定接点に接触するように変えても良い。
可動接触子とアーマチュアは、導電性ばね材(非磁性材)と磁性材の二部材からでなく、磁性を有する導電性ばね材の一部材で一体に形成されていても良く、特にそのようにした場合には、使用部品点数を少なく済ませ得る効果がある。
加えて、本発明は、車両用のストップランプスイッチ以外の、それと同様の事情を有するスイッチ装置一般に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態を示すもので、非操作状態での縦断面図
【図2】移動子が操作された状態での縦断面図
【図3】緩衝材ユニットの斜視図
【符号の説明】
【0042】
図面中、1は密閉ケース、4,5はヨーク、6は磁石、7はアーマチュア、8は可動接触子、16は可動接点、17は固定接点、20は移動子、23は磁気短絡体、24はホルダ、30は緩衝材ユニット、31は支持体、32,33は緩衝材を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点と、
この固定接点に対して接離する可動接点を有するとともに、磁性を有する可動接触子と、
これら固定接点及び可動接触子を収納した密閉ケースと、
この密閉ケースの内外を貫通するように設けられた磁性を有するヨークと、
このヨークに磁力を及ぼして当該ヨークを介して前記可動接触子を吸引する磁石と、
前記密閉ケースの外部に位置して移動操作される移動子と、
前記密閉ケースの外部に位置して前記移動子により移動される磁気短絡体とを具備し、
前記磁気短絡体の移動に伴い当該磁気短絡体と前記ヨークとの間の距離を変化させて、前記ヨークを介しての前記磁石による前記可動接触子の吸引力を変化させ、前記可動接触子を介して前記可動接点を前記固定接点に対して動かすようにしたものであって、
前記密閉ケースの外側に、前記密閉ケースから前記磁気短絡体側へ突出した前記ヨークの端部より前記磁気短絡体側へ突出し、かつ前記ヨーク及び前記密閉ケースよりも軟質の部材により形成された緩衝材を設けたことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
前記緩衝材を支持体に設けてユニット化し、この緩衝材ユニットを前記密閉ケースに取り付ける構成としたことを特徴とする請求項1記載のスイッチ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−86891(P2010−86891A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257129(P2008−257129)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】